(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明者は、従来の液状化対策技術が有する問題を解決すべく、鋭意検討した。その結果、以下の知見を得た。なお、以下の知見はあくまで本発明をなすきっかけとなったものであり、本発明を限定するものではない。
【0013】
液状化により戸建て住宅が沈下するメカニズムでは、液状化が発生した後に間隙水が噴出することによって地盤全体が圧縮沈下し、建物はその中にさらにめり込んで沈下する。沈下量として、以下が区別される。すなわち、[1]地盤自体の圧縮沈下量、[2]建物の絶対沈下量、[3]建物のめり込み沈下量、である。
【0014】
[1]地盤自体の圧縮沈下量に関しては、平面的に一様に沈下すれば建物の傾斜もあまり生じないので一般に建物に甚大な被害を与えない。これに対し、[3]建物のめり込み沈下量に関しては、もともと支持力がある地盤が急に泥水化し、支持力を失って沈下するため、沈下と同時に傾斜や家屋のゆがみなども生じ、建物にとって甚大な被害をもたらす。[2]建物の絶対沈下量は、[1]と[3]の合計である。したがって、重要なのは[3]建物のめり込み沈下量ということになる。
【0015】
めり込み沈下が発生するメカニズムの一つとして、建物が地盤内にめり込んでいくために、その下の土を横方向に押し出すことが考えられる。地表面に押し出されるため、建物近傍が盛り上がる。横方向に押し出すことを防げばめり込み沈下量も減ることになる。二つ目は、液状化した地盤から水が噴出することに伴う圧縮沈下も加わることである。したがって、めり込み沈下量は、建物の絶対沈下量から周囲の地盤の沈下量を差し引いた値となる。
【0016】
液状化は地下水位以下の地層しか直接的には発生しないが、住宅地では地下水面は地表面にはなくある深さのところに分布する。地下水面直下の層でも全て液状化するとは限らないので、必ず非液状化層が表層に存在する。この非液状化層とその下の液状化層の特性や、建物の諸元、地震動特性に関する以下の要因が戸建て住宅の沈下量に影響するのではないかと考えられる。すなわち、[1]地盤に関する要因:非液状化層の厚さや硬さ、地下水位、液状化層の厚さや粒径・緩さ、[2]建物に関する要因:建物荷重、建物幅、基礎の根入れ深さ、[3]地震動:地震動の大きさ、振幅、継続時間、である。
【0017】
東日本大震災後の浦安市での調査によると、被害の程度が大きいほど地下水位は浅い傾向にあった。地下水位が深くなると、液状化層での有効上載圧が大きくなるので液状化し難くなる。同時に住宅基礎下の非液状化層も厚くなり、その分だけ支持力(地耐力)も増えるため、沈下し難くなるのではないかと考えられる。
【0018】
すなわち、地下水位が浅い場合には、基礎下の非液状化層が薄いので支持力不足ですぐ沈下するか、液状化層から絞り出された間隙水が上がってきて支持力不足になって沈下する。地下水位が少し深い場合には、液状化層から搾り出された間隙水が次第に上がってきて支持力不足になって沈下する。家屋周囲に地割れが生じ、そこから噴水が先に出ることもある。地下水位が深い場合には、液状化層から搾り出された間隙水が次第に上がってきても、基礎下付近まで達せず支持力は残ったままで沈下しない。噴水も地表に達しない。(公益社団法人地盤工学会関東支部 造成宅地の耐震対策に関する研究委員会編『造成宅地の耐震対策に関する研究委員会報告書−液状化から戸建て住宅を守るための手引き−』平成25年5月)
【0019】
すなわち、液状化とは、粒子径が比較的均一で、地下水が浅く、粒子と粒子との間の接点を介して緩やかに支持されている砂質層において、地震および振動等によるせん断力が働いたときに、粒子間の接点の配列が崩れ、間隙水圧が発生し、粒子間の空間が収縮することにより余剰水が発生する事象と考えられる。かかる余剰水が敷地の一部に集中すると、その場所で建物の荷重に耐えられなくなり、建物のめり込み沈下による不同沈下が発生する。よって、余剰水を地中で分散させることができれば、建物のめり込み沈下による不同沈下を軽減できると考えられる。
【0020】
ここで、宅地の地下水位(常水位)が1.3m程度まで浅くなると、地震時におけるめり込み沈下による不同沈下が多数発生し、住宅が全壊する可能性が高くなることが報告されている(公益社団法人地盤工学会関東支部 造成宅地の耐震対策に関する研究委員会編『造成宅地の耐震対策に関する研究委員会報告書−液状化から戸建て住宅を守るための手引き−』平成25年5月)。このことから、地下1.3mまでの部分を「非液状化層」として、「非液状化層」での液状化を抑制すれば、建物のめり込み沈下による不同沈下を軽減できると推察される。
【0021】
地下水位が1.3mより深い場所において、地震が発生すると、地下水位より上方にある層の重量がもたらすせん断力により、地下水位より下方にある粒子の接点の配列が崩れる。粒子と粒子との間の空間が縮まることで余剰水が発生し、間隙水圧の上昇と余剰水の噴出により建物の下方にある地盤の地耐力が急激に低下する。これにより、液状化によるめり込み沈下が発生する。地下水位より下方から発生する余剰水が、地下1.3mまでの「非液状化層」に侵入することを低減できれば、液状化によるめり込み沈下を低減できる。
【0022】
ここで、家屋の排水管などは地下0.5m程度に設置される。よって例えば、0.5mより深く、1.3mより浅い部分において、網状をなすように高空隙率領域を形成し、1.3mより深い層から噴出する水を、高空隙率領域に誘導して敷地全体に分散させると共に、高空隙率領域の上方に非透水性シートを配置して敷地を水密に覆うことで、噴出水の上昇と建物のめり込み沈下による不同沈下を軽減できる。
【0023】
具体的には例えば、敷地内に溝状の空間を設け、該溝状の空間に、建設地点の土壌よりも大きな空隙を形成する粒子(グラベル)を充填することで高空隙率領域を形成できる。かかる構成では、地下から沸きあがった余剰水を、溝状の空間に充填されたグラベルの間隙に収容することができる。
【0024】
あるいは例えば、敷地内に樹脂製で水平方向に延びる直方体をなす地盤改良補助部材を設置することで、該中空部分を高空隙率領域とする。かかる構成では、地下から沸きあがった余剰水を、地盤改良補助部材の中空に形成されている間隙に収容することができる。
【0025】
さらに発明者は、上記溝状の空間を容易に形成する方法を鋭意検討した。その結果、以下の構成に想到した。すなわち例えば、平面視(鉛直上方から見た場合を指す、以下同様)において、周辺土壌等の細粒材を収納する部分を低空隙率領域とし、低空隙率領域に隣接し、細粒材より粒径の大きな粗粒材を収納する部分を高空隙率領域とする。平面視において、低空隙率領域の周囲を取り囲むように、互いに取り外し可能に接続された複数の板状部材を配置し、これにより第1壁を形成する。該板状部材は、透水性を有するように開口を備える。平面視において高空隙率領を介して第1壁と対向するように板状部材を配置し、これにより第2壁を形成する。さらに、接続部により、第1壁に含まれる板状部材と第2壁に含まれる板状部材とを取り外し可能に接続することで、地盤改良補助部材を構成する。
【0026】
かかる構成によれば、例えば、以下の方法で地盤改良補助構造体を形成できる。すなわち、建物の床部分を含む領域について、地盤改良補助部材を十分に収容可能な深さまで土を掘り、得られた空間の内部に上記地盤改良補助部材を組み上げる。低空隙率領域には、例えば、土を土嚢に充填した上で埋め戻す。形成された溝状の空間、すなわち高空隙率領域に、グラベルを充填する。かかる方法により、容易に、地盤改良補助構造体を形成できる。
【0027】
地盤改良補助部材自体は、複数の取り外し可能な板状ないし棒状の部品で構成されうる。ばらした状態で設置場所まで運搬することができるため、運搬時の体積を縮小でき、運搬コストを飛躍的に低減できる。また、掘り出した土を細粒材収納部に埋め戻す場合には、土砂の処分コストを飛躍的に低減できる。さらに、汎用品を用いて上記板状部材を形成することとした場合には、製造コストも飛躍的に低減できる。
