特許第6234750号(P6234750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234750静電容量型アクチュエータアレイの駆動回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234750
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】静電容量型アクチュエータアレイの駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0175 20060101AFI20171113BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20171113BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H03K19/0175
   G09G3/20 624B
   G09G3/34 D
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-189309(P2013-189309)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-56783(P2015-56783A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 則一
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴志
(72)【発明者】
【氏名】牧野 泰明
【審査官】 緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0306562(US,A1)
【文献】 特表2014−523659(JP,A)
【文献】 特開平07−153274(JP,A)
【文献】 特表2010−525377(JP,A)
【文献】 特開平08−148988(JP,A)
【文献】 特開2013−162311(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0024508(US,A1)
【文献】 特開2001−343924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/0175
G09G 3/20
G09G 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の電極対が行列に沿って配置されている静電容量型アクチュエータのための駆動回路であり、
各電極対の一方の電極はpMOSトランジスタを介して高圧側電源電圧に接続されているとともにnMOSトランジスタを介して低圧側電源電圧に接続されており、
プラスの電源電圧を用いる場合は低圧側電源電圧=接地電圧であり、マイナスの電源電圧を用いる場合は高圧側電源電圧=接地電圧であり、
各電極対の他方の電極は接地電圧に接続されており、
pMOSトランジスタのオン・オフを切換えるゲート電圧範囲が、nMOSトランジスタのオン・オフを切換えるゲート電圧範囲より高圧であって、両者が重複しておらず、
各電極対に対応して、選択線とデータ線に接続されているメモリが配置されており、
各電極対に対応するメモリからの出力線が、当該電極対に対応するとともに接地電圧に接続されているMOSトランジスタのゲートに接続されており、
プラスまたはマイナスの電源電圧に接続されているMOSトランジスタのゲートに、メモリの記憶内容に依らないとともにメモリが出力する電圧範囲外にある電圧が印加されている
ことを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
選択線に書き込みを指令する電圧が印加されているとMOSトランジスタのソース・ドレイン間抵抗を低下させる電圧を出力し、選択線に保持を指令する電圧が印加されているとMOSトランジスタのソース・ドレイン間抵抗を上昇させる電圧を出力する電圧切り替え回路が各行に配置されており、電圧切り替え回路の出力電圧が、対応する行のプラスまたはマイナスの電源電圧に接続されているMOSトランジスタのゲートに印加されることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、一対の電極間に電位差を加える状態と電位差を加えない状態を切り替えることで動作状態を切り替える静電容量型アクチュエータの駆動回路を開示する。特に、複数個のアクチュエータがマトリクス(行列)に沿って二次元に配置されているアクチュエータアレイのための駆動回路を開示する。
