(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
排水用の配管の接水面に金属製の管や継手を用いると、腐食し易いという問題がある。
そのため、排水用の配管は、一般的に塩ビ管と塩ビ継手から構成されている。
一方、排水システムも多様化されており、従来の勾配排水に加え、サイホン排水や圧送排水という新システムが開発されてきている。
これらの新システムにポリブテン管や架橋ポリエチレン管の様な可撓管を用いると、施工性や取り回しの点でメリットが出るものと考えられる。
しかし、塩ビ管と塩ビ継手とは、材質が同じであるため、塩ビ用接着剤を用いて両者を簡単に接続することができるが、ポリエチレン管は塩ビ用の接着剤を用いて塩ビ管と接着することは難いため、ポリエチレン管は、例えば特許文献1に記載の特殊な継手を介して塩ビ管に接続する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の継手は、塩ビ管とポリエチレン管とを継手に接着して接続するものであり、塩ビ管と、ポリエチレン以外の材料からなる管を接続するには機械式継手を使用する必要がある。
しかし、同一材料で機械式継手を成形すると、管との接合を行う接合部分の強度を確保する上で、継手が厚肉になることが避けられず、継手の外径が大きくなる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、異なる材質の管同士を接続する継手の外径を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の継手は、合成樹脂で筒状に形成され、一端側に第1の管体が接続される継手本体と、前記継手本体の他端側に設けられ、第2の管体が挿入される挿入部と、前記挿入部に収容され、前記挿入部に挿入された前記第2の管体と前記挿入部との間をシールする止水部材と、前記継手本体の他端側に配置される環状のキャップと、前記環状のキャップの外周面に形成された係合部と、前記挿入部に取り付けられ、前記キャップの前記係合部と係合する被係合部を備え、前記合成樹脂より
曲げ破壊強度が大きい
金属で形成された環状の固定リングと、
を備え、前記挿入部は、径方向外側に張り出す大径部を備え、前記固定リングは、前記大径部の外周側に配置され、軸方向他端側の内周面に前記被係合部が形成され、軸方向一端側に前記大径部の角部に引っかけられ径方向内側へ延びるカシメ部が形成されている。
【0007】
請求項1に記載の継手では、継手本体の一端側に第1の管体を接続することができる。継手本体は合成樹脂で形成されているので、継手本体の合成樹脂と同じ合成樹脂からなる第1の管体を、例えば接着剤で接続することができる。
また、この継手は、継手本体の他端側に設けた挿入部に第2の管体を挿入することで、第2の管体を接続することができる。第2の管体を、挿入部に挿入すると、止水部材が第2の管体と挿入部との間をシールし、保持リングが第2の管体を保持する。
【0008】
継手本体の他端側に、環状のキャップが配置されており、環状のキャップの係合部が継手本体の外周部に保持された固定リングの被係合部に係合して固定されている。
【0009】
継手本体の挿入部に取り付けられた固定リングは、継手本体を形成する合成樹脂より破壊強度が大きい材料で形成されているため、合成樹脂で形成するより固定リングを薄く形成することができ、継手の外径を小さくすることが出来る。
【0011】
請求項1に記載の継手では、固定リングが継手本体を形成している合成樹脂よりも曲げ強度が大きい
金属で形成されているため、固定リングの曲げに対する破壊強度を大きくすることが出来る。
【0013】
請求項1に記載の継手では、固定リングが金属で形成されているため、固定リングは合成樹脂で形成するよりも曲げに対する破壊強度を大きくすることが出来る。
【0015】
請求項1に記載の継手では、固定リングの軸方向一端側に形成されたカシメ部が大径部の角部に引っ掛かるため、固定リングが継手本体の他端側へ外れることが無い。
【0016】
請求項2に記載の発明は、
請求項1の継手において、前記固定リングは、一定厚さに形成されている。
