特許第6234719号(P6234719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234719
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   A61B6/00 320M
   A61B6/00 300G
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-138954(P2013-138954)
(22)【出願日】2013年7月2日
(65)【公開番号】特開2015-9097(P2015-9097A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久典
(72)【発明者】
【氏名】笠岡 隼人
(72)【発明者】
【氏名】吉江 翔太郎
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−274740(JP,A)
【文献】 特開平11−151234(JP,A)
【文献】 特開平09−129395(JP,A)
【文献】 特開2006−136500(JP,A)
【文献】 特開2013−111366(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/074471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線発生部と、
前記X線発生部により発生され、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線の照射範囲を限定する照射範囲限定器と、
前記X線検出部と前記X線発生部と前記照射範囲限定器と天板とを、前記天板の短軸に平行な回転軸周りに回転可能に支持する回転支持機構と、
前記照射範囲の大きさと撮影モードと検査名称とのうち少なくとも一つと、前記回転軸周りにおける前記天板の回転角度とに基づいて、胃領域の撮影方法から食道領域の撮影方法への切り替えを実行する撮影方法切り替え部と、
前記切り替えられた撮影方法に対応する撮影条件を決定する条件決定部と、
前記撮影条件に従って前記被検体を撮影するために、前記X線発生部と前記照射範囲限定器とを制御する制御部と、
を具備し、
前記食道領域の撮影方法に対応する撮影条件は、
前記胃領域の撮影方法におけるX線の線量より多い線量であって、X線曝射時間より短い曝射時間であること、
を特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記照射範囲の大きさは、
前記照射範囲のうち前記短軸に沿った長さの所定の割合であって、前記長さの中点を含む大きさであり、
前記撮影モードは、
前記被検体を、所定のフレームレートで複数回に亘って撮影するモードであって、
前記回転角度は、
前記天板を鉛直方向に沿って立てた角度であり、
前記検査名称は、
前記食道領域の撮影に関する名称であること、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記X線検出部からの出力に基づいて、医用画像を発生し、処理する画像発生・処理部と、
前記医用画像を表示する表示部とを更に具備し、
前記条件決定部は、
前記食道領域の撮影方法に対応する画像処理条件を決定し、
前記制御部は、
前記撮影条件に従って撮影された前記医用画像を前記画像処理条件に従って画像処理し、表示するために、前記表示部を制御すること、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記画像処理条件は、
前記胃領域に関する前記医用画像に比べて高コントラスト、高濃度であること、
を特徴とする請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記医用画像を記憶する記憶部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記食道領域の撮影方法に対応する所定のタグを前記食道領域に関する前記医用画像とともに前記記憶部に記憶させるために、前記記憶部を制御すること、
を特徴とする請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記撮影方法切り替え部は、
前記照射範囲の大きさが最大の大きさである場合、前記食道領域の撮影方法から前記胃領域の撮影方法への切り替えを実行すること、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記X線検出部を前記天板の長軸方向に沿って移動可能に支持する移動支持機構と、
前記食道領域の上端と下端とを入力する入力部とをさらに具備し、
前記制御部は、前記撮影条件に基づいて、
前記X線検出部における前記X線の検出面の一端を前記上端に合わせた位置で、前記食道領域のうち前記上端と頚部食道と胸部上部食道と胸部中部食道とを有する上部食道領域に対する第1撮影を実行し、
前記第1撮影の後に、前記検出面における前記一端に対向する他端を前記下端に合わせた位置で、前記食道領域のうち前記下端と前記胸部中部食道と胸部下部食道と腹部食道とを有する下部食道領域に対する第2撮影を実行するために、
前記X線発生部と前記照射範囲限定器と前記X線検出部と前記移動支持機構とを制御す
ること、
を特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記条件決定部は、
前記第1撮影において前記上部食道領域に前記X線を照射させるために前記天板の長軸方向に沿って非対称に前記照射範囲を限定する第1限定領域を決定し、
前記第2撮影において前記下部食道領域に前記X線を照射させるために前記長軸方向に沿って非対称に前記照射範囲を限定する第2限定領域を決定し、
前記照射範囲限定器は、
前記第1撮影において前記照射範囲を前記第1限定領域に限定し、
前記第2撮影において前記照射範囲を前記第2限定領域に限定すること、
を特徴とする請求項に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体に対して透視撮影可能なX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体に対する上部消化管造影検査では、最初に食道の透視撮影が実行され、次いで胃の透視撮影が実行される。被検体に対する食道造影検査は、胃造影検査と同様に、良好な2重造影状態(空気により適度に膨らませた食道内壁に、バリウム造影剤を薄く付着させた状態)で実行される。しかしながら、食道における空気およびバリウム造影剤は、ともにすぐに胃に流れる。したがって、食道において、空気およびバリウム造影剤は、胃造影検査における空気およびバリウム造影剤と異なり、食道に溜まらない。このことから、良好な二重造影状態はほんのわずかな期間しか出現しない。良好な2重造影状態が維持されている期間をタイミングよく撮影するためには、連続撮影が有効である。
【0003】
以上の他にも、X線診断装置を用いた食道造影検査は、多くの点で胃造影検査と異なるため、診断能が高い撮影画像を得るためには、以下に示す各種設定を、操作者の入力指示により、胃用から食道用に変更する必要がある。
【0004】
1.透視撮影台起倒角:被検者が自分でコップを持って造影剤を飲むことが容易にできるよう、立位にする。
【0005】
2.分割フォーマット:食道は縦に長く幅が狭いため、検査に不要な部分にX線を当てず、加えて、食道領域を撮影した撮影画像を効率よく読影させるために、被検体の短軸方向(左右)をX線可動絞りで自動的に絞る、左右2分割または3分割を選択する。
【0006】
3.撮影モード/撮影シーケンス:良好な2重造影状態が維持されている期間をタイミングよく撮影するために、撮影シーケンスがフレームレート2乃至3fps(frame per second)、撮影枚数2乃至6枚程度の連続撮影を設定する。
【0007】
4.撮影線量:食道の撮影線量は胃撮影と同様にAEC(Auto Exposure Control:自動露出制御)で制御する。食道 は、胸椎の前であって、縦郭の中央にある。従って、食道造影検査において、食道の左右にはX線吸収が少ない肺野が撮影される。AECは照射野の平均線量を制御するため、肺野が照射野に入ると、縦郭、食道の線量が低下する。このため、胃撮影用のAECの設定で、食道を撮影すると、ノイズが増え診断能が低下する。これを避けるため、食道撮影では装置標準である胃撮影よりAECの線量が約30%程度増量される。
【0008】