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の一例に、複数個の可動鏡(傾斜可能な鏡)が行列に沿って配置されており、各可動鏡に対して一対の電極を配置した装置が知られている。一対の電極間に電位差を加えると電極間に吸引力が作用するために可動鏡が傾斜する。一対の電極間に電位差を加えるのを停止すると電極間に吸引力が作用しなくなるために可動鏡の傾斜角がもとに戻る。複数個の可動鏡を行列に沿って配置しておき、各可動鏡の傾斜角を独立に制御可能としておくと、行列内の位置毎に反射光を特定方向に向けるか否かが制御可能となり、特定方向における反射光の照射パターンを制御することができる。例えば特定方向にスクリーンを置いておくとスクリーンに映像を投影することができる。あるいは、反射光を車両の進行方向に向けるか否かを制御することによって、ヘッドライトによる照射範囲を制御するといったことが可能となる。
【0003】
図4は、一対の電極a,c(電極対A)に電位差を加えるか電位差を加えないかを切り替える駆動回路Jを示している。電源電圧VHHと接地電圧GRDの間に、pMOSトランジスタ6とnMOSトランジスタ8が直列に接続されており、その中間点7の電位が電極対Aのうちの一方の電極aに印加される。他方の電極cは接地されている。
一対の電極a,cの間に必要な吸引力を発生させるためには、論理回路で多用されている数ボルト程度の電圧では足りず、数十ボルトの電圧を印加する必要がある。そこで、電源電圧VHHには数十ボルト(例えば40ボルト程度)の電圧が加えられている。
pMOSトランジスタ6には閾値電圧がVHHよりもわずかに低いエンハンスメント型pMOSトランジスタを利用する。pMOSトランジスタ6のゲートにはVHHとVHDの間で変化する電圧DHが印加される。ここでVHDは、pMOSトランジスタ6の閾値電圧よりもわずかに低い電圧に調整されている。VHH>pMOSトランジスタ6の閾値電圧>VHDの関係にある。pMOSトランジスタ6は、ゲート電圧DHがVHHである場合はオフし、ゲート電圧DHがVHDである場合はオンする。
nMOSトランジスタ8には閾値電圧がGRD(接地電圧)よりもわずかに高いエンハンスメント型nMOSトランジスタを利用する。nMOSトランジスタ8のゲートにはGRDとVDDの間で変化する電圧Dが印加される。ここでVDDは、nMOSトランジスタ8の閾値電圧よりもわずかに高い電圧に調整されている。GRD<nMOSトランジスタ8の閾値電圧<VDDの関係にある。またVDD<VHDの関係にある。nMOSトランジスタ8は、ゲート電圧DがVDDである場合はオンし、ゲート電圧DがGRDである場合はオフする。
【0004】
後記するように、pMOSトランジスタ6のゲート電圧DHとnMOSトランジスタ8のゲート電圧Dは、同期して変化する。DH=VHHである状態ではD=VDDであり、DH=VHDである状態ではD=GRDである。この結果、pMOSトランジスタ6がオフすればnMOSトランジスタ8がオンし、pMOSトランジスタ6がオンすればnMOSトランジスタ8がオフすることになる。
pMOSトランジスタ6がオンしてnMOSトランジスタ8がオフすれば、電極aにVHHが加えられ、電極a,c間にVHHの電位差が加えられる。電極a,c間に吸引力が作用し、図示しない可動鏡が傾斜する。pMOSトランジスタ6がオフしてnMOSトランジスタ8がオンすれば、電極aが接地される。電極a,c間に電位差が加えられない状態に切り替えられる。この状態では電極a,c間に吸引力が作用せず、図示しない可動鏡の傾斜角がもとに戻る。この形式のアクチュエータの場合、ばね性を持つ梁等によって可動鏡が支持されており、電極a,c間に吸引力が作用しない場合には、梁が自然形状に復帰する弾性力によって、可動鏡の傾斜角が所定角度(吸引力が作用しないときの角度)に戻る。
本明細書では、一対の電極のことを電極対といい、一対の電極間に電位差を加えることを電極対に電位差(または電圧)を加えるといい、一対の電極間に吸引力が作用することを電極対に吸引力が作用するということがある。
【0005】
図4では、一個の電極対Aに吸引力を作用させるか・させないかによって可動体の姿勢を変化させる。これに代えて、一つの可動体に対して二個の電極対を用いることがある。図5は、その場合の電圧印加回路Jを示している。この回路では、一方の電極対Aには電圧を加えて吸引力を発生させるとともに他方の電極対Bには電圧を加えないことで吸引力を発生させない状態と、一方の電極対Aには電圧を加えないことで吸引力を発生させないとともに他方の電極対Bには電圧を加えて吸引力を発生させる状態を切り替える。この方式によると、電極対Aが吸引されたときの姿勢と、電極対Bが吸引されたときの姿勢の間で切り替えることができ、可動体を支持する梁が自然形状に復帰する弾性力によって可動体の傾斜角が所定角度(吸引力が作用しないときの角度)に戻る方式によるよりも、可動体の姿勢を正確に制御することが可能となる。また可動鏡が姿勢を変える速度を高速化することができ、可動鏡の傾斜角変化範囲を拡大することができる。
【0006】
図5では、電極対Aに電圧を加えるか・加えないかを切り替える電圧印加回路と、電極対Bに電圧を加えるか・加えないかを切り替える電圧印加回路を用いる。二つの電圧印加回路は、前者が電圧を加えれば後者は電圧を加えず、前者が電圧を加えなければ後者が電圧を加えるように動作する。
