(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、組み立て作業を効率よく行うことのできる電源装置及び電源装置を備える車両並びに蓄電装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一の側面に係る電源装置によれば、それぞれが角形で、電極端子を備える複数の電池セルと、前記電池セルを積層した電池積層体を締結する締結手段と、前記電池セルの電極端子同士を接続するバスバーと、前記電池積層体の上面を被覆する絶縁性のバスバーホルダとを備える電源装置であって、前記締結手段が、前記電池積層体をその側面及び上面において締結するものであり、さらに前記締結手段が、前記電池積層体の側面を被覆する側面被覆部と、上面を被覆する上面被覆部を備えており、前記バスバーホルダが、中間に位置する中間ホルダと、前記中間ホルダの両側の側面にそれぞれ位置する側面ホルダとに分割されており、前記側面ホルダと中間ホルダとは、互いに嵌合させるための嵌合構造を備えることができる。上記構成により、バスバーホルダを分割構造とすることで、先に電池積層体を側面ホルダを含めて締結手段で締結した状態で、中間ホルダを固定できるので、治具による電池積層体の押圧を早々に解除でき、組み立ての作業性が高まる。
【0007】
また、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、前記嵌合構造を、前記中間ホルダと側面ホルダとを接合させる界面において、一方の面から突出させた爪部と、他方の面で該爪部を受ける係止片とで構成することができる。上記構成により、側面ホルダを先に電池積層体に固定した状態で、後から中間ホルダを容易に側面ホルダに固定できるようになる。
【0008】
さらに、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、前記バスバーホルダが、前記電池セルの積層方向に延長されており、前記バスバーホルダを、該延長方向において、前記中間ホルダと側面ホルダとに分割することができる。
【0009】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、前記締結手段を、前記電池積層体の側面において、垂直方向に離間して配置される、第一バインドバーと第二バインドバーとで構成できる。
【0010】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、さらに前記締結手段と前記電池積層体と間に介在される絶縁性の絶縁シートを備えることができる。上記構成により、締結手段に金属板等の導電性の部材を使用しても、電池セルの外装缶同士を導通させる事態を回避でき、安全性を高めることができる。
【0011】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、前記側面ホルダに、前記上面被覆部の端縁を挿入可能に側面を開口した、断面視コ字状としたコ字状スリットを形成することができる。上記構成により、締結手段と電池積層体との間に側面ホルダを狭持しつつも、締結手段の上面を側面ホルダで被覆することができ、締結手段の浮き上がりを阻止できる。
【0012】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、前記締結手段は、中間部分において、前記中間ホルダ側に突出させた中間固定突起を設けており、前記中間ホルダには、前記中間固定突起と対応する位置に、該中間固定突起を保持する中間保持部を設けることができる。上記構成により、締結手段が中間部分で膨らみやすくなる事態を回避できる。
【0013】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、前記中間固定突起が、前記締結手段の一部を、前記側面ホルダを跨いで延長させ、かつ前記中間ホルダに向かって突出するよう折曲させた折曲片であり、前記中間保持部を、前記折曲片を挿入するスリットとすることができる。上記構成により、中間固定突起を締結手段と一体に設けることができ、固定構造を簡素化できる。
【0014】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、前記側面ホルダに、前記折曲片を保持する凹部を形成させることができる。上記構成により、折曲片を凹部で保持して位置決めできる。
【0015】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、前記締結手段に、一以上のバインド穴を開口させることができる。上記構成により、締結手段にバインド穴を設けることで変形し易くして、電池セルが膨張して電池積層体の長さが長くなった際、締結手段とエンドプレートの取り付け部位に過度な負担がかかるのを、孔の部分の変形によって軽減できる。
【0016】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、前記バスバーホルダは、前記バスバーを配置する位置決めガイドを開口しており、各位置決めガイド内に、それぞれ格子状の絶縁部を設けることができる。
【0017】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、さらに前記電池積層体の、前記電池セル同士の間に介在される絶縁性のスペーサを備えており、前記スペーサは、中央にスペーサ穴部を設けることができる。上記構成により、電池セルの中央部分が膨張しても、スペーサ穴部によってこれを吸収できる。
