(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[A.光導波路]
本発明の光導波路は、所定の水接触角を有するクラッド層と、少なくとも一面が露出するように該クラッド層に埋設されたコア層とを備える。本発明の光導波路の波長660nmにおける光損失(伝搬損失)は、例えば2.6dB/cm未満、好ましくは2.0dB/cm以下、より好ましくは1.5dB/cm以下である。光損失が当該範囲内であれば、後述するSPRセンサセルや比色センサセル等のセンサセルの検知部に好適に用いられ得る。光損失は、カットバック法によって測定される。
【0009】
図1は、本発明の好ましい実施形態による光導波路を説明する概略斜視図である。図示例において、光導波路100は、クラッド層11と、上面が露出するようにクラッド層11に埋設されたコア層12とから構成されており、平面視略矩形の平板状に形成されている。クラッド層の厚み(コア層上面からの厚み)は、例えば5μm〜400μmである。なお、図示例とは異なり、コア層は上面と下面とがクラッド層から露出していてもよい。
【0010】
クラッド層11は、好ましくはクラッド層形成樹脂と該クラッド層形成樹脂に分散された粒子とを含む。クラッド層中に粒子を分散させることにより、その表面を粗面
化できる。
【0011】
上記粒子としては、任意の適切な粒子が用いられ得る。例えば、粒子は、好ましくは1.40〜3.00、より好ましくは1.43〜2.60の屈折率を有する材料から形成される。このような材料を用いる場合、クラッド層の屈折率を所望の範囲に調整しやすいという利点がある。また例えば、粒子は、好ましくは0.1以下、より好ましくは0の消衰係数を有する材料から形成される。なお、本明細書において、屈折率は、波長830nmにおける屈折率を意味する。また、消衰係数は、波長830nmにおける消衰係数を意味する。
【0012】
粒子の形成材料の具体例としては、例えば、金属または無機酸化物が挙げられる。金属としては、チタン、タンタル、アルミニウム、亜鉛、クロム、鉄等が好ましく例示できる。また、無機酸化物としては、金属酸化物(例えば、酸化チタン(TiO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化クロム(Cr
2O
3)、酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化銅(CuO))および半金属酸化物(例えば、酸化ホウ素(B
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)、酸化ゲルマニウム(GeO
2))が好ましく例示できる。上記粒子としては、一種のみ用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
上記粒子の平均粒子径(φ)は、例えば10nm〜5μmである。平均粒子径の下限は、好ましくは200nm、より好ましくは300nmである。また、平均粒子径の上限は、好ましくは2.5μm、より好ましくは2.0μmである。このような平均粒子径であれば、光損失を抑制しつつ、クラッド層表面の水接触角を所望の範囲とすることができる。なお、本明細書において、平均粒子径は、メジアン径を意味する。クラッド層における上記粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定に基づいて、または、クラッド層断面のSEM画像を画像処理して粒径分布を求め、そこから得られる体積基準粒度分布に基づいて得ることができる。
【0014】
上記クラッド層形成樹脂としては、後述するコア層の屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド層を形成し得る任意の適切な樹脂が用いられる。具体例としては、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂およびこれらの変性体(例えば、フルオレン変性体、重水素変性体、フッ素樹脂以外の場合はフッ素変性体)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらは、好ましくは感光剤を配合して、感光性材料として用いられ得る。
【0015】
クラッド層形成樹脂の屈折率は、上記粒子の屈折率より低い。クラッド層形成樹脂の屈折率と粒子の屈折率との差は、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上、さらにより好ましくは、0.10以上である。
【0016】
クラッド層形成樹脂の屈折率は、好ましくは1.42以下であり、より好ましくは1.40未満であり、さらに好ましくは1.38以下である。
【0017】
クラッド層11における上記粒子の充填率は、例えば1%〜50%である。充填率の下限は、好ましくは2%、より好ましくは3%、さらに好ましくは5%である。また、充填率の上限は、好ましくは30%、より好ましくは25%である。このような充填率であれば、光損失を抑制しつつ、クラッド層表面の水接触角を所望の範囲とすることができる。
【0018】
クラッド層11の屈折率(N
CL)は、上記粒子の屈折率(N
PA)よりも低い。クラッド層の屈折率と粒子の屈折率との差(N
PA−N
