特許第6234737号(P6234737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234737
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/033 20060101AFI20171113BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20171113BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20171113BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B60R16/033 D
   B60R16/03 K
   H02P9/04 L
   F02D29/02 321A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-180068(P2013-180068)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-47930(P2015-47930A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153349
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 茂
(72)【発明者】
【氏名】寛 貴矩敬
(72)【発明者】
【氏名】塚越 英斗
【審査官】 佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−137163(JP,A)
【文献】 特開2006−136122(JP,A)
【文献】 特開2009−029278(JP,A)
【文献】 特開2010−163879(JP,A)
【文献】 特開2012−112293(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/105210(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/114272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
B60R 16/03
F02D 29/02
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンで駆動される界磁束発生用磁石を有する回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻回された固定子を備える三相交流発電機から供給される3相交流電流を直流電流に変換して二次電池に供給するために、前記3相交流電流の各相に対して一対のスイッチング素子を有する電力変換器と、
前記回転子における前記各相の回転角に基づいて前記固定子巻線の前記各相の通電タイミングを判定し、判定された前記各相の前記通電タイミングに応じて前記各相の前記一対のスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御を行って、前記三相交流発電機から供給される前記3相交流電流を前記直流電流に変換して前記二次電池に供給させることにより、二次電池を充電する充電制御部と、
前記二次電池の充電状態を測定する測定部と、
を備える車両用制御装置であって、
記回転子の回転速度を検出する回転速度検出部を更に備え、
前記測定部は、前記回転速度検出部によって検出された前記回転子の回転速度と前記充電制御部によって判定された前記各相の前記通電タイミングとに基づいて、前記二次電池の前記充電状態を測定することを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記二次電池を定電圧で充電するときに、前記回転速度検出部によって検出された前記回転子の前記回転速度から前記回転速度前記充電制御部によって判定された前記各相の前記通電タイミングを対応させることによって前記二次電池への充電電流を算出し、前記定電圧で前記二次電池を充電する場合における前記充電電流と充電状態との所定の相関関係を参照して、算出された前記充電電流に対応する前記二次電池の前記充電状態を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記二次電池を前記定電圧で充電するときに、前記定電圧で前記二次電池を充電する場合における前記充電電流と前記充電制御部によって判定された前記各相の前記通電タイミングとが比例関係にあることを用いて前記二次電池への前記充電電流を算出することを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関し、特に、三相交流発電機によって充電される鉛バッテリ等の二次電池の充電状態を測定する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に見られるような車両のエンジンで駆動される界磁束発生用磁石を有する回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻回された固定子を有する三相交流発電機と、固定子巻線の各相に対する通電タイミングを変化させて三相交流発電機の発電量を制御することによって鉛バッテリを充電する充電制御部と、を備える車両用制御装置が提案されている。
