特許第6234781号(P6234781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6234781-2次元走査型レーザビーム放射装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234781
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】2次元走査型レーザビーム放射装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20171113BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G02B26/10 C
   G02B26/10 D
   G01S7/481 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-230876(P2013-230876)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-90463(P2015-90463A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115728
【氏名又は名称】リコー光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖
(72)【発明者】
【氏名】千葉 善幹
(72)【発明者】
【氏名】及川 欽一
(72)【発明者】
【氏名】川村 真久
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3172678(JP,U)
【文献】 特開2008−310204(JP,A)
【文献】 特開2005−338459(JP,A)
【文献】 特開平10−003050(JP,A)
【文献】 特開2013−061554(JP,A)
【文献】 米国特許第06392821(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 − 26/12
G02B 26/00 − 26/08
G01S 7/48 − 7/51
G01S 17/00 − 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元的に偏向するレーザビームを放射するレーザビーム放射装置であって、
レーザビームを放射するレーザ光源と、
該レーザ光源から放射されたレーザビームを2次元的に偏向走査する偏向装置と、
該偏向装置により2次元的に偏向走査されたレーザビームを反射レーザビームとして反射する反射面部材と、を有し、
前記反射面部材は、前記反射レーザビームの偏向角を、水平方向において、所望の偏向角範囲に変倍する凸の円錐面を反射面部分とし、前記偏向装置により2次元的に偏向走査された前記レーザビームを、円錐軸方向に対して有限の角をもって入射されることを特徴とする2次元走査型レーザビーム放射装置。
【請求項2】
請求項1記載の2次元走査型レーザビーム放射装置において、
レーザ光源から放射されたレーザビームを2次元的に偏向走査する偏向装置は、反射鏡を互いに直交する軸の回りに揺動させるものであることを特徴とする2次元走査型レーザビーム放射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2次元走査型レーザビーム放射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元的に走査されるレーザビームを物体に照射し、物体で拡散反射されたレーザ光を検出し、物体までの距離を2次元的に測定する2次元測距装置が種々知られている。
【0003】
このような2次元測距装置は、車載用やロボット、製品検査等のものが実用化されているが、視野を適正化したいという要請がある。
【0004】
此処に言う「視野」とは、物体に照射されるレーザビームが2次元的に走査されるときの「2次元の偏向角」である。
【0005】
例えば、車載用に用いられる2次元測距装置では、設置された車両の外周の全域での安全確認が求められ、そのために広い視野が求められる。
【0006】
また、ロボット用に用いられる場合であれば、より広い検知領域の確保のために、広い視野が求められる。
【0007】
また、製品検査に用いられる2次元測距装置の場合であれば、検査対象である製品に適正にフィットする視野範囲の設定が求められる。
【0008】
従来、レーザビームを走査する方法としては、ポリゴンミラーや「MEMSによる偏向手段」が知られている。特許文献1には「2軸可動型の偏向手段」が開示されている。
【0009】
これら、従来から知られた「レーザビームの偏向を利用する偏向手段」は、偏向角が固定されている場合が多く、偏向手段自体の偏向角を変更することが困難である。
【0010】
