(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の発明者は、1枚の半導体ウェハーから取得可能な半導体ICチップの数を増加させるための一つの手法として、スクライブ領域の幅を狭くすることを検討している。スクライブ領域の幅を狭くすることで、1枚の半導体ウェハーから取得可能な半導体ICチップの数を増加し、半導体ICチップの製造コストを低減することができる。しかしながら、上記の特許文献1、2は、チッピングの抑制については開示しているが、スクライブ領域の幅の狭小化については何ら開示していない。
【0010】
したがって、本発明の課題の一つは、チッピングを抑制しながら、スクライブ領域の幅を狭くすることに有用な技術を提供することにある。
【0011】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は、スクライブ領域の幅を低減するために、厚さが薄いダイシングブレードを用いてダイシングを行うことを検討している。薄いダイシングブレードを用いてダイシングを行えば、マージン(安全領域)を含めてもスクライブ領域の幅を狭くすることができる。
【0013】
薄いダイシングブレードを用いてダイシングを行うことの一つの問題は、ダイシング工程においては、TEGパッドを除去しなければならないことである。TEGパッドは、大きな導体の構造物であるから、TEGパッドの除去が不完全であると、ダイシング工程の後の工程(例えば、パッケージング工程)において、不具合が生じ得る。このような観点から、一般的には、TEGパッドの幅よりも厚いダイシングブレードが用いられる。
【0014】
しかしながら、発明者は、以下に開示されている構造を採用することで、TEGパッドの幅よりも薄いダイシングブレードを用いてもTEGパッドが除去可能であると考えた。TEGパッドの幅よりも薄いダイシングブレードを用いれば、スクライブ領域の幅を狭くすることができる。
【0015】
本発明の一の観点では、集積回路が形成された複数の回路形成領域を備える半導体ウェハーが、回路形成領域のそれぞれを取り囲むように設けられたガードリングと、隣接するガードリングの間に設けられたスクライブ領域と、スクライブ領域に設けられた素子と、スクライブ領域に設けられ、該素子に電気的に接続されたパッドと、半導体ウェハーの表面に、ガードリングに沿って設けられた溝部とを具備している。溝部は、パッドと前記ガードリングの間を通過するように設けられている。ガードリングが延伸する延伸方向に垂直で、且つ、パッドを通過する第1断面におけるパッドと溝部の間の距離は、延伸方向に垂直で、パッドを通過し、且つ、第1断面と延伸方向における位置が異なる第2断面におけるパッドと溝部の間の距離と相違している。
【0016】
本発明の他の観点では、集積回路が形成された複数の回路形成領域を備える半導体ウェハーが、回路形成領域のそれぞれを取り囲むように設けられたガードリングと、隣接するガードリングの間に設けられたスクライブ領域と、スクライブ領域に設けられた素子と、スクライブ領域に設けられ、素子に電気的に接続されたパッドと、半導体ウェハーの表面に設けられた第1及び第2溝部とを具備する。第1及び第2溝部は、ガードリングとパッドの間を通過するように設けられる。第1溝部は、ガードリングとパッドの間の位置に、ガードリングに沿って延伸するように設けられる。第2溝部は、第1溝部とパッドの間の位置に、第1溝部に沿って延伸するように設けられる。
【0017】
本発明の更に他の観点では、半導体ICチップの製造方法が、上記の半導体ウェハーを用意する工程と、ダイシングブレードを用いて半導体ウェハーのダイシングを行って半導体ICチップを得る工程とを具備する。ダイシングブレードの厚さは、延伸方向と垂直な方向におけるパッドの幅よりも薄い。
【0018】
本発明の更に他の観点では、半導体ICチップが、集積回路が形成された回路形成領域と、回路形成領域
を取り囲むように設けられたガードリングとを備えている。当該半導体ICチップの表面には、半導体ICチップの端面とガードリングの間を通過するようにガードリングに沿って設けられた溝部が形成されている。ガードリングが延伸する延伸方向に垂直な第1断面における端面と溝部の間の距離である第1距離は、延伸方向に垂直で第1断面と延伸方向における位置が異なる第2断面における端面と溝部の間の距離である第2距離と相違している。
【0019】
本発明の更に他の観点では、半導体ICチップが、集積回路が形成された回路形成領域と、回路形成領域
