(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の事象が終了した場合に、前記経過時間と、予め設定され不揮発性のメモリーに記憶した別な所定時間(Tmin)とを比較する比較ステップをさらに有し、前記経過時間が前記所定時間(Tmin)を越えたかを判断して、前記経過時間が前記所定時間(Tmin)以下の場合に、所定時間(Tmin)に満たない旨を警報することを特徴とする請求項1記載の計時方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーソナルコンピュータ(PC)やマイクロコンピュータ(マイコン)などの装置では、ある事象が発生してからどの程度の時間が経過したかを計時する機能を備えている。このような経過時間の計時方法としては、コンピュータが内部処理の同期を取るために用いるクロック信号、あるいはこのクロック信号を逓減した信号(以下、これらの信号をあわせて「計時信号」と呼ぶ)を、事象発生時から逐次カウントしていく方式が一般的である。
【0003】
これに関連する技術としては、特許文献1が挙げられる。すなわち、特許文献1に記載のマイコン11が有する内部時計12は、クロックジェネレータ又は発振子と呼ばれるハードウェアから出力されるクロック信号をカウントすることで計時を行うものである。
【0004】
しかしながら、このような計時方法は、コンピュータ内部で発生する計時信号を逐次カウントするものであるため、仮に計時中に装置が何らかの原因で故障したり、あるいは停止した場合に、計時信号の取得が遮断され、正確な計時を継続することができなくなるおそれがあった。
【0005】
また、上記のように装置が故障・停止した後に装置を再立ち上げ(再起動)し、その後に計時を再開しようとしても、停止する直前まで保持していた計時中の時間に関するデータ(以下、このデータを「計時値」と呼ぶ)を失っている可能性が高く、その場合には再立ち上げ後に正確な計時を再開することができない。
【0006】
さらに、このような計時値の消失を避けるために、計時値を不揮発性のメモリーなどに逐次書き込むことも考えられるが、このようにメモリーへ頻繁に書き込むことは、書き込み回数制限の点からも現実的ではなく、また、仮にこのように装置が停止する直前の計時値が不揮発性メモリーに保存されていた場合であっても、実際に装置が停止していた時間までは分からないため、やはり正確な計時を再開することができない。また、これらの課題を解決する方法として、装置を二重系などの冗長構成とすることが考えられるが、コスト増となるため好ましくない。
【0007】
これらの点は、例えば踏切故障検知装置においても問題となる。踏切故障検知装置は、踏切制御装置が制御する踏切警報の開始から警報の終了までの時間(警報時間)を計時し監視する機能を備えており、この警報時間が予め決められた時間より短かった場合には警報を継続するよう踏切制御装置の制御をバックアップし、逆に長かった場合などにはその旨を外部に警報する。他の踏切監視装置についても、所定の事象が発生した場合に、当該事象の発生時点から当該事象が継続する現時点までの経過時間を計時する機能が必要である。
【0008】
ところが、このような経過時間の計時の途中で仮に踏切故障検知装置が何らかの原因で故障したり、あるいは停止した場合には、計時信号の取得が遮断され、正確な警報時間の計時を継続することができなくなり、その影響は甚大となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、計時を行う装置が計時中に何らかの理由で故障・停止したり、停止後に再立ち上げされた場合であっても、正確な計時を継続することが可能な計時方法及び計時プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、計時の対象となる所定の事象が発生してからの経過時間を計時する装置における計時方法であって、前記所定の事象が発生した後の直近の計時周期において、GPS又は電波時計から送信される絶対時刻を取得して不揮発性のメモリーに記憶し、当該絶対時刻を前記所定の事象の発生時刻とする事象発生時刻取得ステップと、その後の直近の計時周期での絶対時刻をGPS又は電波時計から取得するとともに、当該取得した計時周期での絶対時刻と、前記所定の事象の発生時刻との差分を前記経過時間として求める経過時間算出ステップと、
