(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。また、図面においては、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0031】
<I.第1の実施の形態>
<1.プラズマ処理装置100>
<1−1.構成>
プラズマ処理装置100の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、プラズマ処理装置100の概略構成を模式的に示す図である。
【0032】
プラズマ処理装置100は、受け渡しチャンバー110を介して接続された2個の搬送チャンバー120a,120bの各々を取り囲んで、一群のチャンバー130〜170が、クラスタ状に接続された構成を備える。
【0033】
具体的には、一方の搬送チャンバー(第1搬送チャンバー)120aの周囲には、2個のロードロックチャンバー130,130と、1個の前処理チャンバー140と、1個の成膜チャンバー150と、が配置される。また、他方の搬送チャンバー(第2搬送チャンバー)120bの周囲には、1個の成膜チャンバー150と、1個の後処理チャンバー160と、2個のアンロードロックチャンバー170,170と、が配置される。なお、各チャンバー110〜170の個数およびレイアウトは、図に例示されるものに限らない。例えば、各チャンバー110〜170の個数は、例えば、各チャンバー110〜170での処理に要する処理時間等に基づいて規定されてもよい。
【0034】
各チャンバー110〜170の接続部分には、ゲート190が設けられている。ゲート190は、例えばゲートバルブによって開閉されて、これと隣り合うチャンバーに対して接続された状態(開状態)と、当該隣り合うチャンバーを遮断密閉する状態(閉状態)との間で切替可能となっている。また、各チャンバー110〜170には、高真空排気系(図示省略)が設けられており、各チャンバー110〜170の内部空間を真空状態に減圧できるようになっている。また、プラズマ処理装置100は、各チャンバー110〜170内に配置された装置等を統括制御する制御部(図示省略)を備える。
【0035】
第1搬送チャンバー120aおよび第2搬送チャンバー120bの各々の内部には、その周囲に接続された各チャンバー130〜170との間で、処理対象物である基材9の授受を行う搬送装置(図示省略)が配置される。
【0036】
ロードロックチャンバー130、および、アンロードロックチャンバー170は、プラズマ処理装置100内を真空に保持する(すなわち、大気に開放しない)ために設けられる。ロードロックチャンバー130は、第1搬送チャンバー120aへ未処理の基材9を搬入するためのチャンバーであり、アンロードロックチャンバー170は、第2搬送チャンバー120bから処理済みの基材9を搬出するためのチャンバーである。
【0037】
前処理チャンバー140の内部空間は、前処理を行うための処理空間を形成し、当該内部空間には、前処理を行うための装置が配置される。前処理とは、基材9に対する成膜処理に先立って行われる処理であり、具体的には、例えば、酸素プラズマ等を用いたデソーバー(クリーニング)処理である。
【0038】
成膜チャンバー150の内部空間は、成膜処理を行うための処理空間を形成し、当該内部空間には、成膜処理を行うための装置である成膜装置10が配置される。成膜処理とは、具体的には、プラズマCVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)によって、膜付けの対象物である基材9に、ダイヤモンドライクカーボン膜(以下、「DLC膜」ともいう)を形成する処理である。成膜装置10については、後に具体的に説明する。
【0039】
後処理チャンバー160の内部空間は、後処理を行うための処理空間を形成し、当該内部空間には、後処理を行うための装置が配置される。後処理とは、成膜処理を施された後の基材9に対する処理であり、具体的には、例えば、アルゴンプラズマ、あるいは、水素プラズマ等を用いた表面改質処理である。
【0040】
<1−2.処理の流れ>
プラズマ処理装置100において実行される処理の流れについて、引き続き
図1を参照しながら説明する。以下に説明する処理は、プラズマ処理装置100の制御部(図示省略)の制御下で実行される。
【0041】
ロードロックチャンバー130を介してプラズマ処理装置100に搬入された基材9は、前処理チャンバー140、成膜チャンバー150、および、後処理チャンバー160に、この順番で搬送されながら、各チャンバー140,150,160内で定められた処理を次々と施される。そして、処理済みの基材9は、アンロードロックチャンバー170を介してプラズマ処理装置100から搬出される。
【0042】
すなわち、ロードロックチャンバー130を介してプラズマ処理装置100に搬入された基材9は、まず、第1搬送チャンバー120a内の搬送装置(第1搬送装置)によって、前処理チャンバー140に搬入され、ここで前処理を施される。
【0043】
前処理チャンバー140で前処理を施された基材9は、第1搬送装置によって前処理チャンバー140から搬出されて、続いて、成膜チャンバー150に搬入され、ここで成膜処理を施される。ただし、第1搬送チャンバー120aと接続されている成膜チャンバー(第1成膜チャンバー)150が空いている場合は、第1搬送装置は、前処理後の基材9を第1成膜チャンバー150にそのまま搬入する。この場合、基材9は、第1成膜チャンバー150で成膜処理を施されることになる。一方、第1成膜チャンバー150で別の基材9が処理されている場合は、第1搬送装置は、前処理後の基材9を、受け渡しチャンバー110を介して、第2搬送チャンバー120b内の搬送装置(第2搬送装置)に受け渡す。第2搬送装置は、受け取った基材9を、第2搬送チャンバー120bと接続されている成膜チャンバー(第2成膜チャンバー)150に搬入する。この場合、基材9は、第2成膜チャンバー150で成膜処理を施されることになる。
【0044】
第1成膜チャンバー150で成膜処理を施された基材9は、第1搬送装置により第1成膜チャンバー150から搬出され、受け渡しチャンバー110を介して、第2搬送装置に受け渡される。第2搬送装置は、受け取った基材9を、後処理チャンバー160に搬入する。また、第2成膜チャンバー150で成膜処理を施された基材9は、第2搬送装置により第2成膜チャンバー150から搬出され、そのまま後処理チャンバー160に搬入される。後処理チャンバー160に搬入された基材9は、ここで後処理を施される。
【0045】
後処理チャンバー160で後処理を施された基材9は、第2搬送装置によって後処理チャンバー160から搬出され、アンロードロックチャンバー170を介してプラズマ処理装置100から搬出される。
【0046】
<2.成膜装置10>
<2−1.構成>
次に、成膜装置10について、
図2〜
図6を参照しながら説明する。
図2は、成膜装置10の構成を模式的に示す側断面図である。
図3は、
図2を矢印Q方向から見た平断面図である。
図4、
図5は、誘導結合型アンテナ21の配列例を示す図である。
図6は、誘導結合型アンテナ21への電力の供給タイミングと、基材9への電圧の印加タイミングとを説明するための図である。なお、以下に参照する図面には、方向を説明するためにXYZ直交座標軸が、適宜付されている。この座標軸におけるZ軸の方向は、鉛直線の方向を示し、XY平面は水平面である。また、X軸およびY軸の各々は、チャンバー1の側壁と平行な軸である。また、Y軸は、基材9の搬送方向と平行な軸である。
【0047】
成膜装置10は、プラズマCVDによって、膜付けの対象物である基材9にDLC膜を形成する装置である。膜付けの対象物である基材9は、具体的には、例えば、ガラス板である。
【0048】
成膜装置10は、内部に処理空間Vを形成するチャンバー1と、処理空間Vにプラズマを発生させるプラズマ発生部2と、処理空間Vに材料ガスを供給するガス供給部3と、基材9を、プラズマ発生部2の誘導結合型アンテナ21に対して相対移動させる相対移動部4と、基材9に負の電圧を印加する電圧印加部5と、チャンバー1内に設けられたシールド部材6と、を備える。また、成膜装置10は、これが備える各構成要素等を制御する制御部7を備える。また、成膜装置10は、他にも、処理空間V内の圧力を調整するための機構(具体的には、例えば、高真空排気系、真空ゲージ、等)(図示省略)等を備える。
