特許第6234654号(P6234654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6234654
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】紙製バリア材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20171113BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20171113BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20171113BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20171113BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B32B27/10
   B32B27/00 H
   B32B27/30 102
   B65D65/40 D
   D21H19/82
   D21H27/30 C
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-546258(P2017-546258)
(86)(22)【出願日】2017年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2017012500
【審査請求日】2017年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-62934(P2016-62934)
(32)【優先日】2016年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-216063(P2016-216063)
(32)【優先日】2016年11月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】岡本 匡史
(72)【発明者】
【氏名】大石 有理
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】福永 正明
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/069788(WO,A1)
【文献】 特開平10−249978(JP,A)
【文献】 特開2008−87784(JP,A)
【文献】 特開2000−303386(JP,A)
【文献】 特開2014−237309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 65/40、81/24
D21H 11/00−27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層がこの順で設けられた紙製バリア材料において、前記水蒸気バリア層が水蒸気バリア性樹脂及び撥水剤を含有し、且つ前記ガスバリア層が水溶性高分子及び界面活性剤を含有することを特徴とする紙製バリア材料。
【請求項2】
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の紙製バリア材料。
【請求項3】
前記界面活性剤が、アセチレンジオール系界面活性剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙製バリア材料。
【請求項4】
前記水蒸気バリア層の濡れ張力とガスバリア層を形成させる塗料の表面張力の差が、±20mN/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の紙製バリア材料。
【請求項5】
前記紙製バリア材料の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂を主成分としたラミネート層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製バリア材料。
【請求項6】
前記紙製バリア材料の少なくとも片面に生分解性を有さないバイオプラスチックを主成分としたラミネート層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製バリア材料。
【請求項7】
前記紙製バリア材料の少なくとも片面に生分解性を有するバイオプラスチックを主成分としたラミネート層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製バリア材料。
【請求項8】
前記ラミネート層が、押し出しラミネート層あるいはドライラミネート層であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の紙製バリア材料。
【請求項9】
前記紙製バリア材料の少なくとも一方の面にバリアフィルムが貼合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製バリア材料。
【請求項10】
前記バリアフィルムが蒸着フィルムであることを特徴とする請求項9に記載の紙製バリア材料。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の紙製バリア材料を包装用途に使用する紙製バリア包装材料。
【請求項12】
請求項1〜10に記載の紙製バリア材料を包装材用途に使用する紙製バリア包装材料。
【請求項13】
請求項1〜10に記載の紙製バリア材料を容器用途に使用する紙製バリア包装材料。
【請求項14】
