特許第6234729号(P6234729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234729
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/696 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G01F1/696 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-162836(P2013-162836)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-31639(P2015-31639A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌大
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋
(72)【発明者】
【氏名】浅野 哲
【審査官】 越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−203528(JP,A)
【文献】 特開2011−089850(JP,A)
【文献】 特開2008−021166(JP,A)
【文献】 特開2000−077996(JP,A)
【文献】 特開平11−176948(JP,A)
【文献】 特開平06−232354(JP,A)
【文献】 実開平03−048330(JP,U)
【文献】 実開昭59−185624(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/696
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を検出して物理量に応じた出力信号を出力するセンサ素子の出力信号を処理する信号処理回路を負荷として備え、電源端子から前記負荷に電源を供給する電源線に、第1の端子が電源端子側に接続され第2の端子が前記負荷側に接続された電源遮断MOSトランジスタを設け、前記電源端子に過電圧が印加されたことを検出し電源遮断MOSトランジスタのオン状態とオフ状態とを切り換えるように前記電源遮断MOSトランジスタのゲート端子に信号を出力する過電圧検出回路を有するセンサ装置において、
前記電源遮断MOSトランジスタのウエルに、前記第1の端子又は前記第2の端子のうち電位の高い方の端子側から電圧を供給し、
前記過電圧検出回路は、
前記電源端子の電圧が供給される入力端子と、
前記電源遮断MOSトランジスタのゲート端子に接続される出力端子と、
前記入力端子の電圧に応じてオンオフする第1のMOSトランジスタと、
前記第1のMOSトランジスタに流れる電流を、一端が前記出力端子に接続された抵抗へ流すためのカレントミラー回路を構成する第2のMOSトランジスタ及び第3のMOSトランジスタと、
前記入力端子と前記カレントミラー回路とに接続され、ダイオードとして機能する第4のMOSトランジスタと、
前記第3のMOSトランジスタから流れる電流に応じて前記出力端子から前記出力する信号として電圧を発生させる前記抵抗と、
から構成され、
前記電源端子に接続される電源が逆接続された場合に、前記過電圧検出回路の前記出力が0Vになることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ装置において、
正常時は前記第1の端子側の電圧が前記ウエルに供給され、電源を逆接続した場合は前記第2の端子側の電圧が前記ウエルに供給されるように構成したことを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサ装置において、
過電圧を検出する過電圧検出回路を備え、
前記過電圧検出回路は、正常時と電源が逆接続された場合とで、同じレベルの出力信号を前記電源遮断MOSトランジスタのゲート端子の入力信号として出力することを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のセンサ装置において、
前記電源遮断MOSトランジスタのウエルを開放にしたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項5】
請求項3に記載のセンサ装置において、
