(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロイコ染料と顕色剤を含有する感熱発色層を支持基材上に有する感熱記録媒体であって、前記感熱発色層中に、アセトアセチル基及びスルホン酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含有するとともに、上記アセトアセチル基及びスルホン酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂がグリオキシル酸塩により架橋されていることを特徴とする感熱記録媒体。
ロイコ染料と顕色剤を含有する感熱発色層を支持基材上に有する感熱記録媒体であって、前記感熱発色層中に、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂とスルホン酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂とを含有するとともに、上記アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂がグリオキシル酸塩により架橋されていることを特徴とする感熱記録媒体。
前記アセトアセチル基及びスルホン酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂の、アセトアセチル基の含有量が0.1〜20モル%であり、スルホン酸基の含有量が1〜20モル%である請求項1記載の感熱記録媒体。
前記アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂の、アセトアセチル基の含有量が0.1〜20モル%であり、前記スルホン酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂の、スルホン酸基の含有量が1〜20モル%である請求項2記載の感熱記録媒体。
ロイコ染料、顕色剤、アセトアセチル基及びスルホン酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂、グリオキシル酸塩、および水を含有することを特徴とする感熱発色層形成用塗工液。
ロイコ染料、顕色剤、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂、スルホン酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂、グリオキシル酸塩、および水を含有することを特徴とする感熱発色層形成用塗工液。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の感熱記録媒体および感熱発色層形成用塗工液について詳細に述べる。
まず、本発明の感熱発色層形成用塗工液について詳細に説明し、その後、本発明の感熱発色層形成用塗工液を用いて得られる感熱記録媒体について説明する。
本発明の感熱発色層形成用塗工液は、アセトアセチル基及びスルホン酸基を有するPVA系樹脂、もしくは、アセトアセチル基を有するPVA系樹脂とスルホン酸基を有するPVA系樹脂とを併用したものと、ロイコ染料、顕色剤
、グリオキシル酸塩、および水を含有する
。
【0016】
〔アセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂〕
本発明で用いられるアセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂は、酢酸ビニルをケン化して得られるビニルアルコール単位を主要構造単位とし、ケン化されずに残った酢酸ビニル単位と共に、アセトアセチル基を含有する構造単位、および/又はスルホン酸基を含有する構造単位を有するものである。かかるアセトアセチル基を含有する構造単位としては、例えば一般式(1)で表すことができる。
【0018】
本発明で用いられるPVA系樹脂の、アセトアセチル基の含有量(すなわち変性度)は、0.1〜20モル%、さらには0.5〜15モル%、特には1〜10モル%であることが好ましい。かかるアセトアセチル基の変性度が小さすぎると、耐光性が充分に得られない傾向があり、変性度が多すぎると、製造が困難となる傾向がある。
また、本発明で用いられるPVA系樹脂の、スルホン酸基の含有量は、1〜20モル%、さらには1〜10モル%、特には1〜5モル%であることが好ましい。かかるスルホン酸基の変性度が小さすぎると、顕色剤の微粒子安定化効果が低下する傾向があり、変性度が多すぎると、製造が困難となる傾向がある。
【0019】
本発明で用いられるアセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂の、JIS K6726に準拠して測定した20℃における4質量%水溶液の粘度(本発明の感熱発色層形成用塗工液の粘度)は、1.5〜10mPa・s、さらには2.0〜6.0mPa・s、特には2.5〜4.0mPa・sであることが好ましい。また、平均重合度(JIS K6726に準拠)は、通常300〜4000、特に400〜3500、さらに500〜3000のものが好適に用いられる。かかる粘度及び平均重合度が低すぎると、顕色剤の微粒子安定化効果が低下する傾向があり、高すぎると、分散力が低下する傾向がある。なお、かかる4質量%水溶液粘度は、PVA系樹脂の分子量の指標として広く用いられているものである。
