特許第6234934号(P6234934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234934ミクロン規模の連続液体噴流を提供するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234934
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ミクロン規模の連続液体噴流を提供するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/08 20060101AFI20171113BHJP
   B05B 1/10 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B05B7/08
   B05B1/10
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-542545(P2014-542545)
(86)(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公表番号】特表2015-500135(P2015-500135A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】US2012065788
(87)【国際公開番号】WO2013075081
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】61/561,568
(32)【優先日】2011年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507080994
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ ア ボディー コーポレート アクティング オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】ARIZONA BOARD OF REGENTS,a body corporate acting on behalf of ARIZONA STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ドーク、アール.ブルース
(72)【発明者】
【氏名】スペンス、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バイエルスタル、ウベ
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−108122(JP,A)
【文献】 特表昭58−500438(JP,A)
【文献】 特開2005−296874(JP,A)
【文献】 特表2010−530795(JP,A)
【文献】 特開2004−275950(JP,A)
【文献】 特開平08−253317(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/137560(WO,A1)
【文献】 特開2003−331776(JP,A)
【文献】 特表2007−534470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−3/18,
7/00−9/08
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロン規模の連続液体噴流を提供するノズルアセンブリであって
遠位端が出口流路を画定するハウジングと、
前記ハウジング内に配置された毛細管と
前記毛細管の遠位部分に形成され、前記出口流路に当接することにより前記ハウジング内で前記毛細管の自動調心を助けるように構成された先細端と、
前記先細端に画定され、前記先細端と前記出口流路とが当接して前記自動調心を達成したときにガス流が前記先細端と前記ハウジングとの間で融合可能であるように、当該先細端の周囲に互いに均等に間隔を隔てて同一角度で傾斜する対称的な複数の開口を形成する複数の平面状平坦部と、
前記毛細管によって画定される少なくとも1つの穴であって、前記出口流路外に配置される毛細管出口を前記毛細管の先細端に画定する前記少なくとも1つの穴と、
を備え、
前記少なくとも1つの穴はその長さに沿って一定の径を有するノズルアセンブリ。
【請求項2】
前記毛細管が前記出口流路の軸に沿って略位置合わせされる請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項3】
前記毛細管の前記先細端が略円錐状である請求項1または2に記載のノズルアセンブリ。
【請求項4】
前記毛細管がホウ珪酸塩から成る請求項1ないし3のいずれか一項に記載のノズルアセンブリ。
【請求項5】
前記毛細管の前記先細端の基端部分が前記出口流路に収容される請求項1ないし4のいずれか一項に記載のノズルアセンブリ。
【請求項6】
前記ハウジングの内壁と前記毛細管の外壁との間に同軸空間が形成されるように前記ハウジングの内径が前記毛細管の外径よりも大きい請求項1ないし5のいずれか一項に記載のノズルアセンブリ。
【請求項7】
前記ハウジングが略正方形の内側断面を画定する請求項1ないし6のいずれか一項に記載のノズルアセンブリ。
【請求項8】