【0017】
請求項2に記載の継手では、固定リングが一定厚さに形成されているので、引き抜き材、または押し出し材を用いて固定リングを容易に形成できる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の継手において、前記固定リングは、前記大径部に取り付けられている部分が、前記被係合部の形成されている部分よりも薄く形成されている。
【0019】
請求項3に記載の継手では、固定リングの大径部に取り付けられている部分が、被係合部の形成されている部分よりも薄く形成されているため、カシメ部を加工し易くなる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、異なる材質の管同士を接続する継手の外径を小さくすることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る継手10を図面にしたがって説明する。
図1(A)には、本実施形態の継手10、継手10に接続される第1の管体12、及び第2の管体14の軸線に沿った半断面図が示されている。
継手10は、継手本体16、保持リング18、保持リング抜け防止キャップ20、Oリング22、キャップ固定リング24を含んで構成されている。
【0023】
継手本体16は、合成樹脂、本実施形態では、硬質塩化ビニル樹脂で筒状に形成されている。
継手本体16は、外径が一定径に形成された一定径部26、一定径部26の図面矢印L方向側に設けられて、一定径部26よりも外径が大径に形成された中間径部28、中間径部28の図面矢印L方向側に設けられて、中間径部28よりも外径が大径に形成された大径部30を備えている。
なお、本実施形態では、一定径部26の図面矢印R方向側の端部で、後述する第1の管体12の大径孔12Aに挿入されて接続される部分が、接続部27となっている(
図2参照)。
【0024】
なお、継手本体16には、一定径部26の内側、及び中間径部28の一定径部側の内側に、細径の第1貫通孔26Aが形成され、第1貫通孔26Aの中間径部側に第1貫通孔26Aよりも大径の第2貫通孔28Aが形成され、第2貫通孔28Aの大径孔部側に第2貫通孔28Aよりも大径の第3貫通孔30Aが形成されている。
【0025】
第2貫通孔28Aの内径は、第2の管体14が挿入可能な径に形成されている。
第3貫通孔30Aには、第2貫通孔側に弾性体からなるOリング22が収容されている。Oリング22により、第2の管体14の外周面と第2貫通孔28Aの内周面との間がシールされる。
なお、本実施形態では、継手本体16において、第2の管体14が挿入される部分が挿入部35とされている。
【0026】
また、大径部30の内側には、Oリング22の図面矢印L方向側に環状の保持リング18が収容されている。保持リング18の内周面には、第2の管体14の外周面に喰い込む爪部36が形成されている。また、保持リング18には、保持リング18を縮径可能とするための軸方向に延びる溝38が周方向に間隔を開けて複数形成されている。
保持リング18の一端側には、先端へ向かって外径が小さくなる傾斜部40が形成されている。なお、本実施形態の保持リング18は、合成樹脂で形成されているが、金属で形成することも出来る。
【0027】
継手本体16の図面矢印L方向側には、保持リング抜け防止キャップ20が配置されている。保持リング抜け防止キャップ20は第2の管体14が挿通できるように環状に形成されている。保持リング抜け防止キャップ20は、継手本体16の大径部30よりも小径に形成されており、外周には雄ネジ42が形成されている。
また、保持リング抜け防止キャップ20には、図面矢印R方向側に、先端に向かって内径が大径となる傾斜面44が形成されている。本実施形態の保持リング抜け防止キャップ20は合成樹脂で形成されているが、金属で形成することも出来る。
【0028】
大径部30の外周側、及び保持リング抜け防止キャップ20の外周側には、金属で形成されたキャップ固定リング24が配置されている。キャップ固定リング24は、ステンレス、真鍮、アルミニューム合金等の耐腐食性に優れた金属で形成することが好ましいが、他の金属で形成することもでき、金属表面にメッキ等の防錆処理を施しても良い。
