特許第6234803号(P6234803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234803プレッシャプレートおよびこれを用いたブレーキパッド、並びにこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234803
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】プレッシャプレートおよびこれを用いたブレーキパッド、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/092 20060101AFI20171113BHJP
   F16D 69/04 20060101ALI20171113BHJP
   C23C 8/26 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F16D65/092 D
   F16D69/04 A
   C23C8/26
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-261869(P2013-261869)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-117777(P2015-117777A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須貝 幸廉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】花田 基洋
(72)【発明者】
【氏名】出井 浩
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−340060(JP,A)
【文献】 特開2007−064431(JP,A)
【文献】 特開平11−286787(JP,A)
【文献】 特開2003−174261(JP,A)
【文献】 特開昭60−125365(JP,A)
【文献】 特開2006−233293(JP,A)
【文献】 特開2001−011366(JP,A)
【文献】 特開2009−204024(JP,A)
【文献】 特開2012−251216(JP,A)
【文献】 特開昭56−047561(JP,A)
【文献】 特開2013−007094(JP,A)
【文献】 特開2010−037616(JP,A)
【文献】 特開2013−221203(JP,A)
【文献】 特開2003−148528(JP,A)
【文献】 特開平10−141379(JP,A)
【文献】 特開昭59−145782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/092
C23C 8/26
F16D 69/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦材が接着される被接着面を備える、鉄系金属製のプレッシャプレートの製造方法であって、
ブラスト処理により、前記プレッシャプレートの少なくとも前記被接着面を粗面化するとともに、該被接着面に存在する酸化皮膜を除去する粗面化工程と、
前記粗面化工程よりも後に、真空乾燥、圧縮空気乾燥または熱風乾燥を実施する乾燥工程と、
前記乾燥工程後に、炭化水素系洗浄液で洗浄する仕上洗浄工程と
記仕上洗浄工程後に、前記被接着面に酸化皮膜が再び形成されるよりも前か、あるいは、形成されたとしても1μm未満の状態で、該プレッシャプレートをガス軟窒化処理する熱処理工程と、
を備える、プレッシャプレートの製造方法。
【請求項2】
前記ブラスト処理として、ウェットブラストが用いられる、請求項1に記載のプレッシャプレートの製造方法。
【請求項3】
前記ブラスト処理として、ドライブラストが用いられ、かつ、前記粗面化工程後であって、前記乾燥工程よりも前に、水道水あるいはアルカリ水溶液で洗浄する洗浄工程を備える、請求項1に記載のプレッシャプレートの製造方法。
【請求項4】
前記熱処理工程後のプレッシャプレートの前記被接着面の算術平均粗さRaを1.5μm〜8.0μmの範囲とし、かつ、十点平均粗さRzを10μm〜40μmの範囲とする、請求項1〜3のいずれかに記載のプレッシャプレートの製造方法。
【請求項5】
前記被接着面のうち、最も突出した部分と最も凹んだ部分の高低差を5μm〜50μmとする、請求項1〜4のいずれかに記載のプレッシャプレートの製造方法。
【請求項6】
前記ブラスト処理において、研磨材として粒度が#24〜#100の範囲にあるグリッドを使用し、エア圧を0.1MPa〜0.5MPaの範囲に、処理時間を10秒〜600秒の範囲にそれぞれ設定する、請求項1〜のいずれかに記載のプレッシャプレートの製造方法。
【請求項7】
前記グリッドとして、ホワイトアルミナ、褐色アルミナ、黒色炭化ケイ素、および、緑色炭化ケイ素から選択される少なくとも1種を使用する、請求項に記載のプレッシャプレートの製造方法。
【請求項8】
前記ブラスト処理として、ウェットブラストが用いられ、かつ、前記グリッドのグリッド濃度を5質量%〜30質量%とする、請求項またはに記載のプレッシャプレートの製造方法。
【請求項9】
前記ガス軟窒化処理において、アンモニアガスと浸炭性ガスとからなる混合ガス雰囲気を用い、処理温度を500℃〜590℃の範囲に、処理時間を0.1時間〜4時間の範囲に設定する、請求項1〜のいずれかに記載のプレッシャプレートの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかの製造方法により得られたプレッシャプレートの被接着面に、接着剤を介して、摩擦材を接着させることを特徴とする、ブレーキパッドの製造方法。
【請求項11】
鉄系金属製の母材と、該母材のうち摩擦材が接着される被接着面と、該母材の表面のうち、少なくとも前記被接着面に形成され、かつ、ハロゲン元素を含まない窒素拡散層と、該窒素拡散層の上に形成され、算術平均粗さRaが1.5μm〜8.0μmの範囲にあり、かつ、十点平均粗さRzが10μm〜40μmの範囲にある窒素化合物層と、該窒素化合物層の最表部に形成され、厚さが3.0μm〜20.0μmの範囲にあるポーラス層とを備える、プレッシャプレート。
【請求項12】
前記窒素化合物層の厚さは5μm〜25μmである、請求項11に記載のプレッシャプレート。
【請求項13】
前記窒素化合物のうち、最も突出した部分と最も凹んだ部分の高低差が5μm〜50μmである、請求項12に記載のプレッシャプレート。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載のプレッシャプレートと、該プレッシャプレートの被接着面に、接着剤を介して接着された摩擦材とからなる、ブレーキパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などのディスクブレーキに使用される、プレーキパッド、その主要部品であるプレッシャプレート、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などのディスクブレーキには、図4に示すようなブレーキパッド1が使用されている。このブレーキパッド1は、鉄系金属製のプレッシャプレート2と、プレッシャプレート2の表面に接着される摩擦材3とから構成される。
