特許第6234711号(P6234711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エア・ウォーター株式会社の特許一覧

特許6234711浸炭処理用ガス製造方法およびそれに用いる浸炭処理用ガス製造設備
<>
  • 特許6234711-浸炭処理用ガス製造方法およびそれに用いる浸炭処理用ガス製造設備 図000003
  • 特許6234711-浸炭処理用ガス製造方法およびそれに用いる浸炭処理用ガス製造設備 図000004
  • 特許6234711-浸炭処理用ガス製造方法およびそれに用いる浸炭処理用ガス製造設備 図000005
  • 特許6234711-浸炭処理用ガス製造方法およびそれに用いる浸炭処理用ガス製造設備 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234711
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】浸炭処理用ガス製造方法およびそれに用いる浸炭処理用ガス製造設備
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/22 20060101AFI20171113BHJP
   C21D 1/06 20060101ALI20171113BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20171113BHJP
   C22C 38/44 20060101ALN20171113BHJP
   C21D 1/76 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   C23C8/22
   C21D1/06 A
   !C22C38/00 302Z
   !C22C38/44
   !C21D1/76 F
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-120086(P2013-120086)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-237868(P2014-237868A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(72)【発明者】
【氏名】吉野 明
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−256824(JP,A)
【文献】 特開2005−290509(JP,A)
【文献】 特開2007−162055(JP,A)
【文献】 特開2008−057039(JP,A)
【文献】 特開2006−022357(JP,A)
【文献】 特開2004−332080(JP,A)
【文献】 特開2004−002942(JP,A)
【文献】 特開2005−200695(JP,A)
【文献】 特開昭57−076180(JP,A)
【文献】 米国特許第04306919(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/00−12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一酸化炭素ガスと水素ガスとを含む浸炭処理用ガスの製造方法であって、天然ガスを第1ヒータで加熱してから、脱硫器に通し第1管路に送る第1工程と、酸素ガスを第2ヒータで加熱し第2管路に送る第2工程と、上記第1工程を経たガスと上記第2工程を経たガスとを混合し、その混合ガスを改質器に通すことにより、一酸化炭素ガスと水素ガスとを含むガスを生成する第3工程と、この第3工程により得られた上記一酸化炭素ガスと上記水素ガスとを含む上記生成したガスを、第3管路および冷却器に、この順で通した後、気液分離器で気液分離し、その気液分離された後の液体を排水管路から外部に排水し、上記気液分離された後の気体を圧縮機吸込ホルダに通してから、その気体を圧縮機により圧縮する第4工程と、この第4工程により圧縮された上記一酸化炭素ガスと上記水素ガスとを含む上記気体、第4管路に通してから圧力スイング吸着装置に通すことにより、それら一酸化炭素ガスと水素ガスの濃度を高める第5工程とを備え、上記一酸化炭素ガスの濃度が30〜60モル%の範囲内の浸炭処理用ガスを得ることを特徴とする浸炭処理用ガス製造方法。