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態はあくまで一例であり、本発明を限定するものではない。
【0029】
以下で説明する実施形態は、いずれも本発明の望ましい一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、あくまで一例であり、本発明を限定するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より望ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。また、製造方法においては、必要に応じて、各工程の順序等を変更でき、かつ、他の公知の工程を追加できる。
【0030】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかる地盤改良工法は、地下水位が1300mm以深の土地において、上方から見て島状に形成され、かつ、底面および側面を第1非透水性シートで覆われた、複数の低空隙率領域と、上方から見て低空隙率領域を取り囲むように網状をなし、かつ、低空隙率領域よりも空隙率の高い、高空隙率領域とを、低空隙率領域の最上部および高空隙率領域の最上部の地面からの深さが500mmより深く、かつ、低空隙率領域の最下部および高空隙率領域の最下部の地面からの深さが1300mmより浅くなるように、形成し、その後、複数の低空隙率領域と高空隙率領域との上に、複数の低空隙率領域と高空隙率領域とを水密に覆うように、第2非透水性シートを配置し、第1非透水性シートと第2非透水性シートとの間を水が通過可能とする。
第1実施形態にかかる改良地盤は、地下水位が1300mm以深の土地において、上方から見て島状に形成され、かつ、底面および側面を第1非透水性シートで覆われた、複数の低空隙率領域と、上方から見て低空隙率領域を取り囲むように網状をなし、かつ、低空隙率領域よりも空隙率の高い、高空隙率領域と、複数の低空隙率領域と高空隙率領域との上に、複数の低空隙率領域と高空隙率領域とを水密に覆うように配置された第2非透水性シートとを備え、低空隙率領域の最上部および高空隙率領域の最上部の地面からの深さが500mmより深く、低空隙率領域の最下部および高空隙率領域の最下部の地面からの深さが1300mmより浅く、かつ、第1非透水性シートと第2非透水性シートとの間を水が通過可能に構成されたものである。
【0031】
上記地盤改良工法および上記改良地盤において、第2非透水性シートは、水密に接続された複数のシートからなっていてもよい。
【0032】
上記地盤改良工法および上記改良地盤において、第2非透水性シートは、ポリエチレンからなっていてもよい。
【0033】
上記地盤改良工法および上記改良地盤において、高空隙率領域が、内部に空洞の形成された樹脂製部材を用いて形成されてもよい。
【0034】
上記地盤改良工法および上記改良地盤において、高空隙率領域が、粗粒材の充填された空間で形成されてもよい。
【0035】
上記地盤改良工法および上記改良地盤において、高空隙率領域の外側が透水性シートで覆われてもよい。
【0036】
図1は、第1実施形態にかかる改良地盤の概略構成の一例を示す平面図である。
図2は、第1実施形態にかかる改良地盤の概略構成の一例を示す断面図である。以下、
図1および
図2を参照しつつ、第1実施形態にかかる地盤改良工法およびこれを用いて形成された改良地盤100について説明する。
【0037】
改良地盤100は、地下水位dwが1300mm以深の土地に形成される。地下水位dwが1300mm以深とは、地表面を基準として深度1300mmと同じかそれよりも深い位置に地下水位があることを言う。具体的には例えば、液状化の危険性があると判定された土地であって、地下水位が1300mm以深の土地に形成される。液状化の危険性があるか否かの判定方法は、当業者において信頼性のある方法として認定されたものであれば特に限定されないが、例えば、『建築基礎構造設計基準・同解説』(日本建築学会、1974年)、および、『建築基礎構造設計指針』(日本建築学会、1988年)等に記載された方法を用いることができる。土地の一部において地下水位が1300mmより高くてもよいが、施工性を考慮すれば、土地の全部において地下水位が1300mm以深であるのが好ましい。
【0038】
図1および
図2に例示されているように、改良地盤100は、低空隙率領域2と、高空隙率領域4と、第1非透水性シート11と、第2非透水性シート13とを備えている。
【0039】
低空隙率領域2は、上方から見て島状に形成されている。低空隙率領域2は、底面および側面を第1非透水性シート11で覆われている。低空隙率領域2は、平面視において板状部材32または地盤改良補助部材110に四方を取り囲まれた領域であってもよい(
図3および
図5参照)。
【0040】
第1非透水性シート11は、非透水面を形成しうる部材であれば特に限定されない。非透水面は、当該面を貫通する水の流れを少なくとも軽減できる面である。非透水面は、当該面を貫通する水の流れを遮断する面であってもよい。遮断とは、水を全く通さないことを必ずしも意味せず、低空隙率領域2への水の浸入を抑制して建物のめり込み沈下を軽減するという効果を実現可能な限りで、若干の水を通すものでありうることは言うまでもない。
【0041】
第1非透水性シート11は、低空隙率領域2の側面および底面からの、低空隙率領域2への水の浸入を低減させる。第1非透水性シート11は、シートを貫通する水の流れを遮断する部材であってもよい。第1非透水性シート11は、低空隙率領域2の底面および側面の全部を隙間なく覆っていてもよい。
【0042】
第1非透水性シート11は、1個の低空隙率領域2に対して一枚の、柔軟性と非透水性と耐候性とを有する合成樹脂製のシートであってもよい。かかる構成では、低空隙率領域2への水の浸入をより効果的に低減できる。第1非透水性シート11としては、具体的には例えば、ポリエチレンなどの合成樹脂製のシート(いわゆるブルーシート)等を用いることができる。
【0043】
第1非透水性シート11は、板状の部材で形成されていてもよい。第1非透水性シート11は、1個の低空隙率領域2に対してそれぞれ1個ずつ備えられていてもよい。低空隙率領域2が複数存在する場合において、第1非透水性シート11が全ての低空隙率領域2に設けられていてもよい。低空隙率領域2が複数存在する場合において、第1非透水性シート11が一部の低空隙率領域2のみに設けられていてもよい。第1非透水性シート11は、1個の低空隙率領域2の中で分割されていてもよい。
【0044】
低空隙率領域2は、細粒材が充填される部分であってもよい。細粒材とは、粗粒材よりも空隙率が低い材料である。空隙率とは、単位体積当たりの液体および気体が占める体積の割合をいう。細粒材としては、典型的には、改良地盤を形成する地点の土が用いられる。細粒材は、複数の土嚢に充填された上で低空隙率領域2に配置されてもよい。土嚢は、充填された細粒材が高空隙率領域4へと流出する可能性を低減する。あるいは、低空隙率領域2と高空隙率領域4との間に第1非透水性シート11を配置し、すなわち、低空隙率領域2の周囲を第1非透水性シート11で取り囲み、該取り囲まれた空間の内部に土をそのまま(土嚢に充填せずに)配置してもよい。かかる態様では、土を土嚢に充填する手間が省略でき、工事費用がさらに軽減される。
【0045】
高空隙率領域4は、上方から見て低空隙率領域2を取り囲むように網状をなす。高空隙率領域4の空隙率は、低空隙率領域2の空隙率よりも高い。高空隙率領域4は、低空隙率領域2に隣接する。高空隙率領域4は、内部に空洞の形成された樹脂製部材を用いて形成されてもよいし、粗粒材の充填された空間で形成されてもよい。具体的には例えば、地盤改良補助部材110(後述)の内部空間、および上下面接続パネル120(後述)と側面接続パネル130(後述)と角部接続パネル140(後述)とで囲まれた空間が、高空隙率領域4をなす。該空間に粗粒剤が充填されてもよい。
