特許第6234844号(P6234844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234844
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】防護マスク用のシール具
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/08 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   A62B18/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-43522(P2014-43522)
(22)【出願日】2014年3月6日
(65)【公開番号】特開2015-167661(P2015-167661A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162940
【氏名又は名称】興研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 吉治
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】竹内 広宣
(72)【発明者】
【氏名】川添 正▲隆▼
(72)【発明者】
【氏名】押久保 悠
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4465554(JP,B1)
【文献】 特開2013−85845(JP,A)
【文献】 特表2004−523277(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0100560(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第2547037(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00−33/00
A41D 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向を有し、後方に向かって延びる面体の後方周縁部を顔面に当接させて着用した防護マスクと、顔面を露出させるためのフードの前方開口周縁部を前記後方周縁部に重ねて着用した防護服とに対して使用されて、前記後方周縁部と前記前方開口周縁部とを密着させることのできる防護マスク用のシール具であって、
前記シール具は、長さ方向と幅方向と厚さ方向とを有し、前記長さ方向において湾曲と屈曲とのいずれかを繰り返す帯状のものであって、前記長さ方向と前記幅方向とにおいて弾性的に伸長収縮可能かつ前記長さ方向の両端部が互いに離脱可能に係合して環状になるものであり、
前記シール具はまた、前記防護マスクの所要部位に取り付け取り外し可能に形成されていて、前記所要部位に取り付けた状態で前記環状になると、前記幅方向において、前記防護マスクの前記後方周縁部に重なる前記防護服の前記前方開口周縁部と前記前方開口周縁部の前方に位置する前記防護マスクの一部分とに対して前記前方開口周縁部の径方向の外側から弾性的な収縮力の作用下に圧接できることを特徴とする前記シール具。
【請求項2】
前記両端部のうちの一方にはボタンが形成され、前記両端部のうちのもう一方には前記ボタンに対するボタン穴が形成されていて、前記ボタンと前記ボタン穴とによって前記両端部を係合させると前記環状になる請求項1記載のシール具。
【請求項3】
前記防護マスクの前記一部分が前記防護マスクにおける眼ガラスの周縁部に取り付けられているサッシュ部材である請求項1または2記載のシール具。
【請求項4】
前記防護マスクの前記一部分が前記防護服の前記前方開口周縁部よりも前方に位置する前記防護マスクの前記後方周縁部である請求項1または2記載のシール具。
【請求項5】
前記シール具は、前記サッシュ部材が嵌合可能な溝部を有する請求項3記載のシール具。
【請求項6】
前記シール具には、前記防護マスクの前記所要部位に対しての取り付け部が形成され、前記防護マスクのヘッドバンドに対して使用されている連結環に対して前記取り付け部が挿入可能である請求項1−5のいずれかに記載のシール具。
【請求項7】
