特許第6234798号(P6234798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234798
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム及びその用途
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20171113BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H01B13/00 503B
   B32B7/02 104
   B32B27/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-255985(P2013-255985)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-115171(P2015-115171A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 勝則
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 和宏
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/137883(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/108494(WO,A1)
【文献】 特開2009−202538(JP,A)
【文献】 特開2010−162746(JP,A)
【文献】 特開2001−273817(JP,A)
【文献】 特開2007−042284(JP,A)
【文献】 特開2005−144699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00−5/16,13/00
B32B 1/00−43/00
G02B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィン系樹脂フィルムと、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの一方の第1主面側に設けられた無機物を含む透明導電膜と、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムと前記透明導電との間、及び前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの前記第1主面と反対側の第2主面側の少なくとも一方に設けられた硬化樹脂層とを備え、
前記硬化樹脂層は、重量平均分子量が10000以上の高分子量成分と重量平均分子量が10000未満の低分子量成分とを含む樹脂組成物が硬化された層であり、
前記高分子量成分及び前記低分子量成分の合計量に対して、該高分子量成分の量が90重量%以下であり、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムと前記硬化樹脂層とを有するハードコートフィルムに対して180°折り曲げ試験を行った際に、該ハードコートフィルムの破断が発生しない透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記透明導電膜が結晶化された前記透明導電性フィルムを85℃/85%RHの環境下に240時間置いた後の前記透明導電膜の平坦部の算術平均粗さRaが10nm以下である請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記硬化樹脂層が前記シクロオレフィン系樹脂フィルムと前記透明導電膜との間に少なくとも設けられ、
前記硬化樹脂層と前記透明導電膜との間に光学調整層をさらに備える請求項1又は2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムが長尺状である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムの長尺物が巻回された透明導電性フィルム巻回体。
【請求項5】
長尺状の偏光板と請求項4に記載の透明導電性フィルム巻回体とをロール・トゥ・ロール法により積層して得られる長尺状偏光板−透明導電性フィルム積層体。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムを含むタッチパネル。
【請求項7】
前記ハードコートフィルムを準備する工程、及び
前記ハードコートフィルム用の保護フィルムを用いることなく前記ハードコートフィルムの一方の主面側に前記透明導電膜を形成する工程
を含む請求項1に記載の透明導電性フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルム及びその用途としての透明導電性フィルム巻回体、長尺状偏光板−透明導電性フィルム積層体、タッチパネル、並びに透明導電性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性部材としてはガラス上に酸化インジウム薄膜を形成した、いわゆる導電性ガラスがよく知られている。しかしながら、導電性ガラスは基材がガラスであるために可撓性、加工性に劣り、用途によっては適用が困難な場合がある。そのため近年では可撓性、加工性に加えて、耐衝撃性に優れ、軽量であることなどの利点から、ポリエチレンテレフタレートをはじめとするプラスチックフィルム基材を用いる透明導電性フィルムが普及している。
【0003】
液晶表示素子の上に透明なタッチパネルを搭載したディスプレイがモバイルサイズから中型〜大型サイズへと普及していくなかで、液晶表示素子の特性の高度化のみならず、タッチパネル用透明導電性フィルムの光学特性の向上に対する要求も高まっている。特に従来のポリエチレンテレフタレートを用いる透明導電性フィルムは厚さにもよるが数千nmという位相差を有するために、偏光板の下では使用できなかったり、大型化の進んだ画面を斜めから見た際の着色や虹模様が顕著に確認され視認性が低下したりする場合がある。こうした事情から位相差をコントロールした透明導電性フィルムが要求されている。例えば、位相差をコントロールした透明導電性フィルム用の基材としてはシクロオレフィン系樹脂フィルムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−162746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シクロオレフィン系樹脂フィルムの採用により上記位相差に起因する不具合を改善することができるものの、シクロオレフィン系樹脂フィルムは軟らかいことから、透明導電膜の成膜の際の樹脂フィルムの搬送工程等において樹脂フィルムに傷が入り、外観不良に繋がることがある。これに対しては、シクロオレフィン系樹脂フィルムに硬化樹脂層(ハードコート層)を形成することで対応することができる。
