(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
[現像ローラー]
本実施形態に係る現像ローラーは、導電性基材の表面を樹脂層で被覆した現像ローラーであり、前記樹脂層が、導電性微粒子とバインダー樹脂としての可溶性ナイロンとを含み、前記樹脂層表面の表面粗さRaが0.4μm以上、うねり曲線の周期が50〜400μm、高さが2〜10μmであることを特徴とする。
【0024】
以下に、図面を参照しながら、本実施形態に係る現像ローラーについて説明する。なお、本明細書において用いられる「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を表す用語は、単に説明の明瞭化を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0025】
図1は、本実施形態に係る現像ローラー61の概略構成図である。
図1(a)は、現像ローラー61の一例の断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す現像ローラー61の斜視図であり、
図1(c)は、現像ローラー61の他の一例の断面図であり、
図1(d)は、
図1(c)に示す現像ローラー61の斜視図である。
【0026】
まず、
図1(a)に示す現像ローラー61について説明する。前記現像ローラー61は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、円筒状の回転スリーブ13と、この回転スリーブ13に内包される固定軸15とからなり、この固定軸15の位置が固定された状態でその周囲を前記回転スリーブ13が回転する構成となっている。
【0027】
前記回転スリーブ13は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、基材19上に樹脂層18が被覆されている。基材19は、例えば、アルミニウムやスレンレス鋼等によって構成された円筒状部材である。また、前記固定軸15は、現像ユニット20に軸支されるシャフト22に、複数個のリブ28によって連結されている。
【0028】
ここで、本実施形態における現像ローラーの導電性基材の表面を被服する樹脂層18は、基本構成として、少なくとも、導電性微粒子とバインダー樹脂としての可溶性ナイロンとを含む。
【0029】
本実施形態の樹脂層18を構成するバインダー樹脂は、可溶性ナイロンである。可溶性ナイロン樹脂としては、共重合ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン樹脂、重合脂肪酸ナイロン樹脂、などが挙げられる。可溶性ナイロン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような可溶性ナイロン樹脂をバインダー樹脂として使用することによって、低コストかつデバイス設計が容易という利点がある。
【0030】
前記樹脂層18は、上述した可溶性ナイロン樹脂以外のその他の樹脂をバインダー樹脂としてさらに含有してもよい。その他の樹脂としては、公知のバインダー樹脂を用いることができる。具体的には、ビスフェノールZ型、ビスフェノールZC型、ビスフェノールC型、ビスフェノールA型等のポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等が挙げられる。その他の樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
樹脂層18中の樹脂の含有量は、通常、樹脂層18を構成する材料全体に対し、通常、25〜80質量%、溶液粘度にも依存するので一概には言えないが、好ましくは、35〜70質量%である。
【0032】
また、本実施形態の樹脂層18には導電性微粒子が含まれる。導電性微粒子を含有することで、所望の抵抗値に調整することができる。
【0033】
導電性微粒子としては、金属または金属酸化物、カーボンの微粒子などが挙げられ、具体的には、アルミニウム、鉄、銅、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられる。中でも、酸化チタンが好ましい。また、酸化チタンを用いる場合、アルミナおよびシリカ等で表面処理され、さらにシリコーン等で表面処理されたものを用いてもよい。
【0034】
導電性微粒子は、平均一次粒子径が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは10〜100nmである。平均一次粒子径が500nmを越えると、感光体間で導電性微粒子を起点とし、リークが発生するおそれがある。
【0035】
樹脂層18の厚さは、特に限定はされないが、2〜20μm程度であることが好ましく、3〜15μm程度がより好ましい。厚さが2μm未満であると、耐久で削れた場合に寿命をまっとうしない場合があり、一方、20μmを超えると、膜中に電荷が溜まる傾向があるため好ましくない。
【0036】
樹脂層18における導電性微粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して
20〜300質量部が好ましく、40〜200質量部がより好ましい。
【0037】
