(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1情報における前記特性値は、前記室内機の容量に応じた冷媒循環量または圧縮機周波数を想定して設定されている請求項1または請求項2に記載の空調システムの評価支援装置。
前記第1補正値は、前記接続室内機の合計容量が前記室外機の定格能力における室内機容量と一致している場合に1に設定され、前記接続室内機の合計容量が大きくなるほど小さい値に設定される請求項4に記載の空調システムの評価支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室外機への室内機の接続パターンはさまざまであり、また、近年では、共通の室外機に対して異なるタイプ(例えば、天井カセットタイプや壁かけタイプ等)の複数の室内機が接続されることも増えてきた。このような異なるタイプの室内機が接続されている場合には、SEERやSCOPの計算がより複雑となり、作業者の負担が増大する。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、SEER及びSCOPの評価における作業者の負担や時間を低減することのできる空調システムの評価支援装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、室外機に接続されている接続室内機を特定する識別情報を入力するための入力手段と、前記室外機に接続可能な室内機の識別情報と該室内機の熱交換器に関する特性値とが関連付けられた第1情報と、各前記接続室内機に対応する前記特性値を第1情報から取得し、取得した前記特性値を積算して積算特性値を算出する積算手段と、積算特性値とシステム成績係数とが関連付けられた第2情報と、前記積算手段によって算出された前記積算特性値に対応するシステム成績係数を前記第2情報から取得するシステム成績係数取得手段と、システム成績係数と期間エネルギー効率とが関連付けられた第3情報と、前記システム成績係数取得手段によって取得された前記システム成績係数に対応する期間エネルギー効率を前記第3情報から取得する期間エネルギー効率取得手段とを具備する空調システムの評価支援装置である。
【0007】
上記態様によれば、入力手段から室外機に接続されている接続室内機の識別情報が入力されると、各接続室内機の熱交換器に関する特性値が第1情報から取得され、取得した特性値を積算することで、積算特性値が算出される。続いて、積算特性値に対応するシステム成績係数が第2情報から取得され、このシステム成績係数に対応する期間エネルギー効率が第3情報から取得される。このようにして取得された期間エネルギー効率(SEER)は、例えば、表示画面等の出力手段に出力され、ユーザに提示される。
このように、本態様によれば、室外機に接続されている室内機を特定する識別情報を入力するという簡易な作業により、期間エネルギー効率を得ることができる。これにより、ユーザの労力や時間を削減することが可能となる。
【0008】
本発明の第2態様は、室外機に接続されている接続室内機を特定する識別情報を入力するための入力手段と、前記室外機に接続可能な室内機の識別情報と該室内機の熱交換器に関する特性値とが関連付けられた第1情報と、各前記接続室内機に対応する前記特性値を第1情報から取得し、取得した前記特性値を積算して積算特性値を算出する積算手段と、積算特性値とシステム成績係数とが関連付けられた第2情報と、前記積算手段によって算出された前記積算特性値に対応するシステム成績係数を前記第2情報から取得するシステム成績係数取得手段と、システム成績係数と期間成績係数とが関連付けられた第4情報と、前記システム成績係数取得手段によって取得された前記システム成績係数に対応する期間成績係数を前記第4情報から取得する期間成績係数取得手段とを具備する空調システムの評価支援装置である。
【0009】
上記態様によれば、入力手段から室外機に接続されている接続室内機の識別情報が入力されると、各接続室内機の熱交換器に関する特性値が第1情報から取得され、取得した特性値を積算することで、積算特性値が算出される。続いて、積算特性値に対応するシステム成績係数が第2情報から取得され、このシステム成績係数に対応する期間成績係数が第4情報から取得される。このようにして取得された期間成績係数(SCOP)は、例えば、表示画面等の出力手段に出力され、ユーザに提示される。
このように、本態様によれば、室外機に接続されている室内機を特定する識別情報を入力するという簡易な作業により、期間成績係数を得ることができる。これにより、ユーザの労力や時間を削減することが可能となる。
【0010】