前記シール具は、それが圧接している前記防護服の前記前方開口周縁部を透視することができるように、少なくとも一部分が透明である請求項1−6のいずれかに記載のシール具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護マスクとともに着用した防護服の気密性を高めるのに好適なシール具に関する。
【背景技術】
【0002】
外気が有毒ガスや粉塵等の有害物質を含む環境下において皮膚や頭髪、着衣等を露出させることがないように着用する防護マスクと防護服とは、従来周知である。また、防護マスクと防護服とを併せて着用するのに好適な構造を有する防護マスクや防護服も従来公知である。
【0003】
例えば、特許第4465554号公報(特許文献1)に記載のマスクアセンブリは、フルフェイス型のマスクとフードとを有する。マスクは、着用者の顔面に密着する外周縁部の外面にリブを有し、フードは顔面を露出させる開口縁に環状部材を有する。環状部材の内周面には、マスクのリブに離脱可能に嵌合する溝部が形成されている。
【0004】
特開2008−194093号公報(特許文献2)に記載の防護衣は、防護マスクと共に着用するものである。防護マスクは、透視レンズの周縁に沿って延びる枠部材を有し、枠部材と面体との間には溝が形成されている。防護衣は、その第1被覆部に透視レンズを露出させる開口部が形成され、開口部の周縁部分が弾性的に伸長して、防護マスクの溝に挿入される第1環状部分と、第1環状部分と協働して枠部材を挟むことが可能な第2環状部分とを有する。これら枠部材と第1,第2環状部分との協働作用によって、防護衣が防護マスクに取り付けられる。
【0005】
特許第5011120号公報(特許文献3)に記載の防護用シール機構は、ガスマスクとフードとに対して適用される。このシール機構では、ガスマスクにおけるバイザーに使用されたフレーム用リングを介して、フードがガスマスクに取り付けられている。
【0006】
特表2006−526436号公報(特許文献4)に記載のフードは、顔開口部に弾性縁部を有し、その弾性縁部は、フードの内側に着用されている防毒マスクに対しての周縁シールエレメントを有する。シールエレメントは弾性的に変形することのできる材料からなり、防毒マスクに対して線状で当接する。
【0007】
また、着用した防毒マスクにおける後方周縁部と、防護服のフードにおいて顔面を露出させるために用意された開口の周縁部とを重ね合わせ、それら後方周縁部と開口周縁部とにまたがるように養生テープと呼ばれる粘着テープを貼って開口周縁部を気密状態で閉じることも慣用技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4465554号公報
【特許文献2】特開2008−194093号公報
【特許文献3】特許第5011120号公報
【特許文献4】特表2006−526436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来技術のうちで、例えば特許文献1−3に記載の発明では、防護マスクと、その防護マスクに組み付け可能に形成された防護服とが必要となる。すなわち、これらの発明で使用可能な防護マスクと防護服とは、それら両者のために設計された固有の取り付け構造を有するものに限られる。したがって、これらの発明は、どのような防護服においても実施することができるというものではない。また、特許文献4に記載の発明のフード(防護服)は、防毒マスクの顔開口部の周縁に対して、防毒マスクの前方外側から圧接させる環状のシールエレメントを有する。フードはまた、それを着用するときに使用する密閉止め具等の止め具やフードの位置調整のために使用するタブを有する。その止め具は、好ましくは顔面開口部の側部に位置するもので、この止め具だけでシールエレメントの全周を防護マスクの顔面開口部に密着させることは難しい。
【0010】
防護服に対して養生テープを使用する従来技術では、防護マスクや防護服に対して、養生テープの粘着性が作用しないという場合がある。例えば、養生テープを貼るべき部位が水で濡れていたり、シリコンゴムで形成されていたりする場合である。
【0011】