電極対A用の電圧印加回路の回路構成と、電極対B用の電圧印加回路の回路構成は、図4に示したものと同じであり、重複説明を省略する。ただし、pMOSトランジスタ6Aのゲート電圧DHAとpMOSトランジスタ6Bのゲート電圧DHBは、反転した関係にある。またnMOSトランジスタ8Aのゲート電圧DAとnMOSトランジスタ8Bのゲート電圧DBは、反転した関係にある。前者の関係から、pMOSトランジスタ6AがオンすればpMOSトランジスタ6Bがオフし、pMOSトランジスタ6AがオフすればpMOSトランジスタ6Bがオンする関係が得られる。後者の関係から、nMOSトランジスタ8AがオンすればnMOSトランジスタ8Bがオフし、nMOSトランジスタ8AがオフすればnMOSトランジスタ8Bがオンする関係が得られる。前記したように、pMOSトランジスタ6AがオンすればnMOSトランジスタ8Aはオフし、pMOSトランジスタ6AがオフすればnMOSトランジスタ8Aはオンする。またpMOSトランジスタ6BがオンすればnMOSトランジスタ8Bはオフし、pMOSトランジスタ6BがオフすればnMOSトランジスタ8Bはオンする。
以上から、図5の回路によって、(1)に示す状態、すなわち「pMOSトランジスタ6Aはオンし、nMOSトランジスタ8Aはオフし、pMOSトランジスタ6Bはオフし、nMOSトランジスタ8Bはオンする状態」と、(2)に示す状態、すなわち「pMOSトランジスタ6Aはオフし、nMOSトランジスタ8Aはオンし、pMOSトランジスタ6Bはオンし、nMOSトランジスタ8Bはオフする状態」の間で切り替えられることがわかる。(1)の状態では、電極対Aに電位差を加えて吸引力を発生させるとともに電極対Bには電位差を加えないことで吸引力を発生させない。(2)の状態では、電極対Aには電位差を加えないことで吸引力を発生させないとともに電極対Bに電位差を加えて吸引力を発生させる。
【0007】
一個の電極対を利用するアクチュエータ(図4の場合)あるいは二個の電極対を利用するアクチュエータ(図5の場合)の複数個が、行列に沿って二次元に配置されている場合がある。
複数個のアクチュエータが行列に沿って配置されている場合、行方向に伸びる選択線と列方向に伸びるデータ線によって、各アクチュエータに動作状態を指示する技術が採用される。複数本の選択線のうちの一本のみに書き込み用電圧を加え、他の選択線には保持用電圧を加えると、データ線で動作状態を指示する一行を選択することができる。書き込み用電圧を加える選択線を経時的に切り替えていくと、データ線で動作状態を指示する行を経時的に切り替えていくことができる。m×n個のアクチュエータが、m行n列の行列に沿って配置されている場合、上記技術によると、n本のデータ線によってm×n個のアクチュエータに動作状態を指示することができる。
【0008】
選択線とデータ線によって、マトリクス状に配置されたアクチュエータ群に動作状態を指示する技術では、選択線に書き込み用電圧を加えている間にデータ線から送られた指示内容を記憶しておくメモリが利用される。図6は、1ビットメモリの一例を示している。選択線WRに書き込み用電圧が印加されると、スイッチSW1がオンしてスイッチSW2がオフされる。この状態では、データ線INに入力される電圧が出力線DAに伝達され、それを反転した電圧が出力線DBに伝達される。その一方において選択線WRに書き込み用電圧が印加されないと、スイッチSW1がオフしてスイッチSW2がオンする。その状態では、反転回路2と反転回路4が直列に接続されているループが完成し、出力線DA,DBには、スイッチSW1がオフする直前に出力していた電圧が出力されつづける。
例えば、データ線INの電圧がVDD(例えば3.3V)なら電極対に電位差を印加する動作状態を指示し、データ線INの電圧がGRDなら電極対に電位差を印加しない動作状態を指示し、選択線WRの電圧がVDDなら書き込みを指示し、選択線WRの電圧がGRDなら保持を指示する場合、選択線WRの電圧がVDDである期間では、データ線INの電圧が3.3Vなら出力線DAの電圧は3.3Vとなって出力線DBの電圧は0Vとなり、データ線INの電圧が0Vなら出力線DAの電圧は0Vとなって出力線DBの電圧は3.3Vとなる。選択線WRの電圧が0Vの期間は、データ線INの電圧にかかわらず、スイッチSW1がオフする直前のDAとDBの電圧がそのまま保持される。
反転回路2,4とスイッチSW1、SW2等によって1ビットメモリHが構成されている。
本明細書では、電圧の大きさを示す参照符号と、その電圧が印加されている導電線を示す参照符号を区別しない。例えば出力線DAに電圧DAが印加されるという。前者の参照符号が導電線に種類を示し、後者の参照符号は電圧の大きさを示している。
【0009】