上記空調システムの評価支援装置において、前記第1情報における前記特性値は、前記室内機の容量に応じた冷媒循環量または圧縮機周波数を想定して設定されていてもよい。これにより、冷媒循環量または圧縮機周波数を考慮した特性値とすることができる。
【0011】
上記空調システムの評価支援装置は、前記接続室内機の合計容量と第1補正値とが関連付けられた第5情報と、各前記接続室内機の合計容量に対応する第1補正値を前記第5情報から取得し、取得した第1補正値を用いて前記積算特性値を補正する第1補正手段とを備え、前記システム成績係数取得手段は、補正後の前記積算特性値に対応するシステム成績係数を前記第2情報から取得することとしてもよい。
【0012】
このような構成によれば、接続室内機の合計容量に応じた第1補正値が取得され、取得した第1補正値によって積算特性値が補正される。これにより、接続室内機の合計容量を考慮した積算特性値を得ることが可能となる。したがって、積算特性値の算出精度を向上させることができ、ひいては期間エネルギー効率、期間成績係数の算出精度を高めることが可能となる。
例えば、前記第1補正値は、前記接続室内機の合計容量が前記室外機の定格能力における室内機容量と一致している場合に1に設定され、前記接続室内機の合計容量が大きくなるほど小さい値に設定される。
【0013】
上記空調システムの評価支援装置において、前記第2情報は、冷房運転の場合のものと暖房運転の場合のものとそれぞれ設けられていてもよい。冷房運転及び暖房運転の両方の情報を保有しておくことで、適切なシステム成績係数を用いて、期間エネルギー効率、期間成績係数を得ることが可能となる。
【0014】
上記空調システムの評価支援装置において、前記特性値は、熱交換器の有効度である場合に、該評価支援装置は、前記第2情報に代えて、積算特性値と室内熱交換量とが関連付けられた第6情報と、積算特性値とインバータ及び圧縮機の消費電力の和とが関連付けられた第7情報とを有し、前記システム成績係数取得手段は、前記積算特性値に対応する室内熱交換量及び前記インバータ及び圧縮機の消費電力の和を前記第6情報及び前記第7情報からそれぞれ取得し、取得した前記室内熱交換量及び前記インバータ及び圧縮機の消費電力の和、室内ファンモータの入力、及び室内外ファンモータの消費電力を予め設定されている所定の演算式に用いることにより、システム成績係数を算出することとしてもよい。
【0015】
上記空調システムの評価支援装置は、待機電力と第2補正値とが関連付けられた第8情報と、前記接続室内機の待機電力に対応する第2補正値を前記第8情報から取得し、前記第2補正値を用いて前記期間エネルギー効率取得手段によって取得された期間エネルギー効率を補正する第2補正手段とを更に備えていてもよい。
このように、待機電力に関する第2補正値を用いて期間エネルギー効率を補正するので、待機電力も考慮した期間エネルギー効率を算出することが可能となる。
【0016】
本発明の第3態様は、室外機に接続されている接続室内機を特定するための識別情報を取得する第1工程と、前記室外機に接続可能な室内機の識別情報と該室内機の熱交換器に関する特性値とが関連付けられた第1情報から、各前記接続室内機に対応する前記特性値を取得し、取得した各前記特性値を積算して積算特性値を算出する第2工程と、積算特性値とシステム成績係数とが関連付けられた第2情報から、前記第2工程で算出した前記積算特性値に対応するシステム成績係数を取得する第3工程と、システム成績係数と期間エネルギー効率とが関連付けられた第3情報から、前記第3工程で取得した前記システム成績係数に対応する期間エネルギー効率を取得する第4工程とを有する空調システムの評価支援方法である。
【0017】
本発明の第4態様は、室外機に接続されている接続室内機を特定するための識別情報を取得する第1工程と、前記室外機に接続可能な室内機の識別情報と該室内機の熱交換器に関する特性値とが関連付けられた第1情報から、各前記接続室内機に対応する前記特性値を取得し、取得した各前記特性値を積算して積算特性値を算出する第2工程と、積算特性値とシステム成績係数とが関連付けられた第2情報から、前記第2工程で算出した前記積算特性値に対応するシステム成績係数を取得する第3工程と、システム成績係数と期間成績係数とが関連付けられた第4情報から、前記第3工程で取得したシステム成績係数に対応する期間成績係数を取得する第5工程とを有する空調システムの評価支援方法である。
【0018】
本発明の第5態様は、室外機に接続されている接続室内機を特定するための識別情報を取得する第1処理と、前記室外機に接続可能な室内機の識別情報と該室内機の熱交換器に関する特性値とが関連付けられた第1情報から、各前記接続室内機に対応する前記特性値を取得し、取得した各前記特性値を積算して積算特性値を算出する第2処理と、積算特性値とシステム成績係数とが関連付けられた第2情報から、前記第2処理で算出した前記積算特性値に対応するシステム成績係数を取得する第3処理と、システム成績係数と期間エネルギー効率とが関連付けられた第3情報から、前記第3処理で取得した前記システム成績係数に対応する期間エネルギー効率を取得する第4処理とをコンピュータに実行させるための空調システムの評価支援プログラムである。