【0018】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、さらに前記スペーサは、前記スペーサ穴部を貫通孔とすることができる。上記構成により、スペーサに容易にスペーサ穴部を形成できる。
【0019】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、さらに前記バスバーホルダの上面に固定される、前記電池セルを監視する電子回路を実装した回路基板を備えており、前記バスバーホルダは、その中央に、前記回路基板と固定するための基板位置決めボスを設けており、前記基板位置決めボスは、その周囲に、前記回路基板を保持する保持突起を形成することができる。上記構成により、回路基板をバスバーの上面に位置決めして固定することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の他の側面に係る電源装置によれば、さらに前記回路基板の上面を被覆するホルダカバーを備えており、前記基板位置決めボスに、前記ホルダカバーをバスバーホルダと螺合するためのねじ穴を開口させることができる。上記構成により、基板位置決めボスでもって回路基板の固定とホルダカバーの固定とを同時に行える利点が得られる。
【0021】
さらにまた、電源装置を備える電動車両によれば、上記の電源装置に加え、前記電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えることができる。
【0022】
さらにまた、蓄電装置によれば、前記電源装置への充放電を制御する電源コントローラを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電源装置への充電を可能とすると共に、前記電源装置に対し充電を行うよう制御可能とできる。
【0023】
さらにまた、電源装置の製造方法によれば、それぞれが角形で、電極端子を備える複数の電池セルと、前記電池セルを積層した電池積層体を締結する締結手段と、前記電池セルの電極端子同士を接続するバスバーと、前記電池積層体の上面を被覆する絶縁性のバスバーホルダとを備える電源装置の製造方法に関する。この製造方法は、前記バスバーホルダが、中間の中間ホルダと、両側側面の側面ホルダとに分割された電源装置の製造方法であって、前記側面ホルダを前記電池積層体の上面の隅部にそれぞれ配置した状態で、前記締結手段で該側面ホルダの上面を締結する工程と、前記側面ホルダ同士の間に、前記中間ホルダを、該側面ホルダと中間ホルダとの接合界面に設けられた嵌合構造によって嵌合して固定する工程と、前記中間ホルダに形成された、前記バスバーを配置するための位置決位置決めガイドに配置されたバスバーを、前記電池セルの前記電極端子と固定する工程とを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置及び電源装置を備える電動車両並びに蓄電装置、電源装置の製造方法を例示するものであって、本発明は電源装置及び電源装置を備える電動車両並びに蓄電装置、電源装置の製造方法を以下のものに特定しない。また実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施の形態1)
【0026】
本発明の実施の形態1に係る電源装置100を、
図1〜
図15に示す。これらの図において、
図1は実施の形態1に係る電源装置100を示す斜視図、
図2は
図1の電源装置100の分解斜視図、
図3は
図2の電源装置100の更なる分解斜視図、
図5は
図1のV−V線における断面斜視図及び要部拡大図、
図6は
図5の要部拡大図、
図7は
図5の嵌合構造30の一例を示す模式断面図、
図8は嵌合構造の他の例を示す模式断面図、
図9は電源装置100の断面図、
図10は
図1のX−X線における断面斜視図及び要部拡大図、
図11は
図10の要部拡大図、
図12は
図2の中間固定構造の破線で囲んだ部分を示す拡大分解斜視図、
図13Aは締結手段4をエンドプレート3に係止する構造を示す分解斜視図、
図13Bは実施の形態3に係る締結手段をエンドプレートに係止する構造を示す分解斜視図、
図13Cは実施の形態4に係る締結手段をエンドプレートに係止する構造を示す分解斜視図、
図13Dは
図13Aに示す締結手段をエンドプレートに係止する構造を示す正面図、
図14は回路基板9をバスバーホルダ8に固定する状態を示す分解斜視図及び要部拡大図、
図15は回路基板9の固定部分を示す模式断面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電源装置100は、複数枚の電池セル1と、電池セル1同士の間に介在されるスペーサ15と、電池セル1とスペーサ15とを交互に積層した電池積層体2の各端面にそれぞれ配置されるエンドプレート3と、エンドプレート3同士を締結する締結手段4と、電池積層体2の上面に固定されるバスバーホルダ8と、電池セル1の電極端子13同士を接続するバスバー14とを備えている。
【0027】
エンドプレート3は、電池積層体2を積層した状態で締結するため、金属製等の剛性の高い部材で構成される。さらに締結手段4は、同様に剛性の高い金属板等で構成される。ここでは、金属板を断面視コ字状に折曲して、端部をエンドプレート3にねじ止め等により固定している。この締結手段4は、電池積層体2の側面を締結する。さらに締結手段4は、電池積層体2の上面を押圧する構成も兼ねている。すなわち電池積層体2を積層状態に締結すると共に、上面から押圧することで電池積層体2の上面、すなわち各電池セル1の上面をほぼ同一平面に揃えることができる。
