(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234868
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20171113BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20171113BHJP
H02P 3/18 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B29C45/17
H02P27/06
H02P3/18 101B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-74524(P2014-74524)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-196292(P2015-196292A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2016年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 康介
(72)【発明者】
【氏名】水野 博之
【審査官】
川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−110936(JP,A)
【文献】
実開平05−004787(JP,U)
【文献】
特開平05−227759(JP,A)
【文献】
特開2010−074918(JP,A)
【文献】
実開平04−118794(JP,U)
【文献】
特開2013−027987(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0102770(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
H02P 3/18,27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
該モータの駆動回路と、
電源からの交流電力を直流電力に変換して前記駆動回路に供給する第1電力変換部、および前記駆動回路からの回生電力を交流電力に変換して前記電源に供給する第2電力変換部とを並列に有するコンバータ装置と、
前記第1電力変換部から前記駆動回路まで延びる第1直流電源ライン、および第1直流電源ラインの途中から前記第2電力変換部まで延びる第2直流電源ラインと、
前記第1直流電源ラインに設けられ電流を検出する第1電流検出器、および前記第1直流電源ラインに設けられ電圧を検出する第1電圧検出器と、
前記電源から前記第1電力変換部まで延びる第1交流電源ライン、および前記第1交流電源ラインの途中から前記第2電力変換部まで延びる第2交流電源ラインと、
前記第2交流電源ラインに設けられ電流を検出する第2電流検出器、および前記第2交流電源ラインに設けられ電圧を検出する第2電圧検出器と、
前記第1電流検出器の検出結果および前記第1電圧検出器の検出結果とに基づき前記電源から前記第1電力変換部に供給される第1電力を算出すると共に、前記第2電流検出器の検出結果および前記第2電圧検出器の検出結果とに基づき前記第2電力変換部から前記電源に供給される第2電力を算出する算出器とを備える、射出成形機。
【請求項2】
前記算出器は、前記第1電力を算出すると共に前記第2電力を算出し、且つ前記第1電力と前記第2電力との差分を算出する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記算出器の算出結果を表示する表示装置を備える、請求項1または2に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型装置の型閉、型締、型開を行う型締装置、金型装置内に成形材料を充填する射出装置、および金型装置から成形品を突き出すエジェクタ装置などを有する。型締装置や射出装置、エジェクタ装置は、モータを有する。
【0003】
射出成形機は、電源からの交流電力を直流電力に変換するコンバータ装置、コンバータ装置からの直流電力を交流電力に変換して各種モータに供給するインバータ装置、コンバータ装置とインバータ装置とを接続するDCリンクを備える。
【0004】
コンバータ装置は、電源からの交流電力を直流電力に変換してインバータ装置に供給する第1電力変換部、およびインバータ装置からの回生電力を交流電力に変換して電源に供給する第2電力変換部とを並列に有する(例えば特許文献1参照)。回生電力を回収し、再利用することができ、モータのエネルギー効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−027987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1電力変換部と第2電力変換部とが並列に接続される場合に、モータのエネルギー効率が不明であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、モータのエネルギー効率がわかる、射出成形機の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
