(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
RFIDリーダライタ装置の送信部から出力される送信電力をアンテナへ導き、アンテナから入力されるRFIDからの反射電力を受信部へ導くカップラを有するRFIDリーダライタ装置を用いたRFID読取方法であって、
送信部から受信部へ漏れる送信電力量であるキャリアリーク量を測定する第1処理と、
前記送信部から前記RFIDへ無変調の搬送波の送信電力を出力している間に、前記キャリアリーク量が最小になるように、前記カップラの1つの端子に接続された終端回路のインピーダンスを調整する第2処理と、
前記キャリアリーク量が最小になるように、前記終端回路のインピーダンスを調整した後に、前記搬送波に前記RFIDの読取コマンドの変調を施す第3処理と、
を有することを特徴とするRFID読取方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に従って本発明の実施形態を説明する。
(実施形態の構成)
図1は、本発明の実施形態のRFIDリーダライタシステムの概略を示すシステム構成図である。
【0016】
本発明の実施形態のRFIDリーダライタシステムは、RFIDリーダライタ装置10と、複数の物品40に貼付された複数のRFID41により構成されている。RFIDリーダライタ装置10は、RFID41を読み取るときに押下するサーチボタン11と、RFID41へ向けて送信電力を送信すると共に、RFID41からの反射電力を受信するアンテナ12と、読み取ったRFID41の識別符号等を表示する表示部13と、を有している。
【0017】
RFID41は、識別・管理の対象の物品40に貼付される識別タグであり、アンテナ41aと、負荷41bを含んでいる。アンテナ41aは、RFIDリーダライタ装置10から与えられる送信電力の周波数に同調するように形成され、例えば、プリント基板の銅箔で作られたマイクロストリップアンテナ等である。負荷41bは、アンテナ41aとインピーダンス整合をとるためのものであり、例えば、50Ωである。又、RFIDタグ41は、RFIDリーダライタ装置10から送り続けられてくる電波を受け、バックスキャッタ方式にてRFIDリーダライタ装置10へ返送する。
【0018】
RFIDリーダライタ装置10は、RFID41からの反射波を受信し、応答データを復調し、読み取ったRFIDの識別符号を表示部13に表示する。
【0019】
図2は、
図1中のRFIDリーダライタ装置の主要部の概略を示すブロック図である。
RFIDリーダライタ装置10は、全体を制御するマイクロプロセッサユニット(Micro-Processing Unit、以下、「MPU」という。)20と、送信・変調部21と、第1のカップラ30と、アンテナ12と、終端回路31と、キャリアリークモニタ回路33と、受信・復調部34と、インピーダンス調整手段35と、を有している。
【0020】
送信・変調部21は、RFID41へ供給する高周波の搬送波を発信、増幅して出力すると共に、高周波の搬送波にRFID41の読取コマンドの変調を施すものである。第1のカップラ30は、送信・変調部21から出力される高周波の搬送波をアンテナ12へ導くと共に、アンテナ12から入力されるRFID41からの反射波をキャリアリークモニタ回路33を介し、受信・復調部34へ導く機能を有している。
【0021】
終端回路31は、第1のカップラ30の1つの端子とアース間に接続することにより、カップラ30の本来の性能を保証する回路であり、特に、インピーダンス調整可能に構成された回路である。
【0022】
カップラ30の特性は、例えば、端子a→端子bの減衰量が1.5dB、端子b→端子cの減衰量が10dB、端子c→端子dの減衰量が1.5dB、端子a→端子dの減衰量が15dB以上である。
【0023】
キャリアリークモニタ回路33は、送信・変調部21から出力される送信電力が、カップラ30の端子a→端子dへ漏れる電力量であるキャリアリーク量を測定する回路である。
【0024】
受信・復調部34は、RFID41からの反射波を増幅、中間周波数に変換して受信、復調するものである。
【0025】
インピーダンス調整手段35は、キャリアリークモニタ回路33から出力されるキャリアリーク量のモニタ値が最小になるように、終端回路31のインピーダンスを調整する制御信号を生成し、終端回路31へ出力するものである。
