(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234943
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ピストン、ピストンのための冷却されたピストンリング、およびピストンリングの構成方法
(51)【国際特許分類】
F16J 9/02 20060101AFI20171113BHJP
F16J 9/20 20060101ALI20171113BHJP
F16J 1/00 20060101ALI20171113BHJP
F02F 5/00 20060101ALI20171113BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20171113BHJP
F02F 3/26 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
F16J9/02
F16J9/20
F16J1/00
F02F5/00 A
F02F5/00 N
F02F5/00 Z
F02F3/00 R
F02F3/00 B
F02F3/00 L
F02F3/26 C
【請求項の数】18
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-556710(P2014-556710)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公表番号】特表2015-508148(P2015-508148A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】US2013025290
(87)【国際公開番号】WO2013119915
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】13/370,744
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンプトン,キース
(72)【発明者】
【氏名】アゼベド,ミゲル
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−138520(JP,A)
【文献】
特開昭59−158358(JP,A)
【文献】
特開平04−333545(JP,A)
【文献】
実開平01−154363(JP,U)
【文献】
実開昭52−034344(JP,U)
【文献】
国際公開第2011/056822(WO,A2)
【文献】
特公昭62−54564(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 9/00−9/28
F02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のためのピストンリングであって、
ピストンのリング溝からピストンのトップランドに沿って上方に延在するように構成された第1の部分と前記リング溝に受けられるように構成された第2の部分とを有するL字形状のリングを備え、前記リングの前記第1および第2の部分は、囲われた中空の冷却チャンバを有し、そこに冷却媒体が配置され、前記冷却媒体は、前記リング溝の内方へ、および前記リング溝から前記トップランドに沿って上方へ自由に流れ、
内面は、前記第2の部分から離れて上方に延在する方向に沿って径方向外側へ逸れる、ピストンリング。
【請求項2】
前記L字形状のリングは、材料の複数の別個のピースから構成される、請求項1に記載のピストンリング。
【請求項3】
前記材料の複数の別個のピースは、溶接またはろう付け継手によって互いに接着される、請求項2に記載のピストンリング。
【請求項4】
前記材料の複数の別個のピースの少なくとも1つは冷間成形される、請求項2に記載のピストンリング。
【請求項5】
前記囲われた中空の冷却チャンバは、端部プラグによって両端部において閉じられる、請求項2に記載のピストンリング。
【請求項6】
前記端部プラグは互いに間隔を空けられた端面を有し、前記リングは緩められて付勢されていない状態にある、請求項5に記載のピストンリング。
【請求項7】
前記第1の部分は、シリンダーライナーに対して摺動移動するように構成された外面と前記冷却チャンバの部分を囲う内面とを有する壁を含み、前記壁は、実質的に連続的に異なる厚さを有する、請求項1に記載のピストンリング。
【請求項8】
内燃機関のためのピストンであって、
筒状の外面と、前記外面内に延在する環状の最上リング溝と、前記外面から径方向内側に凹んだトップランドとを有する本体を備え、前記トップランドは、前記リング溝から上部燃焼面に延在し、ピストンはさらに、
前記最上リング溝に受けられるように構成された第1の部分と前記最上リング溝から前記トップランドに沿って上方に延在するように構成された第2の部分とを有するL字形状のピストンリングを備え、前記ピストンリングの前記第1および第2の部分は、中空の冷却チャンバを有し、そこに冷却媒体が配置され、前記冷却媒体は、前記最上リング溝から内側へ、および前記リング溝から前記トップランドに沿って上方へ自由に流れ、