【0046】
粗粒材とは、細粒材よりも空隙率が高い材料である。粗粒材は、周辺土壌よりも空隙率が高い材料とすることができる。粗粒材としては、典型的には、砕石、生コン用骨材40洗い(40mmメッシュのふるいを通過した石を洗浄することで得られる、生コン用の骨材)等が用いられる。高空隙率領域4は、低空隙率領域2の周囲を取り囲むように配置されてもよい。
【0047】
低空隙率領域2の最上部の地面からの深さは500mmより深く、かつ、高空隙率領域4の最上部の地面からの深さは500mmより深い。低空隙率領域2の最上部の地面からの深さと高空隙率領域4の最上部の地面からの深さとは等しくてもよく、該深さをd1とすればd1>500mmとなる。低空隙率領域2と高空隙率領域4とは、それぞれの上面が一致して単一の水平面をなしていてもよい。
【0048】
低空隙率領域2の最下部の地面からの深さは1300mmより浅く、かつ、高空隙率領域4の最下部の地面からの深さは1300mmより浅い。低空隙率領域2の最下部の地面からの深さと高空隙率領域4の最下部の地面からの深さとは等しくてもよく、該深さをd2とすればd2<1300mmとなる。低空隙率領域2と高空隙率領域4とは、それぞれの下面が一致して単一の水平面をなしていてもよい。
【0049】
低空隙率領域2の高さは300mm以上800mm以下としてもよい。高空隙率領域4の高さは300mm以上800mm以下としてもよい。低空隙率領域2の高さと高空隙率領域4の高さとは等しくてもよく、該高さをDとすれば300mm≦D≦800mmとなる。
【0050】
低空隙率領域2の高さは500mm以上700mm以下としてもよい。高空隙率領域4の高さは500mm以上700mm以下としてもよい。低空隙率領域2の高さと高空隙率領域4の高さとは等しくてもよく、該高さをDとすれば500mm≦D≦700mmとなる。
【0051】
複数の低空隙率領域2と高空隙率領域4との上に、複数の低空隙率領域2と高空隙率領域4とを水密に覆うように、第2非透水性シート13が配置されている。第1非透水性シート11と第2非透水性シート13との間を水が通過可能とされている。
【0052】
第2非透水性シート13は、非透水面を形成しうる部材であれば特に限定されない。非透水面は、当該面を貫通する水の流れを少なくとも軽減できる面である。非透水面は、当該面を貫通する水の流れを遮断する面であってもよい。遮断とは、水を全く通さないことを必ずしも意味せず、第2非透水性シート13よりも上方の層への水の浸入を抑制して建物のめり込み沈下を軽減するという効果を実現可能な限りで、若干の水を通すものでありうることは言うまでもない。
【0053】
第2非透水性シート13は、高空隙率領域4の上面からの、第2非透水性シート13よりも上方の層への水の浸入を低減させる。第2非透水性シート13は、シートを貫通する水の流れを遮断する部材であってもよい。第2非透水性シート13は、高空隙率領域4の上面および低空隙率領域2の上面を隙間なく覆っていてもよい。第2非透水性シート13は、高空隙率領域4の上面および低空隙率領域2の上面の全部を隙間なく覆っていてもよい。
【0054】
第2非透水性シート13は、1個の改良地盤100に対して一枚の、柔軟性と非透水性と耐候性とを有する合成樹脂製のシートであってもよい。かかる構成では、第2非透水性シート13よりも上方の層への水の浸入をより効果的に低減できる。
【0055】
第2非透水性シート13は、例えば、熱溶着により接合可能な樹脂シートで構成されうる。より具体的には例えば、熱溶着により接合可能なポリエチレンシートで構成されうる。さらに具体的には例えば、シーアイ化成株式会社製のビノン(登録商標)土木シートを用いることができる。
【0056】
第2非透水性シート13の厚みは、特に限定されないが、例えば、2mm以上3mm以下とすることができる。
【0057】
第2非透水性シート13は、水密に接続された複数のシートからなっていてもよい。この場合、第2非透水性シート13は、つなぎ目部分を溶着することで、大面積を水密に覆うことができる材料で構成されていることが好ましい。
【0058】
高空隙率領域4の底面および側面のうち低空隙率領域2に接していない側面に、土木用透水シート15(透水性シート)が配置されてもよい。高空隙率領域4の底面および両側面に、土木用透水シート15が配置されてもよい。高空隙率領域4の底面および上面および両側面に、土木用透水シート15が配置されてもよい。高空隙率領域4の全体が土木用透水シート15で包まれていてもよい。土木用透水シート15は、低空隙率領域2の底面および改良地盤100の全周を覆ってもよい。土木用透水シート15により、地下から噴出する水の高空隙率領域4への流入を容易にしつつ、高空隙率領域4への土砂の侵入が低減される。
【0059】
透水性シートとしては、例えば、小泉製麻株式会社製の土木用透水シート(PK−100W、厚み:1mm)、タキロン株式会社製の擁壁用透水マット(KPY12−400、厚み:12mm)等を使用できる。
【0060】
[第1実施例]
図3は、第1実施例にかかる地盤改良補助構造体の作製キットを組み立てた場合における概略構成の一例を示す斜視図であって、
図3(a)は単位ユニットを示す図であり、
図3(b)は組み立てられた地盤改良補助部材の全体を示す図である。以下、
図3を参照しつつ、第1実施例にかかる地盤改良補助部材20および地盤改良補助構造体30について説明する。
【0061】
図3に示すように、第1実施例では、高空隙率領域4が、粗粒材5の充填された空間で形成される。粗粒材5は、周辺土壌よりも空隙率が高い材料とすることができる。粗粒材5としては、典型的には、砕石、生コン用骨材40洗い(40mmメッシュのふるいを通過した石を洗浄することで得られる、生コン用の骨材)等が用いられる。低空隙率領域2は、細粒材3の充填された空間で形成される。細粒材3は周辺土壌を利用しうる。
【0062】
図3に示すように、第1実施形態の地盤改良補助部材20は、板状部材32と、接続部材36とを備えている。板状部材32は、例えば、亜鉛めっきがされた鉄からなるレール状の軽天材を所望の長さに切断して溶接することにより構成されうる。複数の板状部材32は、平面視において低空隙率領域2に接すると共に低空隙率領域2の周囲を取り囲んでいる。該複数の板状部材32は、互いに取り外し可能に接続されている。「取り外し可能」とは、建設現場で組み立てることが可能であることを意味する(以下同様)。該複数の板状部材32のそれぞれは、透水性を有するように開口38を備える。
【0063】
板状部材32の接続方法は特に限定されないが、
図3に示す例では接続部材36により互いに接続されている。板状部材32は、互いに直接接続されていてもよいし、何らかの部材を介して間接的に接続されていてもよい。板状部材32は、平面形状であってもよいし、曲面形状であってもよい。開口38の形状は特に限定されない。開口38の最小幅は、例えば50mm以上とすることができる。
【0064】
図3に示すように、板状部材32と接続部材36とは、それぞれがなす平面が直交するように互いに連結される。すなわち、1個の板状部材32の一方の端部には、2個の接続部材36が連結される。また、1個の接続部材36の1個の帯状部39の両端に設けられた2個の連結部31には、それぞれ別個の板状部材32が連結される。
【0065】
図3(a)に示すように、4個の板状部材32と、2個の接続部材36とから単位ユニットが構成される。該単位ユニットを並べることで、細粒材収納部2と、粗粒材収納部4とが交互に並ぶように地盤改良補助部材が形成される。
【0066】
第1実施例の地盤改良補助部材20は、
