(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エフリンB4の検出のための抗エフリンB4(抗EphB4)抗体を含む製造物品またはキットであって、該検出は、生物学的試料中のエフリンB4−抗エフリンB4抗体複合体を検出することを含み、該抗エフリンB4抗体は、以下:
(a)各々が順に配列番号9、11、13、1、3及び7を含む、HVR−L1、HVR−L2、HVR−L3、HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3を含む、抗EphB4抗体;
(b)各々が順に配列番号10、12、14、1、3及び8を含む、HVR−L1、HVR−L2、HVR−L3、HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3を含む、抗EphB4抗体;
(c)各々が順に配列番号9、11、15、2、4及び7を含む、HVR−L1、HVR−L2、HVR−L3、HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3を含む、抗EphB4抗体;
(d)各々が順に配列番号9、11、16、1、5及び7を含む、HVR−L1、HVR−L2、HVR−L3、HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3を含む、抗EphB4抗体;または
(e)各々が順に配列番号9、11、17、1、6及び7を含む、HVR−L1、HVR−L2、HVR−L3、HVR−H1、HVR−H2及びHVR−H3を含む、抗EphB4抗体、
からなる群より選択される、製造物品またはキット。
【発明を実施するための最良の形態】
【0094】
(発明の詳細な説明)
本発明は本明細書において例えばEphB4の発現及び/又は活性、例えば増大した発現及び/又は活性又は望ましくない発現及び/又は活性に関連する疾患状態の治療又は防止のために有用な抗EphB4抗体を提供する。一部の実施形態においては、本発明の抗体は腫瘍、癌及び/又は細胞増殖性障害を治療するために使用される。
【0095】
別の特徴において、本発明の抗EphB4抗体は種々の組織及び細胞の型におけるEphB4の検出のような、EphB4の検出及び/又は単離のための試薬として有用性を有する。
【0096】
本発明は更に、抗EphB4抗体を作製する方法及び抗EphB4抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
全般的手法
本明細書に記載又は参照した手法及び操作法は一般的に、当業者により、十分理解されており、そして従来の方法論、例えばSambrook等、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd.edition(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubel等、編(2003));シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR2:A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995)),Harlow and Lane,eds.(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,and ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney編(1987))に記載の方法論を用いながら共通して使用されている。
定義
「単離された」抗体とは、その天然の環境の成分から発見され、そして分離及び/又は回収されたものである。その天然の環境の夾雑物成分は抗体の診断又は治療上の使用に干渉する可能性があり、そして、酵素、ホルモン及び他の蛋白性又は非蛋白性の溶質を包含する。好ましい実施形態においては抗体の精製は(1)Lowry法で測定した場合に抗体95重量%超、最も好ましくは99重量%超まで、(2)スピニングカップシーケンサーの使用によりN末端又は内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、又は(3)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下のSDS−PAGEで均質となるまで行う。単離された抗体は、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分も存在しなくなるため、組み換え細胞内のインサイチュの抗体を包含する。しかしながら通常は単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により製造する。
【0097】
「単離された」核酸分子は自身が通常抗体核酸の天然の原料中で会合している夾雑核酸分子少なくとも1つから識別され、分離されている核酸分子である。単離された核酸分子は自身が天然に存在する形態または周囲状況にはないものである。従って単離された核酸分子はそれが天然の細胞中に存在する状態の核酸分子からは区別される。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば核酸分子が天然の細胞とは異なる染色体位置にある抗体を通常発現する細胞内に含有される核酸分子を包含する。
【0098】
「Kabatにおける可変ドメイン残基ナンバリング」又は「Kabatにおけるアミノ酸位置ナンバリング」という用語及びその変形例は、Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interst,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)における抗体の編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに関して使用されているナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを用いれば、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短鎖化又はそれの内部への挿入に相当する過少な、又は付加的なアミノ酸を含有してよい。例えば、重鎖可変ドメインはH2の残基52の後に単一のアミノ酸インサート(Kabatによれば残基52a)及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(Kabatによれば残基82a、82b及び82c等)を含んでよい。残基のKabatナンバリングは、所定の抗体について、「標準的な」Kabat番号配列を有する抗体の配列の相同性の領域におけるアライメントにより決定してよい。
【0099】
「実質的に同様」又は「実質的に同じ」という用語は、本明細書においては、2つの数値(一般的には1つは本発明の抗体に関わるものであり、もう1つは参照物/比較物の抗体に関わるもの)の間の差が、その数値(例えばKd値)が尺度となる生物学的特徴の観点内で、殆ど又は全く生物学的及び/又は統計学的に有意でないと当業者が考えるほど十分高い程度の2つの数値間の同様性を指す。このような2つの数値の差は好ましくは、参照物/比較物抗体の数値の関数として、約50%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満である。
【0100】
「結合親和性」とは一般的に分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合相手(例えば抗原)との間の非共有結合性の相互作用の合計の強度を指す。特段の記載が無い限り本明細書においては、「結合親和性」とは結合対(例えば抗体と抗原)の間の1:1の相互作用を反映している内因性の結合親和性を指す。分子Xのその相手Yに対する親和性は一般的に解離定数(Kd)により表すことができる。親和性は本明細書に記載するもののような当該分野で知られた一般的な方法により測定できる。低親和性抗体は一般的に緩徐に抗原に結合し、そして容易に解離する傾向にあるのに対し、高親和性抗体は一般的に急速に抗原に結合し、より長時間結合状態で残存する傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法が当該分野で知られており、その何れも本発明の目的のために使用できる。特定の例示される実施形態は後に記載する。
【0101】
1つの実施形態において、「Kd」又は「Kd値」とは、本発明によれば、目的の抗体のFab型とその抗原を用いながら、抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する後述の試験により説明される通り、未標識の抗原の段階力価物の存在下(
125I)標識抗原の最小濃度でFabを平衡化させ、次に、抗Fab抗体コーティングプレートを用いて結合抗原をキャプチャーすることにより測定する(Chen,et al.,(1999)J.Mol.Biol.293:865−881)。試験の条件を確立するために、マイクロプレート(Dynex)を50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中キャプチャー用抗Fab抗体(Cappel Labs)5ug/mlで一夜コーティングし、そしてその後、室温で2〜5時間(約23℃)PBS中2%(w/v)ウシ血清アルブミンでブロッキングした。非吸着プレート(Nunc#269620)中、100pM又は26pM[
125I]−抗原を目的のFabの連続希釈物と混合する(例えばPresta等、(1997)Cancer Res.57:4593−4599の抗VEGF抗体、Fab−12の試験と合致)。次に目的のFabを一夜インキュベートするが、インキュベートは確実に平衡が達成されるようにより長時間(例えば65時間)継続してよい。その後、混合物を室温インキュベーション(例えば1時間)のためにキャプチャープレートに移す。次に溶液を取り出し、プレートwPBS中0.1%Tween−20で8回洗浄する。プレートが乾燥した時点で、シンチラント(MicroScint−20;Packard)150ul/ウェルを添加し、プレートをTopcountガンマカウンター(Packard)で10分間計数する。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を競合的結合試験で使用するために選択する。別の実施形態によれば、Kd又はKd値は〜10応答単位(RU)において固定化された抗原CM5チップを用いて25℃においてBIAcore
TM−2000又はBIAcore
TM−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いた表面プラズモン共鳴試験により測定する。慨すればカルボキシメチル化でキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore,Inc.)を入手元の取扱説明書に従って塩酸N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を5ug/ml(〜0.2uM)まで10mM酢酸ナトリウムpH4.8で希釈した後に5ul/分の流量で注入し、約10応答単位(RU)のカップリング蛋白を達成する。抗原注入後、1Mエタノールアミンを注入して未反応の基をブロッキングする。動態の測定のために、Fabの2倍連続希釈物(0.78nM〜500nM)を0.05%Tween20含有PBS(PBST)中で25℃流量約25ug/分で注入する。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)は会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることにより単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Softwareバージョン3.2)を用いて計算する。平衡解離定数(Kd)は比k
off/k
onとして計算する。例えばChen,Y.,et
al.,(1999)J.Mol Biol 293:865−881を参照できる。上記した表面プラズモン共鳴試験によるonの速度が10
6M
−1S
−1を超過する場合は、on速度は、攪拌赤色キュベットを有するストップフロー装着分光光度計(Aviv
Instrument)又は8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)のような分光計において測定した場合の抗原の漸増濃度の存在下PBSpH7.2中20nM抗抗原抗体(Fab型)の25℃における蛍光発光強度の増大又は低減を測定する蛍光クエンチングの手法(励起=295nm、発光=340nm、16nmバンドパス)により測定することができる。
【0102】
本発明による「on速度」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「k
on」はまた〜10応答単位(RU)において固定化された抗原CM5チップを用いて25℃においてBIAcore
TM−2000又はBIAcore
TM−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いた上記表面プラズモン共鳴試験により測定する。慨すればカルボキシメチル化でキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore,Inc.)を入手元の取扱説明書に従って塩酸N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を5ug/ml(〜0.2uM)まで10mM酢酸ナトリウムpH4.8で希釈した後に5ul/分の流量で注入し、約10応答単位(RU)のカップリング蛋白を達成する。抗原注入後、1Mエタノールアミンを注入して未反応の基をブロッキングする。速度論的測定のために、Fabの2倍連続希釈物(0.78nM〜500nM)を0.05%Tween20含有PBS(PBST)中で25℃流量約25ug/分で注入する。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)は会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることにより単純な1対1のロングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Softwareバージョン3.2)を用いて計算する。平衡解離定数(Kd)は比k
off/k
onとして計算する。例えばChen,Y.,et al.,(1999)J.Mol Biol 293:865−881を参照できる。しかしながら上記した表面プラズモン共鳴試験によるonの速度が10
6M
−1S
−1を超過する場合は、on速度は、攪拌キュベットを有するストップフロー装着分光光度計(Aviv Instrument)又は8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)のような分光計において測定した場合の抗原の漸増濃度の存在下PBSpH7.2中20nM抗抗原抗体(Fab型)の25℃における蛍光発光強度の増大又は低減を測定する蛍光クエンチングの手法(励起=295nm、発光=340nm、16nmバンドパス)により測定することができる。
【0103】
「ベクター」という用語は本明細書においては、自身が連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つの型のベクターは「プラスミド」であり、これは更に別のDNAセグメントがライゲーションされていてよい環状の2本鎖DNAループを指す。別の型のベクターはウィルスベクターであり、その場合更に別のDNAセグメントがウィルスゲノム内にライゲーションされていてよい。特定のベクターは自身が導入されている宿主細胞内において自己複製することができる(例えば複製の細菌起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳類ベクター)は宿主細胞内への導入により宿主細胞のゲノム内に組み込まれることができ、これにより宿主細胞ゲノムとともに複製される。更にまた特定のベクターは自身が作動可能に連結されている遺伝子の発現を指向することができる。このようなベクターは本明細書においては、「組み換え発現ベクター」(又は単に「組み換えベクター」)と称する。一般的に、組み換えDNA手法において利用される発現ベクターはプラスミドの形態である場合が多い。本明細書においては、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用されている形態であるため、互換的に使用してよい。
【0104】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」とは、本明細書においては、何れかの長さのヌクレオチドの重合体を指し、DNA及びRNAを包含する。ヌクレオチドはデオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又は、その類縁体、又はDNA又はRNAポリメラーゼにより、又は合成反応により重合体に取り込まれることができる何れかの基質であることができる。ポリヌクレオチドは修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びその類縁体を含んでよい。存在する場合は、ヌクレオチド構造に対する修飾は重合体の組み立ての前又は後に付与してよい。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されていてよい。ポリヌクレオチドは合成後に更に例えば標識とのコンジュゲーションにより修飾されてよい。他の型の修飾は、例えば天然に存在するヌクレオチド1つ以上の類縁体による「キャップ」置換、ヌクレオチド間修飾、例えば未荷電連結による(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カーバメート等)、及び、荷電連結(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)によるもの、懸垂部分を含有するもの、例えば蛋白(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジン等)、インターカレーターを有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート形成剤を含有するもの(例えば金属、放射活性金属、ホウ素、酸化性金属等)、アルキル化剤を含有するもの、修飾された連結部を有するもの(例えばアルファ芳香族核酸等)、並びに、未修飾形態のポリヌクレオチドを包含する。更にまた、糖に通常存在するヒドロキシル基の何れかは、例えばホスホネート基、ホスフェート基により置き換えられているか、標準的な保護基により保護されているか、又は、別のヌクレオチドへの追加的連結部を作成するために活性化されていてよく、或いは、固体又は半固体の支持体にコンジュゲートされていてよい。5’及び3’末端のOHはホスホリル化されるか、又は、アミン又は炭素原子1〜20個の有機キャッピング基部分により置換されていることができる。他のヒドロキシルはまた標準的保護基に誘導体化されていてよい。ポリヌクレオチドはまた当該分野で一般的に知られたリボース又はデオキシリボース糖の類縁体形態、例えば2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−又は2’−アジド−リボース、炭素環糖類縁体、アルファ−アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース又はリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環状類縁体及び非塩基性類縁体、例えばメチルリボシドを含有してよい。1つ以上のホスホジエステル連結部が別の連結基により置き換えられていてよい。これらの代替的連結基は、例えばホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR
2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH
2(「ホルムアセタール」)で置き換えられている実施形態を包含し、ここで各R又はR’は独立して、H又は場合によりエーテル(−O−)結合を含有する置換又は未置換のアルキル(1〜20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルキルである。ポリヌクレオチド中の全連結部が同一である必要はない。前期はRNA及びDNAを包含する本明細書に記載する全てのポリヌクレオチドに適用する。
【0105】
「オリゴヌクレオチド」とは本明細書においては、必然ではないが一般的に約200ヌクレオチド長未満の短鎖の一般的には1本鎖の一般的には合成されたポリヌクレオチドを一般的に指す。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は相互に排他的ではない。ポリヌクレオチドに関して上記したものは等しく、そして完全にオリゴヌクレオチドに適用できる。
【0106】
ペプチド又はポリペプチドの配列に関して「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、配列をアラインし、そして必要に応じてギャップを導入することにより最大パーセント配列同一性を達成した後の、そして何れかの保存的置換も配列同一性の部分とはみな佐内場合の、特定のペプチド又はポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を測定する目的のためのアライメントは例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような市販されているコンピューターソフトウエアを用いながら、当該分野で知られた種々の方法において達成することができる。アライメントを測定するための適切なパラメーター、例えば比較される配列の完全長にわたる最大アライメントを達成するために必要な何れかのアルゴリズムは問う業者が決定できる。しかしながら本明細書の目的のためには、%アミノ酸同一性の値は配列比較コンピュータープログラムALIGN−2を使用して得られるものであり、その場合、ALIGN−2プログラムのための完全なソースコードは以下の表Aに示す通りである。ALIGN−2配列比較コンピュータープログラムはGenentech,Inc.により著作されたものであり、以下の表Aに示すソースコードは米国著作権登録番号TXU510087の下にそれが登録されている米国著作権局(Washington D.C.,20559)内にユーザードキュメンテーションとともに提出されている。ALIGNB−2プログラムはGenentech,Inc.,South San Francisco,Californiaを通じて公的に入手できる。ALIGN−2プログラムはUNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0D上での使用のためにコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメーターはALIGN−2プログラムにより設定され、そして変化しない。
【0107】
ALIGN−2をアミノ酸配列比較のために使用する状況においては、所定のアミノ酸Aの、所定のアミノ酸Bに対する又はそれとの又はそれに対向する%アミノ酸配列同一性(これは所定のアミノ酸Bに対する又はそれとの又はそれに対向する所定の%アミノ酸配列同一性を有するか含む所定のアミノ酸配列Aと表現することもできる)は以下の通り計算する:
分数X/Yの100倍
式中、Xは配列アライメントプログラムALIGN−2により、AとBのそのプログラムアライメントにおいて、同一マッチとスコアされたアミノ酸残基の数であり、そしてYはB中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さはアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合は、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性はAに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくならない。
【0108】
特段の記載が無い限り、本明細書において使用する全ての%アミノ酸配列同一性の値はALIGN−2コンピュータープログラムを用いながら直前のパラグラフにおいて記載した通りに得た。
【0109】
「EphB4」という用語(互換的に「EphB4R」とも称する)は、本明細書においては、特段または内容上の別様の記載が無い限り、ネイティブ又は変異体(ネイティブまたは合成に関わらず)のEphB4ポリペプチドを指す。「ネイティブ配列」という用語は特に、天然に存在するトランケーションされた、又は分泌された形態(例えば細胞外ドメイン配列)、天然に存在する変異体形態(例えばオルタナティブスプライシング形態)及び天然に存在する対立遺伝子変異体を包含する。「野生型EphB4」という用語は一般的に天然に存在するEphB4中に存在するアミノ酸配列を成すポリペプチドを指す。「野生型EphB4」という用語は一般的に天然に存在するEphB4中に存在するアミノ酸配列を指す。
【0110】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は最も広範な意味において互換的に使用され、そしてモノクローナル抗体’例えば完全長又は未損傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば所望の生物学的活性を示す限りにおいて二重特異性抗体)を包含し、そして特定の抗体フラグメント(本明細書においてより詳述する)も包含してよい。抗体はヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟のものであることができる。
【0111】
「可変」という用語は可変ドメインの特定の部分が抗体間で配列において広範に異なっている事実を指し、そして各々の特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用される。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメイン全体に渡って均一に分布しているわけではない。それは共に軽鎖及び重鎖の可変ドメイン内の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と称される3セグメント内に濃縮されている。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)と称される。ネイティブの重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、βシート構造を連結し、そして一部の場合にはその部分を形成するループを形成する3CDRにより連結されたβシート配置を概ね採用している4つのFR領域を含む。各鎖のCDRはFR領域により、そして他の鎖に由来するCDRと共に、近接して保持されており、抗体の抗原結合の形成に寄与している(Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)参照)。定常ドメインは抗原への抗体の結合には直接関与していないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞毒性における抗体の関わりを示す。
【0112】
抗体のパパイン消化は各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメント及び容易に結晶化する自身の能力を反映した名前を有する残余の「Fc」フラグメントを生成する。ペプシン処理は2つの抗原複合部位を有し、なお抗原に交差結合できるF(ab’)
2フラグメントをもたらす。
【0113】
「Fv」は完全な抗原認識及び結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。2本鎖Fv種においては、この領域は堅固な非共有結合の会合における1重鎖及び2軽鎖可変ドメインの2量体よりなる。1本鎖Fc種においては、軽鎖及び重鎖が2本差Fv種のものと類似の「2量体」構造において会合できるように、フレキシブルなペプチドリンカーにより共有結合されることができる。各可変ドメインの3CDRが相互作用してVH−VL2量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この配置においてである。併せて考えると、6CDRが抗原結合特異性を抗体に付与している。しかしながら、たとえ単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な僅か3CDRを含むFvの半分)であっても、完全な結合部位よりは低い親和性においてであるが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0114】
Fabフラグメントはまた軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’フラグメントは抗体ヒンジ領域由来のシステイン1つ以上を包含する重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数残基の付加によりFabフラグメントとは異なっている。Fab’−SHは定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を担持しているFab’に関する本明細書における表記である。F(ab’)
2抗体フラグメントは当初はそれらの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として作成された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0115】
何れかの脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」はその定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)及びラムダ(λ)と称される2つの明確に異なる型の一方に割りつけられる。
【0116】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割りつけられる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、そしてこれらの幾つかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1及びIgA
2に分割できる。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ及びμと称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元の配置はよく知られている。
【0117】
「抗体フラグメント」は未損傷の抗体の一部分のみを含み、その部分は好ましくは未損傷の抗体中に存在する場合にその部分に通常関わる機能の少なくとも1つ、好ましくは大部分又は全てを保持している。抗体フラグメントの例はFab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント;ダイアボディー;線状抗体;1本鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成した多重特異性抗体を包含する。1つの実施形態において、抗体フラグメントは未損傷の抗体の抗原結合部位を含み、そしてこれにより、抗原に結合する能力を保持している。別の実施形態においては、抗体フラグメント、例えばFc領域を含むものは、未損傷の抗体中に存在する場合にFc領域に通常関わる生物学的機能、例えばFcRn結合、抗体半減期モジュレーション、ADCC機能及び補体結合等の少なくとも1つを保持する。1つの実施形態において、抗体フラグメントは未損傷の抗体と実質的に同様のインビボ半減期を有する1価の抗体である。例えばそのような抗体フラグメントはフラグメントにインビボ安定性を付与することができるFc配列に連結した結合アームを抗原上に含んでよい。
【0118】
「超可変領域」、「HVR」又は「HV」という用語は、本明細書においては、配列内で超可変であり、及び/又は、構造的に定義されたループを形成する抗体可変止めの領域を指す。一般的に、抗体は6超可変領域;3つをVH(H1、H2、H3)内に、そして3つをVL(L1、L2、L3)内に含む。多くの超可変領域の定義が使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は配列の可変性に基づいており、そして、最も一般的に使用されている(Kabat等、Sequences of