前記ピストンリングの内面は、前記第2の部分から離れて上方に延在する方向に沿って径方向外側へ逸れる、ピストン。
【請求項9】
最上面は外径を有し、さらにピンボア軸の両側に一対のスカートパネルを含み、前記スカートパネルは、前記外径の約2.0から3.0%の範囲の径方向に延在する厚さを有する、請求項8に記載のピストン。
【請求項10】
燃焼ボウル壁の厚さは、前記外径の2.5%から4.0%である、請求項9に記載のピストン。
【請求項11】
圧縮高さは、ピンボア軸と最上面との間に延在し、前記最上面は外径を有し、前記圧縮高さは、前記外径に対する比が約38%から45%の間である、請求項8に記載のピストン。
【請求項12】
頂部および底部は、長手中心軸に沿って延在し、冷却空洞は前記長手中心軸と同軸でない、請求項8に記載のピストン。
【請求項13】
内燃機関のためのピストンリングを構成する方法であって、ピストンのリング溝から前記ピストンのトップランドに沿って上方に延在するように構成された第1の部分と前記リング溝に受けられるように構成された第2の部分とを含む中空の冷却チャンバと、前記第2の部分から離れて上方に延在する方向に沿って径方向外側へ逸れる内面と、を有するL字形状のリングを形成するステップと、
前記中空の冷却チャンバ内に冷却媒体を配置するステップと、
前記冷却チャンバ内に前記冷却媒体を維持するために中空の冷却チャンバの両端において端部プラグを固定するステップとを備える、方法。
【請求項14】
金属ストリップ材料の複数の別個のピースからL字形状のリングを形成するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
溶接またはろう付け継手によって前記金属ストリップ材料の複数のピースを互いに固定するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属ストリップ材料の複数の別個のピースを冷間成形するステップをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
管状の材料からL字形状のリングを形成するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
管状材料を押出し成形してL字形状とするステップをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、概して内燃機関に関し、より特定的には内燃機関のためのピストンおよびピストンリングに関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術
エンジン製造者は、燃費の改善、燃料燃焼の改善、オイル消費量の削減、車両内で熱を継続使用するための排気の高温化、シリンダボア内の圧縮負荷の上昇、軽量化およびエンジンの小型化を含むがこれらに限定されないエンジン効率および性能を改善すべきとの要求の高まりに直面している。したがって、エンジンの燃焼室内で温度および圧縮負荷を上昇させることが望ましい。しかしながら、燃焼室内で温度および圧縮負荷を上昇させることにより、ピストンに対する摩耗および物理的負荷が大きくなり、これにより、その潜在的な耐用年数が短くなってしまう。特に懸念される分野として、ピストンのピストンリング領域内での過度な発熱およびそれに付随する摩耗が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明に従って構成されたピストンリングを含むピストンは、本開示を読み、添付の図面を参照すると当業者に明らかとなるように、現代の高性能エンジンにおいて生じる過度の熱に耐えることができる。
【0004】
発明の概要
本発明の一局面に従って構成された内燃機関のためのピストンリングは、L字形状であり、ピストンのリング溝からピストンのトップランドに沿って上方に延在するように構成された第1の部分とリング溝に受けられるように構成された第2の部分とを有する。リングの第1および第2の部分は、囲われた中空の冷却チャンバを有し、そこに冷却媒体が配置される。冷却媒体は、リング溝の内方へ、およびリング溝からトップランドに沿って上方へ自由に流れる。
【0005】
本発明の他の局面に従えば、内燃機関のためのピストンが提供される。ピストンは、筒状の外面と外面内に延在する環状の最上リング溝とを有する本体を含む。ピストンのトップランドは、外面から径方向内側に凹んでいる。トップランドは、最上リング溝から上部燃焼面に延在する。ピストンはさらに、最上リング溝に受けられるように構成された第1の部分と、トップランドに沿って最上リング溝から上方に延在するように構成された第2の部分とを有するL字形状のピストンリングを含む。ピストンリングの第1および第2の部分は、中空の冷却チャンバを有し、そこに冷却媒体が配置され、冷却媒体は、最上リング溝の内側へ、およびリング溝からトップランドに沿って上方へ自由に流れる。
【0006】