【0029】
図1(A)、及び
図1(B)に示すように、キャップ固定リング24は、保持リング抜け防止キャップ20の外周側に配置される厚肉部46と、大径部30の外周側に配置され、厚肉部46よりも内外径が大径とされる薄肉部48とを備えている。厚肉部46、及び薄肉部48は、各々一定厚さに形成されている。
【0030】
図1(A)、
図3(A)に示すように、キャップ固定リング24は、薄肉部48の図面矢印R方向側に、継手本体16の大径部30の角部に引っ掛かるように径方向内側に塑性変形されたカシメ部50が形成されている。
キャップ固定リング24を継手本体16に固定するには、
図1(B)に示すような薄肉部48が一定径とされたキャップ固定リング24に、
図3(B)に示すように継手本体16の大径部30を挿入し、その後、
図3(A)に示すように、薄肉部48の端部を径方向内側へ絞ってカシメ部50を形成する。
【0031】
これにより、キャップ固定リング24は、大径部30を厚肉部46の端部とカシメ部50との間に挟んだ状態で大径部30に固定される。なお、キャップ固定リング24は、大径部30に対して回転しないように固定することができるが、キャップ固定リング24が大径部30の外周を回転できるように、キャップ固定リング24と大径部30との間に若干の隙間が設けられるようにキャップ固定リング24を大径部30に取り付けることもできる。
【0032】
キャップ固定リング24には、厚肉部46の内周に雌ネジ52が形成されており、この雌ネジ52に保持リング抜け防止キャップ20の雄ネジ42を螺合して締め付けることで、保持リング抜け防止キャップ20を継手本体16に取り付けることができる。なお、保持リング抜け防止キャップ20を取り付ける前に、継手本体16の第3貫通孔30Aに予めOリング22、及び保持リング18を収容しておく。
【0033】
(作用、効果)
本実施形態の継手10を用いて、第1の管体12と第2の管体14とを接続する例を説明する。なお、本実施形態では、第1の管体12がいわゆる塩ビ管であり、第2の管体14がポリブテン管である。
先ず、第1の管体12と継手10との接続手順を説明する。
本実施形態の継手10に接続する第1の管体12は、端部に継手本体16の一定径部26を挿入する大径孔12Aが形成されている。
第1の管体12の大径孔12A、又は継手本体16の他端部の外周面に塩ビ用の接着剤を塗布し、継手本体16の他端部を第1の管体12の大径孔12Aに挿入する。これにより、塩ビで形成された第1の管体12と塩ビで形成された継手本体16とを容易に接続できる(
図2参照)。
【0034】
次に、第2の管体14と継手10との接続手順を説明する。
継手10と第2の管体14とを接続するには、第2の管体14を継手本体16の第2貫通孔28Aの奥まで挿入するだけでよい(
図2参照)。これにより、第2の管体14の外周面に保持リング18の爪部36が引っ掛かる。
なお、挿入された第2の管体14に引き抜き方向の力が作用すると、第2の管体14の外周面に保持リング18の爪部36が食い込み、第2の管体14を保持した保持リング18が保持リング抜け防止キャップ20に当たるため、第2の管体14の抜けは阻止される。
【0035】
ここで、
図2に示すように、第2の管体14に軸方向に対して交差する方向の外力Fが作用すると、保持リング抜け防止キャップ20を介してキャップ固定リング24に曲げ応力が作用する。キャップ固定リング24に曲げ応力が作用すると、雌ネジ52の谷底付近に応力が集中する。
【0036】
しかしながら、本実施形態のキャップ固定リング24は、金属で形成されているため、硬質塩化ビニル樹脂で形成した場合に比較して破壊強度を大きくとることができるため、キャップ固定リング24を薄く形成でき、継手10の外径を小さくすることができる。
なお、仮に、キャップ固定リング24が硬質塩化ビニル樹脂で形成されて、継手本体16にキャップ固定リング24が一体的に形成されている場合、硬質塩化ビニル樹脂で形成されたキャップ固定リング24の破壊強度を確保するためには、雌ねじ52の形成される部分を金属で形成した場合に比較して厚くする必要があり、継手10の外径を小さくすることが出来ない。