前記事象発生時刻取得ステップにおいて所定の事象の発生時刻を取得した後に、前記装置が再立ち上げされた場合、当該再立ち上げが完了した後の直近の計時周期での絶対時刻をGPS又は電波時計から取得し、当該取得した絶対時刻と、前記所定の事象の発生時刻との差分を、当該再立ち上げ完了までの経過時間として求める第2の経過時間算出ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の計時方法において、前記所定の事象が継続している場合に、前記経過時間と、予め設定され不揮発性のメモリーに記憶した所定時間(Tmax)とを比較する比較ステップをさらに有し、前記経過時間が前記所定時間(Tmax)を越えていない場合には、前記経過時間算出ステップに戻って次の計時周期における絶対時刻をGPS又は電波時計から取得し、当該取得した次の計時周期における絶対時刻と、前記所定の事象の発生時刻との差分を再度求め、この差分を新たな経過時間とすることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の計時方法において、前記所定の事象が終了した場合に、前記経過時間と、予め設定され不揮発性のメモリーに記憶した別な所定時間(Tmin)とを比較する比較ステップをさらに有し、前記経過時間が前記所定時間(Tmin)を越えたかを判断して、
前記経過時間が前記所定時間(Tmin)以下の場合に、所定時間(Tmin)に満たない旨を警報することを特徴とする。
【0015】
請求項
4に記載の発明は、計時の対象となる所定の事象が発生してから監視時刻までの残り時間を計時する装置における計時方法であって、前記所定の事象が発生した後の直近の計時周期において、GPS又は電波時計から送信される絶対時刻を取得して不揮発性のメモリーに記憶し、当該絶対時刻を前記所定の事象の発生時刻とする事象発生時刻取得ステップと、前記所定の事象の発生時刻に、予め設定された経過時間を加えて前記監視時刻を求め、この監視時刻を不揮発性のメモリーに記憶する監視時刻算出ステップと、前記所定の事象が継続している場合に、その後の直近の計時周期での絶対時刻をGPS又は電波時計から取得するとともに、当該取得したこの計時周期での絶対時刻と、前記監視時刻との差分を求め、当該差分を前記残り時間とする残り時間算出ステップと、
前記事象発生時刻取得ステップにおいて所定の事象の発生時刻を取得した後に、前記装置が再立ち上げされた場合、当該再立ち上げが完了した後の直近の計時周期での絶対時刻をGPS又は電波時計から取得し、当該取得した絶対時刻と、前記監視時刻との差分を、当該再立ち上げ完了から監視時刻までの残り時間として求める第2の残り時間算出ステップと、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項
5に記載の発明は、請求項
4記載の計時方法において、前記残り時間が0以下となっているか否かを確認する確認ステップをさらに有し、前記残り時間が0以下でない場合には、前記残り時間算出ステップに戻って次の計時周期における絶対時刻をGPS又は電波時計から取得し、当該取得した次の計時周期における絶対時刻と、前記監視時刻との差分を再度求め、当該差分を新たな残り時間とすることを特徴とする。
【0020】
請求項
6に記載の発明は、請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の計時方法において、前記装置は踏切監視装置であることを特徴とする。
【0021】
請求項
7に記載の発明は、計時プログラムであり、請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の計時方法の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明によれば、所定の事象が発生した後の直近の計時周期において、GPS又は電波時計から送信される絶対時刻を取得して不揮発性のメモリーに記憶し、当該絶対時刻を前記所定の事象の発生時刻とする事象発生時刻取得ステップと、その後の直近の計時周期での絶対時刻をGPS又は電波時計から取得するとともに、当該取得した計時周期での絶対時刻と、前記所定の事象の発生時刻との差分を前記経過時間として求める経過時間算出ステップと、