を取り囲むように設けられたガードリングとを備えている。当該半導体ICチップの表面には、半導体ICチップの端面とガードリングの間を通過するように第1溝部及び第2溝部が形成されている。第1溝部は、ガードリングと
半導体ICチップの端面の間の位置に、ガードリングに沿って延伸するように設けられている。第2溝部は、第1溝部とパッドの間の位置に、第1溝部に沿って延伸するように設けられている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、チッピングを抑制しながら、スクライブ領域の幅を狭くすることに有用な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の半導体ウェハーの構造を部分的に示す平面図である。本実施形態の半導体ウェハーは、集積回路が形成された複数の回路形成領域1を備えている。隣接する回路形成領域1の間には、スクライブ領域2が設けられる。上述されているように、スクライブ領域2とは、該半導体ウェハーに対してダイシングを行う際に切りしろとして用いられる領域である。後述されるように、スクライブ領域2でダイシングが行われることにより、回路形成領域1を含む半導体ICチップが得られる。
【0023】
図2は、本実施形態の半導体ウェハーのスクライブ領域2における構造を示す平面図である。以下の説明においては、XYZ直交座標系が用いられることがある。当該直交座標系においては、ガードリング11が延伸する方向(即ち、スクライブ領域2が延伸する方向)にY軸が規定され、ガードリング11が延伸する方向に垂直な方向(即ち、スクライブ領域2を横断する方向)にX軸が規定され、当該半導体ウェハーの厚さ方向にZ軸が規定される。
【0024】
本実施形態の半導体ウェハーでは、回路形成領域1を取り囲むようにガードリング(シールリング)11が設けられる。ガードリング11は、半導体ICチップの端面からの水の侵入によるデバイスの動作特性の劣化のために設けられる構造体である。後述されるように、ガードリング11は、半導体ウェハーの厚さ方向に並んで配置された金属配線と、厚さ方向に隣接する金属配線を接続するコンタクトとを備えて構成される。ガードリング11を構成する各金属配線は、回路形成領域1の端に沿って延伸するように設けられる。本実施形態の半導体ウェハーでは、隣接するガードリング11(即ち、隣接する回路形成領域1のそれぞれに沿って設けられる2本のガードリング11)の間にスクライブ領域2が規定される。
【0025】
スクライブ領域2には、TEGが設けられる。本実施形態では、TEGパッド12と、テスト素子13と、TEGパッド12とテスト素子13とを接続する配線14とが、スクライブ領域2に設けられている。
図2では、2端子素子であるテスト素子13が図示されているが、テスト素子13は、2端子素子に限られない。2端子素子以外の素子がテスト素子13に用いられる場合、テスト素子13に接続されるTEGパッド12、及び配線14の数も、適宜に変更される。
【0026】
本実施形態の半導体ウェハーの表面には、ガードリング11に沿って溝部(スリット)15がエッチングによって形成されている。本実施形態では、溝部15が、ガードリング11とTEGパッド12の間を通過するように形成される。後に詳細に議論されるように、本実施形態の半導体ウェハーでは溝部15の平面形状が重要である。
【0027】
図3は、本実施形態の半導体ウェハーのスクライブ領域2における構造を詳細に示す拡大平面図であり、
図4A、
図4Bは、本実施形態の半導体ウェハーの構造を示す断面図である。
図4A(a)、(b)、(c)は、それぞれ、A−A断面、B−B断面、C−C断面における半導体ウェハーの構造を示しており、
図4B(a)、(b)、(c)は、それぞれ、D−D断面、E−E断面、F−F断面における構造を示している。A−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面、E−E断面、F−F断面は、いずれも、ガードリング11が延伸する方向(即ち、Y軸方向)に垂直な断面である。なお、
図4A、
図4Bは、発明の理解を容易にするために、本実施形態の半導体ウェハーの断面構造を概略的に示しており、構造の細部については、適宜に変更され得ることに留意されたい。
【0028】
図4A、
図4Bに図示されているように、本実施形態の半導体ウェハーは、トランジスタその他の素子(図示されない)が形成された半導体基板21と、半導体基板21を被覆するように設けられた絶縁層22と、該絶縁層22を被覆するように形成された表面保護層(パッシベーション膜)23とを備えている。
【0029】
