(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234813
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】目薬容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
A61J1/05 313F
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-272931(P2013-272931)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-126787(P2015-126787A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝之
【審査官】
今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−098872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容する収容空間に連通する筒状の口部を有する容器本体と、
内容液の注出口を有し、前記口部に装着される中栓と、
前記容器本体に対して揺動可能に取り付けられた揺動体と、を備え、
前記揺動体は、前記容器本体に揺動可能に連結する一対の連結部と、該連結部を架け渡す天壁とを備え、
前記天壁に、容器本体を倒立姿勢で保持するにあたり、前記注出口を鉛直下向きに指向させる際にその中心が該注出口の中心軸線上に位置する開口を設けたことを特徴とする目薬容器。
【請求項2】
前記連結部は、容器本体の胴部に設けられた係合凸部に嵌合する係合孔部を有し、
該揺動体は、前記係合凸部を支点として揺動する、請求項1に記載の目薬容器。
【請求項3】
前記係合孔部が容器本体の軸線方向に延びる長孔状であり、前記揺動体が前記容器本体に対して該係合孔部の長手方向に移動可能である、請求項2に記載の目薬容器。
【請求項4】
前記口部に着脱可能に装着され、前記収容空間を封止可能なキャップを有し、前記口部の外周面には、前記キャップの内周面に形成された内ねじに係合する外ねじ部が設けられ、該外ねじ部はねじ山が部分的に間欠する外ねじ間欠部を有し、
該外ねじ間欠部に前記揺動体の連結部が部分的に嵌まり込んだ状態で前記キャップが装着される、請求項3に記載の目薬容器。
【請求項5】
前記中栓は、その先端に前記注出口を有するとともに前記開口を貫通する注出筒を有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の目薬容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目薬を正確に点眼するための目薬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目薬を点眼するために用いる目薬容器として、目の上方で容器本体を倒立姿勢で保持して、先端に設けられた注出口から目薬を滴下するものが知られている。このような目薬容器は、目薬を正確に点眼することが難しく、目に滴下できなかった目薬が無駄になっていた。
【0003】
このような問題を解決することを目的として、例えば特許文献1には、水平器の付いた鏡を注出口の根元に設けた目薬容器が開示されている。この目薬容器は、鏡に映った自分の目を見るとともに鏡の水平も確認しながら点眼することで、点眼の確実性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−82968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような目薬容器においても、点眼の確実性には改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、点眼の確実性を向上させることが可能な目薬容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る目薬容器は、内容液を収容する収容空間に連通する筒状の口部を有する容器本体と、
内容液の注出口を有し、前記口部に装着される中栓と、
前記容器本体に対して揺動可能に取り付けられた揺動体と、を備え、
前記揺動体は、前記容器本体に揺動可能に連結する一対の連結部と、該連結部を架け渡す天壁とを備え、
前記天壁に、容器本体を倒立姿勢で保持するにあたり、前記注出口を鉛直下向きに指向させる際にその中心が該注出口の中心軸線上に位置する開口を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る目薬容器にあっては、前記連結部は、容器本体の胴部に設けられた係合凸部に嵌合する係合孔部を有し、
該揺動体は、前記係合凸部を支点として揺動することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る目薬容器にあっては、前記係合孔部が容器本体の軸線方向に延びる長孔状であり、前記揺動体が前記容器本体に対して該係合孔部の長手方向に移動可能であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る目薬容器にあっては、前記口部に着脱可能に装着され、前記収容空間を封止可能なキャップを有し、前記口部の外周面には、前記キャップの内周面に形成された内ねじに係合する外ねじ部が設けられ、該外ねじ部はねじ山が部分的に間欠する外ねじ間欠部を有し、
該外ねじ間欠部に前記揺動体の連結部が部分的に嵌まり込んだ状態で前記キャップが装着されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る目薬容器にあっては、前記中栓は、その先端に前記注出口を有するとともに前記開口を貫通する注出筒を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、点眼の確実性を向上させることが可能な目薬容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る目薬容器を部分的に断面で示した正面図である。
【
図2】
図1の目薬容器に装着されたキャップを取り外して揺動体を引き出した状態を示す図である。
【
図3】(a)は、
図1の目薬容器の使用時の様子を表す図であり、(b)は
図3(a)の目薬容器を下方から見た図であり、(c)は、