図2では、インピーダンス調整手段35は、MPU20に内蔵されている。尚、インピーダンス調整手段35をMPU20の外に設けても良い。
【0026】
図3は、
図1中のRFIDリーダライタ装置の例を示す回路図である。
図3において、
図2中の送信・変調部21は、MPU20から制御され、無変調の中間周波数信号又はRFIDの読取コマンドの変調を施した中間周波数信号を出力する変調部21aと、中間周波数信号から不要な周波数成分を除去するフィルタ21bと、中間周波数信号と局部発信部23の出力信号とを混合して搬送波信号に周波数変換するミキサ21cと、搬送波信号を所定の送信電力に増幅するアンプ21dとから構成されている。
図3に示された変調部21a、フィルタ21b、ミキサ21c、及びアンプ21dによる構成は、送信・変調部21の構成の一例に過ぎない。
【0027】
図3において、
図2中のキャリアリークモニタ回路33は、キャリアリークの一部の電力をモニタ電力として取り出す第2のカップラ33aと、モニタ電力を直流(DC)電圧に変換する電力検出部33bと、アナログのDC電圧をデジタル値に変換するアナログ・デジタルコンバータ(以下、「ADC」という。)33cとから構成されている。第2のカップラ33aの1つの端子が接地されているのは、一端を接地することにより他端から取り出す検出電圧を大きくするためである。尚、接地している端子を例えば、50Ωの終端抵抗を介して接地しても良い。
【0028】
又、電力検出部33bは、図示しない検波用のダイオード、平滑用のコンデンサ及び抵抗等により構成される。
【0029】
図3に示された例では、キャリアリークモニタ回路33は、アンプ32とミキサ34aの間に設けられているが、ミキサ34aとフィルタ34bの間に設けても良いし、フィルタ34bと復調部34cの間に設けても良い。
【0030】
図3に示されたキャリアリークモニタ回路33の構成は、一例に過ぎず、キャリアリークモニタ回路33の構成は、
図3の構成に限定されない。
【0031】
図3において、
図2中の受信・復調部34は、ミキサ34aと、フィルタ34bと、復調部34cとにより構成されている。
図3に示された受信・復調部34の構成は、一例に過ぎず、
図3の構成に限定されない。尚、復調部34cでは、復調信号を同相(in-phase)チャネル(Iチャネル)、及び直交(quadrature)チャネル(Qチャネル)に分離して出力する同期検波方式を採用している。
【0032】
図3において、MPU20に内蔵されているインピーダンス調整手段35は、ADC33cから出力されるキャリアリーク量のモニタ値が最小になるように、終端回路31のインピーダンスを可変する制御信号を出力する。
【0033】
(実施形態の動作)
本発明の実施形態のRFIDリーダライタ装置の動作について、
(I)従来のRFIDリーダライタ装置の動作と、(II)本発明の実施形態の終端回路の構成例と動作と、(III) 本発明の終端回路のインピーダンス調整の処理と、に分けて説明する。
【0034】
(I)従来のRFIDリーダライタ装置の動作
図4は、ハンディタイプのRFIDリーダライタの使用環境を説明する図であり、
図4(a)は、水などの液体の入った容器に取り付けられたRFIDを読取る場合を示し、
図4(b)は、読取対象のRFID周辺に金属(ロッカ等)がある場合を示している。
【0035】
従来のRFIDリーダライタ10Aでは、
図4(a),(b)に示されたような使用環境で、RFID41を読取った場合、RFIDリーダライタ10Aのアンテナ12のインピーダンスが乱れ、カップラ30の特定が劣化、キャリアリーク量が増加して、RFIDが正しく読取れないといった課題があった。
【0036】
この課題を解決するため、解析したRFIDの読取率劣化のメカニズムについて以下に述べる。
【0037】
図5は、従来のRFIDリーダライタ装置の主要部の概略を示すブロック図であり、本発明の主要部の概略を示す
図2と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0038】
従来のRFIDリーダライタ装置10Aは、
図2と同様の送信・変調部21、第1のカップラ30、アンテナ12、及び受信・復調部34と、
図2とは異なるMPU20A及び終端回路31Aと、を有している。MPU20Aは、