5.撮影X線条件:上部食道は造影剤の流れが速い。また、下部食道は心臓の鼓動により振動する。これらのことから、撮影画像にボケが発生し、診断能が低下しやすい。これを避けるため、食道撮影では胃撮影より短い10msec程度の撮影時間となる撮影X線条件(100kV/250mA程度)が設定される。
【0009】
6.撮影画像処理条件:食道撮影で食道の背景となるのが、画像の中で低線量な領域で、さらに二重造影状態の食道との線量差が小さい、縦郭、胸椎である。したがって、胃撮影画像と同様な階調処理を掛けると低濃度の背景に対し少しの濃度差で食道が描出され、診断能が低下しやすい。これを避けるため、食道撮影では胃撮影より高濃度、高コントラストに処理する。
【0010】
7.DICOM TAG:DICOM Storageにおいて食道撮影画像を容易に検索できるよう、Body Part Examinedなどを食道用に設定する。
【0011】
具体的には、操作者は、X線診断装置において、食道撮影の前に、「検査名:上部消化管像検査」を選択し、検査を開始する。検査名には、撮影X線条件(数種類登録され、透視X線条件から撮影X線条件を決定する機能の登録番号)、DICOM TAG(Body Parts)、撮影画像処理条件の3つの項目が登録されている。これら3つの項目は、全て胃撮影用の設定になっている。また、撮影モードは胃撮影用のワンショット撮影に、撮影線量は装置標準(胃撮影用)に予め設定されている。操作者は、食道撮影の前には、上記7つの全項目を手動で食道撮影用に切替える操作を実行する。すなわち、
1.透視撮影台起倒角:立位
2.分割フォーマット:左右2分割または左右3分割を選択
3.撮影モード/撮影シーケンス:連続撮影に切替え/(例えば、フレームレート2fps撮影枚数4枚)に設定またはプリセットしたものから選択
4.撮影線量:AEC線量を装置標準(胃撮影用)より約30%増量
5.撮影X線条件:食道撮影用の撮影X線条件(透視X線条件から撮影X線条件を決定する機能など)を登録した登録番号の選択、または、透視X線条件から撮影X線条件を決定する機能を停止し、食道用の撮影X線条件を設定
6.撮影画像処理条件:食道撮影画像用の高濃度、高コントラスト処理に変更
7.DICOM TAG:Body Part ExaminedをEsophagus(食道)に変更
食道の撮影が完了したら引き続き実施する胃の撮影のために、操作者は、撮影モードをワンショット撮影モードに戻す。次いで、操作者は、線量および撮影条件を、胃用の線量および撮影条件にそれぞれ戻す。この後、操作者は、胃造影検査を続行する。
【0012】
従来、食道造影検査において、上記1乃至7の設定、変更等は手動で行う必要がある。加えて、食像造影検査から胃造影検査へ変更するときも、上記1乃至7の設定、変更等は手動で行う必要がある。このため、上記設定・変更等の操作は、操作者にとって煩わしいものであり、操作者の負担となる問題がある。加えて、手動による上記設定の変更は、検査の流れを妨げ、検査時間が長くなり、診断効率を低下させる問題がある。また、上記設定を入力せずに食道撮影を実行した場合、食道に対して連続撮影ができないため撮影タイミングを逃すこと、本来遮蔽される領域への不要な被曝が発生する問題がある。さらに、撮影X線条件(線量、線質)および画像処理が、食道撮影の設定と合わないため、画質が低下し診断能が低下する問題がある。
【0013】
さらに、食道造影検査の後に実施される胃造影検査において、食道造影検査に関する撮影条件等の設定項目を、胃造影検査に関する撮影条件等の設定項目に変更し忘れた場合、胃造影検査における診断能の低下、および不要な被曝の発生などが生じる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2013−111366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
目的は、被検体の食道領域に対する撮影条件の設定において、操作者の負担を軽減可能なX線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本実施形態に係るX線診断装置は、X線を発生するX線発生部と、前記X線発生部により発生され、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、前記X線の照射範囲を限定する照射範囲限定器と、前記X線検出部と前記X線発生部と前記照射範囲限定器と天板とを、前記天板の短軸に平行な回転軸周りに回転可能に支持する回転支持機構と、前記照射範囲の大きさと撮影モードと検査名称とのうち少なくとも一つと、前記回転軸周りにおける前記天板の回転角度とに基づいて、胃領域の撮影方法から食道領域の撮影方法への切り替えを実行する撮影方法切り替え部と、前記切り替えられた撮影方法に対応する撮影条件を決定する条件決定部と、前記撮影条件に従って前記被検体を撮影するために、前記X線発生部と前記照射範囲限定器とを制御する制御部と、を具備し、前記食道領域の撮影方法に対応する撮影条件は、前記胃領域の撮影方法におけるX線の線量より多い線量であって、X線曝射時間より短い曝射時間であること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係るX線診断装置の形態の概要の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係り、照射範囲限定器において、複数の第1方向絞り羽根と複数の第2方向絞り羽根と最大照射範囲とを示す図である。
図4図4は、本実施形態に係り、分割フォーマットが左右2分割であって、照射範囲限定器により限定された照射範囲の一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係り、複数の分割フォーマットの一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態における食道撮影条件に係り、連続撮影におけるフレームレートと、X線曝射時間との一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係り、撮影方法の切り替えと撮影条件の決定とのタイミングの一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係り、分割フォーマットが左右2分割であって、2回の撮影(第1撮影、第2撮影)にそれぞれ対応する第1、第2医用画像(食道領域画像)の表示の一例を示す図である。
図9図9は、本実施形態に係り、分割フォーマットが左右3分割であって、3回の撮影(第1撮影、第2撮影、第3撮影)にそれぞれ対応する第1乃至第3医用画像(食道領域画像)の表示の一例を示す図である。
図10図10は、本実施形態に係り、撮影方法切り替え処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、本実施形態の第1の変形例に係り、撮影対象となる食道領域を、解剖学的名称とともに示す模式図である。
図12図12は、本実施形態の第1の変形例に係り、上部食道領域の撮影における検出面と下部食道領域の撮影における検出面とを、被検体における解剖学的名称および模式的な位置とともに示す模式図である。
図13図13は、本実施形態の第1の変形例に係り、食道領域撮影処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、本実施形態の第2の変形例に係り、上部食道領域の撮影と下部食道領域の撮影とにおける検出面を、被検体における解剖学的名称および模式的な位置とともに示す模式図である。
図15図15は、本実施形態の第2の変形例に係り、上部食道領域、下部食道領域に適した視野サイズを選択し、分割フォーマットが左右2分割であって、第1撮影および第2撮影において、第1方向(X軸方向)に沿って非対称に限定された領域の一例を示す図である。
図16図16は、本実施形態の第2の変形例に係り、第1撮影において、第1移動量に従って第1X線透過領域を形成した照射範囲限定器の一例を示す図である。
図17図17は、本実施形態の第2の変形例に係り、第2撮影において、第1移動量に従って第2X線透過領域を形成した照射範囲限定器の一例を示す図である。