【0019】
本発明の第6態様は、室外機に接続されている接続室内機を特定するための識別情報を取得する第1処理と、前記室外機に接続可能な室内機の識別情報と該室内機の熱交換器に関する特性値とが関連付けられた第1情報から、各前記接続室内機に対応する前記特性値を取得し、取得した各前記特性値を積算して積算特性値を算出する第2処理と、積算特性値とシステム成績係数とが関連付けられた第2情報から、前記第2処理で算出した前記積算特性値に対応するシステム成績係数を取得する第3処理と、システム成績係数と期間成績係数とが関連付けられた第4情報から、前記第3処理で取得したシステム成績係数に対応する期間成績係数を取得する第5処理とをコンピュータに実行させるための空調システムの評価支援プログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、省エネルギー評価基準の一つであるSEER及びSCOPの評価におけるユーザの労力及び作業時間の低減を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態に係る空調システムの評価支援装置及び方法並びにプログラムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空調システムの評価支援装置(以下「評価支援装置」という。)について説明するための図である。評価支援装置10aは、1台の室外機2と、該室外機2に接続される複数の室内機5(以下、室外機2に接続される室内機を「接続室内機5」として、他の室内機と区別する。)を備える空調システム1の省エネルギーに関する評価値であるSEER及びSCOPを算出するものである。
以下の説明では、便宜上、評価支援装置10aと評価対象である空調システム1の室外機2とは、1対1で対応している場合を想定して説明するが、さまざまな室外機に対して以下に示す機能をそれぞれ用意することにより、汎用性を持たせることが可能である。
【0023】
図2は、本実施形態に係る評価支援装置10aのハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
図2に示すように、評価支援装置10aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)11と、CPU11が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)12と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)13と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)14と、ネットワークに接続するための通信インターフェース15と、外部記憶装置16が装着されるアクセス部17と、キーボードやマウス等からなる入力部18と、情報をユーザに提供する液晶表示装置等の出力部19を備えている。これら各部は、バス20を介して接続されている。
【0024】
上記ROM12には、各種プログラム(例えば、評価支援プログラム)が格納されており、CPU11がROM12からRAM13にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
なお、CPU11が実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROM12に限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。
【0025】
評価支援装置10aは、例えば、空調システムとは独立したシステムとして存在していてもよいし、空調システムに関連する装置(例えば、中央制御装置等)が備える機能の一部として、装置内に設けられていてもよい。
また、評価支援装置10は、例えば、空調システムの製造元に設置され、製造元における作業員によって操作されるものとしてもよく、あるいは、空調システムの所有者側に設置され、所有者側の作業員によって操作されるものでもよい。また、所有者側の端末と製造元に設置された評価支援装置10とをネットワークで接続することにより、所有者側の端末から入力された入力情報に基づいて、評価支援装置10においてSEER及びSCOPが算出され、算出結果が所有者側の端末に表示されるような態様としてもよい。このように、空調システムの使用態様については特に限定されない。
