特許第6234946号(P6234946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234946
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】電池状態推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20171113BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20171113BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H01M10/48 P
   H02J7/00 Q
   H02J7/00 X
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-559589(P2014-559589)
(86)(22)【出願日】2014年1月31日
(86)【国際出願番号】JP2014000511
(87)【国際公開番号】WO2014119328
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-17981(P2013-17981)
(32)【優先日】2013年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 洋平
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/129802(WO,A1)
【文献】 特開2007−121227(JP,A)
【文献】 特開2008−256436(JP,A)
【文献】 特開2004−132949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電を行った電池に対し、時間と共に変化する電池状態を予め定めた計測期間について実測値を取得する実測値取得部と、
前記電池状態をモデル化する複数のモデル関数の関数形を前記実測値によって決定するモデル関数決定部と、
前記関数形が決定された前記複数のモデル関数のそれぞれについて前記電池状態の変化を予測する複数予測部と、
前記複数予測部の結果に基づき、前記電池状態の推定安定値を算出する推定部と、
を備え、
前記複数のモデル関数の1つは、
前記電池状態を開回路電圧として、該開回路電圧が時間に対し上昇する単位をΔVとしたときに、該ΔVが最初に生じる経過時間をT=t1−t0とし、2度目の前記ΔVが生じる経過時間をTR=t2−t1としてRを求め、時間Tと前記ΔVと前記Rとをパラメータとし、前記電池状態である前記開回路電圧が前記時間に関し対数指数関数的に変化する関数形を有する、電池状態推定装置。
【請求項2】
請求項に記載の電池状態推定装置において、
n回目にΔVが生じる経過時間がTR(n-1)である、電池状態推定装置。
【請求項3】
請求項に記載の電池状態推定装置において、
前記複数のモデル関数の1つは、前記モデル化した前記開回路電圧をVESTとして、
【数1】
【数2】
但し、t0は初期状態の時間、t1は前記t0から経過して前記開回路電圧が最初に前記ΔV変化した時間、t2は前記t1から経過して前記開回路電圧が2度目に前記ΔV変化した時間、V2は前記時間t2における前記開回路電圧である、電池状態推定装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1に記載の電池状態推定装置において、
前記複数のモデル関数は、
さらに、前記開回路電圧が時間に関し指数関数的に変化するモデル関数を少なくとも含む、電池状態推定装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1に記載の電池状態推定装置において、
前記推定部は、
前記複数の予測結果を、前記決定されたモデル関数の係数に基づいて定められた重みづけで加算して前記電池状態の推定安定値を算出する、電池状態推定装置。
【請求項6】
請求項に記載の電池状態推定装置において、
前記電池状態は、前記電池の前記開回路電圧に基づいて算出される電池の充電状態である、電池状態推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間と共に変化する電池状態の安定値を推定する電池状態推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、等価回路的に容量成分を有するため、充放電を行うとその端子間電圧が安定するのに時間がかかる。