CL)は、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上、さらにより好ましくは、0.10以上である。
【0019】
クラッド層11のコア層露出面における水接触角は、例えば80°以上であり、好ましくは85°以上110°未満、より好ましくは90°以上110°未満、さらに好ましくは95°以上110°未満である。水接触角が80°以上であれば、光導波路がセンサセルの検知部として用いられた場合に、繰り返し測定の精度が向上し得る。一方、水接触角が110°以上となると、コア層とクラッド層との界面に凹凸に起因する光損失が増大して当該効果が十分に得られない場合がある。当該水接触角は、JIS R3257に準拠して測定される値である。
【0020】
コア層12は、クラッド層11の幅方向および厚み方向の両方と直交する方向に延びる略角柱形状に形成され、クラッド層11の幅方向略中央部の上端部に埋設されている。コア層12の延びる方向が、光導波路内を光が伝播する方向となる。
【0021】
コア層12は、その上面がクラッド層11の上面と面一となるように配置されている。コア層の上面がクラッド層の上面と面一となるように配置することにより、後述するSPRセンサセルにおいて金属層をコア層の上側のみに効率よく配置することができる。さらに、コア層は、その延びる方向の両端面がクラッド層の当該方向の両端面と面一となるように配置されている。
【0022】
コア層12の屈折率(N
CO)は、用途等に応じて任意の適切な値に設定され得る。例えば、光導波路100がSPRセンサセルに適用される場合、コア層12の屈折率(N
CO)は、好ましくは1.43以下であり、より好ましくは1.40未満であり、さらに好ましくは1.38以下である。コア層の屈折率を1.43以下とすることにより、検出感度を格段に向上させることができる。コア層の屈折率の下限は、好ましくは1.34である。コア層の屈折率が1.34以上であれば、水溶液系のサンプル(水の屈折率:1.33)であってもSPRを励起することができ、かつ、汎用の材料を使用することができる。
【0023】
コア層12の屈折率(N
CO)は、クラッド層11の屈折率(N
CL)より高い。コア層の屈折率とクラッド層の屈折率との差(N
CO−N
CL)は、好ましくは0.010以上であり、より好ましくは0.020以上、さらに好ましくは0.025以上である。コア層の屈折率とクラッド層の屈折率との差がこのような範囲であれば、光導波路100をいわゆるマルチモードとすることができる。したがって、光導波路を透過する光の量を多くすることができ、後述するSPRセンサセルまたは比色センサセルに適用した場合に、S/N比を向上させることができる。また、コア層の屈折率とクラッド層の屈折率との差は、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下、さらに好ましくは0.050以下である。
【0024】
コア層12の厚みは、例えば5μm〜200μmであり、好ましくは20μm〜200μmである。また、コア層の幅は、例えば5μm〜200μmであり、好ましくは20μm〜200μmである。このような厚みおよび/または幅であれば、光導波路100をいわゆるマルチモードとすることができる。また、コア層12の長さ(導波路長)は、例えば2mm〜50mmであり、好ましくは10mm〜20mmである。
【0025】
コア層12を形成する材料としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な材料を用いることができる。例えば、クラッド層形成樹脂と同様の樹脂であって、屈折率がクラッド層よりも高くなるように調整された樹脂から形成され得る。
【0026】
なお、
図1では、コア層の数が1つとされているが、コア層の数は、目的に応じて変更してもよい。具体的には、コア層は、クラッド層の幅方向に所定の間隔を隔てて複数形成されてもよい。コア層の形状もまた、目的に応じて任意の適切な形状(例えば、半円柱形状、凸柱形状)を採用することができる。
【0027】
[B.SPRセンサセル]
図2は、本発明の好ましい実施形態によるSPRセンサセルを説明する概略斜視図である。
図3は、
図2に示すSPRセンサセルのIa−Ia線概略断面図である。
【0028】
SPRセンサセル200は、
図2および
図3に示すように、平面視略矩形の有底枠形状に形成されており、アンダークラッド層11と上面が露出するようにアンダークラッド層11に埋設されたコア層12とを備える光導波路100と、アンダークラッド層11とコア層12とを被覆する金属層20とを有する。光導波路100および金属層20は、サンプルの状態および/またはその変化を検知する検知部210として機能する。図示した形態においては、SPRセンサセル100は、検知部210に隣接するように設けられたサンプル配置部220を備える。サンプル配置部220は、オーバークラッド層30により規定されている。オーバークラッド層30は、サンプル配置部220を適切に設けることができる限りにおいて省略されてもよい。サンプル配置部220には、分析されるサンプル(例えば、溶液、粉末)が検知部(実質的には金属層)に接触して配置される。
【0029】
光導波路100は、上記A項で説明したとおりである。
【0030】
金属層20は、
図2および