Proteins of Imunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institure of Health,Bethesda,MD.(1991))。Chothiaは代わりに構造ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。AbMの超可変領域はKabatのCDRとChothiaの構造ループの間の折衷を示し、そしてOxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウエアにより使用されている。「接触」超可変領域は使用可能な複合体結晶構造の分析に基づいている。これらの超可変領域の各々に由来する残基を以下に示す。
【0119】
【化3】
超可変領域は以下の通り、即ち:VL内の24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97(L3)、及びVH内の26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102又は95−102(H3)の「伸長超可変領域」を含んでよい。可変ドメイン残基はこれらの定義の各々につき上記Kabat等の定義に従ってナンバリングされている。
【0120】
「フレームワーク」又は「FR」残基とは、本明細書において定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0121】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域に由来する残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような非ヒト種(レシピエント抗体)の超可変領域由来の残基により置き換えられているヒト免疫グロブリンである(レシピエント抗体)。一部の例においては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は相当する非ヒト残基により置き換えられている。更に又、ヒト化抗体はレシピエント抗体内にもドナー抗体内にも存在しない残基を含んでよい。このような修飾は抗体の性能を更に精鋭化させるために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのそれに相当し、そしてFRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のそれである少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになる。ヒト化抗体は場合により、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部分を含むことになる。詳細についてはJones等、Nature 321:522−525(1986);Riechmann等、Nature 332:323−329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照できる。更に又以下の文献:Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105−115(1998);IIarris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994)及びそこに引用されている参考文献を参照できる。
【0122】
「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は特定の種から誘導した、又は、特定の抗体のクラスまたはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一又は相同である重鎖及び/又は軽鎖の一部分を有し、鎖の残余は、別の種から誘導した、又は、別の抗体のクラスまたはサブクラスに属する抗体並びにそのような抗体のフラグメントにおける相当する配列と、それらが所望の生物学的活性を示す限り、同一又は相同である(米国特許4,816,567;及びMorrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。本明細書において使用するヒト化抗体はキメラ抗体のサブセットである。
【0123】
「1本鎖Fv」又は「scFv」抗体フラグメントは抗体のVH及びVLドメインを含み、ここでこれらのドメインは単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般的にscFvポリペプチドは更にscFvが抗原結合のための所望の構造を形成することができるようにするVH及びVLドメインの間のポリペプチドリンカーを含む。scFvに関する考察については、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照できる。
【0124】
「抗原」とは抗体が選択的に結合する所定の抗原である。標的抗原はポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン又は他の天然に存在する又は合成の化合物であってよい。好ましくは、標的抗原はポリペプチドである。
【0125】
「ダイアボディー」という用語は2つの抗原結合部位を有する小型抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは同じポリペプチド鎖(VH−VL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2ドメインの間の対形成を可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインはもう一方の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を生じさせる。ダイアボディーは例えばEP404097;WO93/11161;及びHollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)により詳細に説明されている。
【0126】
「ヒト抗体」はヒトにより生産される抗体に相当する、及び/又は、本明細書に開示するヒト抗体を製造するための手法の何れかを用いて作成されたアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は特に非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0127】
「親和性成熟」抗体は、1つ以上の改変をそのCDR1つ以上内に有するものであり、これによりそのような改変を保有しない親抗体と比較して抗原に対する抗体の親和性が向上しているものである。好ましい親和性成熟抗体は標的抗原に対してナノモル、或いは更にピコモルレベルの親和性を有することになる。親和性成熟抗体は当該分野で知られた操作法により製造される。Marjs等、Bio/Technology 10:779−783(1992)はVH及びVLドメインシャフリングによる親和性成熟を記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発はBarbas等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3809−3813(1994);Schier等、Gene 169:147−155(1995);Yelton等、J.Immunol.155:1994−2004(1995)lJackson等、J.Immunol.154(7):3310−9(1995);及びHawkins等、J.Mol.Biol.226:889−896(1992)により記載されている。
【0128】
抗体の「エフェクター機能」とは抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰属する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプにより変動する。抗体エフェクター機能の例はC1q結合および補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション;及びB細胞の活性化を包含する。
【0129】
「抗体依存性細胞媒介細胞毒性」即ち「ADCC」とは、特定の細胞毒性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合している分泌Igにより、これ等の細胞毒性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、そしてその後、細胞毒素により標的細胞を殺傷することができるようになるという細胞毒性の形態を指す。抗体は細胞毒性細胞を「武装」させ、そしてそのような殺傷のために絶対に必要なものである。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現はRavetch and Kinel,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991)の464ページの表3に総括されている。目的の分子のADCC活性を試験するためには、米国特許5,500,362又は5,821,337又は米国特許6,737,056に記載されているようなインビトロのADCC試験を実施してよい。このような試験のための有用なエフェクター細胞は末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を包含する。或いは、又は追加的に、目的の分子のADCC活性は例えばClynes等、PNAS(USA)95:652−656(1998)に開示されているような動物モデルにおいてインビボで試験してよい。
【0130】
「ヒトエフェクター細胞」とは1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を示す白血球である。好ましくは、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、そしてADCC機能を示す。ADCCを媒介するヒト白血球の例は末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞及び好中球を包含し;PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞はネイティブの原料から、例えば血液から単離してよい。
【0131】
「Fc受容体」即ち「FcR」とは、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するものである。好ましいFcRはネイティブ配列のヒトFcRである。更に又、好ましいFcRはIgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIのサブクラスの受容体を包含し、これ等の受容体の対立遺伝子変異体及びオルタナティブスプライス型も包含される。FcγRII受容体はFcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「抑制受容体」)を包含し、これ等はその細胞質ドメインにおいて主に異なっている同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAはその細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。抑制受容体FcγRIIBはその細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系抑制モチーフ(ITIM)を含有している(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)の考察M参照)。FcRはRavetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991);Capel等、Immunomethods 4:25−34(1994);及びde Haas等、J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)において考察されている。将来発見されるものを含む他のFcRは本明細書においては用語「FcR」に包含される。用語は又胎児への母体IgGの移行の原因となり(Guyer等、J.Immunol.117:587(1976)及びKim等、J.Immunol.24:249(1994))、そして免疫グロブリンのホメオスタシスを調節する新生児受容体、FcRnも包含する。WO00/42072(Presta)は向上した、又は低下したFcRへの結合を有する抗体変異体を記載している。その特許公開の内容は参照により本明細書に組み込まれる。更に又、Shields等、J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)も参照できる。
【0132】
FcRnへの結合を計測する方法は知られている(例えばGhetie 1997,Hinton 2004参照)。インビボにおけるヒトFcRnへの結合およびヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清中半減期は例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又はトランスフェクトされたヒト細胞系統において、又はFc変異体ポリペプチドを投与された霊長類において試験できる。
【0133】
「補体依存性細胞毒性」即ち「CDC」は補体の存在下における標的細胞の溶解を指す。古典的な補体経路の活性化はその同属体抗原に結合している(適切なサブクラスの)抗体への補体系の第1成分(C1q)の結合により開始される。補体活性化を試験するためには、例えばGazzano−Santoro等、Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されているもののようなCDC試験を実施してよい。
【0134】
改変されたFc領域アミノ酸配列及び増大又は低減されたC1q結合能力を有するポリペプチド変異体は米国特許6,194,551B1及びWO99/51642に記載されている。これらの特許公開の内容は特に参照により本明細書に組み込まれる。更に又、Idusogie等、J.Immunol.164:4178−4184(2000)も参照できる。
【0135】
「Fc領域包含ポリペプチド」という用語はFc領域を含む抗体又はイムノアドヘシン(後述する定義参照)のようなポリペプチドを指す。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングによれば残基447)は例えばポリペプチドの精製の間、又は、ポリペプチドをコードする核酸を組み換え操作することにより、除去してよい。従って、本発明によるFc領域を有するポリペプチドを含む組成物はK447を有する、全K447が除去されているポリペプチド、又はK447残基を有するポリペプチド及び有さないものの混合物を含むことができる。
【0136】
「ブロッキング」抗体又は「拮抗剤」抗体はそれが結合する抗原の生物学的活性を抑制又は低減するものである。好ましいブロッキング抗体又は拮抗剤抗体は抗原の生物学的活性を実質的又は完全に抑制する。
【0137】
「アゴニスト抗体」とは本明細書においては、目的のポリペプチドの機能的活性の少なくとも1つを模倣する抗体である。
【0138】
「アクセプターヒトフレームワーク」とは、本明細書の目的のためには、ヒト免疫グロブリンフレームワークから、又は、ヒトコンセンサスフレームワークから誘導されたVL又はVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「から誘導された」アクセプターヒトフレームワークはそれと同じアミノ酸配列を含んでよく、又は、既存のアミノ酸配列の変化を含有していてよい。既存のアミノ酸変化が存在する場合は、好ましくは5以下、好ましくは4以下又は3以下の既存のアミノ酸変化が存在する。既存のアミノ酸変化がVHに存在する場合は、好ましくはそのような変化は71H、73Hおよび78H位の僅か3、2又は1つにのみあり;例えば、そのような位置にあるアミノ酸残基は71A、73Tおよび78Aであってよい。1つの実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークは配列においてVLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列に同一である。
【0139】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は一部のヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列において最も一般的に存在するアミノ酸残基を示すフレームワークである。一般的にその一部のヒト免疫グロブリンVL又はVH配列は可変ドメイン配列のサブグループに由来する。一般的に配列のサブグループはKabat等のサブグループである。1つの実施形態において、VLについては、サブグループはKabat等の場合のようにサブグループカッパである。1つの実施形態において、VHについては、サブグループはKabat等の場合のようにサブグループIIIである。
【0140】
「VHサブグループIIIコンセンサスフレームワーク」はKabat等の可変重鎖サブグループIIIのアミノ酸配列から得られたコンセンサス配列を含む。1つの実施形態において、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は以下の配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号42)−H1−WVRQAPGKGLEWV(配列番号43)−H2−RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号44)−H3−WGQGTLVTVSS(配列番号45)の各々の少なくとも一部分又は全てを含む。
【0141】
「VLサブグループIコンセンサスフレームワーク」はKabat等の可変軽鎖カッパサブグループIのアミノ酸配列から得られたコンセンサス配列を含む。1つの実施形態において、VHサブグループIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は以下の配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号46)−L1−WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号47)−L2−GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号48)−L3−FGQGTKVEIK(配列番号49)の各々の少なくとも一部分又は全てを含む。
【0142】
「障害」又は「疾患」とは本発明の物質/分子又は方法による治療から利益を被る何れかの状態である。これには問題となる障害に哺乳類を罹患し易くしている病理学的状態を包含する慢性及び急性の障害又は疾患が包含される。本明細書において治療されるべき障害の非限定的な例は、悪性又は良性の腫瘍;癌腫、芽腫及び肉腫を包含する。
【0143】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語はある程度の異常な細胞増殖を伴う障害を指す。1つの実施形態において、細胞増殖性障害は癌である。
【0144】
「腫瘍」とは、本明細書においては、悪性又は良性に関わらず全ての新生物性の細胞の成育及び全ての前癌性および癌性の細胞及び組織を指す。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」及び「腫瘍」は本明細書において言及する限り相互に排除されない。
【0145】
「癌」及び「癌性」という用語は典型的には調節できない細胞の成育/増殖を特徴とする哺乳類における生理学的状態を指すか描写するものである。癌の例は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫及び白血病を包含する。このような癌のより特定の例は、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫瘍、頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮の癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌腫、胃癌、黒色腫及び種々の型の頭部及び頚部の癌を包含する。脈管形成の脱調節は本発明の組成物及び方法により治療できる多くの障害をもたらす場合がある。これらの障害は非新生物性及び新生物性の状態の両方を包含する。新生物は例えば上記したものを包含する。非新生物性の障害は例えば望ましくない、又は、異常な肥大、関節炎、慢性関節リューマチ(RA)、乾癬、乾癬性プラーク、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化性プラーク、糖尿病性及び他の増殖性の網膜症、例えば未熟児網膜症、水晶体後腺維増殖症、血管新生緑内障、加齢関連黄斑変性、糖尿病性斑状浮腫、角膜血管新生、角膜グラフト血管新生、角膜グラフト拒絶、網膜/脈絡膜血管新生、角の血管新生(皮膚紅潮)、眼の血管新生性疾患、血管再狭窄、動脈静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管腺維腫、甲状腺肥大(グレーブス病を含む)、角膜及び他の組織の移植、慢性炎症、肺炎症、急性肺傷害/ARDS、敗血症、一次肺高血圧症、悪性肺滲出、脳水腫(例えば急性卒中/閉鎖性頭部傷害/外傷に関連)、滑膜炎症、RAにおけるパンヌス形成、骨化性筋炎、肥大性骨形成、骨関節炎(OA)、難治性腹水、多嚢胞性卵巣症、子宮内膜炎、体液サードスペース形成疾患(膵炎、コンパートメント症候群、熱傷、腸疾患)、子宮線維症、早産、慢性炎症、例えばIBD(クローン病及び潰瘍性結腸炎)、腎臓同種移植片拒絶、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群、望ましくない、又は、異常な組織嵩増大(非癌)、血友病性関節、肥大瘢痕、毛髪増殖抑制、オースラー‐ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖、硬皮症、トラコーマ、血管接着、滑膜炎、皮膚炎、子癇前症、腹水、心内膜液浸出(例えば心内膜炎に関連するもの)及び胸水を包含する。
【0146】
本明細書においては、「治療」とは治療すべき個体又は細胞の本来の過程を改変させる試みにおける臨床介入を指し、予防のため、又は臨床病理過程の間の何れかに実施できる。治療の望ましい作用は、疾患の発症又は再発の防止、症状の緩解、何れかの直接又は間接的な疾患帰結の軽減、転移の防止、疾患進行速度の低減、疾患状況の緩和又は沈静化、及び、予後の軽快又は改善を包含する。一部の実施形態においては、本発明の抗体は疾患又は障害の発症を遅延するために使用される。
【0147】
「神経変性疾患」及び「神経変性障害」という用語は、病理学的特徴にニューロンの変性及び/又は機能不全が関与している全ての障害を包含する最も広範な意味において使用され、限定しないが、末梢神経障害;運動ニューロン障害、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリグ病)、ベル麻痺、及び脊髄筋肉の委縮又は麻痺が関与する種々の状態;及び他の人の神経変性障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、癲癇、多発性硬化症、ハンチントン舞踏病、ダウン症候群、感音難聴及びメニエール病が包含される。
【0148】
「末梢神経障害」とは末梢神経に作用する神経変性障害であり、最も頻繁には運動、感覚、感覚運動又は自律神経の機能不全の1つまたは組み合わせとして顕在化する。末梢神経障害は例えば遺伝的に獲得されるか、全身疾患に起因するか、又は毒性物質、例えば神経毒性薬物、例えば抗新生物剤、又は産業上または環境の汚染物質により誘導される場合がある。「末梢感覚神経障害」は末梢感覚ニューロンの変性を特徴とし、これは特発性であるか、例えば糖尿病(糖尿病性神経障害)、癌における細胞増殖抑制剤療法(例えば化学療法剤、例えばビンクリスチン、シスプラチン、メトトレキセート、3’−アジド−3’−デオキシチミジン又はタキサン類、例えばパクリタキセル[TAXOL(登録商標)、Bristol−Meyers Squibb Oncology,Princeton,N.J.]及びドキセタキセル[TAXOTERE(登録商標)、Rhone−Poulene Rorer,Antony,France])、アルコール中毒、後天性免疫不全症候群(AIDS)又は遺伝的素因の結果として生じる場合がある。遺伝的に獲得された末梢神経障害は、例えばレフサム病、クラッベ病、異染性白質萎縮症、ファブリー病、ドゥジュリーヌ−ソッタ病、無β−リポ蛋白血症、シャルコー−マリー−ツース(CMT)病(腓骨筋萎縮症又は遺伝性運動感覚神経障害(HMSN)としても知られている)を包含する。大部分の型の末梢神経障害は数カ月又は数年の過程に渡って緩徐に発症する。臨床慣行においてはそのような神経障害は慢性と称される。場合により末梢神経障害は数日の過程にわたって急速に発症し、急性と称される。末梢神経障害は通常は感覚及び運動神経に共に影響し、これにより、混合感覚運動神経障害を誘発するが、純粋な運動神経障害もまた知られている。
【0149】
「個体」とは脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類は限定しないが、牧場動物(例えばウシ)、競技用動物、愛玩動物(例えばネコ、イヌ及びウマ)、霊長類、マウス及びラットを包含する。
【0150】
「哺乳類」とは、治療目的の為には哺乳類として分類される何れかの動物を指し、ヒト、家畜及び牧場動物、及び、動物園、競技用または愛玩用の動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を包含する。好ましくは哺乳類はヒトである。
【0151】
「有効量」とは所望の治療又は予防上の結果を達成するために、必要な用量及び時間において、有効である量を指す。
【0152】
本発明の物質/分子、アゴニスト又は拮抗剤の「治療有効量」は個体の疾患状況、年齢、性別及び体重、及び、物質/分子、アゴニスト又は拮抗剤が個体において所望の応答を誘発する能力のような要因に従って変動する。治療有効量は又、物質/分子、アゴニスト又は拮抗剤の何れかの毒性又は有害な作用よりも治療上有益な作用が勝っているものである。「予防有効量」は所望の予防結果を達成するために、必要な用量及び時間において、有効である量を指す。必然ではないが典型的には、予防用量は疾患の前又は早期の段階において対象において使用されるため、予防有効量は治療有効量よりも低値となる。
【0153】
「細胞毒性剤」という用語は本明細書においては、細胞の機能を抑制又は防止、及び/又は細胞の破壊を誘発する物質を指す。用語は放射性同位体(例えばAt
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他のインタカレーション剤、酵素及びそのフラグメント、例えば核溶解酵素、抗生物質及び毒素、例えば小分子毒素又は細菌、カビ、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素並びにそのフラグメント及び/又は変異体、及び、以下に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を包含する。他の細胞毒性剤は以下に記載する。殺腫瘍性の薬剤は腫瘍細胞の破壊を誘発する。
【0154】
「化学療法剤」とは癌の治療において有用な化学物質である。化学療法剤の例はアルキル化剤類、例えばチオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;アルキルスルホネート類、例えばブスルファン、イムプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン類、例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ及びウレドパ;エチレンイミン類及びメチラメラミン類、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホアミド、トリエチレンチオホスホアミド及びトリメチロールオメラミン;アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコール;コルヒチン類;ベツリン酸;カンプトテシン(例えば合成類縁体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン及び9−アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(例えばアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類縁体);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テミポシド;クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(例えば合成類縁体、KW−2189及びCB1−TM1);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;窒素マスタード類、例えばクロランブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、塩酸酸化メクロレタミン、メルファラン、ノべンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素類、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムヌスチン;抗生物質、例えばエネジン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマII及びカリケアマイシンオメガII(例えばAgnew,Chem Intl.Ed.Engl.,33:183−186(1994)参照);ジネマイシン、例えばジネマイシンA;クスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連の色素蛋白エネジン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オーソラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(例えばモルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、例えばマイトマイシンC、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類縁体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類縁体、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類縁体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、デキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン;アンドロゲン類、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗アドレナル類、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノェブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルホミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシノイド類、例えばマイタンシン及びアンサミトシン類;マイトグアゾン;マイトキサトロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピアルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2毒素、べラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;マイトブロニトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(Ara−C);チオテパ;タキソイド類、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology,Prinbceton,N.J.)、ABRAXANE
