(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流入管から流入した汚水を貯留する貯水部と、前記貯水部に貯留された汚水を流出管に排水する複数台のポンプと、前記貯水部に貯留された汚水の水位を計測する水位計と、前記水位計で計測された水位がポンプ起動水位に達すると何れかのポンプを起動して汚水を前記流出管に排水し、水位がポンプ停止水位に達すると当該ポンプを停止する汚水搬送制御を実行する制御部とを備えている汚水搬送ポンプ装置の異常検出装置であって、
各ポンプの運転時の特性値としてポンプ運転時間またはポンプ駆動電流を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された特性値から所定起動回数当りの平均特性値を算出して、各ポンプの平均特性値の比較結果に基づいて、各ポンプの固有の系統の異常であるか、各ポンプ共通の系統の異常であるかを識別する異常判定部とを備えている異常検出装置。
前記異常判定部は、各ポンプの平均特性値の差分が所定の差分閾値を超える場合に、平均特性値が大きいポンプ固有の系統に異常が発生していると判定する請求項1記載の異常検出装置。
前記異常判定部は、各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値を超える場合に、各ポンプ共通の系統に異常が発生していると判定する請求項1から3の何れかに記載の異常検出装置。
流入管から流入した汚水を貯留する貯水部と、前記貯水部に貯留された汚水を流出管に排水する複数台のポンプと、前記貯水部に貯留された汚水の水位を計測する水位計と、前記水位計で計測された水位がポンプ起動水位に達すると何れかのポンプを起動して汚水を前記流出管に排水し、水位がポンプ停止水位に達すると当該ポンプを停止する汚水搬送制御を実行する制御部とを備え、共通の汚水搬送管の上流から下流に沿って複数設置された汚水搬送ポンプ装置の異常検出装置であって、
各ポンプの運転時の特性値としてポンプ運転時間またはポンプ駆動電流を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された特性値から所定起動回数当りの平均特性値を算出して、異なる汚水搬送ポンプ装置に設置された各ポンプの平均特性値の比較結果に基づいて異なる汚水搬送ポンプ装置間で、各ポンプの固有の系統の異常であるか、各ポンプ共通の系統の異常であるかを識別する異常判定部とを備えている異常検出装置。
前記異常判定部は、異なる汚水搬送ポンプ装置間で各ポンプの平均特性値の差分が所定の差分閾値を超える場合に、平均特性値が大きいポンプ固有の系統に異常が発生していると判定する請求項5記載の異常検出装置。
前記異常判定部は、何れかのポンプ固有の系統に異常が発生していると判定すると、異常判定された汚水搬送ポンプ装置の制御部に当該異常判定情報を出力する請求項6記載の異常検出装置。
前記異常判定部は、各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値を超える場合に、各ポンプ共通の系統に異常が発生していると判定する請求項5から7の何れかに記載の異常検出装置。
前記異常判定部は、一の汚水搬送ポンプ装置の各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値未満であり、一の汚水搬送ポンプ装置の下流側または上流側の汚水搬送ポンプ装置の各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値を超える場合に、上流側のポンプ共通の系統の始点から下流側のポンプ共通の系統の終点までの何処かの共通の系統で異常が発生していると判定する請求項5から8の何れかに記載の異常検出装置。
流入管から流入した汚水を貯留する貯水部と、前記貯水部に貯留された汚水を流出管に排水する複数台のポンプと、前記貯水部に貯留された汚水の水位を計測する水位計と、前記水位計で計測された水位がポンプ起動水位に達すると何れかのポンプを起動して汚水を前記流出管に排水し、水位がポンプ停止水位に達すると当該ポンプを停止する汚水搬送制御を実行する制御部と、前記制御部による制御情報を外部に送信する送信部を備えている汚水搬送ポンプ装置に対して、前記送信部から送信された制御情報を受信する受信部を備え、前記受信部で受信された制御情報に基づいて汚水搬送ポンプ装置を監視する監視装置であって、
請求項1から9の何れかに記載の異常検出装置が組み込まれ、前記受信部で受信された制御情報に含まれる各ポンプの運転時の特性値が前記記憶部に記憶されるように構成されている監視装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来の異常判定装置では、2台のポンプの何れからでも排水される流出管等の汚水搬送管そのものに閉塞等の問題が発生している場合や、マンホールにある程度の量の不明水が流入する場合に、ポンプが詰まっていなくても平均的排水能力が予め設定されている排水能力範囲を超えるとポンプの異常と判定されるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、ポンプの固有の系統または共通の系統の異常の発生の有無を正確に判定できる異常検出装置、汚水搬送ポンプ装置及び監視装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明による異常検出装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、流入管から流入した汚水を貯留する貯水部と、前記貯水部に貯留された汚水を流出管に排水する複数台のポンプと、前記貯水部に貯留された汚水の水位を計測する水位計と、前記水位計で計測された水位がポンプ起動水位に達すると何れかのポンプを起動して汚水を前記流出管に排水し、水位がポンプ停止水位に達すると当該ポンプを停止する汚水搬送制御を実行する制御部とを備えている汚水搬送ポンプ装置の異常検出装置であって、各ポンプの運転時の特性値
としてポンプ運転時間またはポンプ駆動電流を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された特性値から所定起動回数当りの平均特性値を算出して、各ポンプの平均特性値の比較結果に基づいて