図2のMPU20と同様にRFIDリーダライタ装置10Aの全体を制御するが、本発明のように、キャリアリーク量が最小になるように終端回路31Aのインピーダンスを調整するインピーダンス調整機能は有していない。
【0039】
図6は、
図5中の終端回路31Aの回路図例が示されている。
図6に示されたように、終端回路31Aは、一方の端子が接地された例えば、50Ωの終端抵抗51と、一方の端子がカップラ30の1つの端子と接続され、他方の端子が終端抵抗51の他方の端子と接続されたインダクタ52と、インダクタ52の一方の端子と、一方の端子が接続され、他方の端子が接地された第1のキャパシタ53と、インダクタ52の他方の端子と、一方の端子が接続され、他方の端子が接地された第2のキャパシタ54とにより構成されている。カップラ30側から終端回路31Aを見たインピーダンスが50Ωに見えるように、終端回路31Aの各素子の値が選択されている。
【0040】
ここで、カップラ30のキャリアリークについて説明する。
図7は、RFIDリーダライタ装置のカップラのキャリアリークを説明する図である。
【0041】
図7中のカップラ30に着目すると、送信・変調部21からカップラ30の端子aから端子bを経てアンテナ12へ向かう送信信号と、アンテナ12からカップラ30の端子bから端子dを経て受信・復調部34へ向かう受信信号と、送信・変調部21からカップラ30の端子aから端子dを経て受信・復調部34へ向かうキャリアリークとが表されている。
【0042】
受信信号とキャリアリークは、共に受信・復調部34へ入力されている。カップラ30の端子bからアンテナ12を見たアンテナインピーダンス(入力インピーダンス)(S
11)及びカップラ30の端子cから終端回路31Aを見たインピーダンスは、50Ωに調整されている。入力インピ−ダンス(S
11)及び終端回路31Aのインピーダンス整合(マッチング)が取れた状態では、キャリアリーク量は、送信信号の電力量に対し、−25dB未満である。
【0043】
しかし、
図4(a),(b)に示されたような使用環境で、RFID41を読取った場合には、カップラ30の端子bからアンテナ12を見た入力インピ−ダンス(S
11)が50Ωからずれ、カップラ30が本来の性能を発揮できなくなる。
【0044】
図8は、入力インピ−ダンス(VSWR)とキャリアリーク量の関係を示す図であり、
図8(a)は、スミスチャート上の入力インピ−ダンスS
11と電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio、以下「VSWR」という。)の例を示し、
図8(b)はVSWRに対するカップラのキャリアリーク量の特性例を示している。
【0045】
図8(a)には、カップラ30の端子bから見た特性インピーダンス50Ωで正規化したアンテナ12の入力インピ−ダンスS
11がスミスチャート上に示されている。スミスチャート上のS
11=1は、アンテナ12の入力インピーダンスが50Ω(VSWR=1.0)であることを示している。S
11=1+j1.25は、アンテナ12の入力インピーダンスが50+j62.5Ω(VSWR≒1.5)を示し、S
11=1+j1.7は、アンテナ12の入力インピーダンスが50+j85Ω(VSWR≒2.0)を示している。
【0046】
図8(b)を見ると、S
11=1(VSWR=1.0)の場合は、キャリアリーク量は、送信電力量に対して約−15dBであり、VSWR=1.5でのキャリアリーク量は、送信電力量に対して約−10dBであり、VSWR=2.0でのキャリアリーク量は、送信電力量に対して約−5dBである。
図8(b)から、VSWRの値の増加に伴い、キャリアリーク量が増加していることが判る。
【0047】
図9は、キャリアリーク量とRFIDの読取率の関係を示す図である。
図9を見ると、キャリアリークの電力量が送信電力量に対して−10dB未満の場合は、RFIDの識別符号が正しく読取れる確率(以下、「読取率」という。)は、90%以上であるが、キャリアリークの電力量が送信信号の電力量に対して−5dB以上になると、RFID読取率が急激に低下することが判る。
【0048】
これに対し、
図5及び
図6に示された従来のRFIDリーダライタ装置10Aは、
