特許第6234621号(P6234621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234621
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20171113BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A61B1/00 511
   A61B1/00 731
   G02B23/24 B
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-575600(P2016-575600)
(86)(22)【出願日】2016年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2016061147
(87)【国際公開番号】WO2017047140
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-185489(P2015-185489)
(32)【優先日】2015年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 美沙
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佑一
(72)【発明者】
【氏名】内山 博樹
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−075189(JP,A)
【文献】 特開2006−102481(JP,A)
【文献】 特開2008−148791(JP,A)
【文献】 特開2009−226067(JP,A)
【文献】 特開2011−188929(JP,A)
【文献】 特開2011−224127(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/023990(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0236541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光、第1の励起光及び前記第1の励起光よりも長波長の第2の励起光が照射された被写体からの戻り光の光軸上に配置され、前記可視光の波長帯域を含む第1の波長帯域を分光して白色光観察用の撮像素子に入射させると共に、前記第1の波長帯域以外の第2の波長帯域を分光して出射する分光部と、
前記被写体と前記分光部との間の前記光軸上に配置されて前記戻り光に含まれる前記第1及び第2の励起光のうちの一方の励起光の波長帯域を阻止して阻止した波長帯域以外の波長帯域の前記戻り光を前記分光部に出射する第1の励起光カットフィルタと、
前記分光部から出射された前記第2の波長帯域の光の光軸上に配置されて前記第1及び第2の励起光のうちの他方の励起光の波長帯域及び前記可視光の波長帯域を阻止して前記第1の励起光により励起される第1の蛍光の波長帯域の光及び前記第2の励起光により励起される第2の蛍光の波長帯域の光を通過させ、阻止した波長帯域以外の波長帯域の光を蛍光観察用の撮像素子に出射する第2の励起光カットフィルタと
を具備したことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記第1の励起光カットフィルタは、前記第2の励起光のみを阻止するシングルノッチフィルタにより構成され、
前記第2の励起光カットフィルタは、前記第1の蛍光の波長帯域よりも長波長を通過させるロングパスフィルタによって構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記第1の蛍光は、青色、緑色又は赤色であり、
前記第2の蛍光は、前記可視光よりも長波長である
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記第1の波長帯域には、前記第1及び第2の励起光の波長帯域は含まれない
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記第1の波長帯域には、前記第1及び第2の励起光のいずれか一方の励起光の波長帯域が含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
被写体からの戻り光の光軸上に配置され、可視光の波長帯域を含む第1の波長帯域を分光して白色光観察用の撮像素子に入射させると共に、前記第1の波長帯域以外の第2の波長帯域を分光して前記光軸の方向とは異なる方向に出射する分光部と、
前記被写体と前記分光部との間の前記光軸上に配置されて前記戻り光に含まれる第1及び第2の励起光のうちの少なくとも一方の励起光の波長帯域を阻止して阻止した波長帯域以外の波長帯域の前記戻り光を前記分光部に出射する第1の励起光カットフィルタと、
前記分光部から出射された前記第2の波長帯域の光の光軸上に配置されて前記第1及び第2の励起光のうち前記第1の励起光カットフィルタによって阻止されない励起光の波長帯域及び前記可視光の波長帯域を阻止して阻止した波長帯域以外の波長帯域の光を蛍光観察用の撮像素子に出射する第2の励起光カットフィルタと
を具備し、
前記第2の励起光は前記第1の励起光よりも長波長であり、
前記第1の励起光及び前記第1の励起光に基づいて前記被写体から発生する第1の蛍光は、前記可視光の波長帯域に含まれ、
前記第2の励起光及び前記第2の励起光に基づいて前記被写体から発生する第2の蛍光は、前記可視光よりも長波長であり、
前記第1の励起光カットフィルタは、前記第1及び第2の励起光の波長帯域を阻止し、
前記第2の励起光カットフィルタは、前記第1の蛍光の波長帯域及び前記第2の蛍光の波長帯域よりも長い波長帯域を通過させる
ことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項7】
被写体からの戻り光の光軸上に配置され、可視光の波長帯域を含む第1の波長帯域を分光して白色光観察用の撮像素子に入射させると共に、前記第1の波長帯域以外の第2の波長帯域を分光して前記光軸の方向とは異なる方向に出射する分光部と、
前記被写体と前記分光部との間の前記光軸上に配置されて前記戻り光に含まれる第1及び第2の励起光のうちの少なくとも一方の励起光の波長帯域を阻止して阻止した波長帯域以外の波長帯域の前記戻り光を前記分光部に出射する第1の励起光カットフィルタと、
前記分光部から出射された前記第2の波長帯域の光の光軸上に配置されて前記第1及び第2の励起光のうち前記第1の励起光カットフィルタによって阻止されない励起光の波長帯域及び前記可視光の波長帯域を阻止して阻止した波長帯域以外の波長帯域の光を蛍光観察用の撮像素子に出射する第2の励起光カットフィルタと
を具備し、
前記第2の励起光は前記第1の励起光よりも長波長であり、