本発明の他の局面に従えば、内燃機関のためのピストンリングを構成する方法が提供される。方法は、ピストンのリング溝からトップランドに沿って上方に延在するように構成された第1の部分とリング溝に受けられるように構成された第2の部分とを含む、中空の冷却チャンバを有するL字形状のリングを形成するステップを含む。さらに、中空の冷却チャンバ内に冷却媒体を配置するステップと、中空の冷却チャンバ内に冷却媒体を維持するために中空の冷却チャンバの両端において終端プラグを固定するステップとを含む。
【0007】
本発明の他の局面に従えば、L字形状のピストンリングを形成するステップは、ピストンリングを形成するために管状の材料を使用して形成するステップを含む。
【0008】
本発明のこれらおよび他の局面、特徴および利点は、現在好ましい実施形態およびベストモードについての以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲ならびに添付の図面に関連付けて考慮されると、より容易に認識されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一局面に従って構成されたピストンの断面図である。
【
図2】
図1のピストンにおける円で囲われた領域を示す拡大断面図である。
【
図2A】本発明の追加の局面に従って構成された
図2と同様のピストンリングを示す図である。
【
図2B】本発明の追加の局面に従って構成された
図2と同様のピストンリングを示す図である。
【
図2C】本発明の追加の局面に従って構成された
図2と同様のピストンリングを示す図である。
【
図2D】本発明の追加の局面に従って構成された
図2と同様のピストンリングを示す図である。
【
図4】ピストンリングの端部キャップを示す斜視図である。
【
図5A】本発明に従って構成されたピストンリングに形成される前の管状の部材を示す断面図である。
【
図5B】本発明に従って構成されたピストンリングに形成された後の
図5Aの管状の部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
現在好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、
図1は、たとえば、コンパクトで高性能な現代の車両エンジンなどの内燃機関のシリンダーライナー13(
図2および
図2A)のシリンダーボア12において往復運動させる、本発明の現在好ましい一局面に従って構成されたピストン10を示す側断面図である。ピストン10は本体14を有する。この本体14は、単一の一体型の鋳込材料などでできたものであるかまたは鍛造材料もしくはビレット材料から形成されているが、これは一例である。この本体14は、中心の長手方向軸15に沿って延在し、この中心の長手方向軸15に沿って、ピストン10がシリンダーボア12内において往復運動する。本体14は、上部燃焼壁を含んで形成される。この上部燃焼壁は、その一方側に、シリンダーボア内で燃焼ガスに直接晒されるように構成された上部燃焼面16と、その反対側に、上部燃焼面16の真下にあり軸方向に延在する下クラウン面18とを有する。ピストン本体14は、上部燃焼面16に隣接するリングベルト領域20を有して形成され、このリングベルト領域20は、少なくとも1つのピストンリングを受けるように構成されている。ピストンリングは、それぞれ第1および第2のピストンリング19,21として示されている。さらに、ピストン本体14は、冷却空洞を含んで形成される。冷却空洞は、例として、閉じられたまたは実質的に閉じられた冷却空洞22として示される。冷却空洞22は、径方向内側に構成され、リングベルト領域20と実質的に径方向に並んで構成される。第1のピストンリング19は、概してL字形状であり、たとえばアルゴンなどの不活性ガスおよび/または液状の冷却材のような、冷却媒体25を受けるための中空かつ環状の冷却チャンバ24を有する。第2のピストンリング21は、第1のピストンリング19から軸方向下方へ間隔が空けられ、過剰なオイルをシリンダーライナー13から拭き取ってオイルをクランク室に戻す標準的なオイル制御リングとして設けられる。第1のピストンリング19は、第1のピストンリング19の下方の平坦な面28から上に向かって上部燃焼面16に延在する直径の減少した上部ランド領域26に対する冷却を改善する。このため、この領域で生じた熱は、ピストン本体14および第1のピストンリング19からシリンダーライナー13へ伝達され、これによってピストン10の耐用年数が長くなる。
【0011】
ピストン本体14は一対のピンボス30を有する。これら一対のピンボス30は下クラウン面18から垂下して、横方向に間隔を空けて配置されたピンボア32を形成する。これらピンボア32は、中心の長手方向軸15に概ね交差するよう延在するピンボア軸34に沿って同軸に並んでいる。これらピンボス30は、横方向に間隔を空けて配置されたスカート部分38に接合される。これらスカート部分38は、互いから直径方向に間隔を空けてピンボア軸34の両側に配置されており、シリンダーボア12内でピストン10が往復運動する際にピストン10をその所望の向きで維持しやすくするためにシリンダーボア12内で協働するような輪郭を有する凸状外面を有する。
【0012】