【0049】
<チャンバー1>
チャンバー1は、例えば、直方体形状の外形を呈する中空部材であり、内部に処理空間Vを形成する。チャンバー1の天板11は、その下面が水平姿勢となるように配置されており、当該下面から処理空間Vに向けて、後述する誘導結合型アンテナ21が、複数個、間隔をあけて突設されている。また、チャンバー1の底板12の付近には、基材9の搬送経路が規定されている。また、チャンバー1の側壁の一つには、例えばゲートバルブによって開閉されるゲート190(
図1参照)が設けられており、チャンバー1は、このゲート190を介して、搬送チャンバー(第1搬送チャンバー120a、あるいは、第2搬送チャンバー120b)と接続されている。
【0050】
<プラズマ発生部2>
プラズマ発生部2は、処理空間Vにプラズマを発生させる装置であり、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ(誘導結合タイプの高周波アンテナ)21を、複数個、備える。もっとも、誘導結合型アンテナ21の個数は、必ずしも複数である必要はなく、1個であってもよい。ただし、ここでいう「低インダクタンスの誘導結合型アンテナ」とは、単体のインダクタンスが11.5μH(マイクロヘンリー)以下であるような誘導結合型アンテナをいう。
【0051】
誘導結合型アンテナ21は、具体的には、例えば、金属製のパイプ状導体をU字形状に曲げたものを、石英などの誘電体で覆ったものである。このようなU字形状の誘導結合型アンテナ21は、巻数が1回未満の誘導結合型アンテナに相当し、巻数が1回以上の誘導結合型アンテナよりもインダクタンスが低い。例えば、巻半径が「100mm」で、巻長さが「600mm」の鉄心なしコイルのインダクタンスは、巻き数が「100回」であるとすると「550μH」であるが、巻き数が「1回未満」であるとすると「5.5μH未満」となる。このように、巻き数が1回未満の誘導結合型アンテナによると、低インダクタンスの誘導結合型アンテナが容易に実現される。
【0052】
複数の誘導結合型アンテナ21は、定められた方向に沿って、間隔をあけて(好ましくは等間隔で)、一列に配列されて、天板11に対して固定される。複数の誘導結合型アンテナ21は、具体的には、例えば、各々の両端部を結ぶ線分Lの中心点Cが、直線状の仮想軸K上に配置されることによって、当該仮想軸Kに沿って一列に配列されている(
図4、
図5参照)。この仮想軸Kは、基材9の搬送方向(後述する)(図示の例では、Y方向)と直交する軸であることが好ましい。また、この仮想軸Kは、チャンバー1のいずれかの側壁と平行に延在する軸であることも好ましい。
【0053】
ただし、各誘導結合型アンテナ21の仮想軸Kに対する姿勢(線分Lと仮想軸Kとがなす角度)は、任意に規定できる。
【0054】
例えば、各誘導結合型アンテナ21は、
図4に示されるように、線分Lと仮想軸Kとが平行になる姿勢(すなわち、複数の誘導結合型アンテナ21の各々が、その配列方向と平行な姿勢)で配置されてもよい。つまり、複数の誘導結合型アンテナ21が第1の方向(図示の例では、X方向)に沿って配列され、各誘導結合型アンテナ21が当該第1の方向に沿う姿勢で配置されてもよい。
【0055】
また例えば、各誘導結合型アンテナ21は、
図5に示されるように、線分Lと仮想軸Kとが直交する姿勢(すなわち、複数の誘導結合型アンテナ21の各々が、その配列方向と直交する姿勢)で配置されてもよい。つまり、複数の誘導結合型アンテナ21が第1の方向(図示の例では、X方向)に沿って配列され、各誘導結合型アンテナ21が、当該第1の方向と直交する第2の方向(図示の例では、Y方向)に沿う姿勢で配置されてもよい。
【0056】
各誘導結合型アンテナ21の一端は、給電器22およびマッチングボックス23を介して、高周波電力供給部24に接続されている。高周波電力供給部24は、例えば、高周波電源(RF電源)を含んで構成される。また、各誘導結合型アンテナ21の他端は接地されている。この構成において、高周波電力供給部24から各誘導結合型アンテナ21に高周波電力(具体的には、例えば、出力周波数が13.56MHzの高周波電力)が流されると、誘導結合型アンテナ21の周囲の電界(高周波誘導電界)により電子が加速されて、プラズマ(誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP))が発生する。ここでは、誘導結合型アンテナ21に高周波電力が供給(給電)されることによって、処理空間Vに、電子密度が3×10
10(個/cm
3)以上の高密度のプラズマが生成される。
【0057】
ただし、高周波電力供給部24は、各誘導結合型アンテナ21に対して、高周波電力を間欠的に供給する(
図6参照)。この間欠供給の繰り返しの周波数f1は、例えば、2kHz(キロヘルツ)以上、かつ、10kHz以下であることが好ましく、例えば、5kHz程度であることが好ましい。また、1回の高周波電電力の持続時間t1は、例えば、50μs(マイクロセカンド)程度であることが好ましい。上述したとおり、ここで用いられる誘導結合型アンテナ21は、低インダクタンスの誘導結合型アンテナであるため、応答性に優れている。したがって、例えば2〜10kHzという高い繰り返しの周波数f1で、高周波電力を間欠供給しても、これに十分に応答できる。
【0058】
<ガス供給部3>
ガス供給部3は、処理空間Vに、成膜の材料となる材料ガスを供給する。ここでは、各種の炭化水素ガスを含むガスを、材料ガスとして用いることができる。例えば、メタンガス、アセチレンガス等が材料ガスとして好適である。
【0059】
ガス供給部3は、具体的には、例えば、材料ガスの供給源であるガス供給源31と、一端がガス供給源31と接続された導入配管32と、を備える。導入配管32の他端は、チャンバー1の天板11を上下に貫通して設けられた複数のガス供給ポート33の各々と接続される。また、導入配管32の経路途中には、供給バルブ34が介挿される。供給バルブ34は、導入配管32を流れるガスの流量を自動調整できるバルブであることが好ましく、例えば、マスフローコントローラ等を含んで構成することが好ましい。この構成において、供給バルブ34が開放されると、ガス供給源31から供給される材料ガスが、導入配管32および各ガス供給ポート33を介して、処理空間Vの全体に満遍なく吐出される。
【0060】
<相対移動部4>
相対移動部4は、基材9を、誘導結合型アンテナ21に対して相対移動させる。上述したとおり、この実施の形態では、誘導結合型アンテナ21はチャンバー1に対して固定されており、相対移動部4は、固定された誘導結合型アンテナ21に対して基材9を移動させる。
【0061】
相対移動部4は、基材9に当接してこれを支持する支持部材41と、支持部材41に当接してこれを支持しつつ、支持部材41を搬送経路に沿って搬送する支持部材搬送部42と、を備える。
【0062】
支持部材41は、処理空間Vにおいて基材9を水平姿勢で支持する板状部材であり、導電性の材料(例えば、アルミニウム)により形成される。基材9は、膜付けの対象面を上側に向けた状態で、支持部材41の上面に水平姿勢で載置されることによって、支持部材41に支持される。支持部材41の上面と基材9の下面とは、いずれも平坦面であり、支持部材41とこれに支持されている基材9との接触面積が大きく確保されるようになっている。支持部材41は、平面視にて基材9よりも大きなサイズとされることが好ましい。この構成によると、基材9の下面の全体に支持部材41が当接することになる。
【0063】
支持部材搬送部42は、支持部材41に当接してこれを支持しつつ、処理空間V内に規定される水平な(すなわち、天板11の下面と平行な)搬送経路に沿って、支持部材41を搬送する。支持部材搬送部42は、具体的には、搬送経路を挟んで対向配置された一対の搬送ローラ421,421と、各搬送ローラ421を回転させる回転駆動部422と、を備える。
【0064】
一対の搬送ローラ421,421は、搬送経路の延在方向(図示の例ではY方向)に沿って、複数組配列される。各搬送ローラ421のシャフトは、チャンバー1の側壁を回転可能に貫通して設けられており、チャンバー1の外側において、回転駆動部422と接続される。ただし、搬送ローラ421のシャフトとチャンバー1の側壁との間には、軸受け(例えば、磁性流体軸受け)(図示省略)が設けられており、チャンバー1の気密性が保たれるようになっている。
