特許第6234933号(P6234933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234933
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】親水性オルガノシラン
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/513 20060101AFI20171113BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20171113BHJP
   B27K 5/00 20060101ALI20171113BHJP
   C03C 17/30 20060101ALI20171113BHJP
   C03C 17/32 20060101ALI20171113BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20171113BHJP
   C08J 7/06 20060101ALI20171113BHJP
   C23C 22/00 20060101ALI20171113BHJP
   C07F 7/18 20060101ALN20171113BHJP
   C08G 65/336 20060101ALN20171113BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   D06M13/513
   D06M15/53
   B27K5/00 A
   B27K5/00 G
   C03C17/30 A
   C03C17/32 A
   C08J7/04 T
   C08J7/06 Z
   C23C22/00 Z
   !C07F7/18 G
   !C08G65/336
   D06M101:06
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-540022(P2014-540022)
(86)(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公表番号】特表2015-502343(P2015-502343A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】US2012062646
(87)【国際公開番号】WO2013066911
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月15日
(31)【優先権主張番号】61/555,526
(32)【優先日】2011年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/610,072
(32)【優先日】2012年3月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ コーニング コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル サルバトーレ フェリット
(72)【発明者】
【氏名】ロク ミーン エヴァ リー
(72)【発明者】
【氏名】レーニン ジェームズ ペトロフ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ ロイドル
(72)【発明者】
【氏名】アブリル サージェナー
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−56127(JP,A)
【文献】 特開昭48−85615(JP,A)
【文献】 特開平10−59828(JP,A)
【文献】 特開昭55−128076(JP,A)
【文献】 特開平8−188697(JP,A)
【文献】 特開平7−33870(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第2426698(DE,A)
【文献】 特開平11−240954(JP,A)
【文献】 Organic Letters,2002年,Vol.4, No.13,p.2117-2119
【文献】 Journal of Controlled Release,1997年,Vol.49, No.2-3,p.229-242
【文献】 Advances in Colloid and Interface Science,1976年,Vol.6, No.2,p.95-137
【文献】 Helvetica Chimica Acta,1976年,Vol.59, No.3,p.717-727
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00−13/535
D06M 15/00−15/715
D06M 101/00−101/40
B27K 5/00−5/06
C03C 17/30−17/44
C08J 7/00−7/18
C23C 22/00−22/86
C07F 7/00−7/30
C08G 65/00−65/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式:
(R(3−n)(RO)SiRO(CHCHO)(CO)
(式中、
nは1又は2であり、
