(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押圧部材は、一端部が前記流体通路の下流側で前記ハウジング部材に固定され、他端部が前記弁体の周縁部に固定された柱状または板状の少なくとも2つ以上の弾性部材であり、前記押圧部材が屈曲して前記弁体を前記弁座部のシート面から弾性的に離間させることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁付き容器。
前記押圧部材は、一端部が前記流体通路の下流側で前記ハウジング部材に固定され、他端部が前記弁体の周縁部に固定された柱状または板状の1つの弾性部材であり、前記弾性部材が湾曲して前記弁体を片開き状態に前記弁座部のシート面から弾性的に離間させることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁付き容器。
【背景技術】
【0002】
近年、包装袋(パウチ)に注出器(スパウト)を取り付けたスパウトパウチの普及により、様々な内容物がスパウトパウチに充填されるようになってきた。このようなスパウトパウチに充填される内容物の中でも、例えば醤油、食用油、酒類などは、酸化による劣化を防止するために空気中の酸素と触れないことが好ましい。したがって上記のような内容物に対しては、内容物を注出した直後に外部の空気を吸引しないように、逆止弁機構を有するスパウトパウチが求められている。
【0003】
従来、逆止弁付き容器としては様々なものが開発されている。その多くは、容器そのものに加える圧力により内容物を注出するものである。即ち、内容物を注出する際には、容器そのものを手で押圧し、容器の内圧を高めて内容物の圧力により弁を開くことで、容器から内容物を注出する。一方、内容物の注出を停止する際は、容器への押圧を止める。これにより、容器が元の形状に戻ろうとして、弁を容器内側に吸引する減圧力が発生することで、弁が閉じる。
【0004】
上記のような機構はブローボトルなどの比較的硬い材料からなる容器の場合には上手く機能する。しかしながら、スパウトパウチのように容器が極めて柔らかく薄い積層フィルムなどから構成されている場合、容器への押圧を止めても、上記のような減圧力が殆ど発生しないため、弁を閉じることが困難であり、いわゆる「キレ」が悪く注出口から液垂れしてしまうような状態を誘発することとなる。
【0005】
従来、容器が包装袋であっても適用可能な逆止弁として、コイルスプリングの復元力を利用して弁を閉じる機構を有する逆止弁が開示されている(特許文献1)。
【0006】
この種の逆止弁の場合、内容物を注出する際は、前述の逆止弁と同様、容器を押圧し、内容物による圧力で弁を開く。一方、内容物の注出を停止する際は、容器への押圧を止める。これにより、コイルスプリングの復元力により弁が閉じる。
【0007】
なお、特許文献2には、薬剤容器と可撓性容器とを一体化した輸液容器が開示されているが、逆止弁については何ら記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のコイルスプリングを利用した逆止弁の場合、以下のような多くの問題が発生する。
【0010】
まず、従来の逆止弁では、内容物を注出する際は、手で容器そのものを押圧し、容器の内圧を高めて内容物の圧力で弁を開く必要がある。内容物にかけた圧力と逆止弁のコイルスプリングの戻る力のバランスで逆止弁の開きを維持し且つ流量を制御しなければならない。このため、コイルスプリングの力が強すぎれば、逆止弁が全開と全閉の間で不安定に切り替わり、逆に、コイルスプリングの力が弱すぎれば注出を止めたいときに液垂れが生じ、いわゆる「キレ」が悪い状態となる。
【0011】
また、従来の逆止弁では、コイルスプリングが内容物に接触する状態にあるため、内容物の成分がコイルスプリングに析出することでバネとしての機能が低下するという問題があった。例えば、内容物が醤油や酒類の場合、塩分や糖分など、内容物に含まれる成分がコイルスプリング周辺で固まりやすい。コイルスプリングの間隙が析出物で埋められた場合には、内容物を注出できない事態も起こり得る。
【0012】
また、所望の復元力を確保するためには金属製のコイルスプリングを使用することが望ましいが、その場合、内容物の水分や塩分などによりコイルスプリングに錆が発生するおそれがある。特に内容物が食品の場合、錆の発生は許容されない。
【0013】
一方、プラスチック製のコイルスプリングを使用した場合は、所望の復元力を得ることが困難である。コイルスプリングを太くすることで復元力をある程度大きくすることは可能であるが、所定の内径に形成されたスパウト内の空間をより多く占有し、内容物の注出量ないし注出速度が低下してしまうという問題がある。