【0003】
このようなディスクブレーキでは、車輪とともに回転するディスクブレーキロータを挟むようにブレーキパッド1が配置され、ブレーキパッド1をディスクブレーキロータに押圧し、摩擦力を発生させることで制動力を得ている。このとき、ブレーキパッド1のプレッシャプレート2と摩擦材3との間には大きなせん断力が作用するため、プレッシャプレート2と摩擦材3との接着には、そのせん断力に耐え得る接着強度が要求される。
【0004】
このような要求を満足するための方法として、たとえば、プレッシャプレート2の表面を、ドライブラストやウェットブラストなどのブラスト(表面研削)処理により粗面化し、凹凸構造を有する表面形状とした上で、プレッシャプレート2と摩擦材3とを接着する方法が知られている。このような凹凸構造が存在すると、プレッシャプレート2と摩擦材3との接着時に、接着剤が凹部に入り込み、これによって得られるアンカー効果によって高い接着強度が得られる。しかしながら、プレッシャプレート2と摩擦材3とをこのような方法により接着した場合であっても、プレッシャプレート2と摩擦材3との接着界面に錆が発生すると、接着強度が低下してしまうという問題がある。
【0005】
このため、粗面化した表面に化成処理を施してリン酸鉄皮膜を形成し、製造工程中における錆の発生を防止する一次防錆効果を向上させることが一般的に行われている。たとえば、特開2003−148528号公報には、特定のリン酸塩溶液に、特定の界面活性剤やフッ素系洗浄剤などを加えた処理液と、平均粒径が300μmのアルミナ砥粒とを用いて、エア圧を0.45MPa、処理時間を240秒としてウェットブラスト処理をすることにより、プレッシャプレートの表面の脱脂、粗面化およびリン酸鉄皮膜の形成を同時に行う技術が記載されている。また、特許第4563285号公報にも、ドライブラスト処理やウェットブラスト処理により、プレッシャプレートの表面を十点平均粗さRzで20μm程度に粗面化し、その後、化成処理によってプレッシャプレートの表面に、リン酸鉄皮膜(皮膜重量=0.6g/m2)などのリン酸塩皮膜を形成する技術が記載されている。しかしながら、リン酸塩皮膜の形成のみでは、使用環境によっては、プレッシャプレートの表面に錆が発生し、摩擦材との接着強度が低下する場合があり、十分な耐食性(恒久的な防錆効果)を確保することは困難である。また、特開2003−148528号公報に記載の技術では、洗浄液としてフッ素系洗浄剤を使用するため、安全面および環境保護上の問題がある。一方、特許第4563285号公報に記載の技術は、高い接着強度を得るためには、フェノール樹脂ノボラック変性ポリベンゾオキサシジン系樹脂などからなる特定の接着剤を使用することが必須とされており、工業上広く利用するには限界がある。
【0006】
これに対して、特公昭53−47218号公報には、ウェットブラスト処理やリン酸塩溶液による防錆処理を行わずに、プレッシャプレートを、吸熱変成ガスとアンモニアガスとからなる混合ガス雰囲気中で、処理温度を500℃〜650℃、処理時間を0.5時間〜8時間としてガス軟窒化処理する技術が記載されている。この技術によれば、プレッシャプレートの表面に、表面粗さ(JIS 0610)が5μm〜50μmのこぶ状あるいは網目状の微細な突起をもった表面状態にあり、耐食性に優れる窒素化合物層を形成することができるため、接着強度と耐食性を同時に向上させることができるとされている。しかしながら、ガス軟窒化処理のみによって、プレッシャプレートの表面粗さを十分に改善することは困難であり、通常は、その表面に細孔を形成するに留まるため、摩擦材との接着強度を大幅に向上させることはできない。
【0007】
一方、特許第3124433号公報には、主としてシアン塩とシアン酸塩とを含み、シアン濃度が0.1%〜6%の塩浴中、570℃〜610℃の温度で40分〜150分処理する、塩浴軟窒化処理を行うことにより、プレッシャプレートの表面に窒素化合物層を形成する技術が記載されている。この塩浴軟窒化処理では、ガス軟窒化処理とは異なり、プレッシャプレートの表層部の鉄成分が塩浴中に溶出することに起因して、プレッシャプレートの表面粗さを大きく改善することができ、その結果、接着強度を大幅に向上させることができる。しかしながら、塩浴軟窒化処理では、低濃度とはいえ、きわめて毒性の高いシアン化合物を使用する必要があり、安全面または環境保護の面で問題がある。
【0008】
なお、特許第4563285号公報には、プレッシャプレートの表面に、ウェットブラストやドライブラストなどのブラスト処理を施した後、さらにその表面に軟窒化処理を施す技術が記載されているが、粗面化処理や軟窒化処理の条件については何ら記載がない。
【0009】
このような事情から、ハロゲン化合物を用いて、プレッシャプレートの表面にハロゲン化膜を形成した後、窒化処理またはガス軟窒化処理をすることにより、その表面の接着強度および耐食性を向上させることが提案されている。たとえば、特開2012−251216号公報には、フッ素系ガス雰囲気下、処理温度を350℃〜450℃として活性化処理を行い、フッ化膜層を形成した後、処理温度を300℃〜600℃、処理時間を30分〜60分として、窒化処理またはガス軟窒化処理を行い、非酸化性雰囲気下で冷却することにより、5μm〜20μmの窒素化合物層の表層部に、この窒素化合物層の厚さの40%以上の厚さを有するポーラス層を形成する技術が記載されている。また、特許第5044712号公報には、ハロゲン化処理により、プレッシャプレートの表面から1μm以上の深さまでハロゲン元素を拡散させた後、炭素源を含まないガス雰囲気で窒化処理を行うことにより、Fe−N−C系の代わりに、Fe−N系の第1化合物層と、第1化合物層上に形成され、第1化合物層よりも窒素濃度が高く、かつ、表面に凹凸を有する第2化合物層とからなる化合物層を形成する技術が記載されている。
【0010】
これらの文献に記載の技術では、ハロゲン化処理により、プレッシャプレートの表面を活性化した状態で、窒化処理またはガス軟窒化処理を行っているため、窒素をより深くまで浸透させることができる。この結果、プレッシャプレートの表面に、接着強度を向上させるのに十分な凹凸形状またはポーラス層を形成することができるばかりでなく、窒素化合物層を厚く形成することができるため、その耐食性も大幅に向上させることができる。しかしながら、ハロゲン元素は一般に毒性が高く、これらの文献に記載の技術でも、安全面や環境保護の面で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−148528号公報
【特許文献2】特許第4563285号公報
【特許文献3】特公昭53−47218号公報
【特許文献4】特許第3124433号公報
【特許文献5】特開2012−251216号公報
【特許文献6】特許第5044712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、シアン化合物やフッ素化合物などの有害物質を使用せずに、かつ、接着剤の種類にかかわらず、摩擦材との接着強度が高く、耐食性に優れたプレッシャプレート、ならびに、このプレッシャプレートを備えたブレーキパッドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、摩擦材が接着される被接着面を備える、鉄系金属製のプレッシャプレートの製造方法に関し、
