(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234839
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】デリバリパイプ
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
F02M55/02 350F
F02M55/02 350H
F02M55/02 360A
F02M55/02 360C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-26270(P2014-26270)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-151928(P2015-151928A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 尊祥
【審査官】
堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−009680(JP,A)
【文献】
特開平11−270438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端に開口を有する円管状の部材であって、その軸方向と垂直な端面を前記一端に有する主管部と、
前記開口の孔縁の形状よりも大きな外形を有するとともに前記主管部の外径とほぼ等しい外径を有し、前記主管部の軸方向と垂直な姿勢で前記端面に重ねて配置される平板円形状の閉塞部材とを備え、
前記閉塞部材が、前記端面と当接する当接面と、前記当接面と逆側の面である照射面とを有し、
前記照射面に高エネルギービームを照射して重ね合わせ溶接を行うことにより前記主管部の一部と前記閉塞部材の一部とが接合された溶接部が、前記開口を囲んで配置されており、
前記溶接部が、少なくとも、前記開口を囲んで配置される第1の溶接部と、前記第1の溶接部を囲んで配置される第2の溶接部とを有し、
前記第1の溶接部と前記第2の溶接部の各々は、前記閉塞部材を前記主管部の軸方向に貫いて前記主管部の前記端面に到達する形で、前記主管部と前記閉塞部材にまたがって形成されるとともに、前記主管部の軸方向について前記主管部の管壁と重なる位置に配され、かつ、
前記溶接部において、前記第1の溶接部が最も径方向内側に位置し、前記第2の溶接部が最も径方向外側に位置し、前記第2の溶接部から前記主管部の外周端部までの距離より、前記第1の溶接部から前記開口の前記孔縁までの距離の方が大きくなるように配されているデリバリパイプ。
【請求項2】
前記閉塞部材は、最外郭をなす部材である、請求項1に記載のデリバリパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デリバリパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の気筒を有する内燃機関では、1本の燃料供給管から圧送されてくる燃料を、各気筒毎に個別に設けたインジェクタに分配する手段として、デリバリパイプが用いられている。
デリバリパイプは、インジェクタとの接続のための複数の分岐用筒部が設けられたハウジングと、ハウジングの一端を閉塞するキャップとを備えている。ハウジングの他端は、燃料供給管に接続されており、燃料供給管から供給された燃料がデリバリパイプを介して各インジェクタに分配される。
【0003】
キャップによるハウジングの閉塞構造として、メタルシール構造が採用されることがある。このメタルシール構造では、雄ネジ部を有するキャップが、ハウジングの一端に配置された雌ねじ部にねじ付けられている。キャップが強くねじ込まれることにより、キャップの先端のエッジがハウジングの内周面に配置されたテーパ面に強く当接して塑性変形し、メタルシールが形成される。これにより、キャップとハウジングとの隙間から燃料が漏れないようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−136961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、エンジンの省スペース化の要請から、エンジンルーム内に種々の部品を設置するスペースを思うように確保することは困難となってきている。さらに、自動車産業界のグローバル化に伴い、一層のコスト削減が要請されてきている。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化、コスト削減等の要請に応えることのできるデリバリパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデリバリパイプは、少なくとも一端に開口を有する管状の部材であって、その軸方向と垂直な端面を前記一端に有する主管部と、前記開口の孔縁の形状よりも大きな外形を有し、前記端面に重ねて配置される閉塞部材とを備え、前記閉塞部材が、前記端面と当接する当接面と、前記当接面と逆側の面である照射面とを有し、前記照射面に高エネルギービームを照射して重ね合わせ溶接を行うことにより前記主管部の一部と前記閉塞部材の一部とが接合された溶接部が、前記開口を囲んで配置されている。
【0008】
上記の構成によれば、キャップをハウジングの一端にねじ付ける従来の構成と比較して、ハウジングの一端に雌ねじ部を設ける必要がない分だけ、ハウジングを短くでき、かつ、ハウジングの加工コストを低減できる。
【0009】
前記溶接部が、少なくとも前記開口を囲んで配置される第1の溶接部と、前記第1の溶接部を囲んで配置される第2の溶接部とを有していてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、第1の溶接部および第2の溶接部のうち一方に溶接不良が生じても、他方によってシール性を確保することができるから、ハウジングと閉塞部材との間のシールをより確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型化、コスト削減等の要請に応えることのできるデリバリパイプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】実施形態のデリバリパイプを閉塞板側から見た側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態を、
図1〜