図18図18は、本実施形態の第2の変形例に係り、照射範囲非対称限定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るX線診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0019】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置1の構成を示している。本X線診断装置1は、X線発生部3と、照射範囲限定器5と、X線検出部(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)7と、X線発生部3、照射範囲限定器5、およびFPD7を天板14の長軸方向に沿って移動可能に支持する移動支持機構9と、天板14と移動支持機構9とを天板14の短軸方向を回転軸として回転可能に支持する回転支持機構11と、移動支持機構9と回転支持機構11とを駆動する支持機構駆動部13と、インターフェース部15と、入力部17と、撮影方法切り替え部19と、条件決定部21と、制御部23と、画像発生・処理部25と、記憶部27と、表示部29とを有する。
【0020】
図2は、本X線診断装置1の形態の概要の一例を示す図である。図2示すように、近接操作卓および遠隔操作卓は、入力部17に対応する。近接操作卓および遠隔操作卓は、それぞれ、検査室内、操作室内において、X線診断装置を制御し、透視撮影時に用いられる。また、図2において、透視モニタ、システムモニタは、表示部29に対応する。透視モニタは、透視画像を表示する。システムモニタは、収集した撮影画像及び透視画像を表示する。図2において、X線を曝射するX線管は、X線発生部3に含まれる。図2おける照射範囲限定器5は、X線の照射領域を限定する。
【0021】
図2における透視撮影台は、被検体を載置する天板14と移動支持機構9とX線検出部7と回転支持機構11とを有し、起倒、映像系(X線発生部3、X線検出部7)の上下動、斜入、圧迫などの動作を行う。図2におけるX線検出部7は、被検体を透過したX線を検出し、画像処理装置2へ転送する。図2における画像処理装置2には、例えば、撮影方法切り替え部19と、条件決定部21と、制御部23と、画像発生・処理部25と、記憶部27などが設けられる。画像処理装置2は、後述するX線検出部7からの出力に基づいて、透視画像データおよび撮影画像データを収集し、表示のための各種画像処理を実行する。また、画像処理装置2は、画像を上記各モニタに表示させる。
【0022】
X線発生部3は、X線管と高電圧発生器とを有する。高電圧発生器は、後述するX線管に供給する管電流と、X線管に印加する管電圧とを発生する。高電圧発生器は、X線撮影およびX線透視にそれぞれ適した管電流をX線管に供給し、X線撮影およびX線透視各々にそれぞれ適した管電圧をX線管に印加する。具体的には、高電圧発生器は、後述する制御部23による制御のもとで、X線撮影条件に応じた管電圧と管電流とを発生する。
【0023】
X線管は、高電圧発生器から供給された管電流と、高電圧発生器により印加された管電圧とに基づいて、X線の焦点(以下、管球焦点と呼ぶ)からX線を発生する。発生されたX線は、X線管におけるX線放射窓から放射される。以下、管球焦点を通り、後述するX線検出部7におけるX線の検出面に垂直な軸をZ軸とする。Z軸に垂直であって、後述する天板14の長軸方向に平行な方向(以下、第1方向と呼ぶ)をX軸とする。Z軸とX軸とに垂直な軸(天板14の短軸方向に平行な方向:以下、第2方向と呼ぶ)をY軸とする。
【0024】
照射範囲限定器5は、X線発生部3の前面であって、X線発生部3と後述するX線検出部7との間に設けられる。具体的には、照射範囲限定器5は、X線発生部3におけるX線放射窓の前面に設けられる。照射範囲限定器5は、X線可動絞りとも称される。照射範囲限定器5は、X線発生部3で発生されたX線を、操作者が所望する撮影部位以外に不要な被爆をさせないために、最大口径の照射範囲(以下、最大照射範囲と呼ぶ)を所定の照射範囲に限定する。照射範囲限定器5は、後述する入力部17により入力された照射範囲の限定指示、または後述する条件決定部21により決定された照射範囲の限定条件に従って、絞り羽根を移動させることにより、照射範囲を限定する。
【0025】
具体的には、照射範囲限定器5は、第1方向に移動可能な複数の第1方向絞り羽根と、第2方向に移動可能な複数の第2方向絞り羽根とを有する。第1、第2方向絞り羽根各々は、X線発生部3により発生されたX線を遮蔽する鉛により構成される。なお、照射範囲限定器5は、被検体Pへの被曝線量の低減および画質の向上を目的として、X線の照射野に挿入される複数のフィルタ(以下、付加フィルタと呼ぶ)を有していてもよい。付加フィルタは、X線フィルタ、濾過板、ビームフィルタ、線質フィルタ、またはビームスペクトグラムフィルタとも呼ばれる。
【0026】
図3は、照射範囲限定器5において、複数の第1方向絞り羽根と複数の第2方向絞り羽根と最大照射範囲とを示す図である。図3に示すように、複数の第1方向絞り羽根各々は、第1方向(X軸方向)に沿って、移動可能である。図3に示すように、複数の第2方向絞り羽根各々は、第2方向(Y軸方向)に沿って、移動可能である。
【0027】
X線検出部7は、X線発生部3から発生され、被検体Pを透過したX線を検出する。例えば、X線検出部7は、例えば、フラットパネルディテクタ(FPD)である。FPD7は、複数の半導体検出素子を有する。半導体検出素子には、直接変換形と間接変換形とがある。直接変換形とは、入射X線を直接的に電気信号に変換する形式である。間接変換形とは、入射X線を蛍光体で光に変換し、その光を電気信号に変換する形式である。
【0028】
X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、図示していない前処理部に出力する。なお、X線検出部7として、イメージインテンシファイア(Imageintensifier)などが用いられてもよい。
【0029】
移動支持機構9は、後述する制御部23による制御のもとで、映像系(X線発生部3、照射範囲限定器5、およびX線検出部7)を、第1方向(X軸方向)に沿って移動可能に支持する。例えば、被検体に対する長尺撮影、食道撮影などにおいて、映像系を移動させて被検体を撮影する撮影方法が入力部17を介して入力された場合、移動支持機構9は、入力された撮影方法における撮影タイミングに従って、映像系を第1方向に沿って移動させる。なお、映像系を、移動させる必要がない場合、移動支持機構9は、映像系を天板14に対して固定させることも可能である。
【0030】
回転支持機構11は、X線発生部3、照射範囲限定器5、およびX線検出部7を含む移動支持機構9と、天板14とを、後述する天板14の短軸(Y軸)に平行な回転軸周りに回転可能に支持する。具体的には、回転支持機構11は、後述する入力部17を介した操作者の指示により、天板14を回転軸周りに回転させる。回転支持機構11は、回転軸周りの天板14の角度を、後述する撮影方法切り替え部19に出力する。ここで、回転角度とは、例えば、天板14の水平位置を0°とし、天板14を鉛直方向に平行な位置に回転させた回転角度を、90°とする。以下、回転角度が90°となる天板14の位置を、立位と呼ぶ。すなわち、回転角度が90°となる天板14の位置において、天板14に載置された被検体は、立位状態となる。
【0031】
なお、移動支持機構9、および回転支持機構11は、X線発生部3と、照射範囲限定器5と、X線検出部7と、天板14とを、図1に示す直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)に移動可能に支持してもよい。例えば、移動支持機構9は、X線管におけるX線発生の焦点とFPD7との間の距離(線源受像面間距離(Source Image Distance:以下、SIDと呼ぶ))を変更可能に、X線発生部3と照射範囲限定器5とFPD7などとを支持する。
【0032】
支持機構駆動部13は、後述する制御部23の制御のもとで、移動支持機構9および回転支持機構11を駆動する。具体的には、支持機構駆動部13は、制御部23からの制御信号に従って、回転支持機構11を回転軸周りに回転させるために、回転支持機構11を駆動する。これにより、天板14などの各構成要素は、回転軸周りに回転される。例えば、天板14を立位に配置させる指示が入力部17を介して入力されたとき、支持機構駆動部13は、天板14を立位の角度(90°)に回転させるために、回転支持機構11を駆動する。支持機構駆動部13は、入力部17を介した操作者の指示に従って、映像系を第1方向(X軸方向)に沿って移動させるために、移動支持機構9を駆動する。
【0033】
図示していない天板駆動部は、後述する制御部23の制御のもとで、天板14を駆動することにより、天板14を移動させる。具体的には、天板駆動部は、制御部23からの制御信号に基づいて、第1、第2方向に、天板14をスライドさせる。
【0034】