本実施形態においては、上述したようなバインダー樹脂および導電性微粒子以外に、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の成分(例えば、レベリング剤 など)がさらに樹脂層18に含まれていてもよい。また、その他必要に応じて種々の添加剤をさらに適量添加することも可能である。
【0038】
次に、
図1(c)に示す現像ローラー61について説明する。前記現像ローラー61は、
図1(c)及び
図1(d)に示すように、ローラー本体24と、ローラー本体24の表面上に被覆された樹脂層23とを含む。ローラー本体24は、ローラー本体24の両端に勘合されたフランジ(ベアリング入り)によって、シャフト25に対して回転自在に軸支されている。そして、一端側のフランジにはギアが設けられていて外部からの駆動力を受ける。ローラー本体24は、例えば、アルミニウム製やステンレス鋼製のいわゆる三ツ矢管等である。樹脂層23は、前記樹脂層18と同様のものを使用できる。
【0039】
上述したような現像ローラー61の製造方法については特に限定はないが、例えば、
図1(a)に示す現像ローラー61の場合、例えば、まず樹脂層18を層形成する方法としては、上記バインダー樹脂と上記導電性微粒子と、さらに必要に応じてその他の添加剤を含有する樹脂組成物を溶媒に混合して得られる樹脂塗布剤を、現像ローラーの基材19の表面に塗布し、加熱する方法などを用いることができる。
【0040】
また、
図1(c)に示す現像ローラー61の場合、例えば、前記樹脂塗布剤をローラー本体24上に塗布し、加熱する。そうすることによって、ローラー本体24上に樹脂層23が形成され、前記現像ローラー61が製造される。
【0041】
さらに、本実施形態において、樹脂塗布剤に使用する溶媒は、アルコール系溶媒と非水系溶媒とからなる溶媒であることが好ましく、前記非水系溶媒の全溶媒に対する配合割合が30%以上であることが望ましい。このような溶媒を含む樹脂塗布剤を使用することによって、コストをかけることなく、所望の形状の表面粗さを有する現像ローラーを得ることができ、優れた現像性を達成することができる。特に、現像ゴーストなどの悪影響を及ぼすこともより確実に防ぐことができる。
【0042】
アルコール系溶媒としては、特に限定はされないが、メタノール、エタノール、ブタノール等が例示される。
【0043】
非水系溶媒としては、特に限定はされないが、キシレン、トルエン、クロロベンゼンジクロロエタン等の有機溶媒が例示される。
【0044】
アルコール系溶媒と非水系溶媒との配合割合は、非水系溶媒の全溶媒に対する配合割合が30%以上となるように調整することが好ましく、さらには、非水系溶媒の全溶媒に対する配合割合が33%以上となるように調整することが好ましい。
【0045】
このような溶媒を樹脂組成物に添加する際、その添加量は、前記導電性微粒子が分散した状態の樹脂塗布剤において、固形分濃度が10〜50質量%程度となるように調整することが好ましい。
【0046】
前記樹脂組成物や樹脂溶液を塗布する方法としては、従来公知の方法を使用することもできるが、樹脂液中に樹脂層のない現像ローラーをディップ液に浸漬するディップ法を採用することが好ましい。それにより、安定的に均一な塗布品を安価に作製できるという利点がある。
【0047】
また、樹脂塗布剤を塗布した後の加熱温度としては、例えば、70〜150℃であることが好ましく、加熱時間としては、例えば、30〜60分間であることが好ましい。
【0048】
このようにして得られた本実施形態の現像ローラーは、樹脂層表面の表面粗さRaが0.4μm以上、うねり曲線の周期が50〜400μm、高さが2〜10μmとなっている。
【0049】
ここで、うねり曲線の周期および高さとは、
図2に示されるようなうねり形状の周期と高さを指す。このような形状を有する樹脂層の表面粗さは、微粒子を添加することによって生じさせる粗さとは形状が異なる。
【0050】
より具体的には、
図3に示されるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)微粒子(中心粒径8μm)やポリエチレン微粒子(中心粒径14μm)を樹脂層(ナイロン6、66、610、12 4元共重合樹脂)に添加することによって得られる表面粗さの形状と、
図4に示される本実施形態の樹脂層の粗さ形状(
図4、左図)とを比較すれば、明らかに形状が異なることからも理解できる。微粒子を添加することによって得られる表面粗さは、本実施形態の樹脂層が有するようなうねり曲線を有していない。
【0051】
また、本実施形態において、塗布剤の溶媒を調整することによって得られる樹脂層の表面粗さ形状は、従来品(本発明の範囲外となる樹脂層(非水系溶媒比率17%品))の表面形状(
図4、右図)とも明らかに異なっている。
【0052】
本実施形態のように現像ローラーの表面が特定の形状を有することによって、余分な微粒子を添加することによって生じる樹脂帯電列などの影響を抑制し、現像ゴーストなどの悪影響を及ぼすこともより確実に防ぐことができる。例えば、PTFE微粒子等のフッ素系樹脂微粒子では帯電列がマイナス側にあり、正帯電トナーの帯電とは逆になっているため、悪影響が起こると推測される。
【0053】
