(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234942
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】液体輸送装置上での粒子フィルム構造形成を含む基材への粒子堆積方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/00 20060101AFI20171113BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20171113BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20171113BHJP
B44C 1/175 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B05D1/00
B05D1/28
B05D3/00 B
B44C1/175 D
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-556061(P2014-556061)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公表番号】特表2015-511877(P2015-511877A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】EP2013052502
(87)【国際公開番号】WO2013117679
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】1251255
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルア,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】コロネル,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ドザージュ,シモン,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】フュジエ,パスカル
【審査官】
安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−525230(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0281944(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第1544308(CN,A)
【文献】
国際公開第1999/038623(WO,A1)
【文献】
国際公開第2001/089716(WO,A1)
【文献】
特表2002−516590(JP,A)
【文献】
特開2010−142745(JP,A)
【文献】
特開平02−059069(JP,A)
【文献】
特開2005−215167(JP,A)
【文献】
特開昭63−171671(JP,A)
【文献】
特開昭63−062542(JP,A)
【文献】
特表2002−501821(JP,A)
【文献】
特表2015−504032(JP,A)
【文献】
特表2014−524834(JP,A)
【文献】
特開平11−042455(JP,A)
【文献】
特開平08−001058(JP,A)
【文献】
特開平04−017681(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0135834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00〜B05D7/26
B44C1/00〜B44C5/08
B32B1/00〜B32B43/00
B01J19/00〜B01J19/32
C08J7/00〜C08J7/18
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する基材(38)の上に粒子(4)を堆積させる方法であって、
(a)前記基材(38)に対向して配置された粒子出口(26)を有する移動領域(14)に設けられたキャリア液(16)上を浮かぶ粒子(4)の少なくとも一つの第1フィルムを形成する工程と、
(b)少なくとも一つのパターン(70)を、前記移動領域(14)において前記粒子(4)の第1フィルム上に当該パターンの外形に沿って材料(72)を堆積させることで形成する工程と、ここで、前記材料(72)は、前記材料と接触した前記第1フィルム中の前記粒子(4)と共に維持されており、
(c)前記パターンの外形の内部又は外部に配置された前記第1フィルムの粒子(4)の少なくとも一部を除去する工程と、
(d)前記パターン(70)と、前記第1フィルムとを、前記粒子出口(26)を介して前記基材(38)上に移す工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記工程(c)は、前記パターン(70)の外形の内部に配置された前記粒子(4)を除去する工程のみからなり、
前記工程(c)は、前記工程(d)の前であって、他の粒子(4.1)又は物体(50)を前記パターンの外形で区切られた凹部内における前記キャリア液(16)上に配置する工程を行った後に行われ、
前記工程(d)では、前記パターン(70)と、前記第1フィルムと、前記他の粒子(4.1)又は前記物体(50)とを前記粒子出口を介して前記基材(38)上に移動させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコンチップ、マイクロバッテリー、有機エレクトロニクス部品、金属部品、光電池、バッテリーセル、マイクロバッテリーセル、及び他の粒子からなる群から選ばれた少なくとも1つの前記物体(50)を前記凹部内に配置する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(c)は、前記パターン(70)の外形の外部に配置された前記粒子(4)を除去する工程のみからなり、
前記工程(c)は、前記工程(d)の前であって、前記移動領域(14)中のキャリア液(16)上を浮かぶ粒子(4.2)の第2フィルムを前記パターン(70)の外形の周辺に形成する工程の後に行われ、