図3(a)に示す構成を1ユニットとし、これを複数配置することで使用されうる。なお、上記ユニットに加えて、さらにユニットとは独立して、個々の接続部材36および板状部材32等が使用されてもよい。
【0067】
1個の板状部材32が、低空隙率領域2の壁と、高空隙率領域4の壁の両方として機能する。単位ユニットを並べただけでは不足する壁は、追加的に板状部材32および接続部材36を配置する。
図3(b)に例示した地盤改良補助部材は、6個の単位ユニットを格子状に並べ、外周上に10個の板状部材32と、12個の接続部材36とが追加されている。すなわち、
図3(b)に例示する地盤改良補助部材の製造キットは、34個の板状部材32と、24個の接続部材36とを含む。
【0068】
板状部材32は、全てが同一の大きさおよび形状を有していてもよいし、一部が異なる大きさおよび形状を有していてもよい。
【0069】
図3に例示されているように、地盤改良補助部材20において、低空隙率領域2は平面視において矩形であり、高空隙率領域4は平面視において帯状である。
図3に示す例において、低空隙率領域2は平面視において正方形である。「帯状」とは、
図3に示す例のように、平面視において所定の幅で延びつつ曲がっている形状を含む。「帯状」とは、必ずしも全ての部分において幅が同一であることが要求されるものではない。
【0070】
図3に示す例において、第1非透水性シート11は、板状部材32の低空隙率領域2側の面に設けられている。第1非透水性シート11は、板状部材32の高空隙率領域4側の間に設けられてもよい。第1非透水性シート11の一部は、板状部材32のいずれの面に取り付けられてもよい。
【0071】
図3に示す例において、地盤改良補助構造体30が備える低空隙率領域2は、長さAおよび深さD1の直方体を含む。
図3に示す例において、地盤改良補助構造体30が備える高空隙率領域4は、幅Bおよび深さD2の直方体を含む。
【0072】
ここで、B<Aであり、かつ、D1<Aであり、かつ、D2<Aである。すなわち平面視において、低空隙率領域2の一辺の長さは、高空隙率領域4の幅(短辺の長さ)よりも大きい。平面視において、高空隙率領域4の幅(短辺の長さ)が、低空隙率領域2のいずれの辺の長さよりも小さくてもよい。Aの取りうる範囲としては、例えば、1m≦A≦4mとしてもよい。Aの取りうる範囲としては、例えば、2m≦A≦3mとしてもよい。Bの取りうる範囲としては、例えば、0.3m≦B≦0.7mとしてもよい。Bの取りうる範囲としては、例えば、0.4m≦B≦0.6mとしてもよい。D1の取りうる範囲としては、例えば、0.2m≦D1≦1mとしてもよい。D1の取りうる範囲としては、例えば、0.3m≦D1≦0.8mとしてもよい。D2の取りうる範囲としては、例えば、0.2m≦D2≦1mとしてもよい。D2の取りうる範囲としては、例えば、0.3m≦D2≦0.8mとしてもよい。D1=D2=Dであってもよい。
【0073】
低空隙率領域2が平面視において長方形である場合において、Aでない辺の長さの取りうる範囲も、Aと同様とすることができる。高空隙率領域4は、幅Bの溝状の形状とすることができる。平面視における高空隙率領域4の形状は特に限定されない。高空隙率領域4は、低空隙率領域2の周囲を取り囲むように形成されうる。
【0074】
低空隙率領域2と高空隙率領域4とは、板状部材32によって仕切られている。低空隙率領域2と高空隙率領域4とを仕切る板状部材32は、地中に埋め込まれ、かつ、透水性を有するように開口38を備えている。低空隙率領域2と高空隙率領域4とを仕切る板状部材32は、その複数が、互いに取り外し可能に接続されている。
【0075】
図4は、第1実施例にかかる地盤改良補助部材の作製キットにつき、その概略構成の一例を示す平面図であって、
図4(a)は板状部材を示す図であり、
図4(b)は接続部材を示す図である。
【0076】
図4(a)に示す例において、板状部材32は、1対の主軸33と、複数の副軸35とを備える。板状部材32は、1対の主軸33と複数の副軸35との間隙が透水性の開口38をなす。主軸33は、細長形状を有し、互いに同じ長さAを有して互いに距離Dだけ離隔して互いに平行に延びる。Dは0.8m以下である。開口38は、1対の主軸33と1対の副軸35とがなす。開口38は、矩形形状を有する。
図4に示す例では、開口38は長方形である。
【0077】
副軸35は、主軸33の延びる方向と交差する方向に延びて1対の主軸33を連結する。それぞれの主軸33の両端には、接続部材36と連結するための穴37が形成されていてもよい。板状部材32は、例えば、亜鉛めっきがされた鉄からなるレール状の軽天材を所望の長さに切断して溶接することにより構成されうる。板状部材32は、平面視において高空隙率領域4を介して互いに対向するように配置されている。板状部材32は、略鉛直面をなすように配置されうる。
【0078】
図4(b)に示す例において、接続部材36は、4個の帯状部39と、8個の連結部31とを備える。4個の帯状部39は、平面視において1辺の長さがAより短いBである第1正方形をなす。連結部31は、第1正方形の頂点において頂点に隣接する2個の辺のそれぞれの延びる方向(帯状部39の延びる方向)に突出して板状部材32の主軸33と連結される。1個の帯状部39が、1対の板状部材32を接続する。接続部材36は、平面視において一辺の長さがBである正方形をなす。
【0079】
図4(b)に示す例において、接続部材36は、例えば、4個の帯状の金属部材(材料例:亜鉛めっきがされた鉄)それぞれの両端を直角に折り曲げ、端部を外側に向けて正方形を作り、該正方形のそれぞれの頂点につき、内側からL字金具41を取り付け、ボルトとナット等の締結金具40で締結することで形成されうる。連結部31には、それぞれ、板状部材32と連結するための穴(図示せず)が形成されていてもよい。接続部材36は、略水平面をなすように配置されうる。板状部材32と接続部材36とは取り外し可能に接続されている。接続部材36は、板状部材32と板状部材32とを取り外し可能に接続する。
【0080】
[第2実施例]
図5は、第2実施例にかかる地盤改良補助構造体の作製キットを組み立てた場合における概略構成の一例を示す斜視図である。以下、
図5を参照しつつ、第2実施例にかかる地盤改良補助構造体150およびその作製キットについて説明する。
【0081】
図に示すように、地盤改良補助構造体150ないしその作製キットは、地中埋め込み用の地盤改良補助部材110と、地盤改良補助部材110がなす直方体の上面同士または下面同士または側面同士を接続する接続パネル120、130、140とを備えている。
【0082】
より具体的には、地盤改良補助構造体150ないしその作製キットは、地中埋め込み用の地盤改良補助部材110と、地盤改良補助部材110がなす直方体の上面同士または下面同士を接続する上下面接続パネル120と、直線上に並んで隣接する地盤改良補助部材110がなす直方体の側面同士を接続する側面接続パネル130と、互いに一方の側面を接するように直角に配置された2個の地盤改良補助部材110それぞれがなす直方体の、互いに接していない側面同士を接続する角部接続パネル140とを備えていてもよい。
【0083】
それぞれの接続パネルには、複数のパネル貫通孔(貫通孔72、貫通孔82、貫通孔92[後述])が設けられており、前記パネル貫通孔を通じて接続パネル120、130、140の表面と裏面との間を水が通過可能に構成されている。
【0084】
図に示す例では、地盤改良補助部材110が格子をなすように配置される。格子点のそれぞれにおいて、上下面接続パネル120が、隣接する地盤改良補助部材110の上面同士または下面同士を互いに接続する。上下面接続パネル120に形成された爪74[後述]が、地盤改良補助部材110に形成された対応する接続貫通孔56[後述]または側面接続パネル130に形成された耳86[後述]の貫通孔または角部接続パネル140に形成された耳96[後述]の貫通孔に嵌合する。