【0003】
また、かかる状況下で、特許文献2に見られるような鉛バッテリの残容量の指標としてSOC(State Of Charge)と呼ばれる充電率(%)、つまり充電状態を測定する測定方法が提案されている。特許文献2が開示する測定方法は、車両が停止状態であって、且つ、鉛バッテリの放電負荷が所定値以下であるときに、開回路電圧(無負荷状態での端子間電圧)から基準SOCを算出し、車両が走行状態であるときに充放電電流を時間積算することによって充放電電気量を算出し、基準SOCと充放電電気量とに基づいて車両走行中の鉛バッテリのSOCを測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−194427号公報
【特許文献2】特開2006−87160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献2が開示するSOCの測定方法を廉価であることが求められるスクーターやモペット等の鞍乗り型車両に採用する場合には、以下に示すような事態が発生すると考えられる。
【0006】
第1に、車両では、走行中はもちろん、エンジンの停止中においても、鉛バッテリから供給される電力によって盗難防止装置等の補機が駆動されている状態にあるため、放電負荷が所定値以下になる状態が限られ、開回路電圧を測定すること事態が困難である傾向が強い。特に、鞍乗り型車両では、鉛バッテリの容量が小さいためにこの傾向は顕著になると考えられる。
【0007】
第2に、走行中(鉛バッテリが充放電されている状態)からエンジン停止状態に移行した際に開回路電圧を算出しようとしても、鉛バッテリの極板が活性状態にあるために、開回路電圧自体が変動してしまい、開回路電圧を正しく算出することができない。特に、鞍乗り型車両は新聞配達や宅配等の業務用に利用されることが多く、その業務中に乗員が鞍乗り型車両から離れる際には、イグニッションスイッチをオフにすることが頻繁にあるので、開回路電圧を正しく算出することができない傾向が強い。
【0008】
第3に、基準SOCと充放電電気量とに基づいて車両走行中の鉛バッテリのSOCを測定するためには、充放電電流を測定する電流センサが必要となる。特に、かかる測定方法を鞍乗り型車両に採用した場合には、廉価であることが求められる鞍乗り型車両のコストが増加してしまう。
【0009】
第4に、走行中に充放電電流から充放電電気量を算出し、基準SOCを求めるためには、積算等の煩雑な演算処理が可能な高性能のCPUが必要となる。特に、かかる測定方法を鞍乗り型車両に採用した場合には、廉価であることが求められる鞍乗り型車両のコストが増加してしまう。
【0010】
本発明は、以上の検討経てなされたものであり、簡便、且つ、安価な構成で二次電池の充電状態を測定可能な車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の目的を達成するべく、本発明は、車両のエンジンで駆動される界磁束発生用磁石を有する回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻回された固定子を備える三相交流発電機から供給される3相交流電流を直流電流に変換して二次電池に供給するために、前記3相交流電流の各相に対して一対のスイッチング素子を有する電力変換器と、前記回転子における前記各相の回転角に基づいて前記固定子巻線の前記各相の通電タイミングを判定し、判定された前記各相の前記通電タイミングに応じて前記各相の前記一対のスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御を行って、前記三相交流発電機から供給される前記3相交流電流を前記直流電流に変換して前記二次電池に供給させることにより、二次電池を充電する充電制御部と、前記二次電池の充電状態を測定する測定部と、を備える車両用制御装置であって、前記回転子の回転速度を検出する回転速度検出部を更に備え、前記測定部は、前記回転速度検出部によって検出された前記回転子の回転速度と前記充電制御部によって判定された前記各相の前記通電タイミングとに基づいて、前記二次電池の前記充電状態を測定することを第1の局面とする。
【0012】
また、本発明は、第1の局面に加えて、前記測定部は、前記二次電池を定電圧で充電するときに、前記回転速度検出部によって検出された前記回転子の前記回転速度から前記回転速度前記充電制御部によって判定された前記各相の前記通電タイミングを対応させることによって前記二次電池への充電電流を算出し、前記定電圧で前記二次電池を充電する場合における前記充電電流と充電状態との所定の相関関係を参照して、算出された前記充電電流に対応する前記二次電池の前記充電状態を算出することを第2の局面とする。
【0013】