前記第1の励起光及び前記第1の励起光に基づいて前記被写体から発生する第1の蛍光は、前記可視光の波長帯域に含まれ、
前記第2の励起光及び前記第2の励起光に基づいて前記被写体から発生する第2の蛍光は、前記可視光よりも長波長であり、
前記第1の励起光カットフィルタは、前記第1の励起光の波長帯域を阻止し、
前記第2の励起光カットフィルタは、前記第1の蛍光の波長帯域及び前記第2の蛍光の波長帯域よりも長い波長帯域を通過させる
ことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項8】
被写体からの戻り光の光軸上に配置され、可視光の波長帯域を含む第1の波長帯域を分光して白色光観察用の撮像素子に入射させると共に、前記第1の波長帯域以外の第2の波長帯域を分光して前記光軸の方向とは異なる方向に出射する分光部と、
前記被写体と前記分光部との間の前記光軸上に配置されて前記戻り光に含まれる第1及び第2の励起光のうちの少なくとも一方の励起光の波長帯域を阻止して阻止した波長帯域以外の波長帯域の前記戻り光を前記分光部に出射する第1の励起光カットフィルタと、
前記分光部から出射された前記第2の波長帯域の光の光軸上に配置されて前記第1及び第2の励起光のうち前記第1の励起光カットフィルタによって阻止されない励起光の波長帯域及び前記可視光の波長帯域を阻止して阻止した波長帯域以外の波長帯域の光を蛍光観察用の撮像素子に出射する第2の励起光カットフィルタと
を具備し、
前記第2の励起光は前記第1の励起光よりも長波長であり、
前記第1の励起光は、前記可視光の波長帯域に含まれ、
前記第1の励起光に基づいて前記被写体から発生する第1の蛍光、前記第2の励起光及び前記第2の励起光に基づいて前記被写体から発生する第2の蛍光は、前記可視光よりも長波長であり、
前記第1の励起光カットフィルタは、前記第1の励起光の波長帯域を阻止し、
前記第2の励起光カットフィルタは、前記第1の蛍光の波長帯域及び前記第2の蛍光の波長帯域よりも長い波長帯域を通過させる
ことを特徴とする内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色光観察及び蛍光観察に好適な内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分子標的薬剤を用いた癌診断技術が注目されている。癌細胞において特異的に発現する生体タンパク質をターゲットとした蛍光プローブ(蛍光薬剤)を生体の対象部位へ散布または注入した後、該対象部位において発せられる蛍光に基づいて癌の有無を判別する手法である。この手法は、消化管分野の癌の早期発見において有用である。
【0003】
内視鏡装置において、この技術を利用した蛍光観察による診断が可能である。即ち、光源装置からの励起光を被写体に照射し、癌に集積した蛍光薬剤からの蛍光を捉えることで癌の存在診断や悪性度などの質的診断を行うのである。
【0004】
ところで、診断に際して複数の蛍光薬剤を投与することもできる。蛍光薬剤の種類に応じた複数の波長帯域での蛍光観察が可能である。光源装置から各蛍光薬剤に対応した複数の波長帯域の励起光を出射させて被写体に照射することで、各励起光にそれぞれ対応した蛍光が得られる。一般的に、蛍光は励起光よりも長波長側に生じる。被写体から反射した励起光の反射光成分は、励起光から得られる蛍光のレベルよりも大きいことから、蛍光観察を行うためには、励起光の通過を阻止する励起光カットフィルタを用いる必要がある。
【0005】
また、白色光の照射による通常観察(白色光観察)と蛍光観察の両方を同時に行う装置も開発されている。欧州特許出願公開第2122331号明細書(以下、文献1という)には、白色光観察と蛍光観察とを同時に行う装置において、複数の波長帯域の励起光を1つの励起光カットフィルタによってカットする技術が開示されている。文献1の装置は、ビームスプリッタによって、白色光と励起光及び蛍光とを分離し、更に、励起光カットフィルタによって複数の波長帯域の励起光をカットする。こうして、白色光観察と複数の蛍光による蛍光観察を可能にしている。
【0006】
ところで、白色光の反射光のレベルは蛍光のレベルに比べて比較的高いことから、必ずしもビームスプリッタによって白色光を完全に分離することができるとは限らない。このため、文献1の提案では、励起光フィルタに白色光の漏れ光が入射してしまう。そうすると、この白色光の漏れ光による画像成分が蛍光に基づく画像(蛍光画像)に悪影響を与えて、蛍光画像の画質が劣化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、白色光観察及び複数の励起光による蛍光観察を同時に行う場合でも、白色光を確実にカットして蛍光を取り出し、高精度の蛍光画像を得ることができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による内視鏡装置は、可視光、第1の励起光及び前記第1の励起光よりも長波長の第2の励起光が照射された被写体からの戻り光の光軸上に配置され、前記可視光の波長帯域を含む第1の波長帯域を分光して白色光観察用の撮像素子に入射させると共に、前記第1の波長帯域以外の第2の波長帯域を分光して出射する分光部と、前記被写体と前記分光部との間の前記光軸上に配置されて前記戻り光に含まれる前記第1及び第2の励起光のうちの一方の励起光の波長帯域を阻止して阻止した波長帯域以外の波長帯域の前記戻り光を前記分光部に出射する第1の励起光カットフィルタと、前記分光部から出射された前記第2の波長帯域の光の光軸上に配置されて前記第1及び第2の励起光のうちの他方の励起光の波長帯域及び前記可視光の波長帯域を阻止して前記第1の励起光により励起される第1の蛍光の波長帯域の光及び前記第2の励起光により励起される第2の蛍光の波長帯域の光を通過させ、阻止した波長帯域以外の波長帯域の光を蛍光観察用の撮像素子に出射する第2の励起光カットフィルタと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡装置を含む内視鏡システムを示すブロック図である。
図1B】光源装置の他の例を示すブロック図である。
図1C図1Bの光源装置に採用される回転フィルタを示す説明図である。
図2】パターンA−aの例における励起光カットフィルタ22,24の設定と、光源装置3から出射され撮像素子25,26に至る光の変化との関係を示す説明図である。
図3】パターンA−aの例における光のフィルタ制御を示す説明図である。
図4】パターンB−dの例における励起光カットフィルタ22,24の設定と、光源装置3から出射され撮像素子25,26に至る光の変化との関係を示す説明図である。
図5】パターンB−dの例における光のフィルタ制御を示す説明図である。
図6】パターンA−bの例における励起光カットフィルタ22,24の設定と、光源装置3から出射され撮像素子25,26に至る光の変化との関係を示す説明図である。
図7】パターンA−bの例における光のフィルタ制御を示す説明図である。