、各ポンプの固有の系統の異常であるか、各ポンプ共通の系統の異常であるかを識別する異常判定部とを備えている点にある。
【0010】
異常判定部によって、記憶部に経時的に記憶された各ポンプの運転時の特性値の所定起動回数当りの平均特性値が算出され、各ポンプの平均特性値が比較される。例えば、各ポンプの平均特性値が大きく異なっていれば、何れかのポンプ固有の系統の異常であると判定され、各ポンプの平均特性値がほぼ同等であれば各ポンプ固有の系統に異常はなく、その値が基準値より大きな値であれば、他の要因による異常であると判定されるようになる。
【0011】
異常の有無の判定に用いる特性値として、ポンプ運転時間またはポンプ駆動電流が好適に用いられる。何れか一方の特性値のみ用いてもよく、双方の特性値を用いてもよい。例えば、ポンプに詰まりが生じると、排水量が低下して同じ排水量であっても正常なポンプよりもポンプ運転時間が長くなる。また、負荷も高くなってポンプ駆動電流が増す。これらの特性値によってポンプの固有の系統または共通の系統の異常判定を適切に行なうことができるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記異常判定部は、各ポンプの平均特性値の差分が所定の差分閾値を超える場合に、平均特性値が大きいポンプ固有の系統に異常が発生していると判定する点にある。
【0013】
各ポンプの平均特性値の差分が所定の差分閾値を超える場合には、異常判定部によって、何れかのポンプ固有の系統に異常が発生していると判定され、平均特性値が大きいポンプ固有の系統に詰まりや漏れが発生していると判定される。
【0014】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記異常判定部は、何れかのポンプ固有の系統に異常が発生していると判定すると、当該異常判定情報を前記制御部に出力する点にある。
【0015】
異常判定部から制御部に出力される異常判定情報によって、異常が発生していると判定されたポンプ固有の系統が判別されるようになる。その結果、制御部は異常状態であっても適切に汚水搬送制御を行なうことができるようになる。例えば、ポンプ固有の系統に異常があると判定されたポンプ以外のポンプを用いて汚水搬送制御が行われると、貯水部からの溢流事故等が未然に回避される。
【0016】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記異常判定部は、各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値を超える場合に、各ポンプ共通の系統に異常が発生していると判定する点にある。
【0017】
各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値を超える場合には、異常判定部によって、各ポンプ固有の系統に異常はなく、その他の要因による異常であると判定される。例えば、各ポンプ共通の汚水搬送管の漏洩や、貯水部にある程度の量の不明水が流入している可能性があると判定することが可能になり、異常の原因特定及びその対策が容易になる。
【0018】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、流入管から流入した汚水を貯留する貯水部と、前記貯水部に貯留された汚水を流出管に排水する複数台のポンプと、前記貯水部に貯留された汚水の水位を計測する水位計と、前記水位計で計測された水位がポンプ起動水位に達すると何れかのポンプを起動して汚水を前記流出管に排水し、水位がポンプ停止水位に達すると当該ポンプを停止する汚水搬送制御を実行する制御部とを備え、共通の汚水搬送管の上流から下流に沿って複数設置された汚水搬送ポンプ装置の異常検出装置であって、各ポンプの運転時の特性値
としてポンプ運転時間またはポンプ駆動電流を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された特性値から所定起動回数当りの平均特性値を算出して、異なる汚水搬送ポンプ装置に設置された各ポンプの平均特性値の比較結果に基づいて異なる汚水搬送ポンプ装置間で
、各ポンプの固有の系統の異常であるか、各ポンプ共通の系統の異常であるかを識別する異常判定部とを備えている点にある。
【0019】
共通の汚水搬送管の上流から下流に沿って複数の汚水搬送ポンプ装置が設置されている場合、例えば複数の汚水搬送管が合流する合流点より上流側の一本の汚水搬送管に沿って設置されている複数の汚水搬送ポンプ装置や、合流点より下流側の一本の汚水搬送管に沿って設置されている複数の汚水搬送ポンプ装置では、各汚水搬送ポンプ装置から搬送される汚水量に大きな変動が無いと想定される。
【0020】
そのような条件下では、異なる汚水搬送ポンプ装置に設置された各ポンプの平均特性値を比較することにより、第一の特徴構成と同様に、例えば、各ポンプの平均特性値が大きく異なっていれば、何れかのポンプ固有の系統の異常であると判定され、各ポンプの平均特性値がほぼ同等であれば各ポンプ固有の系統に異常はなく、その値が基準値より大きな値であれば、他の要因による異常であると判定されるようになる。
【0021】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第五の特徴構成に加えて、前記異常判定部は、異なる汚水搬送ポンプ装置間で各ポンプの平均特性値の差分が所定の差分閾値を超える場合に、平均特性値が大きいポンプ固有の系統に異常が発生していると判定する点にある。
【0022】
また、第二の特徴構成と同様に、異なる汚水搬送ポンプ装置間で各ポンプの平均特性値の差分が所定の差分閾値を超える場合には、異常判定部によって、何れかのポンプ固有の系統に異常が発生していると判定され、平均特性値が大きいポンプ固有の系統に詰まりや漏れが発生していると判定される。
【0023】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第六の特徴構成に加えて、前記異常判定部は、何れかのポンプ固有の系統に異常が発生していると判定すると、異常判定された汚水搬送ポンプ装置の制御部に当該異常判定情報を出力する点にある。