ブラスト処理により、前記プレッシャプレートの少なくとも前記被接着面を粗面化するとともに、該被接着面に存在する酸化皮膜を除去する粗面化工程と、
前記粗面化工程後に、少なくとも前記被接着面に酸化皮膜が形成されないように、前記プレッシャプレートに乾燥および/または洗浄を施す、乾燥および/または洗浄工程と、
前記乾燥および/または洗浄工程後に、少なくとも前記被接着面に酸化皮膜が存在しない状態で、該プレッシャプレートをガス軟窒化処理する熱処理工程と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
前記熱処理工程後のプレッシャプレートの前記被接着面の算術平均粗さRaを1.5μm〜8.0μmの範囲とし、かつ、十点平均粗さRzを10μm〜40μmの範囲とすることが好ましい。また、前記被接着面のうち、最も突出した部分と最も凹んだ部分の高低差を5μm〜50μmとすることが好ましい。
【0015】
前記ブラスト処理において、研磨材として粒度が#24〜#100の範囲にあるグリッドを使用し、エア圧を0.1MPa〜0.5MPaの範囲に、処理時間を10秒〜600秒の範囲にそれぞれ設定することが好ましい。
【0016】
前記グリッドとして、ホワイトアルミナ、褐色アルミナ、黒色炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素を含むコランダムから選択される少なくとも1種を使用することがより好ましい。
【0017】
前記ブラスト処理として、ウェットブラストが用いられた場合、前記グリッドのグリッド濃度を5質量%〜30質量%とすることが好ましい。
【0018】
前記ブラスト処理として、ウェットブラストが用いられた場合、前記乾燥および/または洗浄工程において、前記プレッシャプレートを乾燥させた後、少なくとも前記被接着面を、炭化水素系洗浄液を用いて、洗浄することが好ましい。
【0019】
前記ガス軟窒化処理において、アンモニアガスと浸炭性ガスとからなる混合ガス雰囲気を用い、処理温度を500℃〜590℃の範囲に、処理時間を0.1時間〜4時間の範囲に設定することが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法により得られたプレッシャプレートの被接着面に、接着剤を介して、摩擦材を接着させることにより、本発明のブレーキバッドが得られる。
【0021】
本発明の別態様は、ブレーキパッドを主要部品であるプレッシャプレートに関し、鉄系金属製の母材と、該母材のうち摩擦材が接着される被接着面と、該母材の表面のうち、少なくとも前記被接着面に形成された窒素拡散層と、該窒素拡散層の上に形成され、算術平均粗さRaが1.5μm〜8.0μmの範囲にあり、かつ、十点平均粗さRzが10μm〜40μmの範囲にある窒素化合物層と、該窒素化合物層の最表部に形成され、厚さが3.0μm〜20.0μmの範囲にあるポーラス層とを備えることを特徴とする。
【0022】
前記窒素化合物層の厚さは5μm〜25μmであることが好ましい。
【0023】
前記窒素化合物層のうち、最も突出した部分と最も凹んだ部分の高低差は、5μm〜50μmであることが好ましい。
【0024】
本発明のブレーキパッドは、本発明のプレッシャプレートと、その被接着面に、接着剤を介して接着された摩擦材とにより構成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、シアン化合物やフッ素化合物などを使用することなく、高い接着強度で摩擦材と接着することができ、かつ、耐食性に優れたプレッシャプレート、並びに、このような優れた特性を有するプレッシャプレートを備えたブレーキパッドが提供される。また、本発明によれば、このようなブレーキパッドを、プレッシャプレートと摩擦材との接着に使用する接着剤の種類に関わらず製造することが可能となる。このように、本発明の工業的意義はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例1により得られたプレッシャプレートの表面近傍の断面を示すSEM像(2000倍)である。
図2図2は、比較例2−1により得られたプレッシャプレートの表面近傍の断面を示すSEM像(2000倍)である。
図3図3は、比較例2−3により得られたプレッシャプレートの表面近傍の断面を示すSEM像(2000倍)である。
図4図4は、従来のブレーキパッドの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
プレッシャプレートと摩擦材との接着強度を向上させる手段として、ブレーキパッドを構成するプレッシャプレートの被接着面を、ウェットブラストであるかドライブラストであるかにかかわらず、ブラスト処理により粗面化した後、この被接着面に、ガス軟窒化処理により窒素化合物層を形成することが考えられる。しかしながら、実際には、単にブラスト処理とガス軟窒化処理を組み合わせただけでは、十分な接着強度は得られない。
【0028】
本発明者らは、このブラスト処理とガス軟窒化処理との組み合わせについて、さらに研究を重ねた結果、ブラスト処理後、ガス軟窒化処理をする直前のプレッシャプレートの表面には、ごく薄い酸化皮膜が存在し、この酸化皮膜が、ガス軟窒化処理における窒素の浸透を妨げているとの知見を得た。より具体的には、従来、プレッシャプレートの表面に対してウェットブラスト処理をした場合、粗面化後の表面には水分が残存するため、プレッシャプレートを乾燥させており、また、ドライブラスト処理の場合にも、プレッシャプレートの表面に付着した微粉を除去するために、プレッシャプレートを洗浄し、乾燥させている。ここで、プレッシャプレートの乾燥は、粗面化後の表面に熱風を吹き付けることにより行われることが一般的であるが、乾燥中、あるいは乾燥後からガス軟窒化処理をされるまでの間に、プレッシャプレートの表面に、厚さ1μm〜5μm程度の酸化皮膜が形成されてしまう。この結果、ウェットブラストとドライブラストのいずれの場合であっても、酸化皮膜が除去されたプレッシャプレートの表面に、ごく薄い酸化皮膜が再形成され、これによって、ガス軟窒化処理における窒素の浸透が妨げられるとの知見を得たのである。
【0029】
本発明は、このような知見に基づき完成したものであり、プレッシャプレートと摩擦材との接合を強化する手段として、ブラスト処理、好ましくはウェットブラスト処理とガス軟窒化処理との組み合わせを採用するとともに、ブラスト処理後における、プレッシャプレートの表面の酸化を防止し、表面に酸化皮膜が存在しない状態でガス軟窒化処理を行うことにより、プレッシャプレートと摩擦材との接着強度を向上させ、かつ、プレッシャプレートの耐食性も向上させている点に特徴がある。
【0030】
[1]プレッシャプレートおよびブレーキパッドの製造方法
本発明のプレッシャプレートおよびブレーキパッドの製造方法は、ブラスト処理、好ましくはウェットブラスト処理により、プレッシャプレートの少なくとも被接着面を粗面化するとともに、この被接着面に存在する酸化皮膜を除去した後、酸化皮膜が形成されないように、被接着面を乾燥および/または洗浄し、プレッシャプレートの被接着面に酸化皮膜が存在しない状態でガス軟窒化処理することを特徴とする。なお、本発明において、被接着面以外の表面が同時に処理されることは妨げられない。