図8】パターンA−cの例における励起光カットフィルタ22,24の設定と、光源装置3から出射され撮像素子25,26に至る光の変化との関係を示す説明図である。
図9】パターンA−cの例における光のフィルタ制御を示す説明図である。
図10】パターンA−dの例における励起光カットフィルタ22,24の設定と、光源装置3から出射され撮像素子25,26に至る光の変化との関係を示す説明図である。
図11】パターンA−dの例における光のフィルタ制御を示す説明図である。
図12】本発明の第2の実施の形態を示す説明図である。
図13】本発明の第3の実施の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1Aは本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡装置を含む内視鏡システムを示すブロック図である。
【0012】
内視鏡システム1は、図1Aに示すように、被検体内に挿入されるとともに、当該被検体内における生体組織等の被写体を撮像して撮像信号として出力するように構成された内視鏡装置2と、当該被写体を照明するための照明光を内視鏡装置2に供給するように構成された光源装置3と、内視鏡装置2から出力される撮像信号に対して信号処理を施すことにより観察画像等を生成して出力するように構成されたビデオプロセッサ4と、ビデオプロセッサ4から出力される観察画像等を画面上に表示するように構成されたモニタ5と、を有している。
【0013】
内視鏡装置2は、細長の挿入部6を備えた光学視管2Aと、光学視管2Aの接眼部7に対して着脱可能なカメラユニット2Bと、を有して構成されている。光学視管2Aは、被検体内に挿入される細長の挿入部6と、挿入部6の基端部に設けられた把持部8と、把持部8の基端部に設けられた接眼部7と、を有して構成されている。
【0014】
光源装置3は、白色光発生部31と、励起光発生部32と、ダイクロイックミラー33及び34と、集光レンズ35と、光源制御部36と、を有して構成されている。
【0015】
白色光発生部31は、例えば、広帯域な白色光を発するキセノンランプまたはLED等を具備して構成されている。また、白色光発生部31は、光源制御部36の制御に応じて点灯状態または消灯状態に切り替わるように構成されている。また、白色光発生部31は、光源制御部36の制御に応じた光量を具備する白色光を発生するように構成されている。
【0016】
なお、本実施の形態においては、光源装置3の代わりに、例えば、図1Bに示すような構成を有する光源装置3Aを用いて内視鏡システム1を構成してもよい。
【0017】
光源装置3Aは、図1Bに示すように、キセノンランプ71と、フィルタ切替装置72と、集光レンズ73と、光源制御部74と、を有して構成されている。キセノンランプ71は、例えば、可視光から赤外帯域(2つの励起光波長帯域)を含む広帯域光であるBL光を発するように構成されている。また、キセノンランプ71は、光源制御部74の制御に応じて点灯状態または消灯状態に切り替わるように構成されている。また、キセノンランプ71は、点灯状態において、光源制御部74の制御に応じた光量のBL光を発生するように構成されている。
【0018】
フィルタ切替装置72は、キセノンランプ71から発せられる光の光路を垂直に横切るように設けられた回転フィルタ72Aと、光源制御部74の制御に応じて回転駆動することにより、キセノンランプ71から発せられる光の光路上に介挿するフィルタを回転フィルタ72Aの各フィルタのうちの1つに切り替えるモータ72Bと、を有して構成されている。
【0019】
図1C図1Bの光源装置に設けられた回転フィルタの構成の一例を示す説明図である。回転フィルタ72Aは、例えば、円板形状を具備して形成されている。また、回転フィルタ72Aには、例えば、図1Cに示すように、白色光観察用フィルタ721と、蛍光観察用フィルタ722と、が設けられている。白色光観察用フィルタ721は、例えば、可視光帯域に含まれる光を透過させる一方で、可視光帯域以外の波長帯域に含まれる光を遮断するような光学特性を具備して形成されている。
【0020】
蛍光観察用フィルタ722は、例えば、蛍光観察に用いる所定の波長帯域に含まれる光を透過させる一方で、当該所定の波長帯域以外の波長帯域に含まれる光を遮断するような光学特性を具備して形成されている。なお、蛍光観察用フィルタ722は、蛍光観察に用いる所定の波長帯域として複数の波長帯域を透過させることができるように構成されていてもよい。
【0021】
すなわち、フィルタ切替装置72は、光源制御回路74の制御に応じてモータ72Bを回転駆動することにより、白色光観察用フィルタ721及び蛍光観察用フィルタ722のうちの一方のフィルタをキセノンランプ71から発せられる光の光路上に介挿させつつ、当該一方のフィルタとは異なる他方のフィルタを当該光路上から退避させることができるように構成されている。
【0022】
集光レンズ73は、フィルタ切替装置72を経て入射した光を集光してライトガイド13へ出射するように構成されている。光源制御部74は、ビデオプロセッサ4の制御部53から出力される照明制御信号に基づき、キセノンランプ71及びフィルタ切替装置72に対する制御を行うように構成されている。
【0023】
具体的には、光源制御部74は、制御部53から出力される照明制御信号に基づき、例えば、内視鏡システム1の観察モードが白色光観察モードに設定されたことを検知した際に、所定の光量のBL光を発生させるための制御をキセノンランプ71に対して行うとともに、キセノンランプ71から発せられる光の光路上に白色光観察用フィルタ721を介挿させるための制御をフィルタ切替装置72のモータ72Bに対して行うように構成されている。また、光源制御部74は、制御部53から出力される照明制御信号に基づき、例えば、内視鏡システム1の観察モードが蛍光観察モードに設定されたことを検知した際に、所定の光量のBL光を発生させるための制御をキセノンランプ71に対して行うとともに、キセノンランプ71から発せられる光の光路上に蛍光観察用フィルタ722を介挿させるための制御をフィルタ切替装置72のモータ72Bに対して行うように構成されている。
【0024】
励起光発生部32は、例えば、被検体内に投与される複数の蛍光薬剤の励起波長をそれぞれ含む複数の所定の波長帯域の光(励起光)をそれぞれ発する複数のLED等を具備して構成されている。また、励起光発生部32は、光源制御部36の制御に応じて点灯状態または消灯状態に切り替わるように構成されている。また、励起光発生部32は、光源制御部36の制御に応じた光量の励起光を発生するように構成されている。
【0025】
ダイクロイックミラー33は、例えば、白色光発生部31から発せられる白色光を集光レンズ35側へ透過させるとともに、励起光発生部32から発せられる励起光を集光レンズ35側へ反射するような光学特性を具備して形成されている。
【0026】