【0024】
第三の特徴構成と同様に、異常判定部から制御部に出力される異常判定情報によって、異常が発生していると判定された汚水搬送ポンプ装置のポンプ固有の系統が判別されるようになる。その結果、制御部は異常状態であっても適切に汚水搬送制御を行なうことができるようになる。例えば、固有の系統に異常があると判定されたポンプと同じ汚水搬送ポンプ装置の中の別のポンプを用いて汚水搬送制御が行われると、貯水部からの溢流事故等が未然に回避される。
【0025】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第五から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記異常判定部は、各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値を超える場合に、各ポンプ共通の系統に異常が発生していると判定する点にある。
【0026】
各ポンプの平均特性値の全てが所定の平均特性閾値を超える場合には、異常判定部によって、各ポンプ固有の系統に異常はなく、その他の要因による異常であると判定される。例えば、各ポンプ共通の汚水搬送管の漏洩や、貯水部にある程度の量の不明水が流入している可能性があると判定することが可能になり、異常の原因特定及びその対策が容易になる。例えば、2基の汚水搬送ポンプ装置に各2台のポンプが設置されている場合には、4台のポンプ装置全てが所定の平均特性閾値を超える場合が該当する。
【0027】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第五から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記異常判定部は、一の汚水搬送ポンプ装置の各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値未満であり、一の汚水搬送ポンプ装置の下流側または上流側の汚水搬送ポンプ装置の各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値を超える場合に、上流側のポンプ共通の系統の始点から下流側のポンプ共通の系統の終点までの何処かの共通の系統で異常が発生していると判定する点にある。
【0028】
例えば、上流側の汚水搬送ポンプ装置の各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値未満で、下流側の汚水搬送ポンプ装置の各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値を超える場合には、両汚水搬送ポンプ装置間のどこかで不明水が流入しているか、若しくは下流側の各ポンプ共通の系統に漏水や閉塞等の異常が発生していると判定でき、下流側の汚水搬送ポンプ装置の各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値未満で、上流側の汚水搬送ポンプ装置の各ポンプの平均特性値が全て所定の平均特性閾値を超える場合には、上流側の汚水搬送ポンプ装置の各ポンプ共通の系統に漏水や閉塞等の異常が発生していると判定できる。
【0029】
本発明による汚水搬送ポンプ装置の特徴構成は、同請求項
10に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成を備えた異常検出装置が組み込まれている点にある。
【0030】
汚水搬送ポンプ装置に異常検出装置が組み込まれていると、各汚水搬送ポンプ装置で適切に異常の有無が判定できるようになる。
【0031】
本発明による監視装置の特徴構成は、同請求項1
1に記載した通り、流入管から流入した汚水を貯留する貯水部と、前記貯水部に貯留された汚水を流出管に排水する複数台のポンプと、前記貯水部に貯留された汚水の水位を計測する水位計と、前記水位計で計測された水位がポンプ起動水位に達すると何れかのポンプを起動して汚水を前記流出管に排水し、水位がポンプ停止水位に達すると当該ポンプを停止する汚水搬送制御を実行する制御部と、前記制御部による制御情報を外部に送信する送信部を備えている汚水搬送ポンプ装置に対して、前記送信部から送信された制御情報を受信する受信部を備え、前記受信部で受信された制御情報に基づいて汚水搬送ポンプ装置を監視する監視装置であって、上述の第一から第
九の何れかの特徴構成を備えた異常検出装置が組み込まれ、前記受信部で受信された制御情報に含まれる各ポンプの運転時の特性値が前記記憶部に記憶されるように構成されている点にある。
【0032】
地域に点在する複数の汚水搬送ポンプ装置から送信される制御情報に基づいて、各汚水搬送ポンプ装置の動作状況を集中管理できる監視装置に異常検出装置が組み込まれると、各汚水搬送ポンプ装置に異常検出装置を組み込まなくても、制御情報に含まれる各ポンプの運転時の特性値に基づいて、監視装置側で一括して複数の汚水搬送ポンプ装置のポンプの固有の系統または共通の系統の異常等を正確且つ適切に判定できるようになる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明した通り、本発明によれば、ポンプの固有の系統または共通の系統の異常の発生の有無を正確に判定できる異常検出装置、汚水搬送ポンプ装置及び監視装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、汚水搬送ポンプ装置としてのマンホールポンプ装置を例にして、本発明による異常検出装置の第1の実施形態を説明する。第1の実施形態は、異常検出装置が汚水搬送ポンプ装置に組み込まれた態様である。
【0036】
図1には、下流側ほど下方に傾斜する傾斜姿勢で地中に埋設された汚水搬送管110〜112と、汚水搬送管110〜112に沿って点在する複数のマンホールポンプ装置101〜107とを含む自然流下式の汚水搬送システム100が示されている。
【0037】
