特許第6234822号(P6234822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234822
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G05F1/56 310D
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-2971(P2014-2971)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-197381(P2014-197381A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-44165(P2013-44165)
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 文靖
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−22450(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0210726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラーアンプと、出力トランジスタを備えるボルテージレギュレータにおいて、
前記ボルテージレギュレータの出力電圧を基にした電圧を感知し、前記出力電圧のオーバーシュート量に応じた電流を出力するオーバーシュート検出回路を備え、
前記電流に応じて前記出力トランジスタに流れる電流を減少させる事を特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
前記ボルテージレギュレータは、
前記エラーアンプの出力で制御される電流と前記オーバーシュート検出回路から流れる電流を基に、前記出力トランジスタに流れる電流を制御するI−V変換回路を備える事を特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項3】
前記I−V変換回路は、
前記エラーアンプの出力で制御される第一のトランジスタを備え、前記第一のトランジスタに流れる電流を基に前記出力トランジスタに流れる電流を制御する事を特徴とする請求項2に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項4】
前記I−V変換回路は、
前記第一のトランジスタに接続され、前記第一のトランジスタに流れる電流または前記オーバーシュート検出回路から流れる電流を基にした電流を前記出力トランジスタに流す第二のトランジスタを備える事を特徴とする請求項3に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項5】
前記第一のトランジスタは、
ゲートが前記エラーアンプの出力に接続され、ドレインが前記出力トランジスタのゲートに接続さる事を特徴とする請求項3に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項6】
前記第二のトランジスタは、
ゲート及びドレインが前記出力トランジスタのゲートと前記第一のトランジスタのドレインに接続される事を特徴とする請求項4に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項7】
前記オーバーシュート検出回路は、
ゲートに出力電圧を基にした電圧が印加される第三のトランジスタと、
入力が前記第三のトランジスタのドレインに接続され、出力が前記I−V変換回路に接続されるカレントミラー回路と、を備える事を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のボルテージレギュレータ。
【請求項8】
前記I−V変換回路は、
前記第一のトランジスタのドレインと前記第二のトランジスタのドレインの間にカスコードトランジスタを備え、
前記オーバーシュート検出回路は、
ゲートに出力電圧を基にした電圧が印加され、ソースが前記第一のトランジスタのドレインに接続される第三のトランジスタを備える
事を特徴とする請求項4に記載のボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテージレギュレータのオーバーシュート改善に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に従来のボルテージレギュレータの回路図を示す。従来のボルテージレギュレータは、エラーアンプ110と、PMOSトランジスタ120、201と、NMOSトランジスタ202と、抵抗211、212、213、214と、容量231、232と、電源端子100と、グラウンド端子101と、基準電圧端子102と、出力端子103で構成されている。
【0003】
エラーアンプ110にて、PMOSトランジスタ120のゲートを制御することにより、出力端子103から出力電圧Voutが出力される。出力電圧Voutは、基準電圧端子102の電圧を抵抗212と抵抗213の合計抵抗値で割った値に、抵抗211と抵抗212と抵抗213の合計抵抗値を掛けた値となる。出力電圧Voutのオーバーシュートを小さくするために、PMOSトランジスタ201とNMOSトランジスタ202と抵抗214が設けられている。オーバーシュートが発生すると、NMOSトランジスタ202がオンし、抵抗214に電流が流れる。そして、抵抗214に電圧が発生しPMOSトランジスタ201がオンする。