ガードリング11は、絶縁層22の内部に形成された金属配線11a〜11eを備えている。金属配線11a〜11eは、半導体基板21の厚さ方向に並んで配置されている。
【0030】
TEGパッド12は、隣接するガードリング11の間の位置に形成されている。TEGパッド12は、その外周の一部分が表面保護層23によって被覆されており、表面保護層23に形成された開口23aにおいて露出されている。なお、A−A断面、B−B断面、C−C断面の構造を示す
図4Aにおいては、TEGパッド12が図示されているが、D−D断面、E−E断面、F−F断面の構造を示す
図4Bにおいては、TEGパッド12に接続された配線14のみが図示されている。
【0031】
加えて、TEGパッド12の下方に、金属配線16a〜16dが設けられている。金属配線16a〜16dは、半導体基板21の厚さ方向に並んで配置されている。
【0032】
図5は、本実施形態の半導体ウェハーの構造を詳細に示す断面図である。なお、本実施形態の半導体ウェハーの構造の理解を容易にするために、
図5においては、半導体ウェハーの構造の寸法(特に、半導体基板21の厚さ方向の寸法)が、実際の寸法に比例して図示されていないことに留意されたい。
【0033】
半導体基板21の表側主面は、絶縁層22によって被覆されている。本実施形態では、絶縁層22は、この順に積層された、酸化シリコン膜31、炭窒化シリコン膜32、酸化シリコン膜33、炭窒化シリコン膜34、低誘電率膜35、炭窒化シリコン膜36、低誘電率膜37、炭窒化シリコン膜38、酸化シリコン膜39、炭窒化シリコン膜40、及び、酸化シリコン膜41を備えている。低誘電率膜35、37としては、例えば、比誘電率が3.3以下の有機シリカガラスで形成された絶縁膜が用いられる。
【0034】
ガードリング11の金属配線11a、及び、TEGパッド12の下方に設けられた金属配線16aは、炭窒化シリコン膜32及び酸化シリコン膜33に形成された溝に埋め込まれ、金属配線11b及び金属配線16bは、低誘電率膜35に形成された溝に埋め込まれている。また、金属配線11c及び金属配線16cは、低誘電率膜37に形成された溝に埋め込まれており、金属配線11d及び金属配線16dは、酸化シリコン膜39に形成された溝に埋め込まれている。また、金属配線11e及びTEGパッド12は、酸化シリコン膜41の上に形成されている。金属配線11aは、酸化シリコン膜31を貫通するビアコンタクト51によって半導体基板21の拡散層(図示されない)に接合されており、金属配線11bは、低誘電率膜35及び炭窒化シリコン膜34を貫通するビアコンタクト52によって金属配線11
aに接合されている。同様に、金属配線11cは、低誘電率膜37及び炭窒化シリコン膜36を貫通するビアコンタクト53によって
金属配線11bに接合されており、金属配線11dは、酸化シリコン膜39及び炭窒化シリコン膜38を貫通するビアコンタクト54によって金属配線11cに接合されている。一実施形態では、金属配線11a〜11d、及び、金属配線16a〜16dとしては、銅配線が用いられ、金属配線11e及びTEGパッド12には、アルミニウム合金が用いられる。
【0035】
表面保護層23は、この順に積層された、酸化シリコン膜42及び窒化シリコン膜43を備えている。酸化シリコン膜42及び窒化シリコン膜43は、ガードリング11の金属配線11eを被覆するように形成され、更に、TEGパッド12を部分的に被覆するように形成されている。酸化シリコン膜42及び窒化シリコン膜43には、開口23aが形成され、TEGパッド12は、開口23aの内部において、露出されている。
【0036】
溝部15は、ガードリング11とTEGパッド12との間の位置に形成されている。溝部15は、その深さ方向において、少なくとも表面保護層23を貫通するように形成されている。本実施形態では、溝部15は、深さ方向において、酸化シリコン膜39の途中の位置に到達するように形成されている。溝部15が、低誘電率膜35、37に到達していないことに留意されたい。これは、低誘電率膜35、37と比べてヤング率が高い材料である酸化シリコン膜39、41、42及び窒化シリコン膜43に選択的に溝部15を設けることで、クラックを抑制するためである。
【0037】
なお、
図5には、A−A断面における半導体ウェハーの構造が図示されているが、B−B断面、C−C断面における半導体ウェハーの構造は、溝部15のX方向における幅が異なる以外は、A−A断面における半導体ウェハーの構造と同一である。また、D−D断面、E−E断面、及び、F−F断面における半導体ウェハーの構造は、TEGパッド12及び金属配線16a〜16bの代わりに配線14が存在する点以外は、それぞれ、A−A断面、B−B断面及びC−C断面における半導体ウェハーの構造と同一である。