前記工程(d)では、前記パターン(70)と、前記第1フィルムと、前記第2フィルムとを共に前記粒子出口(26)を介して前記基材(38)上に移動させる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2フィルムは、前記第1フィルムの粒子(4)とは異なる粒子(4.2)からなる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(a)は、前記移動領域(14)内の異なる別個の部分(14a)に前記粒子(4)の複数の第1フィルムをそれぞれ形成する工程のみからなり、
前記工程(b)は、前記複数の第1フィルム(4)の各々に前記少なくとも1つのパターン(70)を形成する工程のみからなり、
前記工程(c)は、前記移動領域(14)内の前記各部分(14a)中の前記パターン(70)の外形の外部に配置された前記粒子(4)を除去する工程のみからなり、
前記キャリア液(16)上で前記パターン(70)を互いに対して相対的に移動させ、
前記工程(d)の前に、前記パターン(70)の周辺の前記移動領域(14)にキャリア液(16)上を浮かぶ粒子(4.2)の第2フィルムを形成する工程を行い、
前記工程(d)は、前記粒子出口(26)を介して、前記パターン(70)と、前記第1フィルムと、前記第2フィルムとを共に前記基材(38)上に移動させる工程のみからなる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2フィルムは、前記第1フィルムの粒子(4)とは異なる粒子(4.2)からなることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記材料(72)は、重合性化合物を含み、前記粒子(4)の第1フィルム上に前記材料(72)を堆積させた後に前記重合性化合物を重合させる請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記材料(72)は、液体又はスラリーである請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記材料(72)は、疎水性である請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記材料(72)は、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、及び/又はポリウレタン樹脂系である請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記材料(72)は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、鋼繊維、アルミニウム繊維及び銅繊維等の繊維、金属粉末、並びに金属酸化物から選ばれた所定の粒子を少なくとも含む請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子を流通させるための傾斜路(12)が前記移動領域の入口に取り付けられ、前記キャリア液(16)も前記傾斜路(12)上を流動することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子上に堆積した前記材料(72)により少なくとも1つのコードを形成し、前記コードを基材上に堆積した後に除去する工程を含む請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材(好ましくは走行する基材)上に粒子を堆積させる方法の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、粒子が配列されたフィルム(好ましくは単層フィルム)の堆積に関する。粒子の大きさは、数ナノメートルから数百マイクロメートルでありうる。この粒子は好ましくは球状粒子であり、例えばシリカ粒子でありうる。
【0003】
基本的に、本発明は、基材上に粒子フィルムを配置する前に行われる、該粒子フィルムの構造形成工程に関する。この構造形成は、例えば粒子フィルムに他の粒子及び/又は物体を結合するために、該粒子フィルムを成形することを目的として行われる。或いは、フィルム上に残存配列粒子で囲まれた凹部を形成することを目的とする場合もある。
【0004】
物体をフィルムへと一体化する場合、特にセンサー等のハイブリッド機器の製造が問題となる。ハイブリッド機器は、その定義上、多様な機能(電子機能、光学機能、電気光学機能、圧電機能、熱電気機能、機械的機能等)を有する物体を同一の基材上で用いるものである。
【0005】
粒子フィルムに一体化される物体の例としては、
− 能動電子部品(トランジスタ、マイクロプロセッサ、集積回路等)、
− 受動電子部品(レジスタ、コンデンサ、ダイオード、フォトダイオード、コイル、導電トラック、溶接母材等)、
− 光学部品(レンズ、マイクロレンズ、回折格子、フィルター等)、
− バッテリーセル、マイクロバッテリーセル、マイクロバッテリー、光検出器、太陽電池、無線自動識別(RFID)システム等、
− ナノメートル又はマイクロメートルスケールの、活性又は不活性の粒子又は凝集体(酸化物、ポリマー、金属、半導体、性質や特性の異なる2相を有するヤヌス粒子、ナノチューブ等からなるもの)
等が挙げられる。
【0006】
より詳細には、本発明は、以下の寸法を有する物体の一体化に関する。
− 部品:顕微鏡スケール(数十ミクロン)から巨視的スケール(約10センチメートルを超える寸法)、及び
− 粒子及び凝集体:1ナノメートルから数百ミクロン。
【0007】
概して、本発明は、燃料電池、オプティックス、フォトニクス、ポリマー被覆、チップ、MEMS、有機エレクトロニクスや光電池の表面構造形成等の分野で用いられる。
【背景技術】
【0008】
近年、配列粒子のフィルムを堆積させるために、液体輸送装置を用いて該フィルムを基材上に移す技術が開発されている。しかしながら、液体輸送装置を用いて予め組織形成したフィルムを基材上に移す際には、一般的な構造形成技術が適しているとは証明されていない。
【発明の概要】
【0009】