【0020】
また、かかるPVA系樹脂のケン化度は、通常は75〜99モル%、さらには80〜95モル%、特には85〜90モル%であることが好ましい。かかるケン化度が低すぎると、水への溶解性が低下する傾向があり、ケン化度が高すぎると、顕色剤等に対する分散力が低下する傾向がある。
【0021】
本発明で用いられるアセトアセチル基及びスルホン酸基を有するPVA系樹脂の製造方法は、例えば、共重合によって両官能基を同時に導入する方法、一方の官能基を有するPVAを共重合等によって製造した後、他方の官能基を導入する方法などが挙げられる。中でも、スルホン酸基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をケン化し得られたスルホン酸基含有PVA系樹脂に、後変性によりアセトアセチル基を導入する製造方法が好ましく用いられる。
【0022】
以下に、共重合によりスルホン酸基を有するPVA系樹脂を製造し、かかるPVA系樹脂に後変性によりアセトアセチル基を含有させる製造方法を説明する。
【0023】
スルホン酸基を有するPVA系樹脂は、一般的にはビニルエステル系単量体とスルホン酸基を有する単量体を共重合し、得られた共重合体をケン化して得ることができる。
かかるビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。なかでも、経済的な点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0024】
スルホン酸基を有する単量体としては例えば、(I)下記一般式(2)で表されるオレフィンスルホン酸、(II)下記一般式(3)、(4)で表されるスルホアルキルマレート、(III)下記一般式(5)、(6)、(7)で表されるスルホアルキル(メタ)アクリルアミド、(IV)下記一般式(8)で表されるスルホアルキル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0029】
上記のオレフィンスルホン酸の具体例としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩を挙げることができる。
また、上記のスルホアルキルマレートとして具体的には、ナトリウムスルホプロピル−2−エチルヘキシルマレート、ナトリウムスルホプロピル−2−エチルヘキシルマレート、ナトリウムスルホプロピルトリデシルマレート、ナトリウムスルホプロピルエイコシルマレート等が挙げられる。
また、上記のスルホアルキル(メタ)アクリルアミドとして具体的には、ナトリウムスルホメチルアクリルアミド、ナトリウムスルホt−ブチルアクリルアミド、ナトリウムスルホS−ブチルアクリルアミド、ナトリウムスルホt−ブチルメタクリルアミド等が挙げられる。
さらに、上記のスルホアルキル(メタ)アクリレートとして具体的には、ナトリウムスルホエチルアクリレート等が挙げられる。共重合により導入する場合、上記スルホン酸基を有する単量体の中でもオレフィンスルホン酸、又はその塩が好適に使用される。
【0030】
また、本発明においては、上記の共重合成分以外にも本発明の目的を阻害しない範囲において、他の単量体を0.1〜10モル%程度共重合させることも可能で、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;ジメチルアリルビニルケトン;N−ビニルピロリドン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル;ポリオキシエチレンビニルエーテル;ポリオキシプロピレンビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルアミン;ポリオキシプロピレンアリルアミン;ポリオキシエチレンビニルアミン;ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
【0031】
さらに、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有単量体;アセトアセチル基含有単量体;3,4−ジアセトキシ−1−ブテン;1,4−ジアセトキシ−2−ブテン;エチレンカーボネート;ビニルエチレンカーボネート;グリセリンモノアリルエーテル;酢酸イソプロペニル;1−メトキシビニルアセテート等も挙げられる。
【0032】
中でも、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン類を共重合成分として得られる、α―オレフィン−ビニルアルコール共重合体は、乳化力向上や水溶液の粘度安定性の点で好ましく、かかるα―オレフィンの好ましい含有量は0.1〜10モル%である。
【0033】
上記のビニルエステル系単量体とスルホン酸基を有する単量体を共重合する方法としては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
共重合時の単量体成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用される。