ダイクロイックミラー34は、例えば、励起光発生部32から発せられる励起光をダイクロイックミラー33側へ反射するような光学特性を具備して形成されている。
【0027】
集光レンズ35は、ダイクロイックミラー33を経て入射される光を集光してライトガイド13へ出射するように構成されている。
【0028】
光源制御部36は、ビデオプロセッサ4から出力される照明制御信号に応じて白色光発生部31及び励起光発生部32に対する制御を行うように構成されている。
【0029】
光学視管2Aの挿入部6の内部には、ケーブル13aを介して供給される照明光を伝送するためのライトガイド11が挿通されている。ライトガイド11の出射端部は、挿入部6の先端部における照明レンズ15の近傍に配置されている。また、ライトガイド11の入射端部は、把持部8に設けられたライトガイド口金12に配置されている。
【0030】
ケーブル13aの内部には、光源装置3から供給される照明光を伝送するためのライトガイド13が挿通されている。また、ケーブル13aの一方の端部には、ライトガイド口金12に対して着脱可能な接続部材(不図示)が設けられている。また、ケーブル13aの他方の端部には、光源装置3に対して着脱可能なライトガイドコネクタ14が設けられている。
【0031】
挿入部6の先端面には、ライトガイド11により伝送された照明光を外部へ出射するための照明レンズ15が配置された照明窓(不図示)と、外部から入射される光に応じた光学像を得るための対物レンズ17が配置された対物窓(不図示)と、が相互に隣接して設けられている。
【0032】
挿入部6の内部には、対物レンズ17により得られた光学像を接眼部7へ伝送するためのリレーレンズ18が設けられている。接眼部7の内部には、リレーレンズ18により伝送された光学像を肉眼で観察可能とするための接眼レンズ19が設けられている。
【0033】
カメラユニット2Bは、光学部21、撮像素子25,26及び信号処理回路27を有している。光学部21は、接眼レンズ19を経て入射される被写体の戻り光から白色光画像を生成するための白色光を取り出すと共に、接眼レンズ19を経て入射される被写体の戻り光から蛍光画像を生成するための蛍光を取り出すようになっている。光学部21によって取り出された白色光は白色光画像を生成する撮像素子25の撮像面に入射され、光学部21によって取り出された蛍光は蛍光画像を生成する撮像素子26の撮像面に入射されるようになっている。
【0034】
撮像素子25は、例えば、原色系または補色系のカラーフィルタを撮像面に設けたカラーCCDにより構成されている。また、撮像素子25は、ビデオプロセッサ4から出力される撮像素子駆動信号に応じた撮像動作を行うように構成されている。撮像素子25は、光学部21によって結像された白色光を撮像し、当該撮像した白色光に応じた白色光画像を生成して出力するように構成されている。
【0035】
撮像素子26は、例えば、高感度なモノクロCCDにより構成されている。また、撮像素子26は、ビデオプロセッサ4から出力される撮像素子駆動信号に応じた撮像動作を行うように構成されている。撮像素子26は、光学部21によって結像された蛍光を撮像し、当該撮像した蛍光に応じた蛍光画像を生成して出力するように構成されている。
【0036】
光学部21は、第1の励起光カットフィルタである励起光カットフィルタ22、第2の励起光カットフィルタである励起光カットフィルタ24と分光部であるビームスプリッタ23によって構成されている。励起光カットフィルタ22,24は、光源装置3から発せられる励起光の波長帯域をカットする分光特性を備えている。また、ビームスプリッタ23は、接眼レンズ19からの光が励起光カットフィルタ22を介して入射され、入射した光を白色光帯域とそれ以外とに分離する。ビームスプリッタ23は、分離した白色光帯域の光を通過させて撮像素子25に導き、通過させた波長帯域以外の波長帯域の光を反射して励起光カットフィルタ24を介して撮像素子26に導くようになっている。
【0037】
なお、本実施の形態においては、後述するように、励起光及び蛍光の波長帯域に応じて、励起光カットフィルタ22,24及びビームスプリッタ23の特性を適宜設定するようになっている。
【0038】
信号処理回路27は、撮像素子25から出力される白色光画像及び撮像素子26から出力される蛍光画像に対して、例えば、相関二重サンプリング処理、ゲイン調整処理、及び、A/D変換処理等の所定の信号処理を施すとともに、当該所定の信号処理を施した蛍光画像及び白色光画像を、信号ケーブル28を介してビデオプロセッサ4に出力するように構成されている。
【0039】
ビデオプロセッサ4の撮像素子駆動部41は、例えば、ドライバ回路等を具備して構成されている。撮像素子駆動部41は、制御部53の制御に応じた撮像素子駆動信号を生成して出力するように構成されている。画像入力部42は、例えば、バッファメモリ等を具備し、カメラユニット2Bの信号処理回路27から順次出力される画像を1フレーム分蓄積するとともに、当該蓄積した画像を1フレーム分ずつ画像処理部46に出力するように構成されている。また、画像入力部42は、制御部53の制御に応じ、蓄積した白色光画像を1フレーム分ずつ画像処理部46に出力するように構成されている。また、画像入力部42は、制御部53の制御に応じ、蓄積した蛍光画像を1フレーム分ずつ画像処理部46に出力するように構成されている。
【0040】
画像処理部46は、例えば、所定の画像処理を行うための画像処理回路等を具備して構成されている。また、画像処理部46は、制御部53の制御に応じ、画像入力部42から1フレーム分ずつ順次出力される白色光画像に対して所定の画像処理を施すことにより白色光画像を生成し、当該生成した白色光画像をモニタ5に出力するように構成されている。また、画像処理部46は、制御部53の制御に応じ、画像入力部42から1フレーム分ずつ順次出力される蛍光画像に対して所定の画像処理を施すことにより蛍光画像を生成し、当該生成した蛍光画像をモニタ5に出力するように構成されている。
【0041】
制御部53は、例えば、CPU等のプロセッサにより構成することができる。制御部53は、図示しないメモリに記憶されたプログラムを読出し、読出したプログラムに従って各部を制御するように構成されていてもよい。入力I/F52は、ユーザの操作に応じた指示を行うことが可能な1以上の入力装置からの操作信号を受け付ける。制御部53は、入力I/F52を介して入力された操作信号に基づいて各部を制御するように構成されていてもよい。また、制御部53は、内視鏡システム1の観察モードに応じた照明光を出射させるための照明制御信号を生成して光源制御部36に出力するように構成されている。
【0042】
本実施の形態においては、制御部53は光源装置3を制御して、白色光の照射による白色光観察と、2種類の蛍光色素から発する蛍光による蛍光観察とを同時に行う同時観察モードで各部を制御することができるようになっている。即ち、この同時観察モードにおいては、制御部53は、白色光と2種類の蛍光色素の蛍光のための2種類の励起光とを発生するように、光源制御部36を制御する。また、光源装置として図1Bの光源装置3Aが採用される場合には、制御部53は、白色光の照射による白色光観察と、2種類の蛍光色素から発する蛍光による蛍光観察とを時分割に切換ながら実施するように各部を制御することができるようになっている。