【0003】
そこで、特許文献1には、バッテリの開回路電圧の推定に、充放電終了時から20〜30分のデータで直線近似したものを用いることが述べられている。また、特許文献2には、二次電池の開回路電圧の近似式として、4次以上の指数減衰関数の係数を決定して用いることが述べられている。また、特許文献3には、バッテリの安定開回路電圧の推定に逆数関数を用いることが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−250757号公報
【特許文献2】特開2005−43339号公報
【特許文献3】特開2008−268161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
充放電を行った電池について、時間と共に変化する電池状態を的確に予測することが要望される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電池状態推定装置は、充放電を行った電池に対し、時間と共に変化する電池状態を予め定めた計測期間について実測値を取得する実測値取得部と、電池状態をモデル化する複数のモデル関数の関数形を実測値によって決定するモデル関数決定部と、関数形が決定された複数のモデル関数のそれぞれについて電池状態の変化を予測する複数予測部と、複数予測部の結果に基づき、電池状態の推定安定値を算出する推定部と、を備え、複数のモデル関数の1つは、電池状態を開回路電圧として、開回路電圧が時間に対し上昇する単位をΔVとしたときに、ΔVが最初に生じる経過時間をT=t1−t0とし、2度目の前記ΔVが生じる経過時間をTR=t2−t1としてRを求め、時間TとΔVとRとをパラメータとし、電池状態である開回路電圧が前記時間に関し対数指数関数的に変化する関数形を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、充放電を行った電池について、時間と共に変化する電池状態を的確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る実施の形態の一例における電池状態推定装置を含む電池充放電制御システムの構成図である。
図2】本発明に係る実施の形態の一例における電池状態推定装置で用いられる複数のモデル関数の一例を示す図である。
図3】本発明に係る実施の形態の一例における電池状態推定装置で用いられる複数のモデル関数の他の例を示す図である。
図4】本発明に係る実施の形態の一例における電池状態推定装置で実行される電池状態推定の手順を示すフローチャートである。
図5】本発明に係る実施の形態の一例における電池状態推定装置で用いられる重みづけを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下で述べる電池の開回路電圧特性、複数のモデル関数の関数形等は、説明のための一例であって、電池状態推定装置の対象となる電池の仕様や特性等によって、適宜変更することができる。
【0010】
以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、電池充放電制御システム1の構成図である。電池充放電制御システム1は、電池充放電部2を備える。電池充放電部2は、電池3と、電池3が放電負荷4あるいは充電電源5と接続されるときに電池3に入出力する電流を検出する電流検出部6と、電池3の端子間電圧を検出する電圧検出部7を含む。電池充放電制御システム1はさらに、充放電制御装置8と、電池状態推定装置10と、電池状態推定装置10に接続される記憶部11を含んで構成される。なお、図1には、電池充放電制御システム1の構成要素ではないが、電池充放電部2に接続される放電負荷4と充電電源5が示される。
【0012】
電池状態推定の対象となる電池3は、電池状態が時間と共に変化するもので、ここでは充放電可能な二次電池である。二次電池としては、リチウムイオン電池を電池状態推定の対象とできる。これ以外に、ニッケル水素電池、アルカリ電池、鉛蓄電池等を電池状態推定の対象としてもよい。
【0013】