そこで、本発明が課題とするところは、防護マスクとともに着用した防護服における前方開口周縁部の気密性を高めることが容易なシール具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明が対象とするのは、前後方向を有し、後方に向かって延びる面体の後方周縁部を顔面に当接させて着用した防護マスクと、顔面を露出させるためのフードの前方開口周縁部を前記後方周縁部に重ねて着用した防護服とに対して使用されて、前記後方周縁部と前記前方開口周縁部とを密着させることのできる防護マスク用のシール具である。
【0013】
本発明が特徴とするところは、前記シール具が、長さ方向と幅方向と厚さ方向とを有し、前記長さ方向において湾曲と屈曲とのいずれかを繰り返す帯状のものであって、前記長さ方向と前記幅方向とにおいて弾性的に伸長収縮可能かつ前記長さ方向の両端部が互いに離脱可能に係合して環状になるものであり、前記シール具がまた、前記防護マスクの所要部位に取り付け取り外し可能に形成されていて、前記所要部位に取り付けた状態で前記環状になると、前記幅方向において、前記防護マスクの前記後方周縁部に重なる前記防護服の前記前方開口周縁部と前記前方開口周縁部の前方に位置する前記防護マスクの一部分とに対して前記前方開口周縁部の径方向の外側から弾性的な収縮力の作用下に圧接できること、にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るシール具は、防護マスクに対して取り外し可能に取り付けられていて、長さ方向と幅方向とにおいて弾性的に伸長収縮することが可能なものであり、環状の形で使用される。防護マスクと防護服とを着用するときに、顔面に当接している防護マスクの後方周縁部に対して防護服において顔面を露出させるために用意されている前方開口の周縁部を重ねると、前方開口における径方向の外側からシール具をその重ねた部位に対して、圧接させることができて、防護マスクの後方周縁部と防護服の前方開口周縁部とを密着させることができる。それゆえ、着用した防護服における前方開口周縁部の気密性を高め、外気が防護服の内側に侵入することを防ぐことができる。長さ方向において湾曲と屈曲とのいずれかを繰り返すシール具は、それを防護マスクに取り付けて使用したときに、眼ガラスを広く覆って視野を狭くするということがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面は、本発明の実施形態を例示するとともに、本発明に不可欠な構成および選択的に実施することのできる形態を示している。
図1】防護マスクと防護服との着用状態を示す図。
図2図1の部分拡大図。
図3】シール具の使用方法を示す図2の部分破断図。
図4】シール具の部分破断斜視図。(a)はシール具の外面側を示し、(b)はシール具の内面側と、その内面側の拡大した一部分とを示す。
図5図2のV−V線切断面を示す図。
図6】実施態様の一例であるシール具の部分破断斜視図。
図7図6のシール具の使用状態を示す図5と同様な図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して、本発明に係る防護マスク用のシール具の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0017】
図1,2は、本発明に係る防護マスク用のシール具3の使用対象である防護マスク1と防護服2とが着用状態にあるときの正面図と部分拡大図とであって、防護マスク1の前後方向と、横方向と、上下方向とが双頭矢印A,B,Cで示されている。
【0018】
図示例の防護マスク1は、フルフェイス型のものであるが、図2では付属部品である一対のフィルタユニット6aのうちの一方が取り外された状態で示されている。防護マスク1は、合成ゴムや天然ゴム等の弾性材料で形成されていて、着用者Wの顔面5に前方からフィットする面体7と、硬質の透明プラスチックで形成されていて顔面5を前方から保護する眼ガラス8とが環状のサッシュ部材9を介して一体化されている。眼ガラス8は、顔面5から前方へ突出するようにドーム型に作られていて、その眼ガラス8の周縁に嵌合しているサッシュ部材9は、弧を画く頂辺10aと、頂辺10aの両端部それぞれに位置する角部10bとを有し、ほぼ五角形またはほぼ六角形ということのできる多角形のものに作られている。また、着用者の頭部は防護服2におけるフード21で覆われている(図3参照)。これら防護マスク1とフード21とに対して、シール具3が環状に延びた状態で密着している。
【0019】