【0043】
なお、本実施の形態においては、取得する2種類の蛍光のうち、少なくとも1種類の蛍光は可視光よりも長波長であるものとする。
【0044】
ところで、励起光の波長帯域が白色光の波長帯域(可視光の波長帯域)内に存在する場合と存在しない場合とがある。励起光の波長帯域が白色光の波長帯域内に存在する場合には、白色光画像の生成に際して、励起光の戻り光成分を白色光画像の作成に用いることが考えられる。なお、後述するように、励起光及び蛍光の波長帯域によっては、可視光のうち一部の波長帯域の成分を含まない光によって白色光画像を生成する場合もあるので、以下の説明では、可視光の一部の波長帯域を含まない光についても、白色光として説明することもある。
【0045】
励起光の波長帯域と白色光の波長帯域との関係によって、画像処理部46における白色光画像の生成パターンとしては、以下の3つのパターンA〜Cがある。本実施の形態においては、これらの3つのパターンA〜CのうちパターンA,Bの場合が適用可能である。なお、2種類の励起光のうち波長が長い方の励起光をL励起光といい、波長が短い方の励起光をS励起光というものとする。
【0046】
A…S,L励起光の戻り光成分を白色光画像の作成に使用しない
B…S,L励起光の戻り光成分のいずれか一方のみを白色光画像の作成に使用する
C…S,L励起光の戻り光成分の両方を白色光画像の作成に使用する。
【0047】
更に、パターンAには、以下の4つのパターンa〜dが考えられる。なお、2種類の蛍光のうち、波長が長い方の蛍光をL蛍光といい、波長が短い方の蛍光をS蛍光というものとする。
【0048】
A−a…S,L蛍光はいずれも可視光より長波長
A−b…S蛍光は青色(B)、L蛍光は可視光より長波長
A−c…S蛍光は緑色(G)、L蛍光は可視光より長波長
A−d…S蛍光は赤色(R)、L蛍光は可視光より長波長。
【0049】
また、パターンBにも、同様の4つのパターンa〜dが考えられる。
【0050】
B−a…S,L蛍光はいずれも可視光より長波長
B−b…S蛍光は青色(B)、L蛍光は可視光より長波長
B−c…S蛍光は緑色(G)、L蛍光は可視光より長波長
B−d…S蛍光は赤色(R)、L蛍光は可視光より長波長。
【0051】
本実施の形態においては、上述したパターンA−a〜A−d及びパターンB−a〜B−dにおいて、1つのビームスプリッタ23及び2種類の励起光カットフィルタ22,24を用いて、確実に白色光と2種類の蛍光とを分離して、高精度に白色光画像及び蛍光画像を取得することを可能にする。
【0052】
(白色光と2種類の蛍光の分離)
次に、このような構成の光学部21を用いて、白色光と2種類の蛍光とを分離する方法について、図2乃至図11を参照して説明する。図2図4図6図8及び図10は、それぞれパターンA−a,B−d,A−b〜A−dの例における励起光カットフィルタ22,24の設定と、光源装置3から出射され撮像素子25,26に至る光の変化との関係を示す説明図である。また、図3図5図7図9及び図11は、それぞれ、パターンA−a,B−d,A−b〜A−dの例における光のフィルタ制御を示す説明図である。
【0053】
ところで、一般的に、励起光カットフィルタは、励起光の波長成分をカットして、蛍光の波長成分を通過させる。このような励起光カットフィルタは、複数の膜を積層して構成する。なお、成膜の方法としては、イオンアシスト蒸着等の方法がある。そして、入射光と出射光との比の対数であるOD(光学濃度)値が大きくなるようにフィルタ特性を設計する。しかしながら、高いOD値を得るためには、つまり、フィルタ特性を急峻にして、確実に蛍光のみを通過させるようにするためには、積層する膜数を多くする必要がある。
【0054】
しかも、文献1の提案のように、1つの励起光カットフィルタで2つの波長帯域の励起光をカットするためには、2箇所にノッチを有するフィルタを構成する必要がある。ノッチフィルタとして十分な特性を得るためには、ロングパスフィルタショートパスフィルタに比べて、より多くの膜を積層して構成する必要がある。更に、2箇所にノッチを有するダブルノッチフィルタでは必要な膜数がシングルノッチフィルタに比べて極めて多くなる。
【0055】
積層する膜数が極めて多い場合には、膜厚誤差により、所望のOD値や波長特性が得にくくなる。しかも、膜数が多い場合にはフィルタ自体の変形が生じやすい。このため、文献1の提案では、所望の特性の励起光カットフィルタの製造歩留まりは極めて悪いという欠点があった。
【0056】
本実施の形態においては、パターンA−aについては、励起光カットフィルタ22,24として、1つのノッチ又はロングパス特性のフィルタによって構成することを可能にしている。これにより、パターンA−aの場合には、励起光カットフィルタ22,24としては、比較的膜数が少なく、製造歩留まりが高い製品を採用することが可能である。
【0057】
(パターンA−a)
図2に示すように、同時観察モードにおいては、光源装置3から白色光、S励起光及びL励起光を含む光が出射される。図3に示すように、パターンA−aにおいては、S,L励起光のいずれも、可視光より長波長であり、S励起光の波長帯域は可視光の波長帯域に連続した長波長側の帯域である。光源装置3からの光は、挿入部6のライトガイド11に伝送されて、照明レンズ15から被写体表面61に照射される。被写体表面61からの戻り光には、白色光、L,S励起光の戻り光(以下、単に白色光、L,S励起光という)の他に、L励起光によって発生するL蛍光及びS励起光によって発生するS蛍光が含まれる。
【0058】
なお、図3の光源装置3、励起光カットフィルタ22,24は、太線によって透過率が高い領域を示している。また、図3の最下段は一点鎖線、破線、実線、2点鎖線によって、それぞれ戻り光の青色帯域(Bch)、緑色帯域(Gch)、赤色帯域(Rch)及び近赤外帯域(IR)の感度特性を示している。図3に示すように、S励起光の長波長側に近赤外域のS蛍光(IRS)が発生し、L励起光の長波長側に近赤外域のL蛍光(IRL)が発生する。
【0059】
被写体からの戻り光は、接眼レンズ19を介して光学部21の励起光カットフィルタ22に入射する。この場合には、励起光カットフィルタ22は、L励起光の波長帯域にノッチ特性を有するノッチフィルタによって構成されており、入射光からL励起光成分を除去し、L励起光波長帯域以外の波長帯域を透過させる。こうして、この場合には、励起光カットフィルタ22を白色光、S励起光、S,L蛍光を含む光が通過してビームスプリッタ23に入射する。
【0060】
ビームスプリッタ23は、図3に示すように、可視光帯域を通過させ、それ以外の帯域を反射させる。こうして、撮像素子25には、可視光帯域である白色光が入射する。
