【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0034】
以下の実施例において、高度不飽和脂肪酸の組成分析方法は次のとおりである。
測定試料10mgをn−ヘキサン10mLに希釈し、ガスクロマトグラフィー分析装置(Type 6890 GC;Agilent Technologies製)を用いて、以下の条件にて全脂肪酸中における各脂肪酸の含有比を分析した。結果は、クロマトグラムの面積から換算した質量%として表した。
<カラム条件>
カラム:J&W社製DB−WAX 0.25 mm×30 m、カラム温度:210℃
He流量:1.0 ml/min、He圧力:20 PSI
<検出条件>
H
2流量:40 ml/min、Air流量:450 ml/min
He流量:1.00 ml/min、DET温度:260℃
【0035】
また、以下の実施例において、EPAアルキルエステル(EPA−E)及びDHAアルキルエステル(DHA−E)の回収率の算出方法は次のとおりである。
【0036】
【数1】
【0037】
組成物の不純物比は、組成物中における目的とするEPA及びDHAの含有量に対する、不純物(クロマトグラフィー法等の従来の方法で分離が困難なアラキドン酸アルキルエステル(AA−E)及びエイコサテトラエン酸アルキルエステル(ETA−E))の含有量として、下記式に従って計算した。
不純物比(%)
=(AA−EとETA−Eの合計含量/EPA−EとDHA−Eの合計含量)×100
【0038】
組成物の評価では、下記表1の基準に従って、不純物比及びEPA−E及びDHA−Eの回収率に基づいて各組成物の組成スコア及び回収率スコアを求めた。さらにそれらの合計スコアに基づいて組成物の総合評価を行った。
【0039】
【表1】
【0040】
(参考例1)原料A
イワシ油1kgに、水酸化ナトリウム50gを溶解させた無水エタノール1000mLを加え、70〜80℃にて1時間混合攪拌後、さらに水500mLを加えてよく混合し、1時間静置した。分離した水層を除去し、油層を数回水洗して洗液を中性にし、エチルエステル化イワシ油(以下、「原料A」とする)820gを得た。
上記原料Aは、表2に示すとおり、全脂肪酸中に、アラキドン酸(AA)2.14質量%、エイコサテトラエン酸(ETA)1.70質量%、エイコサペンタエン酸(EPA)42.96質量%、ドコサヘキサエン酸(DHA)7.71質量%を含有していた。
【0041】
(参考例2)原料B
上記で調製した原料A 1kgにn−ヘキサン600mLを加えてよく攪拌混合し、溶解させた。ここに硝酸銀50質量%の水溶液2500mLを加え、20℃の条件下で1時間攪拌した。静置後に水相を分離し、残った有機層を濃縮し、エチルエステル化イワシ油(以下、「原料B」とする)550gを得た。
上記原料Bは、表2に示すとおり、全脂肪酸中に、AA 3.72質量%、ETA 2.73質量%、EPA 18.65質量%、DHA 0.91質量%を含有していた。
【0042】
(参考例3)原料C
参考例2と同様にしてエチルエステル化イワシ油(以下、「原料C」とする)550gを得た。
上記原料Cは、表2に示すとおり、全脂肪酸中に、AA 3.81質量%、ETA 2.75質量%、EPA 20.46質量%、DHA 1.23質量%を含有していた。
【0043】
【表2】
【0044】
(実施例1)
工程(1):原料A 30gにシクロヘキサン5mLを加えてよく攪拌混合し、溶解させた。ここに硝酸銀50質量%の水溶液80mLを加え、20℃の条件下で1時間攪拌した。溶液を静置後、分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(2):工程(1)で得た水相を20℃に維持したまま、シクロヘキサン5mLを添加し30分間攪拌した。混合液を静置後、分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(3):工程(2)で得た水相を60℃にし、シクロヘキサン150mLを追加し、60℃の条件下で30分間攪拌して、水相中の脂肪酸エチルエステルを有機相に抽出した。混合液を静置後、分離した有機相を回収、濃縮し、脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0045】
(実施例2)