放電負荷4は、電池3から供給される放電電力を利用する機器である。ここでは、家庭用の電灯、パーソナルコンピュータ等の電気機器等、工場の照明器具、電気機器等が挙げられる。これ以外に、車両に搭載される回転電機、電気機器等であってもよい。
【0014】
充電電源5は、商用電源12、太陽電池13等の発電装置で、これらが充電器14を介して電池3と接続される。
【0015】
電流検出部6は、充電電源5から電池3に入力される充電電流、電池3から放電負荷4に出力される放電電流を区別して検出する電流検出手段である。電流検出部6としては、適当な電流計を用いることができる。
【0016】
電流検出部6が検出した電流値は、充電電流値をプラスの電流値、放電電流値をマイナスの電流値として、適当な信号線で充放電制御装置8に伝送され、充放電指令値と実測値との間の偏差の確認等、電池充放電部2の制御に用いられる。また、電流検出部6が検出した電流値は、電池状態の1つである電流特性値であるので、電池状態推定装置10が電流特性値に関する推定を行うときには、電流検出部6が検出した電流値は、推定の基礎として用いられる実測電流値として、適当な信号線で電池状態推定装置10に伝送され、電池の充電状態を示すSOC(State Of Charge)を算出する等の推定処理に用いられる。
【0017】
電圧検出部7は、電池3の端子間電圧を検出する電圧検出手段である。電圧検出部7としては、適当な電圧計を用いることができる。電圧検出部7が検出した電圧値は、適当な信号線で充放電制御装置8に伝送され、電池の電圧状態の監視等に用いられる。また、電圧検出部7が検出した電圧値は、電池状態の1つである電圧特性値であるので、電池状態推定装置10が電圧特性値に関する推定を行うときには、電圧検出部7が検出した電圧値は、推定の基礎として用いられる実測電圧値として、適当な信号線で電池状態推定装置10に伝送される。
【0018】
充放電制御装置8は、放電負荷4、充電電源5の要求に従って充放電指令を出力して電池3の充放電を制御する。かかる充放電制御装置8は、適当なコンピュータで構成することができる。
【0019】
電池状態推定装置10は、伝送されてきた電流検出部6の検出値または電圧検出部7の検出値を用いて、時間と共に変化する電池状態の安定値を推定する装置である。かかる電池状態推定装置10は、適当なコンピュータで構成することができる。
【0020】
ここで、時間と共に変化する電池状態とは、電池3が充放電するときに、電池3の容量成分、インダクタンス成分、抵抗成分によって、入出力する電流値、端子間電圧値が時間と共に変化することによる電池3の状態のことである。したがって、時間と共に変化する電池状態とは、電池3の電流状態、電圧状態の他に、電池の充電状態を示すSOC(State Of Charge)等が含まれる。
【0021】
例えば、電池3に対し充放電制御装置8から充電指令が出力されて、電池3に対し充電電源から所定の充電が行われ、その充電が完了したとき、電池3は充電電源5から切り離された開回路状態となる。その開回路電圧を見ると、時間と共に端子間電圧が低下する。逆に、電池3に対し充放電制御装置8から放電指令が出力されて、電池3から放電負荷4に対し所定の放電が行われ、その放電が完了したとき、電池3は放電負荷4から切り離された開回路状態となる。開回路状態のときの電池3の端子間電圧が開回路電圧(Open Circuit Voltage:OCV)である。開回路電圧を見ると、充電完了後は時間と共に開回路電圧が次第に低下し、放電完了後は時間と共に開回路電圧が次第に上昇する。このように、開回路電圧は、時間と共に変化する電池状態の1つである。
【0022】
充放電完了後に時間と共に変化する開回路電圧の安定値を得るには、安定までの時間を要する。安定までの時間は数分の場合もあるが、数時間かかることも少なくない。以下では、時間と共に変化する電池状態として開回路電圧を述べるが、その場合に、電池状態推定装置10は、演算によって短時間に開回路電圧の安定値を推定する。
【0023】
電池状態推定装置10は、時間と共に変化する電池状態を予め定めた計測期間について実測値を取得する実測値取得部20と、電池状態をモデル化する複数のモデル関数の関数形を実測値によって決定するモデル関数決定部21と、関数形が決定された複数のモデル関数のそれぞれについて電池状態の変化を予測する複数予測部22と、複数予測部の結果に基づき、電池状態の推定安定値を算出する推定部23を備えて構成される。
【0024】