【0031】
このように、プレッシャプレートの表面に酸化皮膜が存在しない状態、すなわち、表面の清浄度がきわめて高い状態では、ハロゲン化処理をした場合と同様に、プレッシャプレートの表面の反応性は高く、活性状態にあるといえるため、この状態でガス軟窒化処理をすることで、より多くの窒素を、より深い位置まで浸透させることが可能となる。この結果、ガス軟窒化処理後のプレッシャプレートの表面状態を、ブラスト処理により形成された凹凸構造の最表部に、ガス軟窒化処理により形成された無数の細孔からなるポーラス層が存在する複雑な構造とすることができる。このため、プレッシャプレートと摩擦材との接着時に、高いアンカー効果を得ることができ、接着強度を向上させることが可能となる。また、上述のように、ガス軟窒化処理において、より多くの窒素を、より深い位置まで浸透させることができるため、窒素化合物層をより厚く形成することができ、その耐食性を向上させることが可能となる。
【0032】
(1)プレッシャプレートの素材
本発明のブレーキパッドを構成するプレッシャプレートは、板金プレス加工などにより成形されるものである。このプレッシャプレートの素材は、特に限定されることはなく、公知の鉄製金属材料を使用することができる。たとえば、SAPH400やSAPH440などの自動車用熱間圧延板や、SPFH590などの自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板を使用することができる。
【0033】
(2)粗面化工程
本発明では、鉄系金属製のプレッシャプレートの表面を粗面化し、その表面に存在する酸化皮膜を除去する手段として、ブラスト処理、より具体的には、ウェットブラストとドライブラストを採用する。このような粗面化処理により、プレッシャプレートの表面に次述するような算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzを備える凹凸構造を形成することができる。
【0034】
このようなブラスト処理のうち、ドライブラストは、処理後にプレッシャプレートの表面を洗浄する必要がある。また、ドライブラストは大量の粉塵の発生を伴い、作業者の健康を守り、安全性を確保するためには、集塵設備の稼働が必須となる。さらに、ドライブラストは乾式の処理であり、酸化皮膜が除去された直後から表面の酸化が進行するため、酸化皮膜が存在しない状態で、ガス軟窒化処理をすること困難となる場合がある。これに対して、ウェットブラストは湿式の処理であるため、粗面化処理と同時に、処理面の洗浄を行うことができ、処理後の洗浄工程を省略することが可能である。また、粉塵の発生に起因する問題は存在せず、処理中に酸化が進行するということもない。このため、粗面化処理としては、ウェットブラストを採用することが好ましい。
【0035】
本発明において、ブラスト処理の条件は、特に限定されることはないが、プレッシャプレートと摩擦材とを高い接着強度で接着するためには、ガス軟窒化処理後において、プレッシャプレートの表面の算術平均粗さRaを1.5μm〜8.0μmの範囲とし、かつ、十点平均粗さRzを10μm〜40μmの範囲とすることが好ましい。このため、ブラスト処理後において、プレッシャプレートの表面の算術平均粗さRaを、好ましくは0.5μm〜10μmの範囲、より好ましくは1.0μm〜7.0μmの範囲とし、かつ、十点平均粗さRzを、好ましくは3μm〜40μmの範囲、より好ましくは10μm〜37μmの範囲とすることが必要となる。なお、算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzは、表面粗さ測定機により測定することができる。
【0036】
プレッシャプレートの表面の算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzを上記範囲に制御するための条件は、プレッシャプレートの材質や大きさ、研磨材(投射材)の種類、ブラスト装置の性能などに応じて適宜選択されるべきものであるが、概ね、以下のように選択することが好ましい。
【0037】
(研磨材)
研磨材としては、球形粒子状のショットやビーズ、または、角のある非球形粒子状のグリッドなどから適宜選択することができるが、粒子が硬く、加工力が高いグリッドを使用することが好ましい。特に、ホワイトアルミナ、褐色アルミナ、黒色炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素などのコランダムから選択される少なくとも1種のグリッドを使用することがより好ましく、これらの中でも、残留不純物の少ないホワイトアルミナを使用することがさらに好ましい。
【0038】
研磨材としてグリッドを使用する場合、粒度(グリッド番号)が、好ましくは#24〜#100の範囲、より好ましくは#36〜#80の範囲、さらに好ましくは#46〜#60の範囲にあるものを使用する。すなわち、平均粒径が、好ましくは130μm〜730μmの範囲、より好ましくは180μm〜520μmの範囲、さらに好ましくは260μm〜360μmの範囲にあるグリッドを使用する。グリッド番号が#24未満の場合(平均粒径が730μmを超える場合)では、グリッドの加工力が大きすぎるため、ブラスト処理によりプレッシャプレートの表面を粗面化し、凹凸構造を形成しても、そのエッジが丸まってしまい、十分なアンカー効果を発揮することができなくなる場合がある。また、ブラスト装置自体が研磨され、著しい場合には装置内壁に穴が開いてしまう場合がある。一方、グリッド番号が#100を超える場合(平均粒径が130μm未満の場合)には、加工力が小さすぎるため、プレッシャプレートの表面を十分に粗面化することができない場合がある。
【0039】
(エア圧)
プレッシャプレートに研磨材を投射するためのエア圧は、好ましくは0.1MPa〜0.5MPaの範囲、より好ましくは0.2MPa〜0.45MPaの範囲、さらに好ましくは0.3MPa〜0.4MPaの範囲とする。エア圧が0.1MPa未満では、プレッシャプレートの表面を十分に粗面化することができない場合がある。一方、0.5MPaを超えると、ブラスト処理によりプレッシャプレートの表面を粗面化し、凹凸構造を形成しても、そのエッジが丸まってしまい、十分なアンカー効果を発揮することができなくなる場合がある。また、ブラスト装置自体が研磨され、著しい場合には装置内壁に穴が開いてしまう場合がある。
【0040】
(処理時間)
ブラスト処理の処理時間は、好ましくは10秒〜600秒の範囲、より好ましくは15秒〜450秒の範囲、さらに好ましくは20秒〜300秒の範囲に設定する。処理時間が10秒未満では、プレッシャプレートの表面を十分に粗面化することができない場合がある。一方、600秒を超えても、それ以上の効果を得ることができないばかりか、ブラスト処理により形成された凹凸構造のエッジが丸まってしまい、十分なアンカー効果を発揮することができなくなる場合がある。
【0041】
(グリッド濃度)
