(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用サッシュは、自動車の主にドアパネルに設置されてウィンドウガラスの縁部を保持し、設置箇所によってはウィンドウガラスの昇降を案内するものである。
【0003】
このような自動車用サッシュは金属製のものが主流であるが、特許文献1に示すように樹脂製のものも提案されている。
図7及び
図8は、樹脂製の自動車用サッシュの一例を示したものである。この自動車用サッシュ100は、長尺形状のベース面部101の両側縁から側壁部102が互いに対向して立設されて断面コ字形状に構成されている。
【0004】
このような自動車用サッシュ100では、ベース面部101にx方向リブ103、y方向リブ104及び筋交リブ105が配置されている。筋交リブ105は、x方向リブ103とy方向リブ104間に傾斜して配設されたものである。自動車用サッシュ100に荷重が作用したときこの自動車用サッシュ100には応力が発生するが、この応力のx方向応力成分及びy方向応力成分は、上述のx方向リブ103、y方向リブ104及び筋交リブ105によって支持され、z方向応力成分は、ベース面部101の肉厚、筋交リブ105の幅W及び高さHによって支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車用サッシュ100における剛性を確保するためには、ベース面部101の肉厚、筋交リブ105の幅W及び高さHが大きく設定されて、ベース面部101は厚肉構造に構成される。しかしながら、ベース面部101を厚肉構造に構成すると、自動車用サッシュ100の成形時に自動車用サッシュ100内の蓄熱量が甚大になって、この自動車用サッシュ100を冷却するために多大な時間を要し、また、側壁部102がベース面部101に対し傾斜(ヒケ倒れ)等して、自動車用サッシュ100の寸法精度が低下してしまう恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、サッシュの剛性を確保しつつ、その成形時の冷却時間を短縮でき、且つサッシュの寸法精度を向上できるサッシュ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るサッシュ構造は、長尺形状のベース面部における両側縁から側壁部が互いに対向して立設されて、断面コ字形状のサッシュが樹脂材料にて成形されたサッシュ構造であって、前記ベース面部は、複数の角錐体とその一部との少なくとも一方が前記ベース面部の水平方向に隣接配列され
、複数の前記角錐体とその一部との少なくとも一方の頂点を連結する頂点リブが複数本設置され、複数の前記角錐体とその一部との少なくとも一方の底辺を連結する底辺リブが複数本設置されて構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベース面部は、複数の角錐体とその一部との少なくとも一方がベース面部の水平方向に隣接配列され
、複数の前記角錐体とその一部との少なくとも一方の頂点を連結する頂点リブが複数本設置され、複数の前記角錐体とその一部との少なくとも一方の底辺を連結する底辺リブが複数本設置されて構成されたので、各角錐体とその一部との少なくとも一方の稜線、
頂点リブ及び底辺リブによって強度を保持できる。このため、ベース面部を薄肉構造にしてもその剛性、ひいてはサッシュの剛性を確保できる。
【0010】
また、ベース面部を薄肉構造に構成でき、更に、ベース面部が角錐体とその一部との少なくとも一方により構成されて垂直方向に凹凸した形状になるので、サッシュ成形時におけるベース面部の冷却性が優れ、サッシュ成形時の冷却時間を短縮できる。
【0011】
更に、ベース面部を薄肉構造に構成できるので、サッシュ成形時における熱溜りを低減でき、この結果、側壁部の傾斜(ヒケ倒れ)を防止して、サッシュの寸法精度を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係るサッシュ構造の一実施形態が適用された自動車用サッシュを示す部分平面図である。また、
図2は、
図1のα部分を拡大して示す斜視図である。これらの
図1及び
図2に示す自動車用サッシュ10は、自動車の例えばドアパネルに設置されてウィンドウガラス1の縁部を保持し、更に設置箇所によっては昇降するウィンドウガラス1を案内するものである。
【0014】
自動車用サッシュ10は、長尺状のベース面部11の両側縁から側壁部12が立設されて断面コ字形状に構成され、樹脂材料にて一体成形される。互いに対向する両側壁部12間にウィンドウガラス1の縁部が配置されて保持される。尚、