前記毛細管が、当該毛細管の外面から前記ハウジングを越えてわずかに突出する突出部を備えている請求項1ないし7のいずれか一項に記載のノズルアセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの穴にガス圧を印加するように構成される装置をさらに備える請求項1ないし8のいずれか一項に記載のノズルアセンブリ。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のノズルアセンブリと、
前記少なくとも1つの穴に接続される液体容器と、
前記液体容器に接続されるガス圧源と、
を備える連続液体噴流の生成システム。
【請求項11】
前記毛細管が、前記ハウジングの室内容積内に配置される請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載のノズルアセンブリを設けることと、
液体を前記少なくとも1つのの1つの近位端に注入することと、
前記液体が連続液体噴流として、前記液体が注入されたから遠位側へ発生するように前記液体に圧力を印加することと、
を備える連続液体噴流の生成方法。
【請求項13】
前記液体が注入された穴の遠位端を真空に置くことをさらに備える請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記出口流路を通って出る加圧ガスを前記ハウジングの近位端に入れることをさらに備える請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記液体が脂質立方相を備える請求項12ないし14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記液体が蔗糖水溶液を備える請求項12ないし14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記連続液体噴流が約50ミクロン未満の径を有する請求項12ないし16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミクロン規模の連続液体噴流を形成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質やその他の生物学的分子などの粒子の分析および操作では、粒子が未変性コンホメーションを維持しなければならない真空に粒子を導入または注入する必要がしばしばある。粒子の真空への注入を要する粒子操作または分析は、たとえば、分子構造決定、分光法、(たとえばセンサアレイ作製のための)基板への粒子蒸着、ナノスケール自由形状作製、新規な低温形状の粒子含有複合物の形成、レーザ光、X線放射線、中性子、またはその他のエネルギービームによる粒子の打込み、おそらくはナノスケール空間分解能での誘導される自由空間化学反応の制御または促進、これらの粒子の分離、分析、または精製などである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした媒体を真空に注入する従来の装置は、加圧ガスによって囲まれる液体を孔または流路を通って真空へ注入することを含んでいた。しかしながら、これらの装置は一連の液滴をもたらす。しかし、多数の技術的および科学的用途にとって、正確に位置調整された微細連続液体噴流の形成は大きな関心事である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の側面では、本発明は(a)遠位端が出口流路を画定するハウジングと、(b)ハウジング内に配置され、遠位端が任意で先細である毛細管と、(c)毛細管によって画定される少なくとも1つの穴であって、出口流路外に配置される毛細管出口を毛細管の遠位端に画定する穴と、を備えるノズルアセンブリを提供する。
【0005】
第2の側面では、本発明は、(a)穴と毛細管出口とを有する毛細管と、(b)穴に接続される液体容器と、(c)液体容器に接続されるガス圧源と、を備える連続液体噴流の生成システムを開示する。
【0006】
第3の側面では、本発明は、(a)毛細管出口がハウジングから突出する本発明の第1の側面に係るノズルアセンブリを設けるステップと、(b)第1の流体をハウジングの近位端に注入するステップと、(c)第2の流体を毛細管の近位端に注入するステップと、(d)第2の流体にガス背圧を生成するステップと、を備え、(e)第2の流体が毛細管出口から出て、(e)第1の流体が第2の流体に作用して出口流路を通って流れる液体噴流を生成する、高粘度液体の連続流の生成方法を開示する。
【0007】
第4の側面では、本発明は、(a)近位端で入口開口部、遠位端でラバルノズルで全側面を囲まれる空隙を画定するハウジングであって、ラバルノズルが集束−散開流路を画定し、ハウジング出口が集束−散開流路が圧縮される点でラバルノズル内に画定されるハウジングと,(b)同軸空間が毛細管とハウジングとの間に維持されるようにハウジングの空隙内に配置される毛細管であって、遠位端が任意で先細にされる毛細管と、(c)毛細管によって画定される少なくとも1つの穴であって、少なくとも1つの穴の近位端が毛細管入口を画定し、少なくとも1つの穴の遠位端が毛細管出口を画定し、毛細管出口がハウジング出口を超えて延在しない少なくとも1つの穴、を備えるノズルアセンブリであって、(d)ハウジングは第1の推進流路と第2の推進流路をさらに画定し、第1および第2の推進流路はそれぞれ同軸空間に略直角に配置され、同軸空間と流体連通するノズルアセンブリを提供する。第4の側面の1実施形態では、本発明は、集束−散開流路の散開部の第1の側でハウジング内に画定される第1の切換流路と集束−散開流路の散開部の第2の側でハウジング内に画定される第2の切換流路とをさらに設け、第1および第2の切換流路がそれぞれ集束−散開流路の散開部と流体連通する。