【0006】
しかしながら、硬化樹脂層を形成したシクロオレフィン系樹脂フィルムでは新たな不具合が生じることが判明した。すなわち、巻取り式真空成膜装置を用いるロール・トゥ・ロール法により長尺状のシクロオレフィン系樹脂フィルム上に透明導電膜を形成する際、搬送中に長尺状樹脂フィルムが蛇行した場合には樹脂フィルムに張力を印加して蛇行を修正する等の措置がとられる。この蛇行修正措置のための張力印加の際に硬化樹脂層が割れてしまい、その割れに起因して長尺状樹脂フィルムに破断が発生するというものである。スパッタ法など真空成膜法においては、樹脂成分や水蒸気などの不純物が除去された雰囲気で成膜される必要があるが、一旦、真空成膜装置内で樹脂フィルムの破断が発生すると、スパッタ成膜室を大気解放して樹脂フィルムの再設置から清掃までを行う必要があり、著しく生産性を悪化させる結果となる。
【0007】
さらに、タッチパネルセンサ用の透明導電性フィルムには、85℃/85%RH、240hrという加熱加湿試験で異常が発生しないという信頼性が求められるところ、一般にシクロオレフィン系樹脂フィルムはポリエチレンテレフタレートフィルムをはじめとするプラスチックフィルムと比較して著しく透湿度が低く、また無機物である透明導電膜も透湿度が低いので、シクロオレフィン系樹脂フィルムと透明導電膜との間に配置される硬化樹脂層の設計に不備があると、加熱加湿試験後に斑点状の外観不良が発生するという不具合が確認されている。
【0008】
本発明は、シクロオレフィン系樹脂フィルムの傷付きを防止可能であり、樹脂フィルム搬送時の張力の印加でもハードコートフィルムに破断が発生せず、加熱加湿試験後にも外観不良が発生しない高信頼性の透明導電性フィルム及びこれを用いる透明導電性フィルム巻回体、長尺状偏光板−透明導電性フィルム積層体、タッチパネル、並びに透明導電性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ハードコートフィルムの硬化樹脂層の耐傷付き性の向上のために硬度を高めるだけでは不十分であると考え、これとは相反する特性である柔軟性にも着目することにより上記目的を達成し得ることを見出し本発明にいたった。
【0010】
すなわち、本発明は、シクロオレフィン系樹脂フィルムと、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの一方の第1主面側に設けられた無機物を含む透明導電膜と、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムと前記透明導電層との間、及び前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの前記第1主面と反対側の第2主面側の少なくとも一方に設けられた硬化樹脂層とを備え、
前記硬化樹脂層は、重量平均分子量が10000以上の高分子量成分と重量平均分子量が10000未満の低分子量成分とを含む樹脂組成物が硬化された層であり、
前記高分子量成分及び前記低分子量成分の合計量に対して、該高分子量成分の量が90重量%以下であり、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムと前記硬化樹脂層とを有する前記ハードコートフィルムに対して180°折り曲げ試験を行った際に、該ハードコートフィルムの破断が発生しない透明導電性フィルムである。
【0011】
当該透明導電性フィルムでは、シクロオレフィン系樹脂フィルムに硬化樹脂層を形成しているので、シクロオレフィン系樹脂フィルムの傷付きを防止することができる。また、硬化樹脂層として重量平均分子量が10000以上の高分子量成分(以下、単に「高分子量成分」ともいう。)を含む樹脂組成物が硬化された層を採用しているので、硬化樹脂層における高分子量成分に由来する領域がソフトセグメントとして機能し、その結果、ハードコートフィルムに対して180°折り曲げ試験を行っても破断の発生を防止するだけの柔軟性を硬化樹脂層に付与することができる。これにより、樹脂フィルム搬送時に張力や捻りが加わっても容易に硬化樹脂層が割れず、ハードコートフィルムの破断を防止することができる。
【0012】
さらに、当該透明導電性フィルムでは、樹脂組成物中に含まれる高分子量成分及び重量平均分子量が10000未満の低分子量成分の合計量に対して、高分子量成分の量を90重量%以下としている。上述の加熱加湿試験の際の外観不良は、シクロオレフィン系樹脂フィルム及び無機物を含む透明導電膜といういずれも水分を通しにくい部材間で水分の逃げ場がなくなり、両者に挟まれた硬化樹脂層が水分で膨潤することで引き起こされると考えられる。この硬化樹脂層の水分による膨潤は、硬化樹脂層の柔軟性が高まるほど強められる。硬化樹脂層形成用の樹脂組成物中の高分子量成分の量を上記範囲とすることにより、硬化樹脂層に過度の柔軟性が付与されるのを抑制することができ、その結果、硬化樹脂層の水分による膨潤を抑制して加熱加湿試験後の外観不良を防止することができる。
【0013】
前記透明導電膜が結晶化された前記透明導電性フィルムを85℃/85%RHの環境下に240時間置いた後の前記透明導電膜の平坦部の算術平均粗さRaが10nm以下であることが好ましい。これにより、外観不良、透明導電膜の抵抗値上昇を防ぐことができる。
【0014】
前記硬化樹脂層が前記シクロオレフィン系樹脂フィルムと前記透明導電膜との間に少なくとも設けられる場合、当該透明導電性フィルムは、透明導電膜の密着性や反射特性の制御等を目的として、前記硬化性樹脂層と前記透明導電膜との間に光学調整層をさらに備えていてもよい。
【0015】
本発明の透明導電性フィルムは、前記シクロオレフィン系樹脂フィルムが長尺状である透明導電性フィルムの長尺物が巻回された透明導電性フィルム巻回体の態様でも好適に用いることができる。
【0016】
本発明には、長尺状の偏光板と当該透明導電性フィルム巻回体とをロール・トゥ・ロール法により積層して得られる長尺状偏光板−透明導電性フィルム積層体も含まれる。
【0017】
また本発明には、透明導電性フィルムを含むタッチパネルも含まれる。