a≧1であり、bは0〜30まで可変であるが、ただし、a≧bであり、
は、1〜12個の炭素原子を含有する炭化水素基であり、
は、水素又は1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
は、2〜12個の炭素原子を含有する二価の炭化水素基であり、
は水素、R、又はアセチル基である。)
で表される親水性オルガノシランを含む処理組成物を表面に適用する工程を含む、表面の処理方法であって、
前記親水性オルガノシランが一般式
(CH)(CHCHO)SiCHCHCHO(CHCHO)CH、又は
(CH)(CHO)SiCHCHC(CHO(CO)18(CO)18Hで表され、
前記表面が、ガラス、金属、プラスチック、鉱物、木材、繊維、織物、または布地である、方法。
【請求項2】
前記繊維が、綿、絹、麻、羊毛、レーヨン、アセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらのブレンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維の形態が、糸、フィラメント、綱、紡ぎ糸、織物、編み物、不織布材料、紙、カーペット、または皮である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維に適用される処理組成物の量が、繊維の乾燥重量に対して0.1〜15重量%を繊維上に供給するために十分である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維に適用される処理組成物の量が、繊維の乾燥重量に対して0.2〜5重量%を繊維上に供給するために十分である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理組成物が、親水性オルガノシランの水性溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理組成物が、有機溶媒を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記処理組成物が、酸または塩基を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理組成物が、酸または塩基を更に含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年11月4日出願の米国特許出願第61/555,526号及び2012年3月13日出願の米国特許出願第61/610,072号の利益を主張する。
米国特許出願第61/555,526号及び同61/610,072号はいずれもその全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
様々な表面の親水性をより高めるための改善された組成物処理の開発が今なお求められている。多くのかかる表面は本来は疎水性であるか、或いは水若しくは極性液体を吸収する能力又は前記液体で表面を濡らす能力が限られている。これら表面としては、繊維、布地、プラスチック、ガラス、又は金属などの基材を挙げることができる。表面を処理してそれらの親水性をより高めることで、吸湿性、吸収性、表面の濡れ、通気性などのような特性が改善される可能性がある。親水性表面処理の多くは、処理分子と表面との物理的吸収に基づいている。そのため、処理は頑強なものではなく、容易に洗い落とされる又は取り除かれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、様々な表面を処理して親水性を高めるために使用できる材料を見出すことが求められている。さらに、表面を恒久的に改質して表面とより永続的に結合するような親水性材料を見出すことも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、処理表面の親水性を改善する特定のオルガノシランを見出した。具体的には、本開示は、次の式で表されるオルガノシランを含む組成物に関する。
(R(3−n)(RO)SiRO(CHCHO)(CO)(式中、
nは、1又は2であり、
a≧1であり、bは、0〜30までさまざまであるが、ただし、a≧bであり、
は、1〜12個の炭素原子を含有する炭化水素基であり、
は、水素又は1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
は、2〜12個の炭素原子を含有する二価の炭化水素基であり、
は、水素、R、又はアセチル基である。)
【0005】
本発明のオルガノシラン、又は本発明のオルガノシラン由来の反応生成物を含む組成物は、様々な表面を処理してその親水性をより高めるのに特に有用である。具体的には、本発明のオルガノシラン及び関連する組成物は、布地、繊維又は硬質表面を処理してその表面の親水性を改善するのに有用である。処理表面は、改善された吸収性、吸湿性、又は表面濡れ特性を有する可能性がある。さらに、本発明の組成物によるその後の表面処理は、多くの処理よりも永続的である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、次の式で表されるオルガノシランを含む組成物、又はそれから得られる反応生成物に関する。
(R(3−n)(RO)SiRO(CHCHO)(CO)(式中、
下付き文字「n」は1又は2であり、或いはnは2であり、