図2に示された本発明の実施形態のRFIDリーダライタ装置10とは異なり、インピーダンス可変可能な終端回路31、キャリアリークモニタ回路33、及びインピーダンス調整手段35を有さない。そのため、アンテナ12の近傍に大量の水、金属等があり、アンテナ12の入力インピーダンスS
11がスミスチャートの円の中心からずれ、VSWRの値が大きくなり、キャリアリーク量が増加して、RFID読取率が低下しても、従来のRFIDリーダライタ装置10Aでは、アンテナ12を影響があるものから隔離すしかなかった。
【0049】
(II)本発明の実施形態の終端回路の構成例と動作
図10は、本発明の実施形態の終端回路の一例を示す回路図であり、
図11は、本発明の実施形態の終端回路の他の一例を示す回路図であり、更に、
図12は、本発明の実施形態の終端回路の他の一例を示す回路図である。
【0050】
図10〜
図12に示された終端回路31−1、31−2、31−3は、インピーダンス調整可能な終端回路例である。
【0051】
図10に示された終端回路31−1は、一方の端子が接地された終端抵抗51と、一方の端子がカップラ30の端子cと接続され、他方の端子が終端抵抗51の他方の端子と接続されたインダクタ52と、インダクタ52の一方の端子と、一方の端子が接続され、他方の端子が接地され、インピーダンス調整手段35から出力される制御信号によって静電容量を制御可能な第1のキャパシタ53Aと、インダクタ52の他方の端子と、一方の端子が接続され、他方の端子が接地され、インピーダンス調整手段35から出力される制御信号によって静電容量を制御可能な第2のキャパシタ54Aと、を有している。
【0052】
図10に示された終端回路31−1によれば、アンテナ12の近傍の環境によって、アンテナ12の入力インピーダンスS
11がずれ、VSWRの値が大きくなり、キャリアリークの電力量が増加した場合、第1及び第2のキャパシタ53A,54Aの静電容量を可変することで、カップラ30を本来の特性に近づけ、キャリアリーク量を減らし、RFID読取率の低下を最小限に抑えることができる。
【0053】
又、
図11に示された終端回路31−2は、一方の端子が接地され、インピーダンス調整手段35から出力される制御信号によって抵抗値を制御可能な終端抵抗51Aと、一方の端子がカップラ30の端子cと接続され、他方の端子が終端抵抗51Aの他方の端子と接続されたインダクタ52と、インダクタ52の一方の端子と、一方の端子が接続され、他方の端子が接地された第1のキャパシタ53と、インダクタ52の他方の端子と、一方の端子が接続され、他方の端子が接地された第2のキャパシタ54と、を有している。
【0054】
図11に示された終端回路31−2によれば、アンテナ12の近傍の環境によって、アンテナ12の入力インピーダンスS
11がずれ、VSWRの値が大きくなり、キャリアリークの電力量が増加した場合、終端抵抗51Aの抵抗値を可変することで、VSWRを1に近づけることにより、カップラ30を本来の特性に近づけ、キャリアリーク量を減らし、RFID読取率の低下を最小限に抑えることができる。
【0055】
更に、
図12に示された終端回路31−3は、一方の端子が接地された終端抵抗51と、一方の端子がカップラ30の端子cと接続され、他方の端子が終端抵抗51の他方の端子と接続され、インピーダンス調整手段35から出力される制御信号によりインダクタンス値が変化するインダクタ52Aと、インダクタ52Aの一方の端子と、一方の端子が接続され、他方の端子が接地された第1のキャパシタ53と、インダクタ52Aの他方の端子と、一方の端子が接続され、他方の端子が接地された第2のキャパシタ54と、を有している。
【0056】
図12に示された終端回路31−3によれば、アンテナ12の近傍の環境によって、アンテナ12の入力インピーダンスS
11がずれ、VSWRの値が大きくなり、キャリアリークの電力量が増加した場合、インダクタ52Aのインダクタンス値を可変することで、VSWRを1に近づけることにより、カップラ30を本来の特性に近づけ、キャリアリーク量を減らし、RFID読取率の低下を最小限に抑えることができる。
【0057】
図12中のインダクタ52Aは、制御信号によって、複数のインダクタL1、L2、・・・、Lnの内の1つを選択するように構成されている。インダクタンス値を制御可能なインダクタ52Aは、複数のインダクタの内の1つのインダクタを制御信号によって選択する構成に限定されず、制御信号によってインダクタ自体のインダクタンス値を可変制御しても良い。