【0037】
継手10のキャップ固定リング24には、曲げ、引っ張り、圧縮等の力が種々の方向から作用するものと想定される。このため、これら種々の力に対して破壊を抑える必要がある。このため、曲げ破壊強度、引っ張り破壊強度、圧縮破壊強度等を大きくすることが好ましいが、継手10を取り付ける箇所で想定される最も大きな力に対して大きな破壊強度を持つことが好ましい。
例えば、第2の管体14に軸方向と交差する方向の力が作用した場合には、キャップ固定リング24に曲げの力が作用する。この曲げの力に対抗するためには、キャップ固定リング24に曲げ破壊強度の高い材料を用いることが好ましい。
本実施形態では、キャップ固定リング24を金属で形成したので、硬質塩化ビニル樹脂で形成した場合よりも、曲げ破壊強度、引っ張り破壊強度、圧縮破壊強度、その他、捩じり破壊強度等も大きくすることができる。
【0038】
[第2の実施形態]
次に、本実施形態の継手10の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図4に示すように、本実施形態の継手10では、継手本体16の他端側に、一定径部26の第1貫通孔26Aよりも内径が大径に形成された拡径孔54が設けられている。この拡径孔54には、一定径とされた第1の管体12の端部が挿入される。
【0039】
第1の管体12と継手10との接続は、第1の管体12の外周面、又は継手本体16の拡径孔54に塩ビ用の接着剤を塗布し、継手本体16の拡径孔54に第1の管体12の端部を挿入する。これにより、塩ビで形成された第1の管体12と塩ビで形成された継手本体16とを容易に接続できる。
なお、継手10と第2の管体14との接続は、第1の実施形態と同様である。
【0040】
[第3の実施形態]
次に、本実施形態の継手10の第3の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図5(A),(B)に示すように、本実施形態の継手10では、キャップ固定リング24が一定厚さの金属パイプから形成されている。キャップ固定リング24の内径は、継手本体16の大径部30よりも若干大径に形成されている。
【0041】
本実施形態の保持リング抜け防止キャップ20は、外周に形成された雌ネジ52が、キャップ固定リング24の内周に形成された雄ネジ42と螺合するように、第1の実施形態よりも大径に形成されている。
本実施形態のキャップ固定リング24は、一定径の金属パイプを切断し、切断した金属パイプの内周に雌ネジ52を形成するだけで簡単に製造することができる。
また、金属パイプは、押し出し、又は引き抜きによって容易に製造できる。
【0042】
本実施形態のキャップ固定リング24は、
図5(B)の2点鎖線で示すように、継手本体16に装着する前に、予めカシメ部50を形成しておくことが出来る。カシメ部50を形成したキャップ固定リング24は、継手本体16の一定径部26の端部から挿入すればよい。このため、本実施形態の継手10は、キャップ固定リング24を継手本体16に装着してからカシメ加工する必要が無い。
なお、本実施形態の継手10は、第1の実施形態とは、キャップ固定リング24と保持リング抜け防止キャップ20が異なるだけであり、その他の構成、第1の管体12と第2の管体14との接続方法は第1の実施形態と同様である。
【0043】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、継手本体16が硬質塩化ビニル樹脂で形成されていたが、継手本体16は硬質塩化ビニル樹脂以外の合成樹脂で形成することもできる。
【0044】
上記実施形態では、キャップ固定リング24を金属で形成したが、キャップ固定リング24を形成する材料は、継手本体16よりも破壊強度の高い材料で形成されていれば良く、継手本体16よりも破壊強度の高い合成樹脂で形成することも出来る。破壊強度を高くするために、合成樹脂にガラス繊維等の補強材を混入しても良い。
上記実施形態の継手本体16では、保持リング18を用いて第2の管体14を接続したが、保持リング18以外の他の公知の手段で第2の管体14を接続しても良い。