図6に示すように、1ビットメモリHはGRD(0V)またはVDD(例えば3.3V)を出力する。nMOSトランジスタ8,8A,8Bは、GRD〜VDDの間に閾値電圧を備えており、1ビットメモリHの出力でnMOSトランジスタ8,8A,8Bのオン・オフを切り替えることができる。しかしながら、pMOSトランジスタ6,6A,6Bの閾値電圧はVHH(例えば40V)に近く、VDD(例えば3.3V)よりも高い。1ビットメモリHによって、pMOSトランジスタ6,6A,6Bのオン・オフを切り替えることはできない。
【0010】
そこで図7に示すように、電圧レベル変換回路Dが必要となる。電圧レベル変換回路Dは、論理を反転しながら電圧レベルを変換する。電圧レベル変換回路Dは、1ビットメモリHが出力する電圧DBをDHAに変換し、電圧DAをDHBに変換する。すなわち、電圧DB=VDD(例えば3.3V)であればDHA=VHD(例えば36.7V)の電圧に変換し、電圧DB=GRDであればDHA=VHH(例えば40V)の電圧に変換する。同様に、電圧DA=VDDであればDHB=VHDの電圧に変換し、電圧DA=GRDであればDHB=VHHに変換する。この結果、図5に示した関係を満たす電圧DHA,DHBが得られる。
前記したように、pMOSトランジスタ6A,6Bは、VHD〜VHHの間に閾値電圧を備えている。電圧レベルが変換されたDHAによるとpMOSトランジスタ6Aのオン・オフが切り替えられ、電圧レベルが変換されたDHBによるとpMOSトランジスタ6Bのオン・オフが切り替えられる。
【0011】
図8は、電圧レベル変換回路Dの回路構成を示している。回路を構成するトランジスタのうち、nMOSトランジスタであるnhaとnhbのソース・ドレイン間には高い電圧が加えられるために高耐圧のトランジスタを用いる。(1)はDA=GRDであってDB=VDDの場合を示し、(2)はDA=VDDあってDB=GRDの場合を示している。
(1)に示すように、DA=GRDであってDB=VDDの場合は、高耐圧nMOSトランジスタであるnhbがオンし、pMOSトランジスタであるpb1,pb2がオンする。電圧VBは、nMOSトランジスタであるn1に所定の電流が流れる電圧に調整されている。そのために、DHAの電圧=VHH−pb1の閾値電圧―pb2の閾値電圧となる。両方の閾値電圧がともにVthであれば、DHAの電圧=VHH−2×Vthとなる。電圧レベル変換回路Dでは、VHH−2×Vth=VHD(例えば36.7V)となるMOSトランジスタが選択されている。この状態では、pMOSトランジスタであるpa3がオンするので、DHBの電圧=VHH(40V)となる。この状態では、pMOSトランジスタであるpa1,pa2,pb3と、高耐圧nMOSトランジスタであるnhaはオフしている。
(2)に示すように、DA=VDDであってDB=GRDの場合は、高耐圧nMOSトランジスタであるnhaがオンし、pMOSトランジスタであるpa1,pa2がオンする。電圧VBは、nMOSトランジスタであるn1に所定の電流が流れる電圧に調整されている。そのために、DHBの電圧=VHH−pa1の閾値電圧―pa2の閾値電圧となる。両方の閾値電圧がともにVthであれば、DHBの電圧=VHH−2×Vthとなる。VHH−2×Vth=VHD(例えば36.7V)となるMOSトランジスタが選択されている。この状態では、pMOSトランジスタであるpb3がオンするので、DHAの電圧=VHH(40V)となる。この状態では、pMOSトランジスタであるpb1,pb2,pa3と、高耐圧nMOSトランジスタであるnhbはオフしている。
上記によって、電圧レベル変換回路Dによって、図5に示した、GRDとVDDの間で反転する電圧DA,DBから、VHDとVHHの間で反転する電圧DHA,DHBが生成されることが確認される。
【0012】
図9は、静電容量型アクチュエータがm行×n列に配置されているアクチュエータアレイの駆動回路を示している。データ線IN1,IN2,・・INnは、nビットレジスタに接続されている。選択線WR1,WR2,・・Wrmは、mビットレジスタに接続されている。データ線と選択線の交点ごとに、単位回路K11,K12,・・K1n,K21,・・・Kmnが配置されている。それぞれの単位回路Kは、図6に示した1ビットメモリH,図8に示した電圧レベル変換回路D、図4図5図7に示した電圧印加回路Jで構成されている。なお本明細書では、行番号と列番号を示す添え字を省略して説明する事象は、行番号や列番号と無関係に共通する事象であることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005―257804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の技術では、データ線INと選択線WRの交点ごとに電圧レベル変換回路Dを必要とする。図8に示した電圧レベル変換回路Dを構成するMOSトランジスタであるnhaとnhbのソース・ドレイン間にはVHH(例えば40V)の電位差が加えられる。論理回路で汎用されるトランジスタの場合、ソース・ドレイン間に加えられる電圧はVDD(例えば3.3V)である。本明細書では、ソース・ドレイン間に加えられる電圧がVDD以下に制約されている場合に利用されるトランジスタを低耐圧トランジスタといい、ソース・ドレイン間にVHHの電圧が加えられる場合に利用されるトランジスタを高耐圧トランジスタという。図8に示すように、電圧レベル変換回路Dは2個の高耐圧トランジスタを必要とする。高耐圧トランジスタは、耐圧を確保するために、低耐圧トランジスタに比して非常に大きくなる。従来の技術では、大きな高耐圧トランジスタを、2×m×n個も必要とする。