請求項1〜10に記載の紙製バリア材料をカップ用途に使用する紙製バリア包装材料。
【請求項15】
紙基材上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層がこの順で設けられた紙製バリア材料において、前記水蒸気バリア層が水蒸気バリア性樹脂及び撥水剤を含有し、且つ前記ガスバリア層が水溶性高分子及び界面活性剤を含有する紙製バリア材料の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂を主成分としたラミネート層を設けた紙製バリア材料の製造方法であって、前記ラミネート層が、溶融押し出しラミネート法あるいはドライラミネート法によって設けられることを特徴とする紙製バリア材料の製造方法。
【請求項16】
前記ガスバリア層が水系塗料の塗工によって設けられることを特徴とする請求項15に記載の紙製バリア材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品などの包装材または容器やカップなど用いられる紙製バリア材料に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製の包装材料にガスバリア性(特に、酸素バリア性)を付与することは、包装される各種製品をガスによる劣化、例えば酸素による酸化などから守るために重要である。
【0003】
従来から、紙製の包装材料へのガスバリア性の付与には、紙基材(原紙)上にガスバリア層として、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂をコーティングしたフィルム、更に酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルム等を紙基材(原紙)に押し出しラミネート、または、貼合する方法が主に用いられてきた。
【0004】
上記以外のガスバリア性を付与した紙製の包装材料としては、水溶性高分子と無機層状化合物からなるガスバリア層を有する紙製のガスバリア材料(特許文献1、特許文献2)、被覆層上に特定のビニルアルコール系重合体からなるバリア層を設けた紙製のガスバリア材料(特許文献2)などが開示されている。
【0005】
また、紙製の包装材料に耐水性(特に、水蒸気バリア性)を付与することも、包装される各種製品を水蒸気による劣化から守るために重要である。
【0006】
紙製の包装材料への水蒸気バリア性の付与として、紙基材上に水蒸気バリア性に優れる樹脂フィルム、あるいはこれらの水蒸気バリア性に優れる樹脂をコーティングしたフィルム等を紙基材に押し出しラミネート、または、貼合する方法が主に用いられてきた。
【0007】
これらの方法以外の水蒸気バリア性を付与した紙製の包装材料としては、合成樹脂ラテックス、ワックス及び無機微粒子からなる防湿層を有する包装用紙(特許文献3)が開示されている。
【0008】
さらに、紙製の包装材料にガスバリア性と水蒸気バリア性の両方を付与した包装材料としては、紙基材にガスバリア性を有する樹脂と水蒸気バリア性を有する樹脂をラミネートした包装材料が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−184138号公報
【特許文献2】特開2003−094574号公報
【特許文献3】特開2005−162213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、紙基材(原紙)にガスバリア性を有する樹脂と水蒸気バリア性を有する樹脂をラミネートした包装材料は、ラミネート可能な樹脂の種類などに制限があるため、様々な要求品質に対応できないといった問題があった。
【0011】
一方、紙基材(原紙)にガスバリア性を有する樹脂、水蒸気バリア性を有する樹脂をコーティングすることによって付与した包装材料は、使用できる樹脂の種類などの制限が少ないため、様々な要求品質への対応は可能になる。しかしながら、ガスバリア性、水蒸気バリア性の両方を付与した包装材料、例えば、特許文献1あるいは特許文献2のガスバリア性を有する包装材料の上に特許文献3の防湿層を設けた場合、良好な水蒸気バリア性は得られるもののガスバリア性が得られなくなる問題があった。また、特許文献3の水蒸気バリア層を有する防湿紙の上に特許文献1あるいは特許文献2のガスバリア層を設ける場合、防湿層の表面張力が低く、はじきによりガスバリア層が均一に形成されないため、十分なガスバリア性を得ることができなかった。
【0012】
そこで、本発明は、紙基材上に、水蒸気バリア層、及びガスバリア層をこの順に設けた、優れたガスバリア性と水蒸気バリア性を併せ持つ紙製バリア材料を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の〔1〕〜〔11〕を提供するものである。
〔1〕 紙基材上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層がこの順で設けられた紙製バリア材料において、前記水蒸気バリア層が水蒸気バリア性樹脂及び撥水剤を含有し、且つ前記ガスバリア層が水溶性高分子及び界面活性剤を含有することを特徴とする紙製バリア材料。
〔2〕 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする〔1〕に記載の紙製バリア材料。
〔3〕 前記界面活性剤が、アセチレンジオール系界面活性剤であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の紙製バリア材料。