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(単量体)=0.01〜10(質量比)、好ましくは0.05〜3(質量比)程度の範囲から選択される。
【0034】
共重合に当たっては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やアゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル等の低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられる。重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系単量体に対して0.01〜1.0モル%が好ましく、特には0.02〜0.5モル%が好ましい。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により30℃〜沸点程度で行われ、より具体的には、35〜150℃、好ましくは40〜75℃の範囲で行われる。
【0035】
得られた共重合体は、次いでケン化される。かかるケン化は、上記で得られた共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は、系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60質量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒;硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
【0036】
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系単量体及び一般式(2)〜(8)で示される化合物の合計量1モルに対して0.1〜30ミリモル、好ましくは2〜15ミリモルの割合が適当である。
また、ケン化反応の反応温度は、10〜60℃、特には20〜50℃であることが好ましい。
【0037】
次に、上記スルホン酸基を有するPVA系樹脂に後反応によってアセトアセチル基を導入する方法について説明する。
かかる後反応によるアセトアセチル基の導入は、PVA系樹脂にジケテンを反応させることによって水酸基をアセト酢酸エステル化することによって行われる。
かかるアセトアセチル化反応は、例えばDMSO(ジメチルスルホキシド)等の溶媒にスルホン酸基を有するPVA系樹脂を均一に溶解して行う均一反応や、固体状のPVA系樹脂に液状、あるいは気体状のジケテンを反応させる不均一反応によって行うことができるが、工業的には反応後の生成物の分離、洗浄等が容易である点から、後者の不均一系の反応が好ましく用いられる。
【0038】
なお、かかる不均一反応に用いるスルホン酸基を有するPVA系樹脂はジケテンが均一に吸着・吸収され、均一に反応し、反応率が向上するために、粉末状、とりわけ粒径分布が狭いものが好ましい。粒度としてはJIS標準篩にて、7メッシュパス〜450メッシュオン、さらには、10メッシュパス〜450メッシュオン、特には10メッシュパス〜320メッシュオンのものが好ましい。
【0039】
また、該スルホン酸基を有するPVA系樹脂には製造工程中のアルコール類、エステル類及び水分を数%含んでいる場合があり、これらの成分中にはジケテンと反応して、ジケテンを消費し、ジケテンの反応率を低下させるものがあるので、反応に供する際には、加熱、減圧操作を行うなどして可及的に減少させてから使用することが望ましい。
【0040】
スルホン酸基を有するPVA系樹脂粉末とジケテンを反応させる方法としては、該PVA系樹脂とガス状あるいは液状のジケテンを直接反応させても良いし、有機酸を該PVA系樹脂粉末に予め吸着吸蔵させた後、不活性ガス雰囲気下で液状又はガス状のジケテンを噴霧、反応するか、またはスルホン酸基を有するPVA系樹脂粉末に有機酸と液状ジケテンの混合物を噴霧、反応するなどの方法が用いられる。
中でも、PVA系樹脂に有機酸を吸着吸蔵させる方法を用いることにより、ジケテンがPVA系樹脂の内部に速やかに浸透することから、かかる方法が好ましく用いられる。
【0041】
かかる有機酸としては酢酸が最も好ましいが、これのみに限られるものではなく、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等も任意に使用される。
有機酸の量は反応系内のスルホン酸基を有するPVA系樹脂粉末が吸着及び吸蔵しうる限度内の量、換言すれば反応系の該樹脂と分離した有機酸が存在しない程度の量が好ましく、変性量あるいはPVA系樹脂の結晶化度を考慮して添加量を決める必要があるが、具体的には、該PVA系樹脂100重量部に対して0.1〜80重量部、好ましくは、0.5〜50重量部、特に好ましくは5〜20重量部の有機酸を共存させるのが適当である。有機酸の量が少なすぎると有機酸を共存させる効果が得難く、一方有機酸が過剰に存在すると反応後の有機酸の除去に多量の洗浄溶剤が必要となり、経済的ではない。
【0042】
有機酸をスルホン酸基を有するPVA系樹脂に均一吸着、吸蔵するには、有機酸を単独で該PVA系樹脂に噴霧する方法、適当な溶剤に有機酸を溶解しそれを噴霧する方法等、任意の手段が実施可能である。