【0065】
この構成において、各搬送ローラ421が、支持部材41の端縁(±X側の端縁)付近に下方から当接しつつ、同期して回転することによって、支持部材41が、水平姿勢で保持されつつ、搬送経路に沿って搬送される。すなわち、支持部材41に保持されている基材9が、誘導結合型アンテナ21に対して相対移動される。
【0066】
<電圧印加部5>
電圧印加部5は、誘導結合型アンテナ21への高周波電力の供給が一時的に停止されている時間帯に、基材9に負の電圧(バイアス電圧)を印加する。
【0067】
この電圧印加部5は、バイアス電圧のオンとオフとを繰り返して行う。具体的には、電圧印加部5は、例えば、負極性のパルス電圧を供給するパルス電圧供給部51を備える。パルス電圧供給部51は、例えば、DC電源を有するパルス電源を含んで構成することができる。パルス電圧供給部51は、予め設定されたパラメータによって規定されるパルス波形(具体的には、周波数f2、負パルスの持続時間t2、負電圧レベルV2、等の各パラメータから規定されるパルス波形)に応じた負極性のパルス電圧を形成する(
図6参照)。ただし、パルス波形の周波数f2は、上述した高周波電力供給部24から誘導結合型アンテナ21へ間欠供給される高周波電力の繰り返しの周波数f1と一致する(f1=f2)。パルスの持続時間t2は、例えば、1μs程度であることが好ましい。また、負電圧レベルV2は、例えば、5kV(キロボルト)以上、かつ、10kV以下であることが好ましく、例えば、10kV程度であることが好ましい。また、電流は100A(アンペア)程度であることが好ましい。
【0068】
この電圧印加部5は、支持部材41を介して、基材9に負の電圧を印加する。具体的には、電圧印加部5は、複数のシュー52と、シュー52と同数個の付勢部材53と、をさらに備える。
【0069】
複数のシュー52は、上方から見て、搬送経路に沿って搬送される支持部材41の下面が通過する領域内に、例えばマトリクス状に、固定的に配列されている。各シュー52は、例えば、直方体状の部材であり、導電性の材料(例えば、カーボン)により形成される。また、各シュー52は、その平坦な上端面が、搬送経路に沿って搬送される支持部材41の下面が通過する仮想面内にくるように配設されており、当該上端面が、搬送経路に沿って搬送される支持部材41の下面に摺動自在に当接可能となっている。
【0070】
各付勢部材53は、可撓性を有する部材(例えば、ばね部材)であり、導電性の材料により形成される。各付勢部材53は、下端においてパルス電圧供給部51と接続され、上端においてシュー52の下端と接続される。付勢部材53は、これと接続されているシュー52を、支持部材41の下面に近づける方向に付勢する。したがって、複数のシュー52のうち、平面視にて支持部材41と重なる位置にあるシュー52は、付勢部材53の付勢力を受けて、支持部材41の下面に押し付けられた状態となる。
【0071】
搬送経路に沿って搬送される支持部材41の下面には、少なくとも1個のシュー52が、押し付けられた状態で当接した状態となる。したがって、支持部材41の搬送が開始された後に、パルス電圧供給部51から、各付勢部材53を介して各シュー52に負の電圧が印加されると、支持部材41と接触しているシュー52を介して、支持部材41に負の電圧が印加される。支持部材41に支持されている基材9に負の電圧が印加されることによって、基材9の上面(膜付けの対象面)付近に、負の電界が形成される。
【0072】
<シールド部材6>
シールド部材6は、支持部材41の下面側への炭素ラジカル82(後述する)の回り込みを抑制するための部材である。
【0073】
シールド部材6は、具体的には、チャンバー1の側壁(±X側の側壁)から水平姿勢で突出するように設けられて、搬送経路を挟んで対向配置された一対のシールド板61,61を備える。各シールド板61は、基材9の搬送経路と誘導結合型アンテナ21との間の位置(好ましくは、基材9の搬送経路と略同一高さか、当該搬送経路よりも僅かに高い位置)に配置される。また、各シールド板61は、その突出端側の縁部(チャンバー1の側壁に固定されている側とは逆側の縁部)が、鉛直方向から見て、支持部材41上に保持された基材9の端縁(±X側の端縁)の通過位置よりも僅かに外側の領域にくるように配置される。また、各シールド板61は、その面内の全体に、無数の貫通孔が満遍なく形成されており、全体としてメッシュ状を呈している。さらに、各シールド板61は、その突出端側の縁部付近の部分が、セラミック等の絶縁体の材料から形成されており、当該縁部付近を除く部分が、金属等の導電性の材料により形成される。
【0074】
この構成によると、誘導結合型アンテナ21の周囲に発生した炭素ラジカル82(後述する)のうち、基材9の脇を通って支持部材41の下面側に回り込もうとするものが、このシールド部材6により捕獲(失活)されて、希ガスとなって、排気部(図示省略)によって処理空間Vから排出される。これによって、支持部材41の下面側への炭素ラジカル82の回り込みが抑制される。なお、上述したとおり、シールド板61の突出端側の縁部付近は、絶縁体の材料で形成されている。したがって、基材9に電圧が印加されても、シールド板61と基材9との間に放電が生じることはない。
【0075】
<制御部7>
制御部7は、成膜装置10が備える各構成要素と電気的に接続され、これら各要素を制御する。制御部7は、具体的には、例えば、各種演算処理を行うCPU、プログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスク、LAN等を介したデータ通信機能を有するデータ通信部等がバスラインなどにより互いに接続された、一般的なコンピュータにより構成される。また、制御部7は、各種表示を行うディスプレイ、キーボードおよびマウスなどで構成される入力部等と接続されている。成膜装置10においては、制御部7の制御下で、基材9に対して定められた処理が実行される。
【0076】
<2−2.処理の流れ>
成膜装置10において実行される処理の流れについて、
図7を参照しながら説明する。以下に説明する処理は、制御部7の制御下で実行される。
図7は、当該処理の流れを示す図である。
【0077】
まず、膜付けの対象物となる基材9が、外部の搬送装置によって、ゲート190を介して成膜装置10の処理空間Vに搬入される(ステップS1)。搬入された基材9は、膜付けの対象面を上側に向けた状態で、支持部材41の上面に載置されることによって、支持部材41に支持される。支持部材41に基材9が支持された状態となると、高真空排気系により処理空間Vが真空状態とされる。
【0078】
処理空間Vが真空状態となると、ガス供給部3が、処理空間Vに、材料ガスである炭化水素ガスの供給を開始する(ステップS2)。具体的には、供給バルブ34が開放されることによって、ガス供給源31から供給される材料ガスが、導入配管32および各ガス供給ポート33を介して、処理空間Vに吐出開始される。
【0079】
処理空間V内の材料ガスの圧力が所定値に到達すると、相対移動部4が、基材9の搬送を開始する(ステップS3)。具体的には、支持部材搬送部42が、基材9を支持している支持部材41を、搬送経路に沿って搬送開始する。
【0080】
続いて、成膜処理が行われる(ステップS4)。つまり、基材9を搬送しつつ(すなわち、基材9を誘導結合型アンテナ21に対して相対移動させつつ)、当該基材9に対する成膜処理が行われる。成膜処理では、誘導結合型アンテナ21に対する高周波電力の供給(ステップS41)と、基材9に対する負の電圧(バイアス電圧)の印加(ステップS42)とが、交互に繰り返して行われる。すなわち、高周波電力供給部24から誘導結合型アンテナ21に、繰り返しの周波数f1で、高周波電力が間欠供給される一方で、電圧印加部5から基材9に、周波数f2のパルス波形に応じた負極性のパルス電圧が印加される。ただし、パルス波形の周波数f2は、間欠供給される高周波電力の繰り返しの周波数f1と等しい。また、パルス電圧の初期位相は、高周波電力の間欠供給の初期位相から、少なくとも、高周波電電力の持続時間t1以上遅れたものとされる。したがって、
図6に示されるように、誘導結合型アンテナ21に対して所定の持続時間t1だけ高周波電力の供給が持続された後、誘導結合型アンテナ21への高周波電力の供給が一旦停止され、誘導結合型アンテナ21への高周波電力の供給が停止されてから遅滞なく(好ましくは、誘導結合型アンテナ21への高周波電力の供給が停止された直後に)、基材9に負の電圧が印加される。基材9に対して1パルスの持続時間t2だけ負の電圧が印加された後、再び、誘導結合型アンテナ21に対して所定の持続時間t1の高周波電力の供給が行われ、以降、同様の動作が繰り返して行われる。
