特許第6234881号(P6234881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234881
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】パイプ継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/12 20060101AFI20171113BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F16L37/12
   F16L21/08 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-108018(P2014-108018)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2015-224652(P2015-224652A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】桜田 秋能
(72)【発明者】
【氏名】柏又 智明
(72)【発明者】
【氏名】石井 完
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−225384(JP,A)
【文献】 特開2011−127647(JP,A)
【文献】 特開2005−188705(JP,A)
【文献】 特開2012−017807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/12
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体筒部と、前記基体筒部の外周面から径方向外側に向けて突出する抜止め突起と、前記基体筒部の端面から延出され前記基体筒部よりも小径とされた内筒と、を有する継手基体と、
前記基体筒部へ外装される第1筒部と、前記第1筒部から軸方向へ延設されていると共に前記第1筒部の内径よりも大きな内径とされ、前記内筒との間にパイプが挿入される環状空間を形成すると共に前記第1筒部との間に前記抜止め突起と係合する段差部を形成する第2筒部と、前記段差部に形成される斜面を有するカラーと、
を備え
前記斜面が、径方向視で湾曲している又はテーパ状に形成されており、
前記斜面における前記第2筒部側の部位が、前記第2筒部の内径よりも小径とされかつ径方向視で前記継手基体側が開放された凹状部とされているパイプ継手。
【請求項2】
前記斜面における前記第1筒部側の部位が、前記第1筒部の内径よりも大径とされかつ径方向視で前記継手基体側に向けて凸状とされた凸状部とされている請求項に記載のパイプ継手。
【請求項3】
基体筒部と、前記基体筒部の外周面から径方向外側に向けて突出する抜止め突起と、前記基体筒部の端面から延出され前記基体筒部よりも小径とされた内筒と、を有する継手基体と、
前記基体筒部へ外装される第1筒部と、前記第1筒部から軸方向へ延設されていると共に前記第1筒部の内径よりも大きな内径とされ、前記内筒との間にパイプが挿入される環状空間を形成すると共に前記第1筒部との間に前記抜止め突起と係合する段差部を形成する第2筒部と、前記段差部に形成される斜面を有するカラーと、
を備え、
前記斜面が、径方向視で湾曲している又はテーパ状に形成されており、
前記斜面における前記第1筒部側の部位が、前記第1筒部の内径よりも大径とされかつ径方向視で前記継手基体側に向けて凸状とされた凸状部とされているパイプ継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パイプの端部を他の配管等に接続するために用いられるパイプ継手が開示されている。このパイプ継手は、内部が流路とされた継手基体を備えており、この継手基体には、透明のカラーが取付けられている。また、継手基体には、抜け止め用の突起部が設けられており、カラーの段差部が突起部に係合することによって、カラーが継手基体から外れることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−225384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたカラーは、継手基体に設けられた抜け止め用の突起部を乗り越えながら継手本体に圧入される構造とされている。そのため、カラーが抜け止め用の突起部を乗り越える際に、突起部に係合する段差部が屈曲変形し、当該屈曲変形した部分に亀裂が生じることが考えられる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、継手基体に固定されたカラーへの亀裂発生を抑制することができるパイプ継手を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のパイプ継手は、基体筒部と、前記基体筒部の外周面から径方向外側に向けて突出する抜止め突起と、前記基体筒部の端面から延出され前記基体筒部よりも小径とされた内筒と、を有する継手基体と、前記基体筒部へ外装される第1筒部と、前記第1筒部から軸方向へ延設されていると共に前記第1筒部の内径よりも大きな内径とされ、前記内筒との間にパイプが挿入される環状空間を形成すると共に前記第1筒部との間に前記抜止め突起と係合する段差部を形成する第2筒部と、前記段差部に形成される斜面を有するカラーと、を備え、前記斜面が、径方向視で湾曲している又はテーパ状に形成されており、前記斜面における前記第2筒部側の部位が、前記第2筒部の内径よりも小径とされかつ径方向視で前記継手基体側が開放された凹状部とされている