図示していない前処理部は、X線検出部7から出力されたディジタルデータに対して、前処理を実行する。前処理とは、X線検出部7におけるチャンネル間の感度不均一の補正、およびデータの脱落に関する補正等である。前処理されたディジタルデータは、後述する画像発生・処理部25に出力される。
【0035】
インターフェース部15は、例えば、ネットワーク、図示していない外部記憶装置に関するインターフェースである。本X線診断装置1によって得られたX線画像等のデータおよび解析結果などは、インターフェース部15およびネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0036】
入力部17は、ROI、SID、X線撮影の撮影条件、X線透視の透視条件等を入力する。具体的には、入力部17は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本X線診断装置1に取り込む。入力部17は、図示しないが、関心領域の設定などを行うためのトラックボール、X線撮影またはX線透視の開始の契機となるスイッチボタン、マウス、キーボード等を有する。入力部17は、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を後述する制御部23に出力する。なお、入力部17は、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力部17は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標を制御部23に出力する。
【0037】
検査開始時、操作者は入力部17を介して、被検体に対する検査名称を入力する。検査中、操作者は入力部17を介して、FPD7の視野サイズを分割して撮影するフォーマット(以下、分割フォーマットと呼ぶ)、被検体に対する撮影のモード(以下、撮影モードと呼ぶ)、さらに他の設定や操作などを、必要な時に入力する。検査名称とは、例えば、食道造影検査などであって、被検体の食道領域の造影検査に関する検査名称(以下、食道領域検査名と呼ぶ)である。
【0038】
なお、入力部17は、上部消化管造影検査などの被検体の食道および胃領域の造影検査に関する検査名称(以下、食道・胃領域検査名と呼ぶ)を入力することや、他領域に対する検査名称を入力することも可能である。撮影モードとは、撮影スイッチを押している期間の撮影が、一定間隔で連続的な複数回(以下、連続撮影と呼ぶ)か、1回(以下、ワンショット撮影と呼ぶ)かを選択する事である。
【0039】
分割フォーマットは、通常、左右2分割、左右3分割、上下2分割、4分割が入力部17に準備される。例えば、左右2分割は、第2方向に沿った長さが視野サイズの2分の1、第1方向に沿った長さが視野サイズと同じである縦長の領域を視野の中心から上下、左右とも対称な位置に設定し切り出した撮影画像を左右に並べ、視野サイズの大きさで2画像を表示するものである。ここで、視野サイズとは、透視・撮影においてFPD7からデータを収集する範囲で、通常、3乃至4サイズが入力部17に準備される。最大の視野サイズは、通常FPD7全面として設定される。通常、最大視野サイズの中心から上下、左右とも対称な位置に他の視野サイズの収集範囲が設定される。どの視野サイズとも表示部29の同じ領域に表示するので視野サイズが小さいほど狭い収集範囲を拡大表示することになる。視野サイズは、検査部位の大きさに応じて適宜選択される。
【0040】
分割フォーマット解除の場合、画像として収集表示しない部分を被ばくさせないよう、入力部17における照射範囲限定器5の全開設定が、選択している視野サイズとなる。従って、照射範囲限定器5は視野サイズより大きく開かなくなる。さらに、左右2分割が選択されると、入力部17における照射範囲限定器5の全開設定が、前述した縦長の切り出し領域となる。同様に、左右3分割は、第2方向に沿った長さが視野サイズの3分の1、第1方向に沿った長さが視野サイズと同じである縦長の領域を視野の中心から上下、左右とも対称な位置に設定し切り出した撮影画像を左右に並べ、視野サイズの大きさで3画像を表示するものである。同様に、上下2分割は、第2方向に沿った長さが視野サイズと同じで、第1方向に沿った長さが視野サイズの2分の1である横長の領域を視野の中心から上下、左右とも対称な位置に設定し切り出した撮影画像を上下に並べ、視野サイズの大きさで2画像を表示するものである。同様に、4分割は、第2方向に沿った長さが視野サイズの2分の1、第1方向に沿った長さが視野サイズの2分の1である領域を視野の中心から上下、左右とも対称な位置に設定し切り出した撮影画像を2行2列に並べ、視野サイズの大きさで4画像を表示するものである。入力部17における照射範囲限定器5の全開設定も同様に、画像として収集表示しない部分を被ばくさせないよう、それぞれの分割フォーマットの切り出し領域となる。図4は、分割フォーマットが左右2分割であって、照射範囲限定器5により限定された照射範囲の一例を示す図である。
【0041】
入力部17は、前述の分割フォーマットにそれぞれ対応する複数のボタンを有する。複数のボタン各々の上面には、例えば、分割フォーマットを模式的に示した分割模式図が設けられてもよい。複数のボタンのいずれか一つのボタンが押下されると、押下されたボタンに対応する分割フォーマットが入力される。
【0042】
図5は、複数の分割フォーマットの一例を示す図である。図5における左側は、分割フォーマットが左右2分割である一例を示している。図5における右側は、分割フォーマットが左右3分割である一例を示している。照射範囲限定器5により限定された領域において、複数の第2方向絞り羽根によりX線が遮蔽される。
【0043】
入力部17は、入力された検査名称、撮影モード、分割フォーマットを、後述する撮影方法切り替え部19に出力する。なお、入力部17は、入力された検査名称、撮影モード、分割フォーマットを表示させるために、後述する表示部29に出力することも可能である。なお、入力部17は、分割フォーマット解除を入力することで、照射範囲の大きさとして、視野サイズを入力することも可能である。
【0044】
撮影方法切り替え部19は、検査名称と撮影モードと分割フォーマットとのうち少なくとも一つと回転角度(90°すなわち立位)とに基づいて、被検体の胃領域の撮影方法(以下、胃撮影方法と呼ぶ)から被検体の食道領域の撮影方法(以下、食道撮影方法と呼ぶ)への切り替えを実行する。胃撮影方法から食道撮影方法への切り替えに関する複数の項目(検査名称と撮影モードと分割フォーマットと回転角度)は、入力部17を介して操作者により適宜選択、変更、登録可能である。なお、撮影方法切り替え部19は、回転角度が90°(立位)の代わりに検査開始以降、何回目の立位であるかによって食道撮影方法と胃撮影方法との切り替えを実行してもよい。撮影方法切り替え部19は、切り替えられた撮影方法を、後述する条件決定部21に出力する。
【0045】
具体的には、回転角度が90°(立位)であって、かつ分割フォーマットの左右2分割または左右3分割が入力された場合、撮影方法切り替え部19は、被検体に対する撮影方法を、胃撮影方法から食道撮影方法に切り替える。また、撮影方法切り替え部19は、立位と分割フォーマットとが維持されている場合、食道撮影方法を維持する。立位と分割フォーマットとのうち少なくとも一方が変更された場合、撮影方法切り替え部19は、食道撮影方法から胃撮影方法に切り替える。なお、立位と分割フォーマットとのうち少なくとも一方が食道撮影方法の条件を満たさない状態が継続する場合、撮影方法切り替え部19は、胃撮影方法を維持する。
【0046】
また、立位であって、かつ入力された撮影モードが連続撮影である場合、撮影方法切り替え部19は、被検体に対する撮影方法を、胃撮影方法から食道撮影方法に切り替える。また、撮影方法切り替え部19は、立位と連続撮影とが維持されている場合、食道撮影方法を維持する。立位と連続撮影とのうち少なくとも一方が変更された場合、撮影方法切り替え部19は、食道撮影方法から胃撮影方法に切り替える。なお、立位と連続撮影とのうち少なくとも一方が食道撮影方法の条件を満たさない状態が継続する場合、撮影方法切り替え部19は、胃撮影方法を維持する。
【0047】
また、撮影方法切り替え部19は、立位であって、かつ入力された検査名称が食道領域検査名である場合、撮影方法切り替え部19は、被検体に対する撮影方法を、胃撮影方法から食道撮影方法に切り替える。また、撮影方法切り替え部19は、立位と食道領域検査名とが維持されている場合、食道撮影方法を維持する。立位と食道領域検査名とのうち少なくとも一方が変更された場合、撮影方法切り替え部19は、食道撮影方法から胃撮影方法に切り替える。なお、立位と食道領域検査名とのうち少なくとも一方が食道撮影方法の条件を満たさない状態が継続する場合、撮影方法切り替え部19は、胃撮影方法を維持する。なお、検査名称として食道・胃領域検査名と、検査開始後n回目の立位の組み合せで撮影方法を切り替えてもよい。回数nは検査法に合わせて事前に登録する。