また、本実施形態においては、現像ローラーの有する表面粗さが、基材の表面粗さに由来するものではないことが好ましい。すなわち、前記現像ローラーにおいて、前記導電性基材19の表面粗さがRa0.6μm以下であることが好ましい。このように、現像ローラーの有する表面粗さが、基材の表面粗さに由来するものではないことによって、低コストであり、かつ、製造時の調整が容易であるという利点がある。現像ローラーの製造において、樹脂層となる樹脂液を表面に塗布する工程を経るが、その塗布時のコントロールが容易になるためである。塗布によって基材の表面粗さはそのまま反映されるのではなく、一般に平滑化される傾向がある。よって、基材の表面粗さでローラーの表面粗さを調整しようとすると、塗布液の粘度や塗布膜厚の管理が難しいという難点がある。
【0054】
[現像装置]
次に、本発明の実施形態に係る現像ユニット(現像装置)20について説明する。本発明の実施形態に係る現像装置は、いわゆるタッチダウン方式の現像装置であり、上述した現像ローラーを備えたものであれば特に限定されないが、例えば、
図8に示すような現像装置である。すなわち、像担持体の表面に形成された静電潜像をトナー像として顕像化させる現像装置であって、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤を表面上に担持して、担持した2成分現像剤を搬送する磁気ローラーと、前記像担持体及び前記磁気ローラーのそれぞれに対向して配置され、前記磁気ローラーによって搬送された2成分現像剤と接触又は近接して、前記2成分現像剤中のトナーを表面上に担持して、担持したトナーを前記像担持体の近傍まで搬送する現像ローラーとを備える現像装置である。そして、前記現像ローラーとして、少なくとも表面部が酸化チタン粒子と樹脂とを含有する樹脂層で構成されるローラーを用いることを特徴とするものである。
【0055】
図8は、前記現像装置20を示す概略断面図であり、感光体ドラム301とともに図示している。
【0056】
前記現像装置20は、タッチダウン現像方式の現像装置であり、現像ローラー61、磁気ローラー62、撹拌ローラー63,64、及びブレード65等を備える。
【0057】
撹拌ローラー63,64は、らせん状羽根を有しており、互いに逆方向に2成分現像剤を搬送しながら攪拌して、2成分現像剤のトナーを帯電させる。さらに、撹拌ローラー63は、帯電させたトナーとキャリアとを含む2成分現像剤を磁気ローラー62に供給する。
【0058】
磁気ローラー62は、内部に固定配置された磁石によって2成分現像剤を吸着させて、2成分現像剤を搬送する。その際、2成分現像剤は、磁気ローラー62の内部の磁石によって磁気ブラシとなっており、ブレード65と磁気ローラー62との間を磁気ブラシが通過する際に、磁気ブラシの厚さが規制される。そして、現像ローラー61の近傍まで搬送された2成分現像剤中のトナーが、現像ローラー61と磁気ローラー62との間に印加した電圧によって、現像ローラー61に移行する。
【0059】
現像ローラー61は、磁気ローラー62から移行されたトナーを、表面に担持して搬送する。そして、感光体ドラム301の近傍まで搬送されたトナーが、感光体ドラム301と現像ローラー61との間の電位差が所定条件を満たした時、感光体ドラム301に移行する。
【0060】
以上の動作によって、現像装置20は、感光体ドラム301上に形成されている静電潜像に基づく現像を行う。
【0061】
[画像形成装置]
次に、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、上述したような現像装置と像担持体とを備えるものであれば特に限定はされないが、本発明の実施形態に係る現像装置が適用された画像形成装置として、
図6に示す複写機60を例に挙げて説明する。なお、
図6は、本発明の実施形態に係る現像装置が適用された画像形成装置(複写機)の構成を示す概略図である。この複写機60は、複写機本体の下部に配設された給紙部200と、この給紙部200の上方に配設された画像形成部300と、この画像形成部300よりも排出側に配設された定着部400と、複写機本体の上部に配設された画像読取部500と、複写機本体と画像読取部500との間に配置された排紙部600とを含む、いわゆる胴内排紙型の複写機である。なお、複写機本体には、前記給紙部200、前記画像形成部300、前記定着部400、及び前記排紙部600を繋ぐ用紙搬送部100が備えられている。
【0062】
前記画像形成部300は、電子写真方式によって用紙に所定のトナー像を形成するものであり、回転可能に軸支された感光体ドラム301と、この感光体ドラム301の周囲にその回転方向Aに沿って、帯電ユニット302と、露光ユニット303と、現像ユニット(現像装置)20と、転写ユニット305と、クリーナー306とを備えている。現像ユニット20は、静電潜像をトナーにより現像して、感光体ドラム301の表面にトナー像を形成するものである。
【0063】
前記定着部400は、前記画像形成部300の用紙搬送方向の下流側に配置され、前記画像形成部300においてトナー像が転写された用紙を、一対のローラー(加熱ローラー401及び加圧ローラー402)によって挟んで加熱し、用紙上にトナー像を定着させるものである。また、ここでいう「用紙」という用語は、例えば、上質普通紙、プリント専用紙、コピー用紙、トレーシングペーパ、厚紙、OHPシート等、画像を形成することが可能なあらゆる記録媒体を意味する。