〔4〕 前記水蒸気バリア層の濡れ張力とガスバリア層を形成させる塗料の表面張力の差が、±20mN/mであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の紙製バリア材料。
〔5〕 前記紙製バリア材料の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂を主成分としたラミネート層が設けられていることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の紙製バリア材料。
〔6〕 前記ラミネート層が、押し出しラミネート層あるいはドライラミネート層であることを特徴とする〔5〕に記載の紙製バリア材料。
[7] 前記紙製バリア材料の少なくとも一方の面にバリアフィルムが貼合されていることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の紙製バリア材料。
[8] 前記バリアフィルムが蒸着フィルムであることを特徴とする[7]に記載の紙製バリア材料。
[9] [1]〜[8]に記載の紙製バリア材料を包装用途に使用する紙製バリア包装材料。
[10] 紙基材上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層がこの順で設けられた紙製バリア材料において、前記水蒸気バリア層が水蒸気バリア性樹脂及び撥水剤を含有し、且つ前記ガスバリア層が水溶性高分子及び界面活性剤を含有する紙製バリア材料の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂を主成分としたラミネート層を設けた紙製バリア材料の製造方法であって、前記ラミネート層が、溶融押し出しラミネート法あるいはドライラミネート法によって設けられることを特徴とする紙製バリア材料の製造方法。
[11] 前記ガスバリア層が水系塗料の塗工によって設けられることを特徴とする[10]に記載の紙製バリア材料の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、紙基材上に、水蒸気バリア層、及びガスバリア層をこの順に設けた、優れたガスバリア性と水蒸気バリア性を併せ持つ紙製バリア材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、紙基材(以下、「原紙」ということがある。)上に複数の塗工層が設けられた紙製バリア材料であって、前記複数の塗工層が紙基材上に形成された水蒸気バリア層、前記水蒸気バリア層上に形成された水溶性高分子を含有するガスバリア層をこの順に含んでおり、前記水蒸気バリア層が水蒸気バリア性樹脂及び撥水剤を含有し、且つガスバリア層が水溶性高分子及び界面活性剤を含有することを特徴とする紙製バリア材料に関するものである。
【0016】
本発明の紙製バリア材料が優れた水蒸気バリア性およびガスバリア性を併せ持つ理由は次のように推測される。
【0017】
ガスバリア層に用いられるガスバリア性を有する樹脂としては下記に例示するように水溶性高分子が一般的であり、紙基材上にガスバリア層、水蒸気バリア層をこの順に設けた場合、紙基材中の水分や紙基材を経由して浸透する空気中の水分などにより、水溶性高分子を含有するガスバリア層が劣化する。一方、紙基材上に、耐水性の良好な樹脂を含有する水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に設けた場合、水蒸気バリア層が紙基材中の水分などのガスバリア層への影響(劣化)を防止することができる。このため、本発明の紙製バリア材料は良好な水蒸気バリア性およびガスバリア性を有する。
【0018】
(紙基材)
本発明において紙基材とは、パルプ、填料、各種助剤からなるシートである。パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)などの化学パルプ、ストーングラインドパルプ(SGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)などの機械パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維など用いることができ、これらを適宜配合して用いることが可能である。これらの中でも、原紙中への異物混入が発生し難い、使用後の紙容器を古紙原料に供してリサイクル使用する際に経時変色が発生し難い、高い白色度を有するため印刷時の面感が良好となり包装材料として使用した場合の使用価値が高くなるなどの理由から化学パルプを用いることが好ましく、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を用いることがより好ましい。
【0019】
填料としてはホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0020】
紙基材の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン、円網フォーマーマシンを用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して紙基材を製造することができる。また、紙基材は一般の塗工紙原紙に用いられる坪量が20g/m以上500g/m以下のものが好ましい。さらに、紙基材の表面を各種薬剤で処理することが可能である。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酸素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。紙基材の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリング式サイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