また、本発明は、第2の局面に加えて、前記測定部は、前記二次電池を前記定電圧で充電するときに、前記定電圧で前記二次電池を充電する場合における前記充電電流と前記充電制御部によって判定された前記各相の前記通電タイミングとが比例関係にあることを用いて前記二次電池への前記充電電流を算出することを第3の局面とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の本発明の第1の局面にかかる車両用制御装置によれば、車両のエンジンで駆動される界磁束発生用磁石を有する回転子及び発電出力発生用の固定子巻線が巻回された固定子を備える三相交流発電機から供給される3相交流電流を直流電流に変換して二次電池に供給するために、3相交流電流の各相に対して一対のスイッチング素子を有する電力変換器と、回転子における各相の回転角に基づいて固定子巻線の各相の通電タイミングを判定し、判定された各相の通電タイミングに応じて各相の一対のスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御を行って、三相交流発電機から供給される3相交流電流を直流電流に変換して二次電池に供給させることにより、二次電池を充電する充電制御部と、二次電池の充電状態を測定する測定部と、を備える車両用制御装置であって、回転子の回転速度を検出する回転速度検出部を更に備え、測定部が、回転速度検出部によって検出された回転子の回転速度と充電制御部によって判定された各相の通電タイミングとに基づいて、二次電池の充電状態を測定するものであるため、簡便、且つ、安価な構成で二次電池の充電状態を測定することができる。特に、かかる構成によれば、回転子の回転速度と典型的には遅角量である通電タイミングとの相関性によって、SOCである充電状態を測定することできるため、電流センサを用いることなく、また、煩雑な演算をすることない簡便、且つ、安価な構成で二次電池の充電状態を測定することができる。また、かかる構成によれば、車両の走行中に充電状態を測定できるため、例えばアイドルストップ機能がある車両に採用することで、アイドルストップすべきかどうかの判断にその測定結果を用いることができる。
【0015】
また、本発明の第2の局面にかかる車両用制御装置によれば、二次電池を定電圧で充電するときに、測定部が、回転速度検出部によって検出された回転子の回転速度から回転速度充電制御部によって判定された各相の通電タイミングを対応させることによって二次電池への充電電流を算出し、定電圧で二次電池を充電する場合における充電電流と充電状態との所定の相関関係を参照して、算出された充電電流に対応する二次電池の充電状態を算出するものであるため、電流センサを用いずに、また、単純な算出手法で、充電制御部の通電タイミングを確実に算出して、かかる通電タイミングに対応する二次電池への充電電流を単純な算出手法で算出することができ、更に、かかる充電電流に対応する二次電池の充電状態を単純な算出手法で算出することができる。
【0016】
また、本発明の第3の局面にかかる車両用制御装置によれば、二次電池を定電圧で充電するときに、測定部が、定電圧で二次電池を充電する場合における充電電流と充電制御部によって判定された各相の通電タイミングとが比例関係にあることを用いて二次電池への充電電流を算出することにより、電流センサを用いずに、また、単純な算出手法で、確実に二次電池への充電電流を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態における車両用制御装置が適用されるエンジンの構成を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態における車両用制御装置の構成を示す回路図である。
図3図3は、本実施形態における車両用制御装置が鉛バッテリの充電状態を測定する際に用いられるデータの一例を示す図である。ここで、図3(a)は、三相交流発電機の回転子の異なる回転数毎の遅角量と鉛バッテリへの充電電流との関係の一例を示す図であり、図3(b)は、鉛バッテリへの充電電流とSOCとの関係の一例を示す図である。
図4図4は、鉛バッテリの充電電流特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における車両用制御装置につき、詳細に説明する。
【0019】
〔エンジンの構成〕
まず、図1を参照して、本発明の実施形態における車両用制御装置が適用されるエンジンの構成について、詳細に説明する。
【0020】
図1は、本実施形態における車両用制御装置が適用されるエンジンの構成を示す模式図である。
【0021】
図1に示すように、内燃機関であるエンジン1は、図示を省略する車両に搭載され、シリンダブロック2を備えている。シリンダブロック2の側壁内には、シリンダブロック2及びその内部を冷却するための冷却水が流通する冷却水通路3が形成されている。冷却水通路3には、冷却水通路3を流通する冷却水の温度を検出するための水温センサ4が設けられている。
【0022】
なお、図1中では、説明の便宜上、内燃機関1を単気筒として示しているが、内燃機関1は複数の気筒を有するものであってもよく、気筒の配列も直列、水平対向やV型等であってもよい。また、図1中では、説明の便宜上、内燃機関1を水冷式として示しているが、空冷式であってもよく、かかる場合には、水温センサ4の代わりに内燃機関1の温度を検出自在な温度センサをシリンダブロック2等に装着してもよい。
【0023】
シリンダブロック2の内部には、ピストン5が配置されている。ピストン5は、コンロッド6を介してクランク7に連結されている。クランク7の近傍には、クランク7の回転角度を検出するクランク角センサ8が、内燃機関1の回転速度を検出すべく設けられている。シリンダブロック2の上部には、シリンダヘッド9が装着されている。ピストン5の上面と、シリンダブロック2及びシリンダヘッド9の各々の内面とが画成する内部空間は燃焼室10となる。