【0008】
第5の側面では、本発明は(a)本発明の第4の側面に係るノズルアセンブリを設けること、(b)第1の流体を第1および第2の推進流路に注入すること、(c)第2の流体を毛細管入口に注入すること、を備える液体噴流の生成方法を提供する。1実施形態では、上記方法は、集束−散開流路の上流−下流圧力比を約1.03〜約1.89に維持することによって亜音速流で動作させることをさらに備える。別の実施形態では、該方法は、(a)集束−散開流路の散開部の第1の側の境界層に沿って液体噴流を生成することと、(b)第1の風を第1の切換流路に注入することと、(c)第1の風に応答して、液体噴流を集束−散開流路の散開部の第2の側の境界層に切り換えることと、をさらに備える。追加の実施形態では、該方法は、(a)第2の風を第2の切換流路に注入すること、(b)第2の風に応答して、液体噴流を集束−散開流路の散開部の第1の側の境界層に切り換えること、をさらに備える。さらに別の実施形態では、該方法は、(a)真空下で集束−散開流路の散開部を動作させることと、(b)真空下での動作に応答して、集束−散開流路の散開部の第1の側と第2の側との間で略中心に来る液体噴流を生成することと、をさらに備える。
【0009】
第6の側面では、本発明は、(a)スピンコートされたフォトレジストをシリコンウェハに所望のパターンでソフトベークすることと、(b)フォトマスクを介してフォトレジストをUV光にさらすことと、(c)フォトレジストを化学的に現像することと、(d)フォトレジストをハードベークして凹型を形成することと、(e)未硬化ポリ(ジメチルシロキサン)を凹型に流し込んで、空隙および複数の微小流路を画定する層を形成することと、(f)ポリ(メタクリル酸メチル)の上スラブと下スラブとの間で層を固定することと、を備える第4の側面のノズルアセンブリのハウジングの製造方法を提供する。
【0010】
連続液体流は多数の利点を備える。たとえば、微細脂質立方相(LCP)流は、現行の硬X線自由電子レーザの120Hzパルス速度に非常に適する低容積流量で押出することができる。低流量により、LCP流は、未加工のターゲット材料を露光するのに必要な正確な距離だけ、X線パルス間で前進させることができる。したがって、サンプル材料はほとんど無駄にされず、最小量のLCPタンパク質サンプルしか必要とされない。多数の膜タンパク質はごく限られた量しか入手できないため、これは大きな実験上の利点である。
【0011】
本文書に提示する本発明の側面と適用を、図面と本発明の詳細な説明で以下説明する。特段明記されない限り、本明細書および請求項の文言および節は、当業者にとって平易かつ一般的で慣れ親しんだ意味を持つと意図される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の1実施形態に係るノズルの断面図である。
図1B】本発明の1実施形態に係るノズルの斜視図である。
図1C】本発明の1実施形態に係るノズルの斜視図である。
図2A】本発明の1実施形態に係るノズルの斜視図である。
図2B】本発明の1実施形態に係るノズルの断面図である。
図3A】本発明の1実施形態に係るノズルの斜視図である。
図3B】本発明の1実施形態に係るノズルの断面図である。
図4】本発明の1実施形態に係る方法を示す図である。
図5】本発明の1実施形態に係る連続液体噴流を生成するノズルの図である。
図6】本発明の1実施形態に係る連続液体噴流の生成システムを示す図である。
図7】本発明の1実施形態による連続液体噴流の時間経過に伴うシーケンスを示す図である。
図8】本発明の第4の側面により液体噴流と液滴流とを生成するノズルアセンブリの上断面図である。
図9】本発明の第4の側面により液体噴流と液滴流とを生成するノズルアセンブリの端面図である。
図10】集束−散開流路の散開部の第1の側の境界層に沿った液体噴流と集束−散開流路の散開部の第2の側の境界層に沿った液体噴流とを生成し、液体噴流が集束−散開流路の散開部の第1の側と第2の側との間で略中心に来る、本発明の第4の側面に係るノズルアセンブリの遠位端の詳細を示す3つの画像である。
図11】集束−散開流路の散開部の第1の側の境界層に沿った液体噴流、集束−散開流路の散開部の第2の側の境界層に沿った液体噴流、並びに、第1および第2の切換流路を形成する、本発明の第4の側面に係るノズルアセンブリの遠位端の詳細を示す2つの画像である。
【0013】
詳細な説明を参照し以下の図面と併せて検討することによって本発明をさらに完全に理解することができる。図面全体を通じて、類似の参照符号は類似の構成要素または動作を指す。図面中の構成要素と動作とは簡易に示されており、必ずしも特定のシーケンスまたは実施形態に係るものではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の記載では、説明上、本発明の各種側面の理解を深めるために多数の具体的な詳細について説明する。しかしながら、当業者によって、本発明はこれらの具体的な細部なしでも実施できると理解される。開示される発明が適用可能な様々な代替の構造、装置、および技術が多数存在することに留意すべきである。本発明の範囲は以下説明する実施例に限定されない。
【0015】
図1Aおよび図1Bは、本発明の1実施形態に係るノズル100の断面図および斜視図である。ノズルアセンブリ100は、遠位端が出口流路120を画定するハウジング150と、ハウジング150内に配置され、任意の先細端131を備える毛細管130と、毛細管130によって画定され、毛細管出口134を画定する少なくとも1つの穴132と、を備える。