【0081】
このように、誘導結合型アンテナ21に対する高周波電力の供給と、基材9に対する負の電圧の印加とが、交互に繰り返して行われることによって、処理空間V内で、以下に説明する反応が進み、基材9上に、DLC膜が形成される。処理空間V内で進行する反応について、
図8、
図9を参照しながら説明する。
図8は、誘導結合型アンテナ21に高周波電力が供給されている時間帯T1(
図6参照)における、処理空間V内での粒子の挙動を説明するための図である。
図9は、誘導結合型アンテナ21への高周波電力の供給が停止されており、かつ、基材9に負の電圧が印加されている時間帯T2(
図6参照)における、処理空間V内での粒子の挙動を説明するための図である。なお、
図8、
図9においては、説明に関係のある粒子のみが模式的に示されている。
【0082】
誘導結合型アンテナ21に高周波電力が供給されている時間帯T1においては、誘導結合型アンテナ21の周囲に電界(高周波誘導電界)が形成され、この電界により電子が加速されて、プラズマ(誘導結合プラズマ)81が発生する。プラズマ81が発生すると、処理空間V内に材料ガスとして供給されている炭化水素ガスが活性化されて、炭素ラジカル82が生成される。上述したとおり、ここでは、電子密度が3×10
10(個/cm
3)以上の高密度のプラズマ81が発生するので、生成される炭素ラジカル82も非常に高いエネルギーを持つことになる。
【0083】
誘導結合型アンテナ21への高周波電力の供給が停止されるとともに、これと遅滞なく、基材9に負の電圧(バイアス電圧)が印加されると、プラズマ81がまだエネルギーを完全には失っていない状態のまま、基材9の電圧が低下する。すなわち、基材9の上面(膜付けの対象面)に、負の電界が形成される。処理空間V内に発生している炭素ラジカル82は正の電荷を帯びている(正に帯電している)ため、基材9の電圧が低下すると、当該炭素ラジカル82が、基材9に引き込まれる。すなわち、炭素ラジカル82が、基材9に向かう方向に加速されて、膜付けの対象面に勢いよく衝突する。この時に、炭素ラジカル82が瞬間的に高温・高圧状態となり、炭素のダイヤモンド晶が生成される。高エネルギーの炭素ラジカル82が次々と入射することによって、膜付けの対象面のダイヤモンド晶が成長していく。
【0084】
以降、同様のことが繰り返される。すなわち、基材9に負の電圧が印加された後、再び、誘導結合型アンテナ21に高周波電力が供給されると、プラズマ81が新たに発生し、処理空間V内の炭化水素ガスが活性化されて、高エネルギーの炭素ラジカル82が新たに生成される。そして、誘導結合型アンテナ21への高周波電力の供給が停止されるとともに、これに遅滞なく基材9に負の電圧が印加されると、高エネルギーの炭素ラジカル82が、基材9に引きこまれ、先に基材9の膜付けの対象面に生成されているダイヤモンド晶と結合する。これによって、膜付けの対象面のダイヤモンド晶が成長していき、DLC膜が成膜されていく。
【0085】
再び
図7を参照する。成膜処理が開始されてから所定の時間が経過して、膜付けの対象面に所定の膜厚のDLC膜が形成されると、誘導結合型アンテナ21に対する高周波電力の間欠供給が停止されるとともに、基材9に対するパルス電圧の印加が停止される。また、材料ガスの供給も停止される。そして、支持部材41に支持されている基材9が、外部の搬送装置によって処理空間Vから搬出される(ステップS5)。
【0086】
以上で、一枚の基材9に対する処理が終了する。新たな基材9が成膜装置10に搬入されると、当該基材9に対して、上述した一連の処理(ステップS1〜ステップS5)が行われることになる。
【0087】
<3.効果>
第1の実施の形態に係る成膜装置10によると、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21に高周波電力を間欠的に供給し、誘導結合型アンテナ21への高周波電力の供給が一時的に停止されている時間帯に、基材9に負の電圧を印加する。上述したとおり、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21は、高周波電力のオン・オフに、即座に応答できるため、高周波電力の間欠供給の繰り返しの周波数f1を、十分高いものとすることができる。ひいては、基材9に印加する負の電圧の周波数(具体的には、負極性のパルス波形の周波数)f2を、十分高いものとすることができる。これによって、高い成膜効率で、DLC膜を成膜できる。
【0088】
また、成膜装置10において、基材9の下面の全体に支持部材41が当接する構成とすれば、この支持部材41を介して負の電圧が印加されることによって、基材9の上面(膜付けの対象面)の全体に均一な負の電界が形成される。これによって、膜付けの対象面の全体に、均一な厚みのDLC膜を成膜できる。
【0089】
また、成膜装置10によると、搬送経路に沿って搬送される支持部材41の下面が通過する領域内にシュー52が固定的に配置されており、搬送経路に沿って搬送される支持部材41に、このシュー52が当接することによって、基材9に負の電圧が印加される。この構成によると、簡易な構成で、基材9を誘導結合型アンテナ21に対して移動させつつ、基材9に負の電圧を印加できる。
【0090】
また、成膜装置10によると、シュー52を支持部材41に付勢する付勢部材53が設けられるので、支持部材41に支持される基材9に負の電圧を確実に印加できる。
【0091】
また、成膜装置10によると、処理空間Vに、電子密度が3×10
10(個/cm
3)以上の高密度のプラズマ81が生成されるので、高エネルギーの炭素ラジカル82が生成される。これによって、良好な膜質のDLC膜を高い成膜効率で成膜できる。
【0092】
また、成膜装置10によると、巻き数が一周未満の誘導結合型アンテナ21を用いてプラズマ81が生成される。巻き数が一周未満の誘導結合型アンテナ21によると、低いインダクタンスを容易に実現できる。
【0093】
また、成膜装置10において、複数の誘導結合型アンテナ21が、第1の方向に沿って配列され、各誘導結合型アンテナ21が、当該第1の方向と直交する第2の方向に沿う姿勢で配置される場合(
図5参照)、各誘導結合型アンテナ21の形成する磁場が重なりあう。この構成によると、高密度のプラズマ81が発生し、高エネルギーの炭素ラジカル82が生成される。これによって、良好な膜質のDLC膜を高い成膜効率で成膜できる。
【0094】
<II.第2の実施の形態>
<1.成膜装置10aの構成>
第2の実施の形態に係る成膜装置10aについて、
図10〜
図12を参照しながら説明する。
図10は、成膜装置10aの構成を模式的に示す側断面図である。
図11、
図12は、誘導結合型アンテナ21aの配列例を示す図である。図面および以下の説明においては、第1の実施の形態に係る成膜装置10が備える構成要素と同じ構成要素については、同じ符号で示すとともに、説明を省略する。
【0095】
成膜装置10aは、第1の実施の形態に係る成膜装置10と同様、プラズマCVDによって、基材9(例えば、ガラス板)にDLC膜を形成する装置であり、例えば、上述したプラズマ処理装置100に搭載される。
【0096】
成膜装置10は、内部に処理空間Vを形成するチャンバー1と、処理空間Vにプラズマを発生させるプラズマ発生部2aと、処理空間Vに材料ガス(例えば、メタンガス、アセチレンガス等の各種の炭化水素ガスを含む材料ガス)を供給するガス供給部3と、基材9をプラズマ発生部2aの誘導結合型アンテナ21aに対して相対移動させる相対移動部4と、基材9に負の電圧を印加する電圧印加部5と、チャンバー1内に設けられたシールド部材6と、を備える。また、成膜装置10は、これが備える各構成要素等を制御する制御部7を備える。また、成膜装置10は、他にも、処理空間V内の圧力を調整するための機構(図示省略)等を備える。
【0097】
成膜装置10aは、プラズマ発生部2aの構成において、第1の実施の形態に係る成膜装置10と相違する。具体的には、第1の実施の形態に係る成膜装置10が備えるプラズマ発生部2は、U字状の誘導結合型アンテナ21を備えていたが、この実施の形態に係る成膜装置10aが備えるプラズマ発生部2aは、1周のループ状の誘導結合型アンテナ21aを備える。以下において、プラズマ発生部2aの構成について説明する。