工程(1):原料B 30gにn−ヘキサン15mLを加えてよく攪拌混合し、溶解させた。ここに硝酸銀50質量%の水溶液60mLを加え、25℃の条件下で1時間攪拌した。溶液を静置後、分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(2):工程(1)で得た水相を25℃に維持したまま、n−ヘキサン50mLを添加し30分間攪拌した。混合液を静置後、分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(3):工程(2)で得た水相を60℃にし、n−ヘキサン150mLを追加し、60℃の条件下で30分間攪拌して、水相中の脂肪酸エチルエステルを有機相に抽出した。混合液を静置後、分離した有機相を回収、濃縮し、脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0046】
(比較例1)
工程(2)を行わなかった以外は、実施例1と同様にして脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0047】
(比較例2)
工程(2)を行わなかった以外は、実施例2と同様にして脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0048】
実施例1〜2及び比較例1〜2の組成物における、全脂肪酸に対する各脂肪酸の組成比を分析した。さらに不純物比、EPA−E及びDHA−Eの回収率を求め、各組成物の組成スコア、回収率スコア、及び総合評価を求めた。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
工程(2)を行わずに得られた比較例の組成物に比べて、実施例の組成物は、不純物であるAAやETAの含量が大幅に低下し、目的とするEPA及びDHAの純度が向上した。比較例の組成物は、工程が少ない分EPA及びDHAの回収率は高くなったが、AAやETAの含量が多く、EPA及びDHAの純度には劣るものであった。
【0051】
(製造例1〜6)
工程(2)の温度を表4のとおりにして行った以外は、実施例2と同様にして脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0052】
製造例1〜6の組成物における、全脂肪酸に対する各脂肪酸の組成比、不純物比、EPA−E及びDHA−Eの回収率、ならびに評価結果を表4に示す。なお、表4には実施例2の結果を再掲する。
工程(2)の温度が低温になると、得られた組成物におけるEPA及びDHAの含量が低下するとともに、不純物(AA及びETA)の含量が増加する傾向があった。工程(2)の温度が5℃〜30℃の範囲であれば、不純物含量は許容できる範囲であった。一方高温で工程(2)を行うと、EPA、DHAの含量は増加するものの、回収率が低下する傾向があった。工程(2)の温度が工程(1)の温度に対して+5℃〜−10℃の範囲である製造例4〜5、実施例2では、不純物比とEPA−E及びDHA−Eの回収率とのバランスが良かった。
【0053】
【表4】
【0054】
(製造例7〜14)
参考例Cの原料を用い、工程(1)及び(2)の温度をそれぞれ変えた以外は、製造例1〜6と同様にして、脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0055】
製造例7〜14の組成物における、全脂肪酸に対する各脂肪酸の組成比、不純物比、EPA−E及びDHA−Eの回収率、ならびに評価結果を表5に示す。
10℃で工程(1)及び工程(2)を行った製造例7では、不純物(AA及びETA)の含量が増加した。一方、10℃で工程(1)、30℃で工程(2)を行った製造例8では、不純物の含量は低下したものの、EPA−E及びDHA−Eの回収率が低下した。さらに、35℃で工程(2)を行った製造例14では、回収率が大幅に低下した。工程(2)の温度が5℃〜30℃の範囲であれば、EPA−E及びDHA−Eの回収率は許容できる範囲であった。さらに、工程(2)の温度が工程(1)の温度に対して+5℃〜−10℃の範囲であると、EPA−E及びDHA−Eの回収率がより高くなる傾向があった。
【0056】
【表5】
【0057】
(製造例15)