従って、本発明は、上記欠点を少なくとも部分的に改善することを目的とする。そのため、本発明は、基材(好ましくは走行する基材)上に粒子を堆積させる方法であって、(a)前記基材に対向して配置された粒子出口を有する移動領域に設けられたキャリア液上を浮かぶ粒子の少なくとも一つの第1緻密フィルムを形成する工程と、(b)少なくとも一つのパターンを、前記移動領域において前記粒子の第1緻密フィルム上に当該パターンの外形に沿って材料を堆積させることで形成する工程と、ここで、前記材料は、前記材料と接触した前記フィルム中の前記粒子と共に維持されており、(c)前記パターンの外形の内部又は外部に配置された前記第1フィルムの粒子の少なくとも一部を除去する工程と、(d)前記パターンを、前記粒子出口を介して前記基材上に移す工程と、を含む方法に関する。
【0010】
即ち、本発明は、基材上への堆積に先立って配列粒子フィルムの構造形成を行うことを可能とする、単純で効果的な解決策を提供する。この構造形成は、例えば、フィルムに異なる粒子及び/又は物体を一体化するために該フィルムを成形すること、或いは単にパターン内部に粒子が存在しない部分を残すことを目的とする。
【0011】
本発明の第1の好ましい実施形態においては、前記工程(c)は、前記外形の内部に配置された前記粒子を除去する工程のみからなり、前記工程(c)は、前記工程(d)の前であって、前記キャリア液上で1以上の他の要素を前記パターンの外形で区切られた凹部内に配置する工程を任意に行った後に行われ、前記工程(d)は、前記パターンと前記第1フィルムとを前記粒子出口を介して移動させ、必要に応じて前記1以上の要素も共に移動させることで行われる。
【0012】
凹部に載置可能な構成要素のうち、シリコンチップ、マイクロバッテリー、有機エレクトロニクス部品、金属部品、光電池、バッテリーセル、及びバッテリーマイクロセルに言及する。これらの構成要素を用いると、例えばセンサー等のハイブリッド機器の製造がとりわけ可能になる。上述のとおり、パターンは、第1フィルムと共に基材上に配置されるまで粒子を含まない状態であってよく、配置後に任意に充填してもよい。
【0013】
或いは、他の粒子が凹部に収容されうる。
【0014】
本発明の第2の好ましい実施形態においては、前記工程(c)は、前記外形の外部に配置された前記粒子を除去する工程のみからなり、前記工程(c)は、前記工程(d)の前であって、前記移動領域中のキャリア液上を浮かぶ粒子の第2緻密フィルムを前記パターンの外形の周辺に形成する工程の後に行われ、前記工程(d)では、前記パターンと前記第2フィルムとを共に前記粒子出口を介して移動させる。
【0015】
なお、移動領域において粒子の第2フィルムを形成する前に、配列粒子を含む複数のパターンは、互いに対して相対的に移動されうる。ここで、上記第2フィルムは、例えば組成及び/又はサイズが第1フィルムと異なる粒子を用いて形成しうる。この場合、特に勾配を有するフィルムの形成が可能となり、このフィルムが基材上に堆積される。
【0016】
本発明の第2の好ましい実施形態においては、前記工程(a)は、前記移動領域内の異なる別個の部分に前記粒子の複数の第1緻密フィルムをそれぞれ形成する工程のみからなり、前記工程(b)は、前記複数の第1緻密フィルムの各々に前記少なくとも1つのパターンを形成する工程のみからなり、前記工程(c)は、前記移動領域内の前記各部分中の前記外形の外部に配置された前記粒子を除去する工程のみからなり、任意に前記キャリア液上で前記パターンを互いに対して相対的に移動させ、前記工程(d)の前に、前記パターンの周辺の前記移動領域にキャリア液上を浮かぶ粒子の第2緻密フィルムを形成する工程を行い、前記工程(d)は、前記粒子出口を介して前記パターン及び前記第2フィルムを共に移動させる工程のみからなる。
【0017】
この場合も、第2フィルムは第1フィルムとは異なる粒子を用いて形成される。第2フィルム及び第1フィルムは、材料及び/又はサイズが異なる粒子を用いて形成されるのが好ましい。
【0018】
上記材料は重合性化合物を含み、第1緻密粒子フィルム上に材料を堆積させた後に重合性化合物を重合させるのが好ましい。
【0019】
このような重合性材料の使用は、液体輸送装置を用いた物体移動にも完全に適応する。特に、この塗布工程において、いかなる重合性材料も、第1フィルム中の粒子の濃度の違いにも対応できる。即ち、使用する材料は幾何学パターン外形に順応し、またフィルムを移動する基材の表面又は屈曲部にも順応しうる。
【0020】
上記材料を重合させると、1つ又は幾つかの固体コードが形成される。固体コードは、例えば2つ又は幾つかの物体を連結するための電気的、熱的、光学的、又は機械的な連結部でありうる。或いは、コードは、後に充填されるか否かに関わらず、凹部を区切る以外の機能を持たないものでありうる。この場合、コードは基材上に移動された後に除去されうる。
【0021】
粒子を除去して外形を示す工程(c)の後にも粒子との接触を維持するために、他の種類の材料を使用してもよい。この場合、用途に応じて、第2粒子フィルムの形成又は予め空にしたパターンの充填の前に、パターン形状を維持することが可能となる。
【0022】
重合性化合物を含む材料を用いる好適な例では、当業者に公知の適当な技術(好ましくは熱的又は光学的技術)を用いて重合を行う。重合は、工程(c)に先立って完全に又は部分的に行うか、或いは工程(c)の後に開始する。いずれの場合も、工程(c)では、パターンの内部又は外部の配列粒子が除去されるが、材料の一部又は全部が重合されているか否かに関わらず、材料はパターン形状が維持される状態にある。
【0023】
移動領域から基材上に移す際の歪みに対応するために、粒子に接触付着した材料は、重合されているか否かに関わらず、十分な柔軟性を有するのが好ましい。
【0024】
必要に応じて、得られたコードの直径は、数十ミクロンから数ミリメートルでありうる。
【0025】
上記材料は液体又はスラリー状に見えることが好ましい。
【0026】
上記材料は疎水性であることが好ましく、また重合した固体コードの状態にあることも好ましい。
【0027】
概して、特にキャリア液が水ではない場合を想定すると、上記材料はキャリア液と混和できない。
【0028】
上記材料はシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、及び/又はポリウレタン樹脂を含むのが好ましい。
【0029】