【0021】
(水蒸気バリア層)
本発明の紙製バリア材料において、水蒸気バリア層に水蒸気バリア性樹脂、及び撥水剤が含有されていることが重要である。
【0022】
本発明において、水蒸気バリア性樹脂(以下、樹脂ということがある。)としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、スチレン・アクリル系共重合体が水蒸気バリア性の点から好ましい。なお、水蒸気バリア性に問題がない程度であれば、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体などの水溶性高分子を上記樹脂と併用することも可能である。
【0023】
本発明の水蒸気バリア層に含有される撥水剤としては、アルカン化合物を主体としたパラフィン系撥水剤、カルナバやラノインなどの動植物由来の天然油脂系撥水剤、シリコーンまたはシリコーン化合物を含有したシリコーン含有系撥水剤、フッ素化合物を含有したフッ素含有系撥水剤など例示することができ、これらの中では水蒸気バリア性能発現の観点から、パラフィン系撥水剤を使用することが好ましい。また、これらの撥水剤を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。
【0024】
本発明において、撥水剤の配合量は特に限定されるものではないが、水蒸気バリア性樹脂と撥水剤の配合比率(乾燥重量)は、水蒸気バリア性樹脂100重量部(乾燥重量)に対して、撥水剤(乾燥重量)1重量部以上1000重量部以下であることが好ましい。撥水剤の配合量が1重量部以上100重量部未満であると、ガスバリア層が均一に形成されやすくなり、優れたガスバリア性を発現することができる。また、撥水剤の配合量が100重量部以上1000重量部以下であると、撥水効果がより一層高まるため、優れた水蒸気バリア性を発現することができる。一方で、撥水剤の配合量が1重量部未満であると十分な水蒸気バリア性が得られない可能性がある。更に、1000重量部を超えた場合には、水蒸気バリア層上に設けるガスバリア層が均一に形成できないため、十分なガスバリア性が発現されない可能性がある。
【0025】
本発明において、水蒸気バリア層に顔料を含有させることは、水蒸気バリア層とガスバリア層の密着性の点から好ましい。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの顔料の中でも、水蒸気バリア性向上、ガス(酸素)バリア層の浸透抑制の両方の観点から、形状が扁平なカオリン、マイカ、タルクなどの無機顔料が好ましく、平均粒子径5μm以上且つアスペクト比10以上の無機顔料を単独または2種類以上混合して使用することが好ましい。
【0026】
また、更なる水蒸気バリア性、及びガスバリア層との密着性の向上のために、上記の平均粒子径5μm以上且つアスペクト比10以上の顔料を含有する水蒸気バリア層に、平均粒子径5μm以下の顔料を含有させることが好ましい。重層的に存在する平均粒子径5μm以上且つアスペクト比10以上の顔料の間に平均粒子径5μm以下の顔料が入り込む構造となって、扁平な顔料の面に沿って移動を余儀なくされる水蒸気は、この小さな顔料粒子により移動が阻止されることとなる。つまり、水蒸気バリア層に扁平性と平均粒子径の異なる顔料を含有させた場合、水蒸気バリア層中で、隣接する扁平で大きな粒子径の顔料の間に形成される空隙に小さな粒子径の顔料が充填された状態となり、水蒸気は顔料を迂回して通過するため、小さな粒子径の顔料を混入していない水蒸気バリア層と比較して、高い水蒸気バリア性を発揮する。
【0027】
水蒸気バリア層に顔料を含有させる場合、樹脂と顔料の配合量は、顔料(乾燥重量)100重量部に対して、樹脂(乾燥重量)5重量部以上200重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは樹脂10重量部以上150重量部以下である。また、水蒸気バリア層には、樹脂、顔料の他、水溶性ポリマー、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料、架橋剤等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0028】
本発明において、水蒸気バリア層の塗工量は、乾燥重量で3g/m以上50g/m以下とすることが好ましく、5g/m以上40g/m以下であることがさらに好ましく、7g/m以上30g/m以下であることが特に好ましい。塗工量が3g/mより少ないと原紙を塗工液が完全に被覆することが困難となり、十分な水蒸気バリア性が得られないことや、ガスバリア層が紙基材に浸透するため、均一なガスバリア性が得られない問題がある。一方、50g/mより多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなり、操業面、コスト面の両方の観点より好ましくない。また、本発明において、水蒸気バリア性、ガスバリア層との密着性から、水蒸気バリア層の濡れ張力としては10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下であることがより好ましいい。
【0029】
(ガスバリア層)
本発明において、ガスバリア層に使用される水溶性高分子としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどを例示することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが好ましく、ポリビニルアルコールが更に好ましい。