前記電源遮断MOSトランジスタのウエルと第1の端子との間、あるいはウエルと第2の端子との間に抵抗を接続したことを特徴とするセンサ装置。
【請求項6】
請求項3に記載のセンサ装置において、
前記電源遮断MOSトランジスタのゲート端子に静電気保護用のMOSトランジスタを接続したことを特徴とするセンサ装置。
【請求項7】
請求項1に記載のセンサ装置において、
前記センサ素子は、発熱抵抗体を備え、空気の流量に応じて変化する出力信号を出力することを特徴とするセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外部から電源を供給されるセンサ装置に係り、特に電源の正極と負極とを逆に接続する電源逆接に対して保護耐性のあるセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサ装置の従来例には特開2000−332207号公報(特許文献1)に記載された過電圧保護回路などがある。
【0003】
この過電圧保護回路は、サージ保護回路と過電圧検出回路とスイッチング回路とで構成され、電源受給端子Vccと接地端子GNDを介して、自動車のバッテリ(蓄電池)などから直流電力の供給を受け、負荷用電源端子VccSに接続された負荷F1に、過電圧保護された電力を供給するように構成されている(段落0026)。そして、スイッチング回路は、P型MOSトランジスタM1,M2と抵抗RM2とで構成され、過電圧検出回路により過電圧が検出されたとき、MOSトランジスタM1を介してMOSトランジスタM2のゲートに電圧を印加してMOSトランジスタM2を遮断(オフ)する。これにより、負荷用電源端子VccSを電源受給端子Vccから切り離す(カットオフする)(段落0030)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−332207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されている従来技術では、過電圧に対する保護耐性はあるが、電源逆接に対する配慮が欠けていた。
【0006】
センサ装置における課題を説明するため、本発明に対する比較例としてのセンサ装置30の構成を、図12に示す。センサ装置30は、電源を供給する電源端子31と、グランド端子32と、物理量に応じた電気信号を発生させるセンサ素子38と、センサ素子38への電源供給とセンサ素子38からの出力信号を処理する信号処理LSI33とから構成される。信号処理LSI33は、電源端子31に過電圧が印加されたことを検出する過電圧検出回路34と、センサ素子38からの出力信号を処理する信号処理回路37と、センサ素子38と信号処理回路37への電源供給を遮断するMOSトランジスタ36とで構成される。なお、図8ではMOSトランジスタ36の寄生ダイオード35を明示した。
【0007】
センサ装置30に正常な電源電圧が供給されている場合、過電圧検出回路34はMOSトランジスタ36のゲート電圧を0VにすることでMOSトランジスタ36をオン状態にしてセンサ素子38と信号処理回路37とへ電源を供給する。また、センサ装置30の電源端子31に過電圧が印加された場合、過電圧検出回路34はMOSトランジスタ36のゲート電圧を電源端子31の電位と同電位にすることでMOSトランジスタ36をオフ状態にして、センサ素子38と信号処理回路37とへの電源供給を遮断することで、センサ素子38と信号処理回路37との過電圧による破壊を防止する。しかし、センサ装置30の電源が逆接された場合、電源端子31の電圧は負電圧となる。この場合、センサ素子38と信号処理回路37とにはMOSトランジスタ36の寄生ダイオード35を介して負電圧が印加される。センサ素子38および信号処理回路37へ負電圧が印加された場合、この負電圧によってセンサ素子38および信号処理回路37へ過電流が流れ、センサ素子38および信号処理回路37が破壊する恐れがある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的はセンサ装置の電源を逆接してもセンサ素子や信号処理LSIが破壊しないセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、