本明細書では、大きな高耐圧トランジスタの必要数を減少する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書で開示する駆動回路は、複数個の電極対が行列に沿って配置されている静電容量型アクチュエータを駆動する。一つの実施例では、各電極対の一方の電極が、pMOSトランジスタを介して電源電圧VHHに接続されているとともにnMOSトランジスタを介して接地電圧GRDに接続されている。各電極対の他方の電極は接地電圧GRDに接続されている。各電極対に対応して、選択線とデータ線に接続されているメモリが配置されている。各電極対に対応するメモリからの出力線が当該電極対に対応するnMOSトランジスタのゲートに接続されている。その一方において、pMOSトランジスタのゲートには、メモリの記憶内容に依らない電圧が印加されている。pMOSトランジスタのゲートには、メモリの記憶内容に依らないで、ソース・ドレイン間が適当な抵抗値を持って導通する電圧を加える。
【0016】
図4図5に示す電圧印加回路において、pMOSトランジスタ6,6A,6Bが適当な抵抗値を持って導通していると、nMOSトランジスタ8,8A,8Bのオン・オフによって電極対に電圧を加えるか加えないかを制御することができる。例えば、図4のnMOSトランジスタ8がオフすれば電極aの電圧を電源電圧VHHに等しくすることができ、図5のnMOSトランジスタ8Aがオフすれば電極aの電圧を電源電圧VHHに等しくすることができ、図5のnMOSトランジスタ8Bがオフすれば電極bの電圧を電源電圧VHHに等しくすることができる。その一方において、nMOSトランジスタ8,8A,8Bのオン抵抗が低いことから、図4のnMOSトランジスタ8がオンすれば電極aの電圧を接地電圧にほぼ等しくすることができ、図5のnMOSトランジスタ8Aがオンすれば電極aの電圧を接地電圧にほぼ等しくすることができ、図5のnMOSトランジスタ8Bがオンすれば電極bの電圧を接地電圧にほぼ等しくすることができる。
nMOSトランジスタがオンすると、pMOSトランジスタとnMOSトランジスタの直列回路に電流が流れ、消費電力の増大を招く。しかしながら、この問題は、pMOSトランジスタのオン抵抗を調整することでチューニングすることができる。pMOSトランジスタのオン抵抗が高くなるゲート電圧を加えれば、電力消費を抑制できる反面、電極対A,B等に所定の電圧が作用するまでに充電するのに要する時間が長くなる。pMOSトランジスタのオン抵抗が低くなるゲート電圧を加えれば、電極対A,B等に所定の電圧が作用するまでに充電するのに要する時間を短縮できるが、電力消費が増大する。応答性と電力消費量が両立するゲート電圧に調整することができる。
【0017】
上記では、プラスの電源電圧を用いる場合を説明した。これに代えて、マイナスの電源電圧を用いることもできる。マイナスの電源電圧を用いる場合は、各電極対の一方の電極を、pMOSトランジスタを介して接地電圧に接続するとともにnMOSトランジスタを介してマイナスの電源電圧に接続する。また各電極対の他方の電極を接地電圧に接続する。マイナスの電源電圧を用いる場合は、接地電圧に接続されるpMOSトランジスタの閾値電圧が接地電圧に近く、メモリからの出力電圧でオン・オフを制御できるのに対し、マイナスの電源電圧に接続されるnMOSトランジスタの閾値電圧は接地電圧から大きく離れており、メモリからの出力電圧ではオン・オフを制御することができない。従来技術によると、nMOSトランジスタのオン・オフを制御するために、メモリが出力する電圧のレベルを変換する回路を必要とする。本明細書に開示する技術では、マイナスの電源電圧を用いる場合は、nMOSトランジスタのゲートに、メモリの記憶内容に依らない電圧を印加する。nMOSトランジスタのゲートに、ソース・ドレイン間が適当な抵抗値を持って導通する電圧を加える。
プラスの電源電圧を用いる場合もマイナスの電源電圧を用いる場合も、電極対の一方の電圧は、pMOSトランジスタを介して高圧側電源電圧に接続するとともにnMOSトランジスタを介して低圧側電源電圧に接続する。プラスの電源電圧を用いる場合は、プラスの電源電圧が高圧側電源電圧であり、接地電圧が低圧側電源電圧である。マイナスの電源電圧を用いる場合は、接地電圧が高圧側電源電圧であり、マイナスの電源電圧が低圧側電源電圧である。電極対の他方の電極は、接地電圧に接続する。接地電圧に接続されているMOSトランジスタ(プラスの電源電圧の場合はnMOSトランジスタであり、マイナスの電源電圧の場合はpMOSトランジスタである)のゲートには、メモリからの出力線を接続する。それに対して電源電圧に接続されているMOSトランジスタ(単に電源電圧に