【0085】
格子点のうち、角部をなさない点において、側面接続パネル130が、隣接する地盤改良補助部材110の側面同士を互いに接続する。側面接続パネル130に形成された爪84[後述]が、地盤改良補助部材110に形成された対応する接続貫通孔58[後述]に嵌合する。
【0086】
格子点のうち、角部をなす点において、角部接続パネル140が、隣接する地盤改良補助部材110の側面同士を互いに接続する。角部接続パネル140に形成された爪94[後述]が、地盤改良補助部材110に形成された対応する接続貫通孔58[後述]に嵌合する。
【0087】
かかる構成により、地盤改良補助構造体150では、地盤改良補助部材110に四方を取り囲まれた領域が低空隙率領域2をなす。地盤改良補助部材110の内部空間、および上下面接続パネル120と側面接続パネル130と角部接続パネル140とで囲まれた空間が、高空隙率領域4をなす。
【0088】
図6は、第2実施例にかかる地盤改良補助部材の概略構成の一例を示す斜視図である。
図7は、第2実施例にかかる地盤改良補助部材の概略構成の一例を示す図であって、
図7(a)は平面図、
図7(b)は側面図、
図7(c)は地盤改良補助部材の長手方向に垂直な平面で切った断面図、
図7(d)は地盤改良補助部材の長手方向に垂直な平面で切った運搬時の断面図である。以下、
図6および
図7を参照しつつ、第2実施例にかかる地盤改良補助部材110(ラダー)について説明する。
【0089】
地盤改良補助部材110は、地中埋め込み用の地盤改良補助部材である。地盤改良補助部材110は、樹脂で構成されている。地盤改良補助部材110は、全部が樹脂で構成されていてもよいし、一部が樹脂で構成されていてもよい。樹脂としては、地中に埋めても長期(十年〜数十年)に亘って強度を保持できるものが好ましい。樹脂としては、例えば、AES樹脂、ASA樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、ABS樹脂、FRP樹脂、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、アクリル等とすることができる。
【0090】
図に例示されているように、地盤改良補助部材110は、水平方向に延びる直方体をなす。直方体の少なくとも下面に複数の貫通孔52が設けられる。貫通孔52により、直方体の外部から内部へと水が流入可能となっている。直方体の下面に設けられる貫通孔52の数は、1個の地盤改良補助部材110あたり100個以上であってもよい。「水平方向に延びる」とは、直方体の最も長い辺が水平方向に沿って配列することを言う。直方体は、立方体および隣接する2辺の長さが等しい直方体を含む。
【0091】
直方体の上面および側面の少なくともいずれか一方にも、複数の貫通孔52が設けられてもよい。直方体の上面および側面に、複数の貫通孔52が設けられてもよい。かかる構成では、貫通孔52により、直方体の内部から外部へと水が流出可能となっている。また、上面ないし側面に貫通孔52が形成されることで、地盤改良補助部材110を軽量化できる。直方体の上面および側面に設けられる貫通孔52の数は、100個以上であってもよい。図に示す例では、直方体の下面と上面と側面とにおいて、複数の貫通孔52が設けられている。
【0092】
貫通孔52の開口部は、例えば、一辺が10mm以上30mm以下の正方形であってもよいし、直径が10mm以上30mm以下の円形であってもよい。貫通孔52の開口部は、例えば、一辺が20mmの正方形とすることができる。貫通孔52の開口部の面積は、100mm
2以上900mm
2以下であってもよい。貫通孔52の開口部の面積は、200mm
2以上700mm
2以下であってもよい。貫通孔52の開口部の形状は特に限定されない。貫通孔52の開口部の形状は、全て同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0093】
直方体の幅wは400mm以上800mm以下であってもよい。直方体の幅wは500mm以上700mm以下であってもよい。直方体の幅wは、例えば、600mmとすることができる。w=Bとしうる(
図2)。
【0094】
直方体の高さhは400mm以上800mm以下であってもよい。直方体の高さhは500mm以上700mm以下であってもよい。直方体の高さhは、例えば、600mmとすることができる。h=Dとしうる(
図2)。
【0095】
直方体の長さlは1000mm以上4000mm以下であってもよい。直方体の長さlは1500mm以上3000mm以下であってもよい。直方体の長さlは1800mm以上2400mm以下であってもよい。直方体の長さlは、例えば、2000mmとすることができる。l=Aとしうる(
図2)。
【0096】
図に示す例では、地盤改良補助部材110は、上下中央部を通る水平面で上部材112と下部材114とに分割されている。水平面で上部材112と下部材114とに分割されることにより、
図2(d)のように互いにずらして重ね合わせることが可能となり、運搬時の容積を低減できる。
【0097】
図に示す例では、上部材112と下部材114とは、互いに嵌合するように、それぞれ凸部62および凹部64を備えている。凸部62は直方体の長手方向に沿って走る稜線(畝)をなす。凹部64は直方体の長手方向に沿って走る溝をなす。凸部62と凹部64とが嵌まり合うことにより、上部材112と下部材114とを組み立てた際に高い剛性が得られる。図に示す例のように、上部材112および下部材114のそれぞれにつき、左右の端部の一方を凸部62とし、他方を凹部64とすることで、上部材112と下部材114とが同一の形状をなしてもよい。
【0098】
図に示す例では、直方体の上面と下面と側面とにおいて、直方体の長手方向に垂直な面をなすように、切断用の溝54が複数形成されている。例えば、直方体の壁の厚みが20mmの場合、溝の深さは10mmとし、溝の幅は5mmとすることができる。溝54は、それぞれ、直方体の長手方向に垂直な面をなすように、直方体を周回する。溝54の間隔は、100mmピッチとすることができる。具体的には例えば、地盤改良補助部材110の長さを2000mmとする場合、ピッチを100mmとすれば、1個の地盤改良補助部材110につき、溝54の数は19本となる。溝54に沿って地盤改良補助部材110を切断することで、地盤改良補助部材110の長さをピッチ単位で容易に調整できる。
【0099】
図に示す例では、地盤改良補助部材110の上面および下面において、地盤改良補助部材110の両端部、および、それぞれの溝54の両側に、上下面接続パネル120(後述)の爪74が嵌合する接続貫通孔56が、左右および中央に計3個ずつ形成されている。なお、接続貫通孔56の数は他の数であってもよい。溝54の両側に接続貫通孔56が形成されていることで、どの溝54で切り離しても、地盤改良補助部材110と上下面接続パネル120とを容易に接続することが可能となる。
【0100】
図に示す例では、地盤改良補助部材110の両側面において、地盤改良補助部材110の両端部、および、それぞれの溝54の両側に、側面接続パネル130(後述)または角部接続パネル140(後述)の爪84または爪94が嵌合する接続貫通孔58が、上部材112と下部材114とのそれぞれにつき、各側面に上下2個ずつ形成されている。なお、接続貫通孔58の数は他の数であってもよい。溝54の両側に接続貫通孔58が形成されていることで、どの溝54で切り離しても、地盤改良補助部材110と側面接続パネル130または角部接続パネル140とを容易に接続することが可能となる。
【0101】
図に示す例では、地盤改良補助部材110の内部(直方体の内部)に、内壁から内側へと延びる補強板51(フィラー)が形成されている。補強板51はそれぞれ、直方体の長手方向に垂直な面をなす。補強板51はそれぞれ、直方体の長手方向から見てL字状をなし、直方体のそれぞれの角にL字の角が一致するように設けられている。補強板51の厚みは、10mm以上30mm以下であってもよい。補強板51の厚みは、例えば、20mmとすることができる。