【請求項2】
上記第1工程が、上記第1ヒータによる天然ガスの加熱に先立って、その天然ガスに水素ガスを混合し、その混合ガスを上記第1ヒータで加熱してから、上記脱硫器に通し上記第1管路に送る工程である請求項1記載の浸炭処理用ガス製造方法。
【請求項3】
上記第2工程が、上記第2ヒータによる酸素ガスの加熱に先立って、その酸素ガスに二酸化炭素ガスを混合し、その混合ガスを上記第2ヒータで加熱し上記第2管路に送る工程である請求項2記載の浸炭処理用ガス製造方法。
【請求項4】
上記第5工程が、上記圧力スイング吸着装置により濃度が高められた一酸化炭素ガスと水素ガスとを含む上記気体に、窒素ガスを混合する工程である請求項2または3記載の浸炭処理用ガス製造方法。
【請求項5】
上記第5工程により得られた、一酸化炭素ガスと水素ガスとを含む上記気体に、さらに一酸化炭素ガスを混合する工程を備えている請求項2または3記載の浸炭処理用ガス製造方法。
【請求項6】
上記浸炭処理用ガスにおける一酸化炭素ガスと水素ガスとの濃度比を、1:1に設定する請求項1〜5のいずれか一項に記載の浸炭処理用ガス製造方法。
【請求項7】
上記請求項1記載の浸炭処理用ガス製造方法に用いる浸炭処理用ガス製造設備であって、天然ガスを加熱する第1ヒータと、その加熱した天然ガスを脱硫する脱硫器と、この脱硫器で脱硫された天然ガスを通す第1管路と、酸素ガスを加熱する第2ヒータと、この第2ヒータで加熱された酸素ガスを通し、上記第1管路に連結する第2管路と、上記脱硫器で脱硫され上記第1管路を通って送られた天然ガスと上記第2ヒータで加熱され上記第2管路を通って送られた酸素ガスとの混合ガスから一酸化炭素ガスと水素ガスとを含むガスを生成する改質器と、この改質器で生成された上記一酸化炭素ガスと上記水素ガスとを含む上記生成ガスを通す第3管路と、この第3管路を通って送られた上記生成ガスを通す冷却器と、この冷却器を通ってその一部が液化した上記生成ガスを気液分離する気液分離器と、その気液分離された後の液体を上記気液分離器の外部に排水する排水管路と、上記気液分離された後の上記一酸化炭素ガスと上記水素ガスとを含む気体を通す圧縮機吸込ホルダと、この圧縮機吸込ホルダを通った上記気体を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮された上記気体を通す第4管路と、この第4管路を通って送られた上記気体を通す圧力スイング吸着装置とを備えていることを特徴とする浸炭処理用ガス製造設備。
【請求項8】
上記請求項2記載の浸炭処理用ガス製造方法に用いる浸炭処理用ガス製造設備であって、上記第1ヒータの上流に、上記天然ガスの管路に水素ガスの管路が連結した連結管路を備え、その連結管路が上記第1ヒータに接続されている請求項7記載の浸炭処理用ガス製造設備。
【請求項9】
上記請求項3記載の浸炭処理用ガス製造方法に用いる浸炭処理用ガス製造設備であって、上記第2ヒータの上流に、上記酸素ガスの管路に二酸化炭素ガスの管路が連結した連結管路を備え、その連結管路が上記第2ヒータに接続されている請求項8記載の浸炭処理用ガス製造設備。
【請求項10】
上記請求項4記載の浸炭処理用ガス製造方法に用いる浸炭処理用ガス製造設備であって、上記圧力スイング吸着装置の下流の、一酸化炭素ガスと水素ガスとを含む上記気体の管路に、液体窒素タンクが接続されている請求項8または9記載の浸炭処理用ガス製造設備。
【請求項11】
上記請求項5記載の浸炭処理用ガス製造方法に用いる浸炭処理用ガス製造設備であって、上記圧力スイング吸着装置の下流の、一酸化炭素ガスと水素ガスとを含む上記気体の管路に、一酸化炭素ガス容器が接続されている請求項8または9記載の浸炭処理用ガス製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製部材に対する浸炭方法に用いる浸炭処理用ガスの製造方法およびそれに用いる浸炭処理用ガス製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼製部材の表面硬化方法の一つとして、RXガス(浸炭処理用ガス)を用いた浸炭方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この浸炭方法におけるRXガス供給装置は、少量の酸素が含まれた窒素ガスを供給する窒素発生装置と、炭化水素ガスを供給する炭化水素供給装置と、所定の供給量に調整された窒素ガスと炭化水素ガスとが導入されて1次処理される低温反応槽と、1次処理ガスと所定の供給量に調整された炭化水素ガスとが導入されて混合される2次混合器とを有している。