【0030】
本発明において、ガスバリア層に顔料を含有させることはガスバリア性の点から好ましい。ガスバリア層に使用される顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト、マイカなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から無機顔料を使用することが好ましく、アスペクト比が10以上の無機顔料を使用することが更に好ましく、アスペクト比が30以上の無機顔料を使用することが更に好ましい。ガスバリア層に顔料を含有させた場合、酸素などのガスは顔料を迂回して通過する。このため、顔料を含有していない水溶性高分子からなるガスバリア層と比較して、良好な水蒸気バリア性および高湿度雰囲気下における優れたガスバリア性を有する。
【0031】
本発明において、ガスバリア層に含有する顔料と水溶性高分子の配合比率(乾燥重量)は顔料/水溶性高分子が1/100(重量部)以上1000/100(重量部)以下であることが好ましい。顔料の比率が上記範囲外であると充分なガスバリア性が発現しない。なお、本発明において、顔料を水溶性高分子中に配合する際に、顔料がスラリー化したものを添加し混合することが好ましい。
【0032】
本発明において、ガスバリア層中に界面活性剤を含有していることが重要である。界面活性剤のイオン性は制限されるものではなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれの種類でも単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。具体的な種類としては、シリコンーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、アセチレン基を有するアセチレン系界面活性剤、アセチレン基と2つの水酸基を有するアセチレンジオール系界面活性剤、アルキル基とスルホン酸を有するアルキルスルホン酸系界面活性剤、エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤、フェニルエーテル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、フェノール系界面活性剤などを例示することができる。これらの中では塗料のレベリング性が特に向上する、アセチレンジオール系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、塗料のレベリング性が向上すると、ガスバリア層の均一性が向上するため、ガスバリア性が向上する。
【0033】
本発明において、ガスバリア層には、水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料、架橋剤等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0034】
本発明において、ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で0.2g/m以上20g/m以下とすることが好ましい。塗工量が0.2g/m未満であると均一なガスバリア層を形成することができないため、十分なガスバリア性が得られない問題がある。一方、20g/mより多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなり、操業面、コスト面の両方の観点より好ましくない。
【0035】
また、本発明において、ガスバリア層を形成させるための、水溶性高分子及び界面活性剤を含有する塗料は、水系であることが包装材料としてのグリーンケミストリーへのニーズや生産時の作業環境における安全性の確保といった点から好ましい。なお、水系とは塗料の構成成分として有機溶剤を使用しないことである。また、水蒸気バリア層との密着性の観点から、ガスバリア層を形成させる塗料の表面張力を、10mN/m以上60mN/m以下に調整することが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下に調整することがさらに好ましい。
なお、水蒸気バリア層表面の濡れ張力に対して塗料の表面張力を±20mN/mとすることが、水蒸気バリア層とガスバリア層との密着性の観点から好ましい。
【0036】
(水蒸気バリア層、ガスバリア層の形成)
本発明において、水蒸気バリア層、ガスバリア層の塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置を用いることができる。例えば、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0037】
(ラミネート層)
本発明において、紙基材上に水蒸気バリア層、ガスバリア層を設けた紙製バリア材料の少なくとも一方の面に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル重合体、生物由来フィルム、生分解性フィルムなどのラミネート層を設けることができる。本発明において生物由来フィルムとは、発酵法で得られるプロパンジオールと化石資源由来のテレフタル酸のポリエステル(PTT)、大豆ポリオール、ポリウレタンなどの生分解性を有しないバイオプラスチックが挙げられ、生分解性フィルムは、生分解性を有するポリ乳酸(PLA)、澱粉樹脂、ポリヒドロキシアルカノエートなどのバイオプラスチックが挙げられる。包装材料として使用する際は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主体とすることが、包装材料としての内容物の保護やヒートシールの容易さといった点から好ましい。また、目的に応じてこれらのラミネート層を1層または複数層を設けることができる。