モータと、
該モータの駆動回路と、
電源からの交流電力を直流電力に変換して前記駆動回路に供給する第1電力変換部、および前記駆動回路からの回生電力を交流電力に変換して前記電源に供給する第2電力変換部とを並列に有するコンバータ装置と、
前記第1電力変換部から前記駆動回路まで延びる第1直流電源ライン、および第1直流電源ラインの途中から前記第2電力変換部まで延びる第2直流電源ラインと、
前記第1直流電源ラインに設けられ電流を検出する第1電流検出器、および前記第1直流電源ラインに設けられ電圧を検出する第1電圧検出器と、
前記電源から前記第1電力変換部まで延びる第1交流電源ライン、および前記第1交流電源ラインの途中から前記第2電力変換部まで延びる第2交流電源ラインと、
前記第2交流電源ラインに設けられ電流を検出する第2電流検出器、および前記第2交流電源ラインに設けられ電圧を検出する第2電圧検出器と、
前記第1電流検出器の検出結果および前記第1電圧検出器の検出結果とに基づき前記電源から前記第1電力変換部に供給される第1電力を算出すると共に、前記第2電流検出器の検出結果および前記第2電圧検出器の検出結果とに基づき前記第2電力変換部から前記電源に供給される
第2電力を算出する算出器とを備える、射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、モータのエネルギー効率がわかる、射出成形機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による射出成形機の電気回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形機の電気回路を示す図である。射出成形機は、モータ10、駆動回路としてのインバータ装置20、DCリンク30、コンバータ装置40、コントローラ80、および表示装置90などを備える。
【0013】
モータ10は、型締モータ、射出モータ、計量モータ、エジェクタモータなどのいずれでもよい。型締モータは、固定プラテンに対して可動プラテンを進退させ、金型装置の型閉、型締、型開を行う。金型装置は例えば固定金型と可動金型とで構成され、固定金型が固定プラテンにおける可動プラテンとの対向面に取り付けられ、可動金型が可動プラテンにおける固定プラテンとの対向面に取り付けられる。射出モータは、加熱シリンダ内に配設されるスクリュを前進させることにより、スクリュ前方の成形材料を加熱シリンダから射出させ金型装置内に充填させる。計量モータは、加熱シリンダ内に配設されるスクリュを回転させることにより、スクリュに形成される螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送り、スクリュ前方に成形材料を溜める。加熱シリンダ内にはスクリュの代わりにプランジャが配設されてもよく、モータ10はプランジャを進退させるものでもよい。エジェクタモータは、金型装置内の可動部材を進退させ、金型装置から成形品を突き出す。
図1では、モータ10の数が1つであるが、複数でもよい。
【0014】
尚、モータ10の数が複数の場合、インバータ装置20、DCリンク30、コンバータ装置40からなる電力変換ユニットが複数設けられてもよいが、1つのみ設けられ、複数のモータ10が並列に接続されてもよい。
【0015】
インバータ装置20は、DCリンク30やコンバータ装置40からの直流電力を交流電力に変換してモータ10に供給する。インバータ装置20は、例えば2つのスイッチング素子で構成されるレグを3つ有する。尚、レグの数は特に限定されない。スイッチング素子の具体例としては、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Filed-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなどが挙げられる。各スイッチング素子に対して逆並列にダイオードが接続される。ダイオードは、各スイッチング素子に内蔵されてもよい。モータ10の減速時に生じる回生電力は、ダイオードを介してコンバータ装置40やDCリンク30に供給される。
【0016】
DCリンク30は、2本の直流電源ライン31、およびコンデンサ35を含む。2本の直流電源ライン31は、インバータ装置20とコンバータ装置40とを接続する。各直流電源ライン31は、分岐点において直流電源ライン31−1と直流電源ライン31−2とに分岐する。一方の直流電源ライン31−1はコンバータ装置40に備えられる第1電力変換部41と接続され、他方の直流電源ライン31−2はコンバータ装置40に備えられる第2電力変換部42と接続される。コンデンサ35は、2本の直流電源ライン31間の直流電圧(以下、DCリンク電圧と呼ぶ)を平滑化させる。
【0017】
コンバータ装置40は、第1電力変換部41および第2電力変換部42を並列に有する。第1電力変換部41は、電源12からの交流電力を直流電力に変換して、インバータ装置20やDCリンク30に供給する。第1電力変換部41は、例えば3相ブリッジ回路であり、6つのダイオードを含む。
【0018】
第2電力変換部42は、インバータ装置20からの回生電力を交流電力に変換して電源12に供給する。第2電力変換部42は、例えば2つのスイッチング素子で構成されるレグを3つ有する。尚、レグの数は特に限定されない。各スイッチング素子に対して逆並列にダイオードが接続される。ダイオードは、各スイッチング素子に内蔵されてもよい。