【0043】
スルホン酸基を有するPVA系樹脂とジケテンとの反応条件としては、該PVA系樹脂粉末に液状ジケテンを噴霧等の手段によって均一に吸着、吸収させる場合は、不活性ガス雰囲気下、温度10〜120℃に加温し、所定の時間撹拌あるいは流動状態を継続することが好ましい。
【0044】
またジケテンガスを反応させる場合、接触温度は20〜250℃、好ましくは、40〜200℃であり、ガス状のジケテンがスルホン酸基を有するPVA系樹脂との接触時に液化しない温度とジケテン分圧条件下に接触させることが好ましいが、一部のガスが液滴となることは、なんら支障はない。
接触時間は接触温度に応じて、即ち温度が低い場合は時間が長く、温度が高い場合は、時間が短くてよいのであって、1分〜6時間の範囲から適宜選択する。
【0045】
ジケテンガスを供給する場合には、ジケテンガスそのままか、ジケテンガスと不活性ガスとの混合ガスでも良く、スルホン酸基を有するPVA系樹脂に該ガスを吸収させてから昇温しても良いが、該樹脂を加熱しながら、加熱した後に該ガスを接触させるのが好ましい。
【0046】
かかる反応の触媒としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、第一アミン、第二アミン、第三アミンなどの塩基性化合物が有効であり、スルホン酸基を有するPVA系樹脂に対し0.1〜10重量%である。なお、PVA系樹脂は、通常製造時の副生成物として酢酸ナトリウムを含んでおり、それを利用することも可能である。また、触媒量が多すぎるとジケテンの副反応が起こりやすく好ましくない。
【0047】
また、反応装置としては、加温可能で撹拌機の付いた装置が用いられる。例えば、ニーダー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、その他各種ブレンダー、撹拌乾燥装置である。
【0048】
本発明では、上記のようにして調製された、アセトアセチル基及びスルホン酸基の両官能基を併せ持つPVA系樹脂に代えて、アセトアセチル基を有するPVA系樹脂とスルホン酸基を有するPVA系樹脂とを併用したものを用いることができる。すなわち、上記のように各官能基を個別に有するPVA系樹脂を併用した場合でも、アセトアセチル基及びスルホン酸基の両官能基を併せ持つPVA系樹脂と同じく、本発明に要求される分散性向上効果や紫外線吸収性向上効果を得ることができるからである。PVA系樹脂への、アセトアセチル基またはスルホン酸基の導入方法は、先に述べた、両官能基を併せ持つPVA系樹脂の製造方法に記載の導入方法に準ずる。また、上記のようにアセトアセチル基を有するPVA系樹脂とスルホン酸基を有するPVA系樹脂とを併用する場合、本発明に要求される分散性向上効果や紫外線吸収性向上効果を得る観点から、アセトアセチル基を有するPVA系樹脂100重量部に対し、スルホン酸基を有するPVA系樹脂を10〜200重量部、好ましくは30〜150重量部、特に好ましくは50〜100重量部の割合で併用させるのが適当である。
【0049】
また、本発明では、一つの分子中にアセトアセチル基とスルホン酸基を併せ持つPVA系樹脂のほうが、両官能基が互いの働きを阻害するといったことが殆どなく作用するため、上記のように各官能基を個別に有するPVA系樹脂を併用したものよりも、本発明に要求される分散性向上効果や紫外線吸収性向上効果は高いが、製造コストの点では、各官能基を個別に有するPVA系樹脂を併用したもののほうが有利である。
【0050】
〔ロイコ染料〕
本発明の感熱発色層形成用塗工液に含有されるロイコ染料は、一般的に無色あるいは淡色で、水に不溶の電子供与体の化合物であり、加熱時に電子受容体である顕色剤と反応して発色する化合物であって、公知のものを用いることが可能である。
具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタル・バイオレット・ラクトン)、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス−(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド等のトリアリールメタン系化合物;4,4’−ビスジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン等のジフェニルメタン系化合物;ローダミンB−アニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−エチル−トリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−シクロヘキシル−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(β−エトキシエチル)アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(γ−クロロプロピル)アミノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等のキサンテン系化合物;ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等のチアジン系化合物;3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルスルピロ−ジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシ−ベンゾ)−スピロピラン等のスピロ系化合物等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上の混合物として用いられる。これらのロイコ染料は、感熱記録媒体の用途により適宜選択して使用される。