TMCremophor−非含有、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)及びTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類縁体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP−16);イソフォスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノヴァントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロルニチン(DMFO);レチノイド類、例えばレチン酸;カペシタラビン(XELODA(登録商標));上記物質の何れかの製薬上許容しうる塩、酸又は誘導体;並びに上記物質の二者以上の組み合わせ、例えばCHOP、即ちシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニソロンの複合療法の略称、及びFOLFOX、即ち5−FU及びロイコボビンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN
TM)を用いた治療用法の略称等、を包含する。
【0155】
この定義に同様に包含されるものは癌の生育を促進することが可能であるホルモンの作用を調節、低減、ブロック又は抑制する作用を有し、そして、全身投与又は身体全体投与の形態となる場合が多い抗ホルモン剤である。それらはそれら自体がホルモンであってよい。例示されるものは、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えばタモキシフェン(例えばNOLVADEX(登録商標)タモキシフェン)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びFARESTON(登録商標)トレミフェン;抗プロゲステロン類;エストロゲン受容体ダウンレギュレート剤(ERD);卵巣を抑制又はシャットダウンする機能を有する薬剤、例えば黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えばLUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)酢酸ロイプロリド、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン;他の抗アンドロゲン類、例えばフルタミド、ニルタミド及びビカルタミド;及び副腎におけるエストロゲン生産を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)−イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲステロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタニー、ファドゾロール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール及びARIMIDEX(登録商標)アラストロゾールを包含する。更に又、化学療法剤のこのような定義にはビスホスホネート類、例えばクロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチロロネート、NE−58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロネート、SKELID(登録商標)チルドロネート又はACTONEL(登録商標)リセドロネート;並びにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類縁体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えばPKC−アルファ、Raf、H−Ras及び表皮成長因子受容体(EGF−R)のような異常な細胞増殖に関与するとされるシグナリング経路内の遺伝子の発現を抑制するもの;ワクチン類、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子療法ワクチン類、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;LUPTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)mRH;ラパチニブジトシレート(ErbB−2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤、別名GW572016);及び上記物質の何れかの製薬上許容しうる塩、酸又は誘導体も包含される。
【0156】
「生育抑制剤」とは、本明細書において使用する場合は、インビトロ又はインビボの何れかにおいて細胞(例えばEphB4を発現する細胞)の成育を抑制する化合物又は組成物を指す。即ち、生育抑制剤はS期における細胞(例えばEphB4を発現する細胞)のパーセンテージを有意に低減するものであってよい。生育抑制剤の例は細胞周期の進行を(S期以外の位置において)ブロックする薬剤、例えばG1停止及びM期停止を誘導する薬剤を包含する。伝統的なM期ブロッカーはビンカ類(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシンエトポシド及びブレオマイシンを包含する。G1を停止させる薬剤はまたS期停止にまで作用を派生させるものがあり、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル及びara−Cが挙げられる。更に詳細な説明は、Murakami等によるThe Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn and Israel,eds.,Chapter 1の表題「Cell cycle regulation,oncogenes and antineoplastic drug」、Nyrajanu等(WB Saunders:Philadelphia,1995),p.13に記載されている。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は共にイチイの木から誘導される抗癌剤である。ヨーロッパイチイから誘導されたドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer)はパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Meyer Squibb)の半合成類縁体である。パクリタキセル及びドセタキセルはチュブリン2量体からの微小管の組み立てを促進し、そして脱重合を防止することにより微小管を安定化させ、これが細胞における有糸分裂を抑制する。
【0157】
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は(8S−シス)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキサピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオンである。
【0158】
「抗新生物組成物」という用語は活性な治療薬、例えば「抗癌剤」少なくとも1つを含む癌を治療する場合に有用な組成物を指す。治療薬(抗癌剤、本明細書においては「抗新生物剤」とも称する)の例は、限定しないが、例えば化学療法剤、成長抑制剤、細胞毒性剤、放射線療法に使用される薬剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、抗チュブリン剤、毒素及び癌を治療するための他の薬剤、例えば抗VEGF中和抗体、VEGF拮抗剤、抗HER−2、抗CD20、表皮生育因子受容体(EGFR)拮抗剤(例えばチロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR抑制剤、エルロチニブ、COX−2阻害剤(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、EphB2、EphB3、EphB4またはVEGF受容体の1つ以上に結合する拮抗剤(例えば中和抗体)、血小板誘導成長因子(PDGF)及び/又は幹細胞因子(SCF)に関する受容体チロシンキナーゼに対する阻害剤(例えばイマチニブメシレート(Gleevec(登録商標)Novartis))、TRAIL/Apo2及び他の生物活性及び有機化学の薬剤等を包含する。
【0159】
「プロドラッグ」という用語は本明細書においては、親薬剤と比較して腫瘍細胞に対して低細胞毒性であるが酵素的に活性化されるか、又はより活性な親化合物型に変換されることができる薬学的に活性な物質の前駆体又は誘導体の型を指す。例えばWilman,,1986,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”,Biochemical Society Transactions,14,pp.375−386,615th Meeting Belfast;及び、Stella等、1985,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt等、(ed.,),pp.247−267,Humana
Pressを参照できる。本発明のプロドラッグは限定しないが、より活性な細胞毒性の遊離の薬剤に変換されることができるホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、場合により置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は場合により置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン及び他の5−フルオロウリジンプロドラッグを包含する。本発明で使用するためのプロドラッグ型に誘導できる細胞毒性剤の例は限定しないが上記した化学療法剤を包含する。
【0160】
「抗脈管形成剤」または「脈管形成抑制剤」とは、直接又は間接的に、脈管形成、脈管形成又は望ましくない血管の透過性を抑制する、小分子量物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離された蛋白、組み換え蛋白、抗体又はそのコンジュゲート又は融合蛋白を指す。例えば、抗脈管形成剤は上記定義した脈管形成剤に対する抗体又は他の拮抗剤、例えば、VEGFに対する抗体、VEGF受容体に対する抗体、VEGF受容体シグナリングをブロックする小分子(例えばPTK787/ZK2284、SU6668、SUTENT/SU11248(リンゴ酸スニチニブ)、AMG706)である。抗脈管形成剤はまた、ネイティブの脈管形成抑制剤、例えばアンジオスタチン、エンドスタチン等を包含する。例えばKlagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003)(例えば悪性黒色腫における抗脈管形成療法を列挙している表3);Ferrara & Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359−1364(1999);Tonini等、Oncogene,22:6549−6556(2003)(例えば抗脈管形成因子を列挙している表2);及び Sato Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)(例えば臨床治験において使用されている抗脈管形成剤を列挙している表1)を参照できる。
【0161】
本発明の組成物及びその製造方法
本発明は抗EphB4抗体;及び抗EphB4抗体をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む医薬組成物を包含する組成物を包含する。本明細書においては、組成物はEphB4に結合する抗体1つ以上、及び/又は、EphB4に結合する抗体1つ以上をコードする配列を含むポリヌクレオチド1つ以上を含む。これらの組成物は更に、適当な担体、例えば製薬上許容しうる賦形剤、例えば緩衝剤を含んでよく、これらは当該分野で良く知られている。
【0162】
本発明は又単離された抗体及びポリヌクレオチドの実施形態も包含する。本発明はまた実質的に純粋な抗体及びポリヌクレオチドの実施形態も包含する。
【0163】
本発明の抗EphB4抗体は好ましくはモノクローナルである。本発明の範囲に同様に包含されるものは、本明細書において提供される抗EphB4抗体のFab、Fab’、
Fab’−SH、F(ab’)
2フラグメントである。これらの抗体フラグメントは伝統的な集団、例えば酵素消化により作成することができ、又は、組み換え手法により形成してもよい。このような抗体フラグメントはキメラ又はヒト化されていてよい。これらのフラグメントは後述する診断及び治療目的のために有用である。
【0164】
モノクローナル抗体は実質的に均質な抗体の集団から得られ、即ち、集団に属する個々の抗体は僅かの量のみ存在してよい可能な天然に存在する突然変異を除き同一である。即ち、「モノクローナル」という修飾語は個別の抗体の混合物ではないものとして抗体の特徴を示している。
【0165】
本発明の抗EphB4抗体はKohler等、Nature,256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作成することができ、又は組み換えDNA法により作成してよい(米国特許4,816,567)。
【0166】
ハイブリドーマ法においては、マウス又は他の適切な宿主動物、例えばハムスターを、免疫化に使用される蛋白に特異的に結合する抗体を製造するか、製造することができるリンパ球を誘発するように免疫化する。EphB4に対する抗体は一般的にEphB4及びアジュバントの多数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により動物において育成する。EphB4は当該分野で良く知られている方法を用いて製造してよく、その一部は更に本明細書に記載する通りである。例えば、EphB4の組み換え生産を以下に記載する。1つの実施形態において、免疫グロブリン重鎖のFc部分に融合させたEphB4の細胞外ドメイン(ECD)を含有するEphB4の誘導体で動物を免疫化する。好ましい実施形態においては、EphB4−IgG1融合蛋白で動物を免疫化する。動物を通常通り免疫原性コンジュゲート又はEphB4の誘導体に対し、モノホスホリル脂質A(MPL)/トレハロースジクリノミクレート(TDM)(Ribi Immunochem.Research,Inc.,Hamilton,MT)で免疫化し、そして溶液を多数部位において比内注射する。2週間後、動物をブーストする。7〜14日後、動物を出血させ、血清の抗EphB4価を試験する。抗体価が定常状態となるまで動物をブーストする。
【0167】
或いは、リンパ球をインビトロで免疫化してよい。次にリンパ球をポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
【0168】
このようにして製造したハイブリドーマ細胞は、未融合の親骨髄腫細胞の生育又は生存を抑制する物質1つ以上を好ましくは含有する適当な培地中に播種して生育させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマ用の培地は典型的には、HGPRT欠損細胞の生育を抑制する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有することになる(HAT培地)。
【0169】
好ましい骨髄腫細胞は効率的に融合し、選択された抗体生産細胞による抗体の安定した高レベルの生産を支援し、そしてHAT培地のような培地に対して感受性のものである。これらのうち、好ましい骨髄腫細胞系統はマウス骨髄腫系統、例えばSalk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California USAより入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍から誘導されたもの、及び、American Type Culture Collection,Rockville,Maryland USAから入手可能なSP−2又はX63−Ag8−653細胞である。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系統もまた、ヒトモノクローナル抗体の製造のために記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur等、Monoclonal Antibody Production Techniques and
Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0170】
ハイブリドーマ細胞を生育させる培地をEphB4に対して施行されたモノクローナル抗体の生産に関して試験する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により生産されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降により、または、インビトロの結合試験、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着試験(ELISA)により測定する。
【0171】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson等、Anal.Biochem.,107:220(1980)のスカッチャード分析により測定できる。
【0172】
所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を生産するハイブリドーマ細胞が発見された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、そして標準的方法により生育させてよい(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。この目的のための適当な培地は、例えば、D−MEM及びRPMI−1640培地である。更に又、ハイブリドーマ細胞は動物における腹水腫瘍としてインビボで生育させてよい。
【0173】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は従来の免疫グロブリン精製操作法、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティーにティークロマトグラフィーにより培地、復水又は血清から適宜分離する。
【0174】
本発明の抗EphB4抗体は所望の活性を有する合成抗体クローンを得るスクリーニングのためのコンビナトリアルなライブラリを用いることにより作成できる。原則として、合成抗体クローンは、ファージ皮膜蛋白に融合した抗体可変領域(Fv)の種々のフラグメントをディスプレイするファージを含有するファージライブラリをスクリーニングすることにより選択される。そのようなファージライブラリは所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによりパニングされる。所望の抗原に結合することができるFvフラグメントを発現するクローンは抗原に吸着され、これによりライブラリ中の非結合クローンから分離される。次に結合クローンを抗原から溶出させ、そして抗原吸着/溶出の追加的サイクルにより更にリッチ化することができる。本発明の抗EphB4抗体の何れかは目的のファージクローンが選択されるように適当な抗原スクリーニング操作法を設計し、その後、目的のファージクローン由来のFv配列及びKabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD(1991),vols.1−3に記載されている適当な定常領域(Fc)配列を用いながら、完全長の抗EphB4抗体クローンを構築することにより得ることができる。
【0175】
抗体の抗原結合ドメインは両方が3つの超可変ループまたは相補性決定領域(CDR)を呈する軽鎖(VL)及び重鎖(VH)に各々1つが由来する約110アミノ酸の2つの可変(V)領域から形成される。可変ドメインは、Winter等、Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994)に記載される通り、VH及びVLが短いフレキシブルなペプチドを介して共有結合的に連結している1本鎖Fv(scFv)として、又は、各々が定常ドメインに融合して非共有結合的に相互作用するFabフラグメントとして、ファージ上に機能的にディスプレイすることができる。本明細書においては、scFvコードファージクローン及びFabコードファージクローンは総称して「Fvファージクローン」又は「Fvクローン」と称する。
【0176】
VH及びVL遺伝子のレパートリーはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別個にクローニングし、そして、ファージライブラリ内でランダムに組み換えすることができ、これを次にWinter等、Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994)に記載される通り、抗原結合クローンを得るための検索に付すことができる。免疫化された原料に由来するライブラリはハイブリドーマの構築を必要とすることなく免疫原に対して高親和性の抗体を提供する。或いは、Griffiths等、EMBO J,12:725−734(1993)の記載する通り、ナイーブのレパートリーをクローニングすることにより何れの免疫化も行うことなく非自己及び自己抗原の広範な種類に対するヒト抗体の単一の原料を提供することができる。最終的に、ナイーブのレパートリーは、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)に記載の通り、幹細胞由来の未再配置のV遺伝子セグメントをクローニングすること、及び、高度に可変であるCDR3領域をコードするため、及び、インビトロにおける再配置を達成するためにランダムな配列を含有するPCRプライマーを使用することにより合成的に作成することもできる。
【0177】
マイナーコート蛋白pIIIへの融合により抗体フラグメントをディスプレイするためにフィラメントファージを用いる。抗体フラグメントはMarks等、J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載の通りフレキシブルなポリペプチドスペーサーにより同じポリペプチド鎖上でVHとVLが連結されている1本鎖Fvフラグメントとして、又はHoogenboom等、Nucl.Acids Res.,19:4133−4137(1991)に記載の通り一方の鎖がpIIIに融合し、そしてもう一方が野生型のコート蛋白の一部を排除することによりファージ表面上に標示されることになるFabコート蛋白構造のアセンブリである細菌宿主細胞のペリプラズム内に他方が分泌されるFabフラグメントとしてディスプレイすることができる。
【0178】
一般的に抗体遺伝子フラグメントをコードする核酸はヒトまたは動物から採取された免疫細胞から得られる。抗EphB4クローンを優先するように偏ったライブラリが望ましい場合、対象をEphB4で免疫化して抗体応答を発生させ、そして脾細胞及び/又は循環B細胞他の末梢血リンパ球(PBL)をライブラリ構築のために回収する。好ましい実施形態においては、抗EphB4クローンを優先するように偏ったヒト抗体遺伝子フラグメントライブラリは、EphB4免疫化がEphB4に対するヒト抗体を生産するB細胞を生じさせるように機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを担持する(そして機能的内因性抗体生産系を欠いている)トランスジェニックマウスにおいて抗EphB4抗体応答を発生させることにより得られる。ヒト抗体生産トランスジェニックマウスの作成は後に記載する。
【0179】
抗EphB4反応性細胞集団の別のリッチ化は、適当なスクリーニング操作法を用いてEphB4特異的膜結合抗体を発現するB細胞を単離することにより、例えばEphB4アフィニティークロマトグラフィーによる細胞分離、又は蛍光色素標識EphB4への細胞の吸着とその後のフロー活性化細胞ソーティング(FACS)により、得ることができる。
【0180】
或いは、脾細胞及び/又はB細胞または免疫化ドナー由来の他のPBLの使用により、可能な抗体レパートリーのより良好な提示ができ、そして又、EphB4が抗原性ではない何れかの動物(ヒトまたは非ヒト)種を用いた抗体ライブラリの構築が可能となる。インビトロの抗体遺伝子構築を取り込んだライブラリについては、幹細胞を対象から採取して、未再配置の抗体遺伝子セグメントをコードする核酸を提供する。目的の免疫細胞は種々の動物種、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、オオカミ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ及びトリの種等から得ることができる。
【0181】
抗体可変遺伝子セグメント(VH及びVLセグメントを包含する)をコードする核酸を目的の細胞から回収して増幅させる。再配置したVH及びVL遺伝子のライブラリの場合は、所望のDNAは、Orlandi等、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),86:3833−3837(1989)に記載の通り、リンパ球からゲノムDNA又はmRNAを単離し、その後、再配置したVH及びVL遺伝子の5’及び3’末端にマッチするプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことにより得ることができ、これにより、発現のための多様なV遺伝子レパートリーを作成することができる。Orlandi等(1989)及びWard等、Nature,341:544−546(1989)に記載の通り、成熟Vドメインをコードするエクソンの5’末端におけるリバースプライマー及びJセグメント内を基にするフォワードプライマーを用いながら、V遺伝子をcDNA及びゲノムDNAから増幅することができる。しかしながら、cDNAから増幅するためには、リバースプライマーはJones等、Biotechnol.,9:88−89(1991)に記載の通りリーダーエクソンを基にすることもでき、そしてフォワードプライマーはSastry等、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),86:5728−5732(1989)に記載の通り定常領域内を基にすることができる。相補性を最大にするためには、Orlandi等、(1989)or Sastry等、(1989)に記載の通りプライマー中に縮重を取り込むことができる。好ましくは、ライブラリの多様性は例えばMarks等、J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載の通り、又はOrum等、Nucleic Acids Res.,21:4491−4498(1993)に記載の通り、免疫細胞核酸試料中に存在する全ての使用可能なVH及びVLの配置を増幅するために各V遺伝子ファミリーにターゲティングされたPCRプライマーを使用することにより最大とする。発現ベクター内への増幅されたDNAのクローニングの為には、稀少制限部位をOrlandi等、(1989)に記載の通り一端におけるタグとしてPCRプライマー内に導入することができ、又は、Clackson等、Nature,352:624−628(1991)に記載の通りタグ付けされたプライマーを用いた更に別のPCR増幅によることもできる。
【0182】
合成的に再配置されたV遺伝子のレパートリーはV遺伝子セグメントからインビトロで誘導できる。大部分のヒトVH遺伝子セグメントがクローニングされ、そして配列決定され(Tomlinson等、J.Mol.Biol.,227:776−798(1992)において報告)、そしてマッピングされており(Matsuda等、Nature Genet.,3:88−94(1993));これらのクローニングされたセグメント(H1及びH2ループの主要なコンホーメーション全てを含む)はHoogenboom
and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)に記載の通り多様な配列及び長さのH3ループをコードするPCRプライマーを用いて多様なVH遺伝子レパートリーを作成するために使用することができる。VHレパートリーはまたBarbas等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4457−4461(1992)に記載の通り単一の長さの長いH3ループに着目した全ての配列多様性を有するように作成できる。ヒトVκ及びVλセグメントはクローニング及び配列決定されており(Williams and Winter,Eur.J.Immunol.,23:1456−1461(1993)において報告)、そして合成の軽鎖レパートリーを作成するために使用できる。ある範囲のVH及びVLの折り畳み、及びL3及びH3の長さに基づいた合成V遺伝子レパートリーはかなりの構造多様性の抗体をコードすることになる。V遺伝子コードDNAの増幅の後、生殖細胞系統のV遺伝子のセグメントをHoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)の方法に従ってインビトロで再配置させることができる。
【0183】
抗体フラグメントのレパートリーは数種の方法においてVH及びVL遺伝子レパートリーをともに組み合わせることにより構築できる。各レパートリーは異なるベクターないにおいて作成でき、そして、ベクターをHogrefe等、Gene,128:119−126(1993)に記載の通りインビトロで、又はWaterhouse等、Nucl.Acids Res.,21:2265−2266(1993)に記載の通りコンビナトリアルな感染、例えばloxP系によりインビボで、組み換えることができる。インビボ組み換えの方策はE.coli形質転換効率により決定されるライブラリサイズに対する制限を克服するためのFabフラグメントの2本鎖の性質を利用している。ナイーブなVH及びVLレパートリーは、一方はファージミド内に、他方はファージベクター内に別個にクローニングする。次に2つのライブラリを、各々の細胞が異なる組み合わせを含有し、そしてライブラリのサイズが存在する細胞の数のみ(約10
12クローン)により制限されるように、ファージミド含有細菌のファージ感染により組み合わせる。両方のベクターは、VH及びVL遺伝子が単一のレプリコン上に組み換えられ、そしてファージビリオン内に同時パッケージされるように、インビボ組み換えを含有する。これらの巨大なライブラリは良好な親和性(約10
−8MのK
d−1)の多様な抗体を多数提供する。
【0184】
或いはレパートリーはBarbas等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:7978−7982(1991)に記載の通り同じベクター内に逐次的にクローニングするか、又は、Clackson等、Nature,352:624−628(1991)に記載の通りPCRにより共に組立て、そして次にクローニングしてよい。PCR組み立ては又、1本鎖Fv(scFv)レパートリーを形成するためにフレキシブルペプチドスペーサーをコードするDNAにVH及びVLのDNAを連結するために使用できる。さらに別の手法においては、Embleton等、Nucl.Acids Res.,20:3831−3837(1992)に記載の通り「細胞内PCR組み立て」を用いながら、VHとVLの遺伝子をリンパ球内でPCRにより組み合わせ、次に連結した遺伝子のレパートリーをクローニングする。
【0185】
ナイーブのライブラリにより製造された抗体(天然又は合成の何れか)は中程度の親和性のもの(約10
6〜10
7M
−1のK
d−1)のものであることができるが、親和性成熟もまた上出のWinter等(1994)に記載の通り二次ライブラリから構築及び再選択することにより模倣できる。例えば、突然変異は、Hawkins等、J.Mol.Biol.,226:889−896(1992)の方法において、又はGram等、Proc.Natl.Acad.Sci USA,89:3576−3580(1992)の方法において、易錯誤型(error−prone)のポリメラーゼを使用することによりインビトロでランダムに導入できる(Leung等、Technique,1:11−15(1989)において報告)。更に又、親和性成熟は、例えば選択された個々のFvクローンにおいて目的のCDRに渡ってランダム配列を担持するプライマーによるPCRを用いながらCDR1つ以上をランダムに突然変異させること、及び、より高い親和性のクローンを求めてスクリーニングすることにより、実施できる。WO9607754(1996年3月14日公開)は軽鎖遺伝子のライブラリを作成するために免疫グロブリンの軽鎖の相補性決定領域内で突然変異誘発を誘導するための方法を記載している。別の効果的な方策は、Marks等、Biotechnol.,10:779−783(1992)に記載の通り、未免疫化ドナーから得られた天然に存在するVドメイン変異体のレパートリーを有するファージディスプレイにより選択されたVHまたはVLドメインを組み換え、そして、鎖リシャフリングの数ラウンドにおいてより高い親和性を求めてスクリーニングすることである。この手法は10