【0098】
<プラズマ発生部2a>
プラズマ発生部2aは、処理空間Vにプラズマを発生させる装置であり、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21aを、複数個、備える。もっとも、誘導結合型アンテナ21aの個数は、必ずしも複数である必要はなく、1個であってもよい。ただし、上述したとおり、「低インダクタンスの誘導結合型アンテナ」とは、単体のインダクタンスが11.5μH以下であるような誘導結合型アンテナをいう。
【0099】
誘導結合型アンテナ21aは、具体的には、例えば、金属製のパイプ状導体を、1周のループ状(環状)に曲げたものを、アルミナセラミックス等の保護管で覆ったものである(所謂、シングルループアンテナ)。このようなシングルループタイプの誘導結合型アンテナ21aは、巻き数が1周の誘導結合型アンテナに相当する。巻き数が1周の誘導結合型アンテナによっても、低インダクタンスの誘導結合型アンテナが容易に実現される。また、このようなシングルループタイプの誘導結合型アンテナ21aは、ループ内の広い空間に強い磁場(例えば、未周回のアンテナに比べて強い磁場)が形成されるため、広い空間に特に高密度のプラズマを発生させることができるという利点がある。
【0100】
複数の誘導結合型アンテナ21aは、第1の実施の形態に係る複数の誘導結合型アンテナ21と同様、定められた方向に沿って、間隔をあけて(好ましくは等間隔で)、一列に配列されて、天板11に対して固定される。複数の誘導結合型アンテナ21aは、具体的には、例えば、各々のループの中心点Cが、直線状の仮想軸K上に配置されることによって、当該仮想軸Kに沿って一列に配列されている(
図11、
図12参照)。この仮想軸Kは、基材9の搬送方向(図示の例では、Y方向)と直交する軸であることが好ましい。また、この仮想軸Kは、チャンバー1のいずれかの側壁と平行に延在する軸であることも好ましい。
【0101】
ただし、各誘導結合型アンテナ21aの仮想軸Kに対する姿勢(ループの径方向と仮想軸Kとがなす角度)は、任意に規定できる。
【0102】
例えば、各誘導結合型アンテナ21aは、
図11に示されるように、ループの径方向Rと仮想軸Kとが平行になる姿勢(すなわち、複数の誘導結合型アンテナ21aの各々が、その配列方向と平行な姿勢)で配置されてもよい。つまり、複数の誘導結合型アンテナ21aが第1の方向(図示の例では、X方向)に沿って配列され、各誘導結合型アンテナ21aが当該第1の方向に沿う姿勢で配置されてもよい。
【0103】
また例えば、各誘導結合型アンテナ21aは、
図12に示されるように、ループの径方向Rと仮想軸Kとが直交する姿勢(すなわち、複数の誘導結合型アンテナ21aの各々が、その配列方向と直交する姿勢)で配置されてもよい。つまり、複数の誘導結合型アンテナ21aが第1の方向(図示の例では、X方向)に沿って配列され、各誘導結合型アンテナ21が、当該第1の方向と直交する第2の方向(図示の例では、Y方向)に沿う姿勢で配置されてもよい。
【0104】
各誘導結合型アンテナ21aの一端は、給電器22およびマッチングボックス23を介して、高周波電力供給部24に接続されている。高周波電力供給部24は、例えば、高周波電源(RF電源)を含んで構成される。また、各誘導結合型アンテナ21aの他端は接地されている。この構成において、高周波電力供給部24から各誘導結合型アンテナ21aに高周波電力(具体的には、例えば、出力周波数が13.56MHzの高周波電力)が流されると、誘導結合型アンテナ21aの周囲の電界(高周波誘導電界)により電子が加速されて、プラズマ(誘導結合プラズマ)が発生する。ここでも、誘導結合型アンテナ21aに高周波電力が供給されることによって、処理空間Vに、電子密度が3×10
10(個/cm
3)以上の高密度のプラズマが生成される。
【0105】
ただし、成膜装置10aでも、上記の実施の形態に係る成膜装置10と同様、高周波電力供給部24は、各誘導結合型アンテナ21aに対して、高周波電力を間欠的に供給する(
図6参照)。ここでも、間欠供給の繰り返しの周波数f1は、例えば、2kHz以上、かつ、10kHz以下であることが好ましく、例えば、5kHz程度であることが好ましい。また、1回の高周波電電力の持続時間t1は、例えば、50μs程度であることが好ましい。上述したとおり、ここで用いられる誘導結合型アンテナ21aは、低インダクタンスの誘導結合型アンテナであるため、応答性に優れている。したがって、例えば2〜10kHzという高い繰り返しの周波数f1で、高周波電力を間欠供給しても、これに十分に応答できる。
【0106】
<2.成膜装置10aにおける処理の流れ>
成膜装置10aにおいて実行される処理の流れは、第1の実施の形態に係る成膜装置10において実行される処理の流れと同様である。
【0107】
<3.効果>
第2の実施の形態に係る成膜装置10aにおいても、第1の実施の形態に係る成膜装置10と同様の効果を得ることができる。すなわち、成膜装置10aにおいても、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21aに高周波電力を間欠的に供給し、誘導結合型アンテナ21aへの高周波電力の供給が一時的に停止されている時間帯に、基材9に負の電圧を印加するところ、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21aは、高周波電力のオン・オフに、即座に応答できるため、高周波電力の間欠供給の繰り返しの周波数f1、ひいては、基材9に印加する負の電圧の周波数f2を、十分高いものとすることができる。これによって、高い成膜効率で、DLC膜を成膜できる。
【0108】
また、成膜装置10aによると、巻き数が一周の誘導結合型アンテナ21aを用いてプラズマ81が生成される。巻き数が一周の誘導結合型アンテナ21aによると、低いインダクタンスを容易に実現できる。
【0109】
また、成膜装置10aにおいて、複数の誘導結合型アンテナ21aが、第1の方向に沿って配列され、各誘導結合型アンテナ21aが、当該第1の方向と直交する第2の方向に沿う姿勢で配置される場合(
図12参照)、各誘導結合型アンテナ21aの形成する磁場が重なりあう。この構成によると、高密度のプラズマ81が発生し、プラズマ81の発生する空間も広くなる。したがって、高エネルギーの炭素ラジカル82が広い範囲に生成される。これによって、良好な膜質のDLC膜を高い成膜効率で成膜できる。
【0110】
<III.第3の実施の形態>
<1.成膜装置10bの構成>
第3の実施の形態に係る成膜装置10bについて、
図13、
図14を参照しながら説明する。
図13は、成膜装置10bの構成を模式的に示す側断面図である。
図14は、
図13を矢印Q方向から見た平断面図である。図面および以下の説明においては、第1の実施の形態に係る成膜装置10が備える構成要素と同じ構成要素については、同じ符号で示すとともに、説明を省略する。
【0111】
成膜装置10bは、第1の実施の形態に係る成膜装置10と同様、プラズマCVDによって、基材9(例えば、ガラス板)にDLC膜を形成する装置であり、例えば、上述したプラズマ処理装置100に搭載される。
【0112】
成膜装置10bは、内部に処理空間Vを形成するチャンバー1と、処理空間Vにプラズマを発生させるプラズマ発生部2bと、処理空間Vに材料ガス(例えば、メタンガス、アセチレンガス等の各種の炭化水素ガスを含む材料ガス)を供給するガス供給部3と、基材9をプラズマ発生部2bの誘導結合型アンテナ21bに対して相対移動させる相対移動部4bと、基材9に負の電圧を印加する電圧印加部5bと、チャンバー1内に設けられたシールド部材6と、を備える。また、成膜装置10bは、これが備える各構成要素等を制御する制御部7を備える。また、成膜装置10は、他にも、処理空間V内の圧力を調整するための機構(図示省略)等を備える。
【0113】
成膜装置10bは、プラズマ発生部2b、相対移動部4b、および、電圧印加部5bの構成において、第1の実施の形態に係る成膜装置10と相違する。以下において、プラズマ発生部2b、相対移動部4b、および、電圧印加部5bの各構成について説明する。
【0114】
<プラズマ発生部2b>