図3に示すように、アンダークラッド層11およびコア層12の上面の少なくとも一部を均一に被覆するように形成されている。必要に応じて、アンダークラッド層およびコア層と金属層との間に易接着層(図示せず)が設けられ得る。易接着層を形成することにより、アンダークラッド層およびコア層と金属層とを強固に固着させることができる。
【0031】
金属層を形成する材料としては、金、銀、白金、銅、アルミニウムおよびこれらの合金が挙げられる。金属層は、単一層であってもよく、2層以上の積層構造を有していてもよい。金属層の厚み(積層構造を有する場合はすべての層の合計厚み)は、好ましくは20nm〜70nmであり、より好ましくは30nm〜60nmである。
【0032】
易接着層を形成する材料としては、代表的にはクロムまたはチタンが挙げられる。易接着層の厚みは、好ましくは1nm〜5nmである。
【0033】
オーバークラッド層30は、
図2に示すように、光導波路100の上面において、その外周が光導波路100の外周と平面視において略同一となるように、平面視矩形の枠形状に形成されている。光導波路100の上面とオーバークラッド層30とで囲まれる部分が、サンプル配置部220として区画されている。当該区画にサンプルを配置することにより、検知部210の金属層とサンプルとが接触し、検出が可能となる。さらに、このような区画を形成することにより、サンプルを容易に金属層表面に配置することができるので、作業性の向上を図ることができる。
【0034】
オーバークラッド層30を形成する材料としては、例えば、上記コア層およびアンダークラッド層を形成する材料、ならびにシリコーンゴムが挙げられる。オーバークラッド層の厚みは、好ましくは5μm〜2000μmであり、さらに好ましくは25μm〜200μmである。オーバークラッド層の屈折率は、好ましくは、コア層の屈折率よりも低い。1つの実施形態においては、オーバークラッド層の屈折率は、アンダークラッド層の屈折率と同等である。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施形態によるSPRセンサセルを説明してきたが、本発明はこれらに限定されない。例えば、SPRセンサセル200(サンプル配置部220)の上部には、蓋を設けてもよい。このような構成とすれば、サンプルが外気に接触することを防止することができる。また、サンプルが溶液である場合には、溶媒の蒸発による濃度変化を防止することができる。蓋を設ける場合には、液状サンプルをサンプル配置部へ注入するための注入口とサンプル配置部から排出するための排出口とを設けてもよい。このような構成とすれば、サンプルを流してサンプル配置部に連続的に供給することができるので、サンプルの特性を連続的に測定することができる。
【0036】
以下、このようなSPRセンサセル200の使用形態の一例を説明する。
【0037】
まず、サンプルをSPRセンサセル200のサンプル配置部220に配置し、サンプルと金属層20とを接触させる。次いで、任意の適切な光源からの光を、SPRセンサセル200(コア層12)に導入する。SPRセンサセル200(コア層12)に導入された光は、コア層12内において全反射を繰り返しながら、SPRセンサセル200(コア層12)を透過するとともに、一部の光は、コア層12の上面において金属層20に入射し、表面プラズモン共鳴により減衰される。SPRセンサセル200(コア層12)を透過して出射した光は、任意の適切な光計測器に導入される。すなわち、このSPRセンサセル200から光計測器に導入される光は、コア層12において表面プラズモン共鳴を発生させた波長の光強度が減衰している。表面プラズモン共鳴を発生させる波長は、金属層20に接触したサンプルの屈折率などに依存するので、光計測器に導入される光の光強度の減衰を検出することにより、サンプルの屈折率やその変化を検出することができる。
【0038】
[C.比色センサセル]
図4は、本発明の好ましい実施形態による比色センサセルを説明する概略斜視図である。
図5は、
図4に示す比色センサセルのIb−Ib線概略断面図である。
【0039】
比色センサセル300は、
図4および
図5に示すように、平面視略矩形の有底枠形状に形成されており、アンダークラッド層11と上面が露出するようにアンダークラッド層11に埋設されたコア層12とを備える光導波路100を有する。光導波路100は、サンプルの状態および/またはその変化を検知する検知部310として機能する。図示した形態においては、比色センサセル300は、検知部310(光導波路100)に隣接するように設けられたサンプル配置部320をさらに備える。サンプル配置部320は、オーバークラッド層30により規定されている。オーバークラッド層30は、サンプル配置部320を適切に設けることができる限りにおいて省略されてもよい。サンプル配置部320には、分析されるサンプル(例えば、溶液、粉末)が検知部に接触して配置される。また、図示しないが、上記B項に記載のSPRセンサセルと同様に、比色センサセル300(サンプル配置部320)の上部に蓋を設けてもよい。
【0040】
光導波路100は、上記A項で説明したとおりである。また、オーバークラッド層30は、上記B項で説明したとおりである。
【0041】
以下、このような比色センサセル300の使用形態の一例を説明する。
【0042】