パターン外形に電気伝導機能及び/又は熱伝導機能を付与するために、上記材料が少なくともカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、鋼繊維、アルミニウム繊維及び銅繊維等の繊維、金属粉末並びに金属酸化物から選ばれた所定の粒子を少なくとも含むのが好ましい。
【0030】
上記第1の実施形態において、特にパターンの凹部に物体を埋め込む場合、第1緻密フィルムによって囲まれた外形が、キャリア液上の適切な位置に物体を保持し、これを基材に移動させることを可能とする。実際、この方法では、外形がキャリア液と同じ高さの崩壊部を規定する。この高さの崩壊部が物体を取り囲み、これにより物体を適切な位置に保持し基材まで移動させることが可能となる。そのため、単純で信頼性があり反復的な方法によって、基材上への物体の移動が正確に行われうる。
【0031】
従って、第1緻密粒子フィルムは、均一又は不均一で、ナノスケール、顕微鏡スケール、又は巨視的スケールの物体を受領しうるプラットフォームと関連している。このプラットフォームは、それ自体がナノスケール又は顕微鏡スケールの粒子の均一又は不均一な集合体であってよく、好ましくは移動する物体とは異なる組成を有する。更に、上述したとおり、緻密フィルムは不均一粒子で形成されうる。また、例えばポリマー粒子の凝集を強化し、それによって緻密フィルムの荷重負担能力を増強する目的で、粒子間に物理的結合が形成されるように、粒子表面を官能化させうる。
【0032】
第1緻密フィルムの粒子の大寸法と、後に移動される物体の大寸法との比率は、好ましくは10
4〜10
8である。例えば、第1緻密フィルムを形成する粒子は1nm〜500μm程度の大寸法を有しうる。一方、このフィルムによって輸送される物体は約30cm以下の大寸法を有しうる。
【0033】
第1緻密フィルムの粒子は、直径約1μmのシリカビーズであることが好ましい。一方で、フィルムは不均一でありうる。即ち、フィルムはサイズが異なるビーズを含みうる。
【0034】
移動される各物体は0.2cmを超える大寸法を有するのが好ましく、30cm未満であることが好ましい。後者の数値は、移動領域の幅に応じて変わりうる。実際、各物体の最終的な寸法は、前述の幅に近い値でありうる。本発明の範囲から逸脱することなく、マイクロメートルサイズ又はナノメートルサイズの物体も堆積/移動させうる。
【0035】
移動される各物体は少なくとも1つの疎水性部を有するのが好ましい。疎水性部をキャリア液と接触するよう配置することによって、物体を確実に浮かせることができる。キャリア液と接触する面全体が疎水性であってよく、或いはこの面に最終的な機器に有用な親水性部と疎水性部が配置されていてもよい。
【0036】
移動される物体の幾つかの例は上述したが、この物体はいかなる形状も有しうる。物体は平面状である必要は無く、1つ又は幾つかの曲率半径(例えば5cm未満)を任意に有してよく、また更に適当な連結用パッドを結合してもよい。また、第1フィルム中の粒子の形状は、一様であることが好ましいが、変更しうる。
【0037】
第1の実施形態では、例えば、検出素子(粒子等)を有するセンサー、1つ以上のエネルギー回収システム(光電池、圧電フィルム、燃料電池)、エネルギー貯蔵システム(マイクロバッテリー)、情報管理システム(シリコンチップ)、通信システム(無線自動識別(RFID)チップ)、電気的接続素子(導電トラック)、電子部品(レジスタ、コンデンサ)、溶接要素(母材)等の、複合デバイスの製造についても対象とする。これらの機器の製造に要求される物体は液体輸送装置上に配置され、必要に応じて複数の物体が積層される。
【0038】
また、第1緻密粒子フィルムの概念は、例えば、サチン・キンゲ(Sachin Kinge)、「表面及び界面における自己集合性ナノ粒子(Self−Assembling Nanoparticles at Surfaces and Interfaces)」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ケミカルフィジックス・アンド・フィジカルケミストリー(ChemPhysChem)、2008年、9、20〜42に開示されている。この第1緻密フィルムは、当業者に公知の技術(例えば、圧縮、双極子間相互作用、及び/又は磁場等)によって、キャリア液表面に形成されうる。
【0039】
双極子間相互作用の技術は、四面体、立方体、又は八面体のようなファセットを有する粒子に用いられる。このような形状の場合、双極子間相互作用が粒子の組織化に重要な役割を担う。ファセット間の極性差により、粒子内部に双極子モーメントが生じる。
【0040】
磁場組織化技術は、強磁場中で強い粒子間相互作用を引き起こすことによって配列可能な磁性ナノ粒子に用いられる。
【0041】
圧縮技術については、特に、ルシオ・アイザ(Lucio Isa)ら、「液液界面におけるコロイド自己集合による粒子リソグラフィー(Particle Lithography from Colloidal Self−Assembly at Liquid−Liquid Interfaces)」、ACSナノ、第4巻、第10号、5665−5670、2010年、マルクス・レッチェ(Markus Retsch)、「空気/水界面における自己集合を利用した大面積移動可能コロイド単層膜の形成(Fabrication of Large−Area, Transferable Colloidal Monolayers Utilizing Self−Assembly at the Air/Water Interface)」、マクロモレキュラー・ケミストリー・アンド・フィジックス(Macromol. Chem. Phys.)、2009年、210、230−241、及びマリア・バルドソバ(Maria Bardosova)、「ラングミュア・ブロジェット法によるシリカ球からのコロイドフォトニック結晶の作製(The Langmuir−Blodgett Approach to Making Colloidal Photonic Crystals from Silica Spheres)」、アドバンスド・マテリアルズ(Adv. Mater.)、2010年、22、3104−3124により知られている。
【0042】
この圧縮技術は、CA2,695,449に記載の傾斜路を用いた方法も包含する。即ち、本発明の方法では、特に粒子の流通に傾斜路を用いる。傾斜路は移動領域の入口に取り付けられ、上記キャリア液も傾斜路上を流動する。
【0043】