【0024】
シリンダヘッド9には、燃焼室10内の混合気に点火する点火プラグ11が設けられている。点火プラグ11の点火動作は、ECU102が図示を省略する点火コイルへの通電を制御することによって制御される。
【0025】
また、シリンダヘッド9には、燃焼室10と吸気通路12とを開閉自在に連通する吸気バルブ13が設けられている。吸気通路12は、シリンダヘッド9に固設される吸気管IM内に形成され、吸気管IMは、吸気通路12内に燃料を噴射する燃料噴射弁14及び燃料噴射弁14の上流側に配置されるスロットルバルブ15を備えている。なお、燃料噴射弁14は、燃焼室10内に直接燃料を噴射するものであってもよい。
【0026】
シリンダヘッド9には、吸気管IMの反対側に排気管EMが固設され、排気管EM内には、燃焼室10と連通する排気通路16が形成されている。かかるシリンダヘッド9には、燃焼室10と排気通路16とを開閉自在に連通する排気バルブ17が設けられている。
【0027】
〔車両用制御装置の構成〕
次に、更に図2をも参照して、本実施形態における車両用制御装置の構成について、詳細に説明する。
【0028】
図2は、本実施形態における車両用制御装置の構成を示す回路図である。
【0029】
図2に示すように、本発明の実施形態における車両用制御装置100は、ECU(Electronic Control Unit)130を備えている。なお、図中の符号101は、二次電池としての鉛バッテリを示し、符号102は、負荷を示し、及び符号103は、位相センサを示している。また、二次電池としては、鉛バッテリ以外に、ニッケル水素バッテリやリチウムイオンバッテリも利用可能である。
【0030】
三相交流発電機110は、U相のコイル110aと、V相のコイル110bと、W相のコイル110cと、の3相の発電出力発生用のコイル(固定子巻線)を図示を省略する固定子側に有すると共に、これらの周囲の回転子側に配列された図示を省略する界磁束発生用の永久磁石群を有し、エンジン1のクランク7によって駆動される(図1参照)。
【0031】
U相のコイル110aは、U相のスイッチング素子131aの他方の端子と、U相のスイッチング素子131bの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子111aを有している。V相のコイル110bは、V相のスイッチング素子131cの他方の端子と、V相のスイッチング素子131dの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子111bを有している。また、W相のコイル110cは、W相のスイッチング素子131eの他方の端子と、W相のスイッチング素子131fの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子111cを有している。
【0032】
ECU130は、マイクロコンピュータ等を含む演算処理装置であり、図示を省略するメモリやタイマを有している。かかるメモリには、必要な制御プログラム及び制御データが記憶され、ECU130は、メモリから必要な制御プログラム及び制御データを読み出して、制御プログラムを実行することによって、車両用制御装置100全体の動作を制御する制御装置である。
【0033】
具体的には、ECU130は、電力変換器であるAC(Alternate Current)/DC(Direct Current)コンバータ131、充電制御部132、回転速度検出部133及び測定部134を備えている。なお、図2中では、充電制御部132、回転速度検出部133及び測定部134を、ECU130が制御プログラムを実
行する際のその機能ブロックとして各々示している。また、充電制御部132、回転速度検出部133及び測定部134を機能ブロックとして機能させるプログラムは、メモリ中に予め記憶されている。
【0034】
AC/DCコンバータ131は、3相ブリッジ接続されたスイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fを有し、充電制御部132の指令部132bからの制御信号に従って、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々をオン状態又はオフ状態にして三相交流発電機110から供給された3相交流電流を直流電流に変換すると共に、直流電流を鉛バッテリ101に供給する。なお、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fは、典型的には各々トランジスタであり、図2中では、一例として、N型のMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)として各々示している。
【0035】
具体的には、AC/DCコンバータ131は、U相、V相及びW相の3相の各相に対して、一対のスイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fを各々対応して有している。
【0036】