前記事象発生時刻取得ステップにおいて所定の事象の発生時刻を取得した後に、前記装置が再立ち上げされた場合、当該再立ち上げが完了した後の直近の計時周期での絶対時刻をGPS又は電波時計から取得し、当該取得した絶対時刻と、前記所定の事象の発生時刻との差分を、当該再立ち上げ完了までの経過時間として求める第2の経過時間算出ステップと、を有するので、装置内部で発生する計時信号を逐次カウントすることなく、装置外部(GPS又は電波時計)から送信される絶対時刻を用いて経過時間を計時することができる。これにより、仮に計時の途中で装置が何らかの原因で停止し、その後再立ち上げされたとしても、計時信号に依らない正確な経過時間の計時を継続することができる。
また、所定の事象の発生時刻を取得した後に、前記装置が再立ち上げされた場合、前記所定の事象が発生してから装置の再立ち上げが完了した時点までの経過時間を求めることができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1記載の計時方法において、前記所定の事象が継続している場合に、前記経過時間と、予め設定され不揮発性のメモリーに記憶した所定時間(Tmax)とを比較する比較ステップをさらに有し、前記経過時間が前記所定時間(Tmax)を越えていない場合には、前記経過時間算出ステップに戻って次の計時周期における絶対時刻をGPS又は電波時計から取得し、当該取得した次の計時周期における絶対時刻と、前記所定の事象の発生時刻との差分を再度求め、この差分を新たな経過時間とするので、経過時間が予め設定された所定時間を越えるまで、経過時間の算出を繰り返し行うことができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1記載の計時方法において、前記所定の事象が終了した場合に、前記経過時間と、予め設定され不揮発性のメモリーに記憶した別な所定時間(Tmin)とを比較する比較ステップをさらに有し、前記経過時間が前記所定時間(Tmin)を越えたかを判断して、
前記経過時間が前記所定時間(Tmin)以下の場合に、所定時間(Tmin)に満たない旨を警報するので、例えば踏切の警報開始から警報終了までの経過時間が所定時間(Tmin)に満たなかった場合に、その旨を警報することができる。
【0026】
請求項
4に記載の発明によれば、所定の事象が発生した後の直近の計時周期において、GPS又は電波時計から送信される絶対時刻を取得して不揮発性のメモリーに記憶し、当該絶対時刻を前記所定の事象の発生時刻とする事象発生時刻取得ステップと、前記所定の事象の発生時刻に、予め設定された経過時間を加えて前記監視時刻を求め、この監視時刻を不揮発性のメモリーに記憶する監視時刻算出ステップと、前記所定の事象が継続している場合に、その後の直近の計時周期での絶対時刻をGPS又は電波時計から取得するとともに、当該取得したこの計時周期での絶対時刻と、前記監視時刻との差分を求め、当該差分を前記残り時間とする残り時間算出ステップと、
前記事象発生時刻取得ステップにおいて所定の事象の発生時刻を取得した後に、前記装置が再立ち上げされた場合、当該再立ち上げが完了した後の直近の計時周期での絶対時刻をGPS又は電波時計から取得し、当該取得した絶対時刻と、前記監視時刻との差分を、当該再立ち上げ完了から監視時刻までの残り時間として求める第2の残り時間算出ステップと、を有するので、請求項1記載の発明と同様に、装置内部で発生する計時信号を逐次カウントすることなく、装置外部(GPS又は電波時計)から送信される絶対時刻を用いて残り時間を計時することができる。これにより、仮に計時の途中で装置が何らかの原因で停止し、その後再立ち上げされたとしても、計時信号に依らない正確な残り時間の計時を継続することができる。
また、所定の事象の発生時刻を取得した後に、装置が再立ち上げされた場合、装置の再立ち上げが完了した時点から監視時刻までの残り時間を求めることができる。また、この残り時間を用いれば、再立ち上げ完了の時点で既に監視時刻に達しているか否かを確認することができる。
【0027】
請求項
5に記載の発明によれば、請求項
4記載の計時方法において、前記残り時間が0以下となっているか否かを確認する確認ステップをさらに有し、前記残り時間が0以下でない場合には、前記残り時間算出ステップに戻って次の計時周期における絶対時刻をGPS又は電波時計から取得し、当該取得した次の計時周期における絶対時刻と、前記監視時刻との差分を再度求め、当該差分を新たな残り時間とするので、残り時間が0以下となるまで残り時間の算出を繰り返し行うことができる。
【0031】
請求項
6に記載の発明によれば、請求項1ないし
5に記載の発明による効果を踏切監視装置においても奏することができる。
【0032】