【0016】
ハウジング150は、毛細管130を収容するようなサイズと形状とする。ハウジングの内側断面は、十分な流量と略対称的な流れパターンを有するように第1の流体(たとえば、ガス)への十分なアクセスを提供する任意の断面形状を有することができる。流体流が非対称である場合、結果として生じる繊維状の液体噴流を軸外で出口流路から発生させてしまう場合がある。好適な形状の例は、円形、正方形、三角形、または六角形を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、ハウジングの内側断面は円形である。特定の実施形態では、ハウジングの内側断面は正方形である。
【0017】
図1Aおよび1Bに示す実施形態では、ハウジング150の内側断面は円形であるため、ハウジングは略円柱状であり、ハウジング150の内径は毛細管130の外径よりも大きいため、ハウジング170の内壁と毛細管180の外壁との間に同軸空間160が形成される。
【0018】
毛細管130は、流体が流れることのできる少なくとも1つの穴132を有する。毛細管130は、ホウ珪酸塩または当業者にとって既知なその他の任意の材料で構成することができる。
【0019】
毛細管穴132は、その長さに沿って略一定の、集束する、または散開する径を有することができる。特定の実施形態では、毛細管穴はその長さに沿って略一定のまたは散開する径を有することができる。一定のまたは散開する径は、粒子が毛細管穴132を詰まらせるのを防ぎ、その詰まりは、径が圧縮された毛細管穴で発生することがある。特定の実施形態では、毛細管穴はその長さに沿って略一定の径を有することができる。特定の他の実施形態では、毛細管穴はその長さに沿って散開する径を有することができる。
【0020】
1実施形態では、毛細管131の先細端は出口流路120に収容される。ハウジング150内での毛細管130の自動調心を助けるため、先細端131は略円錐状とすることができる。もしくは、先細端131は略円錐状とし、斜面をつけることができる。これは、2つの異なる角度を提供して、毛細管130を出口流路120に挿入しやすくするという利点を備える。本実施形態は単独の斜面を設けることができる。
【0021】
さらに別の実施形態では、毛細管131の先細端は複数の平面状平坦部(図示せず)、好ましくは最低3つの平面状平坦部を画定して、十分なガス流を達成する。特定の実施形態では、3〜約10の平面状平坦部が毛細管131の先細端に設けられる。特定の実施形態では、3〜約8の平面状平坦部が設けられる。または3〜約6の平面状平坦部が毛細管131の先細端に設けられる。特定の実施形態では、3つの平坦部、または4つの平坦部、または5つの平坦部、または6つの平坦部、または7つの平坦部、または8つの平坦部、または9つの平坦部、または10の平坦部が毛細管の先細端131に設けられる。
【0022】
これらの平面状平坦部は、互いに均等に間隔をおいて配置され、毛細管の先細端131の周に対して均等に角度をつけた対称的な開口の形状をとることができ、先細端131と出口流路120がかみ合って自動調心を達成したとき、ガス流は毛細管を通じて先細端131とハウジング150との間で融合することができる。
【0023】
少なくとも1つの穴132は、毛細管130の長さに沿って先細端131まで延在する。1実施形態では、少なくとも1つの穴132は、毛細管130の中心軸と略位置合わせされた単独の穴132を備える。本文書で使用される2つのオリフィスに対して「略位置合わせされ」という用語は、第1のオリフィスの中心で第1のオリフィスによって画定される面に垂直なベクトルが、第2のオリフィスによって画定される面と交差し略垂直であり(たとえば、90度+/−10度、好ましくは +/−5度)、第2のオリフィスの境界内で第2のオリフィスによって画定される面と交差することを意味する。より好ましくは、第1のオリフィスの中心で第1のオリフィスによって画定される面に垂直なベクトルが、第2のオリフィスによって画定される面と略垂直であり、第2のオリフィスの中心(たとえば、オリフィスの総径の10%内、好ましくは5%内)で第2のオリフィスによって画定される面と交差する。単独の穴132が中心軸130から散開して、先細端131の側面で毛細管出口134を画定することができる。
【0024】
毛細管出口134は、毛細管端部が同軸ガスの超音速膨張の連続流形態内に配置されるようにハウジング150から突出することができる。この領域のサイズは、当業者にとって明確であるように、ガス種とガス流量に依存する。たとえば、毛細管端部は、ガス開口出口面の下流でいくらかのガス開口径内(たとえば、出口流路120の径の約1〜約5;または約1〜約3倍)に配置することができる。最小距離は、ガス開口出口面の下流から0径である。
【0025】
特定の実施形態では、毛細管出口はハウジングから少なくとも1開口径突出することができる。たとえば、毛細管出口はハウジングから約0倍〜3倍開口径突出することができる。いかなる動作理論にも制限されず、ハウジングを超えて毛細管出口が拡張されることで、液体噴流がガスの自由噴流膨張内で押出され、液滴への分裂が阻止される。
【0026】
別の実施形態では、少なくとも1つの穴132は、毛細管130の中心軸と平行だが、間隔をおいて配置される。毛細管130が2つ(またはそれ以上の)穴132を画定する場合、液体は穴132のいずれかまたは両方を通って流れることができる。もしくは、2つの反応する液体を別々に各自の穴132へ送って、毛細管131の遠位端の先端で混合させることができる。