【0018】
本発明には、前記ハードコートフィルムを準備する工程、及び
前記ハードコートフィルム用の保護フィルムを用いることなく前記ハードコートフィルムの一方の主面側に前記透明導電膜を形成する工程
を含む当該透明導電性フィルムの製造方法も含まれる。
【0019】
当該製造方法では、柔軟性を高めた硬化樹脂層をシクロオレフィン系樹脂フィルム上に形成してハードコートフィルムの耐傷付き性及び耐破断性を向上させているので、従来のロール・トゥ・ロール法による透明導電膜の形成では必要だったシクロオレフィン系樹脂フィルム用の保護フィルムを用いることなく透明導電膜を形成することができる。保護フィルムを用いないので、保護フィルムを貼り合わせる工程を設ける必要がなく、また、フィルムロール1本あたりの巻き数を増加させることができ、透明導電性フィルムの生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルムの模式的断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る透明導電性フィルムの模式的断面図である。
図3】本発明の別の実施形態に係る透明導電性フィルムの模式的断面図である。
図4】180°折り曲げ試験の手順を説明するための模式的側面図である。
図5】加熱加湿試験後の透明導電性フィルムの外観の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の透明導電性フィルムの実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。上下等の位置関係を示す用語は、単に説明を容易にするために用いられており、本発明の構成を限定する意図は一切ない。
【0022】
[第1実施形態]
<透明導電性フィルム>
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本発明の透明導電性フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。透明導電性フィルム10は、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aと、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの一方の第1主面S1側に設けられた無機物を含む透明導電膜2と、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aと透明導電層2との間に設けられた硬化樹脂層1bとを備える。このうち、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aと硬化樹脂層1bとによりハードコートフィルム1が構成される。
【0023】
透明導電性フィルムがタッチパネル等の電子機器に組み込まれる際は、透明導電性フィルムの上下面を粘着剤で被覆されて用いられることが多く、そのような構成では内部ヘイズの大きさが重要になる。内部ヘイズの測定は、透明導電性フィルムの両面に粘着剤で被覆されたシクロオレフィン系樹脂フィルムを貼り合わせた構成で行う。好ましい内部ヘイズの値は2.0%以下であり、より好ましくは1.0%以下であり、最も好ましくは0.5%以下である。
【0024】
(シクロオレフィン系樹脂フィルム)
シクロオレフィン系樹脂フィルム1aはシクロオレフィン系樹脂により形成されており、高透明性、低位相差及び低吸水性との特性を有する。シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの採用により透明導電性フィルム10の光学特性の制御が可能となる。
【0025】
シクロオレフィン系樹脂フィルム1aを形成するシクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。シクロオレフィン系樹脂フィルム1aに用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)又はシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであってもよい。シクロオレフィンコポリマーとは、環状オレフィンとエチレン等のオレフィンとの共重合体である非結晶性の環状オレフィン系樹脂のことをいう。
【0026】
上記環状オレフィンとしては、多環式の環状オレフィンと単環式の環状オレフィンとが存在している。かかる多環式の環状オレフィンとしては、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブチルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、ジメチルシクロテトラドデセン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエンなどが挙げられる。また、単環式の環状オレフィンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエンなどが挙げられる。
【0027】
上記シクロオレフィン系樹脂からなる光学フィルムは市販品としても入手可能であり、例えば、Ticona社製のTopas、JSR社製のアートン、日本ゼオン社製のZEONOR、ZEONEX、三井化学社製のアペル等が挙げられる。
【0028】
シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの厚さは、50〜188μmの範囲内であることが好ましく、75〜100μmの範囲内であることがより好ましい。シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの厚さが上記範囲の下限未満であると、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの機械的強度が不足し、フィルム基材をロール状にして透明導電膜2を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚さが上記範囲の上限を超えると、透明導電膜2の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れない場合がある。
【0029】