防護マスク1において、眼ガラス8には、フィルタユニット6aが取り付けられている他に、正面中央に通気性のカバー部材6bが取り付けられている。眼ガラス8の内側には、面体7の一部分であって、着用者の顔面5に前方からフィット可能な環状の前方周縁部11とノーズカップ12とが見えている。ノーズカップ12には、吸気用逆止弁13が取り付けられている。なお、図示されてはいないが、カバー部材6bの内側には排気用逆止弁が設けられている。また、カバー部材6bの内側には、必要に応じて伝声器を取り付けることができる。フィルタユニット6aは円盤状のもので、径方向の中心から偏倚した位置には、眼ガラス8に取り付けられた吸気パイプsに嵌合可能な通気性の連結パイプtがある。フィルタユニット6aは、連結パイプtを中心に矢印Dで示す方向へ旋回可能なものであるが、防護マスク1が着用されているときには、視界の妨げとなることがないように、図1の如く防護マスク1の後方に向かって旋回させてある。
【0020】
防護服2は、それを防護マスク1と併用することによって、着用者の皮膚や頭髪、着衣が外気に曝されたり、外気に含まれる粉塵等の有害物質に接触したりすることを防止することができる。図1において、防護服2は、上半身と下半身とのほぼ全体を被覆することのできる身体被覆部22を有し、その身体被覆部22には、頭部を被覆するためのフード21が含まれている。防護服2はまた、ジップファスナ等の開閉手段を使用して着用することができるものであるが、その手段の図示は省略されている。図示例の着用者は、防護服2の他に、手袋23や長靴24を着用している。
【0021】
図3は、シール具3の使用状態を示す図2と同様な図であるが、図中の防護服2は一部分が破断された状態で示されている。防護マスク1では、面体7と眼ガラス8とを一体的に保持するためのサッシュ部材9がABS樹脂やナイロン樹脂等の硬質プラスチックで形成されていて、弧を画く頂辺10aと、角部10bとを有する。面体7は、眼ガラス8の外側から透視されていて、防護マスク1の後方から前方に向かって内径が広がる前方周縁部11と、前方から後方に向かって内径が広がって、顔面5の周囲に対して前方から気密状態で当接可能な後方周縁部14とを有する。後方周縁部14には、防護マスク1におけるヘッドバンド16に取り付けられたバックル17を離脱可能に係合させるための係合部18が形成されている。防護マスク1の横方向Bの中央部では、上下方向Cへの往復旋回運動ができるようにサッシュ部材9に取り付けられている連結環19に対して、ヘッドバンド16のうちのセンターヘッドバンド16cが連結されている。連結環19は、金属製線材がほぼ台形を画くように曲げられたものであって、横方向Bの寸法が小さい前方部分(図示せず)と横方向Bの寸法が大きい後方部分19rとを有する。
【0022】
防護服2のフード21において着用者の顔面5を露出させるための前方開口部25を画成している前方開口周縁部26では、前方開口周縁部26の一部分を折り返すことによって形成されたスリーブ27の内側にひも状の弾性部材28が伸長状態で納められていて、前方開口部25を一周している。したがって、防護マスク1を着用した後に、フード21で頭部を覆い、前方開口周縁部26を図示例の如く防護マスク1の後方周縁部14に重ねると、前方開口周縁部26は、後方周縁部14に対してその外側から弾性的に接触することが可能である。ただし、弾性部材28の収縮によって生じる前方開口周縁部26のギャザー29や面体7におけるヘッドバンド16等の存在によって、前方開口周縁部26と後方周縁部14とを気密状態となるように重ね合せることは難しい。
【0023】
シール具3は、そのような場合に使用するのが好ましいものであって、長さ方向にも幅方向にも弾性変形することができるように合成ゴムや天然ゴム等の弾性材料で形成されていて、その長さ方向をサッシュ部材9の周方向へ延ばすことができる。長さ方向の両端部それぞれには、両端部を離脱可能に係合させるためのボタン31とボタン穴32とのそれぞれが形成されている。すなわち、ボタン31のボタン穴32に対する挿入と抜脱とによって、シール具3を環状にしたりその環状を解いて帯状にしたりすることができる。
【0024】