【0027】
図1Cは本発明の1実施形態の斜視図である。本実施形態では、ノズル190は図1Aの断面を有する。しかしながら、本実施形態では、ハウジング151の内側断面は略正方形状である。毛細管131は図1Bの毛細管131と略同一であり、毛細管出口134はまだハウジング151から突出している。
【0028】
1実施形態では、毛細管の遠位端は凹凸を有する。凹凸は毛細管の外面からのわずかな突出(たとえば、点または隆起)である。凹凸は好ましくは、毛細管がハウジングに挿入されたときに凹凸が自動的に中心に来るように毛細管の遠位端の中心に配置される。連続線形流が所望される場合、凹凸はハウジングを超えて突出することができる。特定の実施形態では、毛細管出口134はガス開口(たとえば、120)の面の上流に来ることができる。しかしながら、凹凸はガス開口の面を超えて延在すべきである。
【0029】
もしくは、凹凸は出口流路内に含めることができる。凹凸を設けることは、液体噴流は毛細管の遠位端上の最も大きな凹凸から発生するため、第2の流体が毛細管から発生する箇所を制御できるという有益な効果を有する。
【0030】
図2Aおよび図2Bは、本発明の1実施形態に係るノズル200の斜視図と断面図とである。図示される実施形態では、ハウジング250は正方形の内側断面を画定するため、ハウジングの4つの角204がガス流にとって十分なアクセスを提供する。正方形の内側断面により、毛細管230はハウジング250と接触し、領域にガスを通過させながら位置調整を助けることができる。ハウジングの遠位端は対称的な収束先細になるように出口流路220を形成することができる。もしくは、出口流路220はその長さに沿って一定の径を有することができる。毛細管230は好ましくは、出口流路220の軸に沿って略位置合わせされる。図示されるように、毛細管230は先細ではないが、他の実施形態では毛細管230は先細にさせることができる。
【0031】
図3Aおよび図3Bは、本発明の1実施形態に係るノズル300の斜視図と断面図とである。図示される実施形態では、ハウジング350は略円形の内側断面を画定する。毛細管230は図2Aおよび図2Bの毛細管230と略同一である。ハウジング350は毛細管230の外径よりも大きな内径を有するため、ガスが両者間の領域320を流れることができる。
【0032】
図4を参照すると、本発明は、毛細管に穴410を設けるステップと、液体を毛細管420の近位端に注入するステップと、液体が連続液体噴流430として穴の遠位端から発生するように液体にガス圧を印加するステップと、を備える連続液体噴流の生成方法を提供する。
【0033】
図5を参照すると、毛細管は図1Cに類似のハウジング内に配置されている。本実施形態では、加圧ガスが、ハウジングを流れて出口流路から出るようにハウジングに導入される。加圧ガスは不活性ガスを備える、あるいは主成分とすることができる。本文書で使用される「不活性ガス」という用語は、流体および/または分析物の劣化または反応を引き起こさないガスを意味する。ガスは好ましくは、制限されたレベルの酸素および/または水を含有する。しかしながら、水および/または酸素の許容可能レベルは流体および/または分析物に依存し、当業者にとっては容易に自明である。このような大気は好ましくは水素、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、揮発性炭化水素ガス、またはそれらの混合物を含むがそれらに限定されないガスを含む。特定の実施形態では、不活性ガスは窒素、ヘリウム、アルゴン、またはそれらの混合物を備える。特定の実施形態では、不活性ガスは窒素を備える。特定の実施形態では、不活性ガスはヘリウムを備える。特定の実施形態では、不活性ガスはアルゴンを備える。
【0034】
加圧ガスは、大気圧の約2〜100倍、または大気圧の約2〜50倍、または大気圧の約2〜25倍、または大気圧の約2〜15倍、または大気圧の約2〜10倍の圧力で、より好ましくは、大気圧の約2〜5倍、または大気圧の約3〜5倍、または大気圧の約5〜100倍、または大気圧の約5〜50倍、または大気圧の約5〜25倍、または大気圧の約5〜15倍、または大気圧の約5〜10倍、または大気圧の約9〜100倍、または大気圧の約9〜50倍、または大気圧の約9〜25倍、または大気圧の約9〜15倍の圧力でハウジングに供給することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、流体は分析物を備える。流体は好ましくは、異種混合または同種溶液、あるいは第2の流体内の分析物の粒子懸濁液を備える。流体は、結晶形状を含む所望の分子配座で分析物を保持しつつ分析物含有流を形成する、水と、洗剤、緩衝剤、抗凝血剤、凍結防止剤、脂質、および/またはその他の添加物(たとえば、蔗糖)を必要に応じて含有する各種水溶液を含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、流体は、脂質立方相を形成するのに十分な量と濃度の脂質水溶液(たとえば、モノオレインまたはモノパルミトレイン)および任意の緩衝剤を備える。たとえば、引用により全文を本文書に組み込むLandauらのProc.Natl.Acad.Sci.1996、93、14532〜535を参照されたい。
【0036】