下付き文字「a」は1以上であり、
下付き文字「b」は、0〜30まで可変であるが、
ただし、a≧bであり、
は、1〜12個の炭素原子を含有する炭化水素基であり、
或いはRは、アルキル基又はフェニル基であり、
或いはRは、メチルであり、
は、水素又は1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
或いはRは、メチル又はエチルであり、
或いはRは、エチルであり、
は、2〜12個の炭素原子を含有する二価の炭化水素基であり、
或いはRは、2〜6個の炭素原子を含有し、
或いはRは、プロピレン又はイソブチレンであり、
或いはRは、−CHCHC(CH−であり、
或いはRは、プロピレンであり、
は、水素、R、又はアセチル基であり、
或いはRは、メチルである。)
【0007】
本発明のオルガノシランは、主に、上記式中の(CHCHO)で表されるようなポリオキシエチレン鎖であるポリオキシアルキレン部位を含有する。ポリオキシアルキレン基は主にオキシエチレン単位(CO)を含むが、オキシプロピレン単位(CO)、オキシブチレン単位(CO)、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン基が(CO)単位、(CO)単位、及び/又は(CO)単位の混合物を含む場合、オキシアルキレン基は通常は前記基についてランダムであるが、ブロック化も可能である。通常は、ポリオキシアルキレン基は、モル基準で定義されかつ上記の式中、下付き文字「a」で示されるとき、過半数のオキシエチレン単位から構成される。下付き文字「a」は、1以上であり、
或いはaは、4〜30まで可変であってよく、
或いはaは、4〜20まで可変であってよく、
或いはaは、4〜10まで可変であってよく、
或いはaは、5〜8まで可変であってよく、
或いはaは、7である。
【0008】
下付き文字「b」は、0〜30まで可変であり、
或いはbは、1〜30まで可変であってよく、
或いはaは、1〜20まで可変であってよく、
或いはaは、10〜20まで可変であってよく、
或いはaは、15〜20まで可変であってよいが、
ただし、a≧bである。)
【0009】
一実施形態において、オルガノシランは、次の一般式で表される。
(CH)(CHCHO)SiCHCHCHO(CHCHO)CH
【0010】
一実施形態において、オルガノシランは、次の一般式で表される。
(CH)(CHO)SiCHCHC(CHO(CHCHO)18(CO)18
【0011】
本発明のオルガノシランは、当分野において公知の任意のオルガノシラン調製方法によって調製されてよく、或いはオルガノシランは、以降に述べるような方法で調製されてもよい。
【0012】
オルガノシランは、
a)式(R(3−n)(RO)SiHで表されるオルガノシラン
(前記式中、Rは、1〜12個の炭素原子を含有する炭化水素基であり、
は、水素又は1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
下付き文字nは1又は2であり、或いはnは2である。)と、
b)式RO(CHCHO)(CO)で表されるポリオキシアルキレン
(前記式中、下付き文字「a」は、1以上であり、
下付き文字「b」は、0〜30まで可変であるが、
ただし、a≧bであり、
は、水素、R、又はアセチル基であり、
は、2〜12個の炭素原子を含有する不飽和脂肪族炭化水素基である。)と、
c)ヒドロシリル化触媒と、を反応させる工程を含む方法によって調製されてよい。
【0013】
成分a)は、式(R(3−n)(RO)SiHで表されるオルガノシランである。或いは、2個以上のH基がSi原子上に存在することも可能であり、その場合にはRが0である。このような場合、2個のポリエーテル基がその後、Si原子上にグラフト化する。本発明の方法において成分a)として好適なオルガノシランの代表例としては、次のものが挙げられる。
(CH)(CHCHO)SiH、
(CH)(CHO)SiH、
(CHCH)(CHCHO)SiH、
(CHCH)(CHO)SiH、
(CH)(HC(CHO)SiH、
(CHCHO)SiH
【0014】
成分b)として有用なポリオキシアルキレンは、一方の分子鎖末端が2〜12個の炭素原子を含有する不飽和脂肪族炭化水素基で終端している任意のポリオキシアルキレンであり得る。ポリオキシアルキレンは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタンス(epoxyoctance)、シクロヘキセンオキシド又はエキソ−2,3−エポキシノルボルアン(epoxynorborane)などの環状エポキシドの重合により得ることができる。ポリオキシアルキレン基は主にエチレン単位(CO)を含むが、少量のオキシプロピレン単位(CO)、オキシブチレン単位(CO)又はこれらの混合物を含有してもよい。通常は、ポリオキシアルキレン基は、モル基準で定義されかつ上記の式中の下付き文字「a」で示されるとき、過半数のオキシエチレン単位から構成される。オキシプロピレン単位は、含まれる場合、上記の式中の下付き文字「b」で表される。不飽和脂肪族炭化水素基は、アルケニル又はアルキニル基であってよい。アルケニル基の代表的な非限定例は、次の構造HC=CH−、HC=CHCH−、HC=CHC(CH−、HC=C(CH)CH−、HC=CHCHCH−、HC=CHCHCHCH−、及びHC=CHCHCHCHCH−で示される。アルキニル基の代表的な非限定例は、次の構造HC≡C−、HC≡CCH−、HC≡CCH(CH)−、HC≡CC(CH−、及びHC≡CC(CHCH−で示される。