シクロオレフィン系樹脂フィルム1aには、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、樹脂フィルム1a上に形成される硬化樹脂層や透明導電膜等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、硬化樹脂層や透明導電膜を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、樹脂フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
【0030】
(硬化樹脂層)
硬化樹脂層1bは、重量平均分子量が10000以上の高分子量成分と重量平均分子量が10000未満の低分子量成分とを含む樹脂組成物が硬化された層である。硬化樹脂層1bでは、重量平均分子量が10000以上の高分子量成分に由来する構造がソフトセグメントとして作用し、重量平均分子量が10000未満の低分子量成分に由来する構造がハードセグメントとして作用し、ハードコートフィルム1における耐傷付き性と耐破断性との両立を可能にする。
【0031】
上記樹脂組成物では、前記高分子量成分及び前記低分子量成分の合計量に対して、該高分子量成分の量が90重量%以下である。高分子量成分の上限は85重量%以下が好ましい。また、上記高分子量成分の量の下限は80重量%以上が好ましい。硬化樹脂層形成用の樹脂組成物中の高分子量成分の量を上記範囲の上限以下とすることにより、硬化樹脂層に過度の柔軟性が付与されるのを抑制することができ、その結果、硬化樹脂層の水分による膨潤を抑制して加熱加湿試験後の外観不良を防止することができる。樹脂組成物中の高分子量成分の量を上記範囲の下限以上とすることにより、硬化樹脂層1bに十分な柔軟性を付与することができる。
【0032】
(樹脂組成物)
硬化樹脂層2を形成する樹脂組成物としては、重量平均分子量が10000以上の高分子量成分と重量平均分子量が10000未満の低分子量成分とを含み、硬化樹脂層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。用いる樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0033】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーレベルの成分、及びポリマーレベルの成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。このような多官能の高分子量成分及び多官能の低分子量成分により樹脂組成物の硬化後には三次元架橋構造が形成されるとともに、多官能高分子量成分がソフトセグメントとして主に柔軟性に寄与し、多官能低分子量成分が架橋構造の架橋の起点となって主として硬度に寄与する。
【0034】
本実施形態において、紫外線硬化型樹脂としてはウレタン(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【0035】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、ポリオール、ジイソシアネートを構成成分として含有するものが用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一方のモノマーと、ポリオールとを用いて、水酸基を1個以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを作製し、これをジイソシアネートと反応させることによりウレタン(メタ)アクリレートを製造することができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、一種類を単独で使用でもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アルキルアクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
ポリオールは、水酸基を少なくとも2つ有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、トリシクロデカンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,2−ブチレンオキシドとエチレンオキシドとの共重合体およびプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール、脂肪族または環式ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
【0038】
ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種のジイソシアネート類を使用することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等、さらにはこれらの水添物等が挙げられる。
【0039】
樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレートの配合割合は、特に制限されない。硬化樹脂層の柔軟性やシクロオレフィン系樹脂フィルムに対する密着性の観点等を考慮して適宜設定することができる。
【0040】
硬化樹脂層を形成する樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化型樹脂として、上記各成分に加えて反応性希釈剤を有していてもよい。反応性希釈剤としては、比較的低粘度である1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上のモノマーおよびオリゴマー並びに単官能モノマー、例えばN−ビニルピロリドン、エチルアクリレート、プロピルアクリレート等のアクリル酸エステル類、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノニルフェニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、そのカプロラクトン変成物などの誘導体、スチレン、q−メチルスチレン、アクリル酸等、またはそれらの混合物などを使用することができる。
【0041】
樹脂組成物には、前記材料に加えて、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を用いることができる。チクソトロピー剤を用いると、硬化樹脂層が粒子を含む場合に、微細凹凸形状表面における突出粒子の形成に有利である。チクソトロピー剤としては、0.1μm以下のシリカ、マイカ等があげられる。これら添加剤の含有量は、通常、紫外線硬化型樹脂100重量部に対して、15重量部以下程度、好ましくは0.01〜15重量部、とするのが好適である。