【0102】
図に示す例では、地盤改良補助部材110の長手方向の端面が開放されている。かかる構成では、該端面を通じて隣接する空間へと水が容易に流出可能となり、噴出水の保持力が向上される。
【0103】
図8は、第2実施例にかかる上下面接続パネルの一例を示す図であって、
図8(a)は斜視図(裏側)、
図8(b)は平面図(表側)、
図8(c)は
図8(b)の8c−8c’線に沿って切った断面図である。以下、
図8を参照しつつ、第2実施例にかかる上下面接続パネル120について説明する。
【0104】
上下面接続パネル120は、地盤改良補助部材110がなす直方体の上面同士または下面同士を接続する。上下面接続パネル120は、樹脂で構成されている。上下面接続パネル120は、全部が樹脂で構成されていてもよいし、一部が樹脂で構成されていてもよい。樹脂については、地盤改良補助部材110と同様のものとすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0105】
図に示す例では、上下面接続パネル120は、平面視において正方形をなす。上下面接続パネル120の主面には、複数の貫通孔72(パネル貫通孔)が形成されている。貫通孔72により、上下面接続パネル120を貫いて水が移動可能となっている。上下面接続パネル120に設けられる貫通孔72の数は、1個の上下面接続パネル120あたり100個以上であってもよい。
【0106】
貫通孔72の開口部は、例えば、一辺が10mm以上30mm以下の正方形であってもよいし、直径が10mm以上30mm以下の円形であってもよい。貫通孔72の開口部は、例えば、一辺が20mmの正方形とすることができる。貫通孔72の開口部の面積は、100mm
2以上900mm
2以下であってもよい。貫通孔72の開口部の面積は、200mm
2以上700mm
2以下であってもよい。貫通孔72の開口部の形状は特に限定されない。貫通孔72の開口部の形状は、全て同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0107】
上下面接続パネル120がなす正方形の幅は、直方体の幅と等しいか、直方体の幅よりも10mm〜30mm大きいことが好ましい。該正方形の幅は、400mm以上800mm以下であってもよい。該正方形の幅は500mm以上700mm以下であってもよい。該正方形の幅は、例えば、620mmとすることができる。
【0108】
図に示す例では、正方形の各辺の両端および中央部に3個ずつ爪74が設けられている。なお、爪74の数は他の数であってもよい。爪74の数は接続貫通孔56の数および/または耳86および/または耳96の数と対応していてもよい。
【0109】
図に示す例では、上下面接続パネル120の内側(爪74が伸びる側)に、格子状の補強板71(フィラー)が形成されている。補強板71はそれぞれ、上下面接続パネル120の主面と垂直な面をなす。補強板71の厚みは、10mm以上30mm以下であってもよい。補強板71の厚みは、例えば、20mmとすることができる。
【0110】
図9は、第2実施例にかかる側面接続パネルの一例を示す図であって、
図9(a)は斜視図(裏側)、
図9(b)は平面図(表側)、
図9(c)は
図9(b)の9c−9c’線に沿って切った断面図である。以下、
図9を参照しつつ、第1実施形態にかかる側面接続パネル130について説明する。
【0111】
側面接続パネル130は、直線上に並んで隣接する地盤改良補助部材110がなす直方体の側面同士を接続する。側面接続パネル130は、樹脂で構成されている。側面接続パネル130は、全部が樹脂で構成されていてもよいし、一部が樹脂で構成されていてもよい。樹脂については、地盤改良補助部材110と同様のものとすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0112】
図に示す例では、側面接続パネル130は、平面視において正方形をなす。側面接続パネル130の主面には、複数の貫通孔82(パネル貫通孔)が形成されている。貫通孔82により、側面接続パネル130を貫いて水が移動可能となっている。側面接続パネル130に設けられる貫通孔82の数は、1個の側面接続パネル130あたり100個以上であってもよい。
【0113】
貫通孔82の開口部は、例えば、一辺が10mm以上30mm以下の正方形であってもよいし、直径が10mm以上30mm以下の円形であってもよい。貫通孔82の開口部は、例えば、一辺が20mmの正方形とすることができる。貫通孔82の開口部の面積は、100mm
2以上900mm
2以下であってもよい。貫通孔82の開口部の面積は、200mm
2以上700mm
2以下であってもよい。貫通孔82の開口部の形状は特に限定されない。貫通孔82の開口部の形状は、全て同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0114】
側面接続パネル130がなす正方形の幅は、直方体の高さと等しいことが好ましい。該正方形の幅は、400mm以上800mm以下であってもよい。該正方形の幅は500mm以上700mm以下であってもよい。該正方形の幅は、例えば、600mmとすることができる。
【0115】
図に示す例では、正方形の対向する2辺の両端に1個ずつおよび中央部に2個、爪84が設けられている。なお、爪84の数は他の数であってもよい。爪84の数は接続貫通孔58の数と対応していてもよい。
【0116】
図に示す例では、正方形の対向する2辺であって爪84が設けられていない2辺の両端および中央部に3個ずつ貫通孔の形成された耳86が設けられている。なお、耳86の数は他の数であってもよい。耳86の数は爪74の数と対応していてもよい。爪84が伸びる方向と耳86が伸びる方向とは同一である。
【0117】
図に示す例では、側面接続パネル130の裏側(爪84および耳86が伸びる側)に、上下方向に伸びる補強板81(フィラー)が形成されている。補強板81はそれぞれ、側面接続パネル130の主面と垂直な面をなす。補強板81の厚みは、10mm以上30mm以下であってもよい。補強板81の厚みは、例えば、20mmとすることができる。
【0118】
図10は、第2実施例にかかる角部接続パネルの一例を示す図であって、
図10(a)は斜視図、
図10(b)は平面図、
図10(c)は
図10(b)の10c−10c’線に沿って切った断面図である。以下、
図10を参照しつつ、第2実施例にかかる角部接続パネル140について説明する。
【0119】
角部接続パネル140は、互いに一方の側面を接するように直角に配置された2個の地盤改良補助部材110それぞれがなす直方体の、互いに接していない側面同士を接続する。角部接続パネル140は、樹脂で構成されている。角部接続パネル140は、全部が樹脂で構成されていてもよいし、一部が樹脂で構成されていてもよい。樹脂については、地盤改良補助部材110と同様のものとすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0120】
図に示す例では、角部接続パネル140は、2枚の正方形状の板が直角に接続された形状をなす。角部接続パネル140の2枚の主面それぞれには、複数の貫通孔92(パネル貫通孔)が形成されている。貫通孔92により、角部接続パネル140の各主面を貫いて水が移動可能となっている。角部接続パネル140に設けられる貫通孔92の数は、1個の角部接続パネル140あたり100個以上であってもよい。
【0121】
貫通孔92の開口部は、例えば、一辺が10mm以上30mm以下の正方形であってもよいし、直径が10mm以上30mm以下の円形であってもよい。貫通孔92の開口部は、例えば、一辺が20mmの正方形とすることができる。貫通孔92の開口部の面積は、100mm