【0064】
前記画像読取部500は、不図示のコンタクトガラス上に載置された原稿に、露光ランプから光を照射し、その反射光を反射鏡を介して光電変換部に導くことにより、原稿の画像情報を読み取るものである。
【0065】
前記給紙部200は、複数の給紙カセット201,202,221を備える。このうちの給紙カセット221は、複写機側面から用紙を補充するバイパストレイとなっており、蓋部222により閉じることができる。
【0066】
それぞれの給紙カセット201,202,221には用紙搬送路110が接続され、この用紙搬送路110は、画像形成部300に向かい、さらに定着部400を経て排紙部600に向かっている。これらの用紙搬送路110により前記用紙搬送部100が構成されている。また複写が完了した用紙は、排紙部600の排出ローラー対605から排出トレイ610上に排出される。
【0067】
図7は、前記複写機60の画像形成部300周辺を示す模式図である。前記画像形成部300は、電子写真プロセスによって記録紙115に所定のトナー像を形成する部分であり、感光性を有する感光体ドラム301の周囲に、感光体ドラム301の回転方向Aに沿って順に、帯電ユニット302、露光ユニット303、現像ユニット20、転写ユニット305、除電ユニット307、及びクリーニングユニット306を備えている。なお、前記除電ユニット307と前記クリーニングユニット306とが逆の配置であっても良い。
【0068】
前記帯電ユニット302は、コロナ放電を発生させることによって感光体ドラム301の表面に所定電位を与えるものである。前記露光ユニット303は、所望の画像に対応する光を照射することにより感光体ドラム301の表面電位を選択的に減衰させて静電潜像を形成するものである。前記現像ユニット20は、感光体ドラム301の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像して、トナー像を形成するものであって、後述する、いわゆるタッチダウン方式の現像装置である。前記転写ユニット305は、感光体ドラム301上に形成されたトナー像を記録紙115上に転写するものである。前記除電ユニット307は、感光体ドラム301の残留表面電荷をランプ光によって除電するものである。前記クリーニングユニット306は、ファーブラシ316とゴムブレード326とにより構成されており、感光体ドラム301の表面に残留したトナーやその添加剤等を除去するものである。なお、図示例のクリーニングユニット306は、ファーブラシ316とゴムブレード326との両方を有するが、一方のみを有するクリーニングユニット306の場合もある。
【0069】
前記画像形成部300でトナー像が転写された記録紙115は、定着部400(加熱ローラー401及び加圧ローラー402)により熱と圧力とが加えられてトナー像が定着され、その後排紙ローラー(図示せず)によって排紙トレイ上に排出されるようになっている。
【0070】
以上、具体的な画像形成装置として、複写機を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、電子写真方式を利用した画像形成装置であれば、ファクシミリ装置、及びプリンタ等であってもよい。
【0071】
また、像担持体として、ドラム状の感光体である感光体ドラムを例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、ベルト状の感光体、及びシート状の感光体等に対しても適用できる。
【0072】
さらに、前記画像形成装置は、用紙に直接トナー像を転写する装置であったが、このような画像形成装置に限定されない。例えば、
図8に示すような、複数色のトナー像を中間転写ベルトに、一旦転写して、その中間転写ベルトに転写された複数色のトナー像を用紙に転写する、いわゆるタンデム方式のカラー画像形成装置であってもよい。
【0073】
図8は、本発明の実施形態に係る現像装置が適用された、他の画像形成装置の構成を示す概略図である。
【0074】
この画像形成装置1は、
図8に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、前記機器本体1aの上面には、前記定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0075】
前記給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラー122、給紙ローラー123,124,125、及びレジストローラー対126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラー122は、給紙カセット121の
図6に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー123,124,125は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラー対126は、給紙ローラー123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間の2次転写ニップに供給する。
【0076】