かかる機能は、電池状態推定装置10がソフトウェアを実行することで実現できる。具体的には、電池状態推定装置10が電池状態推定プログラムを実行することでこれらの機能を実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
【0025】
電池状態推定装置10に接続される記憶部11は、電池状態推定装置10で用いられるプログラム等を格納するメモリである。ここでは、特に、電池状態をモデル化する複数のモデル関数をモデル関数ファイル25として記憶する。電池状態推定装置10の推定部23は、記憶部11のモデル関数ファイル25に記憶される複数のモデル関数の中で、適当なモデル関数を2以上選択し、これらによって予測される複数の予測値に基いて、電池状態の安定値を推定する。
【0026】
複数のモデル関数を用いるのは、電池3の充放電後の電圧挙動が電池3の種類や環境温度、充放電時の電流量、SOCの値等によって複雑に影響され、これらの場合に同じモデル関数が適しているとは限らないためである。また、電池3の電池状態が充放電の全領域に渡って1つのモデル関数でモデル化できない場合が多いためである。また、1つのモデル関数を用いることができる場合でも、そのモデル関数の関数形を決めるパラメータが、常に同じ値が適しているとは限らない。
【0027】
モデル関数ファイル25には複数のモデル関数が記憶される。その中の1つは、電池状態が時間に関し指数関数的に変化する第1モデル関数26である。また、電池状態が時間に関し対数関数的に変化する第2モデル関数27が記憶される。それ以外のモデル関数としては、電池状態が時間に関し直線的に変化する直線的モデル関数、電池状態が時間に対し反比例となる反比例的モデル関数、経過時間tのべき乗の線形和を用いた関数、電池状態が時間に対し漸近的に集束値に近づくシグモイド関数等が記憶される。以下では、電池状態推定装置10において、複数のモデル関数として第1モデル関数26と第2モデル関数27が用いられる場合について述べる。
【0028】
上記では、記憶部11を電池状態推定装置10とは独立のものとして述べたが、これらを電池状態推定装置10に含まれるものとして構成してもよい。また、電池状態推定装置10を充放電制御装置8とは別の独立した装置として述べたが、電池状態推定装置10を充放電制御装置8の一部として構成してもよい。
【0029】
次に、モデル関数ファイル25に記憶されている第1モデル関数26と第2モデル関数27について、図2図3を用いて説明する。第1モデル関数26と第2モデル関数27は、電池3の開回路電圧の予測値VESTと放電完了からの経過時間tとの関係を示す関数である。
【0030】
図2は、第1モデル関数26を示す図である。第1モデル関数26は、初期値として、時間t0における開回路電圧をV0で与えるとき、式(1)で示される関数形を有する。Aと時定数τは、具体的な関数形を決定するパラメータである。このように、第1モデル関数26は、電池状態である開回路電圧が時間に関し指数関数的に変化する関数形を有する。
【0031】
【数1】

【0032】
図3は、第2モデル関数27を示す図である。第2モデル関数27は、初期値として、時間t0のときの開回路電圧をV0、時間t1のときの開回路電圧をV1、時間t2のときの開回路電圧をV2で与えるとき、式(2)で示される関数形を有する。RとTとΔVは、具体的な関数形を決定するパラメータである。Rは式(3)で与えられる。
【0033】
【数2】

【0034】
【数3】
【0035】
第2モデル関数27は、式(2)に示すように、電池状態である開回路電圧が時間に関し対数指数関数的に変化する関数形とするものである。ここでは、開回路電圧が時間に関し上昇する単位をΔVとしたときに、そのΔVが最初に生じる経過時間をT=t1−t0とし、2度目のΔVが生じる経過時間をTR=t2−t1として、式(3)で示すRを求める。そして、3度目のΔが生じる経過時間をTR2=t3−t2、4度目のΔが生じる経過時間をTR3=t4−t3、以下、n度目のΔが生じる経過時間をTR(n-1)となる関数形を有する。このように、第2モデル関数27は、RとTとΔVをパラメータとして関数形が決定される。
【0036】
第1モデル関数26と第2モデル関数27を比較すると、開回路電圧が時間の経過と共に低下するときの時定数τが大きいときは、開回路電圧の安定値の推定に第1モデル関数26を適用しても誤差は少ない。開回路電圧が時間の経過と共に低下するときの時定数τが小さいときは、開回路電圧の安定値の推定に第1モデル関数26を適用すると、実測された初期値やτの誤差が大きく影響する。その場合には、緩やかな関数形を有する第2モデル関数27を開回路電圧の安定値の推定に用いる方が少ない誤差となる。