2以上900mm
2以下であってもよい。貫通孔92の開口部の面積は、200mm
2以上700mm
2以下であってもよい。貫通孔92の開口部の形状は特に限定されない。貫通孔92の開口部の形状は、全て同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0122】
角部接続パネル140の各主面がなす正方形の幅は、直方体の高さと等しいことが好ましい。該正方形の幅は、400mm以上800mm以下であってもよい。該正方形の幅は500mm以上700mm以下であってもよい。該正方形の幅は、例えば、600mmとすることができる。
【0123】
図に示す例では、正方形の辺のうちの1つは、2枚の主面が接続された角部を形成する。該角部を形成する辺に対向する2辺の両端に1個ずつおよび中央部に2個爪94が設けられている。なお、爪94の数は他の数であってもよい。爪94の数は接続貫通孔58の数と対応していてもよい。
【0124】
図に示す例では、正方形の対向する2辺であって爪94が設けられていない2辺の両端および中央部に3個ずつ貫通孔の形成された耳96が設けられている。なお、耳96の数は他の数であってもよい。耳96の数は爪74の数と対応していてもよい。角部接続パネル140の各主面において、爪94が伸びる方向と耳96が伸びる方向とは同一である。
【0125】
図に示す例では、角部接続パネル140の裏側(爪94および耳96が伸びる側)に、上下方向に伸びる補強板91(フィラー)が形成されている。補強板91はそれぞれ、角部接続パネル140の主面と垂直な面をなす。補強板91の厚みは、10mm以上30mm以下であってもよい。補強板91の厚みは、例えば、20mmとすることができる。
【0126】
図11は、第1実施形態にかかる地盤改良補助部材と接続パネルとの接続部を示す拡大断面図である。
図11は、爪74が、接続貫通孔56に挿入された状態を例示する。爪74にはカエシが形成されており、爪74を接続貫通孔56に完全に挿入することで該カエシが接続貫通孔56の開口に係合する。かかる構成により、いったん嵌合させた爪74と接続貫通孔56とが容易には外れなくなる。
【0127】
上記の例において、地盤改良補助部材の接続を、接続パネルにより行うこととしていたが、他の方法で接続が行われてもよい。地盤改良補助部材同士が直接接続されてもよいし、地盤改良補助部材と地盤改良補助部材とを接続する何らかの接続具が用いられてもよい。
【0128】
上記の例において、地盤改良補助部材と接続パネルとの接続につき、爪を接続貫通孔に挿入して嵌合させることで行うこととしていたが、他の方法で接続が行われてもよい。具体的には例えば、ボルトとナットのような接続具が用いられてもよいし、溶接、接着等により接続が行われてもよい。
【0129】
第2実施例にかかる地盤改良補助部材および接続パネルの埋設深度は特に限定されない。第1実施形態にかかる地盤改良補助部材および接続パネルが設置される土地の地下水位についても特に限定されない。実用新案登録第3196933号および特願2015−077680の地盤改良補助部材と同様の用途にも使用可能である。
【0130】
[第3実施例]
第3実施例にかかる改良地盤は、一例として
図1に示すように、25個の低空隙率領域2を備える。低空隙率領域2は平面視において大きさがA×Aの正方形である。高空隙率領域4は、それぞれの低空隙率領域2の間を埋めるように、かつ、低空隙率領域2の外側部分の外周を取り囲むように形成される。
【0131】
図12は、第3実施例にかかる改良地盤の概略構成を示す部分断面図である。
【0132】
図12に示すように、本実施例の地盤改良補助部材およびこれを用いて形成された地盤改良補助構造体において、低空隙率領域2および高空隙率領域4の深さ(高さ)はいずれも等しく、Dである。また、地下水位dwは1300mmであり、低空隙率領域2および高空隙率領域4の最も深い部分の地面からの深さd2は1200mmであり、低空隙率領域2および高空隙率領域4の最も浅い部分の地面からの深さd2は600mmである。本実施例においては、A=2000mm、B=600mm、D=600mmである。
【0133】
本実施例の改良地盤では、第1実施例または第2実施例にかかる地盤改良補助構造体を用いて、低空隙率領域2および高空隙率領域4が形成されている。低空隙率領域2および高空隙率領域4の下方は、十分に転圧されていることが好ましい。
【0134】
地盤改良補助構造体の最も外側の壁、すなわち、周辺土壌48と接触する部分(外周部)には、周辺土壌48に接するように押えラス(図示せず)が配置され、さらにその内側(低空隙率領域2側)に分離シートとしての土木用透水シート15が配置される。土木用透水シート15は、高空隙率領域4の下方と上方と低空隙率領域2側の側面とにも配置される。かかる構成により、周辺土壌48が高空隙率領域4に侵入することが抑制される。高空隙率領域4の外側に土木用透水シート15および押えラスを配置した後、土壌を埋め戻すことで、高空隙率領域4の外周が土壌で覆われることになる。地下から噴出して高空隙率領域4に侵入した水は、押えラスと土木用透水シート15とを通って、高空隙率領域4から周辺土壌48へと排出される。
【0135】
地盤改良補助構造体のうち、低空隙率領域2には、側面(低空隙率領域2の内側面)および底面(十分に転圧された面)に第1非透水性シート11としてのブルーシートが設置される。その後、地盤改良補助部材を設置するために掘り返された土壌が土嚢に充填された上で配置されてもよい。土嚢に充填せずに、土壌をそのまま低空隙率領域2に埋め戻してもよい。かかる態様では、土を土嚢に充填する手間が省略でき、工事費用がさらに軽減される。低空隙率領域2は、地盤改良補助構造体の壁により高空隙率領域4と仕切られており、地盤改良補助構造体が土壌を所望の形状に充填するためのガイドとして機能する。
【0136】
第1実施例の地盤改良補助構造体を用いる場合等には、地盤改良補助部材のうち、高空隙率領域4(グラベルトレンチ)にグラベルが充填される。本実施例では、グラベルとして生コン用骨材であって、40メッシュで水洗いしたものが用いられうる。高空隙率領域4は、板状部材により低空隙率領域2と仕切られており、板状部材がグラベルを所望の形状に充填するためのガイドとして機能する。
【0137】
低空隙率領域2および高空隙率領域4の上方には、低空隙率領域2および高空隙率領域4と接するように、第2非透水性シート13としての高密度ポリエチレンシート(シーアイ化成株式会社製:ビノン(登録商標)土木シート)が配置される。第2非透水性シート13は、幅2030mmの単位シートの両側を60mm重ね合わせた後、二重溶着工法(圧着するローラーで自走する構造を有する溶着機を用いて接合する)ないし表面溶着工法(遮水シートと同質の溶接棒を小型の押出機で溶融押出し、遮水シートと一体化結合する)により水密に接合される。第2非透水性シート13は、宅地全体を覆うように、平面視において地盤改良補助構造体の外周からはみ出すように、配置される。
【0138】
地盤改良補助構造体の外側(例えば、道路面の下方)には、格子状地中壁(国土交通省都市局・国土技術政策総合研究所編『液状化被災市街地における格子状地中壁工法の検討・調査について(ガイダンス(案))』平成25年4月)が形成されていてもよい。
【0139】
第2非透水性シート13の上に、汚水管(幹汚水管45および枝汚水管43)および盛土47を形成する。汚水管の最深部の深さは地下約500mmである。よって、低空隙率領域2および高空隙率領域4の最上面の深さを地下600mmとすることで、余裕をもって汚水管を設置できる。なお、盛土47の上方には、常法により住宅基礎および住宅本体の施工が行われうる。
【0140】