【0026】
図3は、評価支援装置10aが備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
図3に示されるように、評価支援装置10aは、入力部21、記憶部22、積算部23、システム成績係数取得部(以下「システムCOP取得部」という。)24、期間エネルギー効率取得部(以下「SEER取得部」という。)25、及び期間成績係数取得部(以下「SCOP取得部」という。)26、出力部27を備えている。
【0027】
入力部21は、評価対象となる空調システム1の室外機2に接続された接続室内機5を特定するための識別情報を入力するためのものである。識別情報は、少なくとも室内機タイプ(壁掛け、天井カセット、ダクト付等)及び室内機容量を含んでいる。
室内機の識別情報の入力態様としては、表示画面にプルダウン方式で、当該空調システムの室外機に接続可能な全ての室内機タイプ及び室内容量が選択可能に表示されるようにし、ユーザがこれらの中から該当するタイプ及び室内機容量を選択して確定操作を行うことが一例として挙げられる。識別情報の入力態様については、接続室内機5のタイプ及び容量が入力できるものであればよく、その具体的方法については特に限定されない。
【0028】
記憶部22には、室外機2に接続可能な各室内機の識別情報と該室内機の熱交換器に関する特性値とが関連付けられた第1情報、積算特性値とシステム成績係数(システムCOP)とが関連付けられた第2情報、システムCOPとSEERとが関連付けられた第3情報、システムCOPとSCOPとが関連付けられた第4情報等が格納されている。
記憶部22に格納されているこれら情報は、通信媒体(例えば、インターネット等)を介して所定のサーバからダウンロードすることにより、取得されるものでもよい。
第1情報〜第4情報については、順次説明する。
【0029】
まず、第1情報について詳しく説明する。
第1情報における各室内機の熱交換器に関する特性値Cは、熱交換器の有効度であり、例えば、以下の(1)式に示すように、熱容量流量Cmin、熱交換有効率εを主なパラメータとする演算式により算出される。熱交換有効率εは、(2)式に示すように、冷媒循環量Fを主なパラメータとする演算式により算出される。
【0030】
C=f(Cmin,ε) (1)
ε=f(F) (2)
【0031】
ここで、冷媒循環量Fは、室内機容量に応じて変化する。例えば、容量28[kW]の室内機の場合、室外機の定格負荷における室内機最大容量が112[kW]とすると、冷媒循環量F
(28)は、以下の(3)式を用いて算出される。
【0032】
F
(28)=F
tol×(28/112) (3)
【0033】
(3)式において、F
tolは、定格負荷時の合計循環量であり、室外機固有の値である。また、上記室内機最大容量112[kW]についても室外機固有の値である。なお、上記(3)式において、定格負荷時の合計循環量F
tolに代えて定格負荷時の圧縮機周波数[Hz]を用いれば、当該室内機容量に応じた圧縮機周波数を得ることができる。
【0034】
このようにして、室外機2に接続可能な各室内機について室内機容量に応じた冷媒循環量を考慮した特性値Cをそれぞれ算出し、算出した特性値Cを各室内機の識別情報(室内機タイプと容量の組み合わせ)と関連付けることにより第1情報が作成される。
【0035】
積算部23は、入力部21から入力された接続室内機5の識別情報に関連付けられている特性値Cを第1情報からそれぞれ取得し、取得した特性値Cを積算することにより、積算特性値ΣCを算出する。
【0036】
例えば、壁掛けタイプの容量28[kW]の室内機が2台と、天井カセットタイプの容量56[kW]の室内機が2台接続された場合、積算特性値ΣCは以下の通りとなる。
【0037】
ΣC=2×C
(28)+2×C
(56) (4)
【0038】
上記(4)式において、C
(28)は壁掛けタイプの容量28[kW]の室内機の熱交換器の有効度、C
(56)は天井カセットタイプの容量56[kW]の室内機の熱交換器の有効度である。
【0039】
次に、第2情報について説明する。
例えば、室外機2に接続される室内機の組み合わせパターンは、複数存在する。例えば、容量56[kW]の壁掛けタイプの室内機を2台接続するパターン、容量56[kW]の天井カセットタイプの室内機を2台接続するパターン、容量28[kW]の天井カセットタイプの室内機を4台接続するパターン、容量28[kW]の壁掛けタイプの室内機を2台及び容量56[kW]の壁掛けタイプの室内機を2台接続するパターン等である。
【0040】