(バスバーホルダ8)
【0028】
バスバーホルダ8は、電池積層体2の上面を被覆する。このバスバーホルダ8は、電池セル1の電極端子13同士を接続するバスバー14を保持すると共に、バスバー14と電池セル1との無用な導通を阻止するために絶縁する。このためバスバーホルダ8は、絶縁性の部材で構成される。この例では、PPE等の樹脂製としている。
(中間ホルダ8A、側面ホルダ8B)
【0029】
バスバーホルダ8は、電池セル1の積層方向に延長されている。このバスバーホルダ8は、
図3の分解斜視図及び
図4の平面図に示すように、延長方向と交差する方向において、中間に位置する中間ホルダ8Aと、中間ホルダ8Aの側面にそれぞれ位置する側面ホルダ8Bとに分割されている。このようにバスバーホルダ8を3分割して構成することで、先に側面ホルダ8Bをそれぞれ、電池積層体2の上面隅部に固定した状態で、側面ホルダ8B同士の間に中間ホルダ8Aを圧入して連結、固定することが可能となり、電源装置の組み立ての作業性を向上できる。
(嵌合構造30)
【0030】
さらに側面ホルダ8Bと中間ホルダ8Aとは、これらを接合させる界面において互いに嵌合させるための嵌合構造30を備えている。具体的には、
図5〜
図7に示すように、中間ホルダ8Aの壁面に爪状に突出させた爪部31を、側面ホルダ8Bにはこの爪部31と対応する位置に、爪部31を受けるための係止片32をそれぞれ設けており、これらを嵌合させることで中間ホルダ8Aと側面ホルダ8Bとを固定可能としている。
(爪部31)
【0031】
中間ホルダ8Aは、
図2の分解斜視図及び
図4の平面図に示すように、その両側の側面に爪部31を設けている。爪部31は、各側面において、複数箇所に離間して設けている。各爪部31は、
図7の断面図に示すように、中間ホルダ8Aの断面視において下方を幅狭に、上方を幅広とするように傾斜面を設けると共に、傾斜面の端縁には段差部を形成しており、ここに側面ホルダ8Bの係止片32を係止させる。この構造によって一旦嵌合した中間ホルダ8Aが側面ホルダ8Bから外れることを阻止する戻り止め構造が実現される。すなわち、側面ホルダ8B同士の間に中間ホルダ8Aを押し込んで嵌合させると、その後は段差部が係止片32で係止されることによって、中間ホルダ8Aの上向きの移動が阻止され、中間ホルダ8Aを安定的に側面ホルダ8Bに固定できる。
【0032】
なお爪部31は、複数を離間して設ける構成に限らず、中間ホルダの長手方向に沿って連続的に設けることもできる。
(実施の形態2)
【0033】
また、嵌合構造はこの構成に限らず、中間ホルダと側面ホルダとを嵌合できる他の構成も適宜採用できる。例えば、
図8に示す実施の形態2のように、側面ホルダ8B’側に爪部31’を、中間ホルダ8A’側に係止片32’を、それぞれ設けてもよい。
(締結手段4)
【0034】
締結手段4は、
図2及び
図3に示すように、電池積層体2の積層方向に延長されており、両端をエンドプレート3に固定して、電池積層体2を積層方向に締結する。これらの図に示す締結手段4は、電池積層体2の上面に当たる第1の表面2Aとは異なる両側の側面2Bにそれぞれ配置されている。
【0035】
締結手段4は、電池積層体2の表面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属板である。この締結手段4には、鉄等の金属板、好ましくは、鋼板が使用できる。金属板からなる締結手段4は、側面被覆部4aの両端に、エンドプレート3に連結する連結部4bを設けている。図の締結手段4は、その両端部を、エンドプレート3の主面に沿うように、ほぼ直角に折曲加工して、連結部4bを設けている。この締結手段4は、両端の連結部4bをエンドプレート3に連結することにより、締結手段4の連結部4bが電池積層体2の両端に配置された一対のエンドプレート3に係止され、一対のエンドプレート3が所定の間隔となるようにして、電池積層体2を両端から挟着している。
図2及び
図3の締結手段4は、エンドプレート3の四隅部に設けた嵌着凹部3Aに連結部4bを連結して、4本の締結手段4で一対のエンドプレート3を連結している。したがって、締結手段4の連結部4bは、エンドプレート3の嵌着凹部3Aに沿うように折曲加工されている。
(第一バインドバー4A、第二バインドバー4B)
【0036】
締結手段4は、
図2及び
図3に示すように、電池積層体2の各側面においてそれぞれ、上下方向に離間して設けられる。ここでは締結手段4は、第一バインドバー4Aと第二バインドバー4Bとで構成される。第一バンドバーは、電池積層体2の上面側の隅部に配置される。この第一バインドバー4Aは、折曲面が、水平方向及び垂直方向のいずれにおいても断面視をL字状となるよう、電池積層体2の側面と接触する側面部と、側面部と垂直に折曲された、電池積層体2の上面を被覆する上面部とを備えている。
(上面被覆部4c)
【0037】
また第一バインドバー4Aは、電池積層体2の側面を被覆する側面被覆部4aに加えて、電池積層体2の上から抑えるように、垂直断面視がL字状となるよう、上面被覆部4cを形成している。この上面被覆部4cでもって電池積層体2を上面から押圧することで、電池積層体2を構成する各電池セル1の天面をほぼ同一面に揃えることが可能となる。
【0038】
ここでは、直接上面被覆部4cで電池セル1の上面を押圧するので無く、側面ホルダ8Bを介在させている。すなわち先に側面ホルダ8Bを電池積層体2の隅部に固定した上で、この側面ホルダ8Bを第一バインドバー4Aでもって押圧するようにしている。
(絶縁シート54)
【0039】