【0042】
(粒子)
硬化樹脂層2は粒子を含んでいてもよい。硬化樹脂層2に粒子を配合することにより、硬化樹脂層2の表面に隆起を形成することができ、この隆起に倣って透明導電性膜2の表面にも隆起が形成されることになり、透明導電性フィルム10に耐ブロッキング性を好適に付与することができる。
【0043】
上記粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスチックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム等の無機系粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系粒子やシリコーン系粒子などがあげられる。前記粒子は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系粒子が好ましい。有機系粒子としては、屈折率の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
【0044】
粒子の最頻粒子径は、硬化樹脂層2の隆起の突出度や隆起以外の平坦領域の厚さとの関係などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。なお、透明導電性フィルムに耐ブロッキング性を十分に付与し、かつヘイズの上昇を十分に抑制するという観点から、粒子の最頻粒子径は硬化樹脂層の厚さの±50%の範囲内の粒子径を用いることが好ましい。なお、本明細書において、「最頻粒子径」とは、粒子分布の極大値を示す粒径をいい、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、製品名「FPTA−3000S」)を用いて、所定条件下(Sheath液:酢酸エチル、測定モード:HPF測定、測定方式:トータルカウント)で測定することによって求められる。測定試料は、粒子を酢酸エチルで1.0重量%に希釈し、超音波洗浄機を用いて均一に分散させたものを用いる。
【0045】
硬化樹脂層中の粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.05〜1.0重量部であることが好ましく、0.1〜0.5重量部であることがより好ましく、0.1〜0.2重量部であることがさらに好ましい。硬化樹脂層中の粒子の含有量が小さいと、硬化樹脂層の表面に耐ブロッキング性や易滑性を付与するのに十分な隆起が形成され難くなる傾向がある。一方、粒子の含有量が大きすぎると、粒子による光散乱に起因して透明導電性フィルムのヘイズが高くなり、視認性が低下する傾向がある。また、粒子の含有量が大きすぎると、硬化樹脂層の形成時(溶液の塗布時)に、スジが発生し、視認性が損なわれたり、透明導電膜の電気特性が不均一となったりする場合がある。
【0046】
(コーティング組成物)
硬化樹脂層を形成するのに用いられるコーティング組成物は、上記の樹脂、粒子、及び溶媒を含む。
【0047】
コーティング組成物は、上記の樹脂及び粒子を、必要に応じて溶媒、添加剤、触媒等と混合することにより調製される。コーティング組成物中の溶媒は、特に限定されるものではなく、用いる樹脂や塗装の下地となる部分の材質及び組成物の塗装方法などを考慮して適時選択される。溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0048】
コーティング組成物において、粒子は溶液中に分散されていることが好ましい。溶液中に粒子を分散させる方法としては、樹脂組成物溶液に粒子を添加して混合する方法や、予め溶媒中に分散させた粒子を樹脂組成物溶液に添加する方法等、各種公知の方法を採用することができる。
【0049】
コーティング組成物の固形分濃度は、1重量%〜70重量%が好ましく、2重量%〜50重量%がより好ましく、5重量%〜40重量%が最も好ましい。固形分濃度が低くなりすぎると、塗布後の乾燥工程で硬化樹脂層表面の隆起のばらつきが大きくなり、ヘイズが上昇する場合がある。一方、固形分濃度が大きくなりすぎると、含有成分が凝集しやすくなり、その結果、凝集部分が顕在化して透明導電性フィルムの外観を損ねる場合がある。
【0050】
(塗布及び硬化)
硬化樹脂層は、シクロオレフィン系樹脂フィルム上に、上記のコーティング組成物を塗布することにより形成される。シクロオレフィン系樹脂フィルム1a上へのコーティング組成物の塗布は、図2のような本実施形態の場合にはシクロオレフィン系樹脂フィルムの両面に行う。なお、コーティング組成物は、シクロオレフィン系樹脂フィルム1a上に直接行ってもよく、シクロオレフィン系樹脂フィルム1a上に形成されたアンダーコート層等の上に行うこともできる。
【0051】
コーティング組成物の塗布方法は、コーティング組成物及び塗装工程の状況に応じて適時選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法やエクストルージョンコート法などにより塗布することができる。
【0052】
コーティング組成物を塗布後、塗膜を硬化させることによって、硬化樹脂層を形成することができる。樹脂組成物が光硬化性である場合は、必要に応じた波長の光を発する光源を用いて光を照射することによって、硬化させることができる。照射する光として、例えば、露光量150mJ/cm以上の光、好ましくは200mJ/cm〜1000mJ/cmの光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば380nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。なお、光硬化処理の際に加熱を行ってもよい。
【0053】
硬化樹脂層の厚さは、0.5μm〜2.0μmが好ましく、0.8μm〜1.5μmがより好ましい。
【0054】
(透明導電膜)
透明導電膜2の構成材料は無機物を含む限り特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が好適に用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)などが好ましく用いられる。
【0055】