つまり、AC/DCコンバータ131では、U相の一対のスイッチング素子131aとスイッチング素子131bとが電気的に接続されており、スイッチング素子131aがオン状態で、且つ、スイッチング素子131bがオフ状態の場合にU相の駆動電圧をハイレベルにし、スイッチング素子131aがオフ状態で、且つ、スイッチング素子131bがオン状態の場合にU相の駆動電圧をローレベルにする。
【0037】
また、AC/DCコンバータ131では、V相の一対のスイッチング素子131cとスイッチング素子131dとが電気的に接続されており、スイッチング素子131cがオン状態で、且つ、スイッチング素子131dがオフ状態の場合にV相の駆動電圧をハイレベルにし、スイッチング素子131cがオフ状態で、且つ、スイッチング素子131dがオン状態の場合にV相の駆動電圧をローレベルにする。
【0038】
更に、AC/DCコンバータ131では、W相の一対のスイッチング素子131eとスイッチング素子131fとが電気的に接続されており、スイッチング素子131eがオン状態、且つ、スイッチング素子131fがオフ状態の場合にW相の駆動電圧をハイレベルにし、スイッチング素子131eがオフ状態、且つ、スイッチング素子131fがオン状態の場合にW相の駆動電圧をローレベルにする。
【0039】
ここで、スイッチング素子131aは、充電制御部132の指令部132bに電気的に接続された制御端子と、鉛バッテリ101の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子131b及び三相交流発電機110の接続端子111aに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131aは、その制御端子に対して指令部132bから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときは、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0040】
また、スイッチング素子131bは、充電制御部132の指令部132bに電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子131a及び三相交流発電機110の接続端子111aに電気的に接続された一方の入力端子と、鉛バッテリ101の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131bは、その制御端子に対して指令部132bから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0041】
また、スイッチング素子131cは、充電制御部132の指令部132bに電気的に接続された制御端子と、鉛バッテリ101の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子131d及び三相交流発電機110の接続端子111bに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131cは、その制御端子に対して指令部132bから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0042】
また、スイッチング素子131dは、充電制御部132の指令部132bに電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子131c及び三相交流発電機110の接続端子111bに電気的に接続された一方の入力端子と、鉛バッテリ101の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131dは、その制御端子に対して指令部132bから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0043】
また、スイッチング素子131eは、充電制御部132の指令部132bに電気的に接続された制御端子と、鉛バッテリ101の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子131f及び三相交流発電機110の接続端子111cに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131eは、その制御端子に対して指令部132bから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0044】
更に、スイッチング素子131fは、充電制御部132の指令部132bに電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子131e及び三相交流発電機110の接続端子110cに電気的に接続された一方の入力端子と、鉛バッテリ101の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131fは、その制御端子に対して指令部132bから印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0045】
充電制御部132は、判定部132a及び指令部132bを機能ブロックとして有し、位相センサ103が検出した三相交流発電機110のU相、V相及びW相の各相の回転子の回転角に基づいて、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御を行う。また、判定部132a及び指令部132bが協働して行うスイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々のオン状態とオフ状態とを切り替えるスイッチング制御は、遅角制御である。