図3を参照しつつ説明する。本実施形態のデリバリパイプ1は、ハウジング10と、閉塞板20(閉塞部材に該当)とを備える。
【0014】
ハウジング10は、金属製であって、主管部11と、複数の分岐用筒部14とを備える。ハウジング10は、鍛造により形成された部材である。つまり、ハウジング10は、機械構造用炭素鋼材などの金属材料を鍛造により成形したのち、必要に応じて焼き入れ、焼き戻し、メッキ等の加工を施すことにより形成された部材である。
【0015】
主管部11は、両端に開口11A、11Bを有する円筒状の管であって、その内部空間は燃料供給路となっている。主管部11は、その一端(一方の開口11Aが配置されている端部)に、主管部11の軸と垂直な端面12を有している。
【0016】
主管部11は、その軸方向に沿って並んで配置された複数の分岐孔13を備える。各分岐孔13は、主管部11の管壁を貫通する貫通孔である。
【0017】
複数の分岐用筒部14は、主管部11の外周面に、主管部11の軸方向に沿って並んで配置されている。各分岐用筒部14は、各分岐孔13の孔縁から、主管部11に対して垂直に立ち上がる筒である。
【0018】
主管部11は、他端(他方の開口11Bが配置されている端部)にインレット15を有している。インレット15は、燃料ポンプに接続された導入用配管(図示せず)との接続のための部分である。
【0019】
閉塞板20は、金属製の円板であって、主管部11の外径とほぼ等しい外径を有している。閉塞板20は、表裏両面のうち一面が、端面12に当接する当接面20Aである。閉塞板20は、当接面20Aが端面12に当接するようにして、主管部11の軸方向と垂直に配置され、溶接によって主管部11に固着されている。
【0020】
主管部11と閉塞板20とは、重ね合わせ溶接によって接合されている。重ね合わせ溶接とは、2つの部材を重ね合わせ、一方の部材側からレーザビーム、電子ビームなどの高エネルギービームを照射し、ビームによって溶融された溶融部が一方の部材を貫いて他方の部材に到達するようにし、両者を共に溶融・凝固させることによって接合する溶接技術である。本実施形態では、主管部11と重ね合わされた閉塞板20の当接面20Aとは逆側の面(照射面20B)にレーザビームを照射し、レーザビームのエネルギーによって溶融される溶融部が閉塞板20を貫いて主管部11に到達するようにし、閉塞板20と主管部11とを共に溶融・凝固させることによって、主管部11と閉塞板20とを接合している。
【0021】
主管部11と閉塞板20とは、重ね合わせ溶接によって両者にまたがって形成された溶接部Mを有する。溶接部Mは、溶接工程において閉塞板20および主管部11の一部が共に溶融し、その後凝固することによって接合された部位である。この溶接部Mによって、主管部11と閉塞板20との隙間がシールされている。
【0022】
溶接部Mは、照射面20B側から見て閉塞板20と主管部11とが重なり合う領域(開口11Aの孔縁よりも外側であって、主管部11および閉塞板20の外周面よりも内側の領域)に、開口11Aを全周にわたって囲んで配置されている。溶接部Mは、深さ方向(主管部11の軸方向と並行方向)については、照射面20Bから主管部11の端面12よりもやや深い位置にわたって配置されている。
【0023】
本実施形態では、溶接部Mが二重に配置された例を示している。つまり、溶接部Mは、開口11Aを全周にわたって囲んで配置される円環形の第1溶接部M
1と、第1溶接部M
1の外径よりも大きな内径を有し、第1溶接部M
1を全周にわたって囲んで配置される円環形の第2溶接部M
2とを有している。
【0024】
次に、主管部11と閉塞板20とを重ね合わせ溶接により接合する工程について説明する。本実施形態では、レーザを用いて重ね合わせ溶接を行う工程を例にとり説明する。
【0025】
まず、主管部11の端面12に、閉塞板20を、当接面20Aを端面12に対向させて重ねる。
【0026】
次に、照射面20Bに向かってレーザビームを照射する。このとき、レーザビームの走査軌跡が、照射面20B側から見て主管部11と閉塞板20とが重なっている領域(開口11Aの孔縁よりも外側であって、主管部11および閉塞板20の周縁よりも内側の領域)に、二重の円を描くように照射を行う。レーザビームの照射強度は、レーザビームによって溶融される溶融部が閉塞板20を貫いて主管部11に到達するのに十分な強度であればよい。照射されたレーザビームのエネルギーによって、閉塞板20および主管部11の一部が共に溶融し、凝固することによって、溶接部Mが形成される。
【0027】
以上のように本実施形態によれば、閉塞板20が主管部11の端面12に重ねて配置され、閉塞板20の照射面20Bに高エネルギービームを照射して重ね合わせ溶接を行うことにより主管部11の一部と閉塞板20の一部とが接合された溶接部Mが、主管部11の開口11Aを囲んで配置されている。このような構成によれば、キャップをハウジングの一端にねじ付ける従来の構成と比較して、ハウジング10の一端に雌ねじ部を設ける必要がない分だけ、ハウジング10を短くでき、かつ、ハウジング10の加工コストを低減できる。
【0028】
また、溶接部Mが第1の溶接部M
1と第2の溶接部M
2とを有している。このような構成によれば、第1の溶接部M
1および第2の溶接部M
2のうち一方に溶接不良が生じても、他方によってシール性を確保することができるから、ハウジング10と閉塞板20との間のシールをより確実なものとすることができる。
【0029】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、閉塞板20は、主管部11の外径とほぼ等しい外径を有していたが、閉塞部材の形状や大きさは上記実施形態の限りではなく、溶接部を配置するスペースを確保できる形状および大きさを有していればよい。
【0030】
(2)上記実施形態では、溶接部Mは第1の溶接部M
1と第2の溶接部M
2とを有していたが、溶接部は第1の溶接部のみで構成されていても構わない。あるいは、第1の溶接部の内側または第2の溶接部の外側に、第3、第4またはそれ以上の溶接部が配置されていても構わない。
【0031】
(3)上記実施形態では、レーザビームを照射して重ね合わせ溶接を行う工程を例にとり説明したが、例えば電子ビームを照射して重ね合わせ溶接を行っても構わない。
【符号の説明】
【0032】
1…デリバリパイプ
11…主管部
11A…開口
12…端面
20…閉塞板(閉塞部材)
20A…当接面
20B…照射面
M…溶接部
M
1…第1の溶接部
M
2…第2の溶接部