そこで、事前に、室内機の接続パターンの各々について、システムCOPを演算し、これらシステムCOPと積算特性値ΣCとを関連づけることで第2情報を作成する。ここで、第2情報は、室内機の接続パターン毎に対応してそれぞれ設けられていてもよいし、接続パターン間でシステムCOP特性が似通っていた場合には、それらの特性の近似曲線を求めることで接続パターン毎のシステムCOP特性を1つに統合することとしてもよい。また、システムCOPは、冷房時と暖房時とで値が変わるため、冷房時と暖房時の両方について第2情報が用意されていてもよい。
図4に、近似曲線を用いた場合の暖房時における第2情報の一例を示す。
【0041】
システムCOP取得部24は、記憶部22に格納されている第2情報から積算部23によって算出された積算特性値ΣCに対応するシステムCOPを取得する。このとき、冷房に対応する第2情報と、暖房に対応する第2情報とが記憶部22に格納されていた場合には、暖房・冷房のそれぞれの第2情報からシステムCOPをそれぞれ取得するとよい。
【0042】
次に、第3情報及び第4情報について説明する。
室外機2に接続可能な室内機の各接続パターンについて事前に試験やシミュレーションを行うことで、システムCOPとSEERとの関係を求め、これらの近似曲線を得ることで、第3情報を得る。
図5に第3情報の一例を示す。
図5において、横軸はシステムCOP、縦軸はSEERである。
同様に、接続パターン毎に、システムCOPとSCOPとの関係を求め、これらの近似曲線を得ることで第4情報を得る。
図6に第4情報の一例を示す。
図6において、横軸はシステムCOP、縦軸はSCOPである。
【0043】
ここで、SEER、SCOPに関連付けられるシステムCOPについては、冷房時のものであってもよいし、暖房時のものであってもよい。例えば、上述したシステムCOP取得部において得られるシステムCOPに合わせて、第3情報、第4情報が用意されていればよい。また、システムCOP取得部24によって、冷房時のシステムCOPと、暖房時のシステムCOPとの両方が得られる場合には、例えば、SEERについては冷房時のシステムCOPと関連付けられた第3情報を用意し、SCOPについては暖房時のシステムCOPと関連付けられた第4情報を用意することとしてもよい。
【0044】
SEER取得部25は、システムCOP取得部24によって取得されたシステムCOPに対応するSEERを第3情報から取得する。
SCOP取得部26は、システムCOP取得部24によって取得されたシステムCOPに対応するSCOPを第4情報から取得する。
出力部27は、例えば、表示装置であり、SEER取得部25によって取得されたEESRと、SCOP取得部26によって取得されたSCOPとを表示画面に表示することによりユーザに提示する。
【0045】
次に、上記構成を備える評価支援装置10aにおける処理手順について、
図7を参照して説明する。
まず、ユーザによって入力部21が操作されることにより、当該室外機2に接続されている接続室内機5の識別情報として、室内機タイプ及び室内機容量が順次入力される。入力部21により入力された接続室内機5の識別情報を取得すると(ステップSA1)、各接続室内機5の特性値Cを第1情報から取得し(ステップSA2)、取得した特性値Cを積算することで、積算特性値ΣCを算出する(ステップSA3)。次に、積算特性値ΣCに対応するシステムCOPを第2情報から取得する(ステップSA4)。続いて、システムCOPに対応するSEERを第3情報から取得し(ステップSA5)、システムCOPに対応するSCOPを第4情報から取得する(ステップSA6)。このようにして取得されたEESR及びSCOPは、出力部27に表示されるなどして、ユーザに提示される(ステップSA7)。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る空調システムの評価支援装置及び方法並びにプログラムによれば、室外機2に接続されている接続室内機5を特定する識別情報を入力するという簡易な作業により、SEERやSCOPを得ることができる。これにより、ユーザの労力や時間を削減することが可能となる。
ここで、本実施形態においては、特性値Cとして熱交換器の有効度を用いたが、これに代えて、熱交換能力を用いることとしてもよい。熱交換能力は、以下の(5)式で表される。
【0047】
熱交換能力=熱交換器の有効度×(熱交換器温度−吸入空気温度) (5)
【0048】
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態に係る第1情報に設定されている特性値C、すなわち、熱交換器の有効度は、室外機2の定格負荷(負荷100%)における室内機最大容量に対する室内機容量の比率に基づき冷媒循環量Fを算出し、この冷媒循環量Fを考慮して算出されたものであった。