好適な分析物は、タンパク質、タンパク質複合体、ペプチド、ヌクレイン酸(たとえば、DNA、RNA、mRNA)、脂質、感応性ナノ粒子、ウィルス、バクテリア、全細胞などを含むがそれらに限定されない。特定の実施形態では、分析物は光化学系I(PSI)を含むがそれに限定されないタンパク質複合体である。特定の他の実施形態では、流体は、分析物(たとえば、PSIなどのタンパク質)、脂質水溶液(たとえば、モノオレインまたはモノパルミトレイン)、および任意の緩衝剤を、脂質立方相を形成するのに十分な量と濃度で備える。
【0037】
流体は好ましくは、大気圧の約2〜35倍の圧力、より好ましくは、大気圧の約10〜20倍、または大気圧の約15〜20倍の圧力で毛細管に供給される。
本実施形態では、ガスは、毛細管130から発生する液体流にガス動力を印加し、液体流の径を大幅に低減する。液体流は好ましくは圧縮され、微細径の連続的な線形の繊維状液体噴流610として現れる。液体噴流610は、発生する毛細管穴632よりもずっと小さくすることができる。
【0038】
たとえば、本発明の方法により第2の流体に関して形成される噴流は20μm未満の径を有することができる。より好ましくは、滴は19μm、18μm、17μm、または16μm未満の径を有する。さらに好ましくは、滴は15μm、14μm、13μm、12μm、11μm、10μm、9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、または100nm未満の径を有する。他の実施形態では、本発明の方法により形成される液滴は約1〜20μm、または約1〜19μm、または約1〜18μm、または約1〜17μm、または約1〜16μm、または約1〜15μm、または約1〜14μm、または約1〜13μm、または約1〜12μm、または約1〜11μm、または約1〜10μm、または約1〜9μm、または約1〜8μm、または約1〜7μm、または約1〜6μm、または約1〜5μmの径を有する。他の実施形態では、本発明の方法により形成される液滴は、約100nm〜20μm、または約100nm〜19μm、または約100nm〜18μm、または約100nm〜17μm、または約100nm〜16μm、または約100nm〜15μm、または約100nm〜14μm、または約100nm〜13μm、または約100nm〜12μm、または約100nm〜11μm、または約100nm〜10μm、または約100nm〜9μm、または約100nm〜8μm、または約100nm〜7μm、または約100nm〜6μm、または約100nm〜5μmmの径を有する。
【0039】
図示される実施形態では、ハウジングガス圧は150psiであり、液体は1気圧の背圧を印加した1.4モル蔗糖溶液である。毛細管の内径は50ミクロンであり、連続液体噴流610は15ミクロン径まで低減される。
【0040】
1実施形態では、該方法は液体にガス背圧を印加することをさらに備える。脂質立方相(LCP)(約500Pa・s)または1.4M蔗糖水溶液(25℃で0.081Pa・s)などの特定の高粘度流体をノズルに投入し、微細線形液体噴流をもたらすことができる。その他多数の流体も微細線形液体噴流をもたらすことができる。ガス背圧は、ガス圧なしでは押出できなかったであろう粘性液体も毛細管穴を通って配送するのを助ける。
【0041】
本文書で使用される「高粘度」は、水の粘度(20℃で1.00センチポアズ)よりも大幅に高い粘度を意味する(たとえば、オリーブオイル(84センチポアズ)やひまし油(986cp)などの油は高粘度と考えられる)。管を通る層流(ポアズイユ流れ)の場合、容積流量は流体粘度に反比例し、管に沿った単位長当たりの圧力低下に正比例し、管半径の4乗で変動する。したがって、管に沿って前後方向に所与の圧力が印加される場合、容積流量は粘度の増大に伴って減少し、管半径の減少に伴い激減する。したがって、適応可能な粘度の有効上限を設定するのは管径と所要の圧力である。
【0042】
ノズルが真空に配置されると、液体噴流はガスの自由噴流膨張の影響を受ける。これにより、液体は微細連続流に押出され、液滴への分解が遅延される。
ガス背圧は様々に印加することができる。たとえば、1実施形態では、高圧力管が液体容器に連結され、そして容器が毛細管に連結される。液体はシリンジで、または組立前に、または当業者にとって既知なその他の任意の方法で容器に導入することができる。ガス圧は当業者に慣れた方法で高圧管に印加することができる。ガス圧は約600psi〜約2000psiの範囲で印加することができる。1実施形態では、600〜2000psiの乾燥窒素ガスが印加される。その他のガス圧源も十分に既知であり、使用することができる。流体の材料と所望の流量に応じてより高いまたは低い圧力を印加することができる。印加される圧力に応じて、流量は約1nL/分〜約10μL/分とすることができる。しかしながら、より多いまたは少ない流量も可能である。特定の実施形態では、流量は約100ナノリットル/分未満とすることができる。
【0043】
他の実施形態では、約1気圧〜約100気圧の低ガス圧を使用することができる。たとえば、1.4M蔗糖水溶液を線形連続流に押出するのに1気圧を利用することができる。
図6は、本発明の1実施形態に係る液体の押出装置を示す。本実施形態では、該装置は、30ミクロン毛細管穴を有する毛細管と、最大2000psiの圧力を供給するポリエチルエチルケトン(PEEK)管と、液体容器とを備える。
【0044】
図7は、本発明の1実施形態により押出されつつある液体の一連の写真を示す。本実施形態では、液体はLCP(25℃で約1,820,000cpの粘度を有する)であり、毛細管穴は30ミクロンの径を有する。LCPは1500psiのガス背圧を印加され、ハウジングガス圧はない。押出されるLCP流の径は30ミクロンである。ハウジングガス圧がないため、連続液体噴流は毛細管穴と等価の径を有し、毛細管を出た後に丸まる。ハウジングガス圧は、流れに印加される力のために略直線的な連続液体噴流を維持することができる。