そして、その2次混合器でRXガスがつくられる。ここで、上記炭化水素供給装置としては、所定の容積を有する高圧容器に充填された液化高純度炭化水素を、気化して所望の供給圧に調整されて供給できる装置が用いられる。上記炭化水素の具体例としては、メタン,エタン,プロパン,ブタン等のパラフィン系の炭化水素があげられる。そして、RXガスの原料には、上記のように、メタン(天然ガス)等が使用されることから、RXガスの組成は、一酸化炭素ガス(CO):20〜25モル%、水素ガス(H2 ):30〜40モル%、残りが窒素ガス(N2 )となっている。
【0003】
ところで、上記RXガスを用いた浸炭方法は、ガス浸炭法であり、真空浸炭法に比べ、浸炭速度が遅く、単位時間当たりの処理個数が少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−32113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス浸炭法を用いた浸炭方法は、先に述べたように、浸炭速度が遅いことから、生産性向上のため、浸炭速度の向上が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、浸炭速度を速めることができる浸炭方法に用いる浸炭処理用ガスの製造方法およびそれに用いる浸炭処理用ガス製造設備の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、少なくとも一酸化炭素ガスと水素ガスとを含む浸炭処理用ガスの製造方法であって、天然ガスを第1ヒータで加熱してから、脱硫器に通し第1管路に送る第1工程と、酸素ガスを第2ヒータで加熱し第2管路に送る第2工程と、上記第1工程を経たガスと上記第2工程を経たガスとを混合し、その混合ガスを改質器に通すことにより、一酸化炭素ガスと水素ガスとを含むガスを生成する第3工程と、この第3工程により得られた上記一酸化炭素ガスと上記水素ガスとを含む上記生成したガスを、第3管路および冷却器に、この順で通した後、気液分離器で気液分離し、その気液分離された後の液体を排水管路から外部に排水し、上記気液分離された後の気体を圧縮機吸込ホルダに通してから、その気体を圧縮機により圧縮する第4工程と、この第4工程により圧縮された上記一酸化炭素ガスと上記水素ガスとを含む上記気体、第4管路に通してから圧力スイング吸着装置に通すことにより、それら一酸化炭素ガスと水素ガスの濃度を高める第5工程とを備え、上記一酸化炭素ガスの濃度が30〜60モル%の範囲内の浸炭処理用ガスを得る浸炭処理用ガス製造方法を第1の要旨とする。
【0008】
また、本発明は、上記第1の要旨の浸炭処理用ガス製造方法に用いる浸炭処理用ガス製造設備であって、天然ガスを加熱する第1ヒータと、その加熱した天然ガスを脱硫する脱硫器と、この脱硫器で脱硫された天然ガスを通す第1管路と、酸素ガスを加熱する第2ヒータと、この第2ヒータで加熱された酸素ガスを通し、上記第1管路に連結する第2管路と、上記脱硫器で脱硫され上記第1管路を通って送られた天然ガスと上記第2ヒータで加熱され上記第2管路を通って送られた酸素ガスとの混合ガスから一酸化炭素ガスと水素ガスとを含むガスを生成する改質器と、この改質器で生成された上記一酸化炭素ガスと上記水素ガスとを含む上記生成ガスを通す第3管路と、この第3管路を通って送られた上記生成ガスを通す冷却器と、この冷却器を通ってその一部が液化した上記生成ガスを気液分離する気液分離器と、その気液分離された後の液体を上記気液分離器の外部に排水する排水管路と、上記気液分離された後の上記一酸化炭素ガスと上記水素ガスとを含む気体を通す圧縮機吸込ホルダと、この圧縮機吸込ホルダを通った上記気体を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮された上記気体を通す第4管路と、この第4管路を通って送られた上記気体を通す圧力スイング吸着装置とを備えている浸炭処理用ガス製造設備を第2の要旨とする。
【0009】