−9M範囲の親和性を有する抗体及び抗体フラグメントの製造を可能にする。
【0186】
EphB4核酸及びアミノ酸配列は当該分野で知られている。EphB4をコードする核酸配列はEphB4の所望の領域のアミノ酸配列を用いながら設計できる。或いは現バンク水性セッション番号NM_004444又は米国特許5,635,177に開示されているcDNA配列(又はそのフラグメント)を使用できる。EphB4をコードするDNAは当該分野で知られた種々の方法により製造できる。方法は限定しないが、Engels等、Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,28:716−734(1989)に記載されている方法の何れかによる化学合成、例えばトリエステル、ホスファイト、ホスホロアミダイト及びH−ホスホネート法を包含する。1つの実施形態において発現宿主細胞により好まれるコドンをEphB4コードDNAの設計において使用する。或いはEphB4コードDNAはゲノム又はcDNAライブラリから単離できる。
【0187】
EphB4コードDNA分子の構築の後、DNA分子をプラスミドのような発現ベクター中の発現制御配列に作動可能に連結し、この場合制御配列はベクターで形質転換された宿主細胞により認識される。一般的にプラスミドベクターは宿主細胞に適合する種から誘導された複製及び制御の配列を含有する。ベクターは通常は複製部位並びに形質転換された細胞における表現型選択をもたらすことができる蛋白をコードする配列を担持している。原核生物及び真核生物の宿主細胞における発現のための適当なベクターは当該分野で知られており、一部は本明細書において更に説明する。真核生物、例えば酵母又は哺乳類のような多細胞生物から誘導された細胞を使用してよい。
【0188】
場合により、EphB4をコードするDNAは、培地中への宿主細胞による発現産物の分泌をもたらす分泌リーダー配列に作動可能に連結させる。分泌リーダー配列の例はstII、エコチン、lamB、ヘルペス、GD、lpp、アルカリホスファターゼ、インベルターゼ及びアルファ因子を包含する。更に又本発明において使用するのに適するものはプロテインAの36アミノ酸リーダー配列である(Abrahmsen等、EMBOJ.,4:3901(1985))。
【0189】
宿主細胞は本発明の上記発現又はクローニングベクターによりトランスフェクト及び好ましくは形質転換され、そしてプロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜変性された従来の栄養培地中で培養する。
【0190】
トランスフェクションとは何れかのコーディング配列が実際に発現されるか否かに関わらず、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを指す。トランスフェクションの多くの方法は当業者の知る通りであり、例えばCaPO
4沈殿及びエレクトロポレーションを包含する。良好なトランスフェクションはこのベクターの作動を示す何らかのものが宿主細胞内に生じた場合に一般的に認識される。トランスフェクションのための方法は当該分野で良く知られており、一部は本明細書において更に説明する。
【0191】
形質転換とは染色体外エレメントとして、又は染色体組み込み体により、DNAが複製されるように有機体内にDNAを導入することを意味する。使用する宿主細胞に応じて、形質転換はそのような細胞に適切である標準的な手法を用いて行う。形質転換のための方法は当該分野で良く知られており、一部は本明細書において更に説明する。
【0192】
EphB4を製造するために使用される原核生物宿主細胞は上出のSambrook等に一般的に記載されている通り培養できる。
【0193】
EphB4を製造するために使用される哺乳類宿主細胞は種々の培地中で培養でき、それらはは当該分野で良く知られており、一部は本明細書において更に説明する。
【0194】
本開示において言及する宿主細胞はインビトロ培養物中の細胞並びに宿主動物内にある細胞を包含する。
【0195】
EphB4の精製は当該分野で知られた方法により行ってよく、一部は本明細書において更に説明する。
【0196】
精製されたEphB4はファージディスプレイクローンのアフィニティークロマトグラフィー分離において使用するために、適当なマトリックス、例えばアガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、ガラスビーズ、セルロース、種々のアクリル系共重合体、ヒドロキシルメタクリレートゲル、ポリアクリル系及びポリメタクリル系の共重合体、ナイロン、中性及びイオン性の担体などに結合させることができる。EphB4蛋白のマトリックスへの結合はMethods in Enzymology,vol.44(1976)に記載の方法により行うことができる。多糖類マトリックス、例えばアガロース、デキストラン又はセルロースに蛋白リガンドを結合させるために一般的に使用されている手法ハロゲン化シアンによる担体の活性化及びその後のペプチドリガンドの第1脂肪族又は芳香族のアミンの活性化マトリックスへのカップリングを包含する。
【0197】
或いは、EphB4は吸着プレートのウェルをコーティングするために使用され、吸着プレートに固定された宿主細胞上で発現させ、又は、ストレプトアビジンコーティングビーズによるキャプチャーのためにビオチンにコンジュゲートされるか、又は、ファージディスプレイライブラリのパニングのための何れかの他の当該分野で知られた方法において使用することができる。
【0198】
ファージライブラリ試料は吸着材とのファージ粒子の少なくとも一部分の結合のために適する条件下に固定化されたEphB4と接触させる。通常はpH、イオン強度、温度などを包含する条件は生理学的状態を模倣するように選択する。固相に結合したファージは洗浄し、次に例えばBarbas等、Proc.Natl.Acad.Sci USA,88:7978−7982(1991)に記載の通り酸により、又はMarks等、J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載の通りアルカリにより、または例えばClackson等、Nature,352:624−628(1991)の抗原競合法と類似の操作法におけるEphB4抗原競合により、溶離させる。ファージは選択の単一のラウンドにおいて20〜1,000倍リッチ化することができる。更に又、リッチ化されたファージは細菌培養において生育させ、そして更に選択ラウンドに付すことができる。
【0199】
選択の効率は多くの要因、例えば洗浄中の解離の動態、及び、単一のファージ上の多数の抗体フラグメントが同時に抗原と契合するかどうかにより異なる。高速の解離動態(及び弱い結合親和性)を有する抗体は短時間の洗浄、多価のファージディスプレイ及び固相中の抗原の高いコーティング密度を用いることにより保持することができる。高い密度は多価の相互作用を介してファージを安定化させるのみならず、解離したファージの再結合にも好都合となる。緩徐な解離動態(及び良好な結合親和性)を有する抗体の選択は、Bass等、Proteins,8:309−314(1990)及びWO92/09690に記載の通り長時間の洗浄と1価のファージ、及び、Marks等、Biotechnol.,10:779−783(1992)に記載の通り抗原の低コーティング密度を使用することにより増進することファミリーできる。
【0200】
僅かにしか親和性に差がない場合であっても、EphB4を異なる親和性のファージ抗体の間で選択することも可能である。しかしながら、選択された抗体のランダムな突然変異(例えば上記した親和性成熟の手法の一部において実施されるもの)は大部分が抗原に結合する多くの突然変異体を生じさせ、より高い親和性を有するものは僅かとなる可能性がある。EphB4を制限すれば、希少な高親和性のファージは駆逐される可能性がある。高親和性の突然変異体の全てを保持するためには、ファージを過剰のビオチニル化EphB4と共に、ただし、ビオチニル化EphB4はEphB4に対する目標モル親和性定数よりも低モルの濃度としながら、インキュベートすることができる。次に高親和性の結合ファージを、ストレプトアビジンコーティング常磁性体ビーズでキャプチャーすることができる。そのような「平衡キャプチャー」により、低親和性を有するファージの大過剰量から、2倍高値親和性もの低値において突然変異体クローンの単離を可能にする選択性で、結合のそれらの親和性に従って抗体を選択できるようになる。固相に結合しているファージの洗浄において使用する条件もまた、解離の動態に基づいて判別するために操作できる。
【0201】
抗EphB4クローンは活性選択してよい。1つの実施形態において本発明はEphB4リガンド(例えばエフリン−B1、エフリン−B2及び/又はエフリン−B3)とEphB4との間の結合をブロックするが、EphB4リガンドと第2の蛋白(例えばEphB1、EphB3、EphB4、EphB5及び/又はEphB6)との間の結合はブロックしない抗EphB4抗体を提供する。そのような抗EphB4抗体に相当するFvクローンは(1)上記した通りファージライブラリから抗EphB4クローンを単離すること、及び、場合により、適当な宿主中で集団を生育させることによりファージクローンの単離集団を増幅すること;(2)それぞれに対しブロッキング及び非ブロッキング活性が望ましいEphB4及び第2の蛋白を選択すること;(3)EphB4を固定化するために抗EphB4ファージクローンを吸着させること;(4)第2の蛋白の結合決定基と重複するか、それを共有しているEphB4結合決定基を認識する何れかの望ましくないクローンを溶離させるために第2の蛋白の過剰量を使用すること;及び(5)工程(4)の後に吸着されて残存しているクローンを溶離させること、により選択できる。場合により、望ましいブロッキング/非ブロッキング特性を有するクローンは更に、一回以上本明細書に記載する選択操作法を反復することにより、リッチ化することができる。
【0202】
本発明のハイブリドーマ誘導モノクローナル抗体又はファージディスプレイFvクローンをコードするDNAは従来の操作法を用いながら(例えばハイブリドーマ又はファージDNA鋳型から目的の重鎖及び軽鎖コーディング領域を特異的に増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用することにより)容易に単離され、そして配列決定される。単離後、DNAを発現ベクター中に入れ、次にこれを宿主細胞、例えばE.coli、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は別様には免疫グロブリン蛋白を生産しない骨髄腫細胞内にトランスフェクトすることにより、組み換え宿主細胞内で所望のモノクローナル抗体の合成を達成できる。抗体コードDNAの細菌中での組み換え発現に関する考察文献はSkerra等、Curr.Opinion in
Immunol.,5:256(1993)及びPluckthun,Immunol.Revs,130:151(1992)を包含する。
【0203】
本発明のFvクローンをコードするDNAは重鎖及び/又は軽鎖の完全長又は部分をコードするクローンを形成するために重鎖及び/又は軽鎖定常領域をコードする既知のDNA配列(例えば適切なDNA配列は上出のKabat等から得ることができる)と組み合わせることができる。当然ながら、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを包含する何れのアイソタイプの定常領域もこの目的のために使用することができ、そして、そのような定常領域は何れかのヒト又は動物種から得ることができる。ある動物(例えばヒト)の可変ドメインDNAから誘導され、そして次に別の動物種の定常領域DNAに融合させることにより「ハイブリッド」で完全長の重さ及び/又は軽鎖に関するコーディング配列を形成したFvクローンは本明細書においては「キメラ」及び「ハイブリッド」抗体の定義に包含される。好ましい実施形態においては、ヒト可変DNAから誘導されたFvクローンをヒト定常領域DNAに融合させることにより、全ヒトの、完全長又は部分の重鎖及び/又は軽鎖に関するコーディング配列を形成する。
【0204】
本発明のハイブリドーマから誘導した抗EphB4抗体をコードするDNAは又、例えば、ハイブリドーマクローンから誘導された相同マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常領域に関するコーディング配列を置き換えることにより修飾することもできる(例えばMorrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)の方法の場合)。ハイブリドーマ又はFvクローン誘導抗体又はフラグメントをコードするDNAは更に、非免疫グロブリンポリペプチドに関するコーディング配列の全て又は部分を免疫グロブリンコーディング配列に共有結合的に連結することにより更に修飾できる。この態様において、本発明のFvクローン又はハイブリドーマクローン誘導抗体の結合特異性を有する「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体を製造する。
【0205】
抗体フラグメント
本発明は抗体フラグメントを包含する。特定の状況において、完全な抗体よりも抗体フラグメントを使用することが有利となる。より小型のフラグメントは急速なクリアランスを可能にし、固形腫瘍への接触を向上させる場合がある。
【0206】
抗体フラグメントの製造の為には多くの手法が開発されている。伝統的にはこれらのフラグメントは未損傷の抗体の蛋白分解性消化を介して誘導されている(例えばMorimoto等、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992);及びBrennan等、Science,229:81(1985)参照)。しかしながらこれらのフラグメントは現在では組み換え宿主細胞により直接製造できる。Fab、Fv及びScFv抗体フラグメントは全てE.coli内で発現され、それから分泌させることができるため、これらのフラグメントの大量生産が容易となる。抗体フラグメントは上記考察した抗体ファージライブラリから単離できる。或いは、Fab’−SHフラグメントをE.coliから直接回収し、そして化学的にカップリングさせてF(ab’)
2フラグメントを形成することもできる(Carter等、Bio/Technology 10:163−167(1992))。別の方策によれば、F(ab’)
2フラグメントを組み換え宿主細胞培養物から直接単離できる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含むインビボ半減期の増大したFab及びF(ab’)
2フラグメントは米国特許5,869,046に記載されている。抗体フラグメントの製造のための他の手法は当該分野で良く知られている。他の実施形態においては、選択される抗体は1本鎖Fvフラグメント(scFv)である。WO93/16185;米国特許5,571,894;及び5,587,458を参照できる。Fv及びsFvは定常領域を有さない未損傷複合化部位を有する唯一の種であり;従って、それらはインビボの使用中の低減した非特異的結合のために適している。sF融合蛋白はsFvのアミノ又はカルボキシ末端の何れかにおいてエフェクター蛋白の融合をもたらすように構築してよい。上記したBorrebaeck編のAntibody Engineeringを参照できる。抗体フラグメントはまた例えば米国特許5,641,870に記載される通り、「線状抗体」であってもよい。そのような線状抗体フラグメントは単一特異性又は二重特異性であってよい。
【0207】
ヒト化抗体
本発明はヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化するための種々の方法が当該分野で知られている。例えば、ヒト化抗体は非ヒトである原料からそこに導入されたアミノ酸残基1つ以上を有することができる。これらの非ヒトアミノ酸残基は頻繁には「インポート」残基と称され、これは典型的には「インポート」可変ドメインに由来する。ヒト化は本質的にはヒト抗体の相当する配列の超可変領域配列を置換することにより、Winter等の方法に従って実施することができる(Jones等(1986)Nature 321:522−525;Riechmann等(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyen等(1988)Science 239:1534−1536)に従って実施することができる。従ってそのような「ヒト化」抗体は、未損傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が非ヒト種の相当する配列により置換されているキメラ抗体(米国特許4,816,567)である。実際、ヒト化抗体は典型的には、一部の超可変領域残基及びおそらくは一部のFR残基がげっ歯類抗体における類似の部位に由来する残基により置換されているヒト抗体である。
【0208】
ヒト化抗体の作成において使用すべき軽鎖及び重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は抗原性を低減するためには極めて重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従えば、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリに対してスクリーニングする。次にげっ歯類のものに最も近かったヒト配列がヒト化抗体のためのヒトフレームワークとして許容される(Sims等(1993)J.Immunol.151:2296;Chothia等(1987)J.Mol.Biol.196:901)。別の方法は軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列から誘導した特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを数種の異なるヒト化抗体に対して使用してよい(Carter等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;Presta等(1993)J.Imunol.,151:2623)。
【0209】
抗原に対する高い親和性及び他の望ましい生物学的特性を保持しながら抗体をヒト化させることが更に重要である。この目標を達成するためには、1つの方法によれば、親配列及び種々の概念的ヒト化産物の分析の過程により、親及びヒト化配列の三次元モデルを用いながら、ヒト化抗体を製造する。三次元の免疫グロブリンモデルは市販されており、当業者のよく知るものである。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元コンホーメーション構造を説明してディスプレイするコンピュータープログラムが使用できる。これらのディスプレイを精査することにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の推定される役割の分析、即ち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析が可能になる。このようにして、FR残基を選択し、レシピエント及びインポート配列から、標的抗原に対する増大した親和性のような所望の抗体特性が達成されるように組み合わせることができる。一般的に超可変領域残基は、抗原結合への影響においては直接、そして最も大きく関与している。
【0210】
ヒト抗体
本発明のヒト抗EphB4抗体は上記した通り既知のヒト定常ドメイン配列にヒト誘導ファージディスプレイライブラリから選択したFvクローン可変ドメイン配列を組み合わせることにより構築できる。或いは本発明のヒトモノクローナル抗EphB4抗体はハイブリドーマ法により作成できる。ヒトモノクローナル抗体の製造のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系統は例えばKozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur等、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner等、J.Immunol.,147:86(1991)に記載されている。
【0211】
現在では、免疫化により、内因性免疫グロブリン生産の非存在下においてヒト抗体の完全なレパートリーを製造することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)を製造できる。例えばキメラ及び生殖細胞系統突然変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)のホモ接合欠失が内因性抗体生産の完全な抑制をもたらすことがわかっている。そのような生殖細胞系統突然変異体マウスにおけるヒト生殖細胞系統免疫グロブリン遺伝子アレイの転移は抗原攻撃によりヒト抗体の生産をもたらすことになる。例えばJakobovits等、Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:2551(1993);Jakobovits等、Nature,362:255(1993);Bruggermann等、Year in Immunol.,7:33(1993)を参照できる。
【0212】
遺伝子シャフリングもまた、非ヒト、例えばげっ歯類の抗体からヒト抗体を誘導するために使用することができ、その場合、ヒト抗体は原料の非ヒト抗体と同様の親和性及び特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも称されるこの方法によれば、上記したファージディスプレイ手法により得られる非ヒト抗体フラグメントの重鎖又は軽鎖可変領域の何れかをヒトVドメイン遺伝子のレパートリーと置き換えることにより、非ヒト鎖/ヒト鎖scFV又はFabキメラの集団を作成できる。抗原を用いた選択により、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFV又はFabの単離がもたらされ、その場合、ヒト鎖は一次ファージディスプレイクローン内の相当する非ヒト鎖の除去により破壊された抗原結合部位を回復し、即ち、エピトープがヒト鎖パートナーの選択を支配(インプリント)する。プロセスを反復することにより残存する非ヒト鎖を置き換える場合、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT WO93/06213 参照)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この手法は非ヒト起源のFR及びCDRを有さない完全にヒト型の抗体を提供する。
【0213】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有するモノクローナル、好ましくはヒト型又はヒト化された、抗体である。この例においては、結合特異性の1つはEphB4に対するものであり、そしてもう1つは何れかの他の抗原に対するものである。例示される二重特異性抗体はEphB4蛋白の2つの異なるエピトープに結合してよい。二重特異性抗体はまたEphB4を発現する細胞に細胞毒性剤を局在化させるために使用してよい。これらの抗体はEphB4結合アーム及び細胞毒性剤(例えばサポリン、抗インターフェロン−α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン))に結合するアームを保有している。二重特異性抗体は完全長抗体又は抗体フラグメント(例えばF(ab’)
2二重特異性抗体)として製造できる。
【0214】
二重特異性抗体を作製するための方法は当該分野で知られている。伝統的には、二重特異性抗体の組み換え製造は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいており、その場合、2つの重鎖は異なる特異性を有する(MillsteinおよびCuello、Nature 305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな取合せのため、これ等のハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、そのうち僅か1種のみが正しい二重特異性構造を有する。通常はアフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は面倒であり、そして生成物収率は低値である。同様の操作法がWO93/08829及びTraunecker等、EMBO.J,10:3655(1991)に開示されている。
【0215】
異なる、そしてより好ましい方策によれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原複合化部位)を免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合させる。好ましくは、融合は少なくとも一部のヒンジ、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと行う。融合の少なくとも1つにおいて存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合物及び所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別個の発現ベクターに挿入し安定な宿主有機体に同時トランスフェクトする。これにより、構築において使用した3種のポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたら場合の実施形態において、3種のポリペプチドフラグメントの相互の割合を調節する場合に大きな柔軟性がもたらされる。しかしながら、等しい比率における少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらす場合、又は、比率が特に意味を有さない場合は、1つの発現ベクター内に2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖に関するコーディング配列を挿入することが可能である。
【0216】
この方法の好ましい実施形態において、二重特異性抗体は一方のアームに第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖及び他方のアームにハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)を有する。この非対称の構造は、二重特異性分子の半片方にのみ免疫グロブリン軽鎖が存在することは分離の効率的方法となるため、望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることがわかっている。この方法はWO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の形成の更に詳細な説明は例えばSuresh等、Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照できる。
【0217】
別の方法によれば、抗体分子対の間の界面を操作することにより組み換え細胞培養から回収されるヘテロ2量体の割合を最大限にすることができる。好ましい界面は抗体定常ドメインのC
H3ドメインの少なくとも部分を含む。この方法においては、第1の抗体分子の界面に由来する小型アミノ酸側鎖1つ以上をより大きい鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換える。大型のアミノ酸側鎖をより小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面上には大型の側鎖と同一又は同様のサイズの補償「空洞」が形成される。これはホモ2量体のような他の望ましくない最終生成物を超えてヘテロ2量体の収率を増大させるための機序を与える。
【0218】
二重特異性抗体は交差結合又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を包含する。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方をアビジンに、そして他方をビオチンにカップリングすることができる。このような抗体は例えば望ましくない細胞に免疫系細部をターゲティングすること(米国特許4,676,980)及びHIV感染の治療のため(WO91/00360、WO92/200373及びEP03089)に提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は何れかの好都合な交差結合法を用いて作成してよい。適当な交差結合剤は当該分野で良く知られており、そして多くの交差結合の手法と共に米国特許4,676,980に開示されている。
【0219】
抗体フラグメントから二重特異性抗体を形成するための手法もまた文献に記載されている。例えば二重特異性抗体はキメラ連結を用いて製造できる。Brennan等、Science,299:81(1985)はF(ab’)
2フラグメントを形成するために未損傷の抗体を蛋白分解的に切断する操作法を記載している。これ等のフラグメントをジチオール複合体形成剤、亜ヒ酸ナトリウムの存在下に還元することにより、隣接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィドの形成を防止する。次に形成されたFab’フラグメントをチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。Fab’−TNB誘導体の1つは次にメルカプトエチルアミンで還元することによりFab’−チオールに再変換し、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合することにより二重特異性抗体を形成する。生成した二重特異性抗体は酵素の選択的固定化のための試薬として使用できる。
【0220】
最近の進歩により、化学的にカップリングすることにより二重特異性抗体を形成できるE.coliからのFab’−SHフラグメントの直接の回収が容易になった。Shalaby等、J.Exp.Med.,175:217−225(1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)
2分子の製造を記載している。各Fab’フラグメントを別個にE.coliから分泌させ、インビトロの指向性化学カップリングに付すことにより、二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体はHER2受容体を過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合することができ、同時にヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞毒性リンパ球の溶解活性をトリガーすることができる。
【0221】
組み換え細胞培養物より直接二重特異性抗体フラグメントを作成して単離する種々の手法も報告されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを用いて製造されている。Kostelny等、J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJun蛋白由来のロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により2種の異なる抗体のFab’部分に連結している。抗体のホモ2量体をヒンジ領域で還元することによりモノマーを形成し、次に、再酸化して抗体ヘテロ2量体を形成している。この方法は又抗体ホモ2量体の製造の為にも利用できる。Hollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)に記載の「ダイアボディー」手法は二重特異性抗体フラグメントを作成するための代替機序を与えている。フラグメントは同じ鎖の2ドメイン間の対形成を可能とするには短すぎるリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つのフラグメントのVH及びVLドメインが別のフラグメントの相補VL及びVHドメインに強制的に対形成させられ、これにより2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)2量体の使用により二重特異性抗体フラグメントを作成するための別の方策も報告されている。Gruber等、J.Immunol.,152:5368(1994)を参照できる。