さらに、上述の通り第一バインドバー4Aは電池積層体2の隅部を側面から上面にかけて垂直断面視L字状に折曲しているため、電池積層体2の側面においても、隣接する電池セル1同士を絶縁する必要がある。このため、電池積層体2の側面と第一バインドバー4Aとの間に、絶縁シート54を介在させている。絶縁シート54は、絶縁性に優れた樹脂製のシート、例えばPET等が使用できる。また、この例では絶縁シート54と側面ホルダ8Bとを別部材としているが、一の部材に統合することも可能である。
(コ字状スリット8c)
【0040】
さらに第一バインドバー4Aの上面被覆部4cは、電池セル1の上面を押圧した状態で、第一バインドバー4Aの上面を剥き出しとせず、被覆することもできる。これにより、意図しない導通をさらに回避することが可能となる。
図5、
図10の例では、側面ホルダ8Bでもって第一バインドバー4Aの上面も被覆している。このため側面ホルダ8Bは、垂直断面視コ字状となるように、コ字状のスリットを側面に開口させており、このコ字状スリット8cに第一バインドバー4Aの上面被覆部4cの先端を挿入している。この様子を
図9の断面図に示す。このようにすることで、第一バインドバー4Aの上面を被覆して絶縁し、また第一バインドバー4Aを確実にコ字状スリット8cで位置決めして、電池積層体2の上面を押圧しながら締結できる。
(中間固定機構)
【0041】
さらに第一バインドバー4Aは、その中間部分でバスバーホルダ8と結合させるための中間固定機構を設けている。具体的には、
図10〜
図12に示すように第一バインドバー4Aはその中間において、中間ホルダ8A側に突出させた中間固定突起4eを設けている。一方中間ホルダ8Aは、中間固定突起4eと対応する位置に、この中間固定突起4eを保持する中間保持部を設けている。このような中間固定機構を設けることで、締結手段4がその中間部分において側面側に凸条に膨らむことを阻止できる。
【0042】
すなわち、電池積層体を構成する電池セルのセル数が多くなる程、締結手段は長くなり、これに応じて締結手段の中間部分と電池積層体との間に空間が生じ易くなる。特に締結手段は、基本的にエンドプレート同士を締結する応力を生じさせているのみで、電池積層体の締結には有効であるものの、その上面や側面を押圧する応力は弱くなる。この結果、特に締結手段が電池セルの積層方向に長くなる程、中間部分で電池積層体から離れやすくなる。そこで、電池積層体2の上面については上述の通り、コ字状スリット8cに挿入することで第一バインドバー4Aの浮き上がりを阻止できる。さらに電池積層体2の側面については、中間固定機構によってバスバーホルダ8と結合させることで、側面からの浮き上がりを阻止している。
(中間固定突起4e)
【0043】
中間固定突起4eは、第一バインドバー4A上面の上面被覆部4cから中間ホルダ8A側に延長されている。特に先端縁を、上側に折曲させて中間ホルダ8Aに向かって突出させた折曲片4fを有している。中間固定突起4eは、好ましくは締結手段4と一体に設けることで、構成を簡素化できる。
(凹部8b)
【0044】
また側面ホルダ8Bには、この中間固定突起4eを、側面ホルダ8Bを超えて中間ホルダ8A側まで延長できるよう、コ字状スリット8cの中間部分において、中間固定突起4eと対応する部分を、コ字状スリット8cの底面を貫通させている。特に
図10の例では、中間固定突起4eの先端を折曲片4fとしているため、側面ホルダ8Bはコ字状スリット8cの片面を切り欠いて凹部8bを形成している。凹部8bは、中間固定突起4eの幅とほぼ等しく形成されており、これによって中間固定突起4eを凹部8bで位置決めして保持できる。
(中間保持部)
【0045】
一方、中間ホルダ8Aの中間保持部は、この折曲片4fを挿入する係止スリット8aである。
図10の拡大断面斜視図及び
図4の平面図に示すように、中間ホルダ8Aの長手方向における中間において、中間固定突起4eの折曲片4fと対応する位置に、この折曲片4fを挿入して係止できる大きさの係止スリット8aを開口している。特に折曲片4fを、中間固定突起4eとほぼ垂直に折曲することで、いいかえると折曲片4fと中間固定突起4eと側面被覆部4aとを階段状に折曲させて、折曲片4fと側面被覆部4aとをほぼ平行とすることで、折曲片4fに係止効果を最大限に発揮して、第一バンドバーが中間部分で電池積層体2から離間することを阻止できる。特に電源装置を車載用途に使用する場合は、振動や衝撃に晒されるため、このような外力によって締結手段4が電池積層体から離間することを阻止して、絶縁等の信頼性を高めることができる。
【0046】
なお、以上の例では中間固定機構を、長手方向の中心に一のみに設けた例を示したが、長手方向にわたって複数箇所に中間固定機構を設けることも可能であることは、いうまでもない。
(バインド穴4d)
【0047】
加えて第一バインドバー4Aは、一以上のバインド穴4dを開口している。このような開口を形成することで、第一バインドバー4Aを変形し易くできる。特に、電池セル1が充放電等によって膨張し、電池積層体2の積層方向長さが長くなった際でも、締結手段4とエンドプレート3の取り付け部位に過度な負担がかかるのを、孔の部分の変形によって軽減できる。なお、バインド穴を大きくする、あるいは多く設ける程、締結手段4の機械的強度が弱くなるので、強度と変形しやすさのバランスを考えてバインド穴の数と大きさとが設定される。
(第二バインドバー4B)
【0048】
一方第二バインドバー4Bは、電池積層体2の下面側の隅部に配置されている。この第二バインドバー4Bは、折曲面が、水平方向及び垂直方向のいずれにおいても断面視をL字状となるよう、電池積層体2の側面と接触する側面部と、側面部と垂直に折曲された、電池積層体2の下面を被覆する下面部とを備えている。