図1では、2系統の汚水搬送管110,111がマンホールポンプ装置105で合流し、その後1系統の汚水搬送管112によって汚水処理場等に搬送される場合が示されている。
【0038】
図2には、各マンホールポンプ装置101〜107と同様のマンホールポンプ装置10が示されている。マンホールポンプ装置10は、上流側の汚水流入管11から流入した汚水を貯留する貯水部としてのマンホール12と、マンホール12に貯留された汚水を下流側の汚水流出管13に圧送する2台のポンプ14,16と、マンホール12に貯留された汚水の水位を計測する水位計18,19を備えている。
【0039】
第1ポンプ14の吐出し曲管15aには第1揚水管15b、第1曲管15c、第1水平管15dがそれぞれフランジ接続され、第1水平管15dがヘッダー管13aを介して汚水流出管13にフランジ接続されている。符合15eは汚水の逆流を防止する逆止弁である。
【0040】
第2ポンプ16の吐出し曲管17aには第2揚水管17b、第2曲管17cがそれぞれフランジ接続され、第2曲管17cがヘッダー管13aを介して汚水流出管13にフランジ接続されている。符合17eは汚水の逆流を防止する逆止弁である。
【0041】
第1ポンプ14、吐出し曲管15a、第1揚水管15b、第1曲管15c、第1水平管15dが、第1ポンプ14固有の送水系統(以下、単に「系統」と記す。)となり、第2ポンプ16、吐出し曲管17a、第2揚水管17b、第2曲管17cが、第2ポンプ16固有の系統となり、上述の固有の系統を除いたヘッダー管13a及び汚水流出管13から下流側の汚水流入管11までの汚水搬送管を含む系統、及びマンホール12が、第1ポンプ14及び第2ポンプ16共通の系統となる。
【0042】
投込圧力式または気泡式の水位計18がマンホール12の底部に設置されている。当該水位計18によってマンホール12に貯留される汚水の水位が連続的に検出される。さらにフロート式の水位計19が、異常高水位HHWLを検出するバックアップ用の水位計として設置されている。
【0043】
マンホール12の近傍には、ポンプ14,16を制御してマンホール12に溜まった汚水を汚水流出管13に圧送する汚水搬送制御を実行する制御部21を含む制御盤20が収容された制御盤装置200が設置されている。
【0044】
図3に示すように、制御盤20には、制御部21、記憶部22、異常判定部23、通信部24が設置されている。記憶部22には半導体メモリ(記憶素子)が組み込まれ、制御部21からの制御情報(後述の特性値を含む稼働情報)、水位計18,19からの水位情報、異常判定部23からの異常判定情報等が半導体メモリ(記憶素子)に記憶される。通信部24は、記憶部22に記憶された各種情報を遠隔の監視装置40に送信する送信部と、監視装置40からの制御指令を受信する受信部を備えている。記憶部22及び異常判定部23によって本発明の異常検出装置30が構成されている。
【0045】
監視装置40は、ファクシミリ、携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ等で構成され、それぞれに合致した態様の情報が送受信可能に構成されている。従って、通信部24と監視装置40との通信形態は特に制限されるものではなく、有線回線または無線回線の何れであってもよく、専用回線または公衆回線の何れであってもよい。例えばインターネット経由の電子メールとして送受信される場合もある。
【0046】
制御盤20と各ポンプ14,16は交流の給電線L1,L2で接続され、制御盤20と水位計18,19は信号線Sで接続されている。
【0047】
制御部21は、水位計18で計測された水位が所定のポンプ起動水位HWLに達したことを検知するとポンプ14,16のうち何れか一方のポンプ14を起動するために給電線L1から給電制御し、水位がポンプ起動水位HWLより低位のポンプ停止水位LWLに達したことを検知すると給電を停止して当該一方のポンプ14を停止する。
【0048】
制御部21は、その後再び水位がポンプ起動水位HWLに達したことを検知すると他方のポンプ16を起動するために給電線L2から給電制御し、ポンプ停止水位LWLに達したことを検知すると給電を停止して当該ポンプ16を停止する。つまり、制御部21はポンプ14,16を交互に運転制御する。
【0049】
さらに、制御部21は、水位計18の故障等によりポンプ起動水位HWLが検知できない場合や、集中豪雨によりポンプ1台の排水能力を上回るような大量の雨水がマンホール12に流入し、異常高水位HHWLに達したことが水位計19で計測されたことを検知すると、2台のポンプ14,16を同時に運転する。
【0050】
制御部21は、例えば1分間隔で水位計18,19により検知された水位情報を記憶部22に記憶するとともに、1時間当りの各ポンプ14,16の運転回数及び1回の運転時間等の稼動情報を記憶部22に記憶する。
【0051】
異常判定部23は、ポンプ14,16の過負荷状態の発生/回復を示すポンプ負荷情報、水位計19により検知される異常高水位の発生/回復を示す異常高水位情報、水位計18,19の故障の発生/回復を示すセンサ故障情報を示すコードデータをイベント情報として記憶部22に記憶する。
【0052】
例えば、過熱状態を検知して自動的に通電を遮断する安全スイッチが設けられたポンプ14,16の場合、異常判定部23は、制御部21から運転信号が出力されているにもかかわらず、給電線に交流が流れていないことを検知すると過負荷状態であると判定するように構成されている。
【0053】
例えば、過熱状態を検知する温度センサがポンプ14,16に組み込まれている場合、異常判定部23は、温度センサの計測情報を検知して、その値が異常判定閾値温度よりも高い場合に過負荷状態であると判定するように構成されている。
【0054】
例えば、異常判定部23は、所定時間連続して水位計18の計測情報が変化しない場合に、水位計18が故障していると判定するように構成されている。
【0055】
このような異常判定部23を設けると、ポンプの起動後に起動水位以下になるまでのポンプ運転時間が設定時間よりも長い吸込閉塞の発生/回復を示すポンプ閉塞異常や、設定時間よりもポンプ運転時間が長く、水位が起動水位以上に維持されるエアロックの発生/回復を示すエアロック異常を検知することも可能になる。