ウェットブラストにより粗面化処理をする場合には、上述したグリッドのグリッド濃度(スラリー濃度)を、好ましくは5質量%〜30質量%の範囲、より好ましくは10質量%〜25質量%の範囲、さらに好ましくは15質量%〜20質量%の範囲とする。グリッド濃度が5質量%未満では、プレッシャプレートの表面を十分に粗面化することができない場合がある。一方、30質量%を超えると、ウェットブラスト装置にグリッドが詰まってしまう場合がある。
【0042】
(処理液)
同様に、ウェットブラストにより粗面化処理をする場合には、処理液として、水道水、あるいは、トップアルクリーン(奥野製薬工業株式会社製)やケミクリーナ(日本シー・ビー・ケミカル株式会社製)などのアルカリ水溶液を使用することができる。
【0043】
この処理液の温度は、研磨材と混合した状態、すなわち、スラリー状態で、5℃〜90℃の範囲に調整することが好ましく、20℃〜70℃の範囲に調整することがより好ましい。アルカリ水溶液の温度が、このような範囲にあれば、ウェットブラスト処理により、脱脂と一次防錆を同時に行うことができる。
【0044】
(3)乾燥および/または洗浄工程
ウェットブラストにより粗面化処理した場合、プレッシャプレートの表面を乾燥するための手段として、その被接着面を含む表面の酸化を防止しつつ、乾燥することができる手段を用いる必要がある。このような手段としては、たとえば、真空乾燥、圧縮空気乾燥、熱風乾燥などを挙げることができる。ただし、乾燥手段として熱風乾燥を採用する場合には、熱風の温度や吹付け量などによっては、被接着面に直ぐに酸化皮膜が形成されてしまう場合がある。これを防止するため、予め、次述する炭化水素系洗浄液などを用いて、表面に残存する水分を置換し、物理的に移動させた上で熱風乾燥することが好ましい。
【0045】
また、ウェットブラストにより粗面化処理した場合、処理後のプレッシャプレートの表面は、非常に複雑な表面状態となっているため、上記手段による乾燥のみでは、水分を完全に乾燥することができなかったり、乾燥に要する時間が長時間となり、生産性が悪化したりする場合がある。このため、乾燥工程後、プレッシャプレートの表面を、金属への腐食性が小さい炭化水素系洗浄液で洗浄することが好ましい。これにより、プレッシャプレートの表面を酸化することなく、短時間で、残存する水分を完全に除去することができる。
【0046】
このような炭化水素系洗浄液としては、たとえば、エタノール、オクタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール系混合物を挙げることができ。これらの中でも、水分除去効果が高く、高沸点のオクタノール系混合物を使用することが好ましい。
【0047】
なお、炭化水素系洗浄液による洗浄方法は、特に限定されることなく公知の方法を採用することができ、たとえば、炭化水素系洗浄液に、プレッシャプレートを浸漬することにより洗浄することができる。
【0048】
一方、ドライブラストにより粗面化処理をした場合、粗面化処理による残渣(微粉)を除去するため、プレッシャプレートの表面を、水道水、あるいは、トップアルクリーン(奥野製薬工業株式会社製)やケミクリーナ(日本シー・ビー・ケミカル株式会社製)などのアルカリ水溶液を用いて洗浄し、かつ、少なくとも被接着面に、酸化皮膜が形成されないように乾燥すること必要となる。しかしながら、粗面化処理後のプレッシャプレートの表面は、非常に複雑な表面状態となっているため、残存する水分を完全に除去するためには長時間を要することとなる。このため、ウェットブラストの場合と同様に、乾燥後のプレッシャプレートの表面を炭化水素系洗浄液で洗浄することが好ましい。
【0049】
(4)熱処理工程
本発明では、乾燥および/または洗浄工程の後、プレッシャプレートの表面(被接着面)に酸化皮膜が存在しない状態で、ガス軟窒化処理をすることが重要となる。ここで、酸化皮膜が存在しない状態とは、プレッシャプレートの表面(被接着面)に酸化皮膜が存在しないか、または、酸化皮膜が存在するとしても、その厚さがきわめて薄く、1μm未満の状態であることを意味する。このようにプレッシャプレートの表面の清浄度をきわめて高い状態でガス軟窒化処理をすることで、より多くの窒素を、より深い位置まで浸透させることが可能となる。この結果、酸化皮膜の存在下でガス軟窒化したものと比べて、窒素化合物層およびその最表部のポーラス層を厚く形成することができるため、摩擦材との接着において、その接着強度を向上させることができるばかりでなく、耐食性も優れたものとすることができる。
【0050】
本発明のガス軟窒化処理法では、従来と同様のガス窒化炉を使用することができる。また、ガス軟窒化処理の条件としては、対象となるプレッシャプレートの材質やガス軟窒化炉の性能に応じて適宜選択されるべきものであるが、窒素拡散層および窒素化合物層の厚さを所定の範囲に制御する観点から、以下のような条件で行うことが好ましい。
【0051】
ガス軟窒化処理における処理温度は、500℃〜590℃の範囲とすることが好ましく、530℃〜590℃の範囲とすることがより好ましい。処理温度が500℃未満の場合には、十分な厚さを有する窒素拡散層および窒素化合物を形成することができない。一方、590℃を超える場合には、素材中に硬くて脆いオーステナイトが形成され、窒素拡散層および窒素化合物層が安定して形成されなくなる可能性がある。
【0052】
上記処理温度での保持時間は、好ましくは0.5時間〜4時間の範囲、より好ましくは1時間〜3時間の範囲とする。処理時間が0.5時間未満では、十分な厚さを有する窒素拡散層および窒素化合物層を形成することができない。一方、処理時間が4時間を超えても、窒素拡散層および窒素化合物層はそれ以上ほとんど成長しないため、生産性が悪化する。
【0053】
窒素供給源としては、窒化性ガスであるNH3を使用することができる。一方、炭素供給源としては、浸炭性ガスであれば特に限定されることはなく、たとえば、CH3OHなどアルコールを含む炭化水素、あるいは、CO、CO2などを使用することができる。特に、低コストで、効率的に、窒素拡散層および窒素化合物層を形成する観点から、NH3とCH3OHの混合ガスにより、窒素および炭素を供給することが好ましい。この場合、NH3の流量を4.5m3/h〜5.5m3/hの範囲とし、CH3OHの流量を3.0×10-53/h〜1.0×10-43/hの範囲とすることが好ましい。
【0054】
ガス窒化炉内の圧力は、一般的なガス軟窒化処理と同様に、大気圧よりも0.2kPa〜1.0kPa程度、通常は0.5kPa〜0.7kPa程度大きくなるように調整することが好ましい。
【0055】
(5)接着工程
接着工程は、ガス軟窒化処理後のプレッシャプレートの表面のうち、摩擦材を接着する被接着面に接着剤を塗布し、この被接着面に、予備成形した摩擦材の接着面を当接させ、加熱圧縮成形することにより、プレッシャプレートと摩擦材とを接着する工程である。この工程におけるプレッシャプレートと摩擦材の接着方法やその条件は、基本的に従来技術と同様であるため、ここでの説明は省略し、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0056】
本発明では、プレッシャプレートの被接着面は、ブラスト処理により形成された凹凸構造の最表部に、ガス軟窒化処理により形成された無数の細孔からなるポーラス層が存在する複雑な構造となっているため、プレッシャプレートと摩擦材との接着時に、これらの間に高いアンカー効果が作用することとなる。この結果、プレッシャプレートの被接着面にプライマーを塗布せずとも、プレッシャプレートと摩擦材とを高い接着強度で接着することができる。