物理量を検出して物理量に応じた出力信号を出力するセンサ素子の出力信号を処理する信号処理回路を負荷として備え、電源端子から前記負荷に電源を供給する電源線に、第1の端子が電源端子側に接続され第2の端子が前記負荷側に接続された電源遮断MOSトランジスタを設け、前記電源端子に過電圧が印加されたことを検出し電源遮断MOSトランジスタのオン状態とオフ状態とを切り換えるように前記電源遮断MOSトランジスタのゲート端子に信号を出力する過電圧検出回路を有するセンサ装置において、
前記電源遮断MOSトランジスタのウエルに、前記第1の端子又は前記第2の端子のうち電位の高い方の端子側から電圧を供給し、
前記過電圧検出回路は、前記電源端子の電圧が供給される入力端子と、前記電源遮断MOSトランジスタのゲート端子に接続される出力端子と、前記入力端子の電圧に応じてオンオフする第1のMOSトランジスタと、前記第1のMOSトランジスタに流れる電流を、一端が前記出力端子に接続された抵抗へ流すためのカレントミラー回路を構成する第2のMOSトランジスタ及び第3のMOSトランジスタと、前記入力端子と前記カレントミラー回路とに接続され、ダイオードとして機能する第4のMOSトランジスタと、前記第3のMOSトランジスタから流れる電流に応じて前記出力端子から前記出力する信号として電圧を発生させる前記抵抗と、から構成され、
前記電源端子に接続される電源が逆接続された場合に、前記過電圧検出回路の前記出力が0Vになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、センサ素子8および信号処理回路7を電源の逆接続から保護することが可能なセンサ装置を提供することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施例のセンサ装置の構成を示す図である。
図2】過電圧検出回路5の構成を示す図である。
図3】電源遮断MOSトランジスタ6の縦構造を示す図である。
図4】正常時の動作状態を示す図である。
図5】過電圧印加時の動作状態を示す図である。
図6】電源を逆接続した時の動作状態を示す図である。
図7】電源遮断MOSトランジスタ6の動作図である。
図8】第2の実施例のセンサ装置の構成を示す図である。
図9】第3の実施例のセンサ装置の構成を示す図である。
図10】第4の実施例のセンサ装置の構成を示す図である。
図11】空気流量測定装置の流量検出部の構成を示す図である。
図12】本発明に対する比較例としてのセンサ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、本発明の第1の実施例であるセンサ装置を図1乃至7により説明する。なお、図1は第1の実施例のセンサ装置の構成、図2は過電圧検出回路5の構成、図3は電源遮断MOSトランジスタ6の縦構造、図4は正常時の動作状態、図5は過電圧印加時の動作状態、図6は電源逆接時の動作状態、図7は電源遮断MOSトランジスタ6の動作を示す図である。
【0015】
本実施例のセンサ装置1は電源を供給する電源端子2と、グランド端子3と、物理量に応じた電気信号を発生させるセンサ素子8と、センサ素子8への電源供給とセンサ素子8からの出力信号を処理する信号処理LSI4とから構成される。信号処理LSI4は電源端子2に過電圧が印加されたことを検出する過電圧検出回路5と、センサ素子8からの出力信号を処理する信号処理回路7と、センサ素子8と信号処理回路7への電源供給を遮断する電源遮断MOSトランジスタ6とで構成される。
【0016】
そして、センサ装置1は、物理量を検出して物理量に応じた出力信号を出力するセンサ素子8の出力信号を処理する信号処理回路7を負荷として備え、電源端子2から前記負荷に電源を供給する電源線50に、第1の端子が電源端子2側に接続され第2の端子が前記負荷側に接続された電源遮断MOSトランジスタ6を設け、電源遮断MOSトランジスタ6のゲート端子に入力する入力信号により電源遮断MOSトランジスタ6のオン状態とオフ状態とを切り換えて前記負荷に異常電圧が供給されるのを防止する。
【0017】
過電圧検出回路5は、図2に示す様に、電源端子2の電圧が供給される入力端子9と、入力端子9の電圧を分割する抵抗10,11と、抵抗10,11の分割電圧に応じてオンオフするMOSトランジスタ15と、MOSトランジスタ15の電流を抵抗16へ流すカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタ13,14と、低抵抗のダイオードとして機能するMOSトランジスタ12と、MOSトランジスタ14を流れる電流に応じて出力端子17の電圧を発生させる抵抗16と、電源遮断MOSトランジスタ6のゲート端子に接続される出力端子17とにより、構成される。