【0048】
条件決定部21は、撮影方法切り替え部19により切り替えられた撮影方法に対する撮影条件を決定する。具体的には、立位かつ分割フォーマットの左右2分割または左右3分割により胃撮影方法から食道撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、食道撮影方法に関する撮影条件(以下、食道撮影条件と呼ぶ)を決定する。食道撮影条件とは、例えば、撮影モードが連続撮影であって、撮影シーケンスがフレームレート2fps、撮影枚数4枚であって、撮影線量が胃撮影における線量(標準的な自動露出制御における線量)の30%増であって、X線曝射時間が10ms程度になる条件である。X線曝射時間が10ms程度になる条件とは、例えば、撮影前の透視時に用いた透視条件の管電圧を用いて撮影条件を決定する方法のうち短時間撮影用の条件(撮影管電圧 100kV前後、撮影管電流 250mA程度)である。
【0049】
図6は、食道撮影条件に係り、連続撮影におけるフレームレートと、X線曝射時間との一例を示す図である。図6における曝射間隔はフレームレートの逆数に対応する。例えば、フレームレートが2fpsの場合、曝射間隔は、1/2秒となる。また、図6における曝射時間は、10msである。
【0050】
また、立位と分割フォーマットとのうち少なくとも一方が変更された事により、食道撮影方法から胃撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、胃撮影方法に関する撮影条件(胃撮影条件と呼ぶ)を決定する。胃撮影条件とは、例えば、撮影モードがワンショット撮影であって、撮影線量が食道撮影における線量の30%減(または、標準の線量)であって、X線曝射時間が30乃至60ms(標準の曝射時間)である条件である。X線曝射時間が30乃至60msである条件とは、例えば、撮影前の透視時に用いた透視条件の管電圧を用いて撮影条件を決定する方法のうち標準的な条件(撮影管電圧 90kV前後、撮影管電流 200mA程度)である。ここで、立位と分割フォーマットとのうち立位が先に変更された場合、分割フォーマットが胃撮影条件である分割フォーマット解除に切り替わり、照射範囲の全開の大きさが視野サイズに切り替わってもよい。
【0051】
立位かつ連続撮影により胃撮影方法から食道撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、以下に示す内容の食道撮影条件を決定する。食道撮影条件とは、例えば、分割フォーマットが左右2分割または左右3分割であって、撮影シーケンスがフレームレート2fps、撮影枚数4枚であって、撮影線量が胃撮影における線量の30%増であって、X線曝射時間が10ms程度になる条件である。撮影モードで連続撮影を選択すると、何らかの撮影シーケンスが設定されるが、食道撮影方法に切り替えられると、条件決定部21により食道撮影条件であるフレームレート2fps、撮影枚数4枚に切り替わる。
【0052】
また、立位と連続撮影とのうち少なくとも一方が変更された事により、食道撮影方法から胃撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、胃撮影条件を決定する。胃撮影条件とは、例えば、分割フォーマット解除であって、撮影線量が食道撮影における線量の30%減(または、標準の線量)であって、X線曝射時間が30乃至60ms(標準の曝射時間)である条件である。ここで、立位と連続撮影とのうち立位が先に変更された場合、撮影モードが胃撮影条件であるワンショット撮影に切り替わってもよい。
【0053】
立位かつ食道領域検査名、または、検査開始後n回目の立位かつ食道・胃領域検査名により胃撮影方法から食道撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、以下に示す内容の食道撮影条件を決定する。食道撮影条件とは、例えば、分割フォーマットが左右2分割または左右3分割であって、撮影モードが連続撮影であって、撮影シーケンスがフレームレート2fps、撮影枚数4枚であって、撮影線量が胃撮影における線量の30%増であって、X線曝射時間が10ms程度になる条件である。
【0054】
また、立位と検査名称とのうち少なくとも一方が変更された事により、食道撮影方法から胃撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、胃撮影条件を決定する。胃撮影条件とは、例えば、分割フォーマット解除であって、撮影モードがワンショット撮影であって、撮影線量が食道撮影における線量の30%減(または、標準の線量)であって、X線曝射時間が30乃至60ms(標準の曝射時間)である条件である。
【0055】
図7は、撮影方法の切り替えと撮影条件の決定とのタイミングの一例を示す図である。図7に示すように、撮影方法の切り替えに同期して、切り替えられた撮影方法に対応する撮影条件が決定される。
【0056】
胃撮影方法から食道撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、食道撮影方法により発生された医用画像(以下、食道領域画像と呼ぶ)を表示するための画像処理条件(以下、食道画像処理条件と呼ぶ)を決定してもよい。食道画像処理条件とは、例えば、胃撮影方法により発生された医用画像(以下、胃領域画像と呼ぶ)に比べて高濃度、高コントラストで表示するよう、食道領域画像を処理する条件である。
【0057】
また、条件決定部21は、食道撮影方法から胃撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、胃領域画像を表示するための画像処理条件(以下、胃画像処理条件と呼ぶ)を決定してもよい。胃画像処理条件とは、例えば、食道領域画像に比べて低濃度、低コントラスト(または、標準濃度および標準コントラスト)で、胃領域画像を表示するよう、画像処理する条件である。
【0058】
さらに、胃撮影方法から食道撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、食道領域画像に関するタグ(例えば、DICOM TAG)を決定してもよい。このとき、上記タグは、例えば、Body Part Examined=ESOPHAGUSである。また、条件決定部21は、食道撮影方法から胃撮影方法に切り替えられた場合、条件決定部21は、胃領域画像に関するタグを決定してもよい。このとき上記タグは、例えば、Body Part Examined=STOMACHである。これら決定されたタグは、後述する制御部23に出力される。
【0059】
制御部23は、図示していないCPU(Central Processing Unit)とメモリを備える。制御部23は、入力部17から送られてくる操作者の指示、撮影条件、透視条件などに従って、X線撮影および透視を実行するために、本X線診断装置1における各部を制御する。
【0060】
制御部23は、条件決定部21により決定された撮影条件(食道撮影条件、胃撮影条件)に従って、X線発生部3および照射範囲限定器5を制御する。制御部23は、条件決定部21により決定された画像処理条件(食道画像処理条件、胃画像処理条件)に従って、画像発生・処理部25を制御する。制御部23は、条件決定部21により決定されたタグとともに、医用画像を記憶部27に記憶させるために、記憶部27を制御する。
【0061】
具体的には、制御部23は、食道撮影条件に従って、連続撮影を実行するために、フレームレート、撮影枚数、X線曝射条件、撮影線量に応じて、X線発生部3を制御する。制御部23は、食道撮影条件に従って、入力された分割フォーマットに対応する照射範囲を限定するために、照射範囲限定器5を制御する。制御部23は、食道画像処理条件に従って、食道領域画像を画像処理させるために、画像発生・処理部25を制御する。制御部23は、Body Part Examined=ESOPHAGUSとしたDICOM TAGを食道領域画像とともに記憶部27に記憶させるために、記憶部27を制御する。
【0062】