【0045】
別の側面では、本発明は、(i)真空オリフィスとインジェクタオリフィスとを備え、真空分析システムと共に使用されるように構成されるチャンバと、(ii)上述するようなノズルであって、ノズルの出口流路がチャンバに出力し、インジェクタオリフィスと略位置合わせされるノズルと、を備えるインジェクタを提供する。
【0046】
本文書で使用される2つのオリフィスに対して「略位置合わせされ」という用語は、第1のオリフィスの中心で第1のオリフィスによって画定される面に垂直なベクトルが、第2のオリフィスによって画定される面と交差し略垂直であり(たとえば、90度+/−10度、好ましくは+/−5度)、第2のオリフィスの境界内で第2のオリフィスによって画定される面と交差することを意味する。より好ましくは、第1のオリフィスの中心で第1のオリフィスによって画定される面に垂直なベクトルが、第2のオリフィスによって画定される面と略垂直であり、第2のオリフィスの中心(たとえば、オリフィスの総径の10%内、好ましくは5%内)で第2のオリフィスによって画定される面と交差することを意味する。
【0047】
本発明のインジェクタを作動させる際、真空が真空オリフィスを介してチャンバ内で維持され、上述したように液体噴流がノズルによって供給される。好ましくは、インジェクタ内の真空は、真空分析システム内で維持される真空以下のレベルで維持される。
【0048】
インジェクタにより、液体噴流を真空分析システムに注入することができる。このようなシステムは、超高真空(UHV)または高真空(HV)〜1気圧の圧力下で分析されるサンプルを含むことができる(たとえば、環境走査型電子顕微鏡(e−SEM)または環境トンネル式電子顕微鏡(e−TEM))。たとえば、サンプルは約100トル〜約10−9ミリバールの圧力下で分析することができる。特定の実施形態では、サンプルは、環境撮像方法に適した圧力、たとえば約0.1トル〜100トル、または0.1トル〜10トル、または0.1ミリバール〜1トルを含むがそれらに限定されない圧力下で分析される。
【0049】
本発明の1実施形態では、本発明のインジェクタが、真空オリフィスを介して第1のチャンバに真空を設ける真空ポンプをさらに備える。
好適な実施形態では、インジェクタオリフィスは簡易な孔を備える。第3の側面の別の好適な実施形態では、インジェクタオリフィスは管を備える。第3の側面のより好適な実施形態では、インジェクタオリフィスは分子ビームスキマーをさらに備える。
【0050】
本発明のインジェクタは、ノズルの出口流路とインジェクタオリフィスとを位置合わせするアライナーをさらに備えることができる。このようなアライナーは、つまみネジ、あるいは毛細管をインジェクタオリフィスに対して横方向および軸方向に移動させる高精度な機械的駆動装置または圧電駆動装置などの機械圧電装置などの機械的位置合わせを含む。アライナーは本発明のインジェクタおよび/または貫通真空シールを備えるアセンブリ内で封止させることができるため、ノズルと周囲プレナムとの間の物理的連通がノズル出口オリフィスを介して、プレナムと周囲大気との間の物理的連通がインジェクタオリフィスを介して行われる。
【0051】
図8〜11に示す第4の側面では、たとえば、本発明は、(a)近位端で入口開口部805、遠位端でラバルノズル810で全側面を囲まれる空隙を画定するハウジング800であって、ラバルノズル810が集束−散開流路を画定し、ハウジング出口815が集束−散開流路が圧縮される点でラバルノズル810内に画定されるハウジング800と、(b)同軸空間825が毛細管820の一部とハウジング800の一部との間に維持されるようにハウジングの空隙内に配置される毛細管820であって、遠位端830は任意で先細にされる毛細管820と、(c)毛細管820によって画定される少なくとも1つの穴835であって、少なくとも1つの穴の近位端は毛細管入口840を画定し、少なくとも1つの穴の遠位端が毛細管出口845を画定し、毛細管出口845がハウジング出口815を超えて延在しない少なくとも1つの穴と、を備えるノズルアセンブリを提供し、(d)ハウジング800は第1の推進流路850と第2の推進流路855とをさらに画定し、第1および第2の推進流路850、855はそれぞれ同軸空間825に略直角に配置され、同軸空間825と流体連通する。
【0052】
本文書で使用される「ラバルノズル」とは、非対称の砂時計形状の集束−散開流路を意味する。ラバルノズルは、ハウジング出口815を画定する圧縮部を通過する第1および第2の流体を加速させるために使用され、集束から散開へと移行する。よって、好適な実施形態では、ノズル圧縮部を通る流体の加速という最大限の恩恵を得るために、毛細管出口845はハウジング出口815の近接位置を維持する。1実施形態では、ハウジング出口815は図9に示すような矩形断面を有する。
【0053】
本文書で使用される「同軸空間」とは、略一定の分離がハウジングの一部と毛細管の外面の一部との間で維持されていることを意味する。
第4の側面の1実施形態では、第1の推進流路850と第2の推進流路855とは図8に示すようにハウジング800の対向側に配置される。流体は第1および第2の推進流路850、855に注入され、同軸空間825に流れ込み、その後ハウジング出口815を通って出て、集束−散開流路810の散開部811に入る。このようにハウジング800の対向側に第1および第2の推進流路850、855を配置する利点は、同軸空間825内に流体が均等に分布されることである。