【0038】
本発明において、紙基材上に水蒸気バリア層、ガスバリア層を設けた紙製バリア材料の少なくとも一方の面に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル重合体、生物由来フィルム、生分解性フィルムなどのラミネート層を設けることができる。包装材料として使用する際は、これらの中では、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主体とすることが、内容物の保護やヒートシールの容易さといった点から好ましい。また、目的に応じてこれらのラミネート層を1層または複数層を設けることができる。本発明において生物由来フィルムとは、発酵法で得られるプロパンジオールと化石資源由来のテレフタル酸のポリエステル(PTT)、大豆ポリオール、ポリウレタンなどの生分解性を有しないバイオプラスチックが挙げられ、生分解性フィルムは、生分解性を有するポリ乳酸(PLA)、澱粉樹脂、ポリヒドロキシアルカノエートなどのバイオプラスチックが挙げられる。
【0039】
また、ラミネート層の積層方法については特に制限されるものではないが、従来の溶融押し出しラミネート法やフィルムを用いたドライラミネート法、直接溶融コート法など公知の方法を用いることができるが、溶融押し出しラミネート法、あるいはドライラミネート法によりラミネート層を設けることが均一なラミネート層の確保やハンドリングの容易さといった点から好ましい。
【0040】
(バリアフィルムの貼合)
また、本発明の紙製バリア材料の少なくとも一方の面にバリアフィルムを貼合することもできる。バリアフィルムを貼合することによって、高湿度雰囲気下において優れたガス(酸素)バリア性が発現する。貼合するバリアフィルムは、特に制限されるものではなく、アルミニウム等の金属からなる金属箔、アルミニウム等の各種金属を蒸着させた蒸着フィルム、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂を主成分としたフィルム、あるいは、これらの樹脂をコーティングしたフィルム、更に酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルム等を例示することができる。これらのバリアフィルムの中では、アルミニウム等の各種金属を蒸着させた蒸着フィルム、あるいは無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルムが好ましい。また、目的に応じてこれらのフィルムを1層または複数層を貼合することができる。
【0041】
紙製バリア材料とバリアフィルムの貼合方法とについては特に制限されるものではないが、従来の溶融押し出しラミネート法やフィルムを用いたドライラミネート法、直接溶融コート法など公知の方法を用いることができる。
本発明の紙製バリア材料は、包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製バリア包装材料に好適に使用することができる。
本発明の紙製バリア材料は、紙製バリア材料のまま、あるいは各種汎用フィルム、バリアフィルム、アルミ箔等と積層して、食品などの包装材または容器やカップ、または産業用資材などに用いる積層体とすることができる。食品向け包装材として用いる場合は、ヒートシール性を有する樹脂と積層することにより、包装資材としての密閉性を高め、内容物を酸素による酸化や湿気などによる劣化などから守り、保存期間の延長を可能にすることができる。
また、産業用資材として使用する場合においても、酸素や湿気の侵入を抑えることで、腐敗、劣化を防止できるほか、溶剤の臭気が漏れ出るのを防止するフレーバーバリア性などの効果が期待される。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、もちろんこれらの例に限定される物ではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%は、それぞれ重量部、重量%を示す。なお、塗工液及び得られた機能性紙について以下に示す様な評価法に基づいて試験を行った。
【0043】
(評価方法)
(1)水蒸気透過度:温度40±0.5℃、相対湿度90±2%の条件下で、透湿度測定器(Dr.Lyssy社製、L80−4000)を用いて測定した。なお、ラミネート層を形成させる前の紙製バリア材料を用いて測定した。
【0044】
(2)酸素透過度:酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN2/21)を使用し、23℃−0%RH条件および23℃−85%RH条件にて測定した。なお、ラミネート層を形成させる前の紙製バリア材料を用いて測定した。
(3)表面張力:自動表面張力計(協和界面科学社製、DY−300)を使用し、23℃条件で測定した。
(4)濡れ張力:濡れ張力試験用混合液(株式会社和光純薬製、ぬれ張力試験用混合液)を用いて、JIS K 6768に記載のとおり試験を行い、ぬれ張力(mN/m=N/mm)を測定した。
【0045】
[実施例1]
(紙基材の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。原料パルプスラリーに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量59g/mの紙を得た。次いで、得られた紙に固形分濃度2%に調製したポリビニルアルコール(クラレ社製PVA117)をロッドメタリングサイズプレスで、両面に1.0g/m塗工、乾燥し、坪量60g/mの原紙を得た。得られた原紙をチルドカレンダーを用いて、速度300min/m、線圧50kgf/cm 1パスにて平滑処理を行った。