【0058】
(III) 本発明の終端回路のインピーダンス調整の処理
図13は、インピーダンス調整手段の処理を示すフローチャートである。
【0059】
図2、
図3、
図8〜
図12を参照しつつ、
図13のフローチャートに沿って、インピーダンス調整手段の処理について説明する。
【0060】
処理が開始されると、ステップS1へ進み、ステップS1において、MPU20は、インピーダンス調整手段35に対し、制御値=0、モニタ最小値に「モニタ許容最大値」の初期設定を行い、ステップS2へ進む。ここで、モニタ許容最大値とは、RFIDリーダライタシステムにおいて、最低限確保することが必要なRFID読取率、例えば、90(%)以上を確保するために、確保しなければならないキャリアリーク量に対応するキャリアリークモニタ回路33の出力するモニタ値である。
【0061】
ステップS2において、インピーダンス調整手段35は、制御信号により終端回路30に制御値を設定し、ステップS3へ進む。ここで、終端回路30は、
図10〜
図12に示されたいずれの構成の終端回路30−1〜30−3でも良いが、代表して、
図10に示された終端回路30−1であるとして説明する。
図10中の第1のキャパシタ53A及び第2のキャパシタ54Aは、例えば、制御値0〜31の値に応じて静電容量値が、0pF〜5pFの範囲で0.15pF刻みで可変できるものとする。
【0062】
ステップS3において、インピーダンス調整手段35は、キャリアリークモニタ回路33からキャリアリーク量のモニタ値を取得し、ステップS4へ進む。
【0063】
ステップS4において、インピーダンス調整手段35は、ステップS3で取得したモニタ値をステップS1で設定したモニタ最小値と比較し、モニタ値がモニタ最小値未満であれば(YES)、ステップS5へ進み、モニタ最小値以上であれば(NO)、ステップS6へ進む。
【0064】
ステップS5において、MPU20は、インピーダンス調整手段35に対し、最良制御値を現在の制御値、モニタ最小値をステップS4でYES判定された最新のモニタ値に更新し、ステップS6へ進む。
【0065】
ステップS6において、MPU20は、インピーダンス調整手段35に対し、制御値に1を加え、ステップS7へ進む。
【0066】
ステップS7において、MPU20は、制御値を31と比較し、制御値が31以下の場合は(NO)、ステップS2へ戻り、制御値が31より大きくなるまで、ステップS2〜S7の処理を繰り返し、制御値が31より大きくなると(YES)、ステップS8へ進む。ステップS2〜S7の処理を繰り返すことにより、キャリアリーク量のモニタ値が最小となる最小制御値に制御される。
【0067】
ステップS8において、インピーダンス調整手段35は、制御信号により終端回路31−1の第1のコンデンサ53A及び第2のコンデンサ54Aの静電容量値が最適値に制御され、終端回路のインピーダンス調整の処理が終了する。
【0068】
図14は、
図13における制御値とキャリアリーク量との関係を示す図であり、
図14(a)は、制御値と静電容量の関係を示し、
図14(b)は、制御値とキャリアリーク量の関係を示している。
【0069】
図14(a)において、制御値を0〜31に設定すると、
図10の終端回路31−1中の可変キャパシタ53A,54Aの静電容量が変化する。例えば、制御値を10に設定すれば、静電容量が1.7(pF)となり、制御値を20に設定すれば、静電容量が3.0(pF)となる。
図14(a)は、
図13に示されたフローチャート中のステップS2に対応している。
【0070】
次に、
図14(b)には、制御値を変化させると、
図14(a)に従って静電容量が変化し、
図2中のカップラ30の特性の変化に伴い、キャリアリーク量が変化する様子が示されている。
【0071】
図14(b)において、制御値0〜31の範囲でキャリアリーク量の最小値は、制御値17のとき、キャリアリーク量は最小値−27(dB)となる。
図14(b)は、
図13に示されたフローチャート中のステップS2〜S8の処理に対応しており、
図13のフローチャート中のステップS8において、終端回路31−1に最良制御値17が設定され、終端回路31−1中の可変キャパシタ53A,54Aは、2.6(pF)に設定される。
【0072】
ここで、