【0049】
なお
図2及び
図3に示す例では、第一バインドバー4Aと第二バインドバー4Bを異なる形状としているが、同じ形状とすることもできる。この場合は部材を共通化して製造コストを低減できる。例えば図の例では第一バインドバー4Aのみにバインド穴4dを開口し、第二バインドバー4Bにはバインド穴を設けていない。ただ、第二バインドバー4Bにもバインド穴を設けることもできる。
(締結手段4とエンドプレート3との係止構造)
(プレート係止部42)
【0050】
また締結手段4は、好ましくは
図13Aの分解斜視図に示すように、ねじ等を使用せずエンドプレート3に係止して固定する。従来は、締結手段はエンドプレートの端面に、ねじ等を使用して固定していた。このような固定構造では、螺合等の手間がかかる。特に締結手段が増えると固定すべき箇所が増えるため、組み立てコストの増大に繋がる。そこで、エンドプレート3にプレート係止部42を突出させ、締結手段4に開口したバインド係止孔4gにプレート係止部42を係止させる構造とすることで、ねじ止め等の作業を省略でき、簡便に締結手段4をエンドプレート3に固定できるようになる。またこの構造によれば、締結手段4を所定の位置に固定できるので、締結手段4の位置決めも同時に図られ、組み立ての作業性が向上し組立時間の短縮も実現できるという利点も得られる。さらに、ねじ等の別部材を不要とすることで部材のコストダウンも図られる。
【0051】
図13Aの例では、プレート係止部42はエンドプレート3の主面の四隅に設けられている。これにより、電池積層体2の左右側面にそれぞれ、上下に締結手段4である第一バインドバー4A、第二バインドバー4Bを配置して、計4つのバインドバーで電池積層体2を締結できる。また
図13Aの例では、プレート係止部42の内、上方に設けた第一プレート係止部42aに第一バインドバー4Aを、下方に設けた第二プレート係止部42bには第二バインドバー4Bを、それぞれ係止する。
(ギャップg)
【0052】
またこのプレート係止部42は、十字状に形成されている。十字状のプレート係止部42を、バインド係止孔4gに挿入して、バインド係止孔4gの内面と当接させることで、第一バインドバー4Aの位置決めが図られる。さらに
図13Dに示すように、十字状のプレート係止部42をバインド係止孔4gに挿入して係止した状態で、上下方向の端面において、バインド係止孔4gの内面とプレート係止部42の外面との上下方向の間にギャップgを設けていることが好ましい。この例では、左右方向においては、バインド係止孔4gの内面とプレート係止部42の外面とを接触させている。このように構成することで、第一バインドバー4Aのバインド係止孔4gにプレート係止部42を係止して、バインド係止孔4gの左右方向の位置決めを図ることができる。いいかえると、エンドプレート3に第一バインドバー4Aを係止させた状態では、第一バインドバー4Aによって締結されている電池積層体2が、上下方向にのみ摺動可能に保持され、左右方向は位置決めされる。したがって、電池積層体を構成する電池セル1は、エンドプレート3に第一バインドバー4Aを係止させることで、左右方向に位置決めされる。一方、上下方向においては、ギャップgを設けることで、上下方向における位置ずれや製造公差等を吸収できる。さらに
図13Eの垂直断面図に示すように、電源装置100をベースプレートBPに固定する際、エンドプレート3に垂直に貫通されたエンドプレート貫通穴3bに、ボルト56を挿通して固定することで、バインド係止孔4gの上下方向の位置決めも可能となる。ベースプレートBPは、例えば車両用の電源装置とする場合、電源装置を固定する車両のシャーシ等が該当する。
(ボルト固定穴4i)
【0053】
図13Fの分解斜視図に示すように、電源装置100をベースプレートBPに取り付ける際、エンドプレート3に、上下方向に挿通されるボルト56により、第一バインドバー4Aがエンドプレート3に固定される。上側の第一バインドバー4Aは、端縁の連結部4bを、さらに上面被覆部4cと平行となるように折曲されて水平折曲片4hとし、さらにボルト固定穴4iを開口している。ボルト固定穴4iは、第一バインドバー4Aをエンドプレート3に装着した状態で、エンドプレート3の上面に開口されたエンドプレート貫通穴3bと一致するように構成される。この構成により、ボルト56を上面からボルト固定穴4i及びエンドプレート貫通穴3bに挿通して、第一バインドバー4Aとエンドプレート3とを固定できる。さらにボルト56を介して第一バインドバー4Aがエンドプレート3に固定される際、上下方向に摺動可能な状態の電池セル1が、上下方向に規制されて、第一バインドバー4Aにより、位置決めされる。このようにギャップgを設けることで、上下方向における位置ずれや製造公差等を吸収できる。特に生産効率を考えた場合、一つの工程で電池セル1の上下方向と左右方向の位置決めを同時に行うと、作業効率が悪く生産性が低下する問題がある。これに対して本実施形態では、第一バインドバー4Aをエンドプレート3に係止して仮止めする状態で、電池セル1が左右方向に規制されて位置決めされ、さらに電源装置100を車両に取り付ける際、電池セル1が上下方向に規制されて位置決めされるので、作業効率を向上させることができる。また、例えば車両用の電源装置とする場合、電源装置100を車両に取り付けた際、上下のバインドバー4A、4B間の隙間が圧縮されて、電池セル1の耐震強度を向上させることができる。
【0054】