図1中の符号19は、自動車用サッシュ10を例えばドアパネルに取り付けるための取付部を示す。
【0015】
ベース面部11は、その主要部分が、
図2及び
図3に示すように、複数の角錐体とその一部との少なくとも一方、本実施形態では複数の四角錐体13と、その一部である複数の半四角錐体14とが、ベース面部11の水平方向(x方向及びy方向)に隣接配列されて構成される。
【0016】
また、
図1及び
図2に示すように、ベース面部11には、側壁部12の延在方向であるy方向に延びるy方向リブ16が、側壁部12に連続して一体に成形されると共に、x方向リブ15が一体成形される。このx方向リブ15は、ベース面部11の水平面内でy方向リブ16と直交するx方向に延び、ベース面部11の長尺方向(側壁部12の延在方向)に所定の間隔で設置される。
【0017】
更に、ベース面部11には、
図2及び
図3に示すように、四角錐体13と半四角錐体14の少なくとも一方の頂点、本実施形態では複数の四角錐体13及び半四角錐体14のそれぞれの頂点17を連結する
頂点リブ18が、複数本互いに直交して一体に設置されている。また、ベース面部11には、四角錐体13と半四角錐体14との少なくとも一方の底辺、本実施形態では四角錐体13及び半四角錐体14のそれぞれの底辺20を連結する底辺リブ21が、複数本互いに直交して一体に設置されている。
【0018】
上述のように、ベース面部11は、複数の四角錐体13及び半四角錐体14がベース面部11の水平方向に隣接配列され、これらの四角錐体13及び半四角錐体14の周囲にx方向リブ15及びy方向リブ16が設置され、更に、複数の四角錐体13及び半四角錐体14の頂点17を頂点リブ18が連結し、四角錐体13及び半四角錐体14の底辺20を底辺リブ21が連結することで構成され、これによりラーメントラス構造に構成される。
【0019】
このラーメントラス構造では、特に、四角錐体13及び半四角錐体14の稜線22、頂点リブ18並びに底辺リブ21が、ベース面部11に作用する荷重により生ずるx方向、y方向、z方向のそれぞれの応力に対して強度を有するため、四角錐体13、半四角錐体14、頂点リブ18及び底辺リブ21の肉厚Tを、従来の自動車用サッシュ100(
図8)におけるベース面部101の肉厚Nよりも薄肉に構成した場合にも、ベース面部11の剛性を従来の自動車用サッシュ100のベース面部101の剛性よりも向上させることが可能になる。
【0020】
例えば、
図4に示すように、ベース面部11におけるx方向リブ15とy方向リブ16との交差する2箇所に荷重P1、P2がそれぞれ作用し、ベース面部11における頂点リブ18と底辺リブ21との交差する任意の1箇所に荷重P3が作用したとき、ベース面部11に生ずる応力を検討する。ここで、荷重P1、P2及びP3の大きさは同一である(P1=P2=P3)。
【0021】
このとき、荷重P1によりベース面部11に応力(x方向応力成分FTx1、y方向応力成分FTy1、z方向応力成分FTz1)が生ずる。また、荷重P2によってベース面部11に応力(x方向応力成分FTx2、y方向応力成分FTy2、z方向応力成分FTz2)が生ずる。更に、荷重P3によりベース面部11に応力(x方向応力成分FTx3、y方向応力成分FTy3、z方向応力成分FTz3)が生ずる。
【0022】
これらの各応力のx方向応力成分は等しく、y方向応力成分は等しく、z方向応力成分は等しい。つまり、
FTx1=FTx2=FTx3
FTy1=FTy2=FTy3
FTz1=FTz2=FTz3
これらのことから、本実施形態の自動車用サッシュ10のベース面部11では、全領域において強度に片寄りがなく、ベース面部11の剛性が全体として高いことが分かる。
【0023】
一方、従来の自動車用サッシュ100(
図7、
図8)のベース面部101において、
図9に示すように、ベース面部101のx方向リブ103とy方向リブ104との交差する2箇所に荷重P1、P2がそれぞれ作用し、ベース面部101の筋交リブ105の長手方向略中央位置に荷重P3が作用したとき、ベース面部101に生ずる応力を検討する。この場合にも、P1=P2=P3である。
【0024】
このとき、荷重P1によりベース面部101に応力(x方向応力成分FLx1、y方向応力成分FLy1、z方向応力成分FLz1)が生ずる。また、荷重P2によりベース面部101に応力(x方向応力成分FLx2、y方向応力成分FLy2、z方向応力成分FLz2)が生ずる。更に、荷重P3によりベース面部101に応力(x方向応力成分FLx3、y方向応力成分FLy3、z方向成分FLz3)が生ずる。
【0025】
これらの応力(応力成分)のうち、荷重P1、P2により生ずる応力は等しいが、荷重P3により生ずる応力は、荷重P1、P2により生ずる応力よりも大きくなっている。つまり、