【0015】
一実施形態において、前記式のポリオキシアルキレン中、Rは、HC=CHCH−、又はHC=CHC(CH−である。HC=CHC(CH−基は、炭化水素基としてヒドロシリル化反応中に転位しにくいので、より純度の高い本発明のオルガノシランを調製するのに好ましい実施形態である。
【0016】
一方の分子末端に不飽和脂肪族炭化水素基を有するポリオキシアルキレンは、当分野において公知であり、また、多くが市販されている。
【0017】
一方の分子末端に不飽和脂肪族ヒドロカルビルを有するポリオキシアルキレンの代表的な非限定例としては、次のものが挙げられる。
C=CHCHO[CO]
C=CHCHO[CO][CO]
C=CHCHO[CO]CH
C=CHC(CHO[CO]CH
C=CHC(CHO[CO][CO]
C=CHCHO[CO]C(O)CH
C=C(CH)CHO[CO]
HC≡CCHO[CO]
HC≡CC(CHO[CO]
(前記式中、a及びbは先に定義した通りである。)
【0018】
一方の分子末端に不飽和脂肪族炭化水素基を有するポリオキシアルキレンは、NOF(日油、東京、日本)、クラリアント社(スイス)、及びダウ・ケミカル社(ミッドランド、MI)を含む多数の供給元からから市販されている。これら材料の市販例としては、NOF製のユニオックスMUS−4、クラリアント社製のポリグリコールAM 450、並びにダウ・ケミカル社製のSF 400及びSF 443が挙げられる。
【0019】
ヒドロシリル化反応に使用される成分a)及びb)の量は可変であってよい。成分a)のSiH単位と成分b)の脂肪族不飽和基とのモル比は、10/1〜1/10の範囲、或いは5/1〜1/5の範囲、或いは1/1〜1/2の範囲であってよい。通常は、成分a)及びb)の量は、成分a)中のSiH基に対しモル過剰の成分b)の不飽和基を供給するように選択される。
【0020】
成分c)は、ヒドロシリル化触媒である。ヒドロシリル化触媒は、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム又はルテニウムから選択される任意の好適な第VIII族金属系触媒であり得る。本発明の組成物の硬化を触媒するのに有用な第VIII族金属含有触媒は、ケイ素結合水素原子とケイ素結合不飽和炭化水素基との反応を触媒することが知られているもののいずれであってもよい。ヒドロシリル化により本発明の組成物の硬化をもたらす触媒として使用するのに好ましい第VIII族金属は、白金系触媒である。本発明の組成物の硬化に好ましいいくつかの白金系ヒドロシリル化触媒は、白金金属、白金化合物及び白金錯体である。
【0021】
好適な白金触媒は、米国第2,823,218号(通常、「スパイヤー触媒」と称される)及び米国特許第3,923,705号に記載されている。白金触媒は、カールシュテット(Karstedt)の米国特許第3,715,334号及び同第3,814,730号に記載されている「カールシュテット触媒」であってよい。カールシュテット触媒は、通常、トルエン等の溶剤中に約1重量パーセントの白金を含有する、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。或いは、白金触媒は、米国特許第3,419,593号に記載されるように、塩化白金酸と脂肪族不飽和末端を含有する有機ケイ素化合物との反応生成物であってもよい。或いは、ヒドロシリル化触媒は、米国第5,175,325号に記載されるように、塩化白金とジビニルテトラメチルジシロキサンからなる中性化錯体である。
【0022】
更に好適なヒドロシリル化触媒は、例えば、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,516,946号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号及び同第5,175,325号、並びに欧州特許第0 347 895 B1号に記載されている。
【0023】
ヒドロシリル化触媒は、反応組成物全体100万部につき(ppm)、0.001重量部程度の白金元素族金属に相当する量で添加されてよい。通常は、反応組成物中のヒドロシリル化触媒の濃度は、白金元素族金属100万部につき少なくとも1部の当量を供給し得るものである。白金元素族金属100万部当たり1〜500部、或いは50〜500部、或いは50〜200部の当量を供給する触媒濃度を使用してよい。
【0024】
本発明の方法で行われる反応は、成分a)のSiH単位が成分b)の不飽和脂肪族炭化水素基と反応してSi−C結合が形成される、ヒドロシリル化反応である。この反応は、ヒドロシリル化反応を行うための当分野において公知の条件下で行われてよい。
【0025】