接続されているという場合は、接地電圧ではない側の電源電圧に接続されていることをいう。すなわち、プラスの電源電圧の場合はプラスの電源電圧に接続されているpMOSトランジスタであり、マイナスの電源電圧の場合はマイナスの電源電圧に接続されているnMOSトランジスタである)のゲートには、メモリの記憶内容に依らない電圧(ソース・ドレイン間が適当な抵抗値を持って導通する電圧)を加える。
【0018】
電源電圧に接続されているMOSトランジスタのゲート電圧を常時一定に維持する技術でも成立するが、選択線の電位に連動して切り替えてもよい。選択線は同一行に配置されているn個のアクチュエータによって共有されており、各選択線に電圧切り替え回路を設けてもm個ですむ。n×m個の電圧レベル変換回路を用意する技術に比すと、高耐圧トランジスタの必要数を顕著に低減することができる。
選択線の電位に連動して電源電圧に接続されているMOSトランジスタのゲート電圧を切り替える場合、選択線に書き込みを指令する電圧が印加されているとソース・ドレイン間抵抗を低下させる電圧を出力し、選択線に保持を指令する電圧が印加されているとソース・ドレイン間抵抗を上昇させる電圧を出力する電圧切り替え回路を利用する。その電圧切り替え回路を各行に配置する。そして、その電圧切り替え回路で切り替えられた出力電圧を、電圧切り替え回路に対応する行のMOSトランジスタのゲートに印加する。
【0019】
上記構成を備えていると、選択線に書き込みを指令する電圧が印加されている行では、電源電圧に接続されているMOSトランジスタのソース・ドレイン間抵抗が低下する。電極対を高速に充電して短時間のうちに必要な電圧をかけることができる。アクチュエータの応答性を高速化することができる。選択線に保持を指令する電圧が印加されている行では、電源電圧に接続されているMOSトランジスタのソース・ドレイン間抵抗が上昇する。pMOSトランジスタとnMOSトランジスタの直列回路を流れる電流を減少させ、消費電力を減少させることができる。選択線の電位に連動して電源電圧に接続されているMOSトランジスタのゲート電圧を切り替える技術を併用すると、アクチュエータの応答性と電力消費量を両立させやすい。
【0020】
本明細書で開示する技術は、図4に示したように、一つのアクチュエータを一個の電極対で制御する場合にも有効であり、図5に示したように、一つのアクチュエータを二個の電極対で制御する場合にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施例の駆動回路の全体構成と単位回路の構成を示す。
図2】実施例の電圧印加回路の構成を示す。
図3】第2実施例の駆動回路の全体構成と単位回路の構成を示す。
図4】電圧印加回路の一例を示す
図5】電圧印加回路の他の例を示す。
図6】メモリの一例を示す。
図7】メモリHと電圧レベル変換回路Dと電圧印加回路Jの関係を示す。
図8】電圧レベル変換回路の回路構成を示す。
図9】従来の駆動回路の全体構成と単位回路の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
(第1特徴)
各単位回路に、VHH、VB、VDD,GRDの4本の電源線が接続されている。VBはpMOSトランジスタの閾値電圧にほぼ等しく、pMOSトランジスタのソース・ドレイン間が適当な抵抗値を持って導通する状態とするバイアス電圧である。VHH>VB>VDD>nMOSトランジスタの閾値電圧>GRDの関係にある。
(第2特徴)各々のアクチュエータに、二個の電極対(A側電極対とB側電極対)が配置されている。電圧印加回路は「A側電極対に電位差を加えてB側電極対に電位差を加えない第1状態」と「A側電極対に電位差を加えないでB側電極対に電位差を加える第2状態」を切り替える。傾斜可能な鏡にアクチュエータが付設されており、第1状態における鏡の傾斜角と第2状態における鏡の傾斜角が相違する。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
図1は、駆動回路の一実施例の全体構成と単位回路の構成を示している。参照符号Fは単位回路を示し、m行×n列のマトリクスの各交点に配置されている。各単位回路Fは、図示しない鏡(傾斜可能となっている)に対応している。m×n個の鏡がm行×n列のマトリクス状に配置されている。
各鏡に、二個の電極対(電極対Aと電極対B)が配置されている。電極対は図5に示したものと同様であり、図1では参照符号の記載が省略されている。単位回路Fは、「電極対Aに電位差を加えて電極対Bに電位差を加えない第1状態」と「電極対Aに電位差を加えないで電極対Bに電位差を加える第2状態」を切り替える。電極対に吸引力が作用するかしないかによって、鏡の傾斜角が変化する。第1状態における鏡の傾斜角と第2状態における鏡の傾斜角が相違する。