【0007】
請求項1記載のパイプ継手によれば、カラーを軸方向一方側に移動させて、当該カラーの第1筒部を基体筒部に外装させ、カラーの段差部を抜止め突起に係合させることによって、カラーが継手基体に固定される。ここで、本パイプ継手によれば、第1筒部の内周面と第2筒部の内周面とが斜面によって繋がれていることにより、段差部が抜止め突起を乗り越える際に、段差部の斜面が抜け止め突起に引っ掛かり難くなる。これにより、段差部の斜面に屈曲部が形成され難くなり、屈曲部を起点とする樹脂カラーへの亀裂発生を抑制することができる。
【0009】
また、請求項記載のパイプ継手によれば、斜面が上記のように形成されていることにより、段差部が抜止め突起を乗り越える際に、段差部の斜面が抜け止め突起に引っ掛かることをより一層抑制することができる。
【0011】
さらに、請求項記載のパイプ継手によれば、斜面の前記第2筒部側の部位が上記のように形成されていることにより、斜面の前記第2筒部側の部位が抜止め突起に引っ掛かることをより一層抑制することができる。また、凹状部としていることで、仮に引っ掛かりが生じたとしても、屈曲の程度を軽減することが出来る。
【0012】
請求項記載のパイプ継手は、請求項に記載のパイプ継手において、前記斜面における前記第1筒部側の部位が、前記第1筒部の内径よりも大径とされかつ径方向視で前記継手基体側に向けて凸状とされた凸状部とされている。
【0013】
請求項記載のパイプ継手によれば、斜面の軸方向一方側の部位が上記のように形成されていることにより、段差部が抜止め突起を乗り越える際に、凸状部が一層変形しにくくなる。
請求項3記載のパイプ継手は、基体筒部と、前記基体筒部の外周面から径方向外側に向けて突出する抜止め突起と、前記基体筒部の端面から延出され前記基体筒部よりも小径とされた内筒と、を有する継手基体と、前記基体筒部へ外装される第1筒部と、前記第1筒部から軸方向へ延設されていると共に前記第1筒部の内径よりも大きな内径とされ、前記内筒との間にパイプが挿入される環状空間を形成すると共に前記第1筒部との間に前記抜止め突起と係合する段差部を形成する第2筒部と、前記段差部に形成される斜面を有するカラーと、を備え、前記斜面が、径方向視で湾曲している又はテーパ状に形成されており、前記斜面における前記第1筒部側の部位が、前記第1筒部の内径よりも大径とされかつ径方向視で前記継手基体側に向けて凸状とされた凸状部とされている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るパイプ継手は、継手基体に固定されたカラーに高応力部位が生じることを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】パイプ継手を示す部分側断面図である。
図2】パイプ継手を分解して示す部分側断面図である。
図3】パイプ継手を拡大して示す側断面図である。
図4図3において一点鎖線で囲まれた部位を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図4を用いて本発明の実施形態に係るパイプ継手について説明する。
【0017】
図1及び図2に示されるように、パイプ継手10は、継手基体12と、カラーとしての樹脂カラー14と、パイプ保持部材16と、開放リング18と、キャップ20と、2つのOリング22と、を有して構成されている。
【0018】
継手基体12は、樹脂カラー14よりも硬質の材料である砲金、青銅の銅合金等の金属材料やガラス繊維等により強化した強化樹脂を用いて筒状に形成されており、継手基体12の内部は、給水や給湯用の水や湯が通過する流路24とされている。継手基体12の軸方向一方側の端部には、他の継手部材へ装着されるおねじ部26が形成されている。なお、他の継手部材へ装着されるめねじ部を継手基体12の軸方向一方側の端部に形成した構成とすることもできる。また、おねじ部26の外周からは、軸方向視で外周縁が六角形状に形成された六角部28が突出されている。また、六角部28の軸方向他方側の端面からは、後述する樹脂カラー14が圧入される筒状の基体筒部30が軸方向他方側に向けて延出されている。基体筒部30の軸方向他方側の端部には、基体筒部30の外周面から径方向外側に向けて突出する抜止め突起31が設けられており、この抜止め突起31は、圧入された樹脂カラー14の抜け出し防止用として機能する。さらに、基体筒部30の軸方向他方側の端面からは、基体筒部30よりも小径とされた筒状の内筒32が軸方向他方側に向けて延出されている。この内筒32の外周面には2つの溝34が軸方向に間隔を空けて形成されており、2つの溝34にはシール用のOリング22が嵌め込まれている。
【0019】
樹脂カラー14は、透明な樹脂材料であるポリアミド又はポリカーボネート等の透明樹脂材料を用いて筒状に形成されており、この樹脂カラー14の軸方向一方側の端部は、継手基体12の基体筒部30に圧入される圧入部36とされている。
【0020】
パイプ保持部材16は、樹脂カラー14の軸方向他方側に配置されており、このパイプ保持部材16は、パイプ40を囲む環状に形成されている。また、パイプ保持部材16は、断面がL字状に形成されていると共に、このパイプ保持部材16の径方向内側の端部は爪部16Aとされている。パイプ40が抜け出る方向へ移動したときに、パイプ40の外表面に爪部16Aが引っ掛かることによって、パイプ40がパイプ継手10から外れることが抑制されるようになっている。
【0021】