ヒドロシリル化反応は、溶媒を用いずに行ってもよく、又は溶媒存在下で行ってもよい。溶媒は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn−プロパノール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、又はキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘプタン、ヘキサン、又はオクタン)、グリコールエーテル(例えば、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、又はエチレングリコールn−ブチルエーテル)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン又は塩化メチレン)、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ホワイトスピリット、ミネラルスピリット、又はナフサであり得る。
【0026】
溶媒の量は、最大70重量%であり得るが、典型的には20〜50重量%であって、前記重量%はヒドロシリル化反応における成分の総重量を基準とする。ヒドロシリル化反応中に用いた溶媒は、生成されたオルガノシランから様々な公知の方法によってその後除去することができる。
【0027】
かかる反応を増強することが知られている追加成分を、ヒドロシリル化反応に添加することも可能である。前記成分としては、白金触媒と組み合わせて緩衝効果をもたらす酢酸ナトリウムなどの塩が挙げられる。
【0028】
本開示はまた、前記方法によって製造されるオルガノシラン組成物にも関する。
【0029】
本発明のオルガノシランは、上記式中、(RO)で表されるようなアルコキシ基を少なくとも1個含有する。そのため、本発明のオルガノシランは水性媒体中で加水分解し、更に縮合するとオリゴマー又はより高分子量の高分子シロキサンを形成する可能性がある。したがって、本開示は、前記オルガノシランの加水分解及び/又は縮合によって生じる反応生成物にも関する。本発明のオルガノシラン、又はその後生じるオルガノシラン由来のオリゴマーシロキサン若しくは高分子シロキサンは、ヒドロキシル官能性化合物又は表面と反応する可能性がある。本発明のオルガノシランは、主にエチレンオキシドであるポリアルキレンオキシド鎖を含有することから、本発明のオルガノシランは「親水性」であると考えられる。したがって、本発明のオルガノシランは、様々な表面を処理して表面により高い「親水性」を付与するために使用されてもよい。さらに、シラン部位の反応性は、本発明の組成物を様々な表面に結合して、より持続性の良い、より耐久性の高い親水性処理を提供できる可能性がある。
【0030】
様々な表面を処理するのに使用する場合、オルガノシランは、溶媒を用いずに適用されてもよく、水性溶液として、有機溶媒溶液として、又は多成分製剤中の成分として適用されてもよい。溶液として適用される場合、pHを緩衝する酸又は塩基などの追加成分であって、アルコキシシランの加水分解及び縮合を増強することが知られているものを溶液に添加してもよい。
【0031】
本発明のオルガノシラン、又はそれに由来する反応生成物を用いて、様々な表面の親水性を高めることができる。この処理は、従来の処理よりも持続性がある又はより耐久性が高い可能性がある。処理に適した表面としては、ガラス、金属、プラスチック、鉱物、及び木材などの様々な硬質表面が挙げられる。表面には更に、繊維、織物又は布地表面も包含される。処理組成物で処理できる繊維又は布地としては、綿、絹、麻、及び羊毛などの天然繊維、レーヨン及びアセテートなどの再生繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、及びポリプロピレンなどの合成繊維、並びにこれらの組み合わせ及びブレンドが挙げられる。繊維の形態としては、糸、フィラメント、綱、紡ぎ糸、織物、編み物、不織布材料、紙、カーペット、及び皮を挙げることができる。更なる実施形態では、繊維は、綿などのセルロース系繊維である。
【0032】
本発明のオルガノシラン、それ由来のオリゴマー又はポリマーを含む繊維処理組成物は、繊維又は布地の製造中に、或いはその後の後処理プロセスによって、繊維及び/又は布地に適用することができる。適用後、キャリア(含まれる場合)は、処理組成物から、例えば組成物を周囲温度又は高温で乾燥することによって除去することができる。繊維及びに布地に適用される処理組成物の量は、通常は、繊維及び布地の乾燥重量に対して組成物0.1〜15重量%を供給すれば十分であり、好ましくは繊維又は布地の乾燥重量に対して0.2〜5重量%の量である。
【実施例】
【0033】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。当業者には当然のことながら、以下の実施例中に開示される技術は、本発明の実施に際して良好に機能することが本発明者により見出された技術の例示であり、その実施における好ましい形態を構成するとみなすことができる。しかし本開示の見地から、当業者には当然のことながら、開示される特定の実施形態において本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で多くの変更をなすことができ、依然として類似の又は同様の結果を得ることができる。全てのパーセンテージは重量%である。特に指定しない限り、測定は全て23℃で行った。
【0034】
(実施例1)
ポリ(EO)メチル3−(メチルジエトキシシリル)プロピルエーテルの調製