【0061】
一方、ビームスプリッタ23は、可視光帯域以外の光については光軸を90度変化させて、励起光カットフィルタ24に出射する。図3に示すように、この場合には、励起光カットフィルタ24は、可視光及びS励起光を含む波長帯域をカットし、それ以外の波長帯域を通過させるロングパスフィルタにより構成される。即ち、励起光カットフィルタ24を通過する光は、S蛍光の波長帯域(近赤外帯域(IRS)とL蛍光以上の波長帯域(近赤外帯域(IRL))である。こうして、撮像素子26には、S蛍光及びL蛍光が入射する。
【0062】
このようにパターンA−aにおいては、励起光カットフィルタ22は可視光の波長帯域よりも長波長のL励起光をカットするノッチフィルタによって構成され、励起光カットフィルタ24は可視光の波長帯域を含みS励起光の波長帯域よりも短波長側をカットするロングパスフィルタによって構成される。文献1等の技術では、2種類の励起光をカットするために、2箇所にノッチ特性を有するダブルノッチフィルタを採用する必要があった。これに対し、本実施の形態においては、励起光カットフィルタ22,24は、シングルノッチフィルタ又はロングパスフィルタによって構成することができる。従って、各フィルタ22,24は、比較的少ない膜数で構成することができ、比較的高い歩留まりを得ることができる。
【0063】
仮に、励起光カットフィルタ22を、S励起光をカットするノッチフィルタによって構成した場合には、励起光カットフィルタ24においてL励起光をカットする必要が生じ、励起光カットフィルタ24もL励起光をカットするノッチフィルタによって構成する必要がある。この場合でも、シングルノッチフィルタはダブルノッチフィルタよりも少ない膜数で構成することは可能であるが、ロングパスフィルタよりも膜数は多くなる。この理由から、本実施の形態においては、入射光が先に入射される励起光カットフィルタ22は、L励起光をカットするノッチフィルタによって構成し、励起光カットフィルタ24については、可視光帯域を含むS励起光の波長帯域より短波長側をカットするロングパスフィルタによって構成するようにしている。これにより、特に、励起光カットフィルタ24については、膜数を十分に低減して、高い歩留まりを得ることができる。
【0064】
また、励起光カットフィルタ24に入射される光は、可視光以外の波長帯域を分離して反射させるビームスプリッタ23の出射光であり、励起光カットフィルタ24を、可視光帯域を含むS励起光の波長帯域より短波長側をカットするロングパスフィルタによって構成することにより、ビームスプリッタ23及び励起光カットフィルタ24の両方のフィルタによって、可視光をカットするようになっている。可視光は2つのフィルタによってカットされることから、励起光カットフィルタ24からは可視光(白色光)成分が十分に除去された光が出射される。これにより、撮像素子26によって得られる蛍光画像には、白色光による成分が含まれないので、高精度の蛍光画像が得られる。
【0065】
(パターンB−d)
図4及び図5はそれぞれ図2又は図3と同様の記載方法により記載したものであり、図4及び図5はパターンB−dにおける励起光カットフィルタ22,24及びビームスプリッタ23を通過する光を説明するものである。図5に示すように、パターンB−dにおいては、L励起光は可視光より長波長であり、S励起光の波長帯域は可視光の波長帯域中の最も長波長側の帯域である。被写体表面61からの戻り光には、白色光、L,S励起光、L蛍光及びS蛍光が含まれる。図5に示すように、S励起光の長波長側に赤色のS蛍光(R)が発生し、L励起光の長波長側に近赤外域のL蛍光(IR)が発生する。
【0066】
被写体からの戻り光は、励起光カットフィルタ22に入射する。この場合には、励起光カットフィルタ22は、L励起光の波長帯域にノッチ特性を有するノッチフィルタによって構成されており、入射光からL励起光成分を除去し、L励起光波長帯域以外の波長帯域を透過させる。こうして、この場合には、励起光カットフィルタ22を白色光、S励起光、L,S蛍光を含む光が通過してビームスプリッタ23に入射する。
【0067】
ビームスプリッタ23は、図5に示すように、可視光波長帯域及びS励起光波長帯域を通過させ、それ以外の帯域を反射させる。こうして、撮像素子25には、可視光及びS励起光波長帯域による白色光が入射する。
【0068】
一方、ビームスプリッタ23は、可視光及びS励起光波長帯域以外の光については光軸を90度変化させて、励起光カットフィルタ24に出射する。図5に示すように、この場合には、励起光カットフィルタ24は、可視光及びS励起光を含む波長帯域をカットし、それ以外の波長帯域を通過させるロングパスフィルタにより構成される。即ち、励起光カットフィルタ24を通過する光は、赤色のS蛍光(IR)と近赤外帯域のL蛍光(IR)以上の波長帯域である。こうして、撮像素子26には、S蛍光及びL蛍光が入射する。
【0069】
このようにパターンB−dにおいては、励起光カットフィルタ22は可視光の波長帯域よりも長波長のL励起光をカットするノッチフィルタによって構成され、励起光カットフィルタ24は可視光の波長帯域を含みS励起光の波長帯域よりも短波長側をカットするロングパスフィルタによって構成される。従って、各フィルタ22,24は、比較的少ない膜数で構成することができ、比較的高い歩留まりを得ることができる。
【0070】
また、パターンB−dにおいても、入射光が先に入射される励起光カットフィルタ22は、L励起光をカットするノッチフィルタによって構成し、励起光カットフィルタ24については、可視光帯域を含むS励起光の波長帯域より短波長側をカットするロングパスフィルタによって構成するようにしている。これにより、特に、励起光カットフィルタ24については、膜数を十分に低減して、高い歩留まりを得ることができる。
【0071】
そして本実施の形態においては、励起光カットフィルタ24に入射される光は、可視光及びS励起光以外の波長帯域を分離して反射させるビームスプリッタ23の出射光であり、励起光カットフィルタ24を、可視光帯域を含むS励起光の波長帯域より短波長側をカットするロングパスフィルタによって構成することにより、ビームスプリッタ23及び励起光カットフィルタ24の両方のフィルタによって、可視光をカットするようになっている。可視光は2つのフィルタによってカットされることから、励起光カットフィルタ24からは可視光(白色光)成分が十分に除去された光が出射される。これにより、撮像素子26によって得られる蛍光画像には、白色光による成分が含まれないので、高精度の蛍光画像が得られる。
【0072】
(パターンA−b)
図6及び図7はそれぞれ図2又は図3と同様の記載方法により記載したものであり、図6及び図7はパターンA−bにおける励起光カットフィルタ22,24及びビームスプリッタ23を通過する光を説明するものである。図7に示すように、パターンA−bにおいては、L励起光のみが可視光より長波長であり、S励起光の波長帯域は可視光の波長帯域中の最も単波長側の帯域である。被写体表面61からの戻り光には、白色光、L,S励起光、L蛍光及びS蛍光が含まれる。図7に示すように、S励起光の長波長側に青色のS蛍光(B)が発生し、L励起光の長波長側に近赤外域のL蛍光(IR)が発生する。