【0056】
異常判定部23は、このような異常の発生、解消を判定すると、対応する異常情報を記憶部22に記憶するとともに、通信部24を介して遠隔の監視装置40に異常情報を送信するように構成されている。
【0057】
従って、監視装置40で異常方法を受信した管理者は、必要なメンテナンスの準備をして迅速に対処できるようになる。
【0058】
しかし、異常判定部23が、ポンプ閉塞異常やエアロック異常を個別のポンプ14,16毎に判断すると、正確性に欠ける虞がある。例えば、第1ポンプ14及び第2ポンプ16共通の系統となる汚水流出管13そのものに問題が発生している場合や、マンホールにある程度の量の不明水が流入する場合に、ポンプが詰まっていなくても平均的排水能力が予め設定されている排水能力範囲を超えるとポンプの異常と判定されるためである。
【0059】
そこで、本発明による異常検出装置30に備えた異常判定部23は、記憶部22に記憶された各ポンプ14,16の運転時の特性値から所定起動回数当りの平均特性値を算出して、各ポンプ14,16の平均特性値の比較結果に基づいてポンプの固有の系統または共通の系統の異常の有無を判定する機能が設けられている。
【0060】
各ポンプ14,16の運転時の特性値として、ポンプ運転時間またはポンプ駆動電流が好適に用いられる。これは、ポンプ運転時間がポンプの能力を、ポンプ駆動電流がポンプの負荷状態を表す指標であるためである。以下では、ポンプ駆動時間を特性値に用いた例を説明する。
【0061】
図4には、水位計18を介して制御部21で検知される水位の時間推移と、それに伴って制御部21で制御されるポンプ14,16の運転状態が示されている。
【0062】
時刻t1でポンプ起動水位HWLに達すると第1ポンプ14が起動されてマンホール12に貯留された汚水が下流側に送水され、ポンプ停止水位LWLに達すると第1ポンプ14は停止される。
【0063】
時刻t2でポンプ起動水位HWLに達すると第2ポンプ16が起動されてマンホール12に貯留された汚水が下流側に送水され、ポンプ停止水位LWLに達すると第2ポンプ16は停止される。
【0064】
両ポンプ14,16が正常であり不明水の流入がない場合、ポンプ起動水位HWLからポンプ停止水位LWLまでのポンプ運転時間は、ほぼ計画時または定常稼働時の汚水搬送水量に対応した時間となる。
【0065】
しかし、このような交互運転が繰り返されて、時刻t4でポンプ起動水位HWLに達したときに起動される第2ポンプ16にポンプ閉塞異常が発生していると、ポンプ停止水位LWLに達して第2ポンプ16が停止されるまでの時間が、計画時または定常稼働時の汚水搬送水量に対応した時間よりも著しく長くなる。
【0066】
第2ポンプ16にポンプ閉塞異常が発生していない場合でも、第2ポンプ16固有の系統である吐出し曲管17a、第2揚水管17b、第2曲管17c等にクラックが入り、水漏れが発生しているような場合にも同様の現象が発生する。
【0067】
さらに、第2ポンプ16を含めて第2ポンプ16固有の系統が正常であっても、ヘッダー管13a等の第1ポンプ14及び第2ポンプ16共通の系統となる汚水搬送管にクラックが入り、マンホール12内へ水漏れが発生または汚水搬送管が閉塞しているような場合や、ある程度の水量の不明水がマンホール12に流入している場合にも、同様の現象が発生する虞がある。
【0068】
そして、このような場合にも、異常判定部23によって第2ポンプ16にポンプ閉塞異常が発生していると判定されると、適切なメンテナンスに支障を来す虞がある。同様に異常判定部23によって第1ポンプ14にポンプ閉塞異常が発生していると判定される虞もある。
【0069】
そこで、異常判定部23は、ポンプ14,16のそれぞれの直近の所定回数の運転時間から平均運転時間を算出し、双方を比較することによって異常判定処理を行なうように構成されている。
【0070】
具体的には、異常判定部23は、ポンプ14,16の直近の4回の運転時間の平均運転時間の差分を算出し、差分の絶対値が所定の差分閾値Tthを超えている場合に、平均運転時間が長いポンプ固有の系統に異常が発生していると判定する。固有の系統の異常には、ポンプの閉塞や経年劣化による送水性能の低下ばかりでなく、固有の系統を構成する管路の腐食やクラックによる漏水や閉塞等の異常が含まれる。尚、ここでポンプ固有の系統とは、ポンプ本体を含む、そのポンプにのみつながる、流入、流出する配管やバルブなどを意味し、共通の系統とは、各ポンプが共通に利用する貯水槽や、流入、流出に利用する配管、バルブを意味している。
【0071】
直近の平均運転時間を算出する回数は4回に限るものではなく、各マンホールポンプ装置で搬送される汚水量や汚水の発生時期に応じて適宜設定される値であり、数時間から十数時間の間にポンプが起動される平均的な回数で設定される。本実施形態では3〜4時間の間に8回程度ポンプが起動されるので、1台当り4回に設定されている。
【0072】
一方、異常判定部23は、双方の平均運転時間の差分の絶対値が所定の差分閾値以下であれば、各ポンプ固有の系統には異常が発生していないと判定し、さらに各ポンプ14,16の平均運転時間を所定の平均運転時間閾値AVTthと比較して、各ポンプ14,16の平均運転時間が何れも所定の平均運転時間閾値を超える場合には、各ポンプ14,16共通の系統に異常が発生していると判定する。
【0073】
共通の系統の異常には、共通の系統を構成する管路の腐食やクラックによる漏水や閉塞等の異常ばかりでなく、何らかの経路を介した不明水のマンホール12への流入異常が含まれる。
【0074】
尚、本実施形態では、2台のポンプ14,16が同時に閉塞するような異常の発生確率は極めて低く、少なくとも1台は正常稼働しているとの前提で判定しているが、各ポンプ固有の系統の双方に同様の異常が発生している場合には、これらが共通の系統の異常に含まれる場合もある。
【0075】
上述した所定の差分閾値Tthの値は特に限定されるものではなく適宜設定することが可能な値であり、例えば、計画時または定常稼働時の汚水搬送水量に対応した時間Tの1.0倍から2.0倍の値に設定することができる。
【0076】