PG−SF−アリルEO7−Me(463.73g、NOF製のユニオックスMUS−4)及び酢酸ナトリウム(0.05g、フィッシャーバイオテク製)を、三日月形パドル撹拌棒、水冷コンデンサとメチルジエトキシシラン(136.52g、ゲレスト社製)を入れた250mL滴下漏斗とを取り付けたクライゼン管、及び熱電対が付いた温度計アダプタを装備した2Lの三つ口丸底フラスコ(RBF)に、全て窒素パージ下で入れた。メチルジエトキシシランの20wt%又は28gをRBFに供給したときに反応混合物を60℃まで加熱し、その直後にIPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒(約400μL又は6ppm)を添加した。直ちに観測された発熱は18℃であった。滴下漏斗内の残りのメチルジエトキシシランをRBFに約1.21g/分の速度で投与し、その間、温度は80℃に設定して、滴下中は85℃未満に保持した。シランを添加してから1時間後にIPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒の2回目の添加(約500μL又は7ppm)を行い、約5℃の発熱が確認された。メチルジエトキシシランを全てRBFに入れたら、温度を85℃設定点に設定し、IPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒の3回目の添加(約500μL又は7ppm)を行ったが、その間、発熱は観測されなかった。生成混合物をその後、ヒドロシリル化を完了させるために更に1時間還流させた。反応終了を確認した後、残留SiHをIRで測定すると、2150cm−1ピークにおいて34ppmであった。その次の日に、クライゼン管を、水冷コンデンサが装着された250mL丸底フラスコに替えた。ストリップ処理のために装置を減圧した。生成混合物を、1.3〜5.3kPa(10〜40mmHg)の減圧下において90℃で1時間ストリップ処理した。IRで測定された最終残留SiH含量は、2150cm−1において4ppmであった。最終的な最終生成物を20μm径の濾紙で加圧濾過して酢酸ナトリウムを取り除いた。
【0035】
(実施例2)
ポリ(EO)メチル3−(メチルジメトキシシリル)プロピルエーテルの調製
PG−SF−アリルEO7−Me(489.378g、NOF製のユニオックスMUS−4)及び酢酸ナトリウム(0.1g、フィッシャーバイオテク製)を、三日月形パドル撹拌棒、水冷コンデンサとダウコーニング(登録商標)Z−6701シラン(110.622g)を入れた250mL滴下漏斗とを取り付けたクライゼン管、及び熱電対が付いた温度計アダプタを装備した2Lの三つ口丸底フラスコ(RBF)に、全て窒素パージ下で入れた。Z−6701シランの10wt%又は11gをRBFに供給したときに反応混合物を45℃まで加熱し、その直後にIPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒(約400μL又は6ppm)を添加した。直ちに観測された発熱は2〜3℃であった。滴下漏斗中の残りのZ−6701をRBFに約1.67g/分の速度で投与する一方で、53℃の設定温度+発熱2℃を滴下中、維持した。Z−6701を全てRBFに入れたときに、混合物の温度を53℃設定点に戻し、IPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒の2回目の添加(約500μL又は7ppm)を行った。混合物をその後更に2時間保持して反応を完了させ、ここで1時間還流させた後にIPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒の3回目の添加(約500μL又は7ppm)を行った。触媒を添加する毎に観測される一定して2℃の発熱は、最後の添加以外では1時間続いたが、最後の添加では30分しか続かなかった。反応完了を確認した後、残留SiHをIRで測定すると、2150cm−1ピークにおいて35ppmであった。その次の日に、クライゼン管を、水冷コンデンサが装着された250mL丸底フラスコに替えた。ストリップ処理のために装置を減圧した。生成混合物を、1.3〜2.7kPa(10〜20mmHg)の減圧下において60℃で1時間ストリップ処理した。IRで測定された最終残留SiH含量は、2150cm−1において4ppmであった。最終的な最終生成物を20μm径の濾紙で加圧濾過して酢酸ナトリウムを取り除いた。
【0036】
(実施例3)
ポリ(EO)ヒドロキシル3−(メチルジエトキシシリル)プロピルエーテルの調製
PG−SF−アリルEO7−OH(191.85g、ダウ・ケミカル社製)及び酢酸ナトリウム(0.05g、フィッシャーバイオテク製)を、三日月形パドル撹拌棒、水冷コンデンサとメチルジエトキシシラン(ゲレスト社製58.67g)を入れた250mL滴下漏斗とを取り付けたクライゼン管、及び熱電対が付いた温度計アダプタを装備した500mLの三つ口丸底フラスコ(RBF)に、全て窒素パージ下で入れた。メチルジエトキシルシランの10wt%又は6gをRBFに投与したときに反応混合物を60℃まで加熱し、その直後にIPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒(約230μL又は8ppm)を入れた。直ちに観測された発熱は7℃であった。滴下漏斗中の残りのメチルジエトキシルシランをRBFに約0.88g/分の速度で投与し、その間、温度は67℃に設定して、滴下中、約75℃に保持した。メチルジエトキシルシランを全てRBFに添加したときに、温度を75℃に設定して1時間還流させて反応を完了させた。