【0046】
(水蒸気バリア層用塗工液の調製)
無機顔料である大粒径エンジニアードカオリン(イメリス社製、製品名:バリサーフHX 粒子径9.0μm アスペクト比80〜100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対無機顔料0.2部)、セリエミキサーで分散して固形分濃度60%の大粒径カオリンスラリーを調製した。得られたカオリンスラリー中に水蒸気バリア性樹脂としてスチレン・アクリル系共重合体エマルジョン(サイデン化学社製、製品名:X−511−374E)を無機顔料100部に対して100部(固形分)となるように配合し、更にパラフィン系撥水剤(丸芳化学社製、製品名:MYE―35G、ワックス含有ポリエチレンエマルジョン)を無機顔料100部に対して、100部(固形分)となるように配合し、固形分濃度45%の塗工液Aを得た。
【0047】
(ガス(酸素)バリア層用塗工液の調製)
水溶性高分子であるポリビニルアルコール(クラレ社製、製品名:PVA117)を固形分濃度10%となるよう調製し、得られたポリビニルアルコール溶液中にシリコーン系界面活性剤(サンノプコ社製、製品名:SNウェット125)をポリビニルアルコール100部に対して1部(固形分)となるように配合し、塗工液Bを得た。なお、塗工液Bの表面張力は40mN/mであった。
【0048】
(紙製バリア材料の作製)
得られた原紙上に塗工液Aを塗工量(乾燥)15g/mとなるよう塗工速度300m/minでブレードコーターを用いて片面塗工、乾燥した後、その上に塗工液Bを塗工量(乾燥)5.0g/mとなるよう塗工速度300m/minでロールコーターを用いて片面塗工し、紙製バリア材料を得た。なお、水蒸気バリア層表面の濡れ張力は40mN/mであった。
【0049】
[実施例2]
ガスバリア層用塗工液において配合する界面活性剤をアセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業社製、製品名:サーフィノールPSA−336)に変更した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。なお、ガスバリア層用塗工液の表面張力は30mN/mであった。
【0050】
[実施例3]
ガスバリア層用塗工液において配合する界面活性剤をアセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業社製、製品名:サーフィノールPSA−336)をポリビニルアルコール100部に対して1.5部(固形分)となるように配合することに変更した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。なお、ガスバリア層用塗工液の表面張力は25mN/mであった。
【0051】
[実施例4]
ガスバリア層用塗工液において配合する界面活性剤をアルキルスルホン酸系界面活性剤(日本乳化剤社製、製品名:Newcol−291−M)に変更した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。なお、ガスバリア層用塗工液の表面張力は45mN/mであった。
【0052】
[実施例5]
水蒸気バリア層用塗工液の調製において、撥水剤をパラフィン系撥水剤(星光PMC社製、製品名:WR3900、パラフィンワックスエマルジョン)に変更した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。なお、水蒸気バリア層表面の濡れ張力は35mN/mであった。
【0053】
[実施例6]
水蒸気バリア層用塗工液の調製において、撥水剤を天然油脂系撥水剤(互応化学工業社製、製品名:KW―606、カルナバワックスエマルジョン)に変更した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。なお、水蒸気バリア層表面の濡れ張力は50mN/mであった。
【0054】
[実施例7]
実施例1にて得られた紙製バリア材料の両面に共押出しラミネートにより、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:LC602A)をそれぞれ厚み30μm積層した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0055】
[実施例8]
実施例1にて得られた紙製バリア材料のバリア面上にドライラミネートにより直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(フタムラ化学社製、製品名:LL−XMTN、20μm厚)を積層し、非バリア面上(原紙面上)にドライラミネートにより二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製、製品名:FOA、20μm厚)を積層した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0056】
[実施例9]
実施例1にて得られた紙製バリア材料のバリア面上にアルミ蒸着PETフィルム(中井工業社製、製品名:MY−15)をドライラミネート法にて貼合した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0057】
[実施例10]