【0018】
過電圧検出回路5は、電源端子2の電圧が正常な場合、すなわち入力端子9の電圧が所定値以下の場合、MOSトランジスタ15はオフ状態となるので、抵抗16を流れる電流は0となり、出力端子17の電圧を0Vにする。また、電源端子2に過電圧が印加された場合、すなわち入力端子9の電圧が所定値以上の場合、MOSトランジスタ15はオン状態となるので抵抗16に電流が流れ、出力端子17の電圧を入力端子9の電圧とほぼ同電位にする。また、電源が逆接続された場合、すなわち入力端子9の電圧が負電圧の場合、MOSトランジスタ12がオフ状態となるので抵抗16を流れる電流は0となり、出力端子17の電圧は0Vになる。
【0019】
MOSトランジスタ12が設けられていないと、電源が逆接続された場合に、抵抗16にはグランド側から電流が流れ、出力端子が0Vでなくなる(負の電位になる)。これは、MOSトランジスタ14に、図4の電源遮断MOSトランジスタ6について説明する寄生ダイオード28,29と同様な寄生ダイオードが存在することにより、このMOSトランジスタ14の寄生ダイオードを通じてグランド側から入力端子9側に電流が流れるためである。このため、電源が逆接続された場合に、電源遮断MOSトランジスタ6を遮断状態に維持できなくなる可能性がある。MOSトランジスタ12は入力端子側からグランド側に流れる電流を許容するダイオードとして機能するので、電源が逆接続された場合に抵抗16に電流が流れるのを防ぎ、出力端子17の電圧を0Vにすることができる。
【0020】
本実施例の過電圧検出回路5は、正常時と電源が逆接続された場合とで、同じレベルの信号を出力している。なお、この過電圧検出回路5は実施例2乃至5にも適用される。
【0021】
次に、電源遮断MOSトランジスタ6の縦構造について、図3により説明する。電源遮断MOSトランジスタ6はP型シリコン基板27にN型ウエル層26を構成し、N型ウエル層26にN型ウエル層26から電極を取り出すため設けたN+拡散19と、ソースおよびドレイン領域を形成するP+拡散20,25と、ソースおよびドレイン領域の間に配置されるゲート電極23と、N+拡散19に電気的に接続されたウエル端子18と、P+拡散20に電気的に接続されたソース端子21と、P+拡散25に電気的に接続されたドレイン端子24と、ゲート電極23に電気的に接続されたゲート端子22とから構成される。
【0022】
次に、本実施例のセンサ装置1に正常な電源電圧が供給されている場合の動作を図4により説明する。なお、図4にはN型ウエル層26とP+拡散20との間にある寄生ダイオード28と、N型ウエル層26とP+拡散25との間にある寄生ダイオード29とを明示した。電源電圧が正常な場合、図4では電源端子2の電圧を5Vとした。この場合、過電圧検出回路5の出力は先の説明の様に0Vになり、電源遮断MOSトランジスタ6のゲート電圧は0Vになる。また、電源遮断MOSトランジスタ6のウエル端子18の電圧は寄生ダイオード28を介して電気が供給されるので4.4Vになる。また、電源遮断MOSトランジスタ6のソース端子21は電位の高い電源端子2側と考えられる。この場合、ゲート=ソース間電圧は―5Vとなるので電源遮断MOSトランジスタ6はオン状態となり、センサ素子8と信号処理回路7へ電源として5Vが供給される。
【0023】
この場合、電源線50の電源端子2側に接続される電源遮断MOSトランジスタ6の第1の端子側から、ウエルに電圧が供給されている。
【0024】
本実施例では、ウエル端子18を開放(オープン)した状態にしてあり、図4に示すように、N型ウエル層26とP+拡散20との間には寄生ダイオード28が存在し、N型ウエル層26とP+拡散25との間には寄生ダイオード29が存在する。このため、ウエル端子18とソース端子21とは寄生ダイオード28を介して接続され、ウエル端子18とドレイン端子24とは寄生ダイオード29を介して接続された状態になっている。
【0025】