透明導電膜2の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を1×10Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さを10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。透明導電膜2の厚さが15nm未満であると膜表面の電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、透明導電膜2の厚さが35nmを超えると透明性の低下などをきたす場合がある。
【0056】
透明導電膜2の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えばハードコートフィルム1の硬化樹脂層1bに対する真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスを例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。なお、図1に示すように、硬化樹脂層2上に透明導電膜2を形成する場合、透明導電膜2がスパッタリング法等のドライプロセスによって形成されれば、透明導電膜2の表面は、その下地層である硬化樹脂層1b表面形状をほぼ維持する。そのため、硬化樹脂層1b上に透明導電膜2が形成されている場合においても、硬化樹脂層1bに隆起が存在する場合には、透明導電膜2表面にも耐ブロッキング性及び易滑性を好適に付与することができる。
【0057】
ハードコートフィルム1の硬化樹脂層1b上に透明導電膜2を形成する際には、ハードコートフィルム用の保護フィルムを用いることなく透明導電膜2の形成を行うことができる。従来のハードコートフィルムではフィルム搬送工程等における耐破断性が十分考慮されていないことから、保護フィルムを貼り合わせた状態で諸工程を行う必要がある。本発明のハードコートフィルムでは、硬化樹脂層に柔軟性を付与することで耐破断性を向上させているので、保護フィルムを用いることなく透明導電膜2を形成することができる。保護フィルムを用いないので、保護フィルムの貼り合わせ工程を省略可能であるとともに、ロール1本あたりの巻き数を増加させることができ、透明導電性フィルムの生産性を向上させることができる。また、保護フィルムは最終的には廃棄される部材であるが、これを用いなくて済むことから、コスト低減にも寄与し得る。
【0058】
透明導電膜2は、必要に応じて加熱アニール処理(例えば、大気雰囲気下、80〜150℃で30〜90分間程度)を施して結晶化することができる。透明導電膜を結晶化することで、透明導電膜が低抵抗化されることに加えて、透明性及び耐久性が向上する。透明導電性フィルム10において硬化樹脂層1bの厚さを上記範囲とすることにより、加熱アニール処理の際にもカールの発生が抑制され、ハンドリング性に優れる。
【0059】
透明導電膜2が結晶化された透明導電性フィルム10を85℃/85%RHの環境下に240時間置いた後の透明導電膜2の平坦部の算術平均粗さRaは10nm以下であることが好ましく、7nm以下がより好ましい。これにより、外観不良、透明導電膜の抵抗値上昇を防ぐことができる。上記算術平均粗さRaの下限は小さいほど好ましいが、透明導電膜の生産性の観点等から5nm以上であってもよい。
【0060】
また、透明導電膜2は、エッチング等によりパターン化してもよい。例えば、静電容量方式のタッチパネルやマトリックス式の抵抗膜方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムにおいては、透明導電膜2がストライプ状にパターン化されることが好ましい。なお、エッチングにより透明導電膜2をパターン化する場合、先に透明導電膜2の結晶化を行うと、エッチングによるパターン化が困難となる場合がある。そのため、透明導電膜2のアニール処理は、透明導電膜2をパターン化した後に行うことが好ましい。
【0061】
<透明導電性フィルム巻回体>
本実施形態の透明導電性フィルム10は、長尺状の透明導電性フィルムがロール状に巻回された透明導電性フィルム巻回体とすることができる。長尺状の透明導電性フィルムの巻回体は、長尺状のシクロオレフィン系樹脂フィルムのロール状巻回体を用い、前述の硬化樹脂層、透明導電膜、及び光学調整層(後述)等の付加的な層を、いずれもロール・トゥ・ロール法により形成することによって形成し得る。このような巻回体の形成にあたっては、透明導電性フィルムの表面に、滑り性や耐ブロッキング性を考慮して、弱粘着層を備える保護フィルム(セパレータ)を貼り合わせた上で、ロール状に巻回してもよい
【0062】
<長尺状偏光板−透明導電性フィルム積層体>
上記透明導電性フィルム巻回体は、ロール・トゥ・ロール法により長尺状の偏光板と貼り合わせて、長尺状偏光板−透明導電性フィルム積層体の形態とすることができる。例えば、図1のシクロオレフィン系樹脂フィルム1aの硬化樹脂層1b形成面側と反対側の第2主面S2に、透明な粘着剤層を介して長尺状の偏光板を貼り合わせて、長尺状偏光板−透明導電性フィルム積層体を形成することができる。シクロオレフィン系樹脂フィルム1aと偏光板との貼り合わせは、偏光板の方に粘着剤層を設けておき、これにシクロオレフィン系樹脂フィルム1aを貼り合わせるようにしてもよい。また、逆にシクロオレフィン系樹脂フィルム1aの方に粘着剤層を設けておき、これに偏光板を貼り合わせるようにしてもよい。また、セパレーター上に粘着剤層を予め形成し、偏光板又はシクロオレフィン系樹脂フィルム1aに粘着剤層を転写することもできる。
【0063】
上記粘着剤層としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0064】
上記偏光板は、一般的に偏光子の片面又は両面に透明保護フィルムが積層された構造を有する。偏光子は特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0065】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0066】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0067】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄膜性などの点より1〜500μm程度である。
【0068】
前記偏光子と透明保護フィルムとは通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0069】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0070】