【0222】
2価より多価の抗体も意図される。例えば3重特異性抗体を作製できる。Tutt等、J.Immunol.147:60(1991)。
【0223】
多価抗体
多価抗体は抗体が結合する相手の抗原を発現する細胞により、2価抗体よりも急速に内在化(及び/又は異化)される場合がある。本発明の抗体は3つ以上の抗原結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外である)(例えば4価抗体)であることができ、これは抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組み換え発現により容易に製造できる。多価抗体は2量化ドメイン及び3つ以上の抗原結合部位を含むことができる。好ましい2量化ドメインはFc領域又はヒンジ領域を含む(又はそれよりなる)。この設定においては、抗体はFc領域及びFc領域に対してアミノ末端側に3つ以上の抗原結合部位を含むことになる。好ましい多価抗体は本発明においては、3〜約8個、好ましくは4個の抗原結合部位を含む(又はそれよりなる)。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖(及び好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、ここでポリペプチド鎖は2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖はVD1−(X1)n−VD2−(X2)
n−Fcを含んでよく、式中VD1は第1の可変ドメイン、VD2は第2の可変ドメイン、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1およびX2はアミノ酸又はポリペプチドを示し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖はVH−CH1−フレキシブルリンカー−VH−CH1−Fc領域鎖;又はVH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含んでよい。本発明の多価抗体は好ましくは更に少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドを含む。本発明の多価抗体は例えば約2〜約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含んでよい。本明細書において意図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを含み、そして場合により更にCLドメインを含む。
【0224】
抗体変異体
一部の実施形態においては、本明細書に記載した抗体のアミノ酸配列の修飾が意図される。例えば抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を向上させることが望まれる場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は抗体核酸に適切なヌクレオチドの変化を導入することによるか、又は、ペプチド合成により製造される。このような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換を包含する。欠失、挿入及び置換の何れかの組み合わせが最終コンストラクトに到達するまで行ってよいが、ただし最終コンストラクトは所望の特性を保有しなければならない。アミノ酸の改変は配列が作成される時点で対象となる抗体のアミノ酸配列に導入してよい。
【0225】
突然変異誘発のために好ましい位置である抗体の特定の残基又は領域の発見のための有用な方法はCunningham and Wells(1989)Science,244:1081−1085により記載される通り「アラニンスキャニング突然変異誘発」と称される。ここでは、残基又は標的残基の群を発見(例えばarg、asp、his、lys及びglnのような荷電残基)し、そして中性又は逆に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)で置き換えることにより抗原とのアミノ酸の相互作用に影響を与える。次に置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置を、置換の位置において、又はそのための、追加的又は別の変異体を導入することにより精査する。即ち、アミノ酸配列変異を導入するための部位が予め決定されるが、突然変異そのものの性質は予め決定されなくてよい。例えば、所定の部位における突然変異の性能を分析するためには、alaスキャニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域において実施し、そして発現された免疫グロブリンで所望の活性を有するものをスクリーニングする。
【0226】
アミノ酸配列の挿入は、1残基〜100以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲のアミノ及び/又はカルボキシ末端の融合、並びに、単一又は複数のアミノ酸残基の配列内の挿入を包含する。末端挿入の例はN末端メチオニル残基を有する抗体又は細胞毒性ポリペプチドに融合した抗体を包含する。抗体分子の他の挿入による変異体は、血清中の抗体の半減期を増大させる酵素(例えばADEPT)又はポリペプチドに対する抗体のN又はC末端への融合を包含する。
【0227】
ポリペプチドのグリコシル化は典型的にはN連結又はO連結となる。N連結とはアスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン、ここでXはプロリン以外の何れかのアミノ酸であるものは、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合に関する認識配列である。即ちこれらのトリペプチド配列の何れかのポリペプチド中の存在が潜在的グリコシル化部位を生じさせる。O連結グリコシル化はヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの糖類N−アセチルグルコサミン、ガラクトース又はキシロースの1つの結合を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンも使用してよい。
【0228】
グリコシル化部位の抗体への付加は、好都合には、アミノ酸配列を、それが上記したトリペプチド配列の1つ以上を含有するように改変することにより達成される(N連結グリコシル化部位の場合)。改変は又、元の抗体の配列に対する、セリン又はスレオニン残基の1つ以上の付加または置換により行ってよい(O連結リコシル化部位の場合)。
【0229】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合している炭水化物は改変してよい。例えば抗体のFc領域に結合したフコースを欠いている成熟炭水化物構造を有する抗体は米国特許出願2003/0157108(Presta,L.)に記載されている。また、米国特許出願2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)も参照できる。抗体のFc領域に結合した炭水化物中に二分割N−アセチルグルコサミン(GlcNac)を有する抗体は、WO2003/011878,Jean−Mairet等及び米国特許6,602,684,Umana等において参照されている。抗体のFc領域に結合したオリゴ糖内にガラクトース少なくとも1つを有する抗体はWO1997/30087,Patel等に記載されている。更に又自身のFc領域に連結した改変された炭水化物を有する抗体に関するWO1998/58964(Raju,S.)及びWO1999/22764(Raju,S.)も参照できる。また修飾されたグリコシル化による抗原結合分子に関するWO2005/0123546(Umana等)も参照できる。
【0230】
好ましいグリコシル化変異体は本明細書においては、Fc領域に結合した炭水化物構造がフコースを欠いているFc領域を含む。そのような変異体は向上したADCC機能を有する。場合により、Fc領域は更にそこにADCCをさらに向上させるアミノ酸置換1つ以上、例えばFc領域の298、333及び/又は334位の置換を含む(Euの残基ナンバリング)。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体に関する公開物の例は、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;Okazaki等、J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004);Yamane−Ohnuki等、Biotech.Bioeng.87:614(2004)を包含する。脱フコシル化抗体を生産する細胞系統の例は蛋白フコシル化を欠損しているLeo13 CHO細胞(Ripka等、Arch.Biochem.Biophys.249:533−545(1986);米国特許出願2003/0157108 A1,Presta,L;及びWO2004/056312
A1,Adams等、特に実施例11)、及びノックアウト細胞系統、例えばアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8ノックアウトCHO細胞((Yamane−Ohnuki等、Biotech.Bioeng.87:614(2004))を包含する。
【0231】
変異体の別の型はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は異なる残基で置き換えられた抗体分子内のアミノ酸残基少なくとも1つを有する。置換突然変異誘発の最大の関心部位は超可変領域を包含するが、FR改変もまた意図される。保存的な置換は「好ましい置換」と題して表1に示すものである。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合は、表1において「例示される置換」と命名されたもの、又はアミノ酸のクラスに関して後述するような、より実質的な変化を導入して産物をスクリーニングしてよい。
【0232】
表1
【0233】
【化4】
抗体の生物学的特性における実質的な修飾は(a)例えばシート又はらせん状のコンホーメーションとしての、置換の領域におけるポリペプチドの骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性、又は、(c)側鎖の嵩、を維持することに対するその作用において有意に異なる置換を選択することにより達成される。天然に存在する残基を共通側鎖の特性に基づいて、下記の通りグループ分けしてよい。
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:his、lys、arg;
(5)鎖の方向に影響する残基:gly、pro;
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0234】
非保存的置換はこれらのクラスの一方のメンバーを別のクラスと交換することを包含する。
【0235】
置換変異体の1つの型では、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の超可変領域残基の1つ以上が置換される。一般的に、得られた変異体でその後の開発のために選択されるものはそれらが形成される元となった親抗体と相対比較して向上した生物学的特性を有することになる。そのような置換変異体を形成するための好都合な方法では、ファージディスプレイを用いたアフィニティー成熟化を行う。慨すれば、幾つかの超可変領域部位(例えば6〜7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を形成する。このようにして形成された抗体を、フィラメントファージ粒子から、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイする。ファージディスプレイされた変異体を次に、本明細書に開示したその生物学的活性(例えば結合親和性)に関してスクリーニングする。修飾に関する候補超可変領域部位を発見するためには、アラニンスキャニング突然変異誘発を実施することにより抗原結合に大きく寄与している超可変領域残基を発見することができる。或いは、又は追加的に、抗体と抗原の間の接触店を発見するために抗原−抗体複合体の結晶構造を分析することが有益である場合がある。このような接触残基及び近隣の残基は本発明において考案した手法により置換のための候補である。このような変異体を形成した後、変異体のパネルを本明細書に記載する通りスクリーニングに付し、そして該当する試験1つ以上において優れた特性を有していた抗体を選択してその後の開発に付す。
【0236】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は当該分野で知られた種々の方法により製造される。これらの方法は、例えば天然原料(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)からの単離、又は、オリゴヌクレオチド媒介(又は部位指向性)突然変異誘発、PCR突然変異誘発及び以前に作成された抗体変異体又は非変異体型のカセット突然変異誘発による作成を包含する。
【0237】
本発明の免疫グロブリンポリペプチドのFc領域内にアミノ酸修飾1つ以上を導入することにより、Fc領域変異体を形成することが望ましい場合がある。Fc領域変異体はヒンジシステインを包含するアミノ酸位置1つ以上においてアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4Fc領域)を含んでよい。本明細書の記載及び当該分野の教示に従って、一部の実施形態においては、本発明の方法で使用する抗体は例えばFc領域において野生型の対応する抗体と比較して改変1つ以上を含んでよいことを意図している。これらの抗体はしかしなお、その対応野生型と比較して治療利用性のために必要な実質的に同じ特性を保持している。例えば改変された(即ち向上した、又は低減した)Clq結合及び/又は補体依存細胞毒性)(CDC)をもたらすように、例えばWO99/51642に記載する通り、特定の改変をFc領域において行うことができる。同様にFc領域変異体の別の例に関わるDuncan & Winter Nature 322:738−40(1988);米国特許5,648,260;米国特許5,624,821;及びWO94/29351も参照できる。WO00/42072(Presta)及びWO2004/056312(Lowman)はFcRへの向上した、又は減衰した結合を有する抗体変異体を記載している。これらの特許公開の内容は特に参照により本明細書に組み込まれる。更に又、Shields等、J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)も参照できる。増加した半減期及び胎児への母性IgGの転移を担っている(Guyer等、J.Immunol.117:587(1976)及びKim等、J.Immunol.24:249(1994))新生児Fc受容体への向上した結合を有する抗体は米国特許出願2005/0014934A1(Hinton等)に記載されている。これらの抗体はFcRnへのFc領域の結合を向上させる置換1つ以上を自身内に有するFc領域を含む。改変されたFcアミノ酸配列及び増加又は低下したC1結合能力を有するポリペプチド変異体は米国特許6,194,551B1,WO99/51642に記載されている。これらの特許公開の内容は特に参照により本明細書に組み込まれる。更に又Idusogie等、J.Immunol.164:4178−4184(2000)も参照できる。
【0238】
抗体誘導体
本発明の抗体誘導体は、当該分野で知られ容易に入手できる別の非蛋白性部分を含有するように更に修飾することができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適する部分は水溶性重合体である。水溶性重合体の非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキソラン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(単独重合体又はランダム共重合体の何れか)及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコール単独重合体、プロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール及びこれらの混合物を包含する。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドはその水中での安定性のために製造において好都合である。重合体は何れかの分子量のものであってよく、そして分枝鎖又は未分枝鎖であってよい。抗体に結合する重合体の数は変動してよく、そして、1つより多い重合体が結合する場合は、それらは同じか又は異なる分子であることができる。一般的に、誘導体化に使用する重合体の数及び/又は種類は、例えば向上させるべき抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体を特定の条件下の治療に使用するのか等を考慮しながら決定することができる。
【0239】
所望の特性を有する抗体を得るためのスクリーニング
本発明の抗体は当該分野で知られた種々の試験によりその物理的/化学的及び生物学的な機能に関して特性化することができる。一部の実施形態においては、抗体はEphB4活性の低減又はブロッキング、EphB4下流分子シグナリングの低減又はブロッキング、EphB4リガンド活性化の低減又はブロッキング、EphB4リガンド下流分子シグナリングの低減又はブロッキング、EphB4に結合するリガンド(例えばエフリン−B1、エフリン−B2及び/又はエフリン−B3)の途絶またはブロッキング、EphB4ホスホリル化及び/又はEphB4多量体化、及び/又はEphB4リガンドホスホリル化、及び/又は腫瘍、細胞増殖性障害又は癌の治療及び/又は防止;及び/又はEphB4発現及び/又は活性(例えば増大したEphB4発現及び/又は活性)に関連する障害の治療又は防止の何れか1つ以上について特性化できる。
【0240】
精製された抗体は更に、一連の試験、例えば限定しないが、N末端配列決定、アミノ酸分析、非変性サイズエクスクルージョン高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量スペクトル、イオン交換クロマトグラフィー及びパパイン消化により特性化することができる。
【0241】
本発明の特定の実施形態においては、本明細書において製造される抗体をその生物活性に関して分析する。一部の実施形態においては、本発明の抗体はその抗原結合活性に関して試験する。当該分野で知られ、そして本発明において使用できる抗原結合試験は例えば限定しないが、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着試験)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降試験、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイの手法を用いた何れかの直接又は競合的結合試験を包含する。代表的な抗原結合試験を実施例のセクションにおいて後に説明する。
【0242】
更に別の実施形態において本発明はEphB4への結合に関して30.35、30.35.1D2及び/又は30.352D8抗体と競合する抗EphB4モノクローナル抗体を提供する。このような競合抗体は抗体30.35、30.35.1D2及び/又は30.352D8により認識されるEphB4エピトープと同じか重複するEphB4エピトープを認識する抗体を包含する。そのような競合抗体は標識された30.35、30.35.1D2及び/又は30.352D8抗体との競合において固定化されたEphB4への結合に関して抗EphB4ハイブリドーマ上澄みをスクリーニングすることにより得られる。競合抗体を含有するハイブリドーマ上澄みは非関連(または無)抗体を含有する対照結合混合物において検出される結合標識抗体の量と比較して、対象となる競合結合混合物において検出される結合標識抗体の量を低減することになる。本明細書に記載した競合結合試験の何れかが上記した操作法における使用に適している。
【0243】
別の特徴において、本発明は30.35、30.35.1D2及び/又は30.352D8抗体のHVR1つ以上(例えば2、3、4、5及び/又は6つ)を含む抗EphB4モノクローナル抗体を提供する。30.35、30.35.1D2及び/又は30.352D8のHVR1つ以上を含む抗EphB4モノクローナル抗体は、30.35、30.35.1D2及び/又は30.352D8のHVR1つ以上を鋳型抗体配列上、例えば親抗体の相当するマウス配列に最も近似しているヒト抗体配列上、又は、親抗体の軽鎖又は重さの特定のサブグループ中の全ヒト抗体のコンセンサス配列上にグラフトし、そして、得られたキメラ軽鎖及び/又は重さの可変領域配列を、付随する定常領域配列の存在かまたは非存在下に、本明細書に記載した組み換え宿主細胞内で発現させることにより構築できる。
【0244】
本明細書に記載したユニークな特性を保有する本発明の抗EphB4抗体は何れかの好都合な方法により所望の特性に関して抗EphB4ハイブリドーマクローンをスクリーニングすることにより得ることができる。例えばEphB4へのEphB4リガンドの結合をブロックする、又はブロックしない抗EphB4モノクローナル抗体が望まれる場合、候補抗体を結合競合試験、例えば競合的ELISAにおいて試験することができ、その場合、プレートウェルをEphB4でコーティングし、そして目的のEphリガンドの過剰量の抗体の溶液をコーティングプレート上に積層し、そして結合抗体を酵素的に、例えば結合抗体をHRPコンジュゲート抗Ig抗体又はビオチニル化抗Ig抗体と接触させること、そして、HRP発色反応を、例えばプレートをストレプトアビジン−HPR及び/又は過酸化水素で発色させることにより生じさせること、及び、HRP発色反応をELISAプレートリーダーを用いて490nmにおいてスペクトル分析により検出することにより検出する。
【0245】
EphB4活性化を抑制又は活性化する抗EphB4抗体が望まれる場合、候補抗体はEphB4ホスホリル化試験において試験できる。そのような試験は当該分野で知られており、そのような試験の一つを本明細書において更に説明する。
【0246】
細胞の生育を抑制する抗EphB4抗体が望まれる場合、候補抗体は細胞生育の抑制を計測するインビトロ及び/又はインビボの試験において試験できる。そのような試験は当該分野で知られており、本明細書において更に説明し、例示する。
【0247】
1つの実施形態において、本発明は、インビボの抗体の半減期は重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば補体及びADCC)は不必要又は有害である多くの用途に対して、自身を望ましい候補とする、一部であるが全てではないエフェクター機能を保有する改変された抗体を意図する。特定の実施形態においては、生成した免疫グロブリンのFc活性を計測することにより、所望の特性のみが維持されていることを確実なものとする。インビボ及び/又はインビトロの細胞毒性試験を実施することによりCDC及び/又はADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合試験を実施することにより抗体がFcγR結合を欠いている(従ってADCC活性を欠いている可能性がある)が、FcRn結合能力は保持していることを確実なものとすることができる。ADCC媒介のための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の464ページの表3に集約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロ試験の例は、米国特許5,500,362又は5,821,337に記載されている。このような試験のための有用なエフェクター細胞は末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を包含する。或いは、又は追加的に、目的の分子のADCC活性はインビボで、例えばClynes等、PNAS(USA)95:652−656(1998)に開示されているもののような動物モデルにおいて試験してよい。C1q結合試験は又抗体がC1qに結合不能であり、それ故にCDC活性を欠いていることを確認するために実施してよい。補体活性化を試験するためには、例えばGazzano−Santoro等、J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載のCDC試験を実施してよい。FcRn結合及びインビボのクリアランス/半減期の測定もまた、当該分野で知られた方法、例えば実施例のセクションに記載するものを用いて実施できる。
【0248】
ベクター、宿主細胞及び組み換え方法
本発明の抗体の組み換え製造のためには、それをコードする核酸を単離し、そして複製可能なベクターに挿入してその後のクローニング(DNAの増幅)に付すか、又は、発現に付す。抗体をコードするDNAは従来の操作法(例えば抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる等)を用いながら容易に単離して配列決定される。多くのベクターが使用可能である。ベクターの選択は部分的には使用する宿主細胞による。一般的に、好ましい宿主細胞は原核生物又は真核生物(一般的に哺乳類)起源の何れかのものである。当然ながら、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを包含する如何なるアイソタイプの定常領域も、この目的のために使用することができ、そしてそのような定常領域は何れかのヒト又は動物の種から得ることができる。
【0249】
a.原核生物の宿主細胞を用いた抗体の作成
i.ベクターの構築
本発明の抗体のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は標準的な組み換え手法を用いて得ることができる。ハイブリドーマ細胞のような抗体生産細胞から所望のポリヌクレオチド配列を単離して配列決定する。或いは、ポリヌクレオチドはヌクレオチド合成装置又はPCR手法を用いて合成することができる。得られた後、ポリペプチドをコードする配列を原核生物宿主内で複製し、非相同ポリヌクレオチドを発現することができる組み換えベクター内に挿入する。当該分野で入手可能であり知られている多くのベクターを本発明の目的のために使用できる。適切なベクターの選択はベクターに挿入すべき核酸の大きさ、及び、ベクターで形質転換すべき特定の宿主細胞により主に決定されることになる。各ベクターは、その機能(非相同ポリヌクレオチドの増幅又は発現又は両方)及びそれが入る特定の宿主細胞とのその適合性に応じて、種々の成分を含有する。ベクター成分は一般的に、例えば複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、非相同核酸インサート及び転写終止配列を包含する。
【0250】
一般的にレプリコン及び宿主細胞と適合する種から誘導される制御配列を含有するベクターをその宿主と組み合わせて使用する。ベクターは通常は複製部位、並びに、形質転換された細胞における表現型選択をもたらすことができるマーキング配列を担持している。例えばE.coliは典型的にはE.coli種から誘導されるプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される。pBR322はアンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有しており、従って、形質転換された細胞を発見するための簡便な手段を提供する。pBR322、その誘導体又は他の微生物プラスミド又はバクテリオファージはまた、内因性蛋白の発現のために微生物により使用されることができるプロモーターを含有するか、含有するように修飾されていてよい。特定の抗体の発現のために使用されるpBR322誘導体の例はCarter等の米国特許5,648,237に詳細に記載されている。
【0251】
更に又、レプリコン及び宿主微生物と適合する制御配列を含有するファージベクターをそれらの宿主と組み合わせて形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.−11のようなバクテリオファージは、E.coliLE392のような感受性宿主細胞を形質転換するために使用できる組み換えベクターを作成するときに利用してよい。
【0252】
本発明の発現ベクターはポリペプチド成分の各々をコードする2つ以上のプロモーター−シストロン対を含んでよい。プロモーターはその発現をモジュレートするシストロンの上流(5’)に位置する未翻訳調節配列である。原核生物のプロモーターは典型的には2つのクラス、即ち誘導及び構成プロモーターに属する。誘導プロモーターは例えば栄養の有無又は温度変化のような培養条件の変化に応答してその制御下にシストロンの転写の増大した水準を開始するプロモーターである。
【0253】
種々の潜在的な宿主細胞により認識される多数のプロモーターがよく知られている。選択されたプロモーターは、制限酵素消化を介して原料DNAからプロモーターを取り出すこと、及び、本発明のベクター内への単離されたプロモーター配列を挿入することにより、軽鎖又は重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に連結することができる。ネイティブのプロモーター配列及び多くの非相同のプロモーターの両方が標的遺伝子の直接の増幅及び/又は発現を指向するために使用してよい。一部の実施形態においては、非相同のプロモーターは、ネイティブ標的ポリペプチドプロモーターと比較して、一般的により高値の転写および発現された標的遺伝子のより高値の収率を可能にすることから、これらが利用されている。
【0254】
原核生物を用いる場合の使用に適するプロモーターはPhoAプロモーター、β−ガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系及びハイブリッドプロモーター、例えばtac又はtrcプロモーターを包含する。しかしながら、細菌内で機能する他のプロモーター(例えば他の既知の細菌又はファージのプロモーター)が同様に適している。そのヌクレオチド配列は公開されており、これにより当業者であればそれらを、何れかの必要な制限部位を供給するためにリンカー又はアダプターを用いながら標的の軽鎖及び重鎖をコードするシストロンに作動可能にライゲーションすることが可能である(Siebenlist等、(1980)Cell 20:269)。
【0255】
本発明の1つの特徴において、組み換えベクター内の各シストロンは膜を通過する発現されたポリペプチドの転座を指向する分泌シグナル配列成分を含む。一般的にシグナル配列はベクターの成分であってよく、又は、ベクター内に挿入される標的ポリペプチドDNAの部分であってよい。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は宿主細胞により認識されプロセシングされる(即ちシグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。非相同ポリペプチドに対してネイティブであるシグナルペプチドを認識又はプロセシングしない原核生物宿主細胞の場合は、シグナル配列は例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp又は熱安定性エンテロロキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群より選択される原核生物シグナル配列により置換される。本発明の1つの実施形態において、発現系の両シストロンにおいて使用されるシグナル配列はSTIIシグナル配列又はその変異体である。
【0256】
別の特徴においては、本発明の免疫グロブリンの製造は宿主細胞の原形質内において起こることができ、従って各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。その点に監視、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は原形質内において発現され、折り畳まれ、そして組み立てられて機能的免疫グロブリンを形成する。特定の宿主細胞(例えばE.coli trxB系統)はジスルフィド結合の形成に好都合な原形質条件を提供し、これにより、発現された蛋白サブユニットの適切な折り畳み及び組み立てを可能にする。Proba and Pluckthun Gene,159:203(1995)。
【0257】