【0024】
従来の単位回路Kが電圧レベル変換回路Dを備えていたのに反し(図9参照)、図1の単位回路Fは電圧レベル変換回路Dを備えていない。単位回路Fの構成が単純化されている。
【0025】
動作状態を指令する行を選択するmビットデータを生成するmビットレジスタに、m本の選択線WR1,WR2・・が接続されている。mビットレジスタは、m本のうちの1本の選択線の電位を3.3V(VDDという)とし、他の選択線の電位をゼロV(GRDという)とする。mビットレジスタは、電位をVDDとする選択線を経時的にシフトしていく。例えば、1番選択線、2番選択線、・・・m番選択線、1番選択線といったようにスキャンしていく。
【0026】
図1に示すように、動作状態を指令するnビットレジスタに、n本のデータ線IN1,IN2・・,INnが接続されている。nビットレジスタは、例えば電極対Aに電位差を加えて電極対Bには電位差を加えないアクチェータに接続されているデータ線の電位を3.3V(VDDという)とし、電極対Aに電位差を加えないで電極対Bに電位差を加えるアクチェータに接続されているデータ線の電位をゼロV(GRDという)とする。電位差をA側に加えるかB側に加えるかを示すデータは、選択線にVDDが印加されている行のメモリHに記憶され、選択線にGRDが印加されている行のメモリHは、すでに記憶しているメモリ値を保持する。
【0027】
メモリHは、図6に示したものと同様であり、重複説明を省略する。メモリHは、DA端子とDB端子に、VDDまたはGRD電圧を出力する。選択線WRに書き込み用電圧(VDD)が印加されると、出力端子DAにデータ線INの電位が出力され、出力端子DBにはデータ線INの電位を反転した電位が出力される。選択線WRに非書き込み用電圧(GRD)が印加される間は、選択線WRが非書き込み用電圧(GRD)に反転する直前に出力していた電圧が出力されつづける。
【0028】
メモリHの出力端子DAの電位がVDDかGRDのいずれかであり、出力端子DBの電位がGRDかVDDのいずれかであると、nMOSトランジスタの閾値電圧がVDD〜GRDの間にあるために、メモリHの出力で直接的にnMOSトランジスタを制御することができる。図2は、電圧印加回路Jの詳細を示しており、メモリHの出力端子DAがnMOSトランジスタ8Aのゲートに直接に接続されており、メモリの出力端子DBがnMOSトランジスタ8Bのゲートに直接に接続されている。
【0029】
図7に示したように、従来の駆動回路では、pMOSトランジスタ6A,6Bのゲートには、メモリHの出力電圧を電圧レベル変換回路Dで変換した電圧が加えられていた。それに対して、本実施例ではバイアス電圧VBが印加される。バイアス電圧VBは、pMOSトランジスタ6A,6Bの閾値のレベルの近傍に設定されている。pMOSトランジスタのゲートにVHHが印加されていると、ソース・ドレイン間には電流が流れない。ゲート電圧を低下させていくと、あるゲート電圧において急速にソース・ドレイン間に電流が流れ始める。ソース・ドレイン間に急速に電流が流れ始めるときのゲート電圧を、ここでは閾値という。本実施例では、閾値>VBの関係に調整されている。
【0030】
ゲートにバイアス電圧VBが印加されたpMOSトランジスタは、ソース・ドレイン間に抵抗をもたらす。VBを調整することでその抵抗値を調整することができる。pMOSトランジスタ6A,6Bが抵抗を持っていると、図2の回路によって下記の現象が得られる。
【0031】
(1)nMOSトランジスタ8Aがオフし、nMOSトランジスタ8Bがオンしている期間。この状態では、電極対Aは充電され、電極対Bは放電する。電極対Aには吸引力が作用し、電極対Bには吸引力が作用しない。nMOSトランジスタ8Aがオフしてから電極対Aに電圧VHHが加わるまでには時間を要し、その時間はpMOSトランジスタ6Aの抵抗によって変化する。アクチュエータに高速応答性が要求される場合には、pMOSトランジスタ6Aが低抵抗となるバイアス電圧VBを選択する。ただし、pMOSトランジスタ6Aが低抵抗であると、電極対Aを充電する電流の他に、pMOSトランジスタ6AとnMOSトランジスタ8Aの直列回路を流れる貫通電流が増大し、電力消費量が増大する。アクチュエータに要求される応答性と、駆動回路に許容される電力消費量の両者を満たすバイアス電圧VBに調整すればよい。
(2)nMOSトランジスタ8Aがオンし、pMOSトランジスタ8Bがオフしている期間。この状態では、電極対Aは放電し、電極対Bは充電される。電極対Aには吸引力が作用せず、電極対Bには吸引力が作用する。応答性と電力消費量とバイアス電圧VBの関係は、先に説明したとおりである。
【0032】
図1図9と比較すると明らかに、従来の単位回路Kが電圧レベル変換回路Dを必要としていたのに対し、実施例の単位回路Fは電圧レベル変換回路を必要としない。両者はともに、VHH,VB、VDD、GRDの電源線を必要とする。必要な電源線の数は増加しない。