【0038】
図3を再度に参照して、本実施形態の半導体ウェハーの構造においては、溝部15の平面形状が重要である。重要な点は、Y軸方向(ガードリング11が延伸する方向)に垂直で、且つ、TEGパッド12を通過する断面に関し、TEGパッド12と溝部15との距離が近い断面(具体的には、A−A断面)とTEGパッド12と溝部15との距離が遠い断面(具体的には、B−B断面)とが存在するということである。後に詳細に議論するように、TEGパッド12と溝部15との距離が近い断面の存在は、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレードを用いてダイシングをしても、TEGパッド12を除去することを可能にする。これは、スクライブ領域2の幅を狭くすることに寄与する。一方、TEGパッド12と溝部15との距離が遠い断面の存在は、チッピングの抑制に有効である。
【0039】
図6は、溝部15の平面形状を詳細に示す平面図である。
図6(及び
図3)に示されているように、溝部15のガードリング11に近い側面15dは、YZ平面に平行な面であり、Y軸方向に延伸するように形成されている。一方、溝部15のTEGパッド12に近い側面は、階段状に形成されている。詳細には、溝部15のTEGパッド12に沿った側面は、YZ平面に平行な面15a、15b、15cと、XZ平面に平行な面15e、15fとで構成されている。面15eは、X軸方向に延伸して面15a、15cを接続し、面15fは、X軸方向に延伸して面15b、15cを接続する。ここで、
図6において、D
1は、溝部15の面15aとTEGパッド12の間の距離を示しており、D
2は、溝部15の面15bとTEGパッド12の間の距離を示しており、D
3は、溝部15の面15cとTEGパッド12の間の距離を示している。
図6の構造では、A−A断面においてはTEGパッド12と溝部15との距離D
1が近く、B−B断面においてはTEGパッド12と溝部15との距離D
2が遠い。また、C−C断面においては、TEGパッド12と溝部15との距離D
3は、距離D
1よりも遠く、距離D
2よりも近い。
【0040】
本実施形態では、溝部15は、Y軸方向において周期的な形状に形成されている。即ち、溝部15のTEGパッド12に沿った側面は、面15b、15f、15d、15e、15a、15e、15c、15fで構成される面を一の空間周期P
Sとして、Y軸方向に周期的な形状を有している。
【0041】
以上に説明されているような本実施形態の溝部15の平面形状は、チッピングを抑制すると共に、且つ、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレードを用いてダイシングを行うことを可能にする点で有用である。以下、本実施形態の溝部15の平面形状の有用性について議論する。
図7は、
図3の仮想線17の間の位置にダイシングブレードを接触させてダイシングが行われた場合の当該半導体ウェハーの状態を示す断面図である。
【0042】
本実施形態の半導体ウェハーの一つの特徴は、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも多少薄い厚さのダイシングブレード50を用いてダイシングを行っても、TEGパッド12を除去できることである。
図7においては、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50が図示されていることに留意されたい。
【0043】
TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50が用いられた場合、TEGパッド12に、ダイシングブレード50とは直接的に接触しない部分(以下、「非接触部分」という)が残存することになる。
【0044】
ただし、TEGパッド12の非接触部分には、ダイシングブレード50により、当該非接触部分を引きはがすような応力が作用する。本実施形態の半導体ウェハーでは、この応力を利用して、TEGパッド12の全体を除去することができる。詳細には、
図7(a)に図示されているように、本実施形態の半導体ウェハーでは、TEGパッド12と溝部15との間の距離が近い断面(本実施形態では、A−A断面)においてダイシングブレード50と溝部15の距離d