平均運転時間閾値AVTthの値も特に限定されるものではなく適宜設定することが可能な値であり、例えば、計画時または定常稼働時の汚水搬送水量に対応した時間Tの2.0倍から3.0倍の値に設定することができる。
【0077】
双方の平均運転時間の比較処理として差分処理を説明したが、広義には差分処理に比率処理が含まれる。つまり、双方の平均運転時間の比を算出し、その値が所定の閾値Tthを超えるか否かに基づいて異常判定してもよい。
【0078】
尚、異常判定部23は、各ポンプ14,16が交互運転される場合に限って、双方の平均運転時間を比較するように構成され、異常高水位HHWLが検知されて双方のポンプ14,16を同時に運転するような場合は対象外となる。
【0079】
このようにして、何れか一方のポンプ固有の系統の異常であるか、双方のポンプ共通の系統の異常であるかの異常情報が通信部24を介して遠隔の監視装置40に送信されることによって、適切なメンテナンスの準備が可能になる。
【0080】
また、異常判定部23で判定された異常情報、つまり何れか一方のポンプ固有の系統の異常であるか、双方のポンプ共通の系統の異常であるかの異常情報が記憶部22を介して制御部21に出力される。
【0081】
制御部21は、何れか一方のポンプ固有の系統に異常が発生したことを認識すると、その後、ポンプ14,16の交互運転を中止して、正常なポンプ1台のみで汚水搬送制御を行なうことで、マンホール12からの溢流事故を未然に回避する。
【0082】
但し、このような場合でも、制御部21は、水位計19によって異常高水位HHWLが測定されたことを検知すると、異常と判定されたポンプも含めて同時運転制御するように構成されている。
【0083】
図5には異常判定部23により実行される異常判定処理の手順が示されている。異常判定部23は、ポンプの運転状態を判定し(S1)、ポンプの運転が終了していれば(S1,Y)、ポンプ14,16のそれぞれの直近の過去4回の運転時間の平均運転時間t14,t16を算出し(S2)、更に平均運転時間t14,t16の差分tdを算出する(S3)。
【0084】
差分tdの絶対値が所定の差分閾値を超えており(S4,Y)、t14がt16より大きい場合(S5,Y)、ポンプ14固有の系統に異常が発生していると判定する(S7a)。逆に、t16がt14より大きい場合(S5,N)、ポンプ16固有の系統に異常が発生していると判定する(S7b)。
【0085】
また、差分tdの絶対値が所定の差分閾値以下であり(S4,N)、t14及びt16がともに所定の平均時間閾値を超えている場合(S6,Y)、ポンプ14,16それぞれの固有の系統以外の部分に異常が発生していると判定する(S7c)。そしてt14とt16のうち、少なくとも一方が所定の平均時間閾値以下である場合(S6,N)、マンホールポンプ装置10に異常は発生していないと判定する(S7d)。
【0086】
判定結果は記憶部22に記憶され、通信部24を介して遠隔の監視装置40に通報されるとともに制御部21に出力される(S8)。異常判定処理はポンプ14若しくは16の運転が終了する毎に実行され、ポンプ14及び16の異常を的確に判定することができるようになる。
【0087】
図6には、制御部21により実行される汚水搬送処理の手順が示されている。制御部21は水位がHWLに達すると(S11,Y)、ポンプ14,16が正常か否かを判定し(S12)、一方のポンプに異常が発生している場合には(S12,Y)、正常なポンプを起動する(S13a)。ステップS12で、双方のポンプに異常が発生していないと判定されると(S12,N)、前回起動しなかったポンプを起動する(S13b)。そして、ポンプを起動すると同時に当該ポンプの運転時間を測定するタイマーを作動させる(S14)。
【0088】
その後水位がLWLに達すると(S15,Y)、運転中のポンプを停止し(S16)、タイマーにより測定した運転時間を記憶部22に記憶し(S17)、その後タイマーをリセットし(S18)、ステップS11に戻る。
【0089】
このように、異常と判定されたポンプがなければポンプ14,16を交互に運転させ、何れかのポンプが異常と判定されていれば正常なポンプだけを運転させて汚水搬送制御を実行する。
【0090】
次に、本発明による異常検出装置の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態は、上述の異常検出装置30が遠隔の監視装置40に組み込まれた態様である。
【0091】
図7に示すように、マンホール12の近傍に、ポンプ14,16を制御してマンホール12に溜まった汚水を汚水流出管13に圧送する汚水搬送制御を実行する制御部21を含む制御盤20が収容された制御盤装置200が設置されている。マンホールポンプ装置10の構成は
図2と同様であり、同じ機能を実現する構成要素には同一の符号が付されている。
【0092】
図8に示すように、制御盤20には、制御部21、記憶部22、通信部24が設置されている。遠隔の監視装置40は汎用のパーソナルコンピュータで構成され、通信部41、記憶部42、監視部43、異常判定部44の各機能ブロックを備えている。
【0093】
各マンホール装置10の制御情報は、通信部24から監視装置40に備えた通信部41に送信されて記憶部42に記憶される。通信部41も送信部と受信部を備えて各マンホール装置10との間で双方向に通信可能に構成されている。
【0094】
監視部43は、各マンホール装置10から受信した制御情報に基づいて、各マンホール装置10の稼働状態を解析する演算ブロックであり、その稼働状態を複数の管理者に報知するサーバと接続されている。各管理者は、サーバにアクセスして管理下のマンホールポンプ装置の稼働状態を確認できるように構成されている。
【0095】
異常判定部44は、記憶部42に記憶された各種の制御情報に基づいて各種の異常を判定する演算ブロックで、異常情報は監視部43を介してサーバに出力されるように構成されている。
【0096】
例えば、異常判定部44は、ポンプ14,16の過負荷状態の発生/回復を示すポンプ負荷情報、水位計19により検知される異常高水位の発生/回復を示す異常高水位情報、水位計18,19の故障の発生/回復を示すセンサ故障情報を示すコードデータに基づいて対応する異常を認識して、当該異常情報をサーバに出力する。