【0051】
〔顕色剤〕
本発明の感熱発色層形成用塗工液に含有される顕色剤は、加熱時に前記ロイコ染料とともに溶融し、ロイコ染料と反応して発色させる、水に不要な電子受容体酸性物質であり、フェノール誘導体や芳香族カルボン酸誘導体が挙げられる。フェノール誘導体としては、p−オクチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチル−ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、ブチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセテート、ジヒドロキシジフェニルエーテルが挙げられ、芳香族カルボン酸誘導体としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、これら芳香族カルボン酸の多価金属塩等が挙げられる。市販の顕色剤としては、例えば日本曹達社製のα−{4−〔(ヒドロキシフェニル)スルホニル〕フェニル}−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレンオキシ−p−フェニレン) (商品名:D−90)、4−(4−イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノール(商品名:D−8)、日華化学社製の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(商品名:BPS−P(T))が挙げられる。
【0052】
〔グリオキシル酸塩〕
本発明の感熱発色層形成用塗工液
に含有されるグリオキシル酸塩は、アセトアセチル基を有するPVA系樹脂に対し、架橋剤として作用する。そして、PVA系樹脂がグリオキシル酸塩により架橋されていると、かかる架橋構造体が、紫外線による顕色剤等の構造変化を防止し、更に耐水性向上にも寄与するため、好ましい。
かかるグリオキシル酸塩としては、グリオキシル酸の金属塩やアミン塩などが挙げられ、金属塩としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属、その他の亜鉛、アルミニウムなどの金属とグリオキシル酸の金属塩、また、アミン塩としては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなどのアミン類とグリオキシル酸の塩が挙げられる。
特に、耐水性に優れる架橋高分子が得られる点から金属塩、特にアルカリ金属、およびアルカリ土類金属の塩が好ましく用いられる。
【0053】
かかるグリオキシル酸塩の含有量は、アセトアセチル基を有するPVA系樹脂100重量部に対して通常0.005〜30重量部、好ましくは0.01〜20重量部、特に好ましくは0.05〜15重量部である。かかる含有量が多すぎると耐水性が低下する傾向があり、少なすぎると本願の効果が充分に得られない傾向がある。
更に、本発明のPVA系樹脂のアセトアセチル基1モルに対し、グリオキシル酸塩の反応性基は通常0.05〜2モル、好ましくは0.5〜1.5モル、特に好ましくは、0.1〜1モルである。かかる含有量が多すぎると耐水性が低下する傾向があり、少なすぎると本願の効果が充分に得られない傾向がある。
【0054】
グリオキシル酸塩の製造法は、公知の方法を用いることができるが、例えば、(1)グリオキシル酸の中和反応による方法、(2)グリオキシル酸と酸解離定数がグリオキシル酸より大きい酸の塩との塩交換反応による方法、(3)グリオキシル酸エステルのアルカリ加水分解による方法(例えば、特開2003−300926号公報参照。)などを挙げることができる。特に、グリオキシル酸との中和反応に用いるアルカリ性化合物の水溶性が高い場合は(1)の方法が、また得られるグリオキシル酸塩の水溶性が低く、酸解離定数がグリオキシル酸より大きい酸の塩の水溶性が高い場合は(2)の方法が好ましく用いられる。
【0055】
なお、(1)の方法は通常、水を媒体として行われ、グリオキシル酸とアルカリ性化合物、例えば、各種金属の水酸化物やアミン化合物を水中で反応させ、析出したグリオキシル酸塩を濾別し、乾燥して製造することができる。
また、(2)の方法も一般的に水中で行われ、(1)の方法と同様にしてグリオキシル酸塩を得ることができる。なお、(2)の方法において用いられるグリオキシル酸より解離定数が大きい酸の塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0056】