【0014】
本発明は上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、その目的は、外気の吸引および内容物の液垂れを効果的に防止するとともに、内容物の注出量ないし注出速度を自在に調整可能な逆止弁および逆止弁付き容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様による逆止弁は、
内部に流体通路が形成されたハウジング部材と、前記ハウジング部材の内部に配設される弁部材とを備える逆止弁であって、
前記ハウジング部材の内周面には弁座部が設けられており、
前記弁部材は、前記弁座部のシート面にシール可能に着座する弁体と、前記ハウジング部材に支持され前記弁体を前記弁座部のシート面に向けて付勢する押圧部材と、前記弁体に連結された弁駆動部材とを有し、
前記弁駆動部材は、前記ハウジング部材から延出する押しゴマを有し、前記押しゴマに加えられた力により、前記弁体が前記押圧部材の押圧力に抗って前記シート面から離間するように前記弁体を駆動する、
ことを特徴とする。
【0016】
また、前記逆止弁において、
前記押圧部材は、一端部が前記流体通路の下流側で前記ハウジング部材に固定され、他端部が前記弁体の周縁部に固定された柱状または板状の少なくとも2つ以上の弾性部材であり、前記押圧部材が屈曲して前記弁体を前記弁座部のシート面から弾性的に離間させるようにしてもよい。
【0017】
また、前記逆止弁において、
前記押圧部材は、一端部が前記流体通路の下流側で前記ハウジング部材に固定され、他端部が前記弁体の周縁部に固定された柱状または板状の1つの弾性部材であり、前記弾性部材が湾曲して前記弁体を片開き状態に前記弁座部のシート面から弾性的に離間させるようにしてもよい。
【0018】
本発明の一態様による逆止弁付き容器は、
内容物を収容し、注出部を有する容器本体と、
本発明に係る逆止弁と、
を備え、
前記ハウジング部材は、筒状の口部と、前記口部に連接する筒状の導管部とを有し、
前記逆止弁は、前記容器本体の注出部において、前記ハウジング部材の口部が露出するように前記ハウジング部材の導管部の少なくとも一部が前記容器本体に固定されていることを特徴とする。
【0019】
また、前記逆止弁付き容器において、
前記容器本体は、前記押しゴマに力を加え、前記弁駆動部材を操作する操作部を有してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る逆止弁は、ハウジング部材から延出する押しゴマを有し、この押しゴマに加えられた力により、弁体が押圧部材の押圧力に抗ってシート面から離間するように弁体を駆動する弁駆動部材を備えている。逆止弁が取り付けられた容器本体の外側から押しゴマを指で操作することにより、弁体の開閉具合を自在に調整することができる。
【0021】
即ち、本発明によれば、従来の逆止弁のように容器そのものを押圧し、内圧を高めることにより内容物の圧力で弁を開放するのではなく、弁体に連結された弁駆動部材を、押圧部材の押圧力に抗って弁体を駆動するように操作することで弁を開放する。よって、パウチのような復元力の小さい容器であっても、弁の開度と内容物の圧力を独立に制御でき、内容物の注出量ないし注出速度を自在に調整することができる。加えて、従来のように容器そのものを手で押圧して内容物の圧力を高める必要がなく、容器本体を介して弁駆動部材を指で操作するだけでよい。このため、内容物の注出量が多い場合であっても、所望の量の内容物を容易に注出することができる。
【0022】
また、本発明によれば、内容物を注出するときにのみ、弁体は弁駆動部材により駆動されて弁座部のシート面から離間し、内容物を注出しないときは、弁体はシート面に押圧され、ハウジング部材内の流体通路を内容物や外気が通り抜けることはできない。よって、外気の流入および内容物の液垂れを効果的に防止することができる。
【0023】
また、本発明によれば、押圧部材を、一端部が流体通路の下流側でハウジング部材に固定され、他端部が弁体の周縁部に固定された柱状または板状の弾性部材とすることで、押圧部材はスパウト内の空間を占有せず、流通通路を通る内容物の妨げにならない。このため、内容物の注出量ないし注出速度の低下を防止することができる。加えて、コイルスプリングを用いた場合のように内容物の成分が押圧部材に析出することで、機能不全に陥る事態や内容物を注出できない事態を防止することができる。
【0024】
また、本発明によれば、押圧部材は弁体からみて流体通路の下流側に設けられるため、バネ部分を含む押圧部材と内容物が接触する頻度が少ない。したがって、内容物の成分が析出することにより、弁体を押圧する機能が低下することを防止することができる。