次に、本実施例のセンサ装置1に過電圧が供給された場合の動作を図5により説明する。なお、図5にはN型ウエル層26とP+拡散20との間にある寄生ダイオード28と、N型ウエル層26とP+拡散25との間にある寄生ダイオード29とを明示した。図5では、過電圧が電源に供給された場合の電源端子2の電圧を10Vとした。この場合、過電圧検出回路5の出力は先の説明の様に10Vになり、電源遮断MOSトランジスタ6のゲート電圧は10Vになる。また、電源遮断MOSトランジスタ6のウエル端子18の電圧は寄生ダイオード28を介して電気が供給されるので9.4Vになる。また、電源遮断MOSトランジスタ6のソース端子は電位の高い電源端子2側と考えられる。この場合、ゲート=ソース間電圧は0Vとなるので電源遮断MOSトランジスタ6はオフ状態となり、センサ素子8と信号処理回路7への電源供給が遮断される。つまり、センサ素子8と信号処理回路7との電源電圧は0Vとなり、過電圧から保護される。
【0026】
この場合、電源線10の電源端子2側に接続される電源遮断MOSトランジスタ6の第1の端子側から、ウエルに電圧が供給されている。
【0027】
センサ装置1に過電圧が供給された場合においても、正常な電源電圧が供給されている場合と同様に、ウエル端子18とソース端子21とは寄生ダイオード28を介して接続され、ウエル端子18とドレイン端子24とは寄生ダイオード29を介して接続された状態になっている。
【0028】
次に、本実施例のセンサ装置1に電源が逆接続されて電圧が供給された場合(以下、逆接時という)の動作を図6により説明する。なお、図6にはN型ウエル層26とP+拡散20との間にある寄生ダイオード28と、N型ウエル層26とP+拡散25との間にある寄生ダイオード29とを明示した。図6では、電源を逆接続した場合の電源端子2の電圧を−5Vとした。この場合、過電圧検出回路5の出力は先の説明の様に0Vになり、電源遮断MOSトランジスタ6のゲート電圧は0Vになる。また、電源遮断MOSトランジスタ6のソース端子は電位の高い信号処理回路7側と考えられる。また、電源遮断MOSトランジスタ6のウエル端子18の電圧は寄生ダイオード29を介して電気が供給されるので―0.6Vになる。この場合、ゲート=ソース間電圧は0Vとなるので電源遮断MOSトランジスタ6はオフ状態となり、センサ素子8と信号処理回路7への電源供給が遮断される。この結果、センサ素子8と信号処理回路7の電源電圧は0Vとなり、電源逆接から保護される。
【0029】
この場合、電源線50の負荷(信号処理回路7)側に接続される電源遮断MOSトランジスタ6の第2の端子側から、ウエルに電圧が供給されている。これにより、本実施例の過電圧検出回路5は、正常時と電源が逆接続された場合とで、同じレベルの信号を出力しているが、電源が逆接続された場合も、電源遮断MOSトランジスタ6を遮断することができる。
【0030】
センサ装置1に電源が逆接続されて電圧が供給された場合には、過電圧が供給された場合および正常な電源電圧が供給されている場合とは異なり、ウエル端子18とドレイン端子24とが寄生ダイオード28を介して接続され、ウエル端子18とソース端子21とが寄生ダイオード29を介して接続された状態になっている。
【0031】
次に、図7により正常時、過電圧印加時、逆接時の電源遮断MOSトランジスタ6のウエル電圧およびゲート電圧を図示して動作の概要を示す。正常時および過電圧印加時は電源遮断MOSトランジスタ6のソースは電位の高い電源端子2側になる。また、ウエル電圧は寄生ダイオード28,29により電位の高い側の電圧が選択され、この場合、寄生ダイオード28側から電圧が供給される。この為、ソース電圧とウエル電圧が異なることで生じるバックゲート効果を小さく抑えることができるので電源遮断MOSトランジスタ6のオン抵抗を小さくできる。電源逆接時は電源遮断MOSトランジスタ6のソースは電位の高い信号処理回路7側になる。また、ウエル電圧は寄生ダイオード28,29により電位の高い側の電圧が選択される。この場合、寄生ダイオード29側から電圧が供給される。つまり、正常時および過電圧印加時とはソース端子が逆になり、また、ウエル電圧の供給元も電源端子2側から信号処理回路7側になる。この結果、電源遮断MOSトランジスタ6のソースとドレインが逆になってもバックゲート効果の影響が小さくなるので電源遮断MOSトランジスタ6は正常に動作する。つまり、ウエル端子18を開放にすることでウエル電圧は寄生ダイオード28,29により電位の高い側の電圧が選択されるので、電源遮断MOSトランジスタ6のソースとドレインが入れ替わっても電源遮断MOSトランジスタ6は正常に動作できる。
【0032】