PMOSトランジスタ201がオンすると、PMOSトランジスタ120のゲートが電源電圧にプルアップされてオフし、オーバーショートの上昇を防止することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−92693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来のボルテージレギュレータでは、オーバーシュートが発生しPMOSトランジスタ120をオフした状態から所定の出力電圧が出力されるように制御するのに時間がかかるという課題があった。また、オーバーシュートが発生しPMOSトランジスタをオフした状態から所定の出力電圧に制御している間、出力電流が不足して出力電圧が低下するという課題もあった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、出力電圧にオーバーシュートが発生した後出力電圧が制御されるのに時間がかかり、出力電流が不足して出力電圧が低下する事を防止するボルテージレギュレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来の課題を解決するために、本発明のボルテージレギュレータは以下のような構成とした。
エラーアンプと、出力トランジスタを備えるボルテージレギュレータにおいて、前記ボルテージレギュレータの出力電圧を基にした電圧を感知し、前記出力電圧のオーバーシュート量に応じた電流を出力するオーバーシュート検出回路を備え、前記電流に応じて前記出力トランジスタに流れる電流を減少させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のボルテージレギュレータによれば、出力電圧にオーバーシュートが発生した後、速やか出力電圧を所定の電圧に制御する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のボルテージレギュレータのブロック図である。
図2】本実施形態のボルテージレギュレータの回路図である。
図3】従来のボルテージレギュレータの回路図である。
図4】本実施形態のボルテージレギュレータの他の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本実施形態のボルテージレギュレータのブロック図である。本実施形態のボルテージレギュレータは、エラーアンプ110と、PMOSトランジスタ120と、抵抗131、132、133と、オーバーシュート検出回路130と、I−V変換回路135と、電源端子100と、グラウンド端子101と、基準電圧端子102と、出力端子103で構成されている。PMOSトランジスタ120は出力トランジスタとして動作する。図2は、本実施形態のボルテージレギュレータの回路図である。オーバーシュート検出回路130はPMOSトランジスタ115、116と、NMOSトランジスタ117で構成されている。I−V変換回路135は、PMOSトランジスタ111と、NMOSトランジスタ112で構成されている。
【0012】
次に本実施形態のボルテージレギュレータの接続について説明する。エラーアンプ110は、非反転入力端子は基準電圧端子102に接続され、反転入力端子は抵抗131と抵抗132の接続点に接続され、出力端子はNMOSトランジスタ112のゲートに接続される。抵抗131のもう一方の端子は出力端子103とPMOSトランジスタ120のドレインに接続される。NMOSトランジスタ112は、ドレインはPMOSトランジスタ111のゲート及びドレインに接続され、ソースはグラウンド端子101に接続される。PMOSトランジスタ111のソースは電源端子100に接続される。PMOSトランジスタ120は、ゲートはPMOSトランジスタ111のゲートに接続され、ソースは電源端子100に接続される。PMOSトランジスタ115は、ゲートはPMOSトランジスタ116のゲート及びドレインに接続され、ドレインはPMOSトランジスタ111のゲートに接続され、ソースは電源端子100に接続される。PMOSトランジスタ116のソースは電源端子100に接続される。NMOSトランジスタ117は、ゲートは抵抗132と抵抗133の接続点に接続され、ドレインはPMOSトランジスタ116のドレインに接続され、ソースはグラウンド端子101に接続される。抵抗133のもう一方の端子はグラウンド端子101に接続される。
【0013】
動作について説明する。基準電圧端子102は基準電圧回路に接続され基準電圧Vrefが入力される。
抵抗131と抵抗132、133は、出力端子103の電圧である出力電圧Voutを分圧し、分圧電圧Vfbを出力する。エラーアンプ110は、基準電圧Vrefと分圧電圧Vfbとを比較し、出力電圧Voutが一定になるようNMOSトランジスタ112のゲート電圧を制御する。出力電圧Voutが狙い値よりも高いと、分圧電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高くなり、エラーアンプ110の出力信号(NMOSトランジスタ112のゲート電圧)が低くなる。そして、NMOSトランジスタ112に流れる電流を減少させる。PMOSトランジスタ111とPMOSトランジスタ120はカレントミラー回路を構成しており、NMOSトランジスタ112に流れる電流が減少するとPMOSトランジスタ120に流れる電流も減少する。PMOSトランジスタ120に流れる電流と抵抗131、132、133の積によって出力電圧Voutが設定されるため、PMOSトランジスタ120に流れる電流が減少することで出力電圧Voutが低くなる。
【0014】
出力電圧Voutが狙い値よりも低いと、分圧電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも低くなり、エラーアンプ110の出力信号(NMOSトランジスタ112のゲート電圧)が高くなる。そして、NMOSトランジスタ112に流れる電流を増加させ、PMOSトランジスタ120に流れる電流も増加させる。PMOSトランジスタ120に流れる電流と抵抗131、132、133の積によって出力電圧Voutが設定されるため、PMOSトランジスタ120に流れる電流が増加することで出力電圧Voutが高くなる。こうして、出力電圧Voutが一定になるように制御される。