<タッチパネル>
透明導電性フィルム10は、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルに好適に適用できる。
【0071】
タッチパネルの形成に際しては、透明導電性フィルムの一方または両方の主面に透明な粘着剤層を介して、ガラスや高分子フィルム等の他の基材等を貼り合わせることができる。例えば、透明導電性フィルムの透明導電膜2が形成されていない側の面に透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わせられた積層体を形成してもよい。透明基体は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(例えば透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。また、透明導電性フィルムに貼り合わせる透明基体の外表面にハードコート層を設けることもできる。
【0072】
透明導電性フィルムと基材との貼り合わせに用いられる粘着剤層としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0073】
上記の本発明にかかる透明導電性フィルムを、タッチパネルの形成に用いた場合、タッチパネル形成時のハンドリング性に優れる。そのため、透明性及び視認性に優れたタッチパネルを生産性高く製造することが可能である。
【0074】
<画像表示装置>
本実施形態の透明導電性フィルムは画像表示装置に組み込むことができる。画像表示装置は、画像表示素子及び上述のタッチパネルを有する。画像表示素子は、一般的に画像表示セルの視認側にカラーフィルタを備え、視認側と反対側に偏光板を備える。画像表示セルとしては、液晶セルや有機ELセル等を用いることができる。
【0075】
[第2実施形態]
本発明の透明導電性フィルムは図2に示した形態もとり得る。図2に示した透明導電性フィルム11では、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの第1主面S1側に透明導電膜2が設けられている。また、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aと透明導電層2との間に硬化樹脂層1bが設けられ、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの第1主面S1と反対側の第2主面S2側に硬化樹脂層1b´が設けられている。すなわち、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの両面に硬化樹脂層が設けられている。本実施形態では、硬化樹脂層1b、シクロオレフィン系樹脂フィルム1a及び硬化樹脂層1b´によりハードコートフィルム1´が構成される。その他の構成については第1実施形態と同様とすることができる。
【0076】
[第3実施形態]
図3に示す透明導電性フィルム12では、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの第1主面S1側に透明導電膜2が設けられている。シクロオレフィン系樹脂フィルム1aと透明導電層2との間に硬化樹脂層1bが設けられ、硬化樹脂層1bと透明導電膜2との間に光学調整層3がさらに設けられている。透明導電性フィルム12は、シクロオレフィン系樹脂フィルム1aの硬化樹脂層1bとは反対側の第2主面S2にさらに硬化樹脂層(図示せず)を備えていてもよく、この場合はシクロオレフィン系樹脂フィルム1aの両面に硬化樹脂層が形成されることになる。
【0077】
<光学調整層>
本実施形態の透明導電性フィルム12においては、硬化樹脂層1bと透明導電膜2との間に、透明導電膜の密着性や反射特性の制御等を目的として光学調整層3が設けられている。光学調整層は1層でもよく、2層あるいはそれ以上設けてもよい。光学調整層は、無機物、有機物、あるいは無機物と有機物との混合物により形成される。光学調整層を形成する材料としては、NaF、NaAlF、LiF、MgF、CaF2、SiO、LaF、CeF、Al、TiO、Ta、ZrO、ZnO、ZnS、SiO(xは1.5以上2未満)などの無機物や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマーなどの有機物が挙げられる。特に、有機物として、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用することが好ましい。光学調整層は、上記の材料を用いて、グラビアコート法やバーコート法などの塗工法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより形成できる。
【0078】
光学調整層3の厚さは、10nm〜200nmであることが好ましく、20nm〜150nmであることがより好ましく、20nm〜130nmであることがさらに好ましい。光学調整層の厚さが過度に小さいと連続被膜となりにくい。また、光学調整層の厚さが過度に大きいと、透明導電性フィルムの透明性が低下したり、光学調整層にクラックが生じ易くなったりする傾向がある。
【0079】
光学調整層は、平均粒径が1nm〜500nmのナノ微粒子を有していてもよい。光学調整層中のナノ微粒子の含有量は0.1重量%〜90重量%であることが好ましい。光学調整層に用いられるナノ微粒子の平均粒径は、上述のように1nm〜500nmの範囲であることが好ましく、5nm〜300nmであることがより好ましい。また、光学調整層中のナノ微粒子の含有量は10重量%〜80重量%であることがより好ましく、20重量%〜70重量%であることがさらに好ましい。光学調整層中にナノ微粒子を含有することによって、光学調整層自体の屈折率の調整を容易に行うことができる。
【0080】
ナノ微粒子を形成する無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、中空ナノシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中、特に示さない限り「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【0082】
[実施例1]
(硬化樹脂層形成用の樹脂組成物の調製)