FLx1=FLx2<FLx3、
FLy1=FLy2<FLy3
FLz1=FLz2<FLz3
従って、従来の自動車用サッシュ100のベース面部101は、部分的(例えば筋交リブ105の長手方向略中央位置)に強度が小さな箇所が存在し、
図8に示すベース面部101の肉厚Nが厚く、筋交リブ105の幅Wや高さHが大きい場合にも、剛性が低いことが分かる。
【0026】
また、
図2、
図3に示すように、本実施形態の自動車用サッシュ10では、ベース面部11を構成する四角錐体13、半四角錐体14、頂点リブ18及び底辺リブ21の肉厚Tは、従来の自動車用サッシュ100におけるベース面部101及び筋交リブ105とx方向に沿う横断面積が同程度となるように設定され、具体的には、従来のベース面部101及び筋交リブ105の2/3〜1/2と薄肉に構成され設定されている。更に、ベース面部11は、複数の四角錐体13及び半四角錐体14が水平方向に隣接配列されて、自動車用サッシュ10の高さ方向(z方向)に凹凸形状に構成されている。これらの結果、
図5に示すように、自動車用サッシュ10の成形時における蓄熱領域25(クロスハッチング表示)は、自動車用サッシュ10のベース面部11が従来の自動車用サッシュ100のベース面部101よりも狭い領域になっている。
【0027】
従って、自動車用サッシュ10のベース面部11におけるA部位(四角錐体13の頂点17と頂点リブ18を含む部位)と、従来の自動車用サッシュ100のベース面部101におけるB部位(筋交リブ105の長手方向略中央部周囲の部位)とにおける肉厚中心位置の温度変化は、
図6の示すように、A部位の温度変化が曲線Caとなり、B部位の温度変化が曲線Cbとなる。これらの曲線Ca、Cbから、熱変形温度以下になる時間は、A部位が時刻Sa以降であり、B部位が時刻Sb(Sa<Sb)以降となって、A部位がB部位によりも急速に冷却していることが分かる。このため、成形時においては、本実施形態の自動車用サッシュ10は、従来の自動車用サッシュ100に比べて早期に突出しピン26(
図5)を動作させて、成形型から成形品(自動車用サッシュ10)を取り出すことが可能になる。
【0028】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)〜(3)を奏する。
【0029】
(1)
図2及び
図3に示すように、ベース面部11は、複数の四角錐体13及び半四角錐体14がベース面部11の水平方向(x方向及びy方向)に隣接配列されて構成されたので、四角錐体13及び半四角錐体14の稜線22によって、ベース面部11のx方向、y方向及びz方向の強度を保持できる。更に、ベース面部11には、複数の四角錐体13及び半四角錐体14の頂点17を連結する頂点リブ18が設置され、且つ、複数の四角錐体13及び半四角錐体14の底辺20を連結する底辺リブ21が設置されていることからも、ベース面部11のx方向、y方向及びz方向の強度をより向上させることができる。
これらのことから、ベース面部11を構成する四角錐体13、半四角錐体14、頂点リブ18及び底辺リブ21を薄肉構造に構成した場合にも、ベース面部11の剛性、ひいては自動車用サッシュ10の剛性を好適に確保できる。
【0030】
(2)ベース面部11を構成する四角錐体13、半四角錐体14、頂点リブ18及び底辺リブ21は薄肉構造に構成され、更に、ベース面部11は、複数の四角錐体13及び半四角錐体14によって垂直方向(z方向)に凹凸した形状に形成されて冷却面積が拡張している。これらのことから、自動車用サッシュ10の成形時にベース面部11の冷却性能が優れ、自動車用サッシュ10の成形時における冷却時間が短縮されて、自動車用サッシュ10の成形時間を短縮できる。
【0031】
(3)ベース面部11を構成する四角錐体13、半四角錐体14、頂点リブ18及び底辺リブ21が薄肉構造に構成されたので、自動車用サッシュ10の成形時における熱溜りとしての蓄熱領域25(
図5)を低減できる。この結果、自動車用サッシュ10の成形時に側壁部12がベース面部11に対して熱の影響で傾斜するヒケ倒れ等を防止できるので、自動車用サッシュ10の寸法精度を向上させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0033】
例えば、本実施形態では、ベース面部11を構成する角錐体は四角錐体13の場合を述べたが、三角錐体、五角錐体、六角錐体.八角錐体などの多角錐体であってもよい。また、本実施形態では、サッシュは自動車用サッシュ10の場合を述べたが、建物の窓のガラスを保持する建築窓用サッシュであってもよい。