特に、偏向手段自体の偏向角を拡大することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、所望の偏向角をもつ2次元走査型レーザビーム放射装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の「2次元走査型レーザビーム放射装置」は、2次元的に偏向するレーザビームを放射するレーザビーム放射装置であって、レーザビームを放射するレーザ光源と、該レーザ光源から放射されたレーザビームを2次元的に偏向走査する偏向装置と、該偏向装置により2次元的に偏向走査されたレーザビームを反射レーザビームとして反射する反射面部材と、を有し、前記反射面部材は、前記反射レーザビームの偏向角を、水平方向において、所望の偏向角範囲に変倍する凸の円錐面を反射面部分とし、前記偏向装置により2次元的に偏向走査された前記レーザビームを、円錐軸方向に対して有限の角をもって入射されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の2次元走査型レーザビーム放射装置は、偏向装置により2次元的に偏向されたレーザビームの偏向角を反射面部材により「所望の偏向角範囲に変倍」する。
従って、所望の視野範囲の設定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】2次元走査型レーザビーム放射装置の実施の1形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、2次元走査型レーザビーム放射装置の、実施の1形態を説明するための図である。同図(a)は、実施の形態の要部を説明図的に示している。
【0017】
この図において、符号10は「光源」、符号12は「カップリングレンズ」、符号14は「偏向装置」、符号16は「反射面部材」をそれぞれ示している。
【0018】
光源10は、この実施の形態においては「半導体レーザ」が用いられており、以下、LD10と略記する。
【0019】
LD10から放射される発散性のレーザ光束は、カップリングレンズ12に入射する。
【0020】
カップリングレンズ12は正の屈折力を持ち、入射してくるレーザ光束の発散性を抑制する。この例では、カップリングレンズ12は「コリメート機能」を有する。
【0021】
従って、カップリングレンズ12からは、平行光束化されたレーザビームLFが射出する。射出したレーザビームLFは、偏向装置14に入射する。
【0022】
即ち、LD10とカップリングレンズ12とは「レーザビームLFを放射するレーザ光源」を構成する。
【0023】
偏向装置14は、入射してくるレーザビームLFを「2次元的に偏向走査」する。
この実施の形態において、偏向装置14は、直交する2方向に揺動可能な反射面を有し、該反射面によりレーザビームLFを反射し、反射面の揺動により偏向走査を行う。
【0024】
このような偏向装置は良く知られているが、説明中の実施形態では、図1(b)に示す如きものが用いられている。
即ち、偏向装置14は、反射鏡140と第1枠体142と第2枠体144を有する。
【0025】
反射鏡140は平面鏡で、レーザビームLFの光束径よりも若干大きい反射面を有し、レーザビームLFの全体を受光して反射できるようになっている。
【0026】
第1枠体142、第2枠体144は共に長方形形状の枠体であり、反射鏡140は、第1枠体142に、揺動軸を共有する軸j1、j2により固定されている。
【0027】
軸j1、j2は、捩れ弾性を有し、捩れ変形の復元力により、反射鏡140を軸j1、j2に共有される揺動軸の回りに揺動させることができるようになっている。
【0028】
第1枠体142は、第2枠体144に、軸j3、j4により固定されている。
軸J3、j4も、揺動軸を共有している。
【0029】
軸j3、j4も捩れ弾性を有し、捩れ変形の復元力により、第1枠体142を軸j3、j4に共有される揺動軸の回りに揺動させることができるようになっている。
【0030】
第2枠体144は、2次元走査型レーザビーム放射装置の装置空間に固定的に設けられて不動である。
【0031】
軸j1、j2に共有される揺動軸と、軸j3、j4に共有される揺動軸とは互いに直交している。
従って、反射鏡140を「互いに直交する2方向(即ち、水平方向と鉛直方向)において独立して揺動させる」ことができる。
【0032】
揺動は、図示されない駆動手段により行われる。
駆動手段は、例えば圧電素子を用いることができる。
第1枠体142に固定した圧電素子を反射鏡140に連結して、反射鏡140を揺動する駆動を行うことができる。
【0033】
同様に、第2枠体144に固定した圧電素子を第1枠体142に連結して、反射鏡140を有する第1枠体142を揺動する駆動を行うことができる。
【0034】
なお、偏向装置14は「MEMS」により構成することができる。
【0035】
レーザビームLFは、偏向装置14の反射鏡140で反射され、反射鏡140が2次元的に揺動すると、2次元的に偏向するレーザビームLF1となる。
【0036】
以下、2次元的に偏向するレーザビームLF1を「偏向レーザビームLF1」と呼ぶ。
【0037】
反射面部材16は、偏向装置14により2次元的に偏向走査された偏向レーザビームLF1が入射する反射面を持つ。
【0038】
反射面部材16は「凸の円錐面状の反射面」を有する。
【0039】
2次元的に偏向走査された偏向レーザビームLF1は、反射面部材16の反射面に「該反射面を2次元的に走査する」ように入射する。
【0040】