本発明の抗体を発現するために適する原核生物宿主細胞は例えばグラム陰性又はグラム陽性の生物のような原始細菌及び真正細菌を包含する。有用な細菌の例はエシェリシア(例えばE.coli)、バチルス(例えばB・サブチルス)、腸内細菌、シュードモナス種(例えばP.アエルギノーサ)、サルモネラ・チフィムリウム、セラチア・マルクレブシエラ、プロテウス、シゲラ、リゾビア、ビトレオシラ又はパラコッカスを包含する。1つの実施形態において、グラム陰性菌体を使用する。1つの実施形態において、E.coli菌体を本発明の宿主として使用する。E.coli菌株の例は、菌株W3110(Bachmann,Cellular and Molecular Biology,vol.2(Washington,D.C.:American Society for Microbiology,1987),pp.1190−1219;ATCC寄託番号27,325)及びその誘導体、例えば遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE)degP41kanRを有する菌株33D3を包含する(米国特許5,639,635)。他の菌株及びその誘導体、例えばE.coli 294(ATCC31,446)、E.coli B、E.coliλ1776(ATCC31,537)及びE.coli RV308(ATCC31,608)もまた適している。これらの例は例示的なものであり、限定するものではない。所定の遺伝子型を有する上記した細菌の何れかの誘導体を構築するための方法は当該分野で知られており、そして例えばBass等、Proteins,8:309−314(1990)に記載されている。細菌の菌体内のレプリコンの複製能力を考慮しながら適切な細菌を選択することが一般的に必要である。例えば、E.coli、セラチア又はサルモネラ種はpBR322、pBR325、pACYC177又はpKN410のようなよく知られたプラスミドを用いてレプリコンを供給する場合には、宿主として使用するのに適している。典型的には、宿主細胞は最小量の蛋白分解酵素を分泌しなければならず、そして細胞培養物には追加的なプロテアーゼ阻害剤を配合することが望ましい。
【0258】
ii.抗体の製造
宿主細胞は上記した発現ベクターで形質転換し、そしてプロモーターの誘導、形質転換体の選択又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜調整された従来の栄養培地中で培養する。
【0259】
形質転換とは、DNAが染色体外エレメントとして、又は染色体組込物により複製可能であるように厳格細胞の宿主内にDNAを導入することを意味する。使用する宿主細胞に応じて、形質転換はそのような細胞に適する標準的な手法を用いて行う。塩化カルシウムを使用するカルシウム処理は一般的にはかなりの細胞壁バリアを含有する細菌細胞に対して使用されている。形質転換の別の方法はポリエチレングリコール/DMSOを使用する。更に別の手法はエレクトロポレーションである。
【0260】
本発明のポリペプチドを製造するために使用する原核生物の細胞は当該分野で知られ、そして選択された宿主細胞の培養に適する培地中で成育させる。適当な培地の例はルリア培地(LB)+必要な栄養補給物である。一部の実施形態においては、培地は又発現ベクターを含有する原核生物の細胞の成育を選択的に可能にするために、発現ベクターの構築に基づいて選ばれた選択物質を含有してよい。例えば、アンピシリンをアンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の成育のための培地に添加してよい。
【0261】
炭素、窒素及び無機物リン酸塩の補給源に加えて何れかの必要な補給物も単独で導入するか、又は他の補給物又は培地との混合物として、例えば複合窒素源として、適切な濃度において含んでよい。場合により、培地はグルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリスリトール及びジチオスレイトールからなる群より選択される1つ以上の還元剤を含有してよい。
【0262】
原核生物宿主細胞は適当な温度で培養する。E.coliの生育のためには、例えば好ましい温度は約20℃〜約39℃の範囲、より好ましくは約25℃〜約37℃、更に好ましくは約30℃である。培地のpHは主に宿主生物に応じて約5〜約9の範囲である。E.coliの場合、pHは好ましくは約6.8〜約7.4、更に好ましくは約7.0である。
【0263】
誘導プロモーターを本発明の発現ベクター中において使用する場合、蛋白の発現はプロモーターの活性化に適する条件下に誘導する。本発明の1つの特徴において、PhoAプロモーターをポリペプチドの転写を制御するために使用する。従って、形質転換された宿主細胞は導入のためのホスフェート制限培地中で培養する。好ましくは、ホスフェート制限培地はC.R.A.P培地である(例えばSimmons等、J.Immunol.Methods(2002),263:133−147参照)。種々の他のインデューサーも当該分野で知られる通り、使用されるベクターコンストラクトに応じて使用してよい。
【0264】
1つの実施形態において、本発明の発現されたポリペプチドは宿主細胞のペリプラズム内に分泌させ、それより回収する。蛋白の回収では、典型的には細胞の破壊を、一般的には浸透圧ショック、超音波又は細部溶解のような手段により行う。細胞が破壊された後に細胞の破砕物又は全細胞を遠心分離又は濾過により分離してよい。蛋白は例えばアフィニティー樹脂クロマトグラフィーにより更に精製してよい。或いは、蛋白を培地中に移しそこで単離することもできる。生成した蛋白を更に精製するために、細胞を培地から除去し、培養上澄みを濾過し、濃縮してよい。発現されたポリペプチドは更に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウエスタンブロットのような一般的に知られた方法を用いて単離及び同定することができる。
【0265】
本発明の1つの特徴において、抗体の製造は醗酵法により大量に実施される。種々の大規模供給バッチ醗酵賞作法が組み換え蛋白の製造のために使用できる。大規模醗酵は少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1,000〜100,000リットルの容量を有する。これらの醗酵器は酸素と栄養物、特にグルコース(好ましい炭素原子/エネルギー源)を分散させるために攪拌羽根車を使用する。小規模醗酵とは一般的に約100リットル以下の容量であり、約1リットル〜約100リットルの範囲であることができる醗酵器内の醗酵を指す。
【0266】
醗酵過程においては、蛋白発現の誘導は典型的には細胞が所望の密度、例えば細胞が早期定常期である約180〜220のOD550となるまで適当な条件下に生育させた後に開始する。当該分野で知られる通り、そして、上記した通り、使用されるベクターコンストラクトに応じて種々のインデューサーを使用してよい。細胞は誘導の前に短時間生育させてよい。細胞は通常は約12〜50時間誘導するが、より長時間又は短時間も使用してよい。
【0267】
本発明のポリペプチドの製造収率及び品質を向上させるためには、種々の醗酵条件を変更できる。例えば、分泌された抗体ポリペプチドの適切な組み立て及び折り畳みを向上させるためには、追加的なベクター過剰発現シャペロン蛋白、例えばDsb蛋白(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD及び/又はDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を有するペピチジルプロピルシストランス−イソメラーゼ)を使用して宿主原核生物細胞を同時形質転換することができる。シャペロン蛋白は宿主細胞内で生産された非相同蛋白の適切な折り畳み及び溶解性を促進することがわかっている。Chen等.(1999)J
Bio Chem 274:19601−19605;Georgiou等の米国特許6,083,715;Georgiou等の米国特許6,027,888;Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100−17105;Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106−17113;Arie等.(2001)Mol.Microbiol.39:199−210。
【0268】
発現された非相同蛋白(特に蛋白分解的に感受性であるもの)の蛋白分解を最小限にするためには、蛋白分解酵素に関して欠損である特定の宿主系統を本発明のために使用できる。例えば、宿主細胞系統はプロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI及びその組み合わせのような知られた細菌性プロテアーゼをコードする遺伝子内で遺伝子突然変異が起こるように修飾してよい。一部のE.coliプロテアーゼ欠損の系統が使用可能であり、例えばJoly等.(1998)、上出;Georgiou等の米国特許5,264,365;Georgiou等の米国特許5,508,192;Hara等、Microbial Drug Resistance,2:63−72(1996)に記載されている。
【0269】
1つの実施形態において、蛋白分解酵素について欠損であり、そしてシャペロン蛋白1つ以上を過剰発現するプラスミドで形質転換されているE.coli菌株が本発明の発現系における宿主細胞として使用される。
【0270】
iii.抗体の精製
当該分野で知られた標準的な蛋白精製方法を使用することができる。以下の操作法、即ち、免疫アフィニティー又はイオン交換カラム上の分画、エタノール沈降法、逆相HPCL、シリカゲル上又はカチオン交換樹脂、例えばDEAE上のクロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈降法及び例えばセファデックスG−75を用いたゲル濾過等が適当な精製操作法の例である。
【0271】
1つの特徴において、固相上に固定化されたプロテインAを本発明の完全長抗体産物の免疫アフィニティー精製のために使用する。プロテインAは抗体のFc領域に高親和性で結合するスタフィロコッカス・アウレウス由来の41kDの細胞壁蛋白である。Lindmark等.(1983)J.Immunol.Meth.62:1−13。プロテインAを固定化する固相は好ましくはガラス又はシリカの表面を含むカラム、より好ましくは制御された細孔を有するガラスカラム又はケイ酸カラムである。一部の適用例においては、カラムは、夾雑物の非特異的結合を防止するために、試薬、例えばグリセロールでコーティングされている。
【0272】
精製の第1工程として、上記した細胞培養物から誘導された調製物をプロテインA固定化固相上に適用し、プロテインAへの目的の抗体の特異的結合を行う。次に固相を洗浄して固相に非特異的に結合した夾雑物を除去する。最後に溶出により固相から目的の抗体を回収する。
【0273】
b.真核生物宿主細胞を用いた抗体の作成
ベクター成分は限定的ではないが一般的にはシグナル配列、複製起点、マーカー遺伝子1つ以上、エンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終止配列の1つ以上を含む。
【0274】
(i)シグナル配列成分
真核細胞宿主細胞において使用するためのベクターもまた目的の成熟蛋白又はポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列又は他のポリペプチドを含有してよい。好ましく選択される非相同のシグナル配列は宿主細胞により認識されプロセシングされる(即ちシグナルペプチダーゼにより切断される)ものである。哺乳類細胞発現においては、哺乳類シグナル配列、並びに、ウィルス分泌リーダー、例えば単純疱疹gDシグナルが使用できる。
【0275】
このような前駆体領域のDNAは、抗体をコードするNDAに読み枠内でライゲーションされる。
【0276】
(ii)複製起点
一般的に複製起点成分は哺乳類発現ベクターには必要ではない。例えばSV40起点は典型的には、それが早期プロモーターを含有しているためにのみ使用してよい。
【0277】
(iii)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは選択遺伝子、即ち選択可能なマーカーとも称されるものを含有してよい。典型的な選択遺伝子は(a)抗生物質又は他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート又はテトラサイクリンに対する耐性を付与するか(b)該当する場合は栄養要求性欠損を補充するか、又は(c)複合培地からは得られない重要な栄養を補給する蛋白をコードする。
【0278】
選択スキームの他の例は宿主細胞の生育を停止させる薬剤を利用する。非相同遺伝子で良好に形質転換された細胞は薬剤耐性を付与する蛋白を生産し、そしてこのため、選択環境において生存することができる。このような優性選択の例は薬剤ネオマイシン、マイコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0279】
哺乳類細胞に対する適当な選択可能なマーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−I及び−II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンカルボキシラーゼ等のような、抗体核酸を取り込む能力を有する細胞の発見を可能にするものである。
【0280】
例えばDHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、DHFRの競合的拮抗剤であるメトトレキセート(Mtx)を含有する培地中で全形質転換体を培養することによりまず発見される。野生型DHFRを使用する場合の適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系統である(例えばATCC CRL−9096)。
【0281】
或いは、抗体、野生型DHFR蛋白及び他の選択可能なマーカー、例えばアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列で形質転換又は同時形質転換された宿主細胞(特に内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシン又はG418のような選択可能なマーカーに関する選択剤を含有する培地中における細胞生育により選択できる。米国特許4,965,199を参照。
【0282】
(iv)プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物により認識されるプロモーターを含有しそして抗体ポリペプチド核酸に作動可能に連結している。プロモーター配列は真核生物について知られている。実質的に全ての真核生物遺伝子が転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に存在する別の配列はCNCAAT領域であり、ここでNは何れかのヌクレオチドである。大部分の真核生物遺伝子の3’末端は、コーディング配列の3’末端へのポリAテールの付加のためのシグナルであるAATAAA配列である。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに挿入するのに適する。
【0283】
哺乳類宿主細胞内のベクターからの抗体ポリペプチド転写は、例えば、ポリオーマウィルス、鶏痘ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシパピローマウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びシミアンウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから、非相同哺乳類プロモーター、例えばアクチンプロモーター、又は免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られたプロモーターにより、これらのプロモーターが宿主細胞系と適合する限りにおいて、制御される。
【0284】
SV40ウィルスの早期及び後期プロモーターは、好都合には複製のSV40ウィルス起点を同様に含有するSV40制限フラグメントとして得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは好都合にはHindIIIE制限フラグメントとして得られる。ベクターとしてウシパピローマウィルスを使用する哺乳類宿主内でDNAを発現するための系は米国特許4,419,446に開示されている。この系の修飾は米国特許4,601,978に記載されている。或いは、ラウス肉腫ウィルス長末端リピートをプロモーターとして使用できる。
【0285】
(v)エンハンサーエレメント成分
高等真核生物による本発明の抗体ポリペプチドをコードするDNAの転写はベクター内にエンハンサー配列を挿入することにより増大する場合が多い。哺乳類遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら典型的には真核細胞ウィルス由来のエンハンサーを使用することにある。例示されるものは複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイトメガロウィルス早期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及び、アデノウィルスエンハンサーを包含する。真核生物プロモーターの活性化のための増強エレメントに関してはYaniv,Nature 297:17−18(1982)も参照できる。エンハンサーは抗体−ポリペプチドをコードする配列に対して5’又は3’側の位置においてベクター内にスプライシングしてよいが、好ましくはプロモーターから5’側の部位に位置する。
【0286】
(vi)転写終止成分
真核生物宿主細胞内で使用される発現ベクターは典型的には転写の終止のため、及び、mRNAの安定化のために必要な配列も含有する。このような配列は真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの一般的には5’側、そして場合により3’側の未翻訳領域が得られる。これらの領域は抗体をコードするmRNAの未翻訳部分におけるポリアデニル化フラグメントとして転写されたヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終止成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026及びそこに開示されている発現ベクターを参照できる。
【0287】
(vii)宿主細胞の選択及び形質転換
ベクター内でDNAをクローニング又は発現するための適当な宿主細胞はここでは本明細書に記載した高等真核生物の細胞、例えば脊椎動物の宿主細胞を包含する。培養物(組織培養)中の脊椎動物の細胞の増殖は類型的な操作法になっている。有用な哺乳類宿主細胞系統の例はSV40で形質転換されたサル腎臓CV1系統(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓系統(293又は懸濁培養物中での生育のためにサブクローニングされた293細胞、Graham等、J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlanb等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980));マウスセルトーリ細胞(TM4,Mather, Biol.Reprod.23:243−251(1980)、サル腎臓細胞(CV1ATCC CCL 70);アフリカグリーンモンキー腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト頸癌細胞(HELA,ATCC CCL 2);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(HepG2、HB 8065);マウス乳癌(MMT060562、ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather等、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞癌系統(HepG2)である。
【0288】
宿主細胞は抗体製造のための上記した発現又はクローニングベクターで形質転換し、そしてプロモーターの誘導、形質転換体の選択又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に修飾された従来の栄養培地中で培養する。
【0289】
(viii)宿主細胞の培養
本発明の抗体を製造するために使用する宿主細胞は種々の培地中で培養してよい。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及びダルベッコ変性イーグル培地((DMEM),Sigma)のような市販の培地が宿主細胞を培養するために適している。更に又Ham等、Meth.Enz.58:44(1979),Barnes等、Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許4,767,704;4,657,866;4,927,762;4,560,655;又は5,122,469;WO90/03430;WO87/00195;又は米国特許Re.30,985に記載の培地の何れも宿主細胞のための培地として使用してよい。これらの培地の何れも必要に応じてホルモン類及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン又は表皮成長因子)、塩類(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、干渉物質(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗体(例えばGENTAMYCIN
TM剤)、微量元素(マイクロモル範囲の終濃度で通常存在する無機の化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を補給してよい。何れかの他の必要な補給物もまた当業者の知るとおり適切な濃度で含有させてよい。培養条件、例えば温度、pH等は発現のために選択された宿主細胞とともに以前に使用したものであり、そして当業者には容易に想到されるものである。
【0290】
(ix)抗体の精製
組み換え手法を用いる場合、抗体は細胞内に生産させるか、又は、培地に直接分泌させることができる。抗体が細胞内に生産される場合は、第1工程年、宿主細胞又は溶菌破断物である粒状の破砕物を例えば遠心分離又は限外濾過により除去する。抗体を培地に分泌させる場合は、そのような発現系の上澄みを一般的にはまず市販の蛋白濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて濃縮する。プロテアーゼ阻害剤、例えばPMSFを上記工程の何れかにおいて使用することにより蛋白分解を抑制してよく、そして、抗生物質を添加して偶発的な夾雑菌の生育を防止してよい。
【0291】
細胞から調製された抗体組成物は例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、ここではアフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製手法である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの妥当性は抗体内に存在する何れかの免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプによるものである。プロテインAはヒトγ1、γ2又はγ4の重鎖に基づく抗体を精製するために使用できる(Lindmark等、J.Immunol.Meth.62:1−13(1983))。プロテインGは全てのマウスのアイソタイプ及びヒトγ3に対して推奨される(Guss等、EMBO J.5:15671575(1986))。アフィニティーリガンドを結合させるマトリックスは最も頻繁にはアガロースであるが、他のマトリックスも使用できる。機械的に安定なマトリックス、例えば制御された細孔を有するガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンはアガロースで達成できるものよりも早い流量及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合は、Bakerbond ABX
TM樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)が精製のために適している。蛋白精製のための他の手法、例えばイオン交換カラム上の分画、エタノール沈降法、逆相HPCL、シリカゲル上のクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE
TM上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)上のクロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、SDS−PAGE及び硫酸アンモニウム沈降法もまた回収すべき抗体に応じて使用される。
【0292】
何れかの予備的精製工程の後、目的の抗体及び夾雑物を含む混合物を、好ましくは低塩濃度(例えば約0〜0.25Mの塩)において実施される約2.5〜4.5のpHの溶出を用いた低pHの疎水性相互作用クロマトグラフィーに付す。
【0293】
イムノコンジュゲート(immunoconjugate)
本発明はまた細胞毒性剤、例えば化学療法剤、薬剤、成長抑制剤、毒素(例えば細菌、カビ、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素又はそのフラグメント)又は放射性同位体(例えば放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした本明細書に記載したんちOX40L抗体を含むイムノコンジュゲート(互換的に「抗体薬剤コンジュゲート」即ち「ADC」と称する)を提供する。
【0294】
細胞毒性又は細胞生育抑制性の薬剤、即ち癌治療において腫瘍細胞を殺傷する薬剤(Syrigos and Epenetos(1999)Anticancer Research 19:605−614;Niculescu−Duvaz and Springer(1997)Adv.Drg Del.Rev.26:151−172;米国特許4,975,278)の局所送達のための抗体−薬剤コンジュゲートの使用は、理論的には、腫瘍への薬剤部分のターゲティングされた送達及びそこにおける細胞内蓄積を可能にし、その場合、これらのコンジュゲート薬剤の全身投与は正常細胞並びに排除しようとする腫瘍細胞に許容できない水準の毒性をもたらす可能性がある(Baldwin等、(1986)Lancet pp.(Mar.15,1986):603−05;Thorpe,(1985)“Antibody Carries Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review,”Monoclonak Antibodies ’84:Biological And Clinical Appliations,A.Pinchera等.(ed.s),pp.475−506)。このため最小限の毒性で最大の薬効とすることが求められている。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体はともにこれらの方策において有用であることが報告されている(Rowland等、(1986)Cancer Immunol.Immunother.,21:183−87)。これらの方法において使用されている薬剤はダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキセート及びビンデシンである(Rowland等、(1986)上出)。抗体−毒素コンジュゲートにおいて使用される毒素は細菌性毒素、例えばジフテリア毒素、植物性毒素、例えばリシン、小分子毒素、例えばゲルダナマイシン(Mandler等(2000)Jour.of the Nat.Cancer Inst.92(19):1573−1581;Mandler等(2000)Bioorganic & Med.Chem.Letters 10:1025−1028;Mandler等(2002)Bioconjugate Chem.13:786−791)、マイタンシノイド(EP1391213;Liu等、(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623)及びカリケアマイシン(Lode等(1998)Cancer Res.58:2928;Hinman等(1993)Cancer Res.53:3336−3342)を包含する。毒素は、チュブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を包含する機序によりその細胞毒性及び細胞増殖抑制作用を示す。一部の細胞毒性剤は大型の抗体又は蛋白の受容体リガンドにコンジュゲートされると不活性化されるか、活性が低下する傾向を示す。
【0295】
ZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン、Biogen/Idec)はチオ尿素リンカーキレーターにより結合された正常及び悪性のBリンパ球の表面上に存在するCD20抗原に対して指向されたマウスIgG1カッパモノクローナル抗体と
111In又は
90Y放射性同位体よりなる抗体−放射性同位体コンジュゲートである(Wiseman等(2000)Eur.Jour.Nucl.Med.27(7):766−77;Wiseman等(2002)Blood 99(12):4336−42;Witzig等(2002)J.Clin.Oncol.20(10):2453−63;Witzig等(2002)J.Clin.Oncol.20(15):3262−69)。ZEVARINはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)に対して活性を有するが、投与により重度及び長期間の血球減少症が大部分の患者において起こる。カリケアマイシンに連結されたhuCD33抗体よりなる抗体薬剤コンジュゲートであるMYLOTARG
TM(ゲムツズマブオゾガマイシン、Wyeth Parmaceuticals)は注射による急性骨髄性白血病の治療のために2000年に認可されている(Drugs of the Future(2000)25(7):686;米国特許4970198;5079233;5585089;5606040;5693762;5739116;5767285;5773001)。マイタンシノイド薬剤部分DM1にジスルフィドリンカーSPPを介して連結されたhuC242抗体よりなる抗体薬剤コンジュゲートであるカンツズマブメトラシン(Imunogen,Inc.)は結腸癌、膵臓癌、胃癌及びその他のようなCanAgを発現する癌の治療のための第II相治験段階に入っている。マイタンシノイド薬剤部分DM1に連結された抗前立腺特異性膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体よりなる抗体薬剤コンジュゲートであるMLN−2704(Millennium Pharm,BZL Biologics,Immunogen Inc.)は前立腺癌の潜在的治療のために開発中である。オーリスタチンペプチド、オーリスタチンE(AE)、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)及びドラスタチンの合成類縁体はキメラモノクローナル抗体cBR96(癌腫上のLewis Yに特異的)及びcAC10(血液悪性疾患上のCD30に特異的)(Doronina等.(2003)Nature Biotechnology 21(7):778−784)にコンジュゲートされており、そして治療薬開発中である。
【0296】
イムノコンジュゲートの形成に有用な化学療法剤は本明細書に記載する通りである(例えば上記)。使用できる酵素的に活性な毒素及びそのフラグメントはジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エキソトキシンA鎖(シュードモナス・アエルギノーサ由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites Fordii蛋白、ジアンシン蛋白、Phytolaca americana蛋白(PAPI、PAPII及びPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンを包含する。例えば1993年10月28日公開のWO93/21232を参照できる。種々の放射性核種が放射性コンジュゲート抗体の製造のために使用できる。例は
212Bi、
131I、
131In、
90Y及び