通常の条件下では、粒子配列に要するエネルギーの一部は、キャリア液及び粒子を輸送するための上記傾斜路によってもたらされる。水平面上のキャリア液をポンプによって流動させる等、他の手法を用いてもよい。水平面の下流部は、粒子を移動させるための領域である。或いは、ポンプに替えてファンを用いる。移動させる粒子及び物体がキャリア液上に浮遊している状態で、ファンを用いてキャリア液表面に気流を付与する。上記のとおり、本発明の範囲から逸脱することなく、他の手法を用いてよい。例えば、いわゆるラングミュア・ブロジェット法を用いて粒子を圧縮加工してよい。
【0044】
また、第2及び第3の好ましい実施形態で用いる第2粒子フィルムは、第1フィルムとは異なる特性を有している場合も、第1フィルムに類似のものである。この場合も、上述した第1フィルムの可能な形態は、すべて第2フィルムにも当てはまる。
【0045】
上記方法において、粒子、パターン、及び物体を基材上に移動させた後、これらの基材への堆積及び付着を促進するための熱アニーリング工程を行うのが好ましい。
【0046】
本発明の他の利点及び特性は、以下の非限定的な詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による堆積設備を示す、
図2のI−I線に沿った概略断面図である。
【
図3】第1の好ましい実施形態による前図の設備を用いた堆積方法の様々な工程を示す図である。
【
図4】第1の好ましい実施形態による前図の設備を用いた堆積方法の様々な工程を示す図である。
【
図5】第1の好ましい実施形態による前図の設備を用いた堆積方法の様々な工程を示す図である。
【
図6a】第1の好ましい実施形態による前図の設備を用いた堆積方法の様々な工程を示す図である。
【
図6b】第1の好ましい実施形態による前図の設備を用いた堆積方法の様々な工程を示す図である。
【
図6c】第1の好ましい実施形態による前図の設備を用いた堆積方法の様々な工程を示す図である。
【
図7】第1の好ましい実施形態による前図の設備を用いた堆積方法の様々な工程を示す図である。
【
図8a】第2の好ましい実施形態による堆積方法を示す図である。
【
図8b】第2の好ましい実施形態による堆積方法を示す図である。
【
図8c】第2の好ましい実施形態による堆積方法を示す図である。
【
図8d】第2の好ましい実施形態による堆積方法を示す図である。
【
図9a】第3の好ましい実施形態による堆積方法を示す図である。
【
図9b】第3の好ましい実施形態による堆積方法を示す図である。
【
図9c】第3の好ましい実施形態による堆積方法を示す図である。
【
図9d】第3の好ましい実施形態による堆積方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
まず、
図1及び
図2を参照することにより、粒子を基材(好ましくは走行する基材)上に移動させるための設備1を理解しうる。この移動は堆積と同義であるとみなされる。詳細は後述するが、この移動は、粒子の第1緻密フィルムを形成し、必要に応じて構造形成することによって実施される。
【0050】
設備1は粒子4を供給するための装置2を有し、粒子4の大きさは数ナノメートルから数百マイクロメートルの間でありうる。粒子は好ましくは球状であり、例えばシリカ粒子でありうる。他の興味深い粒子としては、白金やTiO
2のような金属又は金属酸化物、ポリスチレンやPMMAのようなポリマー、カーボン等からなるものが挙げられる。
【0051】
より具体的には、好ましい実施形態において、粒子は直径約1μmのシリカ球であり、供給装置2内の溶液中に貯蔵される。溶液200mlに対する粒子の比率は約7gであり、ここでは溶媒はブタノールである。当然ながら、明確化のために粒子は実際の直径よりも大きく図示されている。
【0052】
供給装置2は直径約500μmの制御可能噴射ノズル6を有する。
【0053】
上記設備は液体輸送装置10も有する。液体輸送装置10は、必要に応じて設備の排出を促進するために、上記粒子を流通させるための傾斜路12と、実質的に水平か僅かに傾斜した移動領域14とを一体化したものである。傾斜路の上端は、供給装置2から投入された粒子を受領するために形成されている。この傾斜路は直線状で、5°〜60°(好ましくは10°〜30°)の角度で傾斜しており、これにより粒子が移動領域14に向かって輸送される。また、キャリア液16が傾斜路12上を流通し、移動領域に達する。1つ又は2つのポンプ18を用いて、移動領域14と傾斜路上端との間でこの液16を再循環させうる。ここで、この液は好ましくは脱イオン水であり、粒子4は該液上に浮遊可能である。しかしながら、開放循環回路によって新たな液を用いることが好ましい場合もある。また、数種の混和できない液体を併用しうる。
【0054】
傾斜路の下端は粒子移動領域14の入口に連結されている。入口22は屈曲線24に位置し、屈曲線24は傾斜路12の傾斜面上に存在するキャリア液表面と移動領域14の水平部上に存在するキャリア液表面との接点を形成している。
【0055】
粒子の入口22と出口26との間には間隔があり、2つの側端部28によってキャリア液16が領域14内に保持される。これら側端部28はある程度離れて互いに対向しており、設備内でのキャリア液及び粒子の主な流動方向に平行に延在している。
図1及び
図2中、この方向は矢印30によって示されている。従って、本発明の範囲から逸脱することなく他の配置を採用した場合も、領域14は入口及び出口が開放された回廊又は通路の形状を有する。
【0056】
移動領域の下流部の底には、水平方向よりも上流側に僅かに傾斜したプラトー部27が形成される。例えば5°〜10°程度傾斜している。プラトー部27は「刃」とも称され、その下流端は部分的に粒子出口26を規定する。
【0057】
基材38を走行させるために、設備1は基材輸送装置36も有する。基材は硬質基材であってもフレキシブル基材であってもよい。後者の場合、作動したローラー40上で使用できる。ローラー40の軸は、近接する領域14の出口26に平行である。実際には、基材38は出口26に非常に近接して走行するよう意図されている。そのため、出口に達した粒子は、キャピラリーブリッジ42を介して容易に基材上に移動されうる。キャピラリーブリッジ42はメニスカスとも称され、基材とキャリア液16とをつなげる。或いは、本発明の範囲から逸脱することなく、基材は直接移動領域に接触しうる。この場合、上記キャピラリーブリッジは必要無い。