【0097】
当該異常判定部44は、マンホールポンプ装置10毎に、各ポンプ14,16のそれぞれの直近の所定回数の運転時間から平均運転時間を算出し、双方を比較することによって異常判定処理を行なうように構成されている。
【0098】
本実施形態でも異常判定部44は、ポンプ14,16の直近の4回の運転時間の平均運転時間の差分を算出し、差分の絶対値が所定の差分閾値Tthを超えている場合に、平均運転時間が長いポンプ固有の系統に異常が発生していると判定する。
【0099】
一方、異常判定部44は、双方の平均運転時間の差分の絶対値が所定の差分閾値以下であれば、各ポンプ固有の系統には異常が発生していないと判定し、さらに各ポンプ14,16の平均運転時間を所定の平均運転時間閾値AVTthと比較して、各ポンプ14,16の平均運転時間が何れも所定の平均運転時間閾値を超える場合には、各ポンプ14,16共通の系統に異常が発生していると判定する。
【0100】
即ち、記憶部42及び異常判定部44で異常検出装置が構成されている。このように、本実施形態によれば、各マンホールポンプ装置10に個別に異常検出装置を組み込む必要がないので、各マンホールポンプ装置10を安価に構成できるとともに、遠隔の監視装置40で複数のマンホールポンプ装置10の異常を検出することができる。
【0101】
次に、本発明による異常検出装置の第3の実施形態を説明する。第3の実施形態は、共通の汚水搬送管の上流から下流に沿って複数設置された汚水搬送ポンプ装置の異常検出装置であって、各ポンプの運転時の特性値から所定起動回数当りの平均特性値を算出して、異なる汚水搬送ポンプ装置に設置された各ポンプの平均特性値の比較結果に基づいて異なる汚水搬送ポンプ装置間でポンプの固有の系統または共通の系統の異常の有無を判定する異常判定部を備えた態様である。
【0102】
共通の汚水搬送管の上流から下流に沿って複数設置された汚水搬送ポンプ装置とは、
図1に示す汚水搬送管110に沿って設置されたマンホールポンプ装置101,102をいい、汚水搬送管111に沿って設置されたマンホールポンプ装置103,104をいい、汚水搬送管112に沿って設置されたマンホールポンプ装置105,106,107をいう。つまり、汚水の搬送経路で基本的に搬送汚水量が略一定となる経路が、共通の汚水搬送管となる。また、搬送汚水量が略一定の場合、貯水槽やポンプ、配管は略同一となるため平均特性値も略同一となり、比較が可能となる。
【0103】
図9に示すように、共通の汚水搬送管110の上流から下流に沿って各マンホール101,102の近傍に、制御部211,212を含む制御盤201,202が収容された制御盤装置2001,2002が設置されている。マンホールポンプ装置101及び102の構成は
図2または
図7に示されたマンホールポンプ装置10と同様であり、同じ機能を実現する構成要素には同一の符号が付されている。
【0104】
制御盤201,202には、それぞれ制御部21a,21b、記憶部22a,22b、通信部24a,24bが設置されている。
図8と同様に、遠隔の監視装置40は汎用のパーソナルコンピュータで構成され、通信部41、記憶部42、監視部43、異常判定部44の各機能ブロックを備えている。監視装置40構成も
図8を参照した説明と同様である。
【0105】
各マンホール装置101,102の制御情報は、通信部24a,24bから監視装置40に備えた通信部41に送信されて記憶部42に記憶される。通信部41も送信部と受信部を備えて各マンホール装置101,102との間で双方向に通信可能に構成されている。
【0106】
当該異常判定部44は、マンホールポンプ装置101,102毎に、各ポンプ14a,16a,14b,16bのそれぞれの直近の所定回数の運転時間から平均運転時間を算出し、双方を比較することによって異常判定処理を行なうとともに、異なるマンホールポンプ装置101,102に設置された各ポンプの平均特性値の比較結果に基づいて異なるマンホールポンプ装置101,102間でポンプの固有の系統または共通の系統の異常の有無を判定する。
【0107】
具体的に、異常判定部44は、ポンプ14a,16aまたはポンプ14b,16bの直近の4回の運転時間の平均運転時間の差分を算出し、差分の絶対値が所定の差分閾値Tthを超えている場合に、平均運転時間が長いポンプ固有の系統に異常が発生していると判定する。
【0108】
そして、異常判定部44は、双方の平均運転時間の差分の絶対値が所定の差分閾値以下であれば、各ポンプ固有の系統には異常が発生していないと判定し、さらに各ポンプ14a,16aまたはポンプ14b,16bの平均運転時間を所定の平均運転時間閾値AVTthと比較して、各ポンプ14a,16aまたはポンプ14b,16bの平均運転時間が何れも所定の平均運転時間閾値を超える場合には、各ポンプ14a,16aまたはポンプ14b,16b共通の系統に異常が発生していると判定する。
【0109】
また、異常判定部44は、ポンプ14a,16b及び/またはポンプ14b、16aの直近の4回の運転時間の平均運転時間の差分を算出し、差分の絶対値が所定の差分閾値Tthを超えている場合に、平均運転時間が長いポンプ固有の系統に異常が発生していると判定する。
【0110】
さらに、異常判定部44は、ポンプ14a,16b及び/またはポンプ14b、16aの直近の4回の運転時間の平均運転時間の差分を算出し、各ポンプの平均運転時間がともに所定の平均運転時間閾値AVTthを超える場合に、少なくとも1つの汚水搬送ポンプ装置のポンプ固有の系統以外の部分、つまり共通の系統に異常が発生していると判定する。
【0111】
さらにまた、異常判定部44は、上流側または下流側のマンホールポンプ装置101,102の各ポンプの平均運転時間がともに所定の平均運転時間閾値AVTth未満であり、下流側または上流側のマンホールポンプ装置101,102の各ポンプの平均運転時間がともに所定の平均運転時間閾値AVTthを超える場合に、上流側のポンプ共通の系統の始点(貯水部への流入配管)から下流側のポンプ共通の系統の終点(ポンプ共通の流出配管)までの何処かの共通の系統で異常が発生していると判定する。
【0112】