制御部23は、胃撮影条件に従って、ワンショット撮影を実行するために、X線曝射条件、撮影線量に応じてX線発生部3を制御する。制御部23は、胃撮影条件に従って、照射範囲の大きさを視野サイズにするために、照射範囲限定器5を制御する。制御部23は、胃画像処理条件に従って、胃領域画像を画像処理させるために、画像発生・処理部25を制御する。制御部23は、Body Part Examined=STOMACHとしたDICOM TAGを胃領域画像とともに記憶部27に記憶させるために、記憶部27を制御する。
【0063】
画像発生・処理部25は、条件決定部21に決定された撮影条件に従って撮影された後に前処理されたディジタルデータに基づいて、制御部23による制御のもとで、撮影画像を発生し、画像処理条件に従って、画像処理する。画像発生・処理部25は、透視位置でX線透視された後に前処理されたディジタルデータに基づいて、制御部23による制御のもとで、透視画像を発生し、画像処理条件に従って、画像処理する。以下、撮影画像と透視画像とをまとめてX線画像と呼ぶ。画像発生・処理部25は、発生し、画像処理したX線画像を、後述する記憶部27および表示部29に出力する。
【0064】
具体的には、画像発生・処理部25は、食道撮影条件に従って撮影された被検体の食道領域に関する食道領域画像を発生し、分割フォーマットと食道画像処理条件とに従って、複数の撮影にそれぞれ対応する複数の食道領域画像を画像処理する。このとき、食道領域画像は、分割フォーマットに応じた所定のレイアウトに切り出して配置され、標準濃度より高い濃度、標準コントラストより高いコントラストになるよう画像処理される。画像発生・処理部25は、胃撮影条件に従って撮影された被検体の食道領域に関する胃領域画像を発生し、胃画像処理条件に従って、胃領域画像を画像処理する。このとき、胃領域画像は、標準濃度、標準コントラストで画像処理される。画像発生・処理部25は、食道領域画像および胃領域画像を、表示部29に出力する。
【0065】
図8は、分割フォーマットが左右2分割であって、2回の撮影(第1撮影、第2撮影)にそれぞれ対応する第1、第2医用画像(食道領域画像)の表示の一例を示す図である。図8に示すように、分割フォーマットが左右2分割である場合、画像発生・処理部25は、第1医用画像と第2医用画像とを並列するよう切り出して配置する。
【0066】
図9は、分割フォーマットが左右3分割であって、3回の撮影(第1撮影、第2撮影、第3撮影)にそれぞれ対応する第1乃至第3医用画像(食道領域画像)の表示の一例を示す図である。図9に示すように、分割フォーマットが左右3分割である場合、画像発生・処理部25は、第1乃至第3医用画像を並列するよう切り出して配置する。
【0067】
記憶部27は、画像発生・処理部25で発生し、画像処理された種々のX線画像、本X線診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、後述する入力部17から送られてくる操作者の指示、撮影条件、透視条件などの各種データ群、インターフェース部15とネットワークとを介して送られてくる被検体Pのボリュームデータなどを記憶する。なお、記憶部27は、条件決定部21に係る機能と撮影方法切り替え部19に係る機能とを実現させるプログラムを記憶してもよい。
【0068】
記憶部27は、制御部23による制御のもとで、Body Part Examined=ESOPHAGUSであるDICOM TAGとともに、食道領域画像を記憶する。記憶部27は、制御部23による制御のもとで、Body Part Examined=STOMACHであるDICOM TAGとともに、胃領域画像を記憶する。
【0069】
表示部29は、画像発生・処理部25により発生し、画像処理されたX線画像を表示する。表示部29は、X線撮影における撮影条件、X線透視における透視条件、SID、X線撮影の撮影条件、X線透視の透視条件等を入力するための入力画面を表示してもよい。
【0070】
(撮影方法切り替え機能)
撮影方法切り替え機能とは、検査名称と撮影モードと分割フォーマットとのうち少なくとも一つと回転角度(90°すなわち立位)とに基づいて胃撮影方法から食道撮影方法への切り替えを実行し、食道撮影方法に従って決定された食道撮影条件に従って被検体の食道領域を撮影し、食道撮影方法に従って決定された食道表示条件で食道領域画像を表示する機能である。
【0071】
以下、撮影方法切り替え機能に関する処理(以下、撮影方法切り替え処理と呼ぶ)について説明する。撮影方法切り替え処理は、胃撮影方法と食道撮影方法とにおける撮影方法を自動的に切り替える処理である。予め設定されている撮影方法は胃撮影方法である。なお、非立位で食道領域を撮影する場合(以下、非立位食道撮影と呼ぶ)、撮影方法の切り替えで用いられる回転角度は、非立位食道撮影における天板の角度に相当する。
【0072】
図10は、撮影方法切り替え処理の手順の一例を示すフローチャートである。
本X線診断装置1が起動すると、回転支持機構11は、天板の位置すなわち、回転角度を検出し、撮影方法切り替え部19への出力を開始する。回転角度の検出と出力とは装置停止まで継続する。(ステップSa1)。入力部17を介して、被検体に対する検査名称が入力され、検査が開始される(ステップSa2)。入力部17を介して、撮影モードと分割フォーマットとのうち少なくとも一つが入力される(ステップSa3)。回転角度が90°(立位)であって、撮影モードが連続撮影、または分割フォーマットが左右2分割(または左右3分割)、または検査名称が食道領域検査名、または回転角度が検査開始後n回目の90°(立位)であって、検査名称が食道領域検査名か否かが判定される(ステップSa4)。ステップSa4の処理において、Yesの場合、胃撮影方法から食道撮影方法へ、撮影方法が切り替えられる(ステップSa5)。食道撮影方法に対応する撮影条件(食道撮影条件)が決定される(ステップSa6)。食道撮影方法に対応する画像処理条件(食道画像処理条件)が決定される(ステップSa7)。食道撮影条件に従って被検体を撮影し、医用画像(食道領域画像)が発生される(ステップSa8)。食道領域画像が、決定された食道画像処理条件に従って画像処理され、表示される(ステップSa9)。
【0073】
ステップSa4の処理において、Noであって、前段の処理において撮影方法が食道影方法であった場合、食道撮影方法から胃撮影方法(標準的な撮影方法)へ撮影方法が切り替えられる。このとき、胃撮影方法に対応する撮影条件(標準的な撮影条件:胃撮影条件)が決定される。加えて、胃撮影方法に対応する画像処理条件(標準的な画像処理条件:胃画像処理条件)が決定される。また、前段の処理において、撮影方法が胃撮影方法であった場合、胃撮影方法が維持される。標準的な撮影条件(胃撮影条件)に従って被検体を撮影し、医用画像(胃領域画像)が発生される(ステップSa10)。胃領域画像が、胃画像処理条件(標準的な画像処理条件)に従って画像処理され、表示される(ステップSa11)。次の撮影がある場合(ステップSa12)、ステップSa3乃至ステップSa11の処理が繰り返される。
【0074】
(第1の変形例)
本実施形態との相違は、食道撮影方法による撮影対象となる食道領域が上部食道領域と下部食道領域との2つの領域であって、上部食道領域と下部食道領域とに対して、それぞれ異なる映像系の位置と撮影シーケンスで撮影されることにある。
【0075】
図11は、撮影対象となる食道領域を、解剖学的名称とともに示す図である。食道領域は、頚部食道と、胸部上部食道と、胸部中部食道と、胸部下部食道と、腹部食道とを有する。上部食道領域とは、頚部食道と胸部上部食道と胸部中部食道とを有する。造影剤が食道領域に流入すると、2重造影状態(空気により適度に膨らませた食道内壁に、バリウム造影剤を薄く付着させた状態)が上部食道領域において発生する。すなわち、上部食道領域においては、造影剤の流入を契機として、撮影が実行される。また、造影剤の流れが速いため、二重造影状態になる期間が短い。
【0076】
一方、下部食道領域では、造影剤の流入により噴門部(胃と食道との結合部分)が閉じることにより、下部食道領域に造影剤が一時的に溜まる。次いで、噴門部が開くことにより、下部食道領域に溜まった造影剤が胃に流入する。造影剤の胃への流入により、下部食道領域において2重造影状態が発生する。すなわち、下部食道領域においては、下部食道領域に溜まった造影剤の胃への流入を契機として、撮影が実行される。また、上部食道領域に比べれば、二重造影状態になる期間が長い。
【0077】
以上のことから、食道撮影方法による食道領域の撮影タイミングは、上部食道領域と下部食道領域とにおいて、それぞれ異なる。このため、食道領域の撮影は、上部食道領域と下部食道領域とで2回に分けてそれぞれ実行される。
【0078】