なお、ウエル端子18を開放する場合は、ウエルから端子18を引き出す必要はなく、端子18を設けない構成であってもよい。
【実施例2】
【0033】
次に、本発明の第2の実施例であるセンサ装置を、図8により説明する。なお、図8は第2の実施例のセンサ装置1’および信号処理LSI4’の構成を示している。
【0034】
第2の実施例のセンサ装置1’は第1の実施例のセンサ装置1と基本的に同じ構成であるが、信号処理LSI4’に高抵抗39を付加した。第1の実施例では電源遮断MOSトランジスタ6のウエル端子18を完全に開放したが、ウエル電圧が寄生ダイオード28,29により電位の高い側の電圧が選択される動作を阻害しない限り、高抵抗39を付加することは可能である。また、高抵抗39を付加することで、正常時および過電圧印加時のソース電圧とウエル電圧を等しくできるのでバックゲート効果を完全に無くすことができる。そこで本実施例では、ウエル端子18と電源端子2との間を高抵抗39で接続するようにした。
【0035】
高抵抗39の抵抗値としては、例えば数kΩから1MΩ程度にすればよい。抵抗値が前記範囲より低い場合であっても、ウエル電圧が寄生ダイオード28,29により電位の高い側の電圧が選択される動作を阻害しない限り適用できる。また、抵抗値が前記範囲より高い場合は、ウエル端子18を開放した状態に近づくので、適用可能である。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明の第3の実施例であるセンサ装置1''を、図9により説明する。なお、図9は第3の実施例のセンサ装置1''および信号処理LSI4''の構成を示している。
【0037】
第3の実施例のセンサ装置1''は第1の実施例のセンサ装置1と基本的に同じ構成であるが、信号処理LSI4''に高抵抗40を付加した。第1の実施例では電源遮断MOSトランジスタ6のウエル端子18を完全に開放したが、ウエル電圧が寄生ダイオード28,29により電位の高い側の電圧が選択される動作を阻害しない限り、高抵抗40を付加することは可能である。また、高抵抗40を付加することで、電源逆接時のソース電圧とウエル電圧を等しくできるのでバックゲート効果を完全に無くすことができる。そこで本実施例では、ウエル端子18と信号処理LSI4およびセンサ素子8側の電源供給線との間を高抵抗40で接続するようにした。
【0038】
高抵抗40の抵抗値については、実施例2で説明した高抵抗39と同様である。
【実施例4】
【0039】
次に、本発明の第4の実施例であるセンサ装置1'''を図10により説明する。なお、図10は第4の実施例のセンサ装置1'''および信号処理LSI4'''の構成を示している。
【0040】
第4の実施例のセンサ装置1'''は第1の実施例のセンサ装置1と基本的に同じ構成であるが、信号処理LSI4'''にMOSトランジスタ41を付加した。第1の実施例では電源端子2にサージ電圧が印加された場合、電源遮断MOSトランジスタ6のゲート電圧に過電圧が印加され恐れがあるが、MOSトランジスタ41を付加することで電源遮断MOSトランジスタ6のゲートに過電圧が入ることを防ぐことができる。そこで本実施例では、電源端子2と過電圧検出回路5の出力端子17との間にMOSトランジスタ41のソース電極(端子)とドレイン電極(端子)とを接続して設け、MOSトランジスタ41のウエル端子と電源遮断MOSトランジスタ6のウエル端子18とを接続し、さらにMOSトランジスタ41のゲート電極(端子)をMOSトランジスタ41のウエル端子(電源遮断MOSトランジスタ6のウエル端子18)と接続した構成とした。すなわち、電源遮断MOSトランジスタ6のゲート端子に静電気保護用のMOSトランジスタ41を接続した構成である。
【実施例5】
【0041】
次に、センサ装置の一実施例として、発熱抵抗体を用いた流量測定装置の実施例を、図11を用いて説明する。図11は、センサ素子8として発熱抵抗体121を用いた流量検出素子108を備え、信号処理回路7に流量信号調整回路107を備えた流量測定装置における流量検出部の構成を示す図である。なお、以下の説明では、例えば内燃機関に吸気される空気流量を測定する空気流量測定装置について説明する。また、本実施例の流量測定装置は上述した実施例1〜4のいずれのセンサ装置1,1',1'',1'''を用いてもよい。
【0042】