また、給紙部2は、機器本体1aの
図6に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラー127とをさらに備えている。このピックアップローラー127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラー対126によって、所定のタイミングで2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間の2次転写ニップに供給される。
【0077】
前記画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピュータ等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット21から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラー32とを備えている。
【0078】
前記画像形成ユニット7は、上流側(
図8では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての感光体ドラム301が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体ドラム301の周囲には、帯電器39、露光装置38、現像装置(現像ユニット)20、不図示のクリーニング装置及び除電器等が、感光体ドラム301の回転方向上流側から順に各々配置されている。
【0079】
帯電器39は、矢符方向に回転されている感光体ドラム37の周面を均一に帯電させる。帯電器39としては、例えば、非接触型放電方式のコロトロン型およびスコロトロン型の帯電器、接触方式の帯電ローラーおよび帯電ブラシ等が挙げられる。露光装置38は、いわゆるレーザ走査ユニットであり、帯電器39によって均一に帯電された感光体ドラム301の周面に、画像読取装置等から入力された画像データに基づくレーザ光を照射し、感光体ドラム301上に画像データに基づく静電潜像を形成する。前記現像ユニット20は、感光体ドラム301の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像して、トナー像を形成するものであって、後述する、いわゆるタッチダウン方式の現像装置である。そして、このトナー像が中間転写ベルト31に1次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面に残留しているトナーを清掃する。除電器は、1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清浄化処理された感光体ドラム37の周面は、新たな帯電処理のために帯電器へ向かい、新たな1次転写が行われる。
【0080】
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体ドラム301の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び一次転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各感光体ドラム301と対向配置された一次転写ローラー36によって感光体ドラム301に押圧された状態で、前記駆動ローラー33によって無端回転するように構成されている。駆動ローラー33は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び一次転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
【0081】
1次転写ローラー36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各感光体ドラム37上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム37と1次転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
【0082】
2次転写ローラー32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間の2次転写ニップで用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
【0083】
前記定着部4は、2次転写ニップで用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラー41と、この加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される加圧ローラー42とを備えている。
【0084】
そして、前記2次転写ニップで2次転写ローラー32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態の画像形成装置1では、定着部4と排紙部5との間に適所に搬送ローラー対6が配設されている。
【0085】
排紙部5は、画像形成装置1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0087】
試験例1.