図3(a)の目薬容器を、倒立姿勢で注出口を鉛直下向きに指向させ、下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る目薬容器1は、目薬(内容液)を収容する収容空間を形成する容器本体3と、当該収容空間に連通する口部5の上端に装着される中栓7と、中栓7を覆うように口部5に着脱可能に装着されるキャップ9と、容器本体3に揺動可能に取付けられた揺動体11と、を備える。なお、
図1に示す目薬容器1は、容器本体3の口部5にキャップ9を装着した非使用状態を表し、
図2は、
図1の状態からキャップ9を取り外して揺動体11を上方に引き出した使用状態の目薬容器1を表している。
【0015】
容器本体3は、底部13の外縁から起立する筒状の胴部15、胴部15の上端から内側に延びる肩部17、及び肩部17の内縁から起立する円筒状の口部5で構成される。口部5の外周面には外ねじ部19が設けられ、キャップ9の内周面に形成された内ねじ部21と係合する。外ねじ部19は、容器本体3の両側面側、すなわち、
図1、2における左右方向の両側に、ねじ山が部分的に間欠した外ねじ間欠部20を有する。
【0016】
口部5の上端に設けられた中栓7は、先端に向けて先細り状に延びて、先端に注出口25を有する注出筒(ノズル)26と、注出筒26の下端から外側に延びるフランジ27と、フランジ27の下面から垂下して口部5の内周面に嵌合する嵌合筒29で構成されている。本実施形態において、注出口25の中心軸線(以下、単に「軸線」という。)Cは、注出筒26、口部5及び胴部15の中心軸線と一致している。
【0017】
容器本体3は、胴部15の両側の側面から突出する一対の係合凸部31を有する。
図1に示すように、一対の係合凸部31は、軸線Cに対して垂直な軸線D上に配置されており、揺動体11の係合孔部33に入り込んで、揺動体11が揺動する際の支点となる。また、係合凸部31が設けられた胴部15の側面は、揺動体11の連結部35が収まるよう、上部が下部よりも内側に凹んでいる。
【0018】
揺動体11は、容器本体3に嵌合する一対の連結部35と、中央に円形の開口39を有し、連結部を架け渡す天壁41とで構成される。
図1に示す非使用状態において、天壁41は口部5の上端に配置された中栓7のフランジ27の上方に位置しており、天壁41の開口39を注出筒26が貫通している。連結部35は、天壁41の外縁部から垂下して、
図1に示す非使用状態で外ねじ間欠部20に嵌まり込んで口部5の外周面に沿う上壁部35aと、容器本体3の胴部15の側面に沿う下壁部35bと、上壁部35a及び下壁部35bを繋ぐ中間壁部35cとで構成される。下壁部35bには、上述の係合孔部33が形成されている。本実施形態において係合孔部33は、容器本体3の軸線方向、すなわち軸線Cの方向を長手方向として、下壁部35bの延在方向に沿って延びる長孔状である。これにより、本実施形態において揺動体11は、容器本体3に対して、
図1に示す容器本体3への収容状態から、
図2に示す最大に引き出された状態まで軸線Cに沿うように移動可能である。本実施形態において揺動体11は、
図1に示す容器本体3への収容状態から、キャップ9を外して倒立姿勢にする際に、揺動体11の自重により
図2に示す状態まで移動する構成となっている。また、本実施形態においては、注出筒26が天壁41の開口39を貫通しているため、注出筒26の外面と、開口39の内周縁が当接することにより揺動体11の揺動範囲は制限されている。
【0019】
以下、本実施形態の目薬容器1の使用方法について説明する。ここで、
図3(a)は、使用時の目薬容器1を側面側から見た図である。なお、
図3(a)に示すように、揺動体11が揺動する際の中心軸となる軸線Dは、軸線Cと交差している。すなわち、軸線Cと軸線Dとは、目薬容器1における奥行き方向の位置が一致している。また、容器本体3の倒立状態において、注出口25が鉛直下向きとなる際に、揺動体11は、自重により開口39の中心が軸線Dの真下に位置するよう揺動する。
【0020】
本実施形態の目薬容器1を使用する場合には、
図1に示す非使用状態から、キャップ9を取り外した後、胴部15を把持して容器本体3を倒立姿勢で目の上方に配置し、胴部を押圧することで目薬を注出口25滴下させる。このとき、
図3(a)に示すように、注出口25が鉛直下向きとなっていない場合、すなわち、軸線Cが鉛直でない場合には、天壁41の開口39の中心が軸線C上に位置せず、目薬を点眼しようとする目からは、
図3(b)のように注出口25が開口39の一方側に偏って見える。この状態で目薬を滴下すると、
図3(a)に破線で示す矢印のように目から外れてしまう虞がある。
【0021】
一方、注出口25が鉛直下向きとなっている場合、すなわち、軸線Cが鉛直である場合には、開口39の中心が軸線C上に位置し、目薬を点眼しようとする目からは、
図3(c)に示すように、注出口25が開口39の中心に見える。このように、開口39の中心に注出口25が位置するよう目薬容器を保持した状態で点眼することにより、正確に点眼することができる。
【0022】
以上のように、本実施形態の目薬容器1にあっては、点眼をする際に注出口25が開口39の中心に位置するよう目薬容器1を保持することで、より正確に注出口25を鉛直下向きに向けることができるので、点眼の確実性を向上させることができる。
【0023】
また、本実施形態の目薬容器1にあっては、揺動体11の係合孔部33を長孔状として容器本体3に対する軸線Cに沿う方向の移動を可能とするとともに、揺動体11の上壁部35aが外ねじ間欠部20に嵌まり込む構成としたことで、非使用時における目薬容器1の全体としての大きさを小さくすることができる。
【0024】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば上記実施形態の目薬容器1は、揺動体の開口を円形状として説明したが、楕円形状や多角形状等の構成としても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 目薬容器
3 容器本体
5 口部
7 中栓
9 キャップ
11 揺動体
13 底部
15 胴部
17 肩部
19 外ねじ部
20 外ねじ間欠部
21 内ねじ部
25 注出口
26 注出筒
27 フランジ
29 嵌合筒
31 係合凸部
33 係合孔部
35 連結部
35a 上壁部
35b 下壁部
35c 中間壁部
39 開口
41 天壁