【0019】
第2電力変換部42は、第1電力変換部41と同様に6つのダイオードを含むため、電源12からの交流電力を直流電力に変換して、インバータ装置20やDCリンク30に供給することも可能である。
【0020】
交流電源ライン61は、電源12とコンバータ装置40とを接続する。各交流電源ライン61は、分岐点において交流電源ライン61−1と交流電源ライン61−2とに分岐する。一方の交流電源ライン61−1は第1電力変換部41と接続され、他方の交流電源ライン61−2は第2電力変換部42と接続される。
【0021】
コントローラ80は、メモリなどの記憶部およびCPU(Central Processing Unit)を有し、記憶部に記憶される制御プログラムをCPUに実行させることにより、コンバータ装置40、インバータ装置20を制御する。
【0022】
コントローラ80は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御を行うためのPWM信号を生成し、インバータ装置20に出力する。インバータ装置20の各スイッチング素子は、コントローラ80からのPWM信号に従ってスイッチングし、モータ10を駆動する。
【0023】
モータ10の減速時には、モータ10の誘導起電力によって回生電力が生じる。回生電力は、インバータ装置20を介してDCリンク30などに供給され、コンデンサ35に充電される。その結果、DCリンク電圧が上昇する。一方、モータ10の加速時や定速時に、コンデンサ35が放電されると、DCリンク電圧が低下する。DCリンク電圧は電圧検出器36によって検出できる。電圧検出器36は、DCリンク電圧を示す信号をコントローラ80に出力する。
【0024】
コントローラ80は、DCリンク電圧を監視しており、DCリンク電圧が第1閾値を超えると、PWM信号などの制御信号を生成し、第2電力変換部42に出力する。第2電力変換部42の各スイッチング素子は、コントローラ80からの制御信号に従ってスイッチングし、回生電力を交流電力に変換して電源12に供給する。回生電力を回収して再利用することができ、モータ10のエネルギー効率を高めることができる。また、コンデンサ35の過充電を抑制することができ、コンデンサ35の損傷を抑制することができる。電源回生によってコンデンサ35が放電され、DCリンク電圧が第2閾値(第2閾値≦第1閾値)以下になると、コントローラ80は第2電力変換部42の回生動作を停止させ、コンデンサ35の放電を停止させる。
【0025】
尚、第2電力変換部42の制御は、PWM制御でなくてもよく、例えば120°通電制御などでもよい。
【0026】
コントローラ80は、電源12から第1電力変換部41に供給される電力P1を算出する。例えばコントローラ80は、電流検出器81と電圧検出器36とを用いて電力P1を算出する。電流検出器81は、第1電力変換部41と接続される直流電源ライン31−1の電流値Iを検出する。電圧検出器36は、DCリンク電圧Vdcを検出する。電力P1は、P1=I×Vdcの式から算出できる。
【0027】
また、コントローラ80は、第2電力変換部42から電源12に供給される電力P2を算出する。例えばコントローラ80は、電流検出器88と電圧検出器89とを用いて電力P2を算出する。電流検出器88は、各相の交流電源ライン61−2の電流を検出する。電圧検出器89は、各相の交流電源ライン61−2の電圧を検出する。相電圧から線間電圧が算出できる。
【0028】
コントローラ80は、例えばP2=Vuv×Iu+Vwv×Iwの式を用いて電力P2を算出してよい。ここで、VuvはV相を基準にしたU相の線間電圧、VwvはV相を基準にしたのW相の線間電圧、IuはU相の電流、IwはW相の電流である。尚、基準の相は、本実施形態ではV相であるが、U相またはW相でもよい。
【0029】
コントローラ80は、P2=3×k×Vr×Idの式を用いて電力P2を算出してもよい。Idは2相(例えばU相とV相)の電流をd−q変換して算出されるd軸電流成分、Vrは各相の電圧値から求められる電源電圧、kはd軸電流成分から線電流への換算ゲインである。
【0030】
コントローラ80は、電力P1と電力P2との差分ΔP(ΔP=P1−P2)を算出してよい。電力P1と電力P2との差分ΔPからシステム全体のエネルギー消費量がわかり、モータ10のエネルギー効率がわかる。
【0031】
尚、本実施形態ではコントローラ80が電力P2などを算出する算出器の役割を果たすが、算出器はコントローラ80とは別に設けられてもよい。
【0032】
表示装置90は、コントローラ80による制御下で、コントローラ80の算出結果(例えば電力P1、電力P2、差分ΔPなど)を表示してよい。表示装置90は、ユーザの入力操作を受け付ける入力部としての機能を有してもよく、タッチパネルなどで構成されてもよい。
【0033】
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 モータ
20 インバータ装置
30 DCリンク
31 直流電源ライン
35 コンデンサ
40 コンバータ装置
41 第1電力変換部
42 第2電力変換部
80 コントローラ
90 表示装置