【0025】
また、本発明によれば、押圧部材を合成樹脂とすることで、押圧部材に錆などが発生することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態による逆止弁および逆止弁付き容器について説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0028】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、弁が閉じた状態における逆止弁1の一部断面図である。
図2は、弁部材20の斜視図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態による逆止弁1は、ハウジング部材10と、このハウジング部材10の内部に配設される弁部材20とを備えている。
【0030】
ハウジング部材10は、より詳しくは、筒状の口部12と、この口部12に連接する筒状の導管部13とを有し、口部12と導管部13の内部に流体通路が形成されている。なお、図示しないが、口部12の外周にはキャップと螺合するネジ部が設けられていてもよい。
【0031】
図1に示すように、ハウジング部材10の内周面には弁座部11が設けられている。弁座部11は、
図1に示すように、ハウジング部材10の内周から凸設された段部として構成されている。
【0032】
なお、弁座部11の構成はこれに限らない。例えば、口部12の内径を導管部13の内径よりも大きくし、口部12と導管部13が接続する部分を弁座部11としてもよい。
【0033】
弁座部11は弁体21が着座するシート面11aを有する。シート面11aは、
図1に示すように、すり鉢状の斜面として構成されている。シート面11aの形状は、これに限らず、弁体21が弁座部11に着座した状態において、弁体21と弁座部11との間の隙間がなくなる形状であればよい。
【0034】
ハウジング部材10内に弁部材20を装填した際に弁体21が弁座部11に着座することにより、弁部材20の脱落することを防止するとともに、内容物および空気の流通を遮断する。
【0035】
導管部13は、容器本体に固定される取付け部13aと、この取付け部13aの上側(流体通路の下流側)の部分に外側に向けて張り出す鍔部13bとを有する。
【0036】
なお、ハウジング部材10は、複数の部材を組み合わせて構成してもよいが、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂で一体成形したものである。
【0037】
また、ハウジング部材10の形状は、
図1に示すような筒状に限らず、例えば、折り曲げ部を有するL字型であってもよい。
【0038】
次に、弁部材20の構成について説明する。弁部材20は、
図2に示すように、弁体21と、押圧部材(付勢部材)22と、弁駆動部材23とを有する。より詳しくは、本実施形態に係る弁部材20は4つの押圧部材22が設けられた、いわゆる両持ちタイプの弁部材である。
【0039】
なお、弁部材20は、複数の部材を組み合わせて構成してもよいが、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂で一体成形したものである。また、後述の係合部材25を含めた弁部材20を合成樹脂で一体成形してもよい。
【0040】
弁体21は、弁座部11のシート面11aにシール可能に着座する。
【0041】
押圧部材22は、ハウジング部材10に支持されている。
図1に示すように、本実施形態では、押圧部材22は係合部材25の下端に固定されている。
【0042】
また、押圧部材22は、弁体21を弁座部11のシート面11aに押圧する。換言すれば、押圧部材22は、弁体21を弁座部11のシート面11aに向けて付勢する。なお、
図1に示すように、押圧部材22は、弁が閉じた状態において屈曲していてもよい。
【0043】
本実施形態では、弁部材20は、柱状または板状の4つの押圧部材22を有する。各押圧部材22は弾性部材からなる。
図1および
図2に示すように、押圧部材22の一端部(上端)は流体通路の下流側でハウジング部材10に固定され、他端部(下端)は弁体21の周縁部に固定されている。より詳しくは、押圧部材22は係合部材25を介してハウジング部材10に固定されている。
【0044】
また、
図2に示すように、各押圧部材22の間には、弁開放時に内容物を通過させるための通過孔24Aが設けられている。内容物の流通量を増やすために、通過孔24Aに連通する通過孔24Bを係合部材25に設けてもよい。
【0045】
なお、押圧部材22は筒状に構成してもよい。この場合、通過孔24Aは設けられず、内容物は通過孔24Bを外側から内側の方向に通って注出される。