図10に示された終端回路31−1を見ると、可変キャパシタ53A,54Aは、1つの制御信号により静電容量が制御される構成となっているが、可変キャパシタ53Aと可変キャパシタ54Aをそれぞれ個別の制御信号により静電容量を制御する構成としても良い。即ち、可変キャパシタ53Aについて、
図13及び
図14に示されたインピーダンス調整手段の処理を行って可変キャパシタ53Aの静電容量をキャリアリーク量最小に調整し、その後、可変キャパシタ54Aについて、同様のインピーダンス調整手段の処理を行って可変キャパシタ54Aの静電容量をキャリアリーク量最小に調整すれば、1つの制御信号により2つの可変キャパシタ53A,54Aの静電容量を決定するよりもキャリアリーク量をより低く抑えることが期待できる。
【0073】
以上の説明では、説明の便宜上、終端回路31は、
図10に示された終端回路31−1として説明したが、
図11に示された終端回路31−2、
図12に示された終端回路31−3についても同様である。
【0074】
(実施形態2)
図15は、本発明の実施形態2のインピーダンス調整手段の例を示す回路図であり、本発明の実施形態1を示す
図2、
図3、及び
図10と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0075】
図15に示された回路図は、
図13及び
図14に基づいて説明したインピーダンス調整手段の処理を実現する回路例である。
【0076】
先ず、
図15に示された本発明の実施形態2の構成について、本発明の実施形態1の構成と対比しつつ説明する。
【0077】
キャリアリークモニタ33Aは、
図3に示されたキャリアリークモニタ33中のADC33cを取り除いた構成であり、直流(DC)のキャリアリーク量のモニタ値Vmonを出力する。
【0078】
インピーダンス調整手段35Aは、差動増幅器35A−1と、差動増幅器35A−1の反転入力端子に基準電圧Vmonmaxを与える2つのバイアス抵抗35A−2、35A−3とにより構成されている。
【0079】
終端回路31Bは、
図10の変形例である。第1のキャパシタ53Aは、カソード−アノード間に逆バイアスのDC制御電圧を印加するとDC制御電圧に応じて静電容量が変化するバリキャップ53A−1と、バリキャップ53A−1のカソードとインダクタ52の一端と接続されDCカットするキャパシタ53A−2と、雑音除去用の抵抗53A−3と、により構成されている。第2のキャパシタ54Aも同様に、バリキャップ54A−1と、キャパシタ54A−2と、抵抗54A−3と、により構成されている。
【0080】
次に、
図15に示された本発明の実施形態2の動作について説明する。
図15において、差動増幅器35−1の反転入力端子に与えられる基準電圧Vmonmaxの値が、
図13に示されたフローチャート中のステップS1におけるモニタ許容最大値になるように、2つのバイアス抵抗35A−2、35A−3の抵抗値を設定する。
【0081】
以上のようにインピーダンス調整手段35Aを構成すると、差動増幅器35A−1は、差動増幅器35A−1を構成する演算増幅器(以下、「OPアンプ」)の仮想接地の原理により、非反転(+)入力端子に与えられるモニタ値Vmonが、反転(−)入力端子に与えられるVmonmaxと等しくなるように動作する。
【0082】
その結果、キャリアリークモニタ回路33Aの出力するモニタ値Vmonが
基準電圧Vmonmaxと同じになるような制御電圧が差動増幅器35A−1から終端回路31Bへ出力されることになる。
【0083】
(実施形態のRFIDリーダライタシステム)
最後に、RFIDリーダライタシステム全体の動作について、
図3を参照しつつ
図16に示された送受信の波形の推移について説明する。
【0084】
図16は、本発明のRFIDリーダライタシステムの動作を説明する図であり、
図16(a)は、送信出力波形の時間的な変化を示し、
図16(b)は、キャリアリークが無視できる場合の受信波形の時間的な変化を示し、
図16(c)は、キャリアリークが大きく終端回路のインピーダンスを調整しない場合(従来のRFIDリーダライタシステム)の受信波形の時間的な変化を示し、
図16(d)は、キャリアリークが大きい場合に、終端回路のインピーダンスを調整する本発明のRFIDリーダライタシステムの受信波形の時間的な変化を示している。
【0085】
図16(a)において、時刻t0において、