請求項
7に記載の発明によれば、前記請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の計時方法の各ステップをコンピュータに実行させる計時プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の一実施の形態に係る計時方法について、統合型踏切監視装置を例示して説明する。統合型踏切監視装置は、踏切故障検知器や踏切情報メモリー、電源監視タイマなどの複数の踏切監視装置で実現される機能をひとつの装置内に集約し、これらの機能を装置単体で実現するもので、各種装置が個別に設置されていたことによる設置スペースの増大や、装置間での配線作業の煩雑化などの課題を解消し得るものとして開発が進められている。
【0035】
図1は、この統合型踏切監視装置1が備える主な機能を示す機能ブロック図である。ここでは、その主な機能である踏切故障検知機能2、電源監視機能3、低電圧検知機能4、時刻補正機能5、情報メモリー機能6、自動再立ち上げ機能7を例示して説明する。
【0036】
(1)踏切故障検知機能2
列車が踏切道に接近したこと、あるいは踏切道を通過したことを検知し、踏切の警報開始や終了を制御する踏切制御装置の動作状態を監視して、制御シ−ケンスに不合理がある場合には、踏切を強制的に警報制御する。また、踏切制御装置が制御する踏切警報の開始から警報の終了までの時間(警報時間)を計時し監視する機能を備えており、この警報時間が予め決められた時間より短かった場合には警報を継続するよう踏切制御装置の制御をバックアップし、逆に長かった場合などにはその旨を外部に警報する。
【0037】
(2)電源監視機能3
前記踏切制御装置や、統合型踏切監視装置1などへの直流電源を供給する定電圧整流器の入力である交流電源の停電を検知し、停電が予め設定された時間継続した場合には、その旨を外部に警報出力する。
定電圧整流器にはバッテリーが付加されているため、交流電源が停電しても直ちに各装置が停止することはないが、停電が長時間続いた場合には、バッテリーが空になる前(これが予め設定された時間となる)に警報を出力し処置を促す。
【0038】
(3)低電圧検知機能4
定電圧整流器の入力である交流電圧値、及び定電圧整流器の出力である直流電圧値が、予め設定された値より低下し、その状態が予め設定された時間継続した場合には、その旨を外部に警報出力する。
【0039】
(4)時刻補正機能5
GPS(Global Positioning System)衛星からの電波をGPSアンテナ及びGPS受信器によって受信し、その中の時計データ(UTC)を抽出して、統合型踏切監視装置1内の時刻を補正するとともに、時計を内蔵するその他の装置(踏切制御装置など)に時刻補正信号を出力し、時刻の誤差をその信号により補正する。また伝送により時刻補正を行う装置に対して、時刻データ送信要求により正確な時刻データを送信する。
【0040】
このほか、踏切制御装置の制御シ−ケンスや警報開始・終了時刻、警報時間、その他装置の動作状態を記憶し、発生時刻を付したジャーナルとして出力するための情報メモリー機能6や、何らかの原因で統合型踏切監視装置1が故障・停止した場合に自動的に再立ち上げ(再起動)を行う自動再立ち上げ機能7を備えている。特に、自動再立ち上げ機能7は、装置が停止した場合に前述の複数の機能が停止してしまうことによる影響を回避するとともに、装置としての稼動性を向上させるものとして重要な機能である。
【0041】
主に上記踏切故障検知機能2、電源監視機能3、低電圧検知機能4で用いられるこの発明の計時方法は、統合型踏切監視装置1の制御手段(CPU:Central Prosseccing Unit、図示省略)が計時プログラムを読み込むことにより実行され、(1)所定の事象が発生した時点からの経過時間、及び(2)所定の事象が発生した時点から監視時刻までの残り時間について計時する。ここでは便宜上、(1)の計時を「カウントアップ」、(2)の計時を「カウントダウン」と呼ぶこととし、これら各計時について図面に基づき説明する。
【0042】
<カウントアップ>
図2及び
図3は、カウントアップ(経過時間の計時)の概要を示す説明図及び処理フローである。
図2において横軸は時刻を示し、Ts、t1、t2・・・は絶対時刻を取得するタイミングを示している。ここではこの絶対時刻を取得するタイミングを「計時周期」と呼ぶこととし、例えば計時周期t1において取得した絶対時刻を、同じくt1と表現する。