図12は、上部食道領域の撮影における検出面と下部食道領域の撮影における検出面とを、被検体における解剖学的名称および模式的な位置とともに示す模式図である。図12に示すように、上部食道領域の撮影の後に下部食道領域を撮影するために、映像系(X線発生部3、照射範囲限定器5、およびX線検出部7)は、移動支持機構9により第1方向(X軸)に沿って自動的に移動する。
【0079】
表示部29は、食道領域撮影前に、食道領域の位置や状態を確認するため食道の上端から下端まで透視した透視画像を表示する。
【0080】
入力部17は、透視画像上において、食道領域の上端と下端とを入力する。ここで、食道領域の上端とは、例えば、輪状軟骨と咽頭との間であって、起始部(第1狭窄部)近傍である。食道領域の下端とは、噴門部と胃角との間である。入力部17は、入力した上端と下端とを、制御部23に出力する。なお、上端と下端との入力順序は、上端に次いで下端であってもよいし、下端に次いで上端であってもよい。
【0081】
条件決定部21は、食道撮影条件として、上部食道領域の撮影に適した撮影条件(以下、上部食道撮影条件と呼ぶ)を決定する。条件決定部21は、食道撮影条件として、下部食道領域の撮影に適した撮影条件(以下、下部食道撮影条件と呼ぶ)を決定する。上部食道撮影条件は、上記実施形態における食道撮影条件において、撮影シーケンスをフレームレートが高い3fps、撮影枚数が多い6枚に変えた条件を有する。下部食道撮影条件は、上記実施形態における食道撮影条件において、撮影シーケンスを上部食道撮影条件と異なるフレームレート2fs、撮影枚数4枚とする条件を有する。条件決定部21は、上部食道撮影条件および下部食道撮影条件を、制御部23に出力する。
【0082】
制御部23は、映像系(X線発生部3、照射範囲限定器5、およびX線検出部7)を、第1方向(X軸方向)に沿って移動可能に支持する移動支持機構9を自動的に移動し、X線検出部7の検出面の一端を入力された上端に合わせるために、支持機構駆動部13を制御する。上記制御の後、制御部23は、上部食道撮影条件に従って上部食道領域を撮影する第1撮影を実行するために、X線発生部3を制御する。
【0083】
第1撮影の後、制御部23は、映像系を、第1方向(X軸方向)に沿って移動可能に支持する移動支持機構9を自動的に移動し、検出面の一端に対向する他端を入力された下端に合わせるために、支持機構駆動部13を制御する。上記制御の後、制御部23は、下部食道撮影条件に従って下部食道領域を撮影する第2撮影を実行するために、X線発生部3を制御する。
【0084】
支持機構駆動部13は、第1撮影の実行前に、制御部23による制御のもとで、検出面の一端を上端に合わせるために、映像系(X線発生部3、照射範囲限定器5、およびX線検出部7)を、第1方向(X軸方向)に沿って移動可能に支持する移動支持機構9を駆動する。移動支持機構9の駆動により、X線検出部7の一端が上端に自動的に合わせられる。加えて、X線発生部3における管球焦点が検出面の中心を通りZ軸に平行な直線上に配置される。
【0085】
支持機構駆動部13は、第2撮影の実行前に、制御部23による制御のもとで、検出面の一端に対向する他端を下端に合わせるために、映像系(X線発生部3、照射範囲限定器5、およびX線検出部7)を、第1方向(X軸方向)に沿って移動可能に支持する移動支持機構9を駆動する。移動支持機構9の駆動により、X線検出部7の一端に対向する他端が下端に自動的に合わせられる。加えて、X線発生部3における管球焦点が検出面の中心を通りZ軸に平行な直線上に配置される。
【0086】
照射範囲限定器5は、第1、第2撮影において、例えば図4に示すように、最大照射範囲(視野サイズ)を分割フォーマットに従って限定する。さらに、例えば、上部食道領域の撮影を左右3分割、下部食道領域の撮影を左右2分割のように変化させてもよい。
【0087】
(食道領域撮影機能)
食道領域撮影機能とは、食道領域に対して入力された上端と下端とに基づいて、映像系(X線発生部3、照射範囲限定器5、およびX線検出部7)を自動的に移動させ、上部食道撮影条件と下部食道撮影条件に従って、上部食道領域および下部食道領域をそれぞれ撮影することにある。
【0088】
以下、食道領域撮影機能に関する処理(以下、食道領域撮影処理と呼ぶ)について説明する。
【0089】
図13は、食道領域撮影処理の手順の一例を示すフローチャートである。図13におけるフローチャートは、図10のフローチャートにおけるステップSa8、ステップSa9の処理に組み込まれてもよい。
【0090】
食道領域に関して、上端と下端とが入力される(ステップSb1)。上部食道撮影条件と下部食道撮影条件とが決定される(ステップSb2)。検出面の一端を上端に合わせるために、映像系(X線発生部3、照射範囲限定器5、およびX線検出部7)が自動的に移動される(ステップSb3)。上部食道撮影条件に従って、上部食道領域に対して第1撮影が実行される(ステップSb4)。第1撮影に基づいて、第1医用画像が発生される(ステップSb5)。第1医用画像が、食道画像処理条件に従って画像処理され、表示される(ステップSb6)。
【0091】
検出面の他端を下端に合わせるために、映像系(X線発生部3、照射範囲限定器5、およびX線検出部7)が自動的に移動される(ステップSb7)。下部食道撮影条件に従って、下部食道領域に対して第2撮影が実行される(ステップSb8)。第2撮影に基づいて、第2医用画像が発生される(ステップSb9)。第2医用画像が、食道画像処理条件に従って画像処理され、表示される(ステップSb10)。
【0092】
ここでは映像系が第1方向(X軸)のみに沿って移動する例を説明したが、上部食道領域、下部食道領域の第2方向(Y軸)の位置入力を加え、設定天板14の第2方向(Y軸)に沿ったスライドを組み合せ、検出面が被検体に対して斜めに移動してもよい。
【0093】
(第2の変形例)
第1の変形例との相違は、X線検出部7の大きさが食道領域全域に亘る場合、映像系を移動させず、食道領域における撮影対象(上部食道領域および下部食道領域)に応じて、照射範囲を第1方向に沿って非対称に限定することにある。
【0094】
図14は、上部食道領域の撮影(以下、第1撮影と呼ぶ)と下部食道領域の撮影(以下、第2撮影と呼ぶ)とにおける検出面を、被検体における解剖学的名称および模式的な位置とともに示す模式図である。図14に示すように、第1撮影と第2撮影とにおいて、照射範囲限定器5による照射範囲は、第1方向(X軸方向)に沿って非対称に限定される。
【0095】
図15は、上部食道領域、下部食道領域に適した視野サイズを選択し、分割フォーマットが左右2分割であって、第1撮影および第2撮影において、第1方向(X軸方向)に沿って非対称に限定された領域の一例を示す図である。図14図15に示すように、上部食道領域に対する第1撮影と下部食道領域に対する第2撮影とにおいて、第1方向(X軸方向)に沿って限定される領域は、
非対称となる。
【0096】
X線検出部7の検出面は、例えば、食道領域全域を覆う大きさを有する。検出面の大きさは、例えば、42cm×42cmである。このとき、検出面は、食道領域全域を覆うことができる。映像系は、X線検出部7が、食道領域および上下端を含むように、移動支持機構9により移動される。
【0097】
条件決定部21は、標準的な撮影方法(胃撮影方法)から食道撮影方法への切り替えが実行され、かつ上部食道領域、下部食道領域に適した視野サイズと分割フォーマットで、食道領域の位置や状態を確認するため食道の上端から下端までの透視が実行され、入力部17を介して上端および下端が入力されると、X線検出部7が食道領域および上下端を含むことができる映像系の位置を決定する。加えて、条件決定部21は、第1撮影において、最大照射範囲から照射範囲を限定する領域(以下、第1限定領域と呼ぶ)を決定し、第2撮影において、最大照射範囲から照射範囲を限定する領域(以下、第2限定領域と呼ぶ)を決定する。第1、第2限定領域は、管球焦点で発生されたX線を遮断するために、第1、第2方向絞り羽根をそれぞれ移動させる移動量と関連付けられる。以下、第1限定領域に関する第1、第2方向絞り羽根の移動量を第1移動量と呼ぶ。また、第2限定領域に関する第1、第2方向絞り羽根の移動量を第2移動量と呼ぶ。条件決定部21は、第1、第2移動量を、制御部23に出力する。
【0098】
第1移動量は、例えば、図15において、A、B、Cにそれぞれ対応する長さである。具体的には、最大照射範囲から第1限定領域の実現において、図15におけるAは、図3における第1方向絞り羽根bの移動量を示している。また、図15におけるBは、図3における第2方向絞り羽根aの移動量を示している。図15におけるCは、図3における第2方向絞り羽根bの移動量を示している。