本実施例の空気流量測定装置では、空気流量を検出する流量検出素子108と、信号処理LSI4の中に信号処理回路7として設けられ流量検出素子108の出力を調整(処理)して流量信号を出力する流量信号調整処理部107とを備えている。なお、流量信号調整処理部107の中には、発熱抵抗体121に流れる電流を制御し、発熱抵抗体121の温度を制御する制御回路も設けられている。
【0043】
本実施例の空気流量測定装置は、発熱抵抗体121を加熱制御することにより発熱させて空気流量を測定する熱式の測定装置である。熱式の空気流量測定装置では、流れる空気の温度を検出する必要があり、図示しない吸気温度センサを用いて空気温度を検出する。本実施例では、空気(特に、内燃機関に吸入される吸気)を測定対象としているが、その他の流体を測定対象とする熱式の流体流量測定装置としても良い。
【0044】
流量検出素子108には、発熱抵抗体121と、発熱抵抗体121の温度に応じて抵抗値の変化する発熱抵抗体温度検出抵抗123と固定抵抗124,125,126とで構成される発熱抵抗体温度検出ブリッジ回路122と、発熱抵抗体121の風上に配置される温度検出抵抗128,131と風下に配置される温度検出抵抗129,130とで構成され、発熱抵抗体121の風上と風下の温度差を検出する温度差検出ブリッジ回路127とが配置されている。また、信号処理LSI4に集積化された流量信号調整処理部107には、発熱抵抗体温度検出ブリッジ回路122の出力を受けて発熱抵抗体121に駆動電圧Vhを供給する差動増幅器132と、温度差検出ブリッジ回路127の出力を受けて流量出力を生成する差動増幅器134とが構成されている。
【0045】
差動増幅器132は、発熱抵抗体温度検出抵抗123と固定抵抗124との接続部135の電圧V1と、固定抵抗125と固定抵抗126との接続部136の電圧V2との電圧差を増幅して発熱抵抗体121への駆動電圧Vhを発生する。差動増幅器134は、温度検出抵抗128と温度検出抵抗129との接続部137の電圧V3と、温度検出抵抗130と温度検出抵抗131との接続部138の電圧V4との電圧差を増幅して流量出力を生成する。
【0046】
流量信号調整処理部107には、差動増幅器134の出力に対して補正や調整を行うために、演算器を含む流量信号処理部139が設けられている。流量信号処理部139で行う補正及び調整には、信号の線形化処理や種々の誤差要因に対する補正処理が含まれる。検出される流量信号は吸気温度の影響を受ける場合がある。特に発熱抵抗体121を用いて検出される流量信号は吸気温度の影響を受け易い。そこで、吸気温度センサの吸気温度出力を流量信号処理部139に入力し、流量信号処理部139で差動増幅器134の出力に対して吸気温度の影響に対する補正及び調整を行った後、流量出力として出力する。
【0047】
発熱抵抗体121を用いた流量検出素子108としては、上述した構成以外にも、発熱抵抗体121やブリッジ回路122,127の構成を変えた素子が存在しており、他の構成の流量検出素子を用いても良い。
【0048】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1,1',1'',1'''…センサ装置、2…電源端子、3…グランド端子、4,4',4'',4'''…信号処理LSI、5…過電圧検出回路、6…電源遮断MOSトランジスタ、7…信号処理回路、8…センサ素子、9…入力端子、10…抵抗、11…抵抗、12…MOSトランジスタ、13…MOSトランジスタ、14…MOSトランジスタ、15…MOSトランジスタ、16…抵抗、17…出力端子、18…ウエル端子、19…N+拡散、20…P+拡散、21…ソース端子、22…ゲート端子、23…ゲート電極、24…ドレイン端子、25…P+拡散、26…N型ウエル層、27…P型シリコン基板、28…寄生ダイオード、29…寄生ダイオード、30…センサ装置、31…電源端子、32…グランド端子、33…信号処理LSI、34…過電圧検出回路、35…寄生ダイオード、36…MOSトランジスタ、37…信号処理回路、38…センサ素子、39…高抵抗、40…高抵抗、41…MOSトランジスタ。
図1
図2
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図5
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図8
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図11
図12