【0043】
まず、統合型踏切監視装置1の制御手段は、計時の対象となる所定の事象が発生したか否かを確認する(
図3のステップS01)。ここで、所定の事象としては、例えば踏切の警報が開始されたり、停電が発生した場合などがあるが、計時の対象としてはこれらに限られず、任意の事象を設定することができる。
その結果、事象が発生していなければ監視状態に戻り、発生した場合には、当該事象発生後の直近の計時周期の絶対時刻(
図2に示すTs)を取得し、これを統合型監視装置1の内部あるいは外部に設けた図示しない不揮発性のメモリーに記憶する(ステップS02:事象発生時刻取得ステップ)。
【0044】
ここで、事象が発生した時点と、絶対時刻を取得するタイミングである計時周期とは必ずしも一致せず、非同期であると考えられるため、実際には上記のように事象が発生した後の直近の計時周期において絶対時刻を取得し、これを当該事象発生時の絶対時刻とする。
【0045】
次に、制御手段は、統合型踏切監視装置1に故障が発生し装置が停止しているか否かを確認する(ステップS03)。ここで、故障が発生し装置が停止している場合にはステップS14に移り、前述した自動再立ち上げ機能により装置の再立ち上げを行った後、計時を継続する。なお、この場合の計時処理については後述する。
一方、故障が発生しておらず装置も停止していない場合は、次のステップS04に移って計時を継続する。
【0046】
次に、制御手段は、ステップS02で事象発生時刻を取得した計時周期後の直近の計時周期における絶対時刻(
図2に示すt1)を取得する(ステップS04)。
【0047】
次に、制御手段は、ステップS04で取得した絶対時刻t1と、ステップS02で取得した事象発生後の直近の計時周期における絶対時刻Tsとの差分(t1−Ts)を、事象発生時から周期t1までの経過時間として算出し(ステップS05:経過時間算出ステップ)、この経過時間(差分)をモニタなどの表示手段に表示する(ステップS06)。なお、事象発生時から周期t1までの間に、年月日などをまたぐような場合には、取得した絶対時刻に含まれる年月日に関するデータを加味して差分の算出を行えばよい。
【0048】
次に、制御手段は、当該発生した事象が終了しているか否かを確認する(ステップS07)。事象が終了している場合には、事象が発生し事象が終了するまでに継続した時間が所定の時間以下であったときに、その旨を外部に警報する機能が必要となる場合があるが、制御手段は、ステップS06で求めた経過時間について、外部に警報するための基準となる所定時間Tminが設定されているか否かを確認する(ステップS08)。
【0049】
この所定時間Tminは、前記不揮発性のメモリーに記憶されている。所定時間Tminが設定されていなければ、それ以降の計時を要しないため処理を終了する。所定時間が設定されていることが確認されれば、ステップS09へ移り、経過時間と当該所定時間Tminとを比較し、経過時間が当該所定時間Tminを越えたか否かを確認する(比較ステップ)。
【0050】
その結果、経過時間が所定時間Tmin以下の場合は、その旨をモニタや警報機などの出力手段を介して外部に警報し(ステップS10)、計時を終了する。この場合の警報は、例えば踏切警報の開始から警報の終了までの時間(警報時間)が予め決められた所定時間Tmin(例えば数秒)より短かった場合を報知するものである。経過時間が所定時間Tminを越えている場合は、何もせずに処理を終了する。
【0051】
一方、ステップS07における確認の結果、事象が終了していない(事象が継続している)場合には、計時を継続すべく次のステップS11へ移る。
ここで、事象が発生し事象が継続した時間が所定の時間を越えたときに、その旨を外部に警報する機能が必要となる場合があるが、制御手段は、ステップS06で求めた経過時間について、外部に警報するための基準となる所定時間Tmaxが設定されているか否かを確認する(ステップS11)。この所定時間Tmaxは、前記不揮発性のメモリーに記憶されている。所定時間Tmaxが設定されていなければ、当該経過時間については特に外部に警報することなく、経過時間の計時及び表示を継続するものとしてステップS03に戻り、装置が停止しているか否かを確認する。
【0052】
その結果、装置に故障・停止がなければステップS04へ移り、次の直近の計時周期における絶対時刻(
図2に示すt2)をGPS又は電波時計から取得し、以下同様に計時を行う。
【0053】