【0046】
図2に示すように、係合部材25はリング状の部材であり、外周面に凸部25aが設けられている。この凸部25aがハウジング部材10の内周に設けられた凹部と嵌合することで、係合部材25はハウジング部材10に離脱不能に固定される。
【0047】
なお、押圧部材22の数や形状(幅、厚さなど)は、所望の特性や内容物の性状に応じて適宜選択することが可能である。例えば、押圧力(付勢力)を増やしたい場合には、押圧部材22の数を増やすか、押圧部材22を厚くするか、或いは押圧部材22の幅を広くすればよい。一方、押圧力(付勢力)を減らしたい場合には、押圧部材22の数を減らすか、押圧部材22を薄くするか、或いは押圧部材22の幅を狭くすればよい。このように押圧部材22の数や形状を変えることにより、付勢効果を調整することができる。押圧部材22の寸法については、一例としての数値を挙げると、高さが5mm〜8mm、幅が3mm〜8mm、厚さが0.2mm〜1mmである。
【0048】
また、押圧部材22は、錆などの発生を防止する観点から、金属以外の材料、例えば、合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)からなることが好ましい。
【0049】
弁駆動部材23は、押圧部材22の押圧力に抗って弁体21を駆動するもので、
図1に示すように、弁体21に連結されている。
【0050】
弁駆動部材23は、
図1に示すように、ハウジング部材10の内部に配設された状態において、ハウジング部材10から延出する押しゴマ23aを有する。
【0051】
また、後で詳しく説明するように、内容物を注出する際、押しゴマ23aは弁体21に向けて押し上げられる。これにより、弁駆動部材23は、押圧部材22の押圧力に抗ってシート面11aから離間するように、弁体21を駆動する。
【0052】
本実施形態において、弁駆動部材23は、押しゴマ23aと、この押しゴマ23aから弁体21に向けて延伸して弁体21に接続するシャフト23bとを有する。押しゴマ23aの形状は、例えば円盤状であるが、球体状など他の形状でもよい。
【0053】
なお、シャフト23bの横断面形状については、本実施形態では、十字型であるが、これに限らず、円形、多角形など他の形状であってもよい。
【0054】
次に、
図3を参照して、上記の逆止弁1を備える逆止弁付き容器40について説明する。
図3は、一実施形態による逆止弁付き容器の正面図を示している。
【0055】
逆止弁付き容器(スパウトパウチ)40は、内容物を収容し、注出部42を有する容器本体(パウチ)41と、上記の逆止弁1とを備えている。
【0056】
容器本体41は、好ましくは、積層フィルムなどから構成されたパウチであり、厚さは例えば30μm〜200μmである。
【0057】
積層フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体などの合成樹脂からなる基材層を有する。また、ガスバリア性を付与するために、中間層として金属箔を用いたり、アルミニウム、マグネシウムなどの金属、または酸化珪素などの酸化物を蒸着させたプラスチックフィルム、または、ガスバリアコート層を有するプラスチックフィルムを用いても良い。
【0058】
また、積層フィルムのうち熱融着される部分には熱融着層が形成されている。この熱融着層の材質としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0059】
ハウジング部材10の取付け部13aは熱融着層と融着することから、取付け部13aの材質は熱融着層と同種の樹脂とすることが好ましい。
【0060】
図3に示すように、逆止弁1は容器本体41に熱融着されて固定されている。より詳しくは、逆止弁1は、容器本体41の注出部42において、ハウジング部材10の口部12が露出するように導管部13の取付け部13aが容器本体41に固定されている。
【0061】
なお、弁駆動部材23を指で操作可能であれば、容器本体41は、パウチに限らず、ブローボトル、PETボトル、紙パックなどでもよく、容器の種類を問わない。
【0062】
次に、逆止弁付き容器40の使用方法の一例について
図4を参照して説明する。
【0063】
まず、口部12にキャップ(図示せず)が取り付けられている場合、逆止弁1と容器本体41の接合部分(取付け部13a)を片手で保持しながら、キャップを回して取り外す。
【0064】
次に、
図4に示すように、一方の手を容器本体の側面または底面にあてがい、他方の手で逆止弁1を持ち、内容物を注ごうとするカップに口部12を向ける。なお、この状態では、弁体21は押圧部材22によりシート面11aに押圧されており、逆止弁1の弁は閉じている。よって、容器本体41の内容物は注出されない。