また、グリオキシル酸塩を合成したのち、これを単離せずに、系中で上述の(1)あるいは(2)の反応を行い、生成したグリオキシル酸塩をそのまま用いることも可能である。その場合、グリオキシル酸塩の製造に用いられる原料や原料に含まれる不純物、製造時の副生成物等が含まれる可能性があり、例えば、グリオキシル酸、金属水酸化物、アミン化合物、脂肪族カルボン酸塩、グリオキザール、シュウ酸、シュウ酸塩、グリコール酸、グリコール酸塩などが含有される場合がある。
【0057】
特に、原料としてグリオキシル酸を用いる場合には、その製造時の副生成物であるグリオキザールが含有される可能性があり、かかるグリオキザールの含有量は0重量%であることが最も望ましいが、5重量%以下、特に2重量%以下、さらに1重量%以下であることが好ましい。グリオキザールの含有量が多いと、PVA系樹脂と混合した水溶液の安定性が低下し、ポットライフが短くなったり、得られるPVA系樹脂の架橋高分子がその保存条件によっては経時で着色したりする場合がある。
【0058】
また、本発明におけるグリオキシル酸塩は、そのアルデヒド基が、メタノール、エタノールなどの炭素数が3以下のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの炭素数が3以下のジオール等によってアセタール化、およびヘミアセタール化された化合物を包含するものである。かかるアセタール基、およびヘミアセタール基は、水中、あるいは高温下では容易にアルコールが脱離し、アルデヒド基と平衡状態をとるため、アルデヒド基と同様に各種単量体や官能基と反応し、架橋剤として機能するものである。
【0059】
〔感熱発色層形成用塗工液の製造〕
本発明の感熱発色層形成用塗工液は、通常、ロイコ染料を含有する分散液と、顕色剤を含有する分散液とを別々に調製し、両者を混合することにより製造される。ロイコ染料含有分散液または顕色剤含有分散液を調製するには、上記のアセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂を分散剤に使用して、ロイコ染料または顕色剤を分散させる。なお、ロイコ染料含有分散液および顕色剤含有分散液の両者において上記のアセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂を分散剤に使用する場合に限定されず、少なくとも一方の分散液において上記のアセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂を使用することができる。この場合、少なくとも顕色剤含有分散液において上記のアセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂を使用することが好ましい。
【0060】
分散剤の使用量としては、ロイコ染料100質量部または顕色剤100質量部に対して、通常1〜40質量部、特に1〜10質量部、さらに1〜5質量部が好ましい。分散剤の使用量が少なすぎると、分散不良が起きる傾向があり、使用量が多すぎると、塗工液の発泡が増大する傾向がある。
【0061】
ロイコ染料含有分散液および顕色剤含有分散液は、サンドグラインダー、アトライター、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ビスコミル、3本ロール、エクストルーダー、ニーダー、ホモジナイザー等の公知の分散機で分散することによって調製することができる。ロイコ染料含有分散液および顕色剤含有分散液における分散粒径は、特に制限はないが、通常0.1〜10μmであり、好ましくは0.2〜2μm、より好ましくは0.3〜1μmである。分散粒径が大きすぎると、解像度の低下や発色不良を起こす傾向があり、分散粒径が小さすぎると、地肌の発色、画像濃度の低下や発色不良を起こす傾向がある。
なお、分散粒径は、分散時間等の分散条件により適宜調整することができる。また、ロイコ染料含有分散液および顕色剤含有分散液におけるpHは、特に制限はないが、通常2〜10であり、好ましくは5〜9、さらに好ましくは6〜8である。分散液におけるpHが低すぎると、ゲル化が起きる傾向があり好ましくない。
【0062】
ロイコ染料含有分散液と顕色剤含有分散液とを混合した後の塗工液における固形分濃度は、特に制限はないが、通常20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%、より好ましくは40〜50質量%である。固形分濃度が薄すぎると、画像が不鮮明となる傾向があり、固形分濃度が濃すぎると、塗工不良となる傾向がある。
【0063】
本発明の感熱発色層形成用塗工液は、水性バインダーをさらに含有していても良い。水性バインダーとしては、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックス等が挙げられる。水性バインダーの添加量としては、特に制限はないが、ロイコ染料および顕色剤の合計量100質量部に対して1〜20質量部が好ましい。
【0064】
本発明の感熱発色層形成用塗工液は、必要に応じて
、補助添加成分、例えば、フィラー、界面活性剤、熱可溶性物質(又は滑剤)、圧力発色防止剤等をさらに含有していても良い。
【0065】
〔感熱記録媒体の製造〕