1が近くなる。よって、TEGパッド12の非接触部分を引きはがすような応力が作用したとき、該応力は、溝部15のTEGパッド12と溝部15との間の距離が近い位置において開放されやすい。言い換えれば、表面保護層23の溝部15の面15aとTEGパッド12の間の部分は、ダイシングブレード50によって非接触部分を引きはがすような応力が作用することによって破壊されやすい。したがって、TEGパッド12においてダイシングブレード50とは直接的に接触しない非接触部分があっても、当該非接触部分は、表面保護層23の溝部15の面15aとTEGパッド12の間の部分と共に除去することができる。
【0045】
このように、本実施形態の半導体ウェハーの構造によれば、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50を使用してダイシングを行うことができる。これは、スクライブ領域2の幅を狭くすることを可能にする。スクライブ領域2の幅は、用いられるダイシングブレード50の厚さと、ガードリング11とダイシングブレード50との間で確保すべき距離の和で決まる。ダイシングの際には、最終的に取得しようとする半導体ICチップへの損傷を防ぐために、ガードリング11とダイシングブレード50との間の距離を一定程度確保することが必要になることに留意されたい。本実施形態の半導体ウェハーの構造を用いることにより、薄いダイシングブレード50を使用することが可能になり、結果として、スクライブ領域2の幅を狭くすることできる。
【0046】
一方、
図7(b)に図示されているように、TEGパッド12と溝部15との間の距離が遠いB−B断面においては、ダイシングブレード50と溝部15の距離d
2が遠くなり、これは、表面チッピングの抑制に寄与する。ダイシングブレード50が半導体ウェハーと接触したときには、半導体基板21の裏面の、ダイシングブレード50の厚さ方向の中心の位置の近傍においてクラックが発生する。当該クラックは、X軸方向(即ち、スクライブ領域2を横断する方向)に進行し、また、X軸方向に進行するにつれて、半導体ウェハーの表側主面に近づく。溝部15は、このクラックの進行を止める作用がある。そして、クラックの進行を止める作用は、溝部15とダイシングブレード50との間の距離が遠いほど効果的に得ることができる。よって、TEGパッド12と溝部15との間の距離が遠い断面(本実施形態では、B−B断面)が存在することにより、表面チッピングを抑制することができる。
【0047】
また、TEGパッド12と溝部15との間の距離が中間的であるC−C断面の存在は、A−A断面において発生した表面保護層23の溝部15の面15aとTEGパッド12の間の部分の破壊を、B−B断面に伝搬させることに有効である。A−A断面とB−B断面の間に、TEGパッド12と溝部15との間の距離が中間的であるC−C断面を設けることで、TEGパッド12の除去の確実性を向上させることができる。
【0048】
図8は、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50を使用してダイシングを行うことで得られる半導体ICチップの端部の構造を示す平面図であり、
図9A、
図9Bは、該半導体ICチップの端部の構造を示す断面図である。
図8において、符号18は、ダイシングの切断面、即ち、半導体ICチップの端面を示しており、破線12aは、ダイシング前にTEGパッド12が存在していた位置を示している。
【0049】
TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50を使用してダイシングが行われると、ダイシングの前にTEGパッド12が存在していた位置の近傍においてTEGパッド12を引きはがす応力が作用する。この応力によって表面保護層23が破壊されるとともにTEGパッド12が除去される。
【0050】
得られた半導体ICチップは、A−A断面においては端面18と溝部15との距離d
1が相対的に近く、B−B断面においては端面18と溝部15との距離d
2が相対的に遠いような構造を有している。なお、C−C断面においては、端面18と溝部15との距離d
3が、距離d
1よりも遠く、距離d
2よりも近い。
【0051】
なお、溝部15の端面18に近い側面は、ダイシングの際に破壊されることがある。
図9Aは、溝部15の端面18に近い側面が、部分的に破壊された構造を図示している。しかしながら、ダイシングの際の破壊によって形成された面は、エッチングによって形成された溝部15の底面及び側面とは、構造的に区別できる。よって、実際の半導体ICチップにおいても、半導体ICチップの端面18と溝部15との距離を特定することができる。
【0052】
また、