一方、ステップS11において所定時間Tmaxが設定されていることが確認されれば、ステップS12へ移り、経過時間と当該所定時間Tmaxとを比較し、経過時間が当該所定時間Tmaxを越えているか否かを確認する(比較ステップ)。所定時間Tmaxを越えている場合は、その旨をモニタや警報機などの出力手段を介して外部に警報し(ステップS13)、計時を終了する。この場合の警報は、例えば踏切警報の開始から警報の終了までの時間(警報時間)が予め決められた所定時間Tmax(例えば数十分)より長かった場合を報知するものである。所定時間Tmaxを越えていない場合は、さらに計時を継続すべくステップS03へ戻る。
【0054】
<カウントアップ:再立ち上げされた場合>
次に、カウントアップ中に統合型踏切監視装置1が何らかの原因で故障・停止し、再立ち上げを行った場合の処理について説明する。
【0055】
制御手段は、
図3に示すステップS01、02の処理を前述と同様に行った後、ステップS03において、統合型踏切監視装置1に故障が発生し装置が停止しているか否かを確認する。ここで、故障が発生し装置が停止している場合にはステップS14に移り、前述した自動再立ち上げ機能により装置の再立ち上げを行うとともに、この再立ち上げ完了後の直近の計時周期における絶対時刻(
図2に示すtr)を取得する(ステップS15)。
【0056】
この再立ち上げ完了の時点も、実際の計時周期とは非同期であると考えられるため、ここでは上記のように再立ち上げ完了後の直近の計時周期における絶対時刻を、当該再立ち上げ完了時の絶対時刻とする。
【0057】
次に、制御手段は、ステップS15で取得した絶対時刻trと、ステップS02で取得した絶対時刻Tsとの差分(tr−Ts)を算出する。この差分は、所定の事象が発生してから装置が故障・停止し、再立ち上げを完了するまでに経過した時間とみなすことができる(ステップS16:第2の経過時間算出ステップ)。
【0058】
その後、制御手段は、前述のステップS06へ移り、ステップS16で求めた経過時間(差分)をモニタなどの表示手段へ表示する。これ以降の処理については前述と同様であり、例えば次のステップS07において事象が終了していることが確認されれば、ステップS08〜S10の処理を適宜行う。一方、事象が継続していることが確認されれば、ステップS11〜S13の処理を適宜行う。
【0059】
このように、この発明に係る計時方法によれば、GPS又は電波時計から送信される絶対時刻を用いて経過時間を算出することにより、装置内部で発生する計時信号をカウントする必要がなくなる。したがって、計時を開始した後に何らかの原因で装置が故障・停止し、再立ち上げされた場合であっても、正確な経過時間の計時を継続することができる。
【0060】
また、統合型踏切監視装置1が再立ち上げされた場合に、再立ち上げ完了後の直近の計時周期における絶対時刻を取得し、この時刻と事象発生時の絶対時刻との差分を算出すれば、再立ち上げ完了の時点で既に所定時間を越えているか否かを確認することができ、所定時間を越えていればその旨を外部へ警報し、それ以降の計時を行うことなく計時を終了することも可能となる。
【0061】
<カウントダウン>
次に、所定の事象の発生した時点から、予め設定された経過時間(以下、これを監視時間と呼ぶ)までの残り時間を計時するカウントダウンについて、
図4及び
図5に示す処理フローを用いて説明する。
図4において横軸は時刻を示し、Ts、t1、t2・・・は
図2と同様に計時周期及びこの計時周期で取得した絶対時刻を示している。また、監視時刻(
図4に示すTe)とは、所定の事象の発生時刻に予め設定された経過時間(監視時間)を加算して求めたいわゆる目標時刻であり、この監視時刻Teに到達するまでの残り時間を逐次算出する。
【0062】
まず、制御手段は、停電の発生など、計時の対象となる事象が発生したか否かを確認する(ステップS21)。発生していなければ監視状態に戻り、発生した場合には、当該事象発生後の直近の計時周期の絶対時刻(
図4に示すTs)を取得し、これを前記不揮発性のメモリーに記憶する(ステップS22:事象発生時刻取得ステップ)。
【0063】
次に、制御手段は、ステップS22で取得した絶対時刻Tsに、予め設定された経過時間tを加算して監視時刻(
図4に示すTe)を求め、この監視時刻Teを前記不揮発性のメモリーに記憶する(ステップS23:監視時刻算出ステップ)。
【0064】