またギャップgは、上下に並べたバインドバーのいずれか一方に設けることが好ましい。例えば、電池積層体2の底面を、電源装置の固定面とする場合は、上方に設けた第一プレート係止部42aにのみギャップgを設け、下方に設けた第二プレート係止部42bには、ギャップを設けないことが望ましい。これによって、下方に位置する第二プレート係止部42bを基準位置として、電源装置を固定しつつ、上方の第一プレート係止部42aで位置ずれや公差を吸収して電池積層体2を安定的に固定できる。
【0055】
なお、本発明は締結手段をエンドプレートに固定する構造を上記の係止構造に限定するものでなく、例えば締結手段4をエンドプレート3に、ねじやリベットで固定する構成等、他の構成も適宜利用できる。実施の形態3として
図13Bに示す例では、ねじ33bを用いて締結手段4をエンドプレート3Bに固定している。また実施の形態4として
図13Cに示す例では、リベット33cを用いて締結手段4をエンドプレート3Cに固定している。
(電池セル1)
【0056】
電池セル1は、
図1〜
図3に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形の電池としている。この電池セル1を複数枚、厚さ方向に積層して電池積層体2とする。各電池セル1は、リチウムイオン二次電池である。ただし、電池セルは、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の二次電池とすることもできる。
図3の電池セル1は、幅の広い両表面を四角形とする電池で、両表面を対向するように積層して電池積層体2としている。各電池セル1は、上面である封口板の両端部に正負の電極端子13を突出して設けて、中央部にはガス排出弁のガス排出口を設けている。角形の電池セル1は、底を閉塞する筒状に金属板をプレス加工している外装缶の開口部を、封口板で閉塞して密閉している。封口板は平面状の金属板で、その外形を外装缶の開口部の形状としている。この封口板はレーザ溶接して外装缶の外周縁に固定されて外装缶の開口部を気密に閉塞している。外装缶に固定される封口板は、その両端部に正負の電極端子13を固定しており、さらに正負の電極端子13の中間にはガス排出口を設けている。ガス排出口の内部にはガス排出弁を設けている。
(スペーサ15)
【0057】
スペーサ15は、電池セル1の外装缶同士を絶縁するため、絶縁性の部材で構成される。このためスペーサ15は、電池セル1の外装缶の主面とほぼ等しいか、これよりも若干小さい大きさに形成される。このようにすることで、電池セル1同士の間に介在されてこれらの主面を離間させて絶縁を図ると共に、電池セル1を積層した状態でスペーサ15が電池セル1同士の隙間から表出する事態を回避し、電池積層体2の大きさが大きくなることを回避できる。スペーサ15は、絶縁性に優れた樹脂製のシート(例えばPET等)で構成できる。またスペーサ15を薄くすることで、電池積層体2の厚型化を回避できる。
(スペーサ穴部15b)
【0058】
スペーサ15は、中央にスペーサ穴部15bを設けることが好ましい。スペーサ穴部15bは、スペーサ15の周囲からほぼ等間隔に形成される。
図10に示す例では、スペーサ15の外形を面取りした長方形状とし、スペーサ穴部15bの形状も同様に面取りした長方形状としている。このようにスペーサ穴部15bを設けることで、電池セル1が膨張しても、スペーサ穴部15bである程度吸収することができる。特に電池セル1は、急速な充放電によって内部の集電体が膨張し、外装缶が膨らむことがある。このような場合に、膨張分を吸収できる構造とすることで、締結部材への負荷を軽減して、信頼性高く利用できる利点が得られる。
【0059】
またスペーサ穴部15bは、貫通孔とすることが好ましい。スペーサ15に貫通孔を設ける加工は容易であり、製造コストを削減できる。
(バスバー14)
【0060】
各電池セル1は、正負の一対の電極端子13を備えている。この電池セル1を積層した状態で、隣接する電池セル1の、電極端子13同士を導電性のバスバー14で接続している。バスバー14の接続形態によって、電池セル1同士を直列や並列に接続できる。
図2の例では、隣接する電池セル1の正極端子と負極端子をそれぞれバスバー14で接続することで、12枚の電池セル1を直列に接続している。バスバー14は、好ましくは導電性に優れ、また好ましくはレーザ溶接に適した金属板で構成される。ここでは、バスバー14の外形を平面視において長方形状としつつ、端縁を半円状に面取りしたトラック状に形成している。
(電圧検出線)
【0061】
また、各電池セル1のセル電圧を測定するために、各バスバー14には、電圧を検出するための電圧検出線が固定されている。電圧検出線は、導電リードやハーネス、あるいはフレキシブルプリント基板(FPC)等で構成され、一端を回路基板9に接続している。
図2に示す例では、FPCで構成された電圧検出線を、バスバー14の上面に固定している。
(バスバーホルダ8)
【0062】
また電池積層体2の上面には、バスバーホルダ8が固定される。バスバーホルダ8は絶縁性の部材で構成され、バスバー14と電池セル1との意図しない導通を避けるため、電池セル1の上面を被覆する。上述の通り、このバスバーホルダ8は中間ホルダ8Aと、その側面の側面ホルダ8Bに3分割されている。中間ホルダ8Aは、
図2の分解斜視図に示すように、側面ホルダ8Bとの接合界面に設けられた嵌合構造30でもって固定される。
(中間ホルダ8A)
【0063】
中間ホルダ8Aは、各電極端子13を電気接続させるために、電池積層体2の上面に固定した状態で、電極端子13を表出させるための開口窓24を開口させている。これによって、電気接続に必要な部位を除いて電池セル1の上面を絶縁しつつ、開口窓24から電極端子13を表出させることで、電極端子13同士の電気接続を維持している。