図9Aに図示されているように、TEGパッド12の下方に位置していた金属配線16a〜16dのうち、切断面よりもガードリング11に近い部分は、ダイシングの後も半導体ICチップに残存する。金属配線16a〜16dの残存部の存在は、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50を使用してダイシングが行われたことを示す一つの根拠となり得る。
【0053】
以上に説明されているように、本実施形態の半導体ウェハーの構造によれば、表面チッピングを抑制しつつ、スクライブ領域2の幅を狭くすることができる。
【0054】
なお、本実施形態において、Y軸方向に垂直で、且つ、TEGパッド12を通過する断面について、TEGパッド12と溝部15との距離が近い断面とTEGパッド12と溝部15との距離が遠い断面
とが存在するという条件の下であれば、ガードリング11とTEGパッド12の間の通過するように設けられる溝部の形状は、様々に変更可能である。
【0055】
図10は、
図3で図示されている形状の溝部15と異なる形状の溝部24を有する半導体ウェハーの構造を示す表面図である。
図10に示されているように、溝部
24のガードリング11に近い側面24dは、YZ平面に平行な面であり、Y軸方向に延伸するように形成されている。一方、溝部24のTEGパッド12に近い側面は、YZ平面に平行な面24a、24bと、XZ平面に平行な面24cとで構成されている。面24cは、X軸方向に延伸して面24a、24bを接続する。ここで、
図10において、D1は、溝部24の面24aとTEGパッド12の間の距離を示しており、D2は、溝部24の面24bとTEGパッド12の間の距離を示している。
図10の構造では、A−A断面においてはTEGパッド12と溝部
24との距離D1が近く、B−B断面においてはTEGパッド12と溝部
24との距離D2が遠い。
【0056】
このような構造においても、表面チッピングを抑制しつつ、スクライブ領域2の幅を狭くすることができる。即ち、TEGパッド12と溝部24との距離が近い断面(A−A断面)の存在は、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレードを用いてダイシングをしても、TEGパッド12を除去することを可能にする。これは、スクライブ領域2の幅を狭くすることに寄与する。一方、TEGパッド12と溝部24との距離が遠い断面(B−B断面)の存在は、チッピングの抑制に有効である。
【0057】
なお、溝部の平面形状は、
図3、
図10に図示されているものに限定されない。例えば、
図10では、面24a、24bを接続する面24cは、面24a、24bに対して垂直であるが、面24cが面24a、24bに対して斜めに(例えば、45度をなす角度で)形成されてもよい。
【0058】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態の半導体ウェハーのスクライブ領域2における構造を詳細に示す拡大平面図であり、
図12は、
図11のA−A断面における半導体ウェハーの構造を示す断面図である。なお、A−A断面は、ガードリング11が延伸する方向(即ち、Y軸方向)に垂直な断面である。
【0059】
図11及び
図12に図示されているように、本実施形態の半導体ウェハーの構造は、第1の実施形態の半導体ウェハーの構造とほぼ同様であるが、ガードリング11に沿って、ガードリング11とTEGパッド12の間を通過するように2本の溝部25、26が設けられる点で相違する。溝部25、26は、いずれも、Y軸方向に延伸するように設けられる。ここで、溝部25は、ガードリング11に沿って設けられ、溝部26は、溝部25とTEGパッド12の間に、溝部25に沿って設けられる。溝部25の側壁25a、25bは、いずれも、YZ平面に平行であり、溝部26の側壁26a、26bは、いずれも、YZ平面に平行である。
【0060】
図13は、本実施形態の半導体ウェハーの構造を詳細に示す断面図である。溝部25、26は、その深さ方向において、少なくとも表面保護層23(即ち、酸化シリコン膜42及び窒化シリコン膜43)を貫通するように形成されている。本実施形態では、溝部25、26は、表面保護層23を貫通し、深さ方向において、酸化シリコン膜39の途中の位置に到達するように形成されている。
【0061】
このような構造においても、表面チッピングを抑制しつつ、スクライブ領域2の幅を狭くすることができる。即ち、TEGパッド12からの距離が近い溝部26が存在することにより、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレードを用いてダイシングをしても、TEGパッド12を除去することが可能になる。
【0062】