次に、制御手段は、当該発生した事象が終了しているか否かを確認する(ステップS24)。事象が終了している場合にはそれ以降の計時を要さないため処理を終了し、事象が終了していない(事象が継続している)場合には計時を継続すべく次のステップS25へ移る。
【0065】
次に、制御手段は、統合型踏切監視装置1に故障が発生し装置が停止しているか否かを確認する(ステップS25)。ここで、故障が発生し装置が停止している場合にはステップS31に移り、前述した自動再立ち上げ機能により装置の再立ち上げを行った後、計時を継続する。なお、この場合の計時処理については後述する。
一方、故障が発生しておらず装置も停止していない場合は、次のステップS26に移って計時を継続する。
【0066】
次に、制御手段は、ステップS22で事象発生時刻を取得した計時周期後の直近の計時周期での絶対時刻(
図4に示すt1)を取得し(ステップS26)、ステップS23で算出した監視時刻Teと、当該取得した絶対時刻t1との差分(Te−t1)を、監視時刻までの残り時間として算出し(ステップS27:残り時間算出ステップ)、この残り時間をモニタなどの表示手段に表示する(ステップS28)。
なお、監視時刻Teが翌日、翌々日、あるいは翌年など、日またがりとなる場合には、取得した絶対時刻に含まれる年月日に関するデータを加味して差分の算出を行えばよい。
【0067】
次に、制御手段は、ステップS28で得た差分(残り時間)が0以下となっているか否かを確認する(ステップS29:確認ステップ)。0以下となっている場合は、既に監視時刻Teに到達しているため、その旨をモニタや警報機などの出力手段を介して外部に警報し(ステップS30)、計時を終了する。
【0068】
一方、差分(残り時間)が0以下でない場合は、さらに計時を継続すべくステップS24に戻り、事象が終了しているか否かを確認する。終了していなければ、次の計時周期における絶対時刻(
図4に示すt2)をGPS又は電波時計から取得する。以下、差分(残り時間)が0以下となるまで、ステップS25〜S28を繰り返す。
【0069】
<カウントダウン:再立ち上げされた場合>
次に、カウントダウン中に統合型踏切監視装置1が何らかの原因で故障・停止し、再立ち上げを行った場合の処理について説明する。
【0070】
制御手段は、
図3に示すステップS21〜24の処理を前述と同様に行った後、ステップS25において、統合型踏切監視装置1に故障が発生し装置が停止しているか否かを確認する。ここで、故障が発生し装置が停止している場合にはステップS31に移り、前述した自動再立ち上げ機能により装置の再立ち上げを行うとともに、この再立ち上げ完了後の直近の計時周期における絶対時刻(
図5に示すtr)を取得する(ステップS32)。
【0071】
次に、制御手段は、ステップS32で取得した絶対時刻trと、ステップS23で算出した監視時刻Teとの差分(Te−tr)を算出する。この差分は、所定の事象が発生してから装置が故障・停止し、再立ち上げを完了した時点における、監視時刻Teまでの残り時間とみなすことができる(ステップS33:第2の残り時間算出ステップ)。
【0072】
その後、制御手段は、前述のステップS28へ移り、ステップS33で求めた残り時間(差分)をモニタなどの表示手段へ表示する。これ以降の処理については前述と同様であり、例えばステップS33で求めた残り時間(差分)が0以下である場合には、その旨を外部に警報して計時を終了する。一方、残り時間(差分)が0以下でない場合にはステップS24へ戻り、さらに計時を継続する。
【0073】
このように、この発明に係る計時方法によれば、GPS又は電波時計から送信される絶対時刻を用いて監視時刻までの残り時間を算出することにより、装置内部で発生する計時信号をカウントする必要がなくなる。したがって、計時を開始した後に何らかの原因で装置が故障・停止し、再立ち上げされた場合であっても、再立ち上げ後の計時周期における絶対時刻を取得することで、正確な残り時間の計時を継続することができる。
【0074】
また、統合型踏切監視装置1が再立ち上げされた場合に、再立ち上げ完了後の直近の計時周期における絶対時刻を取得し、この時刻と監視時刻との差分を算出すれば、再立ち上げ完了の時点で既に監視時刻に到達しているか否かを確認することができ、監視時刻に到達していればその旨を外部へ警報し、それ以降の計時を行うことなく計時を終了することも可能となる。
【0075】
なお、上記実施例では、所定の事象が発生してからの経過時間を計時するカウントアップと、所定の事象が発生してから監視時刻までの残り時間を計時するカウントダウンとを個別の処理として説明したが、これらの計時は相互に排除しあうものではなく、並行して行うことも可能である。