図4は、防護マスク1における連結環19から外したシール具3を平面上に置いたときの斜視図であって、シール具3はそれに対する伸長力等の外力を加えられることのない自然状態にある。図4の(a)は、シール具3の使用時における外面側を示す図であり、(b)はその反対側である内面側を示す図と、その内面側の一部分を拡大して示す図である。図4の(a)において、ボタン31をボタン穴32に挿入してシール具3を環状にしたときに互いに当接するボタン31の周面の部位とボタン穴32の周面の部位とを結ぶ直線の長さはシール具3の長さLであり、その長さLを二等分する中心線はQ−Qである。また、その直線の延びる方向はシール具3の長さ方向であり、図ではその長さ方向が防護マスク1の横方向Bに一致している。また、シール具3の幅方向は、図示した前後方向Aに一致している。前後方向Aと横方向Bとに直交する方向は、シール具3の厚さ方向である。
【0025】
シール具3の平面形状は、帯状のものであるが、図では防護マスク1の前方に向かって凸となる部位3aと後方に向かって凸となる部位3bとが交互に並ぶように湾曲を繰り返していて、中心線Q−Qに関して対称となる曲線を画いている。このようなシール具3の形状は、シール具3を面体7の後方周縁部14やサッシュ部材9に沿わせることが容易となるように、これら後方周縁部14やサッシュ部材9の形状に応じて適宜決めることができる。例えば、シール具3は、湾曲を繰り返すのものではなくて、仮想線4で示されるような屈曲を繰り返すものである場合がある。
【0026】
図示例において、シール具3の長さLは、環状にしたときのシール具3が、着用している防護マスク1の後方周縁部14に重なるフード21の前方開口周縁部26と、防護マスク1のサッシュ部材9とに対して弾性的に伸長した状態で圧接できる寸法に調整されている。例えば、図3のシール具3では、その長さLが、面体7において前方から後方に向かって内径と外径とが広がる後方周縁部14の外側の周囲長のうちの最小のものよりも短くしてある。
【0027】
また、図4の(b)において、防護マスク1の前後方向Aは、シール具3の幅方向であって、その幅方向には、横方向Bへ延びる前方厚肉部33と、前方薄肉部34と、後方厚肉部35と、後方薄肉部36とが並んでいて、前方厚肉部33と後方厚肉部35との間には溝部38が形成されている。溝部38は、シール具3の外形と同様に、中心線Q−Qに関して対称な曲線を画き、凸となる部位38aと凹となる部位38bとが交互に並んでいる。また、中心線Q−Q上には防護マスク1に対しての取り付け部となる突起部37が形成されている。突起部37は、シール具3において一体的に形成されていてもよいし、発泡ウレタン樹脂等の柔軟弾性材料またはABS樹脂等の硬質材料で形成されたものがシール具3に固定されているものであってもよい。好ましい突起部37は、連結環19の内側形状に相似であり、その内側に対して突起部37を弾性変形させたり、連結環19を弾性変形させたりしながら挿抜することができる。挿入したときには、シール具3が図4の(a)における前後方向を防護マスク1の前後方向Aに一致させて防護マスク1に取り付けられた状態になる。このように作用する突起部37は、シール具3の防護マスク1に対する前後方向Aと横方向Bとの位置決め手段となると同時に、シール具3が防護マスク1において前後方向Aや横方向Bに不必要に動くことを抑える固定手段ともなる。図4に例示のシール具3の断面形状は、図示例の防護マスク1に好適な断面形状の一例である。ただし、本発明に係るシール具には、図示例に限定されることなく適宜の断面形状を採用することができる。
【0028】
図4のシール具3を防護マスク1と防護服2とに対して使用するには、次の手順による。まず、図1において、着用者が防護マスク1と防護服2とを例示の如く着用し、フィルタユニット6aを図2の矢印Dで示す方向へ旋回させて、図3の状態にする。次いで、シール具3の突起部37を連結環19に挿入する。さらに、シール具3の両端部それぞれを持ち、長さ方向に引張りながらシール具3の溝部38をサッシュ部材9の頂面部9aに沿わせ、シール具3をカバー部材6bの下方にまで弾性的に伸長させ、その下方においてボタン31をボタン穴32に挿入する(図1参照)。シール具3は、ボタン31をボタン穴32に挿入することができるところまで伸長すると、シール具3の凹となる部位3bと溝部38の凹となる部位38bとがサッシュ部材9の角部10bに一致して、伸長状態にあるシール具3が角部10bの内側へ侵入することを抑えられるので、シール具3が角部10bの内側で眼ガラス8を広く覆うことによって防護マスク1の視野を狭くする、という問題の発生を防ぐことができる。最後に、フィルタユニット6aを矢印D図3参照)で示す方向へ旋回させて、図1の状態にする。