詳細には、第1の実施形態においても説明されているように、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレードが用いられた場合、TEGパッド12に、ダイシングブレードとは直接的に接触しない部分(以下、「非接触部分」という)が残存することになる。ただし、上述されているように、TEGパッド12の非接触部分には、ダイシングブレードにより、当該非接触部分を引きはがすような応力が作用するので、本実施形態の半導体ウェハーにおいても、この応力を利用して、TEGパッド12の全体を除去することができる。TEGパッド12からの距離が近い溝部26が設けられている本実施形態の半導体ウェハーでは、TEGパッド12の非接触部分を引きはがすような応力が作用したとき、該応力は、溝部26において開放されやすい。言い換えれば、絶縁層22及び表面保護層23の溝部26の側壁26aとTEGパッド12の間の部分は、ダイシングブレードによって非接触部分を引きはがすような応力が作用することによって破壊されやすい。したがって、TEGパッド12においてダイシングブレードとは直接的に接触しない非接触部分があっても、当該非接触部分は、絶縁層22及び表面保護層23の溝部26の側壁26aとTEGパッド12の間の部分と共に除去することができる。
【0063】
このように、本実施形態の半導体ウェハーの構造によれば、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50を使用してダイシングを行うことができる。これは、スクライブ領域2の幅を狭くすることを可能にする。
【0064】
一方、TEGパッド12からの距離が遠い溝部25が設けられていることは、表面チッピングの抑制に寄与する。溝部25は、TEGパッド12からの距離が遠く、よって、ダイシングの際におけるダイシングブレードと溝部25の間の距離も遠くなる。これは、溝部25が、ダイシングブレードが半導体ウェハーと接触したときに発生するクラックの進行を止める作用が強いことを意味している。よって、TEGパッド12からの距離が遠い溝部25が設けられていることにより、表面チッピングを抑制することができる。
【0065】
図14は、
図11の仮想線27の間の位置にダイシングブレードを接触させてダイシングが行われた場合の行うことで得られる半導体ICチップの端部の構造を示す平面図であり、
図15は、該半導体ICチップの端部の構造を示す断面図である。本実施形態においても、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50を使用してダイシングが行われる。
図14において、符号28は、ダイシングの切断面、即ち、半導体ICチップの端面を示しており、破線12aは、ダイシング前にTEGパッド12が存在していた位置を示している。
【0066】
TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50を使用してダイシングが行われると、ダイシングの前にTEGパッド12が存在していた位置の近傍において、TEGパッド12を引きはがす応力が作用する。この応力により、TEGパッド12が存在していた位置の近傍において表面保護層23が破壊されるとともにTEGパッド12が除去される。
【0067】
得られた半導体ICチップにおいては、溝部26の半導体ICチップの端面28に近い側面は、ダイシングの際に破壊されることがある。
図15は、溝部26の端面28に近い側面が、部分的に破壊された構造を図示している。しかしながら、ダイシングの際の破壊によって形成された面は、エッチングによって形成された溝部26の底面及び側面とは、構造的に区別できる。よって、実際の半導体ICチップにおいても、
溝部26の存在を特定することができる。
【0068】
また、
図15に図示されているように、TEGパッド12の下方に位置していた金属配線16a〜16dのうち、切断面よりもガードリング11に近い部分は、ダイシングの後も残存する。金属配線16a〜16dの残存部の存在は、TEGパッド12のX軸方向の幅よりも薄いダイシングブレード50を使用してダイシングが行われたことを示す一つの根拠となり得る。
【0069】
以上に説明されているように、ガードリング11とTEGパッド12との間に2本の溝部25、26が設けられている本実施形態の半導体ウェハーの構造においても、表面チッピングを抑制しつつ、スクライブ領域2の幅を狭くすることができる。
【0070】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。