反応混合物を60℃まで冷却して、IRにより、159ppmの残留SiHが2150cm−1ピークにおいて観測された。IPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒の2回目の添加(約50μL又は約1.7ppm)を反応混合物に入れたが、発熱は検出されなかった。反応温度を80℃まで上げて、1時間還流させた。残留SiHは126ppmと測定された。その次の日に、生成混合物を、ロータリーエバポレーションするために1L丸底フラスコに移した。一部材料をストリップさせたが、その間、減圧は約0.4〜0.5kPa(約3〜4mmHg)であり、水浴は80℃であった。このプロセスを2時間続けて、最終生成物には残留SiHが13ppm残っていた。最終生成物を20μm径の濾紙で加圧濾過して酢酸ナトリウムを取り除いた。
【0037】
(実施例4)
ポリ(EO)ヒドロキシル3−(メチルジメトキシシリル)プロピルエーテルの調製
PG−SF−アリルEO7−OH(80.58g、ダウ・ケミカル社製)及び酢酸ナトリウム(0.03g、フィッシャーバイオテク製)を、三日月形パドル撹拌棒、水冷コンデンサとダウコーニング(登録商標)Z−6701シラン(20.06g)を入れた250mL滴下漏斗とを取り付けたクライゼン管、及び熱電対が付いた温度計アダプタを装備した250mLの三つ口丸底フラスコ(RBF)に、全て窒素パージ下で入れた。ダウコーニング(登録商標)Z−6701シランの10wt%又は2gをRBFに投与したときに反応混合物を45.6℃まで加熱し、その直後に更にIPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒(約60μL又は5ppm)を添加した。直ちに観測された発熱は0.9℃であった。滴下漏斗中の残りのダウコーニング(登録商標)Z−6701シランをRBFに約0.21g/分の速度で投与し、その間、温度は50℃に設定して、滴下中、約49〜51℃に保持した。メチルジエトキシルシランを全てRBFに入れたときに、温度を57℃に設定して2.5時間還流させて反応を完了させた。反応混合物を室温まで冷却し、IRにより、121ppmの残留SiHが2150cm−1ピークにおいて観測された。その次の日に、反応混合物に更にPG−SF−アリルEO7−OH(5.48gダウ・ケミカル社製)を添加し、反応を57±1℃において4.5時間保持し、結果として20ppmの残留SiHが得られた。クライゼン管を、水冷コンデンサが装着された250mL丸底フラスコに替えた。ストリップ処理のために装置を減圧した。生成混合物を、1.3〜6.7kPa(10〜50mmHg)の減圧下、80℃において3時間ストリップ処理した。IRで測定された最終残留SiH含量は、2150cm−1ではまだ20ppmであった。最終的な最終生成物を20μm径の濾紙で加圧濾過して酢酸ナトリウムを取り除いた。
【0038】
(実施例5)
ポリ(EO)アセテート3−(メチルジメトキシシリル)プロピルエーテルの調製
PG−SF−アリルEO7−Ac(247.77g)及び酢酸ナトリウム(0.05g、フィッシャーバイオテク製)を、三日月形パドル撹拌棒、水冷コンデンサとダウコーニング(登録商標)Z−6701シラン(52.98g)を入れた250mL滴下漏斗とを取り付けたクライゼン管、及び熱電対が付いた温度計アダプタを装備した500mLの三つ口丸底フラスコ(RBF)に、全て窒素パージ下で入れた。ダウコーニング(登録商標)Z−6701シランの10wt%又は5gをRBFに投与したときに反応混合物を47℃まで加熱し、その直後に更にIPA中1%のダウコーニング(登録商標)2−0707 INT触媒(約270μL又は8ppm)を入れた。直ちに観測された発熱は1〜2℃であった。滴下漏斗中の残りのダウコーニング(登録商標)Z−6701シランをRBFに約0.79g/分の速度で投与し、その間、温度は54℃に設定して、滴下中、58℃未満に保持した。ダウコーニング(登録商標)Z−6701シランを全てRBFに入れたときに、温度を54℃に設定して1時間還流させて反応を完了させた。IRにより、540ppmの残留SiHが2150cm−1において確認された。更に1時間還流を行い、残留SiHは300ppmと測定された。その次の日に、クライゼン管を、水冷コンデンサが装着された250mL丸底フラスコに替えた。ストリップ処理のために装置を減圧した。生成混合物を、2.7〜10.7kPa(20〜80mmHg)の減圧下、62℃において3時間ストリップ処理した。IRで測定された最終残留SiH含量は、2150cm−1において28ppmであった。最終的な最終生成物を20μm径の濾紙で加圧濾過して酢酸ナトリウムを取り除いた。
【0039】
(実施例6)
三つ口丸底フラスコに、酢酸ナトリウム0.20g(2.4ミリモル)、及びアリル末端と、約12個のエチレンオキシド単位とを含み、アセテートでキャップされたポリエーテル171.8g(0.29モル)を加えた。次いでフラスコに、メチルジエトキシシラン28.2g(0.21モル)(MDES)を添加した。N下で撹拌しながら、混合物を75℃±5℃まで加熱し、その後、Pt触媒3ppmを添加した。少し発熱した(<10℃±1℃)後、混合物を85℃±5℃で6時間保持した。この時点では、反応は、FTIRによってSiH消費を測定したところ、98.9%完了していた。120℃±5℃/6.7〜1.3kPa(5〜10mmHg)まで4時間加熱することにより、混合物中の揮発物をストリップさせた。最後に、混合物を室温まで冷却し、ナイロンフィルターに担持されたセライトで濾過することで、淡黄色油167g(収率83%)が得られた。この物質の特性評価からは、29Si−NMRにおける約−5.6ppmの単一ピークから分かるように、所望の生成物が得られたことが示された。