【0029】
図5は、図2のV−V線切断面を模式的に示す図である。図2において、ボタン31がボタン穴32に挿入されたシール具3は、溝部38とサッシュ部材9とが嵌合した状態にあって、前方厚肉部33がサッシュ部材9の前面部9bに対して眼ガラス8の前方から当接する一方、前方薄肉部34はサッシュ部材9の頂面部9aに密着する。また、後方厚肉部35は、サッシュ部材9の後面部9cと、面体7における後方周縁部14との間に進入するように変形して、後方薄肉部36がフード21のうちで後方周縁部14に重なっている部位である前方開口周縁部26に対して前方開口部25の径方向の外側から圧接する。その圧接によって、シール具3と前方開口周縁部26との密着および/または防護マスク1における後方周縁部14とそれに重なる前方開口周縁部26との密着が可能になる。さらに好ましい場合においては、密着するものどうしが気密状態で密着する。図示例の場合ではまた、防護マスク1の前後方向Aにおいて、シール具3がフード21の前方開口周縁部26に密着しているとともに、前方開口周縁部26の前方に位置する防護マスク1のサッシュ部材9にも密着しているから、フード21の前方開口部25からの外気の侵入を確実に防ぐことができる。
【0030】
このように作用するシール具3は、それを長さ方向と幅方向とにおいて弾性変形させることによって防護マスク1やフード21に対して圧接させ、その圧接によってフード21についての気密性を高めようとするものであるから、面体7やサッシュ部材9、フード21等の部材のいずれかが粘着テープを止着させることが実質的な意味において不可能であって、粘着テープではフード21を気密状態にすることが困難である場合、例えばその部材がシリコンゴムで形成されている場合や、部材の表面が雨水等で濡れていたりする場合であっても、フード21の気密性を高めることが可能になる。シール具3はまた、それが圧接している面体7やフード21の少なくとも一部分を透視することのできる透明な材料、例えば透明なシリコンで形成されていると、シール具3が圧接している部位における面体7やフード21の状態の良否を、例えば作業者どうしが目視で判断できるようになる。その状態が良好でないという場合には、ボタン31をボタン穴32から外してシール具3を弛緩状態に戻してフード21の状態を修正することができる。このような場合において、シール具3には、それを繰り返し使用することができるという利点があると同時に、繰り返し使用してもフード21に破損等の損傷を与えることがないという利点がある。
【0031】
また、シール具3を使用して防護マスク1と防護服2とを着用した着用者は、頭部を含む上半身と下半身とを外気や外気に含まれる有害物質に対して曝すことなく作業することができる。作業終了後のシール具3は、防護マスク1から外して洗滌すれば再利用することができ、廃棄物として処分する必要がない。シール具3はまた、突起部37を有し、その突起部37の形状はシール具3の前後方向を判別することができるように形成されているから、防護マスク1に対する取り付け位置や方向を間違えることがない。シール具3はさらにまた、一方の端部に、その端部を摘み易くすることのできるボタン31を有し、もう一方の端部には、指先の滑り止めとなる複数個の小突起39(図3,4参照)を有するから、シール具3は扱い易いものになり、着用者がシール具3の使用方法を会得すれば自分一人でシール具3を着用することも可能になる。
【0032】
図6は、図4のシール具3とは異なる態様のシール具203の斜視図である。シール具203は、天然ゴムや合成ゴム等の弾性材料を使用して帯状に形成されていて、両端部のそれぞれにはボタン231とボタン穴232とが形成されている。また、長さ方向の中央部には、防護マスク201(図7参照)に対する取り付け部237とアーム部238とが形成されている。シール具203は、図4に例示のシール具3と異なり、幅と厚さとが一様なもので、長さ方向において湾曲することなく直状に延びている。
【0033】