(現像ローラーの製造)
用いた材料:
樹脂:可溶性ナイロン樹脂(東レ社製、「CM8000」(製品名))
導電性微粒子:酸化チタン「ET300W」(製品名)、石原産業社製、一次平均粒子径30〜60nm
[実施例1〜4]
まず、実施例に係る現像ローラーの製造方法を以下に示す。
【0088】
現像ローラーとしては、
図1(a)及び
図1(b)に示すような、表面に樹脂層を備えた現像ローラーを作製した。
【0089】
具体的には、まず、可溶性ナイロン樹脂100質量部と導電性微粒子75質量部とを、固形分濃度15質量%となるように、下記表2に示すような割合で配合したアルコール系溶媒(メタノール)と非水系溶媒(トルエン)からなる溶媒に72時間ボールミルで混合し、樹脂塗布剤を得た。なお、表2中の各溶媒の数値は、比率を示す。
【0090】
次に、最終的に得られる樹脂層の層厚が5μmとなるように、直径20mmのアルマイト製のスリーブを、上記樹脂塗布剤にディッピング塗布することによって、基材上に樹脂層を形成した。
【0091】
その後、120℃で60分加熱乾燥させた。そうすることによって、表面部が樹脂層で構成された、実施例1〜4に係る現像ローラーが得られた。
【0092】
[比較例1〜5]
溶媒を使用しなかったこと(比較例1)あるいは、溶媒中のアルコール系溶媒と非水系溶媒の配合比を表2に示すような割合に変更したこと以外、実施例1と同様にして現像ローラーを製造した。
【0093】
(評価)
上記実施例および比較例で得られた現像ローラーを用いて、下記表1に示す実機実験条件によって現像性の評価試験を行った。
【0094】
【表1】
(現像特性1:現像ゴースト評価)
白紙にべた黒の後にグレー画像を施した原稿を出力し、残像を
図9に示す基準で目視により評価した。
【0095】
(現像特性2:ベタ濃度)
分光光度計 スペクトロアイ(SpectroEye)を使用して、ベタ濃度を測定した。なお、ベタ濃度は1.5〜1の範囲を良好な範囲とする。
【0096】
(表面粗さ、うねりの周期および高さ)
表面粗さ、うねりの周期および高さは、Vecco社製 Wyko NT1100、Optical Profiling System(3次元干渉縞顕微鏡)によって測定した。
【0097】
以上の結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
また、
図10に、実施例1〜4および比較例1〜5における、現像ローラーの表面粗さRaと非水系溶媒比率の関係を、
図11に、実施例1〜4および比較例1〜5における、現像ローラーの表面粗さとベタ濃度の関係を示す。
【0099】
以上の結果より明らかなように、現像ローラーの表面粗さおよびその形状が本発明の範囲であれば、優れた現像特性を発揮できる現像ローラーとなることがわかった。一方、現像ローラーの表面粗さが0.4μm未満であり、粗さの形状も本発明の範囲から外れていた比較例(なお、比較例1〜4では、うねりが生じていないため、高さおよび周期は測定不可)では、ベタ濃度も低下し、現像ゴーストも発生していた。これは、スリーブとトナーの接触面積が大きいため、スリーブとトナーの電気的な付着力大きくなり、トナーが感光体に所望量飛ばないであるためと考えられる。
【0100】
また、溶媒中の非水系溶媒の配合割合によって、現像ローラーの表面粗さおよびその形状を本発明の範囲へと調整し得ることもわかった(
図10等参照)。
【0101】
試験例2.
[実施例5〜10および比較例6〜8]
樹脂塗布剤における溶媒について、アルコール系溶媒と非水系溶媒の種類および配合割合を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラーを製造した。そして、試験例1と同様の現像性評価を行った。結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
表3によって、様々なアルコール系溶媒と非水系溶媒との組み合わせを樹脂塗布剤の溶媒として使用しても、現像ローラーの表面粗さおよびその形状を本発明の範囲とすることができれば、優れた現像特性を発揮できる現像ローラーとなることがわかった。
【0103】
[比較例9]
上述の比較例4で使用した樹脂塗布剤に、PTFE微粒子(中心粒径8μm)を、樹脂成分に対して10質量部の割合で添加した樹脂塗布剤を使用した以外は、実施例1と同様にして現像ローラーを製造した。そして、試験例1と同様の現像性評価を行った。結果を表4に示す。
【0104】
【表4】
以上、この表4より明らかなように、PTFE微粒子などの帯電列がマイナス側にある微粒子を樹脂層に配合すると、現像性が低下することがわかった。これは、PTFE微粒子の帯電列がマイナス側であり、摩擦帯電によりスリーブ上のPTFE微粒子がマイナス側に帯電し正帯電トナーと電気的に付着し、感光体にトナーが潜像されにくくなっているためと考えられる。
【0105】
よって、現像ローラーの表面粗さおよびその形状の調整は、微粒子を添加することによって行うよりも、本発明のように樹脂塗布剤の溶媒によって調整する方が好ましいことが示された。