(位置決めガイド16)
【0064】
さらに中間ホルダ8Aは、バスバー14で電極端子13を接続させるために、バスバー14の位置決めのためのガイドを備えている。
図2及び
図4の例では、中間ホルダ8Aは、各バスバー14を固定する部位に、このバスバー14を位置決めするための位置決めガイド16を壁状に形成している。この例では、バスバー14の外形に沿って中間ホルダ8Aの表面を壁状に突出させて、位置決めガイド16を中間ホルダ4Aと一体的に設けている。また位置決めガイド16は、ここに挿入されるバスバー14の底面を支持する絶縁部17を、位置決めガイド16内に格子状に設けている。位置決めガイド16に挿入されたバスバー14を、電池セル1の電極端子13と接続するために、位置決めガイド16には開口窓24が形成されている。その一方で、位置決めガイド16をすべて開口させると、バスバー14の底面が電池セル1の外装缶上面の封口板と接触して、意図しない導通を生じる可能性がある。そこで、電極端子13のみを導通させ、他の部位、例えば封口板等は必要以上に露出させず、ホルダカバーで被覆することで、バスバー14と電池セル1とを絶縁して、信頼性を高めることができる。
(絶縁部17)
【0065】
位置決めガイド16と絶縁部17は、使用されるバスバー14の形状や電極端子13の位置等に応じて、適宜設計される。バスバー14は、その外形を平面視トラック形状として左右対称の形状としているため、位置決めガイド16はこれに応じて、トラック状のバスバー14を案内できる窪みを形成すると共に、位置決めガイド16の両端を貫通させて開口窓24とし、開口窓24同士の間に絶縁部17を形成する。このような位置決めガイド16と絶縁部17は、好ましくは中間ホルダ8Aに一体成型で形成される。樹脂製の中間ホルダ8Aとすることで、このような形状の位置決めガイド16を容易に構成できる。
(ガスダクト)
【0066】
さらに中間ホルダ8Aは、その底面側に、各電池セル1のガス排出弁と対応する位置に、ガスダクト6を形成している。ガスダクト6は、ガス排出弁が開弁した際に電池セル1から排出される高圧のガスがガスダクト6内に案内されるよう構成されている。このガスダクト6は、好ましくは中間ホルダ8Aに一体に形成される。
【0067】
なお、この構成は一例であり、例えば中間ホルダとは別個に、ガスダクトを設けることもできる。またガスダクトに案内されたガスを、外部に案内して排出するためのガス排出路と接続することもできる。
(回路基板9)
【0068】
さらに中間ホルダ8Aの上面には、電子回路を実装した回路基板9が固定されている。回路基板9に実装される電子回路は、電池セル1の電圧等を監視するための保護回路や制御回路等とできる。また制御回路は、すべての電源装置に設ける必要は無く、例えば複数の電源装置を連結して電源システムを構築する場合は、一の電源装置にのみ制御回路と保護回路とを設け、他の電源装置には保護回路のみを設けて、一の制御回路で各電源装置を集中して制御するよう構成してもよい。
(基板位置決めボス50)
【0069】
中間ホルダ8Aは、
図14の分解斜視図及び
図15の断面図に示すように、その中央に回路基板9と固定するための基板位置決めボス50を設けている。基板位置決めボス50は、その周囲に、回路基板9を保持する保持突起を形成している。これによって、回路基板9をバスバー14の上面に位置決めして固定することができる。
(ホルダカバー20)
【0070】
中間ホルダ8Aの上面には、
図1及び
図2に示すようにホルダカバー20が固定される。ホルダカバー20は、中間ホルダ8Aの上面をカバーして、電池積層体2に接続されたバスバー14や回路基板9を保護する。したがってホルダカバー20は、中間ホルダ8Aの上面をカバーできる外形であって、内部に回路基板9を収納できる空間を有する形状にプラスチックで成形している。
図2のホルダカバー20は、全体を下側開口の浅い容器形状に成形しており、中央部を周囲よりも一段深く成形して、回路基板9を収納するための収納凹部を設けている。
【0071】
中間ホルダ8Aに設けた基板位置決めボス50は、ホルダカバー20を中間ホルダ8Aと螺合するためのねじ穴を開口している。これにより、基板位置決めボス50でもって回路基板9の固定とホルダカバー20の固定とを同時に行え、回路基板9をバスバー14の上面に位置決めして固定することができる。(電源装置の製造方法)
【0072】
以上の通りバスバーホルダ8を3分割し、先に締結手段4で電池積層体2を締結した状態で、バスバー14等を位置決めする中間ホルダ8Aを固定可能としたことで、電源装置の組み立ての作業性を向上させることができる。すなわち、角型の電池セルを積層する際、治具でエンドプレートを押圧して圧縮状態として締結手段を締結することとなるため、バスバーホルダの固定に先行してバスバーを組み立てることができなかった。そこで、バスバーホルダ8の内、締結手段4を絶縁する部分(側面ホルダ8B)を分割することで、先に締結手段4を締結して治具による押圧を早々に解除させ、その後にバスバー14の固定に関する中間ホルダ8Aを固定可能として、作業性を高めることが可能となった。また、このようにバスバーホルダ8を分割した結果、中間ホルダ8Aを締結手段で固定できなくなる事態については、中間ホルダ8Aと側面ホルダ8Bと接合面に嵌合構造30を設けることで解消している。
【0073】
ここで、電源装置の製造方法を
図16〜
図18に基づいて説明する。これらの図において、