本実施例では、例えば、(1)建築予定地およびその周囲の土壌の掘り出し、(2)転圧、(3)透水シートの配置、(4)地盤改良補助構造体の組み立てと配置、(5)押えラスの配置、(6)低空隙率領域2の底面および側面へのブルーシートの配置、(7)押さえラスの外側の空間への土壌の埋め戻し、(8)低空隙率領域2への土の埋め戻し、(9)高空隙率領域4へのグラベルの充填(第1実施例の地盤改良補助構造体を用いる場合等)、(10)第2非透水性シートの設置、(11)汚水管43、45の配置、(12)盛土47の形成、の順で工事を進めることができる。
【0141】
[液状化発生時のシミュレーション]
第3実施例において、液状化が発生するような振動が地盤改良補助構造体の形成された土地に加えられた場合における、地盤改良補助構造体の持つ液状化軽減効果についてシミュレーションを行った。
【0142】
容器は、容量1.9リットルのバケツを風袋引きして用いた。
【0143】
容器に砂を充填したときの重量は2.83kg、密度は1.49となった。
【0144】
容器に砂を充填して水を一杯に入れたときの重量は3.65kg、密度は1.92となった。
【0145】
容器にグラベルを充填したときの重量は2.70kg、密度は1.42となった。
【0146】
容器にグラベルを充填して水を一杯に入れたときの重量は3.7kg、密度は1.95となった。
【0147】
以上の実験結果に基づき、周辺土壌48が砂であるとして、以下のようなシミュレーション結果が得られた。なお、計算は2.6m×2.6mの単位正方形を基準として行った。
【0148】
地盤改良補助構造体の面積:2.6m×2.6m=6.76m
2
地盤改良補助構造体の体積:6.76m
2×0.6m=4.056m
3
液状化した場合には、砂の間隙全部に水が充満している状態になる。よって、
液状化水量:4.056m
3×(1.92−1.49)=1.744m
3
高空隙率領域4の面積:6.76m
2−4m
2=2.76m
3
高空隙率領域4の体積:2.76m
3×0.6m=1.656m
3
粗粒材収納部に収容できる水の容積:1.656m
3×(1.95−1.42)=0.878m
3
仮に高空隙率領域4が存在せず、液状化が発生した場合には、砂の間隙全部に水が充満し、1.744m
3の水が地中にあることになる。一方、本実施例では水の充満した砂に代わり、高空隙率領域4が形成されている。この高空隙率領域4からは間隙水が発生せず、かつ、0.878m
3の水を収容できる。0.878m
3/1.744m
3=0.503・・・となるから、50%以上の間隙水を高空隙率領域4に収容できる。以上により、液状化現象が軽減されることが分かる。さらに、高空隙率領域4は島状に分布する低空隙率領域2を取り囲むように網目状に広がっている。地下から噴出した水は迅速に高空隙率領域4を通じて造成地全体(改良地盤全体)に拡散できる。よって、液状化によるめり込み沈下(不同沈下)の発生を低減できる。
【0149】
なお、第2実施例の地盤改良補助構造体を用いる場合でも、高空隙率領域4の空隙率がグラベルの空隙率に等しいと仮定すれば、同様の効果が得られる。材料の選定や設計上の工夫などにより、高空隙率領域4の空隙率をグラベルの空隙率よりも高くすれば、上記効果はさらに高まる。具体的には例えば、第2実施例の地盤改良補助構造体の壁の厚みを20mmとすれば、地盤改良補助構造体内部の空間の容積は(0.60+2.00+2.00)×0.56×0.56=1.442m
2となる(貫通孔の容積と補強板の容積がほぼ等しく、互いに相殺されると仮定)。よって、高空隙率領域4に収容できる間隙水は、1.442m
2/1.744m
3=0.826より、80%以上と計算される。この場合、液状化によるめり込み沈下(不同沈下)の発生を低減する効果は、グラベルを用いる場合よりも更に高くなる。
【0150】
[実施例の効果]
地盤改良補助部材は分解して運搬でき、建設現場で組み立てることが可能である。よって、運搬コストが軽減される。第1実施例の地盤改良補助構造体を用いる場合、板状部材および接続部材は、汎用品である軽天材や帯状の金属材料で簡単に製造できる。よって、製造コストも軽減される。さらに、掘り出した土砂は、細粒材収納部へ埋め戻すことが可能である。よって、土砂の処分コストも軽減される。また、掘削深度が1.3m以下と比較的浅いため、工事コストも軽減される。また、地震発生時に地下から水が噴出しても、噴出水は粗粒材収納部を通じて造成地全体(改良地盤全体)に拡散し、特定の箇所に集中しにくい。よって、建物のめり込み沈下量を低減できる。
【0151】
[他の発明]
他の発明にかかる地盤改良補助部材は、樹脂で構成され、水平方向に延びる直方体をなし、直方体の少なくとも下面に複数の貫通孔が設けられることで、直方体の外部から内部へと水が流入可能に構成されている、地中埋め込み用の地盤改良補助部材である。
【0152】
上記地盤改良補助部材において、直方体の上面および側面の少なくともいずれか一方に複数の貫通孔が設けられることで、直方体の内部から外部へと水が流出可能に構成されていてもよい。
【0153】
上記地盤改良補助部材において、直方体の上面および側面に複数の貫通孔が設けられることで、直方体の内部から外部へと水が流出可能に構成されていてもよい。
【0154】
上記地盤改良補助部材において、直方体の、幅が400mm以上800mm以下、高さが400mm以上800mm以下、長さが1000mm以上4000mm以下であってもよい。
【0155】
上記地盤改良補助部材において、上下中央部を通る水平面で上部材と下部材とに分割され、上部材と下部材とが、互いに嵌合するように、それぞれ凸部および凹部を備えていてもよい。
【0156】
上記地盤改良補助部材において、直方体の上面と下面と側面とにおいて、直方体の長手方向に垂直な面をなすように、切断用の溝が複数形成されていてもよい。
【0157】
他の発明にかかる地盤改良補助構造体は、上記いずれかの地中埋め込み用の地盤改良補助部材と、直方体の上面同士または下面同士または側面同士を接続する接続パネルとを備える、地中埋め込み用の地盤改良補助構造体である。
【0158】
上記地盤改良補助構造体において、接続パネルの少なくとも一部は、複数のパネル貫通孔が設けられており、パネル貫通孔を通じて構造体の外部と内部との間を水が移動可能に構成されていてもよい。
【0159】
他の発明にかかる地盤改良補助構造体の作製キットは、上記いずれかの地中埋め込み用の地盤改良補助部材と、直方体の上面同士または下面同士または側面同士を接続する接続パネルとを備える、地中埋め込み用の地盤改良補助構造体の作製キットである。
【0160】
上記地盤改良補助構造体の作製キットにおいて、接続パネルの少なくとも一部は、複数のパネル貫通孔が設けられており、パネル貫通孔を通じて接続パネルの表面と裏面との間を水が通過可能に構成されていてもよい。
【0161】
他の発明にかかる改良地盤は、地下水位が1300mm以深の土地において、上方から見て島状に形成され、かつ、底面および側面を第1非透水性シートで覆われた、複数の低空隙率領域と、上方から見て低空隙率領域を取り囲むように網状をなし、かつ、低空隙率領域よりも空隙率の高い、上記いずれかに記載の地中埋め込み用の地盤改良補助部材を用いて形成された高空隙率領域と、複数の低空隙率領域と高空隙率領域との上に、複数の低空隙率領域と高空隙率領域とを水密に覆うように配置された第2非透水性シートとを備え、低空隙率領域の最上部および高空隙率領域の最上部の地面からの深さが500mmより深く、低空隙率領域の最下部および高空隙率領域の最下部の地面からの深さが1300mmより浅く、かつ、第1非透水性シートと第2非透水性シートとの間を水が通過可能に構成されている。
【0162】
上記改良地盤は、高空隙率領域の外側が透水性シートで覆われていてもよい。
【0163】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/又は機能の詳細を実質的に変更できる。