【0057】
また、本発明のプレッシャプレートの被接着面は、このような複雑な構造を備えているため、接着剤の種類を問わず、高いアンカー効果を得ることができる。すなわち、本発明によれば、粉体系接着剤を用いた場合であっても、あるいは、溶剤系接着剤を用いた場合であっても、プレッシャプレートと摩擦材とを高い接着強度で接着することができる。ただし、効率よく高い接着強度を得るためには、接着剤は、プレッシャプレートの表面の凹凸構造の最奥部まで、容易に行き届くものであることが必要とされる。このため、溶剤系接着剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂もしくはこれらの変性樹脂、または、これらの混合物などの熱硬化性樹脂からなる接着剤が好ましく、これらの接着剤の粘度を1mPa〜100mPaの範囲に調整して使用することがより好ましい。また、粉体系接着剤としては、同様に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂もしくはこれらの変性樹脂、または、これらの混合物などの熱硬化性樹脂からなる接着剤が好ましく、粉体の平均粒径が20μm〜100μmの範囲にあるものがより好ましい。
【0058】
接着剤の塗布手段は、高いアンカー効果を得る観点から、接着剤をプレッシャプレートの表面の凹凸構造の最奥部まで行き届かせることができるものである必要がある。具体的には、溶剤系接着剤を使用する場合には、スプレーガンなどを用いて吹き付けることが好ましい。また、粉体系接着剤を使用する場合には、静電塗布することが好ましい。
【0059】
[2]ブレーキパッド
(1)プレッシャプレート
本発明のディスクブレーキを構成するプレッシャプレートは、鉄系金属製の母材の表面のうち、少なくとも被接着面に形成された窒素拡散層と、この窒素拡散層の上に形成され、算術平均粗さRaが1.5μm〜8.0μmの範囲にあり、かつ、十点平均粗さRzが10μm〜40μmの範囲にある窒素化合物層を備えており、この窒素化合物層の最表部には、厚さが3.0μm〜20.0μmの範囲にあるポーラス層が形成されていることを特徴とする。
【0060】
すなわち、本発明のプレッシャ―プレートは、その表面(少なくとも被接着面)に、ウェットブラスト処理により形成された凹凸構造と、この凹凸構造の最表部に、ガス軟窒化処理により形成された無数の細孔からなるポーラス層とが存在する複雑な構造を備えている。このため、摩擦材との接着時に高いアンカー効果が得られ、プレッシャプレートと摩擦材とを高い接着強度で接着することが可能となっている。また、本発明のプレッシャプレートでは、耐食性に優れる窒素化合物が十分に厚く、ポーラス層を構成する細孔が、この窒素化合物層を貫通することがないので、優れた耐食性が発揮される。
【0061】
(窒素拡散層)
窒素拡散層は、ガス軟窒化処理の際に、母材中に窒素が過飽和に固溶することにより形成される層である。この窒素拡散層の厚さは、好ましくは20μm〜500μmの範囲、より好ましくは50μm〜200μmの範囲に調整される。窒素拡散層の厚さが20μm未満では、十分な防錆効果を得ることができない場合がある。一方、500μmを超えると、プレッシャプレートの寸法精度が悪化したり、窒素拡散層の形成に要する時間が長時間となって、生産性が悪化したりするおそれがある。
【0062】
なお、窒素拡散層とは、JSHS1001で定められている実用硬化層深さ(プラクティカル、ND−P)と同一であり、母材の硬さよりHV50高い硬さまでの深さを意味する。また、窒素拡散層の厚さは、300℃で焼戻し処理を行い、その際に、Fe4N(γ′)の針状結晶が析出した部分の厚さを測定することにより求めることができる。
【0063】
(窒素化合物層)
窒素化合物層は、Fe3Nなどから構成される層であり、優れた耐食性を有する。特に、本発明では、プレッシャプレートの表面に酸化皮膜が存在しない状態でガス軟窒化処理を行っているため、酸化皮膜が存在する状態でガス軟窒化処理を行ったものと比べて、窒素化合物層を厚く形成することができ、耐食性も、より優れたものとすることができる。
【0064】
窒素化合物層の表面粗さは、算術平均粗さRaで1.5μm〜8.0μmの範囲、好ましくは1.7μm〜6.5μmの範囲、より好ましくは2.0μm〜5.0μmの範囲にあり、かつ、十点平均粗さRzで10μm〜40μmの範囲、好ましくは11μm〜35μmの範囲、より好ましくは13μm〜30μmの範囲にあることが必要である。窒素化合物層の表面の平均粗さが、算術平均粗さRaで1.5μm未満、または、十点平均粗さRzで10μm未満の場合には、十分なアンカー効果が得られず、十分な接着強度を得ることができない場合がある。一方、窒素化合物層の表面の平均粗さが、算術平均粗さRaで8.0μmを超え、または、十点平均粗さRzで40μmを超えると、凹凸構造の凸部が、接着剤を塗布することにより形成される接着層から突出し、同様に、十分な接着強度を得ることができない場合がある。
【0065】
窒素化合物層の厚さは、好ましくは5μm〜25μmの範囲、より好ましくは7μm〜18μmの範囲に調整される。窒素化合物層の厚さが5μm未満では、この窒素化合物層の最表部に形成される細孔が、窒素化合物層を貫通し、窒素拡散層まで達することがあるため、十分な耐食性を得ることができない場合がある。一方、25μmを超えても、それ以上の効果を得ることはできないばかりか、ガス軟窒化処理に要する時間が長時間となり、生産性が悪化してしまう。なお、窒素化合物層の厚さは、プレッシャプレートの断面をナイタール液により処理した後、この断面を光学顕微鏡で観察することにより測定することができる。
【0066】
また、窒素化合物層の表層部のうち、最も突出した部分(最凸部)と最も凹んだ部分(最凹部)との高低差(垂直方向の距離)は、5μm〜50μmであることが好ましく、10μm〜30μmであることがより好ましい。最凸部と最凹部の高低差がこのような範囲にあることにより、後述するポーラス層の作用と併せて、接着強度および耐食性を一層向上させることができる。
【0067】
(ポーラス層)
ポーラス層は、ガス軟窒処理により母材中に侵入した窒素原子が、母材内部で再結合し、窒素ガスとして放出される際に形成される無数の細孔からなる層である。本発明では、上述したように、プレッシャプレートの表面に酸化皮膜が存在しない状態でガス軟窒化処理を行っており、酸化皮膜が存在する状態でガス軟窒化処理を行ったものと比べて、より多くの窒素を、より深い位置まで浸透させることができる。このため、より多くの細孔が、より深い位置まで形成されたポーラス層を形成することができる。なお、このようなポーラス層は、窒素化合物層の最表部に形成されるように調整されるので、このポーラス層を構成する細孔が、窒素化合物層を貫通して、窒素拡散層まで到達することはなく、このポーラス層または細孔の存在によって、耐食性が低下することはない。
【0068】