【0065】
次に、押しゴマ23aに力を加えて、弁駆動部材23に弁体21を駆動させる。具体的には、逆止弁1を持っている手の指で容器本体41を介して押しゴマ23aを挟み、その指を口部12の方にスライドさせる。これにより、押しゴマ23aは容器本体41の内側表面に沿って摺動し、弁体21に向けて押し上げられる。
【0066】
図5は、弁が開いた状態における逆止弁1の一部断面図を示している。
図5に示すように、押しゴマ23aが押し上げられることにより、押圧部材22は屈曲して、弁体21は弁座部11のシート面11aから弾性的に離間する。即ち、弁体21は押圧部材22の押圧力に抗って押し上げられることで、弁体21と弁座部11のシート面11aとの間に空隙が生じる。これにより、ハウジング部材10の流体通路を内容物が通ることが可能になり、容器本体の内容物がカップに注がれる。
【0067】
そして、所望量の内容物が注出されたら、押しゴマ23aを挟んでいた指を離す。これにより、押しゴマ23aが元の位置に下がり、弁体21が弁座部11に着座する状態に戻るため、内容物の注出が止まる。むろん、弁が閉じる際に外部の空気が容器本体41内に吸引されることはない。
【0068】
なお、弁体21とシート面11aとの間の空隙の大きさは、押しゴマ23aに加える力に応じて変化させることができる。よって、押しゴマ23aに加える力を加減することで、内容物の注出量や注出速度を自由に変化させることができる。
【0069】
また、押しゴマ23aの形状や大きさ(円盤部材の径など)などを変えることで、同じ力の下での空隙の大きさを変化させることも可能である。
【0070】
また、押圧部材22は、柱状または板状の部材として構成される場合に限らず、コイルスプリングのような螺旋状のばね材として構成されてもよい。コイルスプリングの場合であっても、コイルスプリングは弁体21からみて流体通路の下流側に設けられるため、内容物と接触する頻度が少ない。したがって、コイルスプリングが弁体からみて流体通路の上流側に設けられていた従来の構成に比べて、析出物の付着が抑制されるため、押圧機能が低下することを防止することができる。
【0071】
上記のように、本発明によれば、内容物を注出する際、容器本体そのものに圧力を加える必要がない。このため、容器が大容量(例えば1〜1.5リッター)の場合であっても、口部をカップに向けた状態を容易に保持することができる。
【0072】
また、本発明によれば、押しゴマ23aに加える力を加減することで、内容物の注出量や注出速度を自由に変化させることができる。このため、内容物が醤油などで注出量が少量の場合であっても、注出量を簡単に調整することができる。
【0073】
また、本発明によれば、パウチなど手で押圧しても内圧がかかりにくい容器の場合であっても、内容物の注出量や注出速度を容易に変化させることができる。
【0074】
また、本発明によれば、押圧部材の復元力を利用した逆止弁構造のため、内容物を注出する際に、液垂れや外気の流入を防ぐことができる。
【0075】
また、押圧部材22は板状または柱状の部材として構成されているため、ハウジング部材10内の流体通路を遮らない。よって、本発明の逆止弁付き容器は、飲料などのある程度大きな流量で注出する必要がある場合にも好適である。
【0076】
このように本発明によれば、容器そのものに手で圧力を加えることで容器の内圧を高め、内容物の圧力により弁を開く従来の逆止弁の場合に比べて、はるかに容易に所望の注出量や注出速度で内容物を注出することができる。
【0077】
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。いずれの変形例によっても上述した効果を得ることができる。
【0078】
(逆止弁の変形例)
図6は、変形例による逆止弁2の一部断面図を示している。この逆止弁2と前述の逆止弁1との間の主な相違点は、弁駆動部材の構成である。
図6に示すように、本変形例に係る弁駆動部材は、前述のシャフト23bを有さず、上端が弁体21に接続する略水滴形状の押しゴマ27として構成されている。
【0079】
このように押しゴマ自体を略水滴形状ないしは長柱状に形成することでシャフト23bを省略することも可能である。
【0080】
なお、
図6の押しゴマ27の形状は一例に過ぎない。即ち、押しゴマ27の形状は、押しゴマが容器本体41を介して指で挟まれ、容器本体41の内側表面に沿って摺動可能な形状であればよい。
【0081】
(逆止弁付き容器の変形例)
図7は、変形例による逆止弁付き容器40Aの一部断面図を示している。
図7に示すように、逆止弁付き容器40Aでは、容器本体41の外側表面に操作部44が設けられている。