このように動作して、I−V変換回路135はエラーアンプ110の出力で制御される電流を基に出力トランジスタ120に流れる電流を制御している。
【0015】
出力端子103にオーバーシュートが現れ、出力電圧Voutが過渡的に大きくなる場合を考える。出力電圧Voutを抵抗131、132と抵抗133で分圧した電圧をVoとする。出力電圧Voutが過渡的に大きくなると、電圧Voも大きくなりNMOSトランジスタ117をオンさせ電流を流す。PMOSトランジスタ116とPMOSトランジスタ115はカレントミラー回路を構成しており、NMOSトランジスタ117が電流を流すとPMOSトランジスタ115も電流を流す。
【0016】
PMOSトランジスタ115からの電流はNMOSトランジスタ112へ流れるように動作するが、エラーアンプ110の出力は変化しないためNMOSトランジスタ112へ流せる電流量は変わらずPMOSトランジスタ115からの電流を流すことができない。このため、PMOSトランジスタ111がPMOSトランジスタ111からNMOSトランジスタ112へ流れる電流を減少させるように動作し、PMOSトランジスタ115からの電流をNMOSトランジスタ112へ流せるようにする。PMOSトランジスタ111に流れる電流が減少するためPMOSトランジスタ120へ流れる電流も減少する。こうして出力電圧Voutがこれ以上上昇しないように制御され、出力電圧Voutのオーバーシュートの上昇を止めることができる。
【0017】
オーバーシュートが発生後、出力電圧Voutが制御され低くなっていくと、NMOSトランジスタ117に流れる電流も徐々に減少し、PMOSトランジスタ115の電流も徐々に減少する。そして、PMOSトランジスタ111の電流は徐々に増え、通常の電流値へ戻り出力電圧Voutが一定になるように制御される。この制御の間、PMOSトランジスタ120はオフすることなく出力電圧Voutを制御し続けるように動作する。このため、出力電圧Voutは出力電流が不足して低下することはなくオーバーシュートが解消された直後も安定的に制御できる。
このように動作して、I−V変換回路135はオーバーシュート検出回路130からの電流も基に出力トランジスタ120に流れる電流を制御している。
【0018】
図4は、本実施形態のボルテージレギュレータの他の例を示す回路図である。オーバーシュート検出回路130とI−V変換回路135は、図2の回路とは異なる構成とした。即ち、PMOSトランジスタ115、116を削除し、カスコードトランジスタであるNMOSトランジスタ401を追加した。
【0019】
NMOSトランジスタ401は、ソースはNMOSトランジスタ112のドレインとNMOSトランジスタ117のソースに接続され、ゲートはカスコード電圧Vcasが入力されるカスコード電圧入力端子402に接続され、ドレインがPMOSトランジスタ111のドレインとゲート、そして、PMOSトランジスタ120のゲートに接続されている。他の回路構成は、図2で示した回路構成と同じであるで、説明を省略する。
【0020】
図4のボルテージレギュレータは、図2の回路と同様に、NMOSトランジスタ117に流れる電流に応じて、PMOSトランジスタ120の電流が減少するよう動作する。ここでは、NMOSトランジスタ117とNMOSトランジスタ401は同一特性のトランジスタとして、説明する。
【0021】
NMOSトランジスタ401のゲートに入力されるカスコード電圧Vcasは、出力端子103の出力電圧Voutが正常な電圧のときの電圧Voよりも高く設定される。従って、出力電圧Voutが正常な電圧のときは、NMOSトランジスタ117は電流を流さないので、PMOSトランジスタ120の電流はNMOSトランジスタ112の電流によって制御される。
【0022】
ここで、出力端子103の出力電圧Voutにオーバーシュートが発生すると、電圧Voもそれに応じて高くなる。そして、カスコード電圧Vcasと電圧Voの関係により、NMOSトランジスタ401の電流が減少し、NMOSトランジスタ117の電流が増加する。従って、電圧Voが高くなることによって、PMOSトランジスタ120の電流が減少するので、出力電圧Voutのオーバーシュート電圧が低減される。電圧Voが減少すると、PMOSトランジスタ120の電流はNMOSトランジスタ112の電流によって制御される通常状態になる。そして、出力電圧Voutは所望の電圧に安定する。
ここで、カスコード電圧Vcasは、出力電圧Voutのオーバーシュートを検出したいときの電圧Voに応じて適宜設定される。
【0023】
このように構成した図4のボルテージレギュレータは、NMOSトランジスタ117電流を電流ミラー回路を介さずにPMOSトランジスタ120へ伝えることができるので、より早く伝えることができる。従って、図2のボルテージレギュレータに比べて、オーバーショートの抑制速度が速くなるので、オーバーシュート電圧量が小さくなるというメリットがある。更に、トランジスタの数が減るので、回路を小型化できるという効果もある。
【0024】
なお、オーバーシュート検出回路130の構成として図2図4を用いて説明したが、この構成に限定することなく、オーバーシュートを感知しオーバーシュート量に応じた電流を出力する構成であればどのような構成であってもよい。
【0025】
以上により、本実施形態のボルテージレギュレータは、出力電圧に発生したオーバーシュートの上昇を止めることができ、オーバーシュートの上昇を止めた後、出力電圧が低下することなく安定的に制御することができる。
【符号の説明】
【0026】
110 エラーアンプ
130 オーバーシュート検出回路
135 I−V変換回路
図1
図2
図3
図4