ポーラス層の厚さは、3.0μm〜20.0μmの範囲、好ましくは5.0μm〜15.0μmの範囲、より好ましくは7.0μm〜10.0μmの範囲に調整される。ポーラス層の厚さが3.0μm未満では、アンカー効果を十分に得ることができないため、接着強度を向上させることができない。また、20.0μmを超えると、ポーラス層を構成する細孔の一部が、窒素化合物層を貫通し、窒素拡散層まで到達することがあり、耐食性が低下する。ポーラス層の厚さは、窒素化合物層の厚さと同様の方法により測定することができる。
【0069】
(2)ブレーキパッド
本発明のブレーキパッドは、上述したプレッシャプレートと、このプレッシャプレートの被接着面に接着剤を介して接着された摩擦材とから構成される。このため、本発明のブレーキパッドでは、プレッシャプレートの被接着面に、摩擦材を高い接着強度で強固に接着することが可能となる。また、このプレッシャプレートの表面は優れた耐食性を備えるため、錆が発生することにより、接着強度が低下することを効果的に防止することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0071】
[接着強度の確認試験]
初めに、厚さ1.6mm、幅25mm、長さ100mmのSAPH400製の鋼板に対して、ウェットブラスト処理やガス軟窒化処理などを行い、処理後の鋼板と銅寸法の鋼板(以下、「相手側鋼板」という)とを、粉体系接着剤または溶剤系接着剤を用いて接着することでサンプルを得て、その接着強度を確認する試験を行った。
【0072】
(実施例1−1)
鋼板を回転バレル式ウェットブラスト装置(マコー株式会社製、MSB−S5)に投入し、ホワイトアルミナ製のグリッド(グリッド番号:#60)とアルカリ洗浄液(日本シー・ビー・ケミカル株式会社製、ケミクリーナ576)とからなる、濃度が15体積%のスラリーを用いて、ウェットブラスト処理を行った。このときのエア圧は0.10MPa、処理時間は180秒、スラリーの温度は常温〜90℃、pH値は8〜11(液温25℃基準)であった。なお、ウェットブラスト処理後、鋼板の表面粗さを表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製、サーフコーダー SE2300/DR−250X)により測定した結果、十点平均粗さRzは5.5μmであり、算術平均粗さRaは1.0μmであった。
【0073】
ウェットブラスト処理後、回転バレル式ウェットブラスト装置から鋼板を取出し、直ちに、常温〜30℃の圧縮空気を吹き付け、その表面を乾燥させた。さらに、鋼板を、炭化水素系洗浄液(日本グリース株式会社製、AYクリーン A−78L)に、減圧下で浸漬させることにより洗浄し、表面に残存する水分を完全に除去した。
【0074】
乾燥および洗浄工程後、直ちに、鋼板をガス軟窒化炉(株式会社不二越製、EQ−6S)に投入し、処理温度を570℃、この処理温度における保持時間を100分として軟窒化処理を行った。このとき、窒素供給源として5.0m3/hのアンモニアを、炭素供給源として0.05L/hのメタノールを使用した。ガス軟窒化処理終了後、鋼板を室温まで冷却した後、表面粗さを表面粗さ測定機により測定した結果、平均で、算術平均粗さRaは1.5μmであり、十点平均粗さRzは10.2μmであった。
【0075】
次に、この鋼板の一区画(12.5mm×25mm)に、40mgの粉体系接着剤(住友べークライト製、スミライトレジン)を均一に塗布し、この塗布面に、相手側鋼板を重ね合わせ、200℃、1MPaで30分間の加熱加圧成形を行った。
【0076】
このようにして得られたサンプルに対して、常温(18℃〜28℃)での接着強度を評価するため、精密万能試験機オートグラフ(株式会社島津製作所製、AG−25TB)を使用し、引張速度を10mm/分として、引張試験を行った。また、250℃に加熱した場合の接着強度を評価するため、同様にして得られたサンプルを加熱して、引張試験を行った。この結果を表2に示す。
【0077】
(実施例1−2〜1−5)
鋼板の表面を、表1に示す方法および条件で処理したこと以外は、実施例1−1と同様にしてサンプルを得た。これらのサンプルに対して、実施例1−1と同様にして引張試験を行い、常温および250℃での接着強度を評価した。これらの結果を表2に示す。
【0078】
(実施例1−2〜1−7)
鋼板の表面を、表1に示す方法および条件で処理したこと以外は、実施例1−1と同様にしてサンプルを得た。これらのサンプルに対して、実施例1−1と同様にして引張試験を行い、常温および250℃での接着強度を評価した。これらの結果を表2に示す。
【0079】
(実施例1−8)
接着剤として、溶剤系接着剤(カシュー株式会社製、フェノールエポキシ系接着剤)を使用したこと以外は、実施例1−4と同様にしてサンプルを得た。このサンプルに対して、実施例1−1と同様にして引張試験を行い、常温および250℃での接着強度を評価した。この結果を表2に示す。
【0080】
(比較例1−1〜1−7)
鋼板の表面を、表1に示す方法および条件で処理したこと以外は、実施例1−4と同様にしてサンプルを得た。このサンプルに対して、実施例1−1と同様にして引張試験を行い、常温および250℃での接着強度を評価した。これらの結果を表2に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
[ブレーキパッドの接着強度および耐食性の評価]
次に、摩擦材の接着面の面積が55cm2であるSAPH400製のプレッシャプレート素材に対して、ブラスト処理やガス軟窒化処理などを行い、これらの処理により得られたプレッシャプレートの被接着面に、粉体系接着剤または溶剤系接着を用いて、摩擦材を接着することでブレーキパッドを得て、その接着強度および耐食性を評価する試験を行った。
【0084】
(実施例2−1)
(1)粗面化工程
プレッシャプレート素材を回転バレル式ウェットブラスト装置(マコー株式会社製、MSB−S5)に投入し、ホワイトアルミナ製のグリッド(グリッド番号:#60、株式会社不二製作所製、フジランダム WA−60)とアルカリ洗浄液(日本シー・ビー・ケミカル株式会社、ケミクリーナ576)とからなる、濃度が15体積%のスラリーを用いて、ウェットブラスト処理を行った。このときのエア圧は0.1MPa、処理時間は180秒、スラリーの温度は30℃、pH値は10(液温25℃基準)であった。なお、ウェットブラスト処理後、プレッシャプレートの表面粗さを表面粗さ測定機により測定した結果、4つのプレッシャプレートの平均で、算術平均粗さRaは1.2μmであり、十点平均粗さRzは7.9μmであった。
【0085】
(2)乾燥および洗浄工程
ウェットブラスト処理後、回転バレル式ウェットブラスト装置からプレッシャプレートを取り出し、直ちに、30℃の圧縮空気を吹き付け、その表面を乾燥させた。さらに、炭化水素系洗浄液(日本グリース株式会社製、AYクリーン A−78L)を用いて、プレッシャプレートを減圧下で浸漬させることにより洗浄し、表面に残存する水分を完全に除去した。このとき、プレッシャプレートの表面近傍の断面を走査型電子顕微鏡およびX線回折装置(株式会社島津製作所製、XRD−6100)により観察した結果、その表面には、酸化皮膜が存在しないことが確認された。
【0086】
(3)熱処理工程