図7は、図6のシール具203が防護服202の前方開口周縁部226に圧接している部位を示す図5と同様な図である。シール具203は、サッシュ部材209よりも後方に位置していて、図示してはいないが、ボタン231がボタン穴232に挿入されている。防護服202における前方開口周縁部226は、シール具203の圧接している部位が防護マスク201における後方周縁部214に重なっている。シール具203はまた、防護服202の前方開口周縁部226よりも前方に位置する部分の後方周縁部214において防護マスク201に対して圧接しているが、サッシュ部材209には圧接することのない態様にある。ただし、防護マスク201のサッシュ部材209には、シール具203の突起部237を挿入することができる嵌合孔(図示せず)が形成されている。
【0034】
図7の如く使用されるシール具203は、図2,7に例示の如きサッシュ部材9,209を持たない防護マスクに対して使用することもできる。
【0035】
これまでの図示例における防護マスク1は、防じんマスクとして説明されているが、本発明はその他の種類のマスク、例えば防毒マスク等に対しても実施可能である。また、本発明に係るシール具の使用対象となる防護マスクの眼ガラスとサッシュ部材とは、図示例の形状に限定されるわけではなく、円形や楕円形、長円形,矩形等の適宜の形状をとることができる。また、防護マスクにおけるシール具の取り付け部位も、図示例の連結環19に限定されるわけではない。その取り付け部位は、任意に選ぶことができる。シール具の両端部を連結するための手段は、ボタンとボタン穴とに限定されるわけではない。これらに代わる適宜の手段の採用が可能である。本発明に係るシール具はまた、図4に例示の如き湾曲を繰り返すものではあっても、溝部を持たない態様で実施することができる。シール具はさらにまた、図6に例示の如く直状に延びるものであって、図4に例示の如く溝部を有する態様で実施することもできる。
【0036】
上述の如き本発明は、少なくとも下記のように整理することができる。
前後方向を有し、後方に向かって延びる面体の後方周縁部を顔面に当接させて着用した防護マスクと、顔面を露出させるためのフードの前方開口周縁部を前記後方周縁部に重ねて着用した防護服とに対して使用されて、前記後方周縁部と前記前方開口周縁部とを密着させることのできる防護マスク用のシール具であって、
前記シール具は、長さ方向と幅方向と厚さ方向とを有し、前記長さ方向において湾曲と屈曲とのいずれかを繰り返す帯状のものであって、前記長さ方向と前記幅方向とにおいて弾性的に伸長収縮可能かつ前記長さ方向の両端部が互いに離脱可能に係合して環状になるものであり、
前記シール具はまた、前記防護マスクの所要部位に取り付け取り外し可能に形成されていて、前記所要部位に取り付けた状態で前記環状になると、前記幅方向において、前記防護マスクの前記後方周縁部に重なる前記防護服の前記前方開口周縁部と前記前方開口周縁部の前方に位置する前記防護マスクの一部分とに対して前記前方開口周縁部の径方向の外側から弾性的な収縮力の作用下に圧接できることを特徴とする前記シール具。
【0037】
上記の如く整理された本発明に係る防護マスク用のシール具は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。
(1)前記両端部のうちの一方にはボタンが形成され、前記両端部のうちのもう一方には前記ボタンに対するボタン穴が形成されていて、前記ボタンと前記ボタン穴とによって前記両端部を係合させると前記環状になる。
(2)前記防護マスクの前記一部分が前記防護マスクにおける眼ガラスの周縁部に取り付けられているサッシュ部材である。
(3)前記防護マスクの前記一部分が前記防護服の前記前方開口周縁部よりも前方に位置する前記防護マスクの前記後方周縁部である。
(4)前記シール具は、前記サッシュ部材が嵌合可能な溝部を有する。
(5)前記シール具には、前記防護マスクの前記所要部位に対しての取り付け部が形成され、前記防護マスクのヘッドバンドに対して使用されている連結環に対して前記取り付け部が挿入可能である。
(6)前記シール具は、それが圧接している前記防護服の前記前方開口周縁部を透視することができるように、少なくとも一部分が透明である。
【符号の説明】
【0038】
1 防護マスク
2 防護服
3 シール具
5 顔面
7 面体
8 眼ガラス
14 後方周縁部
25 前方開口部
26 前方開口周縁部
31 ボタン
32 ボタン穴
37 取り付け部(突起部)
201 防護マスク
202 防護服
203 シール具
A 前後方向
B 横方向
C 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7