プラズマ発生部2bは、処理空間Vにプラズマを発生させる装置であり、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21bを、1個、備える。もっとも、誘導結合型アンテナ21bの個数は、必ずしも1個である必要はなく、複数個であってもよい。ただし、上述したとおり、「低インダクタンスの誘導結合型アンテナ」とは、単体のインダクタンスが11.5μH以下であるような誘導結合型アンテナをいう。
【0115】
誘導結合型アンテナ21bは、具体的には、例えば、直線棒状の、金属製のパイプ状導体を、石英などの誘電体で覆ったものである(所謂、ロッドアンテナ)。ただし、誘導結合型アンテナ21bの長さは、所定の上限長さ以下とされる。ここでいう「上限長さ」とは、誘導結合型アンテナ21bのインダクタンスが、11.5μHとなる長さである。すなわち、直線棒状の誘導結合型アンテナのインダクタンスは、長さに比例して高くなるところ、誘導結合型アンテナ21bは、そのインダクタンスが、11.5μH以下となるような長さとなっている。例えば、半径が「2mm」直線棒状のアンテナのインダクタンスは、長さが「2200mm」であるとすると「3.06μH」となる。このように、例えば長さが「2200mm」の誘導結合型アンテナによって、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21bが実現される。
【0116】
誘導結合型アンテナ21bは、その両端部の各々がチャンバー1の側壁に対して固定(貫通固定)されることによって、天板11付近の高さ位置に、水平姿勢で、支持される。ただし、誘導結合型アンテナ21bは、その長尺方向を、基材9の搬送方向(図示の例では、Y方向)と直交する軸に沿わせる姿勢で配置されていることが好ましい。また、誘導結合型アンテナ21bは、その長尺方向を、チャンバー1のいずれかの側壁と平行に延在する軸に沿わせる姿勢で配置されていることも好ましい。
【0117】
誘導結合型アンテナ21bの一方の端部は、高周波電力供給部22bに接続されている。高周波電力供給部22bは、例えば、高周波電源(RF電源)を含んで構成される。また、誘導結合型アンテナ21bの他方の端部は、接地されている。ただし、誘導結合型アンテナ21bの各端部とチャンバー1の側壁との間には、軸受けが設けられており、チャンバー1の気密性が保たれるようになっている。この構成において、高周波電力供給部22bから各誘導結合型アンテナ21bに高周波電力(具体的には、出力周波数が例えば、13.56MHzの高周波電力)が流されると、誘導結合型アンテナ21bの周囲の電界(高周波誘導電界)により電子が加速されて、プラズマ(誘導結合プラズマ)が発生する。ここでも、誘導結合型アンテナ21bに高周波電力が供給されることによって、処理空間Vに、電子密度が3×10
10(個/cm
3)以上のプラズマが生成される。
【0118】
ただし、成膜装置10bでも、上記の各実施の形態に係る成膜装置10,10aと同様、高周波電力供給部22bは、各誘導結合型アンテナ21bに対して、高周波電力を間欠的に供給する(
図6参照)。ここでも、間欠供給の繰り返しの周波数f1は、例えば、2kHz以上、かつ、10kHz以下であることが好ましく、例えば、5kHz程度であることが好ましい。また、1回の高周波電電力の持続時間t1は、例えば、50μs程度であることが好ましい。上述したとおり、ここで用いられる誘導結合型アンテナ21bは、低インダクタンスの誘導結合型アンテナであるため、応答性に優れている。したがって、例えば2〜10kHzという高い繰り返しの周波数f1で、高周波電力を間欠供給しても、これに十分に応答できる。
【0119】
<相対移動部4b>
相対移動部4bは、基材9を、誘導結合型アンテナ21bに対して相対移動させる。上述したとおり、この実施の形態でも、誘導結合型アンテナ21bはチャンバー1に対して固定されており、相対移動部4bは、固定された誘導結合型アンテナ21bに対して基材9を移動させる。
【0120】
相対移動部4bは、基材9に当接してこれを支持しつつ、基材9を搬送経路(具体的には、処理空間V内に規定される水平な(すなわち、天板11の下面と平行な)搬送経路)に沿って搬送する基材搬送部41bを、備える。基材搬送部41bは、具体的には、例えば、複数の搬送ローラ411bと、これらを回転させる回転駆動部412bと、を備える。
【0121】
複数の搬送ローラ411bは、搬送経路に沿って配列され、基材9に下方から当接して基材9を支持する。各搬送ローラ411bは、棒状部材であり、導電性の材料により形成される。具体的には、例えば、各搬送ローラ411bは、鋼等の合金を断面円形の棒状に成形した部材に、ニッケルメッキを施すことにより形成される。
【0122】
各搬送ローラ411bは、その両端部に配設されている絶縁性のシャフト4111b,4112bの各々が、チャンバー1の側壁に対して、回転可能に固定されることによって、底板12付近の高さ位置に、水平姿勢で、支持される。ただし、各搬送ローラ411bは、その長尺方向を、基材9の搬送方向(図示の例では、Y方向)と直交する軸に沿わせる姿勢で配置される。
【0123】
基材9は、膜付けの対象面を上側に向けた状態で、複数の搬送ローラ411bのうちの少なくとも1個の搬送ローラ411bの上に水平姿勢で載置されることによって、搬送ローラ411b上に支持される。
【0124】
各搬送ローラ411bの一方のシャフト4111bは、チャンバー1の側壁を回転可能に貫通して設けられており、チャンバー1の外側において、回転駆動部412bと接続される。ただし、当該シャフト4111bとチャンバー1の側壁との間には、軸受け(例えば、磁性流体軸受け)413bが設けられており、チャンバー1の気密性が保たれるようになっている。なお、後述するように、このシャフト4111bは、中空構造となっており、中空部分に、パルス電圧供給部51bから延びる導線が挿通される。
【0125】
この構成において、複数の搬送ローラ411bのうちの少なくとも1個が、膜付けの対象面を上側に向けた基材9に、下方から当接しつつ、同期して回転することによって、基材9が、水平姿勢で保持されつつ、搬送経路に沿って搬送される。すなわち、基材9が、誘導結合型アンテナ21bに対して相対移動される。
【0126】
<電圧印加部5b>
電圧印加部5bは、誘導結合型アンテナ21bへの高周波電力の供給が一時的に停止されている時間帯に、基材9に負の電圧を印加する。
【0127】
この電圧印加部5bも、上記の実施の形態に係る電圧印加部5と同様、バイアス電圧のオンとオフとを繰り返して行う。具体的には、電圧印加部5bは、例えば、負極性のパルス電圧を供給するパルス電圧供給部51bを備える。パルス電圧供給部51bは、例えば、DC電源を有するパルス電源を含んで構成することができる。パルス電圧供給部51bは、予め設定されたパラメータによって規定されるパルス波形に応じた負極性のパルス電圧を形成する(
図6参照)。ただし、成膜装置10bでも、上記の各実施の形態に係る成膜装置10,10aと同様、パルス波形の周波数f2は、上述した高周波電力供給部22bから誘導結合型アンテナ21bへ間欠供給される高周波電力の繰り返しの周波数f1と一致する(f1=f2)。また、パルスの持続時間t2は、例えば、1μs程度であることが好ましい。また、負電圧レベルV2は、例えば、5kV以上、かつ、10kV以下であることが好ましく、例えば、10kV程度であることが好ましい。また、電流は100A程度であることが好ましい。
【0128】
この電圧印加部5bは、基材搬送部41b(より具体的には、搬送ローラ411b)を介して、基材9に負の電圧を印加する。具体的には、電圧印加部5bのパルス電圧供給部51bから伸びる導線は、各搬送ローラ411bのシャフト4111b内の中空部分を挿通されて、各搬送ローラ411bと接続される。上述したとおり、搬送経路に沿って搬送される基材9の下面には、少なくとも1個の搬送ローラ411bが当接した状態となる。したがって、基材9の搬送が開始された後に、パルス電圧供給部51bから、各搬送ローラ411bに負の電圧が印加されると、基材9と接触している搬送ローラ411bを介して、基材9に負の電圧が印加され、基材9の上面(膜付けの対象面)付近に、負の電界が形成される。
【0129】