【0054】
図11に示す第4の側面の1実施形態では、本発明は、集束−散開流路810の散開部811の第1の側865でハウジング800内に画定される第1の切換流路860と集束−散開流路810の散開部811の第2の側875でハウジング800内に画定される第2の切換流路870とをさらに設け、第1および第2の切換流路860、870がそれぞれ集束−散開流路810の散開部811と流体連通する。後述するように、動作中、液体噴流880が、切換流路860の配置される散開部側の境界層865に沿って流れるとき、切換流路860は別の風を液体噴流880に方向付ける。風は境界層を乱し、液体噴流880を散開部811の反対側の境界層875に切り換える。その後、液体噴流880は、液体噴流880に隣接している他方の切換流路870を通って方向付けられる第2の別の風によって元の境界層860に送り戻すことができる。一方の境界層から他方の境界層へ流れを切り換える機能は、より詳細に後述するように、X線パルス期間中のみ液体噴流880を送ることによって流体を節約する方法を提供する。
【0055】
第5の側面では、本発明は、(a)本発明の第4の側面に係るノズルアセンブリを設けること、(b)第1の流体を第1および第2の流路850、855に注入すること、および(c)第2の流体を毛細管入口840に注入すること、を備える液体噴流880の生成方法を提供する。1実施形態では、第1の流体はヘリウムガスである。
【0056】
本文書で使用される「液体噴流」は、流体880の略一定流から滴885の縦列流までに及ぶ。
1実施形態では、上記方法は、集束−散開流路810の上流−下流圧力比を約1.03〜約1.89に維持することによって亜音速流で動作させることをさらに備える。本文書で使用される「上流」はラバルノズル810の集束部で維持される圧力を指し、「下流」はラバルノズル810の散開部811で維持される圧力をさす。集束部および散開部の圧力は、ラバルノズル810の形状と、液体が第1および第2の推進流路850、855に注入されるときの圧力とに基づき算出することができる。
【0057】
図10に示す別の実施形態では、該方法は、(a)集束−散開流路810の散開部の第1の側865の境界層に沿って液体噴流880,885を形成することと、(b)第1の風を第1の切換流路860に注入すること、および(c)第1の風に応答して、液体噴流880、885を集束−散開流路810の散開部811の第2の側875の境界層に切り換えること、をさらに備える。図10に示す追加の実施形態では、該方法は(a)第2の風を第2の切換流路870に注入すること、および(b)第2の風に応答して、液体噴流880,885を集束−散開流路810の散開部811の第1の側865の境界層に切り換えること、をさらに備える。上記実施形態のいずれも、集束−散開流路810の散開部811が大気圧で維持されるときに達成される。
【0058】
図10に示すさらに別の実施形態では、該方法は、(a)真空下で集束−散開流路810の散開部811を動作させることと、および(b)真空下での動作に応答して、第1の側865と集束−散開流路810の散開部811の第2の側875との間で略中心に来る液体噴流880,885を生成することと、をさらに備える。
【0059】
追加の実施形態では、該方法は、パルスX線ビーム全体にわたって液体噴流880を方向付けることをさらに備える。ここでは、ライナック干渉光源などの非常に強力なX線源が1フェムト秒パルス期間適用され、その間、真空下の液体噴流880はX線の経路全体にわたって方向付けられ、結晶学を利用して結果を捕捉する実験を行う。
【0060】
第6の側面では、本発明は、(a)スピンコートされたフォトレジストをシリコンウェハに所望のパターンでソフトベークすることと、(b)フォトレジストをフォトマスクを介してUV光にさらすことと、(c)フォトレジストを化学的に現像することと、(d)フォトレジストをハードベークして凹型を形成することと、(e)未硬化ポリ(ジメチルシロキサン)を凹型に流し込んで、空隙および複数の微小流路を画定する層890を形成することと、たとえば図9に示すように(f)ポリ(メタクリル酸メチル)の上スラブ891と下スラブ892との間に層を固定することと、を備える第4の側面のノズルアセンブリのハウジングの製造方法を提供する。
【0061】
具体的な実施形態を図示し説明したが、当業者によって、同じ目的を達成するように算出される任意の構成を図示される具体的な実施形態と置き換えることができると理解される。本願は、本発明の実施形態のいかなる改変または変形も対象とすることを目的とする。上記の説明は例示のためであり、限定のためではなく、本文書で採用される述語または用語は限定ではなく説明を目的とすると理解すべきである。上記実施形態およびその他の実施形態は、特段明記されない限り、上記の説明を検討後に当業者にとって自明であるように組み合わせることができる。たとえば、第2の側面は第1または第4の側面と組み合わせることができる。同様に、第6の側面は第1または第4の側面と組み合わせることができる。本発明の範囲は、上記の構造および製造方法の実施形態が使用されるその他の任意の用途を含む。本発明の実施形態の範囲は、これらの実施形態に関連する請求項と共に、請求項が権利を有する均等物の全範囲にわたって判断されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11