本発明の感熱記録媒体は、支持基材上に、本発明の感熱発色層形成用塗工液を塗工、乾燥して、感熱発色層を形成することにより製造される。感熱発色層形成用塗工液を塗工する方法としては、特に制限はなく、エアーナイフ法、プレート法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バーコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法等の公知の方法を用いることができる。感熱発色層の膜厚は、使用目的等に応じて適宜設定され、特に制限はないが、通常3〜50μm、好ましくは6〜30μm、より好ましくは10〜15μmである。
【0066】
支持基材上に形成された感熱発色層中の上記アセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂の含有量は、ロイコ染料と顕色剤の合計量100質量部に対して、通常0.5〜50質量部、特に0.5〜20質量部、さらに0.5〜5質量部が好ましい。感熱発色層中の上記アセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂の含有量が少なすぎると、粒子安定化効果が低下する傾向があり、反対に多すぎると、分散不良となる傾向がある。
【0067】
また、感熱発色層中のロイコ染料および顕色剤の含有量は、特に制限はないが、それぞれ10〜50質量%、特に15〜40質量%、さらに20〜30質量%が好ましい。感熱発色層中のロイコ染料または顕色剤の含有量が少なすぎると、発色不良となる傾向があり、反対に多すぎると、分散不良となる傾向がある。
【0068】
感熱発色層を形成する支持基材としては、特に制限はなく、例えば紙、合成繊維紙、合成樹脂フィルム等を適宜使用することができる。そのなかでも、上質紙、古紙、合成紙、ラミネート紙の紙を用いることが好ましい。
【0069】
本発明の感熱記録媒体は、溶剤や油分等によりロイコ染料と顕色剤が溶解混合されて発色するのを防止するために、感熱発色層の上に保護層が形成されていても良く、また支持基材と感熱発色層との層間剥離を防止するために、支持基材と感熱発色層との間に中間層が形成されていても良い。かかる保護層や中間層は、感熱発色層形成用塗工液で用いられ得る上記の水性バインダーや補助添加成分を含有し、さらに本発明におけるアセトアセチル基及び/又はスルホン酸基を有するPVA系樹脂を含有していても良い。
【0070】
本発明の感熱記録媒体は、支持基材の裏面(感熱発色層と反対側面)に接着剤層と剥離紙が順次積層された感圧型感熱記録ラベルとして用いたり、常温では粘着性を有しないが加熱時に粘着力を発現する熱活性型粘着層が裏面に設けられ、剥離台紙が不要の熱活性型感熱記録ラベルとして用いることができる。また、支持基材の裏面や支持基材と感熱発色層との間、あるいは感熱発色層上の一部に、磁気記録層が形成されていても良い。
【0071】
本発明の感熱記録媒体の形状としては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜選択され、ラベル状、シート状、ロール状等が好適に挙げられる。また、本発明の感熱記録媒体を用いた記録方法も、特に制限はなく、使用目的に応じて、熱ペン、サーマルヘッド、レーザー加熱等が適宜選択される。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下「%」「部」とあるのは、特に断りのない限り、質量基準を意味する。
【0073】
参考例1
〔アセトアセチル基及びスルホン酸基を有するPVA系樹脂の製造〕
<スルホン酸基を有するPVA系樹脂の製造>
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000部、メタノール422部、アリルスルホン酸ナトリウム62部(酢酸ビニルに対して3.7モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.072モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、還流させながら重合を行った。
途中、アゾビスイソブチロニトリルを0.072モル%(対仕込み酢酸ビニル)ずつ4回投入し、酢酸ビニルの重合率が96.4%となった時点で、m−ジニトロベンゼン0.1部を添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度55%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(ナトリウム濃度で2%)を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、スルホン酸基を有するPVA系樹脂〔PVA系樹脂(1)〕を得た。
【0074】
得られたPVA系樹脂(1)のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、87.3モル%であり、20℃における4%水溶液粘度は、JIS K 6726に準じて測定したところ、2.5mPa・sであった。また、該PVA系樹脂(1)中のスルホン酸基含有量(変性量)は、NMR(核磁気共鳴)測定より算出した結果、3モル%であった。
【0075】
<アセトアセチル化反応>