【0076】
すなわち、所定の事象発生時の絶対時刻Tsから監視時刻Teを算出した後、計時周期における絶対時刻t1、t2・・・の取得を繰り返しながら、上述の方法で経過時間及び残り時間を並行して算出すればよい。これにより、事象発生からの経過時間と、監視時刻までの残り時間とを同時に求めることができ、利便性も向上する。
【0077】
また、GPS又は電波時計から絶対時刻を取得する計時周期としては、現行の汎用のGPSの種類により、例えば200ms間隔、250ms間隔、あるいは1s間隔となるが、必要とする精度に応じてこれらの間隔を逓倍した間隔としてもよい。
なお、本実施例における統合型踏切監視装置1において計時の対象となる事象とその経過時間は、例えば踏切警報時間は数十秒、電源の停電の監視時間は分から時のオーダーであるため、計時周期は1秒間隔とすれば実用上差し支えないものと考えられる。
【0078】
また、絶対時刻の取得においては、少なくとも1個のGPS衛星から時刻情報を受信すれば十分であり、同時に3個以上のGPS衛星からの情報が必要となる位置情報の取得に比べて汎用性が高く、GPSアンテナを屋外に設置すれば、任意の場所で絶対時刻の取得が可能となる。
【0079】
<別の実施例>
次に、別の実施例に係る計時方法について説明する。上記の実施例では、GPS又は電波時計から送信される絶対時刻を計時周期ごとに取得していたのに対し、この実施例に係る計時方法では、統合型踏切監視装置の立ち上げ時(装置が故障・停止し、再立ち上げした時も含む)及び予め設定された時刻にのみ絶対時刻を取得し、この時刻を用いて統合型踏切監視装置1内に備えるシステム時計(カレンダー時計)を起動あるいは補正する。
そして、以降の処理においては、この起動あるいは補正されたシステム時計の時刻を用いて差分を算出することにより計時を行う。以下、
図6の処理フローを用いてその詳細を説明する。
【0080】
まず、制御手段は、予め設定された時刻(例えば午前1時など)に達したときに、当該時刻後の直近の計時周期においてGPS又は電波時計から絶対時刻を取得する(ステップS41)。そして、この絶対時刻を用いて、装置内部に備えるシステム時計(カレンダー時計)を起動あるいは補正する(ステップS42:システム時計起動ステップ)。
【0081】
このように起動あるいは補正されたシステム時計は、GPS又は電波時計から取得する絶対時刻に準ずる正確性を持つものと考えられる。したがって、これ以降の処理においては、このシステム時計の時刻を用いて差分の算出を行えば、同様に正確な計時を行うことができる。
【0082】
すなわち、ステップS43以降、装置が正常に動作しているときの処理は基本的には
図3に示したカウントアップの処理と同様であるため説明を省略するが、各ステップのうち絶対時刻を取得するステップ(
図6に示すステップS44、46)においては、絶対時刻をGPS又は電波時計から取得する代わりに、装置内部のシステム時計から取得する。そして、このシステム時計から取得した絶対時刻を用いて、前述と同様の手順で経過時間の算出などを行う(ステップS43〜S55)。
【0083】
一方、装置が故障・停止し、再立ち上げした場合には(ステップS56)、システム時計が正しいことは保障されないので、再立ち上げ完了後に、GPS又は電波時計から直近の計時周期における絶対時刻を取得し(ステップS57)、これを絶対時刻trとして以降の処理を行う。
【0084】
このように、予め設定された時刻に取得した絶対時刻を用いて起動あるいは補正されたシステム時計の時刻を用いて計時を行うことにより、計時周期ごとにGPS又は電波時計から絶対時刻を取得する必要がなくなり、処理を簡素化しつつ正確な計時が可能となる。
【0085】
なお、ここでは、上述のように起動あるいは補正されたシステム時計を用いてカウントアップを行う場合を説明したが、同様の手順でカウントダウンを行うことができるのは勿論である。
【0086】
なお、本発明は、統合型踏切監視装置に適用することを主目的に創案したものであるが、GPSや電波時計から絶対時刻を取得する周期が、当該装置で必要とする経過時間などの計時の精度を満足するものであれば、どのような目的の装置にも適用でき、計時の途中で当該装置が何らかの原因で停止したり、停止後に再立ち上げされた場合であっても、正確な計時の継続を簡便に実現できる有用で、かつ適用範囲が広い技術である。