上部燃焼面16は、凹んだ燃焼ボウル38を有するものとして示される。この燃焼ボウル38は、シリンダーボア内に所望のガス流をもたらす。少なくとも一部が燃焼ボウル38に起因して、ピストン本体材料の比較的薄い領域が燃焼ボウル38と冷却空洞22と下クラウン面18との間に形成される。このようなことから、使用時において、冷却空洞22を流れる冷却媒体、およびピンボス30間の中心空洞領域内の下クラウン面18に対して流れる冷却媒体などにより、これらの領域を適切に冷却する必要がある。下クラウンの冷却は、オイルの飛沫、配向された冷却オイルジェット、または中心空洞領域内のオイルによってもたらされ得る。
【0013】
上部ランド領域26の冷却をさらに促すために、内部に冷却媒体25が配置された中空の第1のピストンリング19が、上部ランド領域26の環状の外壁40とシリンダーライナー13との間に配置される。外壁40は、上部燃焼面16から下方へ延在する。外壁40は、上部ランド領域26から垂下するリングベルト領域20の最大直径D2から減少した直径D1を有して形成され、これにより、外壁40とシリンダーライナー13との間において第1のピストンリング19の直立した第1の部分44を受けるように大きさの設定された環状の間隙または空間42が設けられる。直径D1は、第1のピストンリング19の第1の部分44が上部ランド領域26とシリンダーライナー13との間で自由に浮動できるように大きさが設定され、これによって、その所望の摺動の向きを自動的に見出すことができる。さらに第1のピストンリング19を収容および配置するために、環状のリング溝46は、直径が減少した上部ランド領域26の外壁40へ径方向内側に延在し、リング溝46は、ピストンリング19の横方向に延在する第2の部分48を受けるために大きさが設定される。リング溝46は、第1のピストンリング19の第2の部分48がその中でリング溝46内で自由に浮動し、さらにピストンリング19がその所望の摺動の向きを自動的に見出すことができるように大きさが設定される。
【0014】
第1のピストンリング19は概してL字形状であり、第1の部分44はL字形状構成の直立した脚部または垂直に延在した脚部を提供し、第2の部分48は、L字形状構成の横方向または水平方向に延在した脚部を提供する。第1の部分44は、環状空間42に受けられ、第2の部分48は、リング溝46に受けられる。第1のピストンリング19は、シリンダーライナー13と近接して摺動移動してピストンの上方ランド領域26とシリンダーライナー13との間に所望の封止を提供するように大きさが設定された筒状の外面50を有する。外面50は、長手方向軸15に対して平行または実質的に平行の関係で第1の部分44の直立外脚部52に沿って延在する。第1の部分44は、冷却チャンバ24の部分によって外脚部52から径方向内側に間隔の空けられた直立内脚部54、および外脚部52と内脚部54との間を径方向に延在する上脚部56も有する。上脚部56は、上部燃焼面16と同一の平面または実質的に同一の平面を延在する最上面を有する。
【0015】
第1のピストンリング19の第2の部分48は、冷却チャンバ24の部分によって互いに間隔の空けられた、それぞれ径方向に延在する上下脚部58,60、および上下脚部58,60の間に延在する径方向最内側脚部62を有する。上下脚部58,60は、リング溝46内で動き嵌めされるように寸法設定された外面を有し、その一方で直立脚部62は、リング溝46内で動き嵌めされるように寸法設定された径方向最内側面を有し、これによってピストンリングは使用時においてリング溝46内で自由に浮動することができる。このため、ピストンリング19は、シリンダーライナー13に対して封止して係合するように自動的に位置決めすることができる。
【0016】
囲われたピストンリング冷却チャンバ24は、外脚部52、内脚部54、上脚部56のそれぞれの内面64,66,68、ならびに上脚部58、下脚部60、直立脚部62のそれぞれの内面70,72,74によって囲まれる。内面64〜74は、使用時において冷却媒体25が「カクテルシェイカー」のような態様で冷却チャンバ24内でかき回されるように構成され、囲う上部ランド領域26を最適に冷却する。
図2に示されるように、内面64,66は、互いに平行または実質的に平行であり、内面70,72は、互いに平行または実質的に平行であり、断面で示されるようにピストンリングの壁厚は全体を通して均一である。対照的に、本発明のさらなる局面に従う
図2Aに示されるように、本発明の他の局面に従って構成されたピストンリング10′の壁厚は、断面で示されるように、全体を通して均一ではない。特に、直立外脚部52′は、その長さに沿って延在する厚さが均一ではなく、厚さは連続的または実質的に連続的にその全長に沿って異なり、最も薄い領域が外脚部52′の最上端部に位置し、最も厚い領域が外脚部52′の最下端部に位置する。外面50′は、長手方向軸15に対して平行または実質的に平行に延在しており、厚さが均一でないことから、内面64′は長手方向軸15およびピンボア軸34に対して傾斜した関係で延在する。示されるように、内面64′は、上部燃焼面16に向けて上方へ延在して第2の部分48′の下脚部60′から離れるにつれて、径方向外側へ逸れる。傾斜した内面64′は、冷却チャンバ24′内の冷却媒体25の流体流動力学を変化させることによって、第1のリング19′の内径から外径への熱の伝達を向上させ、これにともなって熱が容易にシリンダーライナー13に伝達され、上部ランド領域26の冷却が促される。冷却媒体25が傾斜した内面64′に対して下方へ流れる、または下方へ移動するにつれ、冷却媒体は径方向内側へ流れることとなり、冷却チャンバ24′全体にわたる冷却媒体の撹拌が促される。