図16は電池積層体2を締結手段4で締結する状態を示す分解斜視図、
図17は
図16の側面ホルダ8B同士の間に中間ホルダ8Aを嵌合する状態を示す分解斜視図、
図18はバスバーホルダ8を電池積層体2に固定した後にバスバー14を固定する状態を示す分解斜視図を、それぞれ示している。まず、
図16に示すように、電池積層体2を、締結手段4で締結する。電池積層体2は、電池セル1を、スペーサ15を介して積層した状態で、端面のエンドプレート3を、治具によって押圧する。この状態で、電池積層体2の側面において、上下の隅部に、それぞれ絶縁シート54を被覆する。そして上方の隅部に、側面ホルダ8Bを配置する。そして、第一バインドバー4Aと第二バインドバー4Bを、電池積層体2側面の上方及び下方に、それぞれ締結する。第一バインドバー4Aは、その端縁がコ字状スリット8cに挿入されるように位置決めされる。第一バインドバー4Aと第二バインドバー4Bは、それぞれエンドプレート3に固定される。その後、治具を取り外す。
【0074】
次に
図17に示すように、電池積層体2に側面ホルダ8Bを固定した状態で、中間ホルダ8Aを嵌合機構を用いて嵌合させる。ここでは、側面ホルダ8Bに設けた係止片32と、中間ホルダ8Aに設けた爪部31とを係合させて、側面ホルダ8B同士の間に中間ホルダ8Aを嵌合させる。
【0075】
さらに
図18に示すように、中間ホルダ8Aにバスバー14をそれぞれ固定する。バスバー14は、
図3等に示すねじ51による螺合やレーザ溶接を用いて電池セル1の電極端子13と固定する。また、バスバー14に開口された電極穴の一方を円形状として、他方を長穴状とし、長穴状の電極穴は溶接リングを介在させて螺合やレーザ溶接する。この場合、先に円形状の電極穴15を電極端子13と固定し、その後長穴状の電極穴15Bに電極端子13を固定することで、積層した電池セル1の各電極端子13間の距離のばらつきを、長穴によって電池セル1の厚さ方向に溶接位置を調整して吸収でき、製造公差によらず高い信頼性でもって電極端子13を固定できる。
【0076】
以上の電源装置は、車載用の電源として利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0077】
図19に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94と、電源装置100とモータ93を搭載する車両本体90と、モータ93で駆動されて車両本体を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(電気自動車用電源装置)
【0078】
また、
図20に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94と、電源装置100とモータ93を搭載する車両本体90と、モータ93で駆動されて車両本体を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(蓄電用電源装置)
【0079】
さらに、この電源装置は、移動体用の動力源としてのみならず、定置型の蓄電用設備としても利用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を
図21に示す。この図に示す電源装置100は、複数の電池パック81をユニット状に接続して電池ユニット82を構成している。各電池パック81は、複数の電池セルが直列及び/又は並列に接続されている。各電池パック81は、電源コントローラ84により制御される。この電源装置100は、電池ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。このため電源装置100は、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して電源装置100と接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから電源装置100への充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0080】
電源装置100で駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して電源装置100と接続されている。電源装置100の放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、電源装置100からの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ84によって制御される。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。
図21の例では、UARTやRS−232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0081】
各電池パック81は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、パック入出力端子DIと、パック異常出力端子DAと、パック接続端子DOとを含む。パック入出力端子DIは、他のパック電池や電源コントローラ84からの信号を入出力するための端子であり、パック接続端子DOは子パックである他のパック電池に対して信号を入出力するための端子である。またパック異常出力端子DAは、パック電池の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電池パック81同士を直列、並列に接続するための端子である。