【0046】
具体的には、判定部132aは、位相センサ103が検出した三相交流発電機110のU相、V相及びW相の各相の回転子の回転角に基づいて、三相交流発電機110の各相のコイルの通電タイミング(遅角量)を判定し、測定部134及び指令部132bにその判定した通電タイミング(遅角量)を示す信号を送出する。
【0047】
また、指令部132bは、各スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの制御端子に電気的に接続され、判定部132aからの送出信号に従って、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの制御端子に対してハイレベル及びローレベルから成る制御信号を各々印加することにより、これらを対応してオン/オフ動作させる。
【0048】
回転速度検出部133は、三相交流発電機110の回転子の回転速度を検出する。具体的には、回転速度検出部133は、位相センサ103が検出した三相交流発電機110のU相、V相及びW相の各相の回転子の回転角の時間変化から回転子の回転速度を検出し、
測定部134にその検出した回転速度を示す信号を送出する。なお、三相交流発電機110三相交流発電機110のU相、V相及びW相の各相の発電電圧を示す出力信号の波形から回転子の回転速度を検出するようにしてもよい。また、エンジン1の回転速度と三相交流発電機110の回転子の回転速度との間には相関関係があるので、クランク角センサ8によって検出されたクランク7の回転角度から回転子の回転速度を検出するようにしてもよい。
【0049】
測定部134は、判定部132aによって判定された三相交流発電機110の各相のコイルの通電タイミング(遅角量)と、回転速度検出部133によって検出された回転子の回転速度と、に基づいて鉛バッテリ101の充電状態を測定する。
【0050】
〔充電状態の測定処理〕
以下、以上の構成を有する車両用制御装置100において、更に図3及び図4をも参照して、鉛バッテリ101の充電状態の測定処理について、詳細に説明する。
【0051】
図3は、本実施形態における車両用制御装置が鉛バッテリの充電状態を測定する際に用いられるデータの一例を示す図である。ここで、図3(a)は、三相交流発電機の回転子の異なる回転数毎の遅角量と鉛バッテリへの充電電流との関係の一例を示す図であり、図3(b)は、鉛バッテリへの充電電流とSOCとの関係の一例を示す図である。また、図4は、鉛バッテリの充電電流特性の一例を示す図である。
【0052】
まず、鉛バッテリ101の充電状態の測定原理について、詳細に説明する。
【0053】
図3(a)に示すように、定電圧で鉛バッテリ101を充電する場合、鉛バッテリ101への充電電流と三相交流発電機110の遅角量とは比例関係にある。従って、図3(a)に示す特性に基づいて、三相交流発電機110の遅角量から鉛バッテリ101への充電電流を算出することができる。
【0054】
また、鉛バッテリ101自体において、SOCと充電電流との関係は、図3(b)に示すようになる。つまり、鉛バッテリ101に充電電流を流して鉛バッテリ101を充電する際には、SOCが0%に近いときには充電電流が増加しながらSOCが増加し、SOCが10%程度に増加したあたりから充電電流が減少に転じた状態でSOCが増加する。そして、SOCが100%に近づくに従い、充電電流は0Aに漸近するような変化特性を呈する。従って、図3(b)に示す特性に基づいて、鉛バッテリ101への充電電流から、鉛バッテリ101のSOCを算出することができる。
【0055】
そこで、鉛バッテリ101を定電圧で充電するときには、図3(a)に示す特性に基づいて、三相交流発電機110の遅角量から鉛バッテリ101への充電電流を算出した後に、図3(b)に示す特性に基づいて、鉛バッテリ101への充電電流から、鉛バッテリ101のSOCを算出することができる。なお、鉛バッテリ101の通電タイミングと鉛バッテリ101への充電電流とは相関関係にあり、更に、鉛バッテリ101への充電電流と鉛バッテリ101の充電状態とは相対関係にあるため、鉛バッテリ101の通電タイミングから鉛バッテリ101の充電状態を直接算出できるようにテーブルデータ等を予め用意して、これを用いて鉛バッテリ101の充電状態を求めてもよい。
【0056】
以上のような鉛バッテリ101の充電状態の測定原理に則って、車両用制御装置100は、以下のような鉛バッテリ101の充電状態の測定処理を実行する。
【0057】
まず、三相交流発電機110の発電電流で鉛バッテリ101を充電すべく、充電制御部132の判定部132aが、位相センサ103が検出した三相交流発電機110のU相、
V相及びW相の各相の回転子の回転角に基づいて、三相交流発電機110の各相のコイルの通電タイミング(遅角量)を判定し、測定部123及び指令部132bにその判定した通電タイミング(遅角量)を示す信号を送出する。
【0058】