【0037】
図2の第1モデル関数26、図3の第2モデル関数27は、記憶部11のモデル関数ファイル25に格納される。なお、図2図3は、放電の場合を示しているが、充電の場合でも、第1モデル関数26、第2モデル関数27の関数形は同じで、パラメータ、符号等が変更されるだけである。
【0038】
図2図3では、モデル関数ファイル25に格納される第1モデル関数26と第2モデル関数27の様式をマップとして説明した。モデル関数ファイル25の様式は、電池状態を示す値と時間とが相互に関連付けられていれば、マップ以外の様式であってもよい。例えば、ルックアップテーブル、数式、時間tを入力すると電池状態を示す値が出力されるROM等の様式であってもよい。
【0039】
上記構成の作用、特に、電池状態推定装置10の各機能について、図4図5を用いてさらに詳細に説明する。図4は、電池状態の推定の手順を示すフローチャートである。図4の手順は、電池状態推定プログラムの各処理手順にそれぞれ対応する。ここでは、一例として、電池3が放電を行ったときの開回路電圧の安定値の推定を行う手順を説明する。
図5は、図4の推定安定値算出の様子を示す図である。
【0040】
図4において、電池状態の推定を行うのは、まず充放電制御装置8からの充放電指令が出力されたときである(S1)。ここでは、充放電制御装置8から放電指令が出力される。放電指令が出力されると、電池3は放電負荷4に対して放電指令の内容の放電を実行する。この段階では、電池状態推定装置10はなにも行っていない。S1の後で、電池状態推定装置10は、計測タイミングに至ったか否かを判断する(S2)。計測タイミングとは、電池3が放電完了した後の開回路電圧の安定値を推定するために、その前提となる電池3の端子間電圧の実測値を計測することができるタイミングのことである。いまの場合、電池3が開回路状態となったときに、S2の判断が肯定される。例えば、電池3が放電を完了したか否かを判断し、放電完了と判断されるときに、S2の判断が肯定されるとすることができる。具体的には、充放電制御装置8が出力する放電指令に放電完了時間が含まれている場合、その放電完了時間が経過したことで、S2の判断が肯定されるものとできる。
【0041】
S2の判断が肯定されると、電池3の開回路電圧の実測値が取得される(S3)。この処理手順は、電池状態推定装置10の実測値取得部20の機能によって実行される。ここでは、電圧検出部7から伝送される検出値を取得する。実測値は、サンプリングによって異なる時間において複数取得される。
【0042】
次に、計測期間終了か否かが判断される(S4)。計測期間は、S3で取得される実測値のデータが、第1モデル関数26の関数形のパラメータ、第2モデル関数27の関数形のパラメータを決定するために十分となるように設定される。データ数のみならず、取得された実測値が適当な電圧間隔であること等を含めて、計測期間が設定される。計測期間が長すぎると、開回路電圧の安定値に近くなり、推定の価値が少なくなるので、計測期間は、開回路電圧の安定値推定の要求精度を考慮して、必要最小限とすることが好ましい。
【0043】
S4で十分な実測値が取得されると、次に、第1モデル関数26の関数形のパラメータ、第2モデル関数27の関数形のパラメータの決定が行われる(S5)。この処理手順は、電池状態推定装置10のモデル関数決定部21の機能によって実行される。ここでは、第1モデル関数26の場合は、Aとτ、第2モデル関数27の場合は、R,T,ΔVを決定するための演算が行われる。複数の実測値を用いて関数の複数のパラメータを決定するのは、最小二乗法等の公知技術を用いることができる。
【0044】
S5で第1モデル関数26と第2モデル関数27のパラメータが決定され、それぞれの関数形が定まると、予め定めた予測時間tSにおける開回路電圧の値が第1モデル関数26と第2モデル関数27を用いて、予測値としてそれぞれ算出される(S6)。この処理手順は、電池状態推定装置10の複数予測部22の機能によって実行される。予測時間tSは、電池3の開回路電圧が十分安定した値となると考えられる時間に設定される。予測時間tSは、電池3について、予め実験的に求めておくことができる。一例として、計測期間を10分として、予測時間tSを1時間後とすることができる。