まず、サンプルを比色センサセル300のサンプル配置部320に配置し、サンプルと検知部310(光導波路100)とを接触させる。次いで、任意の適切な光源からの光を、比色センサセル300(コア層12)に導入する。比色センサセル300(コア層12)に導入された光は、コア層12内において全反射を繰り返しながら、比色センサセル300(コア層12)を透過するとともに、一部の光は、エバネッセント波としてコア層12から染み出し、コア層12の上面において、サンプルに入射され、減衰される。比色センサセル300(コア層12)を透過して出射した光は、任意の適切な光計測器に導入される。すなわち、この比色センサセル300から光計測器に導入される光は、コア層12においてサンプルが吸収した波長の光強度が減衰している。サンプルが吸収する波長は、比色センサセル300に配置されたサンプルの色などに依存するため、光計測器に導入される光の光強度の減衰を検出することにより、サンプルの色やその変化を検出することができる。
【0043】
[D.製造方法]
本発明の光導波路の製造方法としては、任意の適切な方法が用いられ得る。本発明の光導波路の作製方法の具体例としては、
図6に示す方法や特開2012−215541号公報の
図3に記載されるような方法が挙げられる。
【0044】
図6に示す方法においては、まず、
図6(a)に示すように、コア層の形状に対応する凹部を有する鋳型50の表面上にコア層を形成する材料12’を配置する。次いで、
図6(b)に示すように、鋳型50表面に転写フィルム60を所定の方向に向かって押圧手段70で押圧しながら貼り合わせて、該凹部にコア層形成材料12’を充填しつつ余分なコア層形成材料12’を除去する。その後、
図6(c)に示すように、凹部内に充填されたコア層形成材料12’に紫外線を照射し、当該材料を硬化させて、コア層12を形成する。さらに、
図6(d)に示すように、転写フィルム60を鋳型50から剥離して、転写フィルム60上にコア層12を転写する。
【0045】
次いで、
図6(e)に示すように、クラッド層形成樹脂と任意に該樹脂中に分散された粒子とを含むクラッド層形成材料11’を、コア層12を覆うように塗布する。あるいは、図示例とは異なり、クラッド層形成材料11’を予め他の支持体(例えば、コロナ処理済のPETフィルム)上に塗布しておき、該クラッド層形成材料11’がコア層12を覆うように、該支持体と転写フィルム60とを貼り合わせてもよい。その後、
図6(f)に示すように、クラッド層形成材料11’に紫外線を照射し、当該材料を硬化させて、クラッド層11を形成する。その後、
図6(g)に示すように、転写フィルム60を剥離除去し、上下反転することにより、クラッド層11に埋設されたコア層12を有する光導波路が得られる。
【0046】
上記紫外線の照射条件は、材料の種類に応じて適切に設定され得る。必要に応じて、材料を加熱してもよい。加熱は、紫外線照射前に行ってもよく、紫外線照射後に行ってもよく、紫外線照射と併せて行ってもよい。また、クラッド層形成樹脂中に粒子を分散させる方法としては、任意の適切な方法が用いられ得る。
【0047】
本発明のSPRセンサセルおよび比色センサセルは、本発明の光導波路のコア露出面に、所望の構成部材(金属層、オーバークラッド層等)を形成することによって得られ得る。これらの形成方法としては、特開2012−107901号公報、特開2012−215541号公報等に記載の方法を用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0049】
<屈折率>
屈折率は、シリコンウェハの上に10μm厚の膜を形成し、プリズムカプラ式屈折率測定装置を用いて波長830nmで測定した。
【0050】
<充填率>
粒子の充填率は、以下の式によって算出した。
充填率(%)=((粒子混合率(wt%)/かさ比重(g/mL))/(100+粒子混合率(wt%)))×100
【0051】
<かさ比重>
粒子のかさ比重は、既知の体積(mL)を有するカップに粒子を入れて、該粒子の重量(g)を測定し、粒子重量をカップ体積で除することにより算出した。
【0052】
<平均粒子径>
レーザー回折散乱式粒度分布測定によってメジアン径を算出して、平均粒子径とした。
【0053】
<水接触角>
JIS R3257に準拠して、自動接触角計(協和界面科学(株)社製、型番「Drop Master500」)を用いてクラッド層上面(コア層露出面)の水接触角を測定した。
【0054】
<実施例1>
図6に示すような方法で光導波路フィルムを作製した。具体的には、表面に幅50μmおよび厚み(深さ)50μmのコア層形成用の凹部が形成された鋳型(長さ200mm、幅200mm)の該表面にコア層形成材料を滴下した。該鋳型の表面に片面をコロナ処理したPPフィルム(厚み:40μm)のコロナ処理面の片端を当接させ、他端は反らせた状態とした。この状態で、鋳型とPPフィルムとの当接部位にPPフィルム側からローラを押し当てながら他端側に向かってローラを回転させて両者を貼り合わせた。これにより、鋳型の凹部内にコア層形成材料を充填し、余分なコア層形成材料を押し出した。次いで、得られた積層体に対し、PPフィルム側から紫外線を照射し、コア層形成材料を完全に硬化させてコア層(屈折率:1.384)を形成した。なお、コア層形成材料は、フッ素系UV硬化型樹脂(DIC社製、商品名「OP38Z」)60重量部とフッ素系UV硬化型樹脂(DIC社製、商品名「OP40Z」)40重量部とを攪拌溶解させて調製した。次いで、鋳型からPPフィルムを剥離して、該フィルム上に厚み50μm、幅50μmの略角柱形状のコア層を転写した。