しかし、室外機2には、定格負荷を超える室内機容量(例えば、上記の場合112[kW]を超える室内機容量)あるいは定格に満たない室内機容量(例えば、上記の場合112[kW]未満の室内機容量)の室内機が接続されることもある。
【0049】
このように、室外機2に接続されている室内機容量の和が、室外機2の定格に対応する室内機最大容量(例えば、第1実施形態の例では112[kW])以外の容量とされていた場合には、上述した第1情報から得られる積算特性値ΣCには容量変化による誤差が含まれてしまうこととなる。
【0050】
したがって、本実施形態では、このような接続室内機の合計室内機容量の違いによる積算特性値の誤差を低減するため、
図3に示した第1実施形態に係る評価支援装置に対して、
図8に示すように、積算特性値ΣCの補正値である第1補正値と接続室内機5の合計容量とが関連付けられている第5情報(図示略)及び積算部23によって得られた積算特性値ΣCを補正する第1補正部28を更に備えている。
図8は、本実施形態に係る評価支援装置10bが備える機能を展開して示した機能ブロック図である。以下、本実施形態に係る評価支援装置10bの特徴部分である第5情報及び第1補正部28について主に説明する。なお、第5情報については、記憶部22に格納されて、第1補正部28により参照される。
【0051】
まず、第5情報について説明する。
室外機2に接続される室内機の各接続パターンにおいて、室内機容量に応じた冷媒循環量を考慮した場合の積算特性値(熱交換器の有効度の積算値)と、室内機容量に依存せずに一定の冷媒循環量(例えば、室外機2が定格能力を発揮している場合の冷媒循環量、換言すると、定格負荷時の圧縮機周波数)とした場合の積算特性値(熱交換器の有効度の積算値)とをそれぞれ求め、室外機2に接続される室内機の合計熱容量と積算特性値との関係を取得する。
【0052】
図9に、接続室内機5の合計容量と積算特性値ΣCとの関係を示す。
図9において、横軸は、接続室内機の合計容量が、室外機能力100[%]のときの室内機最大容量112[kW]を基準とした割合で示されている。すなわち、室外機2に接続されている室内機の合計容量が112[kW]のときに、100[%]となる。縦軸は、積算特性値ΣCである。
図9において、実線は容量に応じた冷媒循環量を想定した場合(換言すると、容量に応じた圧縮機周波数を想定した場合)の各接続パターンにおける特性を近似して求めた近似曲線(以下「近似曲線A」という)であり、破線は冷媒循環量を一定とした場合(換言すると、圧縮機周波数を一定とした場合)の各接続パターンにおける特性を近似して求めた近似曲線(以下「近似曲線B」という)である。
【0053】
図9からわかるように、接続室内機5の合計容量が100[%]を超える範囲では、合計容量が増加するにつれて両者の特性が乖離していることがわかる。
図9から接続室内機の合計容量に対する第1補正値を求める。具体的には、近似曲線Bを近似曲線Aで除算することにより第1補正値の特性を得る。
図10に、接続室内機の合計容量と第1補正値とを関連付けた第5情報の一例を示す。
図10において、横軸は室内機合計容量であり、縦軸は第1補正値である。
【0054】
第1補正部28は、室外機2に接続されている接続室内機5の合計容量に対応する第1補正値を第5情報から取得し、積算部23によって算出された積算特性値ΣCを第1補正値を用いて補正する。具体的には、積算特性値ΣCに第1補正値を乗じればよい。
そして、後続の処理においては、補正後の積算特性値ΣCを用いてシステムCOPの取得が行われる。
【0055】
本実施形態によれば、室外機2に接続されている接続室内機5の合計容量が相違することによる積算特性値ΣCの誤差を低減することができる。これにより、積算特性値ΣCの算出精度を向上させることが可能となる。また、特性値として、熱交換能力を用いることができることも上述した第1実施形態と同様である。
【0056】
〔第3実施形態〕
上述した第1実施形態に係る第2情報は、積算特性値ΣCに対応するシステムCOPを関連付けたものであった。本実施形態では、第2情報に代えて第6情報及び第7情報を用いることにより、積算特性値ΣC(すなわち、熱交換器の有効度の積算値)に対応するシステムCOPを得る点で、上述した第1実施形態と異なる。
【0057】
以下、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
室外機2に接続される室内機の接続パターンのそれぞれについて、室内熱交換量(室内機能力)[W]と積算特性値ΣCとの関係、インバータ消費電力と圧縮機消費電力の和(以下「機器消費電力」という。)[W]と積算特性値ΣCとの関係を検討すると、
図11、
図12が得られる。