図3中のアンプ21dがオンすると、時刻t0〜時刻t1の間、無変調搬送波が出力され、時刻t1〜t2の間は、RFID読取コマンドの変調波形が出力され、その後、時刻t2〜t5の間、無変調搬送波が出力されている。
【0086】
アンテナ12の近傍の電磁環境が良好で、アンテナ12のインピーダンスが略50Ωで、キャリアリークが無視できる場合の受信波形が、
図16(b)に示されている。
図16(b)を見ると、時刻t0〜t1、時刻t2〜t3、時刻t4〜t5の間は、受信信号は出力されていない。これは、
図2中の受信・復調部34は、RFID41の応答波形が返ってきている期間を除き、RFID41からの無変調搬送波を受信した場合に、復調出力が0になるように調整されているためである。
【0087】
そのため、RFID読取コマンドの変調波形が出力されている時刻t1〜t2の期間は、飽和した受信波形が出力され、時刻t3〜t4の間は、RFIDタグの応答波形が受信波形として出力されている。
図16(b)に示された受信波形では、RFIDタグの応答波形が基準レベルに対して上下にほぼ対称な位置にあるため、RFIDタグの識別符号を正しく読取ることができる。
【0088】
これに対して、キャリアリークが大きく終端回路31Aのインピーダンスを調整しない、従来のRFIDリーダライタシステムの受信波形の時間的な変化が
図16(c)に示されている。
図16(c)を見ると、RFIDタグの応答波形の受信波形が基準レベルに対して上方向にオフセットしており、基準レベルと交差していない。このように、キャリアリークが大きく終端回路31Aのインピーダンスを調整できない従来のRFIDリーダライタシステムでは、RFID41から識別符号を正しく読取ることができない。
【0089】
従来のRFIDリーダライタシステムの課題を解決した本発明のRFIDリーダライタシステムの受信波形の時間的な変化が
図16(d)に示されている。
図16(d)を見ると、時刻t0〜t1の間に、キャリアリーク量が減少している様子が示されている。これは、インピーダンス調整手段35により、キャリアリーク量が最小になるように、終端回路31のインピーダンスが調整されているためである。これにより、RFIDタグの応答波形の受信波形が基準レベルに対して上下にほぼ対称な位置にあるため、RFIDタグの識別符号を正しく読取ることができる。
【0090】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上に述べた実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成又は実施形態を取ることができる。
【0091】
本発明は、上記実施形態1及び2に限定されず、種々の利用形態や変形例が可能である。このような利用形態や変形例として、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
【0092】
(a)
図13及び
図14に基づいて説明した上記実施形態1のインピーダンス調整手段の処理では、終端回路31に制御値0〜31まで設定し、キャリアリーク量が最小となる制御値を探し、終端回路31に、キャリアリーク量が最小となる最良制御値を設定している。しかし、必ずしも、キャリアリーク量が最小にならなくても、RFID読取率に影響がない程度であれば良いので、終端回路31に制御値を設定し、キャリアリーク量が所定値未満になった時点で、終端回路31に設定する制御値を固定するようにしても良い。このようにすれば、終端回路31のインピーダンス調整に要する時間を短縮することができる。
【0093】
(b)
図15に基づいて説明した上記実施形態2の終端回路31Bの第1のキャパシタ53Aは、バリキャップ53A−1と、キャパシタ53A−2が直列接続された構成を示したが、バリキャップ53A−1に図示しないキャパシタを並列接続しても良い。バリキャップ53A−1にキャパシタを並列接続し、キャパシタの静電容量を適宜調整することにより、制御電圧に対する静電容量の変化する比率を調整することができる。
【0094】
(c)
図16に示した送受信の波形図では、キャリアリーク量が最小になるように終端回路31のインピーダンス調整をした後に、RFID読取コマンドが出力されているが、受信・復調部34が、タグ応答波形を受信するときに、インピーダンス調整手段35による終端回路31のインピーダンスの調整が行われるようにしても良い。