次に、充電制御部132の指令部132bが、判定部132aからの送出信号に従って、AC/DCコンバータ131におけるスイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの制御端子に対してハイレベル及びローレベルから成る制御信号を各々印加することにより、これらを対応してオン/オフ動作するスイッチング動作を実行する。これにより、AC/DCコンバータ131は、遅角制御された状態で、三相交流発電機110の発電電流を直流電流に変換して鉛バッテリ101を充電していく。
【0059】
この際の鉛バッテリ101を充電する充電電流は、図4に示すように、充電時間が長くなるに連れて、充電電流は0Aに漸近してほぼ一定値となるような充電特性を呈する。なお、図4中、4時間経過時が、SOCがほぼ100%の時点に相当する。
【0060】
ここで、回転速度検出部133は、位相センサ103が検出した三相交流発電機110のU相、V相及びW相の各相の回転子の回転角の時間変化から回転子の回転速度を検出し、測定部134にその検出した回転速度を示す信号を送出する。
【0061】
そして、測定部134は、判定部132aによって判定された三相交流発電機110の各相のコイルの通電タイミング(遅角量)と、回転速度検出部133によって検出された回転子の回転速度と、に基づいて鉛バッテリ101の充電状態を測定する。
【0062】
具体的には、測定部134は、図3(a)に示す特性に基づいて、三相交流発電機110の遅角量から鉛バッテリ101への充電電流を算出する。なお、図3(a)に示す特性は、予めメモリに記憶されたデータを測定部134が読み出すことにより得られる。
【0063】
そして、測定部134は、図3(b)に示す特性に基づいて、鉛バッテリ101への充電電流から、鉛バッテリ101の充電状態、つまりSOCを算出することになる。なお、図3(b)に示す特性は、予めメモリに記憶されたデータを測定部134が読み出すことにより得られる。
【0064】
更に、充電制御部132が、鉛バッテリ101を充電していく場合には、図4に示す充電特性に従った充電が実行される。
【0065】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における車両用制御装置100では、測定部134が、回転速度検出部133によって検出された回転子の回転速度からその回転速度に対応した充電制御部132の通電タイミングを算出することによって二次電池101への充電電流を算出し、二次電池101における充電電流と充電状態との所定の相関関係を参照して、算出された充電電流に対応する二次電池101の充電状態を算出するものであるため、電流センサを用いずに、また、単純な算出手法で、確実に充電制御部132の通電タイミングを算出して、かかる通電タイミングに対応する二次電池101への充電電流を単純な算出手法で算出することができ、更に、かかる充電電流に対応する二次電池101の充電状態を単純な算出手法で算出することができる。
【0066】
また、本実施形態における車両用制御装置100では、測定部134が、回転速度検出部133によって検出された回転子の回転速度からその回転速度に対応した充電制御部132の通電タイミングを算出することによって二次電池101への充電電流を算出し、二次電池101における充電電流と充電状態との所定の相関関係を参照して、算出された充
電電流に対応する二次電池101の充電状態を算出するものであるため、電流センサを用いずに、また、単純な算出手法で、確実に充電制御部132の通電タイミングを算出して、かかる通電タイミングに対応する二次電池101への充電電流を単純な算出手法で算出することができ、更に、かかる充電電流に対応する二次電池101の充電状態を単純な算出手法で算出することができる。
【0067】
また、本実施形態における車両用制御装置100では、二次電池101を充電するときに、測定部134が、二次電池101への充電電流と充電制御部132の通電タイミングとが比例関係にあることを用いて二次電池101への充電電流を算出することにより、電流センサを用いずに、また、単純な算出手法で、確実に二次電池101への充電電流を算出することができる。
【0068】
なお、本発明は、構成要素の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、かかる構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明においては、簡便、且つ、安価な構成で二次電池の充電状態を測定可能な車両用制御装置を提供することができるものであり、その汎用普遍的な性格から車両等の車両用制御装置に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0070】
1…エンジン
2…シリンダブロック
3…冷却水通路
4…水温センサ
5…ピストン
6…コンロッド
7…クランク
8…クランク角センサ
9…シリンダヘッド
10…燃焼室
11…点火プラグ
12…吸気通路
13…吸気バルブ
14…燃料噴射弁
15…スロットルバルブ
16…排気通路
17…排気バルブ
100…車両用制御装置
101…鉛バッテリ
102…負荷
103…位相センサ
110…三相交流発電機
130…ECU
131…AC/DCコンバータ
132…充電制御部
132a…判定部
132b…指令部
133…回転速度検出部
134…測定部
IM…吸気管
EM…排気管
図1
図2
図3
図4