図1(c)は、反射面部材16の「偏向レーザビームLF1で2次元的に走査」される反射面部分160を示している。図の左右方向が水平方向、上下方向が鉛直方向である。
即ち、反射面部分160をなす凸の円錐面の円錐軸は鉛直方向に平行である。
【0041】
偏向レーザビームLF1が、反射面部材16の「鉛直方向の最上部」を走査するときは、偏向レーザビームLF1は、図1(c)の弧状部分ABを走査する。
【0042】
「鉛直方向の中ほど」を走査するときは、弧状部分CDを走査する。また「鉛直方向の最下部」を走査するときは、弧状部分EFを走査する。
【0043】
図1(d)は、弧状部分CDを走査するときの様子を、反射面部分160の対称軸方向(即ち、円錐軸方向)から見た状態を示している。
【0044】
この図に示すように、偏向レーザビームLF1が、弧状部分CDを走査するときの「水平方向の偏向角はθ1」である。
【0045】
反射面部分160は円錐状の反射面であるので、反射面部分160で反射レーザビームLF2のように反射される。
【0046】
従って、反射レーザビームLF2の水平方向の偏向角は「θ2」である。
図1(d)から明らかに「偏向角:θ2>偏向角:θ1」である。
【0047】
即ち、反射レーザビームLF2の水平方向の偏向角:θ2は、偏向装置14による偏向レーザビームLF1の偏向角:θ1を「拡大変倍」したものとなっている。
【0048】
図1(e)は、反射面部分160を水平方向から見た状態において、偏向レーザビームLF1が「鉛直方向において反射される状態」を示している。
【0049】
図中、符号aで示す部分は、偏向レーザビームLF1の、弧状部分AB上の入射位置であり、符号fで示す部分は「弧状部分EF上の入射位置」である。
【0050】
反射面部分160は、鉛直方向には曲率を持たないので、反射レーザビームLF2の鉛直方向の偏向角は、偏向装置14による鉛直方向の偏向角を拡大しない。
【0051】
即ち、図1に実施の形態を示した「2次元走査型レーザビーム放射装置」は、2次元的に偏向するレーザビーム(反射レーザビームLF2)を放射する装置である。
【0052】
そして、レーザビームLFを放射するレーザ光源10、12と、該レーザ光源から放射されたレーザビームLFを2次元的に偏向走査する偏向装置14を有する。
【0053】
さらに、偏向装置14により2次元的に偏向走査されたレーザビーム(偏向レーザビームLF1)を反射する反射面部材16を有する。
【0054】
反射面部材16は、反射レーザビームLF2の偏向角を、水平方向に拡大変倍する曲面形状をもつ反射面部分160を有するものである。
【0055】
反射面部材16の反射面部分160の水平断面内での曲率を「強く(弱く)」すれば、水平方向の拡大変倍の倍率を「高く(低く)」することができる。
【0056】
従って、反射面部分160の形状を適宜の設定することにより「反射レーザビームLF2の偏向角を、水平方向において所望の偏向角範囲に拡大変倍」することができる。
【0057】
図1の例では、反射面部材16の反射面部分160を「反射レーザビームLF2の偏向角を、水平方向において所望の偏向角範囲に拡大変倍」する形状として凸円錐面とした。
【0058】
反射面部材の反射面形状の参考例としては、「凸のシリンダ面」を考えることができる。
【0059】
また、反射面部材の反射面部分の曲面形状の他の参考例として、反射面部分の形状を水平方向の断面形状を「凹形状」とすることも考えられ、このような場合には、水平方向の偏向角を縮小倍率で変倍し、水平方向の視野を「狭める」ことも、可能である。
【0060】
他の参考例として、反射面部材の鉛直方向の形状を「凹形状(凸形状)」とすれば、鉛直方向の偏向角を縮小(拡大)倍率で変倍し、鉛直方向の視野を狭める(広げる)こともできる。
【0061】
即ち、「凹のシリンダ面もしくは凹の円錐面」である反射面部材も参考例として考えられる。
【0062】
このような参考例のように、反射面形状を「凹面形状」とする場合、凹面の曲率を大きくすれば、水平方向や鉛直方向の偏向角を狭めて、反射レーザビームが空間内で一度交点を結び、その後拡大偏向角となるようにすることもできる。
【0063】
上に参考例として述べたように、反射面部分の形状如何により、偏向装置により偏向される偏向レーザビームLF1の水平方向および鉛直方向の少なくとも一方の偏向角に対する変倍率を適宜に設定できる。
【0064】
この発明の2次元走査型レーザビーム放射装置では、水平方向の偏向角の変倍率を適宜に設定できる。
【0065】
この発明の2次元走査型レーザビーム放射装置は、反射面部材は、反射レーザビームの偏向角を、水平方向において所望の偏向角範囲に変倍する曲面として円錐面形状の反射面部分を有するものであることが出来る。
【0066】
上に説明した偏向装置14は、反射鏡140を互いに「直交する軸の回りに揺動」させるものである。
【0067】
しかし。これに限らず、反射面を軸の回りに振動もしくは回転させる1次元反射偏向装置を2個、軸を直交させて組み合わせたものであることもできる。
【符号の説明】
【0068】
10 光源
12 カップリングレンズ
14 偏向装置
16 反射面部材
LF レーザビーム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2012−58178号公報
図1