本発明者は、浸炭速度を速くすべく、浸炭処理用ガスの組成について、研究を重ねた。その過程で、一酸化炭素ガスの濃度が高くなるにつれて浸炭速度が速くなることを突き止めた。また、水素ガスの濃度が浸炭速度に影響を及ぼし、水素ガスの濃度をある程度まで高くすると浸炭速度が速くなるが、それよりも高くすると逆に浸炭速度が遅くなることも突き止めた。そして、さらに研究を重ねた結果、一酸化炭素ガスの濃度を、従来よりも高く30〜60モル%の範囲内に設定すると、それに伴い、水素ガスも適度(35〜55モル%)に存在するようになり、浸炭速度が向上することを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の浸炭処理用ガス製造方法は、上記第1〜第5工程を備えているため、得られる浸炭処理用ガスにおける一酸化炭素ガスの濃度を、30〜60モル%の比較的高濃度の範囲内に設定することができる。そのような浸炭処理用ガスを用いた浸炭方法は、従来の浸炭方法よりも一酸化炭素ガスの濃度が高く、浸炭速度を速くすることができる。
【0011】
上記浸炭処理用ガスにおける一酸化炭素ガスと水素ガスとの濃度比を、1:1に設定する場合には、一酸化炭素ガスと水素ガスの濃度がより適正化され、浸炭速度をより速めることができる。
【0012】
なお、上記「1:1」は、ガスの濃度比であるため、正確な「1:1」だけではなく、±5%の誤差の範囲〔「(0.95〜1.05):1」または「1:(0.95〜1.05)」〕も含む意味である。
【0013】
また、本発明の浸炭処理用ガス製造設備は、上記圧力スイング吸着装置等の構成を備えているため、一酸化炭素ガスの濃度が30〜60モル%の比較的高濃度の範囲内に設定された浸炭処理用ガスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の浸炭処理用ガス製造方法に用いる浸炭処理用ガス製造設備の第1の実施の形態を模式的に示す構成図である。
図2】浸炭処理用ガス製造設備の第2の実施の形態を模式的に示す構成図である。
図3】浸炭処理用ガス製造設備の第3の実施の形態を模式的に示す構成図である。
図4】浸炭処理用ガス製造設備の第4の実施の形態を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0016】
図1は、本発明の浸炭処理用ガス製造方法に用いる浸炭処理用ガス製造設備の第1の実施の形態を示す構成図である。この実施の形態では、その浸炭処理用ガス製造設備は、得られる浸炭処理用ガスが、一酸化炭素ガスの濃度も水素ガスの濃度も略50モル%となるようにするものである。
【0017】
すなわち、上記浸炭処理用ガス製造設備は、天然ガス(多量のメタンガスと少量のエタンガス,プロパンガス,硫黄等からなる)を第1ヒータ1で加熱してから、脱硫器2に通し、第1管路Aに送るようになっている。そして、酸素ガスを第2ヒータ3で加熱し第2管路Bに送るようになっている。この第2管路Bは、第1管路Aと連結され、上記天然ガスと上記酸素ガスとが混合した状態になる。ついで、その混合ガスを改質器4に通し、高濃度の一酸化炭素ガスと水素ガスとを生成させ、第3管路Cに通すようになっている。このとき、同時に、二酸化炭素ガスおよび水蒸気も生成される。つづいて、それらを冷却器5に通した後、気液分離器6で気液分離し、気液分離された後の液体を排水管路から外部に排水し、気体を圧縮機吸込ホルダ7に通してから圧縮機8で圧縮し、第4管路Dに通すようになっている。その後、その圧縮機8で圧縮された気体を、圧力スイング吸着装置9に通し、上記一酸化炭素ガスと水素ガスの濃度を、いずれも略50モル%に高め、管路Eを経由し、RXガスとして、図示していない従来公知の浸炭炉に供給するようになっている。そして、圧力スイング吸着装置9に吸着させた二酸化炭素ガスを、真空ポンプ10を利用して脱着させ、フレアスタック13で焼却するようになっている。なお、図において、符号Vは弁を示す。
【0018】
ここで、上記圧力スイング吸着装置9で得られた略50モル%の一酸化炭素ガスと水素ガスとが、先に述べたように、浸炭処理用ガスとして浸炭炉で用いられる。このような浸炭処理用ガスを用いることにより、浸炭速度を速めることができる。
【0019】