【0073】
被写体からの戻り光は、励起光カットフィルタ22に入射する。この場合には、励起光カットフィルタ22は、S励起光の波長帯域及びL励起光の波長帯域を含む帯域にノッチ特性を有するダブルノッチフィルタによって構成されており、入射光からS,L励起光成分を除去し、それ以外の波長帯域を透過させる。こうして、この場合には、励起光カットフィルタ22を白色光、L,S蛍光を含む光が通過してビームスプリッタ23に入射する。
【0074】
ビームスプリッタ23は、図7に示すように、青色より長波長側の可視光波長帯域を通過させ、それ以外の帯域を反射させる。こうして、撮像素子25には、青色より長波長側の可視光による白色光が入射する。
【0075】
一方、ビームスプリッタ23は、青色より長波長側の可視光の波長帯域以外の光については光軸を90度変化させて、励起光カットフィルタ24に出射する。図7に示すように、この場合には、励起光カットフィルタ24は、可視光及びS,L励起光を含む波長帯域をカットし、青色のS蛍光(B)の波長帯域及び近赤外帯域のL蛍光(IR)より長波長側の波長帯域を通過させる。即ち、励起光カットフィルタ24を通過する光は、青色のS蛍光(B)と近赤外帯域のL蛍光(IR)以上の波長帯域である。こうして、撮像素子26には、S蛍光及びL蛍光が入射する。
【0076】
このようにパターンA−bにおいては、励起光カットフィルタ24に入射される光は、青色より長波長側の可視光以外の波長帯域を分離して反射させるビームスプリッタ23の出射光であり、励起光カットフィルタ24には、可視光がカットされた光がビームスプリッタ23から入射される。更に、励起光カットフィルタ24は、青色のS蛍光(B)及び近赤外帯域のL蛍光(IR)より長波長の波長帯域のみを通過させるようになっており、励起光カットフィルタ24において可視光がカットされる。このように、ビームスプリッタ23及び励起光カットフィルタ24の両方のフィルタによって、可視光をカットするようになっており、励起光カットフィルタ24からは可視光(白色光)成分が十分に除去された光が出射される。これにより、撮像素子26によって得られる蛍光画像には、白色光による成分が含まれないので、高精度の蛍光画像が得られる。
【0077】
(パターンA−c)
図8及び図9はそれぞれ図2又は図3と同様の記載方法により記載したものであり、図8及び図9はパターンA−cにおける励起光カットフィルタ22,24及びビームスプリッタ23を通過する光を説明するものである。図9に示すように、パターンA−cにおいては、L励起光のみが可視光より長波長であり、S励起光の波長帯域は可視光の波長帯域中の緑色帯域の短波長側の帯域である。被写体表面61からの戻り光には、白色光、L,S励起光、L蛍光及びS蛍光が含まれる。図9に示すように、S励起光の長波長側に緑色のS蛍光(G)が発生し、L励起光の長波長側に近赤外域のL蛍光(IR)が発生する。
【0078】
被写体からの戻り光は、励起光カットフィルタ22に入射する。この場合には、励起光カットフィルタ22は、S励起光の波長帯域にノッチ特性を有するシングルノッチフィルタによって構成されており、入射光からS励起光成分を除去し、それ以外の波長帯域を透過させる。こうして、この場合には、励起光カットフィルタ22を白色光、L励起光、L,S蛍光を含む光が通過してビームスプリッタ23に入射する。
【0079】
ビームスプリッタ23は、図9に示すように、緑色の波長帯域を除く可視光波長帯域を通過させ、それ以外の帯域を反射させる。こうして、撮像素子25には、緑色の波長帯域を除く可視光による白色光が入射する。
【0080】
一方、ビームスプリッタ23は、緑色を除く可視光の波長帯域以外の光については光軸を90度変化させて、励起光カットフィルタ24に出射する。図9に示すように、この場合には、励起光カットフィルタ24は、可視光及びL励起光を含む波長帯域をカットし、緑色のS蛍光(G)の波長帯域及び近赤外帯域のL蛍光(IR)より長波長側の波長帯域を通過させる。即ち、励起光カットフィルタ24を通過する光は、緑色のS蛍光(G)と近赤外帯域のL蛍光(IR)以上の波長帯域である。こうして、撮像素子26には、S蛍光及びL蛍光が入射する。
【0081】
このようにパターンA−cにおいては、励起光カットフィルタ24に入射される光は、緑色を除く可視光以外の波長帯域を分離して反射させるビームスプリッタ23の出射光であり、励起光カットフィルタ24には、可視光がカットされた光がビームスプリッタ23から入射される。更に、励起光カットフィルタ24は、緑色のS蛍光(G)及び近赤外帯域のL蛍光(IR)より長波長の波長帯域のみを通過させるようになっており、励起光カットフィルタ24において可視光がカットされる。このように、ビームスプリッタ23及び励起光カットフィルタ24の両方のフィルタによって、可視光をカットするようになっており、励起光カットフィルタ24からは可視光(白色光)成分が十分に除去された光が出射される。これにより、撮像素子26によって得られる蛍光画像には、白色光による成分が含まれないので、高精度の蛍光画像が得られる。
【0082】
(パターンA−d)
図10及び図11はそれぞれ図2又は図3と同様の記載方法により記載したものであり、図10及び図11はパターンA−dにおける励起光カットフィルタ22,24及びビームスプリッタ23を通過する光を説明するものである。図11に示すように、パターンA−dにおいては、S励起光及びL励起光のいずれも可視光より長波長である。なお、S励起光の波長帯域は可視光の波長帯域に連続した長波長側の帯域である。被写体表面61からの戻り光には、白色光、L,S励起光、L蛍光及びS蛍光が含まれる。図11に示すように、S励起光の長波長側に赤のS蛍光(R)が発生し、L励起光の長波長側に近赤外域のL蛍光(IR)が発生する。
【0083】
被写体からの戻り光は、励起光カットフィルタ22に入射する。この場合には、励起光カットフィルタ22は、S励起光の波長帯域にノッチ特性を有するシングルノッチフィルタによって構成されており、入射光からS励起光成分を除去し、それ以外の波長帯域を透過させる。こうして、この場合には、励起光カットフィルタ22を白色光、L励起光、L,S蛍光を含む光が通過してビームスプリッタ23に入射する。
【0084】
ビームスプリッタ23は、図11に示すように、可視光の波長帯域及びS励起光の波長帯域を含む波長帯域を通過させ、それ以外の帯域を反射させる。こうして、撮像素子25には、可視光及びS励起光による白色光が入射する。
【0085】