【0099】
第2移動量は、例えば、図15において、D、E、Fにそれぞれ対応する長さである。具体的には、最大照射範囲から第2限定領域の実現において、図15におけるDは、図3における第1方向絞り羽根aの移動量を示している。また、図15におけるEは、図3における第2方向絞り羽根aの移動量を示している。図15におけるFは、図3における第2方向絞り羽根bの移動量を示している。
【0100】
図15における第1移動量に関するB、Cと第2移動量に関するE、Fとは、視野サイズと分割フォーマットの選択・設定により決定される。図15における第1移動量に関するAと第2移動量に関するDとは、視野サイズにより決定される。結果として、図15におけるAは、例えば、胸部中部食道と胸部下部食道との境界近傍に設定される。図15におけるAは、例えば、胸部上部食道と胸部中部食道との境界近傍に設定される。
【0101】
なお、上部食道領域および下部食道領域各々において、食道の中心線が第2方向(Y軸方向)に対して傾いている場合、条件決定部21は、第2方向に沿って非対称に照射範囲を限定させるための第1、第2移動量を決定してもよい。このとき、例えば、図15乃至図17において、第2方向に沿って非対称に照射範囲が限定される。さらに、上部食道領域、下部食道領域の第2方向(Y軸)の位置入力を加え、第1撮影と第2撮影で、第2方向(Y軸)に沿った移動を組み合せ、X線透過領域が被検体に対して斜めに移動してもよい。さらに、例えば、第1撮影を左右3分割、第2撮影を左右2分割のように変化させてもよい。
【0102】
また、X線検出部7の検出面の第1方向(X軸)長さが、被検体の食道の上端から下端までの長さより長い場合、第1限定領域の上端、または第2限定領域の下端、または両方が、それぞれ検出面の上端、下端から内側に移動することもありうる。
【0103】
制御部23は、条件決定部21により決定された第1、第2移動量に従って第1方向絞り羽根と第2方向絞り羽根とを移動させるために、照射範囲限定器5を制御する。具体的には、制御部23は、上部食道領域に対するX線照射前(第1撮影前)に、第1限定領域に第1、第2方向絞り羽根を移動させるために、照射範囲限定器5を制御する。次いで、制御部23は、下部食道領域に対するX線照射前(第2撮影前)に、第2限定領域に第1、第2方向絞り羽根を移動させるために、照射範囲限定器5を制御する。
【0104】
照射範囲限定器5は、第1限定領域を形成するために、制御部23による制御のもとで、第1移動量に従って、第1方向絞り羽根と第2方向絞り羽根とを移動させる。これらの絞り羽根の移動により、図15に示すように、第1撮影におけるX線透過領域(以下、第1X線透過領域と呼ぶ)が形成される。第1X線透過領域は、図14における上部食道領域に対応する。
【0105】
照射範囲限定器5は、第2限定領域を形成するために、制御部23による制御のもとで、第2移動量に従って、第1方向絞り羽根と第2方向絞り羽根とを移動させる。これらの絞り羽根の移動により、図15に示すように、第2撮影におけるX線透過領域(以下、第2X線透過領域と呼ぶ)が形成される。第2X線透過領域は、図14における下部食道領域に対応する。
【0106】
図16は、第1撮影において、第1移動量に従って第1X線透過領域を形成した照射範囲限定器5の一例を示す図である。図17は、第2撮影において、第1移動量に従って第2X線透過領域を形成した照射範囲限定器5の一例を示す図である。図15乃至図17に示すように、照射範囲の限定は、第1方向に沿って非対称となる。
【0107】
(照射範囲非対称限定機能)
照射範囲非対称限定機能とは、第1、第2撮影において、照射範囲を第1方向に沿って非対称に限定する機能である。以下、照射範囲非対称限定機能に関する処理(以下、照射範囲非対称限定処理と呼ぶ)について説明する。
【0108】
図18は、照射範囲非対称限定処理の手順の一例を示すフローチャートである。図18におけるフローチャートは、図10のフローチャートにおけるステップSa8、ステップSa9の処理に組み込まれてもよい。
【0109】
食道領域に関して、上端と下端とが入力される。X線検出部7が食道領域および上下端を含むように、映像系が自動的に移動される。上部食道領域の撮影(第1撮影)に関して、照射範囲を限定する第1限定領域が決定される(ステップSc1)。第1限定領域に基づいて、第1移動量が決定される(ステップSc2)。下部食道領域の撮影(第2撮影)に関して、照射範囲を限定する第2限定領域が決定される(ステップSc3)。第2限定領域に基づいて、第2移動量が決定される(ステップSc4)。
【0110】
第1移動量に従って、第1、第2方向絞り羽根が移動される(ステップSc5)。上部食道領域に対して第1撮影を実行し、第1医用画像が発生される(ステップSc6)。第1医用画像が、食道画像処理条件に従って画像処理され、表示部29に表示される(ステップSc7)。
【0111】
第2移動量に従って、第1、第2方向絞り羽根が移動される(ステップSc8)下部食道領域に対して第2撮影を実行し、第2医用画像が発生される(ステップSc9)。第2医用画像が、食道画像処理条件に従って処理され、表示部29に表示される(ステップSc10)。
【0112】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態におけるX線診断装置1によれば、分割フォーマットと撮影モードと検査名称とのうち少なくとも一つと、回転軸周りにおける天板の回転角度とに基づいて、胃領域の撮影方法と食道領域の撮影方法との間で撮影方法の切り替えを実行することができる。加えて、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、切り替えられた撮影方法に従って、撮影条件を決定することができる。これらのことから、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、分割フォーマットと撮影モードと検査名称とのうちいずれか一つを入力し、かつ天板14が立位状態になれば、標準的な撮影方法(胃撮影方法)を食道撮影に適した撮影方法に切り替えることができる。加えて、食道造影検査の後に胃造影検査を実行する場合においても、自動的に食道領域の撮影方法から胃領域の撮影方法に撮影方法を切り替えることができる。
【0113】
また、本実施形態の第1の変形例に係るX線診断装置1によれば、食道領域の上下端を入力することにより、上部食道領域および下部食道領域に適した撮影位置と撮影シーケンスで、上部食道領域および下部食道領域をそれぞれ撮影することができる。
【0114】
さらに、本実施形態の第2の変形例によれば、食道領域全域をカバーする大視野のX線検出部7(大視野平面検出器)を有するX線診断装置1において、食道領域の上下端を入力することにより、上部食道領域の撮影(第1撮影)と下部食道領域の撮影(第2撮影)とに応じて、天板の長軸方向に対して非対称に照射範囲を限定することができる。これにより、第1、第2撮影各々において、被検体に対する不要な被曝を低減させることができる。
【0115】
以上のことから、本X線診断装置1によれば、食道造影検査において、食道領域の撮影に適した各種設定、変更等を自動的に実行することができる。これにより、操作者の負担が減少し、かつ検査効率が向上する。さらに、常に適切な条件で食道および胃の撮影を実行することができるため、常に適切な画質(診断能の高い)で画像を表示することができる。上部食道領域と下部食道領域とに対して、適切な撮影条件および照射範囲の限定で、それぞれ撮影を実行することができ、被検体への被曝が低減される。また、食道造影検査から胃造影検査への撮影方法の切り替えにおいて、切り替えミスによる不要な被曝を回避することができる。
【0116】
加えて、実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0117】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…X線診断装置、3…X線発生部、5…照射範囲限定器、7…X線検出部(FPD)、9…移動支持機構、11…回転支持機構、13…支持機構駆動部、14…天板、15…インターフェース部、17…入力部、19…撮影方法切り替え部、21…条件決定部、23…制御部、25…画像発生・処理部、27…記憶部、29…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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