【0058】
基材が硬質基材であり、移動させる物体も硬質であり、移動中の角度破壊に適応できない場合は、移動領域において基材を液体に浸漬し、この状態で延伸動作を行うことが有利でありうる。これにより、移動領域中の液体の水平面と基材表面との間の角度を最大化することができる。
【0059】
図面に示した例では、基材の幅は領域14及びその出口26の幅に一致している。これは幅L1であり、基材上に堆積されうる粒子フィルムの最大幅とも一致している。この幅は25〜30cm程度でありうる。しかしながら、粒子を堆積させる基材の幅は、幅L1よりも小さく設定しうる。
【0060】
キャピラリーブリッジ42は、出口26に位置するキャリア液16と、ガイドローラー40/駆動ローラー40に取り付けられた基材38の一部分との間に設けられる。
【0061】
好ましくは、水平方向46に対する、基材38の粒子フィルム及び物体が配置される部分の突出角度Aは、160°よりも大きく、より優位には180°近く、例えば175°程度である。
【0062】
以下、第1の実施形態による粒子堆積方法について、
図3〜
図7eを参照して説明する。
【0063】
まず、粒子4の傾斜路12への供給を開始するために、噴射ノズル6を作動させる。初期段階において、粒子4と既に移動領域14に必要なだけ配置されているキャリア液16とで、移動領域14を満たすことが問題となる。
【0064】
図3及び
図4に示すように、この初期段階においては、粒子は装置2によって供給され、傾斜路12上を満たし、その後に領域14に侵入し、そこで分散される。
【0065】
粒子4が徐々に傾斜路12に投入され移動領域14に導入されると、基材38によって堰き止められる。その後、粒子の上流端は屈曲線24に移動することが多い。上流端が線24を超えても粒子の供給は継続され、そのため上流端は傾斜路12へと戻る。
【0066】
実際、
図5に示すように、粒子の上流端54は確実に傾斜路12上に戻り、屈曲線24から所定の水平距離dの地点に位置する。距離dは30mm程度でありうる。
【0067】
このとき、粒子4は移動領域及び傾斜路12上に配列される。粒子4は他の補助無しで自動的に配列される。特に、端54と衝突する際の運動エネルギー及び毛細管力を利用して配置する。得られた第1緻密フィルムがいわゆる六方最密構造を有し、該構造中で各粒子4が他の6つの粒子4に囲まれ接触している状態に配列される。このフィルムを、緻密粒子フィルム又は配列粒子フィルムとも称する。
【0068】
移動領域14内で第1フィルム形成配列粒子4がキャリア液全体を被覆した時点で、パターン外形に沿って材料72を粒子4上に堆積させ、フィルム4上にパターン70を形成する工程を開始する。材料72を堆積させると、材料72が閉線に沿って各パターン外形を形成する。材料72を堆積させて形成した外形により規定された幾つかのパターン70の例を
図6aに示す。材料72は、該材料72に接液した粒子を相対的に保持することが可能であり、好ましくは重合性化合物を含む。材料72のコード外形の内部及び外部の粒子4は配列状態を維持する。
【0069】
重合性材料の堆積は、例えば供給ノズル(図示せず)を用いて行う。材料72は、粒子と接触すると、第1配列フィルムの形状(topography)に適応でき、被覆している粒子4に付着する。
【0070】
重合性化合物は、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、及び/又はポリウレタン樹脂である。重合は例えば熱的及び/又は光学的手順を用いた従来の方法で行われる。好ましくは、材料がまだ移動領域に存在し基材上に移動していないときに、少なくとも部分的に重合を行う。
【0071】
このとき、材料72は液体又はスラリー状である。重合によって形成される連結部を官能化するために、材料72を供給する前に、粒子を材料72に添加しうる。連結部は電気的、熱的、光学的、圧電的、及び/又は機械的な機能を有しうる。例えば、電気的及び/又は熱的な機能を有する連結部を形成する場合、添加粒子は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、繊維(炭素繊維、鋼繊維、アルミニウム繊維、銅繊維等)、金属粉末、金属酸化物等からなるものでありうる。
【0072】
更に、基材は水平方向に対して傾斜角度Aを有するため、移動領域から基材への移動中の歪みに対処する目的で、移動の際に材料コードがある程度の柔軟性を保持することが望ましい。従って、移動領域内でコードの一部又は全体が重合した後、基材上に移動する前に、この柔軟性を得るべきである。
【0073】
好ましくは、材料72は液体状態で疎水性を示す。この場合、材料72が粒子4のフィルム上に供給された後、材料72がキャリア液表面に達しても、後者が該表面に残存しうる。いずれにせよ、材料72を第1フィルム上にある程度堆積させた後、材料72はその組成により後者に付着する。更に、上記材料は、液体状態でも重合後の固体状態でも、キャリア液中で不溶性を保持するように選択される。
【0074】
従って、好ましくは直径が数十ミクロンから数ミリメートルのフレキシブルコードを得るために、基材上への移動に先立って重合が優先的に行われる。このとき、それに接触している粒子4は維持され、またパターンの初期形状も維持される。
【0075】
このフィルム構造形成方法の次の工程では、材料72で形成されたパターン70の外形の内部に配置された粒子4を除去する。ここで、上述のとおり、この離脱工程を行う間、パターン内の配列粒子が除去されるが、材料の一部又は全部が重合されているか否かに関わらず、材料はパターン形状が維持されるような状態にある。
【0076】
図6bに示すように、例えば単純な吸引によって粒子を除去した後、パターン70の内部には粒子が存在しない。
【0077】
次に、除去された粒子を置き換える形で、様々な構成要素がパターン内部に配置されうる。例えば、構成要素は
図6cに示す他の粒子4.1でありうる。粒子4.1は、粒子4に類似のものであるが、組成及び/又はサイズが異なり、この内部充填領域内に規則正しく配列される。粒子4.1の導入には、当業者に公知のいかなる適した方法も用いうる。例えば、マイクロスプレー、ノズル、インクジェット、輸送装置等が使用できる。
【0078】