乾燥および洗浄工程後、直ちに、プレッシャプレートをガス軟窒化炉(株式会社不二越製、EQ−6S)に投入し、処理温度を570℃、この処理温度における保持時間を100分として軟窒化処理を行った。このとき、窒素供給源として5.0m3/hのアンモニアを、炭素供給源として0.05L/hのメタノールを使用した。ガス軟窒化処理終了後、プレッシャプレートを60℃以下に冷却し、表面粗さを表面粗さ測定機により測定した結果、算術平均粗さRaは1.5μmであり、十点平均粗さRzは10.1μmであった。
【0087】
このようにしてガス軟窒化処理を施されたプレッシャプレートを厚さ方向に切断し、その断面をナイタール液により処理した後、この断面を光学顕微鏡で観察した結果、窒素拡散層の厚さは300μm、窒素化合物層の厚さは23μm、ポーラス層の厚さは14μmであることが確認された。
【0088】
これらの処理により得られたプレッシャプレートの表面の性状(表面粗さ、各層の厚さ)を表4に示す。また、このときのプレッシャプレートの断面SEM像を図1に示す。
【0089】
(4)接着工程
繊維基材、結合材、充填材および潤滑材などからなる混合物を、常温下、20MPaで10秒間の加圧成形し、これらの混合物からなる成形物(予備成形体)を得た。一方、上述した方法と同様にして得られた3つのプレッシャプレートの表面のうち、予備成形体を接着する被接着面に、フェノール樹脂系粉体接着剤A(住友ベークライト株式会社製、スミライトレジン)を塗布した。その後、予備成形体をプレッシャプレートの被接着面に重ね合せた状態で熱成形型にセットし、150℃、40MPaで5分間の加熱加圧成形を行い、プレッシャプレートと予備成形体を接着した。
【0090】
(6)仕上げ加工
予備成形体を接着したプレッシャプレートに対して、250℃で3時間加熱する熱処理を行った後、仕上げ加工を行い、ブレーキパッドを得た。
【0091】
(7)評価試験
上述のようにして得られた3つのブレーキパッドを用いて、(a)常温における接着強度、(b)300℃に加熱した場合の接着強度および(c)耐食性の評価を行った。
【0092】
(a)常温における接着強度
精密万能試験機オートグラフ(株式会社島津製作所製、AG−25TB)を用いて、ブレーキパッドに対してせん断試験(JIS D4422)を行い、常温(25℃)におけるプレッシャプレートと摩擦材の接着強度(平均値、最小値および最大値)を測定した。また、せん断後にプレッシャプレート上に残存する摩擦材の残存率(=残存した摩擦材の面積/被接着面の面積)を求め、残存率が100%であるものを「良(○)」と、80%以上100%未満のものを「可(△)」と、80%未満のものを「不良(×)」と評価した。
【0093】
(b)300℃における接着強度
ブレーキパッドを300℃に加熱したこと以外は、(a)と同様にしてせん断試験を行い、300℃におけるプレッシャプレートと摩擦材の接着強度を測定するとともに、残存率を求め、その評価を行った。
【0094】
(c)耐食性
ブレーキパッドの表面に、霧吹きを用いて5質量%の塩水2mLを噴霧し、温度50℃、湿度90%に保持した恒温恒湿層内に24時間放置するサイクルを、5サイクル行う塩水噴霧試験を行い、プレッシャプレートの表面に錆が発生しなかったものを「良(○)」と、錆が発生したものを「不良(×)」と評価した。これらの評価試験の結果を表5に示す。
【0095】
(実施例2−2〜2−27、比較例2−1〜2−4)
プレッシャプレートの表面を、表3に示す方法および条件で処理したこと以外は、実施例2−1と同様にしてブレーキパッドを得た。これらのブレーキパッドについて、(a)常温における接着強度、(b)300℃における接着強度、および、(c)耐食性を、それぞれ評価した。プレッシャプレートの表面の性状(表面粗さ、各層の厚さ)を表4に、評価試験の結果を表5に示す。また、比較例2−1(ガス軟窒化のみ)および2−3(塩浴軟窒化)のプレッシャプレートの断面SEM像を図2および図3に示す。
【0096】
(実施例2−28)
圧縮空気式ドライブラスト装置(新日本工機サービス株式会社製、e―ブラスター)を用いて、ホワイトアルミナ製のグリッド(グリッド番号:#60、株式会社不二製作所製、フジランダム WA−60)を用いて、0.3MPaのエア圧、60秒の処理時間で、ドライブラスト処理をプレッシャプレートに施した。ドライブラスト処理後、プレッシャプレートの表面をアルカリ洗浄液(日本シー・ビー・ケミカル株式会社、ケミクリーナ576)により洗浄し、30℃の圧縮空気を吹き付け、その表面を乾燥させた。乾燥後、直ちに、炭化水素系洗浄液(日本グリース株式会社製、AYクリーン A−78L)を用いて、プレッシャプレートを減圧下で浸漬させることにより洗浄し、表面に残存する水分を完全に除去した。このとき、プレッシャプレートの表面近傍の断面を走査型電子顕微鏡およびX線回折装置により観察した結果、その表面には、酸化皮膜が存在しないことが確認された。
【0097】
乾燥および洗浄工程後、実施例2−1と同様にしてブレーキパッドを得た。これらのブレーキパッドについて、(a)常温における接着強度、(b)300℃における接着強度、および、(c)耐食性を、それぞれ評価した。プレッシャプレートの表面の性状(表面粗さ、各層の厚さ)を表4に、評価試験の結果を表5に示す。
【0098】
(実施例2−29〜2−34)
粗面化処理工程を、平置式ウェットブラスト装置(マコー株式会社製、ココット)を使用し、プレッシャプレートの表面を表3に示す方法および条件で処理したこと以外は、実施例2−1と同様にしてブレーキパッドを得た。これらのブレーキパッドについて、(a)常温における接着強度、(b)300℃における接着強度、および、(c)耐食性を、それぞれ評価した。プレッシャプレートの表面の性状(表面粗さ、各層の厚さ)を表4に、評価試験の結果を表5に示す。
【0099】
【表3】


【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
(実施例2−35〜2−38)
接着剤として、表6および表7に示すものを使用したこと以外は、実施例2−15と同様にしてブレーキパッドを得た。これらのブレーキパッドについて、(a)常温における接着強度、(b)300℃における接着強度、および、(c)耐食性を、それぞれ評価した。これらの評価試験の結果を表7に示す。
【0103】
(比較例2−5)
接着剤として、表6および表7に示すものを使用したこと以外は、比較例2−1と同様にしてブレーキパッドを得た。このブレーキパッドについて、(a)常温における接着強度、(b)300℃における接着強度、および、(c)耐食性を、それぞれ評価した。これらの評価試験の結果を表7に示す。
【0104】
(比較例2−6)
接着剤として、表6および表7に示すものを使用したこと以外は、比較例2−2と同様にしてブレーキパッドを得た。このブレーキパッドについて、(a)常温における接着強度、(b)300℃における接着強度、および、(c)耐食性を、それぞれ評価した。これらの評価試験の結果を表7に示す。
【0105】
(比較例2−7)
接着剤として、表6および表7に示すものを使用したこと以外は、比較例2−3と同様にしてブレーキパッドを得た。このブレーキパッドについて、(a)常温における接着強度、(b)300℃における接着強度、および、(c)耐食性を、それぞれ評価した。これらの評価試験の結果を表7に示す。
【0106】
【表6】
【0107】
【表7】
【符号の説明】
【0108】
1 ブレーキパッド
2 プレッシャプレート
3 摩擦材
図1
図2
図3
図4