186Reを包含する。抗体及び細胞毒性剤のコンジュゲートは種々の2官能性蛋白カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの2官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルズベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えばビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6−ジイソシアネート)及びビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作成される。例えば、リシン免疫毒はVitetta等、Science,238:1098(1987)に記載の通り製造できる。炭素−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミノペンタ酢酸(MX−DTPA)は抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示されるキレート剤である。WO94/11026を参照できる。
【0297】
抗体及び1つ以上の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、マイタンシノイド、ドラスタチン、オーロスタチン、トリコテセン及びCC1065及び毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体のコンジュゲートもまた本発明において意図している。
【0298】
i.マイタンシン及びマイタンシノイド
1つの実施形態において、イムノコンジュゲートはマイタンシノイド分子1つ以上にコンジュゲートされた本発明の抗体(完全長又はフラグメント)を含む。
【0299】
マイタンシノイドはチュブリン重合を抑制することにより機能する有糸分裂抑制剤である。マイタンシンは東アフリカの潅木であるMaytenus serrataから最初に単離された(米国特許3,896,111)。その後、特定の微生物もまたマイタンシノイド、例えばマイタンシノール及びC−3マイタンシノールエステルを生産することが発見された(米国特許4,151,042)。合成のマイタンシノール及びその誘導体及び類縁体は例えば米国特許4,137,230;4,248,870;4,256,746;4,260,608;4,265,814;4,294,757;4,307,016;4,308,268;4,308,269;4,309,428;4,313,946;4,315,929;4,317,821;4,322,348;4,331,598;4,361,650;4,364,866;4,424,219;4,450,254;4,362,663;および4,371,533に開示されている。
【0300】
マイタンシノイド薬剤部分は、それらが(i)発酵又は化学修飾、発酵生成物の誘導体化により比較的製造しやすく、(ii)抗体への非ジスルフィドリンカーを介したコンジュゲーションに適する官能基を用いた誘導体化に適しており、(iii)血漿中で安定であり、そして(iv)種々の腫瘍細胞系統に対して有効であることから、抗体薬剤コンジュゲートにおける着目すべき薬剤部分である。
【0301】
マイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲート、その製造方法及びその治療用途は例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許5,208,020、5,416,064及び欧州特許EP0425235B1に開示されている。Liu等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623(1996)はヒト結腸直腸癌に対して指向されたモノクローナル抗体C242に連結したDM1と指名されたマイタンシノイドを含むイムノコンジュゲートを記載している。コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対しては高度に細胞毒性であることがわかり、そしてインビボの腫瘍生育試験において抗腫瘍活性を示している。Chari等、Cancer Research 52:127−131(1992)はヒト結腸癌細胞系統上の抗原に結合するマウス抗体A7に、又は、HER−2/neu癌遺伝子に結合する別のマウスモノクローナル抗体TA.1にジスルフィドリンカーを介してマイタンシノイドをコンジュゲートしているイムノコンジュゲートを記載している。TA.1−マイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性は細胞当たり3x10
5HER−2表面抗原を発現するヒト乳癌細胞系統SK−BR−3に対してインビトロで試験されている。薬剤コンジュゲートは有利のマイタンシノイド薬剤と同様の細胞毒性の程度を達成しており、これは抗体分子当たりのマイタンシノイド分子の数を増大させることにより増大させることができた。A7−マイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいて低い全身細胞毒性を示した
抗体−マイタンシノイドコンジュゲートは抗体又はマイタンシノイド分子の何れかの生物学的活性を有意に低下させること無くマイタンシノイド分子に抗体を化学的に連結することにより製造する。米国特許5,208,020を参照できる(その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)。抗体分子当たり平均3〜4個のマイタンシノイド分子をコンジュゲートすると抗体の機能又は溶解性に悪影響を及ぼすことなく標的細胞の細胞毒性を増強する場合に有効であることがわかっているが、1分子毒素/抗体であっても抗体単独の使用よりも細胞毒性を増強できることが期待される。マイタンシノイドは当該分野でよく知られており、そして知られた手法により合成するか、又は、天然原料から単離することができる。適当なマイタンシノイドは例えば米国特許5,208,020に、そして、上記した他の特許又は非特許の公開物に開示されている。好ましいマイタンシノイドはマイタンシノール及び芳香環において、又は、マインタンシノール分子の他の位置において修飾されているマインタンシノール類縁体、例えば種々のマインタンシノールエステルである。
【0302】
抗体−マイタンシノイドコンジュゲートを作成するための当該分野で知られた連結基は多数存在し、例えば米国特許5,208,020又は欧州特許EP0425235B1及びChari等、Cancer Research 52:127−131(1992)及び開示内容が参照により全体が本明細書に組み込まれる2004年10月8日出願の米国特許出願10/960,602に開示されているもの等が挙げられる。リンカー成分SMCCを含む抗体−マイタンシノイドコンジュゲートは2004年10月8日出願の米国特許出願10/960,602に開示されている通り製造してよい。連結基は上記特許に開示されている通りジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチダーゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基を包含するが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。別の連結器は本明細書に記載及び例示する通りである。
【0303】
抗体とマイタンシノイドのコンジュゲートは種々の2官能性蛋白カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの2官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルズベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えばビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6−ジイソシアネート)及びビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作成してよい。特に好ましいカップリング剤は、ジスルフィド結合を与えるためのN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)(Carlsson等、Biochem.J.173:723−737(1978))及びN−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)を包含する。
【0304】
リンカーは連結部の型に応じて種々の位置においてマイタンシノイド分子に結合してよい。例えば、エステル結合は従来のカップリング手法を用いてヒドロキシル基との反応により形成してよい。反応はヒドロキシル基を有するC3位、ヒロドキシメチルで修飾されたC14位、ヒドロキシル基で修飾されたC15位及びヒドロキシル基を有するC20位において起こってよい。好ましい実施形態においては、連結はマイタンシノール又はマイタンシノール類縁体のC3位において形成される。
【0305】
ii.オーリスタチン及びドラスタチン
一部の実施形態においては、イムノコンジュゲートはドラスタチン又はドロスタチンペプチド類縁体及び誘導体、オーリスタチン(米国特許5635483;5780588)にコンジュゲートした本発明の抗体を含む。ドラスタチン及びオーリスタチン微小管の力学的特徴、GTP加水分解及び核及び細胞の分裂に干渉し(Woyke等(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580−3584)、そして、抗がん作用(米国特許5663149)及び抗カビ活性(Pettit等(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961−2965)を有することがわかっている。ドラスタチン又はオーリスタチン剤はペプチド薬剤部分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシ)末端を介して抗体に結合させてよい(WO02/088172)。
【0306】
例示されるオーリスタチンの実施形態は参照により開示内容全体が本明細書に組み込まれる2004年11月5日出願の米国出願10/983,340の「Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation
to Ligands」に開示されているN末端連結モノメチルオーリスタチン薬剤部分DE及びDFを包含する。
【0307】
典型的にはペプチド系薬剤部分は、2つ以上のアミノ酸及び/又はペプチドフラグメントの間にペプチド結合を形成することにより製造できる。そのようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野で良く知られている液相合成法に従って製造できる(E.Schroder and K.Lubke,“The Peptides”,volume 1,pp76−136,1965,Academic Press参照)。オーリスタチン/ドラスタチン剤部分は米国特許5635483;米国特許5780588;Pettit等(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463−5465;Pettit等(1998)Anti−Cancer Drug Design 13:243−277;Pettit,G.R.,et al.Synthesis,1996,719−725;and Pettit等(1996)J.Chem.Soc.Perkin
Trans.1 5:859−863に記載の方法に従って製造してよい。更に又、参照により全体が本明細書に組み込まれるDoronina(2003)Nat Biotechnol 21(7):778−784;“Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands”,US Ser.No.10/983,340,filed Nov.5,2004(例えばリンカー及びリンカーにコンジュゲートされたMMAE及びMMAFのようなモノメチルバリン化合物の製造方法を開示している)も参照できる。
【0308】
iii.カリケアマイシン
別の実施形態において、イムノコンジュゲートはカリケアマイシン分子1つ以上にコンジュゲートした本発明の抗体を含む。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはピコモル未満の濃度において2本鎖DNA切断をもたらすことができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの製造に関しては米国特許5,712,374、5,714,586、5,739,116、5,767,285、5,770,701、5,770,710、5,773,001、5,877,296を参照することができる(全てAmerican Cyanamid Company)。使用してよいカリケアマイシンの構造的類縁体は例えばγ
1I、α
2I、α
3I、N−アセチル−γ
1I、PSAG及びθ
Il(Himman等、Cancer Research 53:3336−3342(1993)、Lode等、Cancer Research 58:2925−2928(1998)及び上記したAmerican Cyanamidへの米国特許)。抗体をコンジュゲートできる別の抗腫瘍剤は抗葉酸エステルであるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは両方とも細胞内作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。従って、抗体媒介内在を介したこれらの薬剤の細胞内取り込みはその細胞毒性作用を大きく増大させる。
【0309】
iv.他の細胞毒性剤
本発明の抗体にコンジュゲートできる他の抗腫瘍剤はBCNU、ストレプトゾシン、ビンクリスチン及び5−フルオロウラシル、米国特許5,053,394、5,770,710に記載の総称LL−E33288複合体として知られる薬剤ファミリー、並びに、エスペラマイシン(米国特許5,877,296)を包含する。
【0310】
使用できる酵素的に活性な毒素及びそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エキソトキシンA鎖(シュードモナス・アエルギノーサ由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites Fordii蛋白、ジアンシン蛋白、Phytolaca americana蛋白(PAPI、PAPII及びPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンを包含する。例えば1993年10月28日に公開されたWO93/21232を参照できる。
【0311】
本発明は更に抗体と核溶解活性を有する化合物との間に形成される免疫コンジュゲートを意図している(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNase)。
【0312】
腫瘍の選択的破壊のためには、抗体は高度に放射性の原子を含んでよい。種々の放射性同位体が放射性コンジュゲート抗体の製造のために使用される。例示されるものはAt
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体を包含する。検出のためにコンジュゲートを使用する場合は、それはシンチグラフィー試験のための放射性原子、例えばtc
99m又はI
123、又は核磁気共鳴(NMR)画像化(時期共鳴画像化mriとしても知られている)のためのスピン標識、例えばヨウ素−123、更にヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含んでよい。
【0313】
放射標識又は他の方式を知られた方法でコンジュゲートに取り込ませてよい。例えば、水素の代わりにフッ素−19を含む適当なアミノ酸前駆体を用いながら、ペプチドを性合成するか、又はアミノ酸化学合成法により合成してよい。tc
99m又はI
123、Re
186、Re
188及びIn
111のような標識をペプチド内のシステイン残基を介して結合することができる。イットリウム−90はリジン残基を介して結合できる。IODOGEN法(Fraker等(1987)Biochem.Biophys.Res.Commun.80:49−57)を用いてヨウ素−123を取り込むことができる。Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy(Chatal,CRC Press 1989)は他の方法を詳細に説明している。
【0314】
抗体と細胞毒性剤のコンジュゲートは種々の2官能性の蛋白カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの2官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルズベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えばビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6−ジイソシアネート)及びビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作成してよい。例えば、リシン免疫毒はVitetta等、Science 238:1098(1987)に記載の通り製造できる。炭素−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミノペンタ酢酸(MX−DTPA)は抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示されるキレート剤である。WO94/11026を参照できる。リンカーは細胞内での細胞毒性剤の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってよい。例えば酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari等、Cancer Research 52:127−131(1992);米国特許5,208,020)を使用してよい。
【0315】
本発明の化合物は例えば、市販されている(例えばPierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL,USAより)交差結合剤:BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC及びスルホ−SMPB及びSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)ベンゾエート)を用いて製造されたADCも意図している。例えば2003−2004 Applications Handbook and Catalog、p467−498を参照できる。
【0316】
v.抗体薬剤コンジュゲートの製造
本発明の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)においては、抗体(Ab)を1つ以上の薬剤部分(D)、例えば抗体当たり約1〜約20薬剤部分にリンカー(L)を介してコンジュゲートする。式I:
Ab-(L-D)
p I
のADCは、数種類の経路により、当業者の知る有機化学の反応、条件及び試薬を用いながら、例えば(1)共有結合を介したAb−Lを形成するための2価リンカー試薬との抗体の親核基の反応、及び、その後の薬剤部分Dとの反応;及び(2)共有結合を介したD−Lを形成するための2価リンカー試薬との薬剤部分の親核基の反応、及び、その後の抗体の親核基との反応、により製造してよい。ADCの製造のための別の方法は本明細書に記載する通りである。
【0317】
リンカーは1つ以上のリンカー成分を含んでよい。例示されるリンカー成分は6−マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、バリン−シトルリン(val−cit)、アラニン−フェニルアラニン(ala−phe)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート(SMCC)及びN−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)を包含する。追加的なリンカー成分は当該分野で知られており、一部は本明細書において更に説明する。更に又内容が参照により本明細書に組み込まれる2004年11月5日出願の米国出願10/983,340の「Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands」も参照できる。
【0318】
一部の実施形態においては、リンカーはアミノ酸残基を含んでよい。例示されるアミノ酸リンカー成分はジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドを包含する。例示されるジペプチドは、バリン−シトルリン(vc又はval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(afまたはala−phe)を包含する。例示されるトリペプチドは、グリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)及びグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)を包含する。アミノ酸リンカー成分を含むアミノ酸残基は天然に存在するもの、並びに少量存在するアミノ酸及び天然に存在しないアミノ酸類縁体、例えばシトルリンを包含する。アミノ酸リンカー成分は特定の酵素、例えば、腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD、又はプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断に関するそれらの選択性において設計され、最適化されることができる。
【0319】
抗体上の親核基は例えば、(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリジン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv)糖ヒドロキシル又はアミノ基であって抗体がグリコシル化されるところを包含する。アミン、チオール及びヒドロキシル基は親核性であり、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート及び酸ハライド;(ii)アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を包含するリンカー部分及びリンカー試薬上の親電子基と共有結合を形成するように反応することができる。特定の抗体は還元性の鎖間ジスルフィド、即ちシステイン架橋を有する。抗体はDTT(ジチオスレイトール)のような還元剤による処理によりリンカー試薬とのコンジュゲーションのために反応性としてよい。即ち各システイン架橋は理論的には2つの反応性チオール親核物質を形成することになる。2−イミノチオラン(Traut試薬)とのリジンの反応を介して抗体に別の親核基を導入することができ、これによりアミンからチオールへの変換がもたらされる。反応性のチオール基は1、2、3、4つ以上のシステイン残基を導入することにより抗体(又はそのフラグメント)内に導入してよい(例えば非ネイティブのシステインアミノ酸残基1つ以上を含む突然変異体抗体を製造する)。
【0320】
本発明の抗体薬剤コンジュゲートはまたリンカー試薬又は薬剤の上の親核性置換基と反応することができる親電子部分を導入するための抗体の修飾により製造してもよい。グリコシル化抗体の糖は例えば過ヨウ素酸塩の酸化剤で酸化することによりアルデヒド又はケトン基とし、これをリンカー試薬又は薬剤部分のアミン基と反応させてよい。形成されるイミンシッフ塩基の基は安定な連結部を形成するか、又は、例えばボロハイドライド試薬で還元することにより、安定なアミン連結部を形成してよい。1つの実施形態において、ガラクトースオキシダーゼ又はm−過ヨウ素酸ナトリウムの何れかとのグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により薬剤上の適切な基と反応できる蛋白中のカルボニル(アルデヒド又はケトン)基を形成してよい(Hermanson,Bioconjugate Techniques)。別の実施形態においては、N末端セリン又はスレオニン残基を含有する蛋白をm−過ヨウ素酸ナトリウムと反応させることにより、第1のアミノ酸の代わりにアルデヒドの形成を行う(Geoghegan & Stroh,(1992)Bioconjgate Chem.3:138−146;米国特許5362852)。このようなアルデヒドは薬剤部分又はリンカー親核物質と反応することができる。
【0321】
同様に、薬剤部分上の親核基は、例えば、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート及び酸ハライド;(ii)アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を包含するリンカー部分及びリンカー試薬上の親電子基と共有結合を形成するように反応することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート及びアンヒドラジド基を包含する。
【0322】
或いは、抗体及び細胞毒性剤を含む融合蛋白、例えば組み換え手法又はペプチド合成により、作成してよい。DNAの長さは、相互に隣接するか、又は、コンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により分断されたコンジュゲートの2つの部分をコードする該当領域を含む。
【0323】
更に別の実施形態においては、抗体は腫瘍のプレターゲティングにおいて利用するための「受容体」(例えばストレプトアビジン)にコンジュゲートしてよく、その場合、抗体−受容体コンジュゲートを患者に投与し、その後、キレート剤を用いて循環系から未結合のコンジュゲートを除去し、そして次に細胞毒性剤(例えば放射性核種)にコンジュゲートされた「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0324】
医薬品製剤
本発明の抗体を含む治療用製剤は、水溶液、凍結乾燥又は他の乾燥した製剤の形態において、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th
edition(2000))に所望の程度の純度を有する抗体を混合することにより保存用に製造される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は使用される用量及び濃度においてレシピエントに非毒性であり、そして、緩衝物質、例えばリン酸塩、酢酸塩、ヒスチジン又は他の有機酸;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;セタノール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;蛋白、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、2糖類及び他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース又はデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えばZn−蛋白複合体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN
TM、PLURONICS
TM又はポリエチレングリコール(PEG)を包含する。
【0325】
本発明の製剤は又、治療すべき特定の適応症のために必要に応じて1つより多い活性化合物、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない補足的な活性を有するものを含有してよい。このような分子は適宜、意図する目的のために有効である量において、組み合わせて存在する。
【0326】
活性成分はまた例えばコアセルベーション法によるか、又は、界面重合により製造されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマクロエマルジョン中に捕獲させてもよい。このような手法はRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th edition(2000)に記載されている。
【0327】
インビボ投与のために使用されるべき製剤は滅菌されていなければならない。これは滅菌濾過メンブレンを通過する濾過により容易に達成される。
【0328】
持続放出製剤を製造してよい。持続放出製剤の適当な例は本発明の免疫グロブリンを含有する固体疎水性重合体の半透過性マトリックスを包含し、そのようなマトリックスは形状付与された物品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許3,773,919)、L−グルタミン酸及びγエチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸共重合体、例えばLUPRON DEPOT
TM(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドよりなる注射可能な微小球)及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を包含する。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸のような重合体は100日間にわたる分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い時間に蛋白を放出する。カプセル化免疫グロブリンが身体内に長時間残存する場合、それらは、37℃の水分への曝露の結果として、変性するか凝集し、生物学的活性を消失するか、又は、免疫原性が変化する可能性がある。合理的な方策は関与する機序に応じて安定化のために考案することができる。例えば、凝集の機序がチオ−ジスルフィド交換を介した分子間S−S結合の形成であることが発見されれば、スルフィドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加物の使用、及び、特定の重合体マトリックス組成物の開発により安定化を達成してよい。
【0329】
用途
本発明の抗体は例えばインビトロ、エクスビボ及びインビボの治療方法において使用してよい。
【0330】
1つの特徴において、本発明はEphB4の増大した発現及び/又は活性に関連する腫瘍、癌及び/又は細胞増殖性障害を治療または防止するための方法を提供し、方法はそのような治療の必要な対象に抗EphB4抗体の有効量を投与することを含む。
【0331】
1つの特徴において、本発明は腫瘍又は癌の生育を低減、抑制又は防止するための方法を提供し、方法はそのような治療の必要な対象に抗EphB4抗体の有効量を投与することを含む。
【0332】
EphB4は発生中の胚における運動軸索ガイダンス及び神経堤細胞の遊走に関与することが示唆されている。従って、本発明の抗体は病因に細胞の変性又は機能不全が関与している障害の治療(防止を含む)、例えば種々の(慢性の)神経変性障害及び急性の神経細胞の傷害においても有用である。そのような神経変性障害は、限定しないが、末梢神経障害;運動ニューロン障害、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリグ病)、ベル麻痺、及び脊髄筋肉の委縮又は麻痺が関与する種々の状態;及び他の人の神経変性障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、癲癇、多発性硬化症、ハンチントン舞踏病、ダウン症候群、感音難聴及びメニエール病、及び、例えば外傷又は脊髄の傷害に起因する急性神経細胞傷害を包含する。
【0333】
本発明の抗体は又脈管形成を抑制するためにも有用である。一部の実施形態においては、脈管形成の部位は腫瘍又は癌である。
【0334】
1つの特徴において、本発明は脈管形成の抑制のための方法を提供し、これはそのような治療の必要な対象に抗EphB4抗体の有効量を投与することを含む。
【0335】
1つの特徴において、本発明は脈管形成に関連する病理学的状態を治療するための方法を提供し、これはそのような治療の必要な対象に抗EphB4抗体の有効量を投与することを含む。一部の実施形態においては、脈管形成に関連する病理学的状態は腫瘍、癌及び/又は細胞増殖性障害である。一部の実施形態においては、脈管形成に関連する病理学的状態は眼内血管新生性の疾患である。
【0336】