図2は、上記浸炭処理用ガス製造設備の第2の実施の形態を示す構成図である。この実施の形態の浸炭処理用ガス製造設備は、上記第1の実施の形態(図1参照)において、水素ガスの管路と二酸化炭素ガスの管路を追加している。すなわち、天然ガスの管路に水素ガスの管路を連結し、天然ガスと水素ガスとを混合した後、第1ヒータ1で加熱してから、脱硫器2に通し、第1管路Aに送るようになっている。そして、酸素ガスの管路に二酸化炭素ガスの管路を連結し、酸素ガスと二酸化炭素ガスとを混合してから第2ヒータ3で加熱し第2管路Bに送るようになっている。この第2管路Bでは、上記天然ガスを含む混合ガスと、上記酸素ガスを含む混合ガスとが混合した状態になる。また、この実施の形態の浸炭処理用ガス製造設備は、上記第1の実施の形態(図1参照)において、真空ポンプ10とフレアスタック13との間に分岐する管路Fを追加している。すなわち、圧力スイング吸着装置9に吸着させた二酸化炭素ガスを、真空ポンプ10を利用して脱着させ、その大部分を管路Fに送り、圧縮機吸込ホルダ11に通してから圧縮機12で圧縮し、原料の一部として再利用し、残部をフレアスタック13で焼却するようになっている。
【0020】
図3は、上記浸炭処理用ガス製造設備の第3の実施の形態を示す構成図である。この実施の形態の浸炭処理用ガス製造設備は、上記第2の実施の形態(図2参照)において、液体窒素タンク20を追加し、その液体窒素を気化させた窒素ガスを、上記圧力スイング吸着装置9で得られた略50モル%の一酸化炭素ガスと水素ガスとの混合ガスに混合するようにしたものである。それ以外の部分は、上記第2の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0021】
この実施の形態では、上記液体窒素タンク20からの窒素ガスを混合することにより、浸炭処理用ガスの一酸化炭素ガスの濃度を、処理対象物に応じて、上記略50モル%から薄めるように調整することができる。なお、一酸化炭素ガスの濃度の下限値は30モル%である。このような浸炭処理用ガスを用いることにより、浸炭対象品の材質や厚み等に応じて一酸化炭素ガスの濃度を調節し、最適な浸炭を行うことができる。
【0022】
図4は、上記浸炭処理用ガス製造設備の第4の実施の形態を示す構成図である。この実施の形態の浸炭処理用ガス製造設備は、図2に示す浸炭処理用ガス製造設備に、一酸化炭素ガス容器31を追加し、その一酸化炭素ガスを、図2に示す浸炭処理用ガス製造設備で得られたRXガスに混合し、一酸化炭素ガスの高濃度化を可能にしたものである。なお、参考形態として、従来のRXガス製造設備30に、上記と同様に、一酸化炭素ガス容器31を追加し、その一酸化炭素ガスを、従来のRXガス(一酸化炭素ガス:20〜25モル%)に混合し、一酸化炭素ガスを高濃度化してもよい。
【0023】
この実施の形態では、上記一酸化炭素ガスを混合することにより、先に述べたように、RXガスにおける一酸化炭素ガスの濃度を高めて改質RXガスとし、浸炭対象品の材質や厚み等に応じて、30〜60モル%の範囲内で調整することができる。このような浸炭処理用ガスを用いることにより、浸炭速度を速めることができる。また、図2に示す浸炭処理用ガス製造設備で得られたRXガスが濃度不足だったり、浸炭対象品が変わってより高濃度のものが求められる場合等に、迅速に対応することができるようになる。
【0024】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0025】
〔実施例1〜3および比較例1,2〕
日本工業規格(JIS)で規定されるSUS316(Cr含有18重量%,Ni含有12重量%,Mo含有2.5重量%,残部Fe)の2.5mm厚板片を準備し、それを浸炭炉に入れ、450℃まで加熱し、下記の表1に示す組成のRXガスを用いて浸炭処理した。その浸炭処理は、表面硬度が870〜890Hv、浸炭層の深さが20μmになるように行った。そして、その浸炭処理に要した時間を測定した。その結果を下記の表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
上記の結果から、RXガスの一酸化炭素ガスの濃度が30〜60モル%である実施例1〜3は、一酸化炭素ガスの濃度が25モル%と低い比較例1と比較して、浸炭速度が速いことがわかる。なかでも、一酸化炭素ガスの濃度も水素ガスの濃度も50モル%である実施例2が最も速いことがわかる。また、比較例2のように、一酸化炭素ガスの濃度を65モル%と高くし過ぎても、水素ガスの濃度が35モル%と低くなるため、浸炭速度が遅くなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、浸炭速度を速めることに利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 第1ヒータ
3 第2ヒータ
4 改質器
9 圧力スイング吸着装置
図1
図2
図3
図4