一方、ビームスプリッタ23は、可視光及びS励起光の波長帯域以外の光については光軸を90度変化させて、励起光カットフィルタ24に出射する。図11に示すように、この場合には、励起光カットフィルタ24は、可視光及びS,L励起光を含む波長帯域をカットし、赤色のS蛍光(R)の波長帯域及び近赤外帯域のL蛍光(IR)より長波長側の波長帯域を通過させる。即ち、励起光カットフィルタ24を通過する光は、赤色のS蛍光(R)と近赤外帯域のL蛍光(IR)以上の波長帯域である。こうして、撮像素子26には、S蛍光及びL蛍光が入射する。
【0086】
このようにパターンA−dにおいては、励起光カットフィルタ24に入射される光は、可視光及びS励起光の波長帯域以外の波長帯域を分離して反射させるビームスプリッタ23の出射光であり、励起光カットフィルタ24には、可視光がカットされた光がビームスプリッタ23から入射される。更に、励起光カットフィルタ24は、赤色のS蛍光(R)及び近赤外帯域のL蛍光(IR)より長波長の波長帯域のみを通過させるようになっており、励起光カットフィルタ24において可視光がカットされる。このように、ビームスプリッタ23及び励起光カットフィルタ24の両方のフィルタによって、可視光をカットするようになっており、励起光カットフィルタ24からは可視光(白色光)成分が十分に除去された光が出射される。これにより、撮像素子26によって得られる蛍光画像には、白色光による成分が含まれないので、高精度の蛍光画像が得られる。
【0087】
このように本実施の形態においては、分光部は、可視光の波長帯域を通過させると共に、通過させた波長帯域以外の波長帯域を反射させる。被写体から分光部を介して白色光観察用の撮像素子に至る光路上には、被写体と分光部との間に第1の励起光カットフィルタが配置される。この第1の励起光カットフィルタによって、白色光観察と2種類の蛍光観察を同時に行う同時観察モードにおける2種類の蛍光を発生させる2種類の励起光のうちの少なくとも一方の波長帯域をカットする。分光部から反射された光には、分光部によりカットされる可視光の波長帯域と第1の励起光カットフィルタによってカットされる励起光の波長帯域とは含まれない。更に、分光部から反射された光は、第1の励起光カットフィルタでは除去されていない励起光の波長帯域と可視光の波長帯域とをカットする第2の励起光カットフィルタを介して蛍光観察用の撮像素子に入射する。蛍光観察用の撮像素子に入射する光は、第1及び第2の励起光カットフィルタよって2種類の励起光がカットされていると共に、分光部及び第2の励起光カットフィルタによって、可視光がカットされている。即ち、可視光は、分光部及び第2の励起光カットフィルタの2つのフィルタによってカットされた後蛍光観察用の撮像素子に入射されており、白色光の影響を受けない高精度の蛍光観察が可能である。
【0088】
なお、2種類の励起光及び2種類の蛍光の波長帯域と可視光の波長帯域との関係によっては、第2の励起光カットフィルタをシングルノッチフィルタで構成し、第2の励起光カットフィルタをロングパスフィルタで構成することもできる。この場合には、2種類の励起光をカットするフィルタとして膜数が少ないフィルタを採用することができ、製造歩留まりが良好となる。
【0089】
(第2の実施の形態)
図12は本発明の第2の実施の形態を示す説明図である。図12において図2と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。図12図2と同一の記載方法によって第2の実施の形態を示すものである。図12はパターンA−dに対応した例を示しているが、第2の実施の形態は上述した他のパターンにも同様に適用可能である。
【0090】
本実施の形態は励起光カットフィルタ22に代えて励起光カットフィルタ71を採用した点が第1の実施の形態と異なるのみであり、他の構成は図1Aと同様である。励起光カットフィルタ71は、配置位置が励起光カットフィルタ22と異なるのみである。励起光カットフィルタ71は、戻り光がビームスプリッタ23に入射されるまでの光路上であって、光学視管2A内に配置されており、励起光カットフィルタ22と同様の特性を有して、戻り光からS励起光及びL励起光の少なくとも一方を除去し、除去した波長帯域以外の波長帯域の成分を通過させる。
【0091】
他の構成及び作用は第1の実施の形態と同様である。本実施の形態においては、第1の実施の形態と同様の効果が得られると共に、励起光カットフィルタを有する光学視管2Aを用いる場合には、カメラユニット2Bから1つの励起光フィルタを省略することができるという利点がある。
【0092】
(第3の実施の形態)
図13は本発明の第3の実施の形態を示す説明図である。図13において図2と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。図13図2と同一の記載方法によって第3の実施の形態を示すものである。図13はパターンA−dに対応した例を示しているが、第3の実施の形態は上述した他のパターンにも同様に適用可能である。
【0093】
本実施の形態は励起光カットフィルタ22に代えて励起光カットフィルタ72を採用した点が第1の実施の形態と異なるのみであり、他の構成は図1Aと同様である。励起光カットフィルタ72は、配置位置が励起光カットフィルタ22と異なるのみである。励起光カットフィルタ72は、ビームスプリッタ23と励起光カットフィルタ24との間の光路上に配置される。励起光カットフィルタ24は励起光カットフィルタ22と同様の特性を有して、ビームスプリッタ23の出射光からS励起光の波長帯域及びL励起光の波長帯域の少なくとも一方の波長帯域を除去し、除去した波長帯域以外の波長帯域の成分を通過させる。
【0094】
他の構成及び作用は第1の実施の形態と同様である。本実施の形態においては、被写体表面61からの戻り光は、ビームスプリッタ23、励起光カットフィルタ72及び励起光カットフィルタ24を通過して撮像素子26に入射されることから、撮像素子26に入射される光については、第1の実施の形態と同様である。従って、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
以上の実施の形態においては、カメラユニット2Bに光学部21、撮像素子25、26及び信号処理回路27が設けられているが、代わりに被検体に挿入される細長の挿入部内に設けてもよい。また、光学部21、撮像素子25、26及び信号処理回路27は、挿入部内であれば、先端部でも基端部でも、或いは中間部でも、配設可能である。さらに、挿入部は湾曲部を有する可撓管のタイプであってもよい。以上のいずれの場合においても、第1、第2及び第3の実施の形態と同様の効果を有する。
【0096】
本発明は、上記各実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0097】
本出願は、2015年9月18日に日本国に出願された特願2015−185489号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲に引用されるものとする。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13