開放リング18は、パイプ保持部材16の軸方向他方側に配置されており、この開放リング18は、軸方向にパイプ40に沿って移動可能とされている。開放リング18を軸方向一方側へ移動させることによって、開放リング18がパイプ保持部材16の爪部16Aとパイプ40の外表面との間に入り込み、パイプ40の外表面と爪部16Aとを離間させる。これにより、パイプ40をパイプ継手10から取り外すことが可能となっている。
【0022】
キャップ20は、ポリアセタール樹脂等を用いて筒状に形成されており、このキャップ20は、樹脂カラー14の後述する被係合凹部42に係合し、解放リング18の軸方向他方側への抜け出しを防止している。これにより、樹脂カラー14、パイプ保持部材16及び開放リング18の軸方向の相対的な移動が規制されるようになっている。
【0023】
次に、本実施形態の要部である樹脂カラー14の詳細な構成について説明する。
【0024】
図3及び図4に示されるように、樹脂カラー14は、内径が異なる第1筒部44、第2筒部46及び段差部48の3つの部位を備えている。
【0025】
樹脂カラー14の軸方向一方側の部位が第1筒部44とされており、この第1筒部44は、樹脂カラー14が継手基体12に固定された状態において基体筒部30の外周側に配置される(外装される)ようになっている。また、第1筒部44の内径はD1とされている。
【0026】
樹脂カラー14の軸方向他方側の部位が第2筒部46とされており、この第2筒部46は、樹脂カラー14が継手基体12に固定された状態において抜止め突起31の外周側及び継手基体12の内筒32の外周側に配置されるようになっている。また、第2筒部46の内径D2は第1筒部44の内径D1よりも大きな内径とされている。さらに、樹脂カラー14が継手基体12に固定されることによって、第2筒部46と継手基体12の内筒32との間にパイプ40が挿入される環状空間が形成されるようになっている。また、第2筒部46の軸方向他方側の部位には、キャップ20が係合する被係合凹部42が形成されている。
【0027】
樹脂カラー14において第1筒部44と第2筒部46との間の部位が段差部48とされており、この段差部48の内周面は、第1筒部44の内周面S1と第2筒部46の内周面S2とを繋ぐと共にパイプ継手10の中心線Lに対して傾斜された斜面S3とされている。また、斜面S3の内径は、軸方向一方側に向かうにつれて次第に窄まっている。具体的には、斜面S3の内径D3は、第1筒部44の内径D1を超える内径から第2筒部46の内径D2未満の内径の範囲内で軸方向一方側に向かうにつれて次第に縮径している。なお、図4においては、斜面S3における一の内径を示している。
【0028】
また、斜面S3における第1筒部44側の部位は、側断面視(径方向視)で継手基体12側に向けて凸状とされた凸状部50とされている。さらに、斜面S3における第2筒部46側の部位は、側断面視で継手基体12側が開放された凹状部52とされている。そして、斜面S3の軸方向の中間部は、凸状部50と凹状部52とを繋ぐテーパ部54とされている。また、本実施形態では、テーパ部54とパイプ継手10の中心線Lとのなす角度が30〜60degの範囲内となるように設定されている。さらに、本実施形態では、凸状部50及び凹状部52の側断面視での半径が0.2mmに設定されている。
【0029】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0030】
図3及び図4に示されるように、本実施形態のパイプ継手10によれば、樹脂カラー14を軸方向一方側に移動させて、当該樹脂カラー14の第1筒部44を基体筒部30に外装させ、樹脂カラー14の段差部48を抜止め突起31に係合させることによって、樹脂カラー14が継手基体12に固定される。
【0031】
ここで、本実施形態では、段差部48の斜面S3の内径D3が上記のように設定されていることにより、段差部48が抜止め突起31を乗り越える際に、当該段差部48の斜面S3に形成された凸状部50が変形し難くなる。これにより、段差部48の斜面S3に形成された凹状部52に屈曲部が形成され難くなり、ひいては、継手基体12に固定された樹脂カラー14への亀裂発生を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態では、斜面S3の第1筒部44側及び第2筒部46側の部位が、それぞれ上記の凸状部50及び凹状部52とされている。これにより、段差部48が抜止め突起31を乗り越える際に、当該段差部48の斜面S3が抜止め突起31に引っ掛かることをより一層抑制することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、上記凸状部50及び凹状部52を斜面S3に設けた例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、上記凸状部50及び凹状部52を斜面S3に設けない構成とすることもできる。凸状部50及び凹状部52を斜面S3に設けるか否かについては、抜止め突起31の形状等を考慮して適宜設定すればよい。また、凸状部50及び凹状部52のどちらか一方を斜面S3に設けた構成とすることもできる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
10 パイプ継手
12 継手基体
14 樹脂カラー(カラー)
30 基体筒部
31 抜止め突起
32 内筒
44 第1筒部
46 第2筒部
48 段差部
50 凸状部
52 凹状部
D1 第1筒部の内径
D2 第2筒部の内径
S1 第1筒部の内周面
S2 第2筒部の内周面
S3 斜面
図1
図2
図3
図4