【0033】
(第2実施例)
前記したように、pMOSトランジスタのゲートに加えるバイアス電圧VBには、高すぎればアクチュエータの応答性が悪化し、低すぎれば消費電力が増大するという性質が存在している。第2実施例では、メモリの記憶内容を書き換える行のためのバイアス電圧VBを低下させることによって応答性を高め、記憶内容を保持する行のためのバイアス電圧VBを増大させることによって消費電力を低減する。アクチュエータをコントロールするMOSトランジスタのゲート電圧のレベルを切り替える点では従来と同じであるが、従来では行列の交点ごとに切り替えるのに対し、本実施例では行単位で切り替えることから、必要な高耐圧トランジスタの個数を顕著に減少させることができる。
【0034】
図3に示すように、本実施例の駆動回路は、電圧V1と電圧V2という2電圧を出力する電圧生成回路Pを利用する。電圧生成回路Pは、全部の選択線に共有される。電圧生成回路Pは一個あれば足りる。
電圧生成回路Pは、電源電圧VDDと接地電圧GRDの間に接続されている抵抗R1とnMOSトランジスタであるnh1の直列回路を備えている。nh1のドレインとゲートが接続されている。この構成によると、nh1のドレインとゲートの電圧は一定の電圧に調整される。その電圧は、抵抗R1によって決まる。抵抗がR1であれば、ドレイン等の電圧はV1となる。
同様に、電源電圧VDDと接地電圧GRDの間に、抵抗R2とnMOSトランジスタであるnh2が直列に接続されている。抵抗がR2であれば、nh2のドレイン等の電圧はV2となる。
【0035】
電源線VHH,VB,VDD,GRD等は、各交点に達するものであればよく、図1に示すように列方向に伸びていてもよいし、図3に示すように行方向に伸びていてもよい。本実施例では行方向に伸びている。
各行に、バイアス線VBに加える電圧を切り替える回路Qが配置されている。nMOSトランジスタであるnh3のゲートには選択線WRの電圧が印加され、nMOSトランジスタであるnh4のゲートには選択線WRの電圧を反転した電圧が印加される。選択線WRに書き込み電圧(VDD)が印加されていると、nMOSトランジスタであるnh3がオンしてnh4がオフし、nMOSトランジスタであるnh5のゲートに電圧V1が印加される。選択線WRに保持電圧(GRD)が印加されていると、nh3がオフしてnh4がオンし、nh5のゲートに電圧V2が印加される。
【0036】
電圧切り替え回路Qでは、電源電圧VHHと接地電圧GRDの間に、pMOSトランジスタであるph1とnMOSトランジスタであるnh5が直列に接続されている。ph1のソースとゲートが接続されている。
nh5のゲートに電圧V1が印加されると、nh5のソース・ドレイン間の抵抗が下がり、ph1とnh5の直列回路を流れる電流値が増大する。バイアス線VBの電圧VBは、VHHよりも低下する。nh5のゲートに電圧V2が印加されると、nh5のソース・ドレイン間抵抗が上がり、ph1とnh5の直列回路に流れる電流値が低下する。バイアス線VBの電圧VBはVHHに近くなる。nh5のゲートに電圧V2が印加されると、nh5がオフするようにしてもよい。この場合、バイアス線VBの電圧VBは、VHH>VB>閾値の関係となる。
【0037】
上記から、選択線WRの電位がVDDであってメモリHにデータを書き込む行では、バイアス線VBの電圧VBが低下し、図2のpMOSトランジスタの抵抗が低下し、電極対を充電する電流が大きくなり、短時間で電極対が所定の電圧に充電される。高速応答性を確保することができる。選択線WRの電位がGRDであってメモリHのデータを保持する行では、バイアス線VBの電圧VBが増大し、図2のpMOSトランジスタの抵抗が増大し、pMOSトランジスタとnMOSトランジスタの直列回路を流れる電流が抑制させる。消費電力を低減することができる。
本実施例によると、高速応答性と低消費電力化を両立させることができる。
バイアス線VBの電圧が、各交点に配置されている電極対(画素回路の電極対)のスイッチングによって変動することを抑制したい場合には、回路Qの電圧VBの出力部にインピーダンス変換のためのバッファアンプを挿入することが有効である。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
VHH,VDD,GRD:電源線
VB:バイアス線
VHH>VB>VDD>GRD
A:一方の電極対
B:他方の電極対
a:一方の電極
b:他方の電極
c:共通電極
F:単位回路
H:メモリ
J:電圧印加回路
IN:データ線
WR:選択線
DA:一方の電極対(A側)用のnMOSトランジスタのゲート電圧
DB:他方の電極対(B側)用のnMOSトランジスタのゲート電圧
VB:pMOSトランジスタのゲート電圧
P:電圧生成回路P
Q:電圧切り替え回路
2,4:反転回路
6:pMOSトランジスタ
8:nMOSトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9