図11は積算特性値ΣCと室内熱交換量との関係において、各接続パターンの特性の近似曲線を示した図、
図12は積算特性値ΣCと機器消費電力との関係において、各接続パターンの特性の近似曲線を示した図である。
図11、
図12に示されるように、室内熱交換量及び機器消費電力については、積算特性値ΣCと相関があることが確認された。
【0058】
そこで、本実施形態に係るシステムCOPの算出については、積算特性値ΣCに相関のあるパラメータ、すなわち、
図11に示す室内熱交換量特性及び
図12に示す機器消費電力特性を用いて、積算特性値ΣCに対応する室内熱交換量及び機器消費電力をそれぞれ取得し、取得したこれら値に対して室内外ファンモータの入力を加味することで、システムCOPを算出する。
【0059】
具体的には、
図11に示した室内熱交換量特性を第6情報として、
図12に示した機器消費電力特性を第7情報として記憶部23に記憶しておく。
そして、システムCOP取得部24は、積算特性値ΣCに対応する室内熱交換量を第6情報から取得するとともに、積算特性値ΣCに対応する機器消費電力を第7情報から取得する。そして、取得したこれら情報と、予め保有している室内ファンモータ入力および室内外ファンモータの消費電力とを、以下の演算式に用いて演算を行うことにより、暖房時のシステムCOP及び冷房時のシステムCOPの少なくともいずれか一方を得る。
暖房時のシステムCOPは、以下の(6)式で求められる。
【0060】
システムCOP(暖房)
=(室内熱交換量+室内ファン入力)/(機器消費電力+室内外ファンの消費電力) (6)
【0061】
冷房時のシステムCOPは、以下の(7)式で求められる。
【0062】
システムCOP(冷房)
=(室内熱交換量−室内ファン入力)/(機器消費電力+室内外ファンの消費電力) (7)
【0063】
このように、本実施形態に係る評価支援装置によれば、能力として室内ファンモータの入力を、消費電力として室内外のファンモータの消費電力を反映させることで、より精度の高いシステムCOPを得ることができる。
【0064】
〔第4実施形態〕
上述した第1実施形態における評価支援装置10aでは、SEERやSCOPの取得において、待機電力を考慮していなかった。しかしながら、SEERの待機電力に対する感度は予想以上に大きく、待機電力に応じてSEERを補正することで、SEERの評価精度を向上させることができることがわかった。
本実施形態では、
図13に示すように、SEER取得部25によって得られたSEERを待機電力に応じた第2補正値で補正するための構成として第8情報(図示略)及び第2補正部29を備えることにより、SEERの評価精度を向上させる。ここで、第8情報は、記憶部22に格納されている情報である。
図13は、本実施形態に係る評価支援装置10cが備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【0065】
具体的には、事前に試験やシミュレーションを行うことにより、接続パターン毎、あるいは、接続室内機毎に、SEERと待機電力PTOとの関係を求め、これらの近似特性を得る。そして、この近似特性を、基準となる特性(例えば、最もSEERの値が大きくなる接続パターンのときの待機電力PTO−SEER特性)で除算することにより、待機電力PTOと第2補正値とが関連付けられた第8情報を得る。
図14に第8情報の一例を示す。また、記憶部22には、各室内機の識別情報と待機電力とを関連付けた第9情報も格納されている。待機電力は、例えば、規定によって定められているものを用いてもよいし、室内ファン入力に応じた待機電力が室内機毎に設定されていてもよい。
【0066】
第2補正部29は、接続室内機5に関する待機電力を第9情報からそれぞれ取得し、取得した待機電力を積算することにより、システム全体の待機電力を算出する。そして、積算待機電力に対応する第2補正値を第8情報から取得し、取得した第2補正値を用いてSEERを補正する。
【0067】
また、同様にSCOPについてもSCOPと待機電力PTOとを関連付けた情報を記憶部22に格納しておき、この情報を用いて補正を行うこととしてもよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る評価支援装置10cによれば、SEER取得部25及びSCOP取得部26によって得られたSEER、SCOPの値を待機電力に応じた第2補正値によって補正するので、SEER及びSCOPの評価精度を高めることが可能となる。
【0069】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、例えば、上述した各実施形態を部分的または全体的に組み合わせる等して、種々変形実施が可能である。