【0055】
上記PPフィルム上に、コア層を被覆するようにクラッド層形成材料を塗布した。なお、クラッド層形成材料は、フッ素系UV硬化型樹脂(ソルベイスペシャルティポリマージャパン社製、商品名「Fluorolink MD700」、屈折率:1.348)93.5重量部とシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC1500‐SMJ)、屈折率1.45)6.5重量部とを混合して調製した。このとき、コア層表面(上面)からの厚みが100μmになるように塗布した。次いで、紫外線を照射し、クラッド層形成材料を硬化させて、クラッド層を形成した。その後、PPフィルムを剥離除去し、クラッド層およびコア層を上下反転させた。以上のようにして、クラッド層に埋設されたコア層を有する光導波路フィルムを作製した。
【0056】
<実施例2>
クラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を10重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0057】
<実施例3>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC2500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を0.6重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0058】
<実施例4>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC2500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を2.5重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0059】
<実施例5>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC2500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を5重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0060】
<実施例6>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC2500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を10重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0061】
<実施例7>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC2500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を26重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
<実施例8>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC5500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を0.8重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0062】
<実施例9>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC5500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を2重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0063】
<実施例10>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC5500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を5重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0064】
<実施例11>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC5500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を10重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0065】
<実施例12>
異なるシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名「AEROSIL R974」、屈折率1.45)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を2.6重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0066】