なお、この態様においては、搬送ローラ411b間の隙間が小さいほど(すなわち、搬送ローラ411bが、搬送経路に沿って密に配列されるほど)、基材9の下面における搬送ローラ411bと接触している部分の総面積が大きく確保され、基材9の上面(膜付けの対象面)付近に形成される負の電界の均一性が高まる。ひいては、膜付けの対象面に成膜されるダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚の均一性が高まる。もっとも、電圧印加部5bから印加される負極性のパルス電圧の周波数f2は基材9の搬送速度に対して十分に大きく、膜付けの対象面の各領域にはごく微小なレイヤーが無数に積み重なってDLC膜が生成されていくことになるので、膜付けの対象面付近に形成される電界に多少のムラがあったとしても、膜付けの対象面に成膜されるダイヤモンドライクカーボン膜に問題視されるほどの厚みムラが生じることはない。
【0130】
<2.成膜装置10bにおける処理の流れ>
成膜装置10bにおいて実行される処理の流れは、第1の実施の形態に係る成膜装置10において実行される処理の流れと同様である。
【0131】
すなわち、膜付けの対象物となる基材9が、外部の搬送装置によって成膜装置10bの処理空間Vに搬入されると(ステップS1)、当該搬入された基材9は、膜付けの対象面を上側に向けた状態で、複数の搬送ローラ411bのうちの少なくとも1個に支持される。続いて、処理空間Vが真空状態とされた上で、ガス供給部3が、材料ガスである炭化水素ガスの供給を開始する(ステップS2)。処理空間V内の材料ガスの圧力が所定値に到達すると、相対移動部4bが、基材9の搬送を開始するとともに(ステップS3)、成膜処理が開始される(ステップS4)。つまり、基材9を搬送しつつ、当該基材9に対する成膜処理が行われる。成膜処理では、誘導結合型アンテナ21bに対する高周波電力の供給(ステップS41)と、基材9に対する負の電圧の印加(ステップS42)とが、交互に繰り返して行われ、これによって、膜付けの対象面にDLC膜が成膜される。膜付けの対象面に所定の膜厚のDLC膜が形成されると、搬送ローラ411bに支持されている基材9が、外部の搬送装置によって処理空間Vから搬出される(ステップS5)。
【0132】
<3.効果>
第3の実施の形態に係る成膜装置10bにおいても、第1の実施の形態に係る成膜装置10と同様の効果を得ることができる。すなわち、成膜装置10bにおいても、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21bに高周波電力を間欠的に給電し、誘導結合型アンテナ21bへの高周波電力の給電が一時的に停止されている時間帯に、基材9に負の電圧を印加するところ、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21bは、高周波電力のオン・オフに、即座に応答できるため、高周波電力の間欠供給の繰り返しの周波数f1、ひいては、基材9に印加する負の電圧の周波数f2を、十分高いものとすることができる。これによって、高い成膜効率で、DLC膜を成膜できる。
【0133】
<IV.第4の実施の形態>
<1.成膜装置10cの構成>
第4の実施の形態に係る成膜装置10cについて、
図15を参照しながら説明する。
図15は、成膜装置10cの要部を上方から見た模式図である。図面および以下の説明においては、第1の実施の形態に係る成膜装置10が備える構成要素と同じ構成要素については、同じ符号で示すとともに、説明を省略する。
【0134】
成膜装置10cは、第1の実施の形態に係る成膜装置10と同様、プラズマCVDによって、基材9(例えば、ガラス板)にDLC膜を形成する装置であり、例えば、上述したプラズマ処理装置100に搭載される。
【0135】
成膜装置10cは、内部に処理空間Vを形成するチャンバー1cと、処理空間Vにプラズマを発生させるプラズマ発生部2cと、処理空間Vに材料ガス(例えば、メタンガス、アセチレンガス等の各種の炭化水素ガスを含む材料ガス)を供給するガス供給部(図示省略)と、基材9を、プラズマ発生部2cの誘導結合型アンテナ21に対して相対移動させる相対移動部4cと、基材9に負の電圧を印加する電圧印加部5cと、を備える。また、成膜装置10cは、これが備える各構成要素等を制御する制御部7を備える。また、成膜装置10cは、他にも、処理空間V内の圧力を調整するための機構(具体的には、例えば、高真空排気系、真空ゲージ、等)(図示省略)等を備える。
【0136】
<チャンバー1c>
チャンバー1cは、筒状(例えば、円筒状)の外形を呈する中空部材であり、内部に処理空間Vを形成する。チャンバー1cの周壁の一部には、未処理の基材9をチャンバー1c内に搬入するための搬入ゲート11cが形成されており、別の一部には、処理済みの基材9をチャンバー1cから搬出するための搬出ゲート12cが形成されている。各ゲート11c,12cは、例えばゲートバルブによって開閉されて、チャンバー1cと隣り合うチャンバーに対して接続された状態(開状態)と、当該隣り合うチャンバーを遮断密閉する状態(閉状態)との間で切替可能となっている。
【0137】
<プラズマ発生部2c>
プラズマ発生部2cは、処理空間Vにプラズマを発生させる装置であり、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21cを、複数個、備える。この誘導結合型アンテナ21cとして、例えば、上記の各実施の形態に係る誘導結合型アンテナ21,21a,21bの少なくとも一つを用いることができる。図示の例では、第1の実施の形態に係る誘導結合型アンテナ21が、誘導結合型アンテナ21cとして用いられている。この場合、各誘導結合型アンテナ21cは、チャンバー1cの内壁から内向きに突設される。また、チャンバー1cの軸方向(紙面と直交する方向)に沿って複数の誘導結合型アンテナ21cが配列され、当該複数の誘導結合型アンテナ21cが、チャンバー1c内壁の周方向に沿って間隔をあけて、複数組、設けられる。
【0138】
各誘導結合型アンテナ21cには、これに高周波電力を間欠的に供給する高周波電力供給部(図示省略)が接続されている。この構成において、高周波電力供給部から各誘導結合型アンテナ21cに高周波電力が流されると、誘導結合型アンテナ21cの周囲の電界により電子が加速されて、処理空間Vにプラズマが発生する。ここでも、誘導結合型アンテナ21cに高周波電力が供給されることによって、処理空間Vに、電子密度が3×10
10(個/cm
3)以上のプラズマが生成される。
【0139】
ただし、成膜装置10cでも、上記の各実施の形態に係る成膜装置10,10a,10bと同様、高周波電力供給部は、各誘導結合型アンテナ21cに対して、高周波電力を間欠的に供給する(
図6参照)。ここでも、間欠供給の繰り返しの周波数f1は、例えば、2kHz以上、かつ、10kHz以下であることが好ましく、例えば、5kHz程度であることが好ましい。また、1回の高周波電電力の持続時間t1は、例えば、50μs程度であることが好ましい。上述したとおり、ここで用いられる誘導結合型アンテナ21cは、低インダクタンスの誘導結合型アンテナであるため、応答性に優れている。したがって、例えば2〜10kHzという高い繰り返しの周波数f1で、高周波電力を間欠供給しても、これに十分に応答できる。
【0140】
<相対移動部4c>
相対移動部4cは、基材9を、誘導結合型アンテナ21cに対して相対移動させる機構であり、基材9に当接してこれを支持しつつ、基材9を環状の搬送経路に沿って搬送する基材搬送部41cを、備える。基材搬送部41cは、具体的には、例えば、回転体411cと、これを回転させる回転駆動部412cと、を備える。
【0141】
回転体411cは、その軸部410cと直交する断面(水平な断面)が、多角形(あるいは、円形であってもよい)の部材であり、チャンバー1cと同軸に配置される。また、回転体411cは、導電性の材料により形成される。回転体411cの外周壁には、その周方向に沿って複数の支持領域413cが形成されており、各支持領域413cにおいて、1個以上の基材9を支持(例えば、吸着保持)できるようになっている。ただし、基材9は、膜付けの対象面を上側に向けた状態で、各支持領域413cに支持される。
【0142】
回転体411cの軸部410cには、これを回転駆動させる回転駆動部412cが接続される。この構成において、回転体411cに1以上の基材9が支持された状態で、回転体411cが回転駆動されることによって、基材9が、環状の搬送経路に沿って搬送される。すなわち、基材9が、誘導結合型アンテナ21cに対して相対移動される。