上記で得られたPVA系樹脂(1)を、ニーダーに100部仕込み、これに酢酸10部を入れ、膨潤させ、回転数20rpmで撹拌しながら、40℃に昇温後、ジケテン26部を7時間かけて滴下し、更に1時間反応させた。反応終了後メタノール400部で2回洗浄した後70℃で、8時間乾燥し、アセトアセチル基及びスルホン酸基を有するPVA系樹脂〔PVA系樹脂(2)〕を得た。
得られたPVA系樹脂(2)中のアセトアセチル基含有量(変性量)は、NMR測定より算出した結果、7.4モル%であった。
【0076】
〔顕色剤分散液の製造〕
顕色剤として2,2’−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル(日本曹達社製「D−90」)と上記PVA系樹脂(2)と水を、顕色剤/PVA系樹脂/水の配合比が100部/2.5部/397.5部となるように配合し、ホモジナイザーにて予備分散した後、ビーズミル(アイメックス社製、投入メディア:ジルコニアビーズ直径0.5mm、投入量200g、回転数2000rpm)にて90分間分散処理して、顕色剤分散液を得た。
【0077】
〔顕色剤粒子径測定〕
上記で得られた分散液中の顕色剤粒子の分散度合をみるため、その分散液中の顕色剤の粒子径を、Particle Sizing System社製のサブミクロン粒度分布・ゼータ電位測定器NICOMPを用い、Volume−weighting GAUSSIAN換算粒子径(nm)として測定した。その結果を後記の表1に示す。
【0078】
〔分散液粘度測定〕
上記で得られた分散液の粘度を、ブルックフィールド粘度計DV−IIIを用い、低粘度ローターにて回転数150rpmで測定した。その結果を後記の表1に示す。
【0079】
〔紫外線吸収度測定〕
上記で得られたPVA系樹脂(2)の30%水溶液を、200μmのアプリケーターでPETフィルムに塗工し、70℃の乾燥機に5分間入れた後、23℃、50%RHで3日間乾燥させた。このようにして得られた塗膜層に対し、JASCO V−7200(日本分光社製)にて紫外線吸収度を測定した。その結果を後記の表1に示す。
【0080】
〔耐水性の評価〕
上記で得られたPVA系樹脂(2)の30%水溶液を、10cm×10cmの型に流し込み、23℃、50%RHの条件下で3日間風乾し、厚さ100μmのフィルムを得た。ついで、得られたフィルムをオーブン中で70℃、5分間熱処理をした。このようにして得られたフィルムを23℃の水に24時間浸漬した後、水浸漬前のフィルムの乾燥重量(X
1)および水浸漬後のフィルムの乾燥重量(X
2)(いずれもg)を求め、下式にて溶出率(%)を算出した。なお、溶出率の低いものが耐水性を有すると評価することができる。その結果を後記の表1に示す。
溶出率(%)=[(X
1―X
2)/X
1]×100
【0081】
参考例2
ケン化度88.4モル%、アセトアセチル基含有量(変性量)8.5モル%、4%水溶液粘度5.1mPa・sの、アセトアセチル基含有PVA系樹脂8.8部と、
参考例1で得られたスルホン酸基含有PVA系樹脂〔PVA系樹脂(1)〕10部とを混合し、PVA系樹脂混合物(3)を得た。
つぎに、顕色剤として2,2’−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル(日本曹達社製「D−90」)、上記PVA系樹脂混合物(3)、水を、顕色剤/PVA系樹脂混合物(3)/水の配合比が100部/5部/397.5部となるように配合し、
参考例1と同様に、顕色剤分散液を得て、
参考例1と同様に評価をした。その結果を後記の表1に示す。
【0082】
実施例
1
参考例1のPVA系樹脂(2)の30%水溶液100部に、グリオキシル酸ナトリウムの10%水溶液4.5部をさらに加え、
参考例1と同様に紫外線吸収度測定と耐水性の評価を行った。その結果を後記の表1に示す。
【0083】
実施例
2
参考例1のPVA系樹脂(2)の30%水溶液100部に、グリオキシル酸ナトリウムの10%水溶液18部をさらに加え、
参考例1と同様に紫外線吸収度測定と耐水性の評価を行った。その結果を後記の表1に示す。
【0084】
比較例1
アセトアセチル基及びスルホン酸基を有するPVA系樹脂〔PVA系樹脂(2)〕に代えて、スルホン酸基含有PVA系樹脂〔PVA系樹脂(1)〕のみを用いた。それ以外は、
参考例1と同様にして、顕色剤分散液を得て、同様に評価した。その結果を下記の表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
上記表の結果より、
参考例1及び2の分散液は、顕色剤粒子径、分散液粘度が、比較例1とほぼ同等であることから、顕色剤の分散性に関しては比較例1と同等の性能を有しており、さらに、極めて優れた紫外線吸収性を有するものであった。
そして、グリオキシル酸ナトリウムを配合した実施例
1及び
2の分散液は、
参考例1及び2の分散液よりも、特に優れた紫外線吸収性を有し、さらに、耐水性にも優れるものであった。
これに対し、スルホン酸基のみを有するPVA系樹脂のみをPVA系樹脂として用いた比較例1の分散液は、かかるPVA系樹脂が顕色剤の良好な分散剤として働いているため、その顕色剤粒子径は小さく、分散液粘度も低粘度のものが得られたものの、紫外線吸収度が非常に小さいものであった。