更に又、本発明の抗体の少なくとも一部は他の種由来の抗原に結合することができる。従って、本発明の抗体は例えば抗原を含有する細胞培養物において、ヒト対象において、又は、本発明の抗体が交差反応する抗原を有する他の哺乳類対象(例えばチンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザル及びアカゲザル、ブタ又はマウス)において、特定の抗原活性に結合するために使用できる。1つの実施形態において、本発明の抗体は抗原活性が抑制されるように抗原に抗体を接触させることにより抗原活性を抑制すために使用できる。好ましくは、抗原はヒト蛋白分子である。
【0337】
1つの実施形態において、本発明の抗体は、対象内の抗原が結合するように本発明の抗体を対象に投与することを含む、増大した抗原発現及び/又は活性に関連する障害に罹患した対象における抗原に結合するための方法において使用することができる。好ましくは、抗原はヒト蛋白分子であり、そして対象はヒト対象である。或いは、対象は本発明の抗体が結合する抗原を発現する哺乳類であることができる。更に又、対象は抗原が導入されている(例えば抗原の投与によるか、又は、抗原トランスジーンの発現による)哺乳類であることができる。本発明の抗体は治療目的のためにヒト対象に投与することができる。更に又、本発明の抗体は獣医科用途のため、又は、ヒト疾患の動物モデルとしての、免疫グロブリンが交差反応する抗原を発現する非ヒト哺乳類(例えば霊長類、ブタ又はマウス)に投与できる。後者に関しては、そのような動物モデルは本発明の抗体の治療薬効を評価する(例えば用量及び投与の時間的過程の試験)ために有用である。
【0338】
本発明の抗体は抗原分子1つ以上の発現及び/又は活性に関連する疾患、障害又は状態の治療、抑制、進行遅延、再発の防止/遅延、緩解又は防止のために使用できる。
【0339】
例示される障害は、癌腫、リンパ腫、芽種、肉腫及び白血病又はリンパ様悪性疾患を包含する。そのような癌のより特定の例は扁平上皮細胞癌(例えば上皮扁平上皮細胞癌)、肺癌、例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、肝細胞癌、胃又は腹部の癌、例えば胃腸の癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、尿道の癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮の癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、脳並びに頭部頚部の癌、及び関連する転移を包含する。一部の実施形態においては、癌は小細胞肺癌、神経芽腫、黒色腫、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)及び肝細胞癌からなる群より選択される。
【0340】
特定の実施形態においては、細胞毒性剤1つ以上とコンジュゲートした抗体を含むイムノコンジュゲートを患者に投与する。一部の実施形態においては、それが結合するイムノコンジュゲート及び/又は抗原は細胞により内在化され、これによりそれが結合している標的細胞の殺傷におけるイムノコンジュゲートの治療薬効の増大をもたらす。1つの実施形態において、細胞毒性剤は標的細胞内の核酸をターゲティングまたは妨害する。1つの実施形態において、細胞毒性剤は微小管重合をターゲティングまたは妨害する。そのような細胞毒性剤の例は本明細書に記載した化学療法剤の何れか(例えばマイタンシノイド、オーリスタチン、ドラスタチン又はカリケアマイシン)、放射性同位体、リボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼを包含する。
【0341】
本発明の抗体は治療において単独又は他の組成物との組み合わせにおいて使用できる。例えば本発明の抗体は他の抗体、化学療法剤(化学療法剤のカクテルを包含する)、他の細胞毒性剤、抗脈管形成剤、サイトカイン、及び/又は、生育抑制剤と同時投与してよい。本発明の抗体が腫瘍生育を抑制する場合、やはり腫瘍生育を抑制する他の治療薬1つ以上とそれを組み合わせることが特に望ましい場合がある。或いは、又は追加的に、患者は複合放射線療法を受けてよい(例えば外部からの線照射又は放射標識された薬剤、例えば抗体を用いた療法)。上記したそのような複合療法は複合投与(2種以上の薬剤を同じか別個の製剤中に含有させる)、及び、本発明の抗体の投与を併用治療薬の投与の前、及び/又は後に行う個別投与を包含する。
【0342】
複合療法
上記した通り、本発明は抗EphB4抗体を他の治療薬と共に投与する複合療法を提供する。例えば抗EphB4抗体を抗癌剤又は抗血管新生剤と組み合わせて使用することにより、種々の新生物又は非新生物性の状態を治療する。1つの実施形態において、新生物又は非新生物性の状態は異常又は望ましくない脈管形成に関連する病理学的障害により特徴づけられる。抗EphB4抗体は同じ組成物中において、又は別個の組成物として、これらの目的のために有効である別の薬剤と逐次的又は組み合わせて投与できる。或いは、又は追加的に、EphB4の多重抑制剤を投与できる。
【0343】
抗EphB4抗体の投与は同じか又は異なる投与経路を用いながら単一の組成物として、又は2種以上の異なる組成物として、同時に行うことができる。或いは、又は追加的に、投与は何れかの順序で逐次的に行うことができる。特定の実施形態においては数分〜数日、〜数週間〜数か月の範囲の時間間隔を2種以上の組成物の投与の間に設けることができる。例えば、抗癌剤をまず投与し、その後EphB4抑制剤を投与してよい。しかしながら、同時投与又は抗EphB4抗体を最初に投与することも意図される。
【0344】
抗EphB4抗体と組み合わせて投与される治療薬の有効量は医師又は獣医師の判断による。投与及び調節は治療すべき状態の最大の管理が達成されるように行う。用量は更に使用される治療薬の型及び治療される特定の患者のような要因に応じたものとなる。抗癌剤の適当な用量は現在使用されているものであり、そして、抗癌剤と抗EphB4抗体の複合作用(相乗作用)のためにより低値化できる。特定の実施形態においては、抑制剤の組み合わせは単一の抑制剤の薬効を強化する。「強化する」という用語は、治療薬の、その一般的又は認可された用量における、薬効の向上をさす。
【0345】
典型的には、抗EphB4抗体及び抗癌剤は腫瘍の生育及び癌細胞の生育のような病理学的障害をブロックまたは低減するために同じまたは同様の疾患に対して適している。1つの実施形態において、抗癌剤は抗脈管形成剤である。
【0346】
癌に関連した脈管形成療法は腫瘍の生育を支援する栄養を供給するために必要な腫瘍の欠陥の発生を防止することを目的としている癌の治療方策である。脈管形成は原発腫瘍の生育及び転移の両方に関与しているため、本発明により提供される脈管形成治療は原発部位において腫瘍の新生物生育を抑制すること、並びに、二次的な部位における腫瘍の転移を防止することができ、従って、別の治療薬による腫瘍の攻撃を可能とする。
【0347】
本明細書に記載したもの、例えば定義の下に列挙したもの、及び、例えばCarmeliet and Jain,Nature 407:249−257(2000);Ferrara等、Nature Reviews:Drug Discovery,3:391−400(2004);及びSato Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)により報告されたものも含めて、多くの抗脈管形成剤が発見され、当該分野で知られている。更に又米国特許出願US20030055006も参照できる。1つの実施形態において、抗EphB4抗体は抗VEGF中和抗体(又はフラグメント)及び/又は別のVEGF拮抗剤又はVEGF受容体拮抗剤、例えば限定しないが、可溶性VEGF受容体(例えばVEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、ニユーロピリン(例えばNRP1、NRP2))フラグメント、VEGF又はVEGFRをブロックすることができるアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼ(RTK)の低分子量阻害剤、VEGFに対するアンチセンス法、VEGF又はVEGF受容体に対するリボザイム、VEGFの拮抗剤変異体;及びこれらの何れかの組み合わせと組み合わせて使用する。或いは、又は追加的に、2種以上の脈管形成抑制剤を場合によりVEGF拮抗剤及び他の薬剤に加えて患者に同時投与してよい。特定の実施形態においては、1つ以上の追加的治療薬、例えば抗癌剤を抗EphB4抗体、VEGF拮抗剤及び抗脈管形成剤と組み合わせて投与できる。
【0348】
本発明の特定の特徴において、抗EphB4抗体との複合腫瘍療法の為に有用な他の治療薬は、他の癌療法(例えば手術、放射線治療(例えば放射性物質の照射又は投与を包含する)、化学療法、本明細書に列挙した、そして当該分野で知られた抗がん剤による治療及び又はこれらの組み合わせ)を包含する。或いは、又は追加的に、本明細書に開示した同じか2種以上の異なる抗原に結合する抗体2種以上を患者に同時投与できる。場合により患者にサイトカイン1つ以上も投与することが有利である。
【0349】
化学療法剤
特定の特徴において、本発明は癌に罹患し易い、又は癌と診断された患者に、EphB4の拮抗剤及び/又は脈管形成抑制剤及び1つ以上の化学療法剤の有効量を投与することによる、腫瘍生育又は癌細胞の生育をブロックまたは低減する方法を提供する。種々の化学療法剤を本発明の複合治療方法において使用してよい。意図される化学療法剤の例示による非限定的な列挙物は「定義」の下に本明細書に記載した通りである。
【0350】
当業者の知る通り、化学療法剤の適切な用量は一般的に、化学療法剤が単独または他の化学療法剤と組み合わせて投与される臨床療法において既に使用されているものの近傍となる。用量の変動は、治療すべき状態に応じて行われる。治療を管理する医師は個々の対象に対する適切な用量を決定することができる。
【0351】
回帰性の腫瘍生育
本発明は又、回帰性の腫瘍の生育又は回帰性の癌細胞の生育を抑制または防止するための方法及び組成物を提供する。回帰性の腫瘍生育又は回帰性の癌細胞の生育とは、現在使用可能な療法1つ以上(例えば癌療法、例えば化学療法、放射線療法、手術、ホルモン療法、及び/又は、生物学的療法/免疫療法、抗VEGF抗体療法、特に特定の癌に対する標準的な療法用法)を受けているかそれにより治療されている患者が患者を治療するために臨床的に不十分であるか、又は、患者が追加的な有効療法を必要とするように治療から何れかの有利な作用を受けることがもはや無い状況を指す。本明細書においては、その表現は又、例えば、治療に応答する患者がなお副作用に罹患している、抵抗性を発生させている、治療に応答しない、治療に十分応答しない等を説明する「非応答性/難治性」患者の状態を指す場合がある。種々の実施形態において、癌は回帰性の腫瘍生育又は回帰性の癌細胞の生育であり、その場合、癌細胞の数は有意に低減していないか、又は増大しており、或いは、腫瘍の大きさが有意に低減していないか、又は増大しており、或いは、癌細胞の大きさ又は数における如何なるそれ以上の低減も不可能である。癌細胞が回帰性の腫瘍生育又は回帰性の癌細胞の生育であるかどうかの判断は、そのような関連において、「回帰性」又は「難治性」又は「非応答性」の当該分野で許容されている意味を用いながら、癌細胞に対する治療の有効性を試験するための、当該分野で知られた何れかの方法により、インビボ又はインビトロの何れかで行うことができる。抗VEGF治療に抵抗性の腫瘍は回帰性の腫瘍生育の一例である。
【0352】
本発明は対象における回帰性の腫瘍生育又は回帰性の癌細胞の生育をブロック又は低減するために抗EphB4抗体1つ以上を投与することによる対象における回帰性の腫瘍生育又は回帰性の癌細胞の生育をブロック又は低減する方法を提供する。特定の実施形態においては、拮抗剤は癌治療薬の後に投与できる。特定の実施形態においては、抗EphB4抗体は癌治療薬と同時に投与する。或いは、又は追加的に、抗EphB4抗体療法は他の癌療法と交互に行ってよく、それは何れかの順序において実施できる。本発明は又、癌を有する素因がある患者における癌の発症又は再発を防止するために抑制性抗体1つ以上を投与するための方法を包含する。一般的に、対象は癌療法を同時に進行させていたか、させている。1つの実施形態において、癌療法は抗脈管形成剤、例えばVEGF拮抗剤を用いた治療である。抗脈管形成剤は当該分野で知られたもの及び本明細書における定義の下に記載したものを包含する。1つの実施形態において、抗脈管形成剤は抗VEGF中和抗体又はフラグメント(例えば、ヒト化A4.6.1,AVASTIN(登録商標)(Genentech,South San Francisco,CA),Y0317,M4,G6,B20,2C3等)である。例えば米国特許6,582,959,6,884,879,6,703,020;WO98/45332;WO96/30046;WO94/10202;EP 0666868B1;米国特許出願20030206899,20030190317,20030203409及び20050112126;Popkov等、Journal of Immunological Methods 288:149−164(2004);及びWO2005012359を参照できる。回帰性の腫瘍生育又は回帰性の癌細胞の生育をブロック又は低減するためにVEGF拮抗剤及び抗EphB4抗体と組み合わせて別の薬剤を投与することができ、例えば本明細書における複合療法と題されたセクションを参照できる。
【0353】
本発明の抗体(及び副次的治療薬)は何れかの適当な手段、例えば非経腸、皮下、腹腔内、肺内及び鼻内、及び、所望により局所投与、患部内投与により投与される。非経腸注入は筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与を包含する。更に又、抗体は適宜、特に抗体の漸減用量によるパルス注入により投与される。投薬は何れかの適当な経路、例えば注射、例えば静脈内又は皮下注射により行うことができ、これは部分的には投与が短期であるか長期であるかにより決まる。
【0354】
本発明の抗体組成物は良好な医療上の慣行に合致した態様において製剤され、容量決定され、そして投薬される。この観点において考慮すべき要因は、治療すべき特定の障害、治療すべき特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程及び医療従事者が知る他の要因を包含する。抗体は必然ではないが場合より問題となる障害の防止又は治療のために現在使用中の薬剤1つ以上とともに製剤される。そのような他剤の有効量は製剤中に存在する本発明の抗体の量、障害又は治療の種類及び上記した他の要因に応じたものである。これらは一般的には以前に使用されていたものと同じ用量及び投与経路において、又は、以前に使用されていた用量の1〜99%で使用される。
【0355】
疾患の予防又は治療のためには、本発明の抗体の適切な用量(単独使用、又は、化学療法剤のような他剤との組み合わせにおいて)は治療すべき疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体を予防又は治療目的のいずれにおいて投与するか、以前の治療、患者の臨床的履歴及び抗体に対する応答性、及び担当医の判断に応じて変動する。抗体は適宜、患者に対し、単回、又は一連の治療に渡って投与する。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一回以上の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、抗体約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.1mg/kg〜10mg/kg)が患者への投与のための初期候補用量である。1つの典型的な一日当たり用量は上記した要因に応じて約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲である。数日間以上に渡る反復投与の場合には、状態に応じて、投与は所望の疾患症状の抑制が起こるまで持続する。1つの例示される抗体用量は約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲である。即ち、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgの1つ以上の用量(又はこれらの何れかの組み合わせ)を患者に投与してよい。このような用量は間歇的に、例えば毎週又は3週毎(例えば患者が約2〜約20、例えば約6抗体投薬を受けるように)投与してよい。初期の高値の負荷用量の後、1つ以上の低用量を投与してよい。例示される用量用法は約4mg/kgの初期負荷用量を投与した後、抗体約2mg/kgの週当たり維持用量を含む。しかしながら、他の用量用法も使用してよい。この治療法の進行は従来の手法及び試験により容易にモニタリングされる。
【0356】
本発明の抗EphB4抗体は、抗体が後述するように標識される、及び/又は、不溶性マトリックスに固定化される、特異的な細胞又は組織におけるEphB4発現を検出する試験(例えば診断又は予後試験)において有用である。
【0357】
別の特徴において、本発明はEphB4の検出のための方法を提供し、方法は試料中のEphB4−抗EphB4抗体複合体を検出することを含む。「検出」という用語は本明細書においては、対照との比較対照を行うか行わない、定性的及び/又は定量的な検出(レベルの計測)を包含する。
【0358】
別の特徴において、本発明はEphB4の発現及び/又は活性に関連する障害を診断するための方法を提供し、方法は障害を有するか有することが疑われる患者に由来する生物学的試料中のEphB4−抗EphB4抗体複合体を検出することを含む。一部の実施形態においては、EphB4の発現は増大した発現又は異常な(望ましくない)発現である。一部の実施形態においては、障害は、腫瘍、癌及び/又は細胞増殖性障害である。
【0359】
別の特徴において、本発明は抗EphB4抗体が検出可能なレベルを有する場合の本明細書に記載した抗EphB4抗体の何れかを提供する。
【0360】
別の特徴において、本発明は何れかの本明細書に記載した抗EphB4抗体及びEphB4の複合体を提供する。一部の実施形態においては、複合体はインビボ又はインビトロにある。一部の実施形態においては、複合体は癌細胞を含む。一部の実施形態においては、抗EphB4抗体は検出可能に標識される。
【0361】
抗EphB4抗体は多くの良く知られた検出試験方法の何れか1つにおいてEphB4の検出のために使用できる。例えば、生物学的試料は、所望の原料に由来する試料を得ること、試料に抗EphB4抗体を添加混合して混合物中にEphB4が存在する場合は抗体がそれと抗体/EphB4複合体を形成できるようにすること、及び、混合物中に抗体/EphB4複合体が存在すればそれを検出することにより、EphB4に関して試験してよい。生物学的試料は特定の試料に対して適当である当該分野で知られた方法により試験のために調製してよい。試料と抗体を添加混合する方法及び抗体/EphB4複合体を検出する方法は使用する試験の型に応じて選択する。そのような試験は免疫組織化学的分析、競合的及びサンドイッチ試験及び立体抑制試験を包含する。
【0362】
EphB4に関する分析方法は全て以下の試薬、即ち、標識されたEphB4類縁体、固定化されたEphB4類縁体、標識された抗EphB4抗体、固定化された抗EphB4抗体及び立体コンジュゲートの1つ以上を使用する。標識された試薬は「トレーサー」としても知られている。
【0363】
使用される標識はEphB4及び抗EphB4抗体の結合を妨害しない何れかの検出可能な官能性のものである。イムノアッセイにおける使用のための多くの標識が知られており、その例としては、直接検出してよい部分、例えば蛍光色素、ケミルミネセント及び放射性の標識、並びに、検出されるためには反応又は誘導隊化しなければならない部分、例えば酵素が包含される。そのような標識の例は以下のものを包含する。使用される標識はEphB4及び抗EphB4抗体の結合を妨害しない何れかの検出可能な官能性のものである。イムノアッセイにおける使用のための多くの標識が知られており、その例としては、直接検出してよい部分、例えば蛍光色素、ケミルミネセント及び放射性の標識、並びに、検出されるためには反応又は誘導隊化しなければならない部分、例えば酵素が包含される。そのような標識の例は放射性同位体
32P、
14C、
125I、
3H及び
131I、蛍光団、例えば希土類のキレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許4,737,456)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、セイヨウワサビパーオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソザイム、糖類オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、複素環オキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、ただしHRP、ラクトパーオキシダーゼ又はミクロパーオキシダーゼのような染料前駆体を酸化するために過酸化水素を使用する酵素とカップリングさせたもの、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカル等を包含する。
【0364】
これらの標識を蛋白オアポリペプチドに共有結合させるためには従来の方法が使用される。例えばカップリング剤、例えばジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビスイミデート、ビスジアゾ化ベンジジン等を用いることにより、上記した蛍光、ケミルミネセント及び酵素標識で抗体をタグ付けしてよい。例えば米国特許3,940,475(蛍光分析)及び3,645,090(酵素);Hunter等、Nature,144:945(1962);David等、Biochemistry,13:1014−1021(1974);Pain等、J.Immunol.Methods,40:219−230(1981);及びNygren,J.Histochem.and Cytochem.,30:407−412(1982)を参照できる。本明細書における好ましい標識はセイヨウワサビパーオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼのような酵素である。そのような標識、例えば酵素の抗体へのコンジュゲーションはイムノアッセイ手法における当業者にとって標準的に操作できる操作法である。例えばO’Sullivan等、“Methods for the Preparation of Enzyme−antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay,”Methods in Enzymology,ed.J.J.Langone and H.Van Vunakis,Vol.73(Academic Press,New York,New York,1981),pp.147−166を参照できる。
【0365】
試薬の固定化が特定の試験方法には必要である。固定化は溶液中に遊離して残存しているEphB4がある場合はそれから抗EphB4抗体を分離することを伴う。これは好都合には、試験の操作法の前に抗EphB4抗体又はEphB4類縁体を、例えば水不溶性マトリックス又は表面への吸着(Bennich等、米国特許3,720,760)によるか、共有結合カップリング(例えばグルタルアルデヒド交差結合を用いる)により不溶性化するか、又はその後に抗EphB4抗体又はEphB4類縁体を例えば免疫沈降により不溶性化することによるかの何れかにより、達成される。
【0366】
試料中の蛋白の発現は免疫組織化学及び染色のプロトコルを用いながら調べてよい。組織切片の免疫組織学的染色は、試料中の蛋白の存在を試験又は検出する信頼性の高い方法であることがわかっている。免疫組織化学(IHC)の手法は一般的に発色性または蛍光による方法により、インサイチュで細胞抗原をプローブして可視化するために抗体を利用している。試料調製の為には哺乳類(典型的にはヒト患者)由来の組織または細胞の試料を使用してよい。試料の例は限定しないが、癌細胞、例えば結腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、リンパ腫及び白血病の癌細胞を包含する。試料は当該分野で知られた種々の操作法、例えば限定しないが、外科的摘出、吸引又は生検により得ることができる。組織は新鮮又は凍結されていてよい。1つの実施形態において試料はパラフィン等に固定化及び包埋する。組織試料は従来の方法により固定(即ち保存)してよい。当業者の知る通り、固定剤の選択は試料を組織学的に染色又は別様に分析する目的により決定される。当該分野で知られる通り、固定の長さは組織試料の大きさ及び使用する固定剤による。
【0367】
IHCは別の手法、例えば形態学的染色及び/又は蛍光インサイチュハイブリダイゼーションと組み合わせて実施してよい。IHCの2つの一般的方法;直接及び間接的な試験が使用できる。第1の試験によれば、標的抗原(例えばEphB4)への抗体の結合を直接測定する。この直接測定は標識された試薬、例えば蛍光タグまたは酵素標識一次抗体を使用し、これはそれ以上の抗体相互作用を伴うことなく可視化することができる。典型的な間接的試験においては、未コンジュゲートの抗体を酵素標識にコンジュゲートし、色素原性又は蛍光原性の基質を添加することにより抗原の可視化を行う。シグナル増幅が起こる理由は、数種の二次抗体が一次抗体の異なるエピトープと反応する場合があるためである。
【0368】
免疫組織化学のために使用される一次及び/又は二次抗体は典型的には検出可能な部分で標識される。後述するカテゴリーに一般的にグループ分けすることができる多くの標識が使用できる。
【0369】
上記考察した試料調製の操作法のほかに、IHCの前、最中又は後に組織切片を更に処理することが望ましい場合があり、例えば、クエン酸緩衝液中で組織試料を加熱する等のエピトープ回復方法を行ってよい(例えばLeong等、Appl.Immunohistochem.4(3):201(1996)参照)。
【0370】
任意のブロッキング工程の後、組織試料中の標的蛋白抗原に一次抗体が結合するような十分な時間及び適当な条件下において、組織切片を一次抗体に曝露する。これを達成するための適切な条件は定型的実験により決定できる。試料への抗体の結合の程度は上記考察した検出可能な標識の何れか1つを用いることにより測定される。好ましくは、標識は3,3’−ジアミノベンジジン色素原のような色素原性の基質の化学的改変を触媒する酵素標識(例えばHRPO)である。好ましくは、酵素標識は一次抗体に特異的に結合する抗体にコンジュゲートされる(例えば一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、そして二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)。
【0371】
このようにして調製された標本をマウントし、カバーガラスで覆ってよい。次にスライドガラスの評価を、例えば顕微鏡を用いながら行い、そして、当該分野で定型的に使用されている染色強度基準を用いてよい。染色強度基準は以下の通り評価してよい。
【0372】
【化5】
典型的には、IHCにおいて約2+以上の染色パターンスコアが診断的及び/又は予後的なものとなる。一部の実施形態においては、約1+以上の染色パターンスコアが診断的及び/又は予後的なものとなる。他の実施形態においては約3以上の染色パターンスコアが診断的及び/又は予後的なものとなる。腫瘍または結腸の腺癌に由来する細胞及び/又は組織をIHCで検査する場合、染色は一般的に腫瘍細胞及び/又は組織において測定または評価される(試料中に存在する場合がある間質性又は周囲の組織とは異なる)。
【0373】
競合的又はサンドイッチ試験として知られている他の試験法は十分確立されており、そして商業的な診断薬産業において広範に使用されている。
【0374】
競合的試験は抗EphB4抗体抗原結合部位の限定された数に対して被験試料EphB4と競合するトレーサーEphB4類縁体の能力に依存している。抗EphB4抗体は一般的に競合の前又は後に不溶性化され、そして次にトレーサー及び抗EphB4抗体に結合したEphB4を未結合のトレーサー及びEphB4から分離する。この分離は傾瀉(結合相手が予め不溶性化されている場合)によるか、又は、遠心分離(結合相手が競合的反応の後に沈殿している場合)により行う。被験試料のEphB4の量はマーカー物質の量により測定した場合の結合トレーサーの両に反比例する。EphB4の既知量による用量応答曲線を作成し、そして被験試料の結果と比較することにより被験試料中に存在するEphB4の量を定量的に測定する。これらの試験は酵素が検出可能なマーカーとして使用される場合にはELISA系と称する。
【0375】
競合定期試験の別の種類は「均質性」試験と称され、相分離を必要としない。ここでは、抗EphB4抗体がEphB4に結合する場合に抗EphB4抗体の存在が酵素活性を変調させるように、EphB4との酵素のコンジュゲートを作成して使用する。この場合、EphB4又はその免疫学的に活性なフラグメントをパーオキシダーゼのような酵素に二官能性の有機の架橋を用いてコンジュゲートする。コンジュゲートは、抗EphB4抗体の結合が標識の酵素活性を阻害又は強化するように、抗EphB4抗体との使用のために選択する。この方法自体はEMITの名称の下に広範に実施されている。
【0376】
立体コンジュゲートは均質性試験のための立体障害法において使用される。これらのコンジュゲートは、ハプテンに対する抗体が抗EphB4抗体と同時にはコンジュゲートに結合することが実質的に不可能であるように小型EphB4フラグメントに低分子量ハプテンを共有結合することにより合成する。この試験の操作法の下においては、被験試料中に存在するEphB4は抗EphB4抗体に結合することになり、これにより、抗ハプテンがコンジュゲートに結合できるようにし、コンジュゲートハプテンの特徴に変化、例えばハプテンが蛍光団である場合は蛍光に変化が生じる。
【0377】
サンドイッチ試験は特にEphB4又は抗EphB4抗体の測定のために有用である。逐次的サンドイッチ試験の場合は、固定化された抗EphB4抗体を用いて被験試料EphB4を吸着し、被験試料を洗浄により除去し、結合EphB4を用いて第2の標識された抗EphB4抗体を吸着し、そして次に結合した物質を残留トレーサーから分離する。結合トレーサーの量は被験試料EphB4に直接的に比例する。「同時」サンドイッチ試験においては被験試料は標識された抗EphB4の添加の前には分離されない。1つの抗体として抗EphB4モノクローナル抗体を、もう1つの抗体としてポリクローナル抗EphB4抗体を用いる逐次的サンドイッチ試験がEphB4の試料を試験する場合に有用である。
【0378】
上記はEphB4に関する単なる例示される検出試験である。EphB4の測定のために抗EphB4抗体を使用する現在または将来開発される他の方法も、本明細書に記載したバイオアッセイを含めてその範囲に包含される。
【0379】
製造物品
本発明の別の特徴において、上記した疾患の治療、予防及び/又は診断のために有用な物質を含有する製造物品が提供される。製造物品は容器及び容器上又はそれに伴ったラベル又はパッケージインサートを含む。適当な容器は例えばビン、バイアル、シリンジ等を包含する。容器は種々の材料、例えばガラス又はプラスチックから形成してよい。自身、又は他の組成物と組み合わせた場合に状態の治療、予防及び/又は診断に有効となる組成物を容器が保持しており、そして滅菌された接触口を有してよい(例えば容器は静脈内投与用の溶液バッグ又は皮下注射針により穿刺可能な蓋つきのバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は本発明の抗体である。ラベル又はパッケージインサートは組成物が例えば癌のような選択された状態の治療のために使用されることを示す。更に又、製造物品は(a)その中に含有される組成物の入った第1の容器、ここで組成物は本発明の抗体を含むもの、及び(b)その中に含有される組成物の入った第2の容器、ここで組成物は別の細胞毒性剤を含むもの、を含んでよい。本発明のこの実施形態における製造物品は更に第1及び第2の抗体組成物を例えば癌のような特定の状態の治療のために使用できることを示すパッケージインサートを含んでよい。或いは、又は追加的に、製造物品は更に製薬上許容しうる緩衝液、例えば注射用殺菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液を含む第2(又は第3)の容器を含んでよい。それは更に商業上又は使用者の観点から望ましい他の物質、例えば他の緩衝物質、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含んでよい。
【0380】
以下に記載するものは本発明の方法及び組成物の実施例である。上記の一般的説明により、種々の他の実施形態も実施できると理解される。