【0082】
この操作部44は、例えばプラスチックからなる板状の部材であり、
図7に示すように、押しゴマ23aを挟むことができるように設けられている。
【0083】
逆止弁付き容器40Aを使用する際には、指を操作部44の上に置き、操作部44により押しゴマ23aを挟んで、押しゴマ23aを摺動させる。このように、操作部44は、押しゴマ23aに力を加え、弁駆動部材23を操作するものである。操作部44を設けることにより、操作位置が明確になるとともに、逆止弁の操作性を向上させることができる。
【0084】
なお、操作部44は容器本体41の内側表面に設けてもよい。この場合、容器本体41の外側表面に、操作部44の位置を示す操作位置表示部を設けることが好ましい。この操作位置表示部は、例えば、容器本体41の外側表面に所定の文字や図柄などを印刷したり、あるいは、紙や布などの部材を容器本体41の外側表面に貼付することにより設ける。
【0085】
また、操作部44は、容器本体41に取り付けたものではなく、容器本体41の一部からなるようにしてもよい。例えば、容器本体41の所定の領域の厚みを他の領域よりも厚くして操作部44としてもよい。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について
図8〜
図10を参照して説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態による逆止弁3の、弁が閉じた状態における一部断面図を示している。
図9は、本実施形態による弁部材20Aの斜視図である。
図10は、弁が開いた状態の逆止弁3の一部断面図を示している。
【0087】
第2の実施形態に係る逆止弁3と第1の実施形態に係る逆止弁1との間の主な相違点は、弁部材の構成である。即ち、本実施形態に係る弁部材20Aでは、
図9に示すように、押圧部材として、柱状または板状の1本の押圧部材26のみが設けられている。即ち、本実施形態の弁部材20Aはいわゆる片持ちタイプの弁部材である。
【0088】
押圧部材26は、一端部が流体通路の下流側でハウジング部材10に固定され、他端部が弁体21の周縁部に固定されている。また、押圧部材26は、撓むように湾曲可能であり、押圧部材22のように座屈的に屈曲しないように構成されることが好ましい。よって、押圧部材26は、例えば、押圧部材22よりも厚く形成されたり、硬い材料からなる。なお、押圧部材26が屈曲しないことは必須ではなく、ある程度屈曲するものであってもよい。
【0089】
また、本実施形態のシャフト23bは、可撓性および復元性を有する材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂)からなることが好ましい。
【0090】
押しゴマ23aを指で挟んで容器本体41の内側表面に沿って摺動させると、
図10に示すように、シャフト23bがS字状に湾曲しつつ押しゴマ23aは上方向に移動し、それにより、押圧部材26が湾曲する。
【0091】
このように押圧部材26が湾曲することで、弁体21は片開き状態に弁座部11のシート面11aから弾性的に離間する。即ち、押圧部材26の一端が固定された弁体21の周縁部の反対側に位置する周縁部が、シート面11aから離間する。これにより、ハウジング部材10内の流体通路を内容物が流通することが可能になる。
【0092】
なお、本実施形態では、
図8および
図9に示すように、係合部材25の外周面には凹部25bが設けられている。この凹部25bがハウジング部材10の内周に設けられた凸部と嵌合することで、係合部材25がハウジング部材10に離脱不能に固定される。
【0093】
また、第2の実施形態においては、シャフト23bが、弁体21の中心ではなく、弁体21の中心から偏心した位置で弁体21に接続するようにしてもよい。このようにすることで、弁を開放させるのに必要な力、および内容物の流通量を制御させることができる。
【0094】
例えば、押圧部材26と弁体21との接続位置の反対側に偏心した位置で、シャフト23bが弁体21に接続するようにする。これにより、より少ない押圧力で弁体21を弁座部11のシート面11aから離間させることができる。
【0095】
同様に、シャフト23bが押しゴマ23aの中心から偏心した位置で押しゴマ23aに接続するようにすることで、押しゴマ23aに加える力および流通量を制御するようにしてもよい。
【0096】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態および変形例に限定されるものではない。異なる実施形態および変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。