【0017】
図3に示されるように、第1のピストンリング19は、冷却チャンバ24の対向する自由端78,80を接続するように作用する一対の端部キャップ76(
図4)を有して形成される。このため、冷却媒体25は、冷却チャンバ24内に維持され、そこから外側へ漏れ出すことがない。端部プラグ76は、たとえば接着剤および/または溶接継手を含む任意の適切な手法で自由端78,80に固定することができる。自由端78,80内に固定されると、端部プラグ76の端面82は、リング構造の付勢力によって互いに当接するように構成される、または好ましくは互いに僅かに間隔を空けられた関係で配置されるように構成され、これによってシリンダーライナー13内での設置時に互いに向けて僅かに潰れることができ、シリンダーライナー13に対して径方向外側に向けて作用する第1のピストンリング19のばね付勢を付与するように作用し、これに対する封止が完成する。
【0018】
製造時において、
図2および
図2Aに最もよく示されるように、ピストンリング19は、平坦なシート状の金属材料からなる複数の別個のピースから構成され得て、シート状の材料からなる個別の比較的長く狭いピースは、順送り型スタンピング作業などにおいて冷間成形され、たとえば、筒状の構成にして、その後に冷間成形またはスタンピングが行われ、それぞれの研削されていない完成形状が得られる。そして、個別のピースを形成すると、溶接またはろう付け継手、または端部プラグ76に適した接着剤によって、端部プラグ76を含んでピースが互いに固定され、たとえば研削およびコーティングなどの仕上げ処理が行われ得て、ピストンリング19の製造が完了する。冷却チャンバ24を完全に封止する前には、大気温度および大気圧において固体である材料またはアルゴンなどの不活性ガスとして提供され得る冷却媒体が冷却チャンバ24内に配置されることを認識すべきである。
図2および
図2Aの実施形態において、ピストンリング10,10′は、スタンピングされた平坦なシート状の材料から形成されるが、これは一例であり、限定されない。
図2Aに示されるように、内面64′は、たとえば、コイニングもしくはその他によって冷間成形され得る、または加工もしくは研削され、傾斜した面が形成される。別個のピースを互いに固定した後に行われる研削工程が行われ、仕上げサイズが得られ、研削された表面は、所望のコーティング厚さを収容する空間を付与することができる。所望のコーティングは、たとえば、選択的に研削面を窒化させる、またはPVD工程などにおいて耐摩耗コーティングを施すなどによって施され得る。
【0019】
図2B〜
図2Dにおいて、本発明のさらなる局面に従って構成されたピストンリング10″,10″′,10″″が示される。最終構成は
図2の実施形態と同様であるが、金属ストリップ材料の個々のピースは、
図2のものとは異なる態様で成形される。
図2Bにおいて、ストリップ材料の平坦なピースがストリップ材料のスタンピングされたピースに固定される。
図2Cにおいて、材料のピースの一方は実質的にL字形状を有し、他方は概してM字形状またはW字形状を有する。
図2Dにおいて、別個のストリップ材料の3つのピースが互いに固定される。しかしながら、ストリップ材料の別個のピースの数は任意の適切な数を使用することができることを認識すべきである。
【0020】
図5Bにおいて、本発明のさらなる局面に従って構成されたピストンリング10″″′が示される。ピストンリング10″″′は、互いに固定されたストリップ金属の複数の別個のピースから形成されるのではなく、管状の金属84の固体ピースから形成される(
図5A)。ピストンリング10″″′は、最終的には同じ端部形状を有して形成されることから、ここでは形状についてさらに詳細には記載しない。金属からなる管状のピースは、たとえばスタンピングまたは押出しなどの冷間成形工程において所望の端部形状を有して形成され、そして切断され、
図3に示されるように丸い構成となるように巻かれ得る。当然ながら、処理ステップは、材料84の管状のピースがまず所定長さに切られ、たとえば巻いて形成する、または形成して巻くなどにより、最終構成を得るように形成され得る。そして、端部プラグ76が上述のように開放端に設置される。
【0021】
上述の現在好ましい実施形態の詳細な説明を考慮すると、本発明の多くの変更例および変形例が上述の教示に照らして実現可能であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲内であれば、本発明が具体的に記載された以外の態様で実施され得ることが理解されるはずである。