工程(1):原料B 30gにn−ヘキサン15mLを加えてよく攪拌混合し、溶解させた。ここに硝酸銀50質量%の水溶液60mLを加え、20℃の条件下で1時間攪拌した。溶液を静置後、分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(2):工程(1)で得た水相を20℃に維持したまま、n−ヘキサン50mLを添加し、30分間攪拌した。混合液を静置後、分離した有機相を除去し、水相を回収した。回収した水相を20℃に維持したまま、再度n−ヘキサン50mLを添加し、30分間攪拌し、静置後に分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(3):工程(2)で得た水相を60℃にし、n−ヘキサン150mLを追加し、60℃の条件下で30分間攪拌して、水相中の脂肪酸エチルエステルを有機相に抽出した。混合液を静置後、分離した有機相を回収、濃縮し、脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0058】
(製造例16〜17)
工程(2)で用いる有機溶媒をヘプタン(製造例16)又は酢酸エチル(製造例17)に変更した以外は、製造例15と同様にして脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0059】
製造例15〜17の組成物における、全脂肪酸に対する各脂肪酸の組成比、不純物比、EPA−E及びDHA−Eの回収率、ならびに評価結果を表6に示す。製造例15〜17の組成物におけるEPA及びDHAの純度はいずれも同様に高かったが、工程(2)でヘキサンを用いた製造例15では、製造例16や17と比べてEPA−E及びDHA−Eの回収率がより向上した。
【0060】
【表6】
【0061】
(製造例18〜22)
工程(1):原料A 30gにシクロヘキサン5mLを加えてよく攪拌混合し、溶解させた。ここに硝酸銀50質量%の水溶液80mLを加え、20℃の条件下で1時間攪拌した。溶液を静置後、分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(2):工程(1)で得た水相を20℃に維持したまま、シクロヘキサンを表7に記載の量で添加して30分間攪拌した。混合液を静置後、分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(3):工程(2)で得た水相を60℃にし、新しいシクロヘキサン150mLを加えて60℃の条件下で30分間攪拌して、水相中の脂肪酸エチルエステルを有機相に抽出した。混合液を静置後、分離した有機相を回収、濃縮し、脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0062】
(製造例23〜27)
工程(1):原料B 30gにシクロヘキサン15mLを加えてよく攪拌混合し、溶解させた。ここに硝酸銀50質量%の水溶液50mLを加え、15℃の条件下で1時間攪拌した。溶液を静置後、分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(2):工程(1)で得た水相を15℃に維持したまま、シクロヘキサンを表7に記載の量で添加して30分間攪拌し、静置後に分離した有機相を除去し、水相を回収した。
工程(3):工程(2)で得た水相を60℃にし、新しいシクロヘキサン150mLを加えて60℃の条件下で30分間攪拌して、水相中の脂肪酸エチルエステルを有機相に抽出した。混合液を静置後、分離した有機相を回収、濃縮し、脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
【0063】
製造例18〜27の組成物における、全脂肪酸に対する各脂肪酸の組成比、不純物比、EPA−E及びDHA−Eの回収率、ならびに評価結果を表7に示す。工程(2)において水相に対する有機溶媒の添加量が少ない製造例18では不純物含量が増加した。
【0064】
【表7】
【0065】
(製造例28〜30)
工程(3)において有機相を回収した後の残りの水相、すなわち硝酸銀水溶液、を繰り返し使用する検討を行った。実施例1と同様にして工程(1)〜(3)を行い、有機相と分離された硝酸銀水溶液を回収した。回収した溶液を工程(1)の硝酸銀水溶液として新たに用意した原料に加えて、同様に工程(1)〜(3)を行い、再度硝酸銀水溶液を回収した。これを表8の回数繰り返して、脂肪酸エチルエステル含有組成物を得た。
得られた組成物における、全脂肪酸に対する各脂肪酸の組成比、不純物比、EPA−E及びDHA−Eの回収率、ならびに評価結果を表8に示す。なお、表8には実施例1の結果を再掲する。硝酸銀の繰り返し使用によっても、得られた組成物におけるEPA及びDHAの純度、ならびにEPA−E及びDHA−Eの回収率は変わらなかった。本発明の方法によれば、硝酸銀水溶液を繰り返し使用しても、高純度のEPA−E及びDHA−Eを効率よく製造することができる。
【0066】
【表8】