【0040】
(実施例7)
三つ口丸底フラスコに、酢酸ナトリウム0.25g(3.0ミリモル)、及びアリル末端と、約18個のエチレンオキシド単位及び18個のプロピレンオキシド単位とを含み、アセテートでキャップされたポリエーテル189.3g(97ミリモル)を加えた。次いでフラスコに、メチルジエトキシシラン10.9g(81モル)(MDES)を添加した。N下で撹拌しながら、混合物を75℃±5℃まで加熱し、その後、Pt触媒4ppmを添加した。少し発熱した(<10℃±1℃)後、混合物を85℃±5℃で3時間保持した。この時点では、反応は、FTIRによってSiH消費を測定すると、99.6%完了していた。120℃±5℃/0.7〜1.3kPa(5〜10mmHg)まで5時間加熱することにより、混合物中の揮発物をストリップさせた。最後に、混合物を室温まで冷却し、ナイロンフィルターに担持されたセライトで濾過することで、淡黄色油153g(収率76%)が得られた。この材料の特性評価からは、29Si−NMRにおける約−5.6ppmの単一ピークから分かるように、所望の生成物が得られたことが示された。
【0041】
(実施例8)
三つ口丸底フラスコに、酢酸ナトリウム0.25g(3.0ミリモル)、及びアリル末端と、約12個のエチレンオキシド単位とを含み、キャップされていないポリエーテル168.7g(0.31モル)を加えた。次いでフラスコに、メチルジエトキシシラン31.4g(0.24モル)(MDES)を添加した。N下で撹拌しながら、混合物を75℃±5℃まで加熱し、その後、Pt触媒3ppmを添加した。少し発熱した(<10℃±1℃)後、混合物を85℃±5℃に3時間保持した。この時点では、反応は、FTIRによってSiH消費を測定すると、99.5%完了していた。120℃±5℃/0.7〜1.3kPa(5〜10mmHg)まで4時間加熱することにより、混合物中の揮発物をストリップさせた。最後に、混合物を室温まで冷却し、ナイロンフィルターに担持されたセライトで濾過することで、淡黄色油149g(収率74%)が得られた。この物質の特性評価からは、29Si−NMRにおける約−5.6ppmの単一ピークから分かるように、所望の生成物が得られたことが示された。
【0042】
(実施例9)
以降の試験は、セルロース系繊維の吸水性を高める能力に関する本発明のオルガノシランの性能を評価するために行った。
【0043】
繊維処理試験:PurCotton(商標)製の1平方メートル当たりの重さ120グラム(gsm)の100%綿繊維からなる10cm×10cm不織布6枚を、実施例2のオルガノシラン(ポリ(EO)メチル3−(メチルジメトキシシリル)プロピルエーテル)を試験するのに用いた。各繊維シートに面積約13cmの円を描き、うち2枚には円面積全体に実施例2のオルガノシランを溶媒を用いずに塗布し、他の2枚のシートには、脱イオン水中約29.7%の実施例2のオルガノシランを塗布したが、残りの2枚のシートは対照実験の役割を果たし、未処理であった。塗布面積をその後、室温において5分間ずつ空気を吹き付けて乾燥させた。注射器ポンプ(コール・パーマー74900シリーズ型)は、一定速度で液体を投与するようにプログラムすることができるので利用して、注射器に脱イオン水を満たした。拡散によって円面積が液体で満たされる時間を記録した。布への追加重量の一部には、乾燥プロセス中に除去されなかったシラン+残留水分が含まれている可能性があると考えるべきである。この試験結果を以下の表1にまとめる。
【0044】
(実施例10)
500mlの三つ口丸底フラスコに、18個のエチレンオキシド単位と、18個のプロピレンオキシド単位とを含み、一方の末端が3,3−ジメチル−1−プロペニル基でキャップされたポリエーテル188.9g(98.2ミリモル)を添加した。ポリエーテルを40℃±3℃まで加熱して、メチルジメトキシシランの総容積(総容積は15.7g、148ミリモルである。)の約5%を滴下漏斗から反応容器へ添加する。次いで、白金触媒を、最終混合物中の最終濃度が5ppmとなるように添加すると、発熱が観測される。発熱が完了した後、残りのメチルジメトキシシランを滴下漏斗から、混合物の温度が50℃未満を維持するような速度で添加する。全メチルジメトキシシランを添加した後、反応容器を50℃±3℃で3時間保持する。次いで、反応容器のN流を増強することで揮発性物質を生成物から除去する。低粘度液体が得られる。H、13C、29Si−NMR及びFTIRによる分析から、所望の材料が調製され、未反応ポリエーテルの濃度がモル基準で1%未満であって、残留SiHが含まれていないことが確認された。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例1で得たオルガノシランを用い、同様の手順で同様の試験を行った。得られた結果が確固たるものであることを確実にするために、材料のバッチ毎に実験を合計2回行った。塗布スクリーニング試験全体のまとめを以下の表2に示す。
【0047】
【表2】