【0045】
図5は、時間t0における第1モデル関数26による予測値VS1と第2モデル関数27による予測値VS2の算出を示す図である。図5の横軸は時間、縦軸は開回路電圧Vである。時間t0から時間t4までが計測期間で、この場合、5つの実測値V0からV4が取得されている。図5には、この5つの実測値V0からV4に基づいて決定された第1モデル関数26の関数形30と、第2モデル関数27の関数形31が示される。関数形30において、時間tSのときの値が、第1モデル関数26による予測値VS1である。同様に、関数形31において、時間tSのときの値が、第2モデル関数27による予測値VS2である。
【0046】
再び図4に戻り、S7では、重みづけ値の決定が行われる。重みづけ値とは、第1モデル関数26による予測値VS1と第2モデル関数27による予測値VS2を用いて、最も確からしい開回路電圧の安定推定値を算出するために、この2つの予測値のいずれに重きを置くかを決める値である。すなわち、重みづけ値αを用いて、安定推定値=αVS1+(1−α)VS2として算出する。
【0047】
重みづけ値αは、第1モデル関数26の関数形のパラメータ値、第2モデル関数27の関数形の係数であるパラメータ値に基づいて定めることができる。重みづけ値αの決定の一例を挙げると、開回路電圧が時間の経過と共に上昇するときの時定数τに従って定めることができる。上記のように、時定数τが大きいときは、開回路電圧の安定値の推定に第1モデル関数26を適用することが好ましく、時定数τが小さいときは、第2モデル関数27を適用することが好ましい。そこで、式(4)に従って、重みづけ値αを定めることができる。
【数4】
【0048】
式(4)は、重みづけ値αを固定的なものとしているが、電池3の種類や環境温度、充放電時の電流量、SOCの値、予測時間tS等を考慮して定めることができる。また、これを学習によって決定するものとすることもできる。例えば、ニューラルネットワーク等の機械学習手法を用いて、事前に収集したデータを用いて学習し、学習したモデルを用いて重みづけ値αを計算するものとできる。
【0049】
S7で重みづけ値αが決定されると、S6で算出された第1モデル関数26による予測値VS1と第2モデル関数27による予測値VS2を用いて、最も確からしい開回路電圧の安定推定値の算出が行われる(S8)。この処理手順は、電池状態推定装置10の推定部23の機能によって実行される。すなわち、重みづけ値αを用いて、安定推定値=αVS1+(1−α)VS2として算出する。なお、図5に重みづけ値αを用いた安定推定値VS0を図示した。
【0050】
S8で、電池3の開回路電圧の安定推定値が得られると、予め求められている開回路電圧とSOCの関係を用いて、放電完了後の電池3のSOCを算出することができる(S9)。
【0051】
このように、充放電後の電池3の端子間電圧をサンプリングして開回路電圧を推定するため、電圧に基いたSOCの算出を従来よりも短時間で算出できる。また、予測に用いるモデル関数を複数用いてその間の重みづけを行って開回路電圧を推定するので、多様な条件で複雑に変動する開回路電圧の挙動に柔軟に対応でき、推定精度が向上する。
【0052】
上記では、2つのモデル関数による2つの予測値を用いて重みづけを行ったが、3以上のN個の予測値VS1からVSNを用いるときは、N個の重みづけ値α1からαNを用い、式(5)に従った重みづけを行うことができる。ここで、N個の重みづけ値の総和=1である。
【数5】
【0053】
なお、上記では、充放電終了後に、1回の計測期間で得られた実測値に基いて開回路電圧を推定するものとしたが、これを数回の計測期間について行って、結果を順次更新することで、推定精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 電池充放電制御システム、2 電池充放電部、3 電池、4 放電負荷、5 充電電源、6 電流検出部、7 電圧検出部、8 充放電制御装置、10 電池状態推定装置、11 記憶部、12 商用電源、13 太陽電池、14 充電器、20 実測値取得部、21 モデル関数決定部、22 複数予測部、23 推定部、25 モデル関数ファイル、26 第1モデル関数、27 第2モデル関数、30 (第1モデル関数の)関数形、31 (第2モデル関数の)関数形。
図1
図2
図3
図4
図5