例えばハイブリッド機器を得るために物体と凹部を一体化する場合、ストリング型又は連続ローラー型の輸送手段が優位に使用される。このような物体50を
図7に概略的に示す。物体50は第1フィルム4に一体化され、各々が1つのパターン70の外形72に囲まれる。即ち、この外形が各物体50の外縁を取り囲み、これにより物体50の互いに対する相対位置及び移動領域の固定構造に対する相対位置が維持される。物体50の大きさがパターンよりも小さい場合、該物体をパターン内部に封鎖するために、構造形成用ポリマーを添加しうる。
【0079】
物体の設置には、この輸送手段に加え、物体の特性、形状、及びサイズに適した従来の操作器具や把持器具(プライヤー等)を用いうる。パターン内部で第1フィルム4に一体化された物体50は、液体の表面張力によって液体表面に保持される。
【0080】
物体50の配置は、本発明の範囲を逸脱することなく、傾斜路12からの粒子流動を停止して優先的に行われる。
【0081】
図7は、上記構造形成工程の後、端54が
図5に示す要求位置に達した後すぐに、基材38の動作を開始した際の設備の状態を示す。文献CA2,695,449に記載のように、パターン70及び物体50又は他の粒子4.1を有する粒子4の第1フィルムは、出口26とキャピラリーブリッジとを通って同時に移動し、基材38上に載置される。言い換えれば、本発明の範囲から逸脱することなく、基材上への堆積の際にパターンを空にするために構造形成工程を行う場合も含めて、第1フィルム4を移動させることによってパターン外形やパターン内の構成要素を輸送することが可能となる。
【0082】
上述したとおり、堆積後、構造形成され物体50を一体化したフィルム4’の幅は、出口26の幅L1に一致するが、本発明の範囲から逸脱することなくより小さな幅を採用しうる。
【0083】
より好ましくは、基材は粒子出口に直接接触する。
【0084】
パターン70の外部に配置された配列粒子4は、移動領域内のキャリア液16の残りの表面全体を覆う。即ち、領域14の出口26において堆積される時点まで、粒子の配列状態が保たれる。配列状態を保つことで、構造形成フィルム4’を基材上に堆積させるまで、物体50を正確な相対位置に維持でき、また固定された側端部28に対する正確な相対位置に維持できる。
【0085】
基材38への粒子4、パターン70、及び物体50又は他の粒子4.1の堆積及び付着を促進するために、好ましくは、移動後にポリマーの熱アニーリングを行う。熱アニーリングは、例えば80℃で、ポリエステル系の低温圧延マットフィルムを用いて行う。このフィルムは、例えばPERFEX−MATT(商標、厚さ125μm)として市販されている。
【0086】
基材として用いられるこのようなフィルムは、80℃程度の温度で一面が粘着性を示すという利点を有する。これにより、粒子4、粒子4.1、及び物体50の後者への付着が容易になる。この温度は、本発明で用いる物体(シリコンチップ又は光電池等)を製造する際の温度と比較すると低いため、物体の取り付けは劣化を引き起こすことなく行われうる。
【0087】
より具体的には、この温度において、粒子4は軟化したフィルム38中に沈み込み、これにより物体がフィルムに直接接触し付着することが可能となる。
【0088】
また、基材38は、ケイ素、ガラス、又は圧電フィルムからなるものでありうる。
【0089】
なお、パターン70が充填されているか否かに関わらず、重合したコード72は、移動後に基材上に保持されうる。或いは、コード72は、好ましくはそれに接触している粒子4と共に、除去されうる。
【0090】
移動の際には、粒子の端部が実質的に同じ位置に留まるよう、粒子の投入と基材の走行速度とを調整する。そのためには、粒子流速は0.1ml/分から数ml/分程度とされうる。一方で基材38の線速度(延伸速度とも称される)は数mm/分〜数百mm/分程度でありうる。上述のとおり、粒子4の供給は、パターン70の形成及び/又は物体50や他の粒子4.1のパターン内一体化の間、一時的に停止されうる。
【0091】
ここで、上記移動される物体は、所望の用途に応じた異なる種類のものでありうる。各物体50は、好ましくは0.2cmより大きくL1以下(即ち30cm近く)の大寸法を有する。厚さは約10マイクロメートルから数十ミリメートルの間である。
【0092】
太陽電池、マイクロバッテリー、有機部品等、移動されるある種の物体は、正方形、長方形、又は円盤のような単純な形状を有し、厚さは小さく、表面積は0.1〜100cm
2程度である。
【0093】
これら構成要素と液体を接続するために、該構成要素は、液体と接触するパッド又はテーパー状プラグを表面に有しうる。例えば元素検出、エネルギー発生、情報輸送等を目的とするような他の種の物体は、湾曲形状やらせん形状のような複雑な形状を有しうる。
【0094】
また、粒子4と物体50との大寸法の比率は、10
4から10
8の間で選択されるのが有利である。実際には、粒子の大寸法は例えば1nm〜500μm程度であり、一方で輸送される物体50は約30cm以下の大寸法を有しうる。
【0095】
好ましくは、各物体50のキャリア液と接触する面は疎水性である。或いは、この面に親水性部と疎水性部が配置されていてもよい。上述のとおり、キャリア液の表面張力も、これら物体を浮かせるために重要な役割を担う。
【0096】
上記物体50の幾つかの好適な例を以下の表に示す。
【0098】
以下、本発明の第2の好ましい実施形態による堆積方法を、
図8a〜
図8dを参照して説明する。
【0099】
材料72でパターン70を形成するまでの開始段階は、第2の実施形態は第1の実施形態と同じであるため、
図8aは
図6aと同一である。従って、本方法のこの段階についてはこれ以上の説明を省略する。
【0100】
一方、
図8bを参照すると、この方法では、次の工程で、第1フィルム4中の閉じた外形72の周囲に配置された粒子を、好ましくは吸引により除去する。パターン70内部に配置された配列粒子4のみが残存する。
【0101】
次に、
図8cに示すように、移動領域14中のキャリア液16上で、任意に、パターン70を互いに対して相対的に移動させる(例えば近接させる)。パターン70は、構造形成工程全体をとおして、当初の形状を維持する。パターン70は、該形状を取り囲む適当なスパイクと共に移動されうる。また、このようなスパイクによって、パターン70は、