重合性官能基としてアクリロイル基を3個以上有するウレタン系のハードコート形成材料(ユニディック RS28−605、DIC社製、固形分:50%)を20部と、重合性官能基としてアクリロイル基を3個以上有するウレタン系のハードコート形成材料(ユニディック RS29−120、固形分:60%)を80部と、全樹脂成分に対して重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製)を3部とを、固形分濃度が15%となる様に溶媒(酢酸エチル)で希釈し、樹脂組成物溶液を調製した。調製した樹脂組成物溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて重量平均分子量を確認したところ、樹脂組成物溶液には全樹脂成分に対して重量平均分子量が10000〜10万の成分が81重量%含まれていた。
【0083】
(硬化樹脂層の形成)
調製した樹脂組成物溶液を厚さ100μmのノルボルネン系樹脂フィルム(品番名:ZF16、日本ゼオン社製)の両面に塗布し、80℃で3分間乾燥したのち、直ちにオゾンタイプ高圧水銀灯(80W/cm、15cm集光型、積算光量:300mJ/cm)で紫外線照射を行い、厚さ1μmの硬化樹脂層を形成した。これによりシクロオレフィン系樹脂フィルムの両面に硬化樹脂層が形成されたハードコートフィルムを得た。
【0084】
(透明導電膜の成膜)
平行平板型の巻取式マグネトロンスパッタ装置に酸化インジウムと酸化スズとを97:3の重量比で含有する焼結体ターゲットを装着し、上記ハードコートフィルムを搬送しながら、真空排気により、水の分圧が5×10−4Paとなるまで真空排気を行った。その後、流量900sccmでアルゴンガスを導入し、搬送速度7.7m/分、搬送張力40〜120Nで基材を搬送しながら、出力12.5kWでDCスパッタリングにより成膜を行い、ハードコートフィルムの硬化樹脂層上に厚さ27nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の表面抵抗を四端子法により測定したところ、450Ω/□であった。
【0085】
(透明導電膜の結晶化)
ハードコートフィルム上に透明導電膜が形成された積層体を幅50mm×長さ500mmのシート状に切り出し、140℃のオーブン内で90分間加熱して透明導電膜を結晶化させた。この透明導電性フィルムの表面抵抗は150Ω/□であった。
【0086】
[実施例2]
硬化樹脂層形成用の樹脂組成物としてユニディック RS28−605の配合量を90部、ユニディック RS29−120の配合量を10部としたこと以外は実施例1と同様に透明導電性フィルムを作製した。樹脂組成物中の全樹脂成分に対して重量平均分子量が10000〜10万の成分が86重量%含まれていた。
【0087】
[比較例1]
硬化樹脂層形成用の樹脂組成物としてユニディック RS28−605の配合量を70部、ユニディック RS29−120の配合量を30部としたこと以外は実施例1と同様に透明導電性フィルムを作製した。樹脂組成物中の全樹脂成分に対して重量平均分子量が10000〜10万の成分が77重量%含まれていた。
【0088】
[比較例2]
硬化樹脂層形成用の樹脂組成物としてユニディック RS28−605の配合量を100部とし、ユニディック RS29−120を配合しなかったこと以外は実施例1と同様の透明導電性フィルムを作製した。樹脂組成物中の全樹脂成分に対して重量平均分子量が10000〜10万の成分が91重量%含まれていた。
【0089】
<重量平均分子量の測定>
調製した樹脂組成物溶液中の成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定を行った。GPCの測定条件は、下記のとおりである。
測定機器:東ソー製の商品名HLC−8120
GPCカラム:東ソー製の商品名G4000HXL+商品名G2000HXL+商品名G1000HXL(各7.8mmφ×30cm、計90cm)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.8ml/分
入り口圧:6.6MPa
標準試料:ポリスチレン
【0090】
<180°折り曲げ試験>
上記で作製したハードコートフィルムから幅50mm×長さ100mmのサンプルを切り出した。次に、図4に示すように、このサンプルを2つ折りにし、端部同士を市販の粘着テープで貼り合わせ、これを基台Bに載置した。2つ折りにより得られる幅50mm×長さ50mmの面に、底面が直径50mmの円形のおもりW(500g)を静置し、その際にハードコートフィルムの破断が生じるか否かを確認した。ハードコートフィルムの破断が生じなかった場合を「○」、破断が生じた場合を「×」として評価した。
【0091】
<加熱加湿試験による信頼性評価>
結晶化後の幅50mm×長さ500mmの透明導電性フィルムをサンプルとし、これを温度85℃、湿度85%の恒温恒湿槽に240時間投入した。サンプルを恒温恒湿槽から取り出し後、サンプルの外観を光学顕微鏡(倍率:50倍)を用いて確認し、斑点状の外観不良の発生の有無により信頼性評価を行った。斑点状の外観不良が発生しなかった場合を「○」、斑点状の外観不良が発生した場合を「×」として評価した。また、加熱加湿試験を行う前後での結晶化後の幅50mm×長さ500mmの透明導電性フィルムサンプルの透明導電膜の算術平均粗さRaを光学式プロフィロメーター(Veeco Instruments社製、Optical Profilometer NT3300)を用いて倍率10倍にて測定した。図5に斑点状の外観不良が発生したサンプルの顕微鏡写真を示す。
【0092】
【表1】
【0093】
(結果及び考察)
実施例1及び2のハードコートフィルムでは180°折り曲げ試験において破断を起こさず、透明導電性フィルムの加熱加湿試験においても外観不良が生じなかった。一方、比較例1では透明導電性フィルムの信頼性には問題なかったものの、ハードコートフィルムの180°折り曲げ試験では破断が生じた。これは重量平均分子量が10000以上の高分子量成分の量が少なすぎ、硬化樹脂層に十分な柔軟性を付与することができなかったことに起因すると考えられる。比較例2ではハードコートフィルムの180°折り曲げ試験は問題なかったものの、透明導電性フィルムの加熱加湿試験では外観不良が発生した。これは、上記高分子量成分の量が多すぎて硬化樹脂層の柔軟性が高くなりすぎ、加熱加湿試験の際に硬化樹脂層の水分による膨潤が生じたことに起因すると考えられる。
【符号の説明】
【0094】
1 ハードコートフィルム
1a シクロオレフィン系樹脂フィルム
1b、1b´ 硬化樹脂層
2 透明導電膜
3 光学調整層
10、11、12 透明導電性フィルム
図1
図2
図3
図4
図5