実施例2にて得られた紙製バリア材料のバリア面上にアルミ蒸着PETフィルム(中井工業社製、製品名:MY−15)をドライラミネート法にて貼合した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0058】
[実施例11]
実施例1にて得られた紙製バリア材料のバリア面上にアルミナ(セラミック)蒸着PETフィルム(凸版印刷社製、製品名:GL−ARH−F)をドライラミネート法にて貼合した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0059】
[実施例12]
実施例1にて得られた紙製バリア材料のバリア面上にEVOHフィルム(クラレ社製、製品名:エバールフィルム EF−XL)をドライラミネート法にて貼合した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0060】
[実施例13]
紙基材をカップ原紙(坪量270g/m)に変更した以外は、実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。さらに、得られた紙製バリア材料のバリア面上にアルミ蒸着PETフィルム(中井工業社製、製品名:MY−15)をドライラミネート法にて貼合した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0061】
[実施例14]
水蒸気バリア層用塗工液の調製においてパラフィン系撥水剤の配合量を無機顔料100部に対して、100部(固形分)から500部(固形分)に変更し、ガスバリア層用塗工液において配合するシリコーン系界面活性剤の配合量をポリビニルアルコール100部に対して1部(固形分)から5部(固形分)となるよう変更した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。なお、水蒸気バリア層表面の濡れ張力は20mN/m、このガスバリア層用塗工液の表面張力は20mN/mであった。
【0062】
[実施例15]
水蒸気バリア層用塗工液の調製においてパラフィン系撥水剤の配合量を無機顔料100部に対して、100部(固形分)から1000部(固形分)に変更し、ガスバリア層用塗工液において配合するシリコーン系界面活性剤の配合量をポリビニルアルコール100部に対して1部(固形分)から8部(固形分)となるよう変更した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。なお、水蒸気バリア層表面の濡れ張力は15mN/m、このガスバリア層用塗工液の表面張力は15mN/mであった。
【0063】
[実施例16]
水蒸気バリア層用塗工液の調製においてパラフィン系撥水剤の配合量を無機顔料100部に対して、100部(固形分)から500部(固形分)に変更し、ガスバリア層用塗工液において配合する界面活性剤をアセチレンジオール系界面活性剤(日信化学工業社製、製品名:サーフィノールPSA−336)に変更し、配合量をポリビニルアルコール100部に対して1部(固形分)から5部(固形分)となるよう変更した以外は実施例2と同様にして紙製バリア材料を得た。なお、水蒸気バリア層表面の濡れ張力は20mN/m、このガスバリア層用塗工液の表面張力は20mN/mであった。
【0064】
[実施例17]
水蒸気バリア層用塗工液の調製において撥水剤をパラフィン系撥水剤(星光PMC社製、製品名:WR3900、パラフィンワックスエマルジョン)に変更し、配合量を無機顔料100部に対して、100部(固形分)から500部(固形分)に変更し、ガスバリア層用塗工液において配合するシリコーン系界面活性剤の配合量をポリビニルアルコール100部に対して1部(固形分)から5部(固形分)となるよう変更した以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。なお、水蒸気バリア層表面の濡れ張力は25mN/m、このガスバリア層用塗工液の表面張力は20mN/mであった。
【0065】
[比較例1]
紙基材にガスバリア層、水蒸気バリア層をこの順に設けた以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0066】
[比較例2]
ガスバリア層用塗工液に界面活性剤を配合しなかった以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0067】
[比較例3]
水蒸気バリア層を設けなかった以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0068】
[比較例4]
ガスバリア層を設けなかった以外は実施例1と同様にして紙製バリア材料を得た。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示されるように、実施例1〜17の紙製バリア材料は優れた水蒸気バリア性、ガス(酸素)バリア性を有していた。特に、ポリエチレン樹脂を押し出しラミネートした実施例7、フィルムをドライラミネート法にて貼合した実施例8〜13は優れた水蒸気バリア性を有していた。
【要約】
本発明は、紙基材上に、水蒸気バリア層、及びガスバリア層をこの順に設けた、優れたガスバリア性と水蒸気バリア性を併せ持つ紙製バリア材料を提供すること目的とする。解決手段として、紙基材上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層がこの順で設けられた紙製バリア材料において、前記水蒸気バリア層が水蒸気バリア性樹脂及び撥水剤を含有し、且つ前記ガスバリア層が水溶性高分子及び界面活性剤を含有することを特徴とする紙製バリア材料を提供する。