【0143】
<電圧印加部5c>
電圧印加部5cは、誘導結合型アンテナ21cへの高周波電力の供給が一時的に停止されている時間帯に、基材9に負の電圧(バイアス電圧)を印加する要素である。ただし、この電圧印加部5cも、上記の各実施の形態に係る電圧印加部5,5bと同様、バイアス電圧のオンとオフとを繰り返して行うものであり、例えば、負極性のパルス電圧を供給するパルス電圧供給部51cを備える。パルス電圧供給部51cは、例えば、DC電源を有するパルス電源を含んで構成することができる。パルス電圧供給部51cは、予め設定されたパラメータによって規定されるパルス波形に応じた負極性のパルス電圧を形成する(
図6参照)。ただし、成膜装置10cでも、上記の各実施の形態に係る成膜装置10,10a,10bと同様、パルス波形の周波数f2は、上述した高周波電力供給部22cから誘導結合型アンテナ21cへ間欠供給される高周波電力の繰り返しの周波数f1と一致する(f1=f2)。また、パルスの持続時間t2は、例えば、1μs程度であることが好ましい。また、負電圧レベルV2は、例えば、5kV以上、かつ、10kV以下であることが好ましく、例えば、10kV程度であることが好ましい。また、電流は100A程度であることが好ましい。
【0144】
この電圧印加部5cは、基材9を搬送する要素である回転体411cを介して、基材9に負の電圧を印加する。具体的には、電圧印加部5cのパルス電圧供給部51cから伸びる導線は、回転体411c(例えば、回転体411cの軸部410c)と接続される。したがって、パルス電圧供給部51cから、回転体411cに負の電圧が印加されると、回転体411cを介して、これに支持されている各基材9に負の電圧が印加され、各基材9の上面(膜付けの対象面)付近に、負の電界が形成される。
【0145】
<2.成膜装置10cにおける処理の流れ>
成膜装置10cにおいて実行される処理の流れは、第1の実施の形態に係る成膜装置10において実行される処理の流れと同様である。
【0146】
すなわち、膜付けの対象物となる基材9が、外部の搬送装置によって成膜装置10cの処理空間Vに搬入されると(ステップS1)、当該搬入された基材9は、膜付けの対象面を上側に向けた状態で、回転体411cの支持領域413cに支持される。また、ガス供給部が、材料ガスである炭化水素ガスを処理空間Vに供給する(ステップS2)。そして、相対移動部4cが、回転体411cを回転させて基材9を環状の搬送経路に沿って搬送し(ステップS3)、その一方で、成膜処理が行われる(ステップS4)。つまり、基材9を搬送しつつ、当該基材9に対する成膜処理が行われる。成膜処理では、誘導結合型アンテナ21cに対する高周波電力の供給(ステップS41)と、基材9に対する負の電圧の印加(ステップS42)とが、交互に繰り返して行われ、これによって、膜付けの対象面にDLC膜が成膜される。基材9が、搬送経路を所定周数だけ周回して膜付けの対象面に所定の膜厚のDLC膜が形成されると、支持領域413cに支持されている基材9が、外部の搬送装置によって処理空間Vから搬出される(ステップS5)。
【0147】
<3.効果>
第4の実施の形態に係る成膜装置10cにおいても、第1の実施の形態に係る成膜装置10と同様の効果を得ることができる。すなわち、成膜装置10cにおいても、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21cに高周波電力を間欠的に供給し、誘導結合型アンテナ21cへの高周波電力の供給が一時的に停止されている時間帯に、基材9に負の電圧を印加するところ、低インダクタンスの誘導結合型アンテナ21cは、高周波電力のオン・オフに、即座に応答できるため、高周波電力の間欠供給の繰り返しの周波数f1、ひいては、基材9に印加する負の電圧の周波数f2を、十分高いものとすることができる。これによって、高い成膜効率で、DLC膜を成膜できる。
【0148】
<V.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0149】
例えば、上記の各実施の形態において、チャンバー1,1cに設けられる誘導結合型アンテナ21,21a,21b,21cの個数は、図示される個数に限られるものではなく、チャンバー1,1cの寸法等に応じて、適宜その個数を選択することができる。
【0150】
また、第1、第2の各実施の形態に係る誘導結合型アンテナ21,21aは、必ずしも一列に配列される必要はなく、マトリクス状、あるいは、千鳥状に配列されてもよい。例えば、Y方向に沿って延在する仮想軸Kを、X方向に間隔をあけて複数個規定し、当該複数の仮想軸Kの各々に沿って、複数の誘導結合型アンテナ21,21aが配列されてもよい。
【0151】
また、第3の実施の形態において、直線棒状の誘導結合型アンテナ21bが、その長尺方向と直交する方向にそって、複数個、配列されてもよい。
【0152】
また、第1の実施の形態において、支持部材搬送部42は、搬送ローラ421とこれを回転駆動する回転駆動部422とを備える構成としたが、支持部材搬送部42は、例えば、複数のローラと、これを回転駆動する回転駆動部と、複数のローラに巻回されたベルトと、を含んで構成されてもよい。この場合、基材9を支持する支持部材41は、ベルト上に載置されて、搬送経路に沿って搬送されることになる。
【0153】
また、第2の実施の形態において、基材搬送部41bは、搬送ローラ411bとこれを回転駆動する回転駆動部412bとを備える構成としたが、基材搬送部41bは、例えば、複数のローラと、これを回転駆動する回転駆動部と、複数のローラに巻回されたベルトと、を含んで構成されてもよい。この場合、基材9は、ベルト上に載置されて、搬送経路に沿って搬送されることになる。また、この場合、ベルトを導電性の材料により形成し、ベルトを介して、基材9に負の電圧を印加すればよい。
【0154】
また、上記の各実施の形態において、電圧印加部5,5b,5cは、パルス波形の負の電圧を供給するものであったが、正弦波形の負の電圧を供給してもよい。
【0155】
また、上記の各実施の形態に係る成膜装置10,10a,10b,10cにおいて、処理空間Vに供給される材料ガスには、必要に応じて、N、F、Si、Ti等の元素、あるいは、これらの元素の化合物等が、ドーパントとして含まれていてもよい。
【0156】
また、上記の各実施の形態に係る成膜装置10,10a,10bは、所謂、インライン型のプラズマ処理装置(具体的には、例えば、直線状の搬送経路に沿って基材を搬送する搬送部を備え、当該搬送経路に沿って、ロードロックチャンバー、前処理チャンバー、成膜チャンバー、後処理チャンバー、および、アンロードロックチャンバーが設けられたプラズマ処理装置)に搭載されてもよい。
【0157】
また、上記の各実施の形態に係る成膜装置10,10a,10b,10cにおいて、基材9を加熱する加熱部を設けてもよい。もっとも、加熱部を設けることは必須の要件ではない。すなわち、成膜装置10,10a,10b,10cにおいては、上述したとおり、高周波電力の間欠供給の繰り返しの周波数f1、ひいては、基材9に印加する負の電圧の周波数f2を、十分高いものとすることができるので、基材9の加熱を行わなくとも、高い成膜効率で、DLC膜を成膜できる。また、成膜装置10,10a,10b,10cにおいては、上述したとおり、処理空間V内に、高密度のプラズマが発生し、高エネルギーの炭素ラジカル82が生成されるので、基材9の加熱を行わなくとも、適切にDLC膜を生成することができる。
【0158】
また、上記の各実施の形態に係る成膜装置10,10a,10b,10cが備える各要素は、別の実施の形態に係る成膜装置10,10a,10b,10cが備える各要素と組み合わされてもよい。例えば、第1の実施の形態に係るプラズマ発生部2、あるいは、第2の実施の形態に係るプラズマ発生部2aに、第3の実施の形態に係る相対移動部4bおよび電圧印加部5bが、組み合わされてもよい。また例えば、第3の実施の形態に係るプラズマ発生部2bに、第1の実施の形態に係る相対移動部4および電圧印加部5bが、組み合わされてもよい。
【0159】
また、上記の各実施の形態においては、プラズマ処理装置100にて、基材9に対して、前処理、成膜処理、および、後処理がこの順に行われていたが、前処理と後処理とは必ずしも必須ではない。プロセス設計によっては、前処理および後処理のうちの少なくとも一方の処理が省略されてもよい。