例えば、上流側のマンホールポンプ装置101の各ポンプ14a,16aの平均運転時間がともに所定の平均運転時間閾値未満で、下流側のマンホールポンプ装置102の各ポンプ14b,16bの平均特性値がともに所定の平均特性閾値を超える場合には、両マンホールポンプ装置101,102間のどこかで不明水が流入しているか、若しくは下流側の各ポンプ共通の系統に漏水や閉塞等の異常が発生していると判定できる。
【0113】
例えば、下流側のマンホールポンプ装置102の各ポンプ14b,16bの平均運転時間がともに所定の平均運転時間閾値未満で、上流側のマンホールポンプ装置101の各ポンプ14a,16aの平均運転時間がともに所定の平均運転時間閾値を超える場合には、上流側のマンホールポンプ装置101の各ポンプ14a,16a共通の系統に漏水や閉塞等の異常が発生していると判定できる。
【0114】
尚、本例では各マンホールポンプ装置内に2台ある各ポンプの平均運転時間を両方とも平均運転時間閾値と比較したが、各マンホールポンプ装置内の一方のポンプの平均運転時間を平均運転時間閾値と比較してもよい。但し、両方とも比較する方が判定の精度は向上する。
【0115】
以上、共通の汚水搬送管110に沿って設置された2つのマンホールポンプ装置101,102に設置されたポンプの平均運転時間を比較する態様を説明したが、3つ以上のマンホールポンプ装置に設置されたポンプの平均運転時間をそれぞれ比較するように構成してもよい。例えば、共通の汚水搬送管112に沿って設置された3つのマンホールポンプ装置105,106,107に設置されたポンプの平均運転時間を比較して異常判定を行なってもよい。
【0116】
例えば、上流側及び最下流側のマンホールポンプ装置105,107の双方のポンプの平均運転時間に異常が無く、中間のマンホールポンプ装置106の双方のポンプの平均運転時間が平均運転時間閾値より長い場合には、中間のマンホールポンプ装置106の各ポンプ共通の系統に異常が発生していると判定することができ、この場合には、不明水の流入でなく、共通の系統の管路に異常が発生していると特定できる。
【0117】
例えば、上流側のマンホールポンプ装置105の双方のポンプの平均運転時間に異常が無く、下流側のマンホールポンプ装置106,107の双方のポンプの平均運転時間が何れも平均運転時間閾値より長い場合には、上流側のマンホールポンプ装置105から下流側のマンホールポンプ装置106の間に不明水が流入していると判定することも可能になる。
【0118】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。
上述の実施形態ではポンプを1回運転する毎に直近の所定回数の平均運転時間に基づいて異常判定処理を実行したが、ポンプを2回以上の所定回数運転する毎に直近の所定回数の平均運転時間に基づいて異常判定処理を実行してもよく、またポンプの運転とは無関係に所定の時間周期ごとに直近の所定回数の平均運転時間に基づいて異常判定処理を実行してもよい。さらには、マンホールポンプ装置の管理者が任意のタイミングで実行するように設定することもできる。
【0119】
上述の実施形態では異なるマンホールポンプ装置間及び同じマンホールポンプ装置間のポンプの比較を両方行ったが、判定精度は下がるが異なるマンホールポンプ装置間の比較のみで判定を行ってもよい。
【0120】
上述の実施形態では異常判定時における直近の4回の平均運転時間を用いて異常判定を行ったが、ポンプの運転頻度等に応じて直近の5回以上若しくは3回以下の平均運転時間を用いてもよい。また、上述したように、異常判定部は、平均運転時間の差分以外に平均運転時間の比率に基づいて平均運転時間を比較してもよい。更に、差分を比較する際には絶対値を用いず、±で幅を持った閾値と比較してもよい。
【0121】
異常の有無の判定に用いる特性値として、上述の実施形態で用いたポンプ運転時間の他に、例えばポンプ駆動電流を用いることもできる。ポンプの閉塞の場合には負荷が高くなり、ポンプ駆動電流が大きくなる。また、ポンプのエアロックの場合には負荷が小さくなり、ポンプ駆動電流が小さくなる。そのためポンプの固有の系統または共通の系統の異常を適切に判定することができる。ポンプ駆動電流の測定時には、電流値が安定しないポンプ立ち上がり時のデータを除くため、ポンプ起動から所定の時間経過後に電流値の測定を開始し、ポンプを停止させるまでの間、所定の周期で電流値をサンプリングしてその平均を特性値とする。
【0122】
更に、1種類の特性値だけで判定するのではなく、複数種類の特性値による判定を併用してもよい。例えばポンプ運転時間とポンプ駆動電流を併用した場合、ポンプ運転時間はポンプの詰まり、不明水の流入、管路の罅による漏水の何れによっても長くなるが、ポンプ駆動電流が大きくなるのはポンプの詰まりだけなので、1種類の特性値だけで判定するよりも異常が発生した際に原因を特定しやすくなる。
【0123】
尚、上述の異常判定処理は、ポンプ起動後にポンプ停止水位に達するまでの時間に基づいて異常判定を行なうものであるため、ポンプ起動後にポンプ停止水位に達しない異常が発生した場合に備えて、1回当たりのポンプの運転時間に上限を設け、当該上限時間の経過迄にポンプ停止水位LWLに到達しなかった場合にエアロック異常と判定し、上述の異常判定処理を中断するように構成してもよい。
【0124】
この場合、制御部は、運転ポンプを停止して待機中のポンプへ切り替え、或いは待機中のポンプを含めた2台のポンプで同時運転するように構成することが好ましい。
【0125】
上述の実施形態では何れも2台のポンプを備えたマンホールポンプ装置に本発明の異常検出装置を設置したが、例えば中継ポンプ場のような、ポンプが3台以上設置されている汚水搬送ポンプ装置にも本発明の異常検出装置を適用することができる。
【0126】
上述の第1〜第3の実施形態は、それぞれ別々に説明したが、組み合わせて実施することもできる。
【0127】
上述した実施形態は何れも本発明の一例であり、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、ポンプや水位計等を始めとする各部の具体的構成、異常判定のために設定する閾値等は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。