図8dに示す次の工程まで当初の位置に維持されうる。スパイクとしては、数百ミクロンオーダーの直径を有する針等が使用される。物体の安定化、位置決め、又は方向付けには、取り扱う物体の形状に応じて、通常は3つ又は4つの針が必要とされる。これらの針は、物体の内側又は外側に配置されうる。例えばマイクロメートルレベルの移動用のマニピュレーターアームを用いて、これらの針自体を移動させる。物体を位置決めし、物体周辺に新たな粒子フィルムを形成すると、針は欠陥を生じることなく除去されうる。
【0102】
この工程では、移動領域14において、パターン70の周辺に配列粒子4.2の第2フィルムを形成する。キャリア液上での第2フィルム4.2の形成は、第1フィルム4の形成と同様又は類似している。従って、この形成についてはこれ以上の説明を省略する。
【0103】
次に、粒子4を充填したパターン70及び第2フィルム4.2によって形成された集合体を、この目的に適した粒子出口を介して基材上に移す。
【0104】
ここで、好ましくは、粒子4.2のサイズ及び/又は材料は、第1フィルムの粒子4とは異なる。また、第1の好ましい実施形態と同様に、パターン形状は目的に合わせて変更されうる。パターン形状は、1つ又は幾つかの粒子勾配を有する構造形成フィルムが堆積されるように、形成されうる。
【0105】
更に、以下の実施形態と同様に、重合した材料のコードは基材上に保持されうる。或いは、該コードを除去してもよい。
【0106】
以下、本発明の第3の好ましい実施形態による堆積方法を、
図9a〜
図9dを参照して説明する。第3の実施形態は上記第2の実施形態から派生したものである。
【0107】
第3の好ましい実施形態においては、移動領域が分割され、複数の分離された入口部分14aと1つの出口部分14bとを利用するため、設備を僅かに変更する。各入口部分14aは粒子入口22aを有する。粒子入口22aはそれぞれ粒子供給傾斜路に接続されている。或いは、入口部分14aの入口22aに共通して1つの傾斜路を連続的に用いる。また、出口部分14bへのアクセスが指示により選択的にブロック/クリアされる場合も、各入口部分14aは出口部分14bに向かって開いている。最後に、出口部分14bは、基材に対向する粒子出口26を規定する。
【0108】
この方法では、まず、出口部分14bを閉じ、移動領域14において、各入口部分14aに粒子4の第1フィルムを形成する。このような状態を
図9aに示す。第1の実施形態において移動領域全体に行った方法と同様又は類似の方法によって、各部分14aに第1フィルム4を配置し、各部分14a全体を充填する。ここで、特殊な点の1つとして、各部分14aに異なる粒子4を使用しうる事実が挙げられる。
【0109】
次に、上記実施形態と同様の方法で、材料72を用いて、各入口部分14aに1つ又は幾つかのパターン70を形成する。このパターンを
図9bに示す。
【0110】
図9cに示すように、第2の実施形態と同様に、閉じた外形72に沿ったパターン70の外部に配置された粒子4を除去して、構造形成工程を継続する。続いて、移動領域の出口部分14bへのアクセスをクリアした後、例えばスパイクを用いてパターンを移動させ、出口部分14bにおいてパターンを再配置する。
【0111】
その後、第2の実施形態と類似の方法で、移動領域において、再配置されたパターンの周辺に配列粒子4.2の第2フィルムを形成する。
図9dに示すように、部分14aのうち1つ及び部分14bにのみ、第2フィルムを形成するのが好ましい。
【0112】
配列粒子4.2の第2フィルムを形成した後、上記実施形態と類似の方法で基材上に移す。
【0113】
どの実施形態においても、本方法は、粒子が移動領域中のキャリア液上に存在する間、材料72を用いて、フィルム4上又はフィルム4.2上、或いは粒子4.1上に、1つ又は幾つかのコード又はスパイクを形成する工程を含みうる。コード(好ましくは閉じていない線に沿ったコード)を除去する工程は、基材上に堆積させた後にのみ行われる。残った空間は、任意に他の構成要素で充填されうる。重合した材料によるコード/スパイクを除去する場合、コードは粒子4に接触付着しているため、粒子4と共にコードを取り去るのが好ましい。
【0114】
上記方法の適用可能性については既に述べた。以下、実例を説明する。
【0115】
上記方法は、光電池やLED/PLED/OLED部品の製造に使用できる。近年の研究により、光電池、LED、PLED、OLED等の分野において、インターフェースの構造形成によって収率や放出光を著しく改善しうることが示されている。この枠組みの中で、粒子の緻密フィルムは、例えばインターフェース構造形成工程においてマスキング材として使用される。通常、構造形成は、粒子間の隙間を利用して、材料堆積又はプラズマエッチングによって行われる。しかしながら、基材のある領域は凹状である必要がある。これは、例えば電気接触領域を明確に維持するためであり、或いは単にこの領域が特別な機能を有していないからである。従って、上記第1の実施形態の方法では、緻密フィルムを基材上に移す前に、上記材料を液上に用いることで粒子が除去される領域を規定でき、且つ吸引によってこの材料を除去できる。
【0116】
他の一例は熱交換器に関する。交換器の壁の構造形成は、熱交換を制御する一手段である。この構造形成は、粒子マスクを用いたリソグラフィーにより達成しうる。上記方法では、寸法が異なる粒子を組み合わせて不均一に堆積させることによって、リソグラフィーによる形状(特に粒子サイズ勾配のある形状)が得られる。
【0117】
更に他の一例は化学センサーに関する。上記方法では、不均一緻密フィルムを異なる特性の粒子と結合させることが可能となり、従って異なる気体や化学種等の検出が可能となる。
【0118】
最後に、トライボロジーにおいては、機械的用途のために、緻密フィルムはマイクロタンク/ナノタンクを形成するためのリソグラフィーマスクとして使用されうる。マイクロタンク/ナノタンクを形成することにより、研磨された物体の表面に潤滑剤を保持することが可能となる。これら保持マイクロタンク/ナノタンクの寸法は、摩擦係数を調整するための周囲長である。マイクロタンク/ナノタンクの寸法を変更するための単純な手段として、本発明の方法で容易に得られる、大きさが異なる粒子を含む不均一緻密フィルムをエッチングマスクとして使用する手法がある。
【0119】
上記の例は非限定的であり、本発明において当業者は種々の変更が可能であることは勿論である。