<実施例13>
異なるシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名「AEROSIL R974」、屈折率1.45)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を5重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0067】
<実施例14>
異なるシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、商品名「SYLOPHOBIC507」、屈折率1.45)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を3.2重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0068】
<実施例15>
異なるシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、商品名「SYLOPHOBIC702」、屈折率1.45)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を4重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0069】
<実施例16>
異なるシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、商品名「SYLOPHOBIC702」、屈折率1.45)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を7.2重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
<実施例17>
異なるシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、商品名「SYLOPHOBIC702」、屈折率1.45)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を25重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0070】
<実施例18>
チタニア粒子(堺化学工業株式会社製、商品名「SRD 02−W」、結晶相:ルチル型、屈折率2.72)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を2重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0071】
<比較例1>
クラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を0重量%にしたこと(すなわち、シリカ粒子を用いなかったこと)以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0072】
<比較例2>
異なるシリカ粒子(株式会社アドマテック製、商品名「アドマファイン SC2500‐SMJ」)を用いたことおよびクラッド層形成材料におけるシリカ粒子の混合率を0.3重量%にしたこと以外は実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
【0073】
<測定値のバラツキ評価>
上記実施例および比較例で得られた各光導波路フィルムを長さ22.25mm×幅20mmにダイシング切断した。次いで、コア層露出面に長さ6mm×幅1mmの開口部を有するマスクを介して、クロムおよび金を順にスパッタリングし、コア層を覆うように易接着層(厚み:1nm)および金属層(厚み:50nm)を順に形成した。最後に、フッ素系UV硬化型樹脂(ソルベイスペシャルティポリマージャパン社製、商品名「Fluorolink MD700」)を用い、アンダークラッド層を形成したのと類似の方法で、枠形状のオーバークラッド層を形成した。このようにして、
図2および
図3に示すSPRセンサセルと同様のSPRセンサセルを作製した。なお、オーバークラッド層によって規定されたサンプル配置部の水平断面積は24mm
2(8mm×3mm)であった。
【0074】
上記で得られたSPRセンサセルのサンプル配置部にサンプルとして10%エチレングリコール水溶液を1μL配置し、コア層の一方の端部にマルチモード光ファイバ(φ50μm)を介してハロゲン光源(オーシャンオプティクス社製、商品名「HL−2000−HP」、白色光)からの白色光を入射させた。また、コア層の他方の端部にマルチモード光ファイバ(φ50μm)を介してパワーメーターを接続し、出射した光の強度(μW)を測定した。
【0075】
上記測定を測定毎にサンプル配置部に配置するサンプルを新たなサンプル(10%エチレングリコール水溶液)に交換しながら10回繰り返した。得られた光強度の最大値と最小値との差を測定のバラツキとした。評価結果を光導波路の各種特性とともに表1に示す。
【表1】
【0076】
表1から明らかなように、実施例の光導波路を用いたSPRセンサセルは、繰り返し測定を行った場合でも出射光強度のバラツキが比較例の光導波路を用いたSPRセンサセルと比べて低減されてい
る。