特許第6235020号(P6235020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235020
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】老化細胞における物質の放出
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/26 20060101AFI20171113BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20171113BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171113BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20171113BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20171113BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20171113BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20171113BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20171113BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A61K47/26
   A61K9/51
   A61K47/04
   A61P43/00 111
   A61P3/10
   A61P7/06
   A61P11/00
   A61P17/00
   A61P19/08
   A61K45/00
   A61K8/02
   A61K8/25
   A61Q19/00
【請求項の数】26
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-530464(P2015-530464)
(86)(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公表番号】特表2015-529216(P2015-529216A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】ES2013070581
(87)【国際公開番号】WO2014037596
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年6月21日
(31)【優先権主張番号】P201231370
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】515060953
【氏名又は名称】ウニヴェルシダ ポリテクニカ デ バレンシア (ウプブ)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDAD POLITECNICA DE VALENCIA (UPV)
(73)【特許権者】
【識別番号】306001703
【氏名又は名称】コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス
(73)【特許権者】
【識別番号】515060964
【氏名又は名称】セントロ デ インベスティガシオン ビオメディカ エン レド (クイビエル)
【氏名又は名称原語表記】CENTRO DE INVESYIGACION BIOMEDICA EN RED (CIBER)
(73)【特許権者】
【識別番号】507111151
【氏名又は名称】ユニバーシダッド オウトノマ デ マドリード
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルチネス マネス,ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ムルグイア イバネス,ヨセ ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ペロナ アベロン,ロサリオ
(72)【発明者】
【氏名】アゴスティニ アレサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】モンドラゴン マルティネス,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】モレノ トレス,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】マングアン ガルシア,クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】マルコス マルティネス,マリア ドロレス
(72)【発明者】
【氏名】ソト カミノ,フアン
(72)【発明者】
【氏名】サンセノン ガラルサ,フェレクス
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−133987(JP,A)
【文献】 ACS NANO,2010年,4(11),p.6353-6368
【文献】 Raghuramreddy Adidala et al.,An improved synthesis of lysosomal activated mustard prodrug for tumor-specific activation and its cytotoxic evaluation,Drug Development and Industrial Pharmacy,2011年12月20日,[Online],[retrieved on 14 February 2017],URL,http://www.tandfonline.com/doi/full/10.3109/03639045.2011.637932
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−9/72,
A61K 31/00−31/80,
A61K 47/00−47/69,
A61K49/00−49/22,
A61P1/00−A61Q90/00
JSTPlus (JDreamIII),
JMEDPlus(JDreamIII),
JST7580 (JDreamIII),
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴ糖でコーティングされた支持体を含む物質の制御放出のためのナノデバイスであって、
前記オリゴ糖が少なくとも3単位の単糖類を含み、該単糖類の全てがガラクトースであることを特徴とするナノデバイス。
【請求項2】
前記オリゴ糖が3〜10単位の前記単糖類を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノデバイス。
【請求項3】
前記オリゴ糖が3〜6単位の単糖類を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のナノデバイス。
【請求項4】
前記ナノデバイスは、10nm〜250nmの直径を有していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のナノデバイス。
【請求項5】
前記支持体がメソ多孔性支持体であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のナノデバイス。
【請求項6】
前記支持体の孔直径が0.5nm〜10nmであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のナノデバイス。
【請求項7】
前記ナノデバイスは、放出される物質をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のナノデバイス。
【請求項8】
前記放出される物質が、インジケーター、テロメラーゼ再活性化のための化合物、細胞傷害性化合物、及びこれらの任意の組合せを含むリストから選択されることを特徴とする請求項に記載のナノデバイス。
【請求項9】
前記放出される物質が、ペプチドGSE24−2、ペプチドTAT2、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カンプトテシン、エトポシド、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、シトシン、アラビノシド、6−メルカプトプリン、タクサン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アドリアマイシン・メトトレキサート、ペメトレキセド、及びこれらの任意の組合せを含むリストから選択されることを特徴とする請求項又はに記載のナノデバイス。
【請求項10】
前記放出される物質の割合が、支持体1gにつき0.01〜0.50gであることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載のナノデバイス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のナノデバイスを取得する方法であって、
a)シラン基でオリゴ糖を官能性付与する段階と、
b)放出される物質の溶液に前記支持体を懸濁する段階と、
c)前記懸濁液に、前記段階(a)で官能性付与されたオリゴ糖を過剰に加える段階と、を備えることを特徴とするナノデバイスの取得方法。
【請求項12】
前記段階(b)が1〜48時間撹拌されることを特徴とする請求項11に記載のナノデバイスの取得方法。
【請求項13】
前記段階(b)が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、及びアセトニトリルを含むリストから選択される溶剤中で実施されることを特徴とする請求項11又は12に記載のナノデバイスの取得方法。
【請求項14】
前記官能性付与されたオリゴ糖の支持体に対する割合は質量で1〜5倍であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載のナノデバイスの取得方法。
【請求項15】
前記段階(c)が0.5〜20時間撹拌されることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載のナノデバイスの取得方法。
【請求項16】
組成物であって請求項1乃至10のいずれか1項に記載のナノデバイスを含むことを特徴とする組成物。
【請求項17】
前記組成物が医薬品であることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液、坐薬またはシロップの形態であることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が化粧品であることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、クリーム、ローション、ゲルまたは粉末の形態であることを特徴とする請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のナノデバイスの使用であって、薬物製造のための使用であることを特徴とするナノデバイスの使用。
【請求項23】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のナノデバイスの使用であって、
β−ガラクトシダーゼの過剰発現とともに起こる疾病の治療及び/又は予防のための薬物の製造のための使用であることを特徴とするナノデバイスの使用。
【請求項24】
前記β−ガラクトシダーゼの過剰発現が老化細胞において起こることを特徴とする請求項23に記載のナノデバイスの使用。
【請求項25】
前記疾病が、新生児早老症のウィーデマン−ラウテンストラウシュ症候群、成人早老症のウェルナー症候群、ハッチンソン−ギルフォード症候群、ロートムント・トムソン症候群、マルヴィル−スミス症候群、コケイン症候群、先天性角化異常症、特発性肺線維症、再性不良性貧血、肺気腫、2型糖尿病、軟骨変性を含むリストから選択されることを特徴とする請求項23又は24に記載のナノデバイスの使用。
【請求項26】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のナノデバイスの使用であって、
化粧品組成物の製造のための使用であることを特徴とするナノデバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、バイオ医薬品及び化粧品の制御放出のためのナノデバイスに関する。したがって、本発明は、医薬品産業を及び化粧品産業の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
正常な体細胞は有限回の分裂を行った後に、必ず不可逆的に細胞老化と称される成長停止と機能変化の状態に入る。老化細胞(celulas senescentes)は、組織の機能を害し、疾病の発生と進行の素因となると考えられている根本的に変化した表現型を示す。免疫系は多くの老化細胞を破壊するが、加齢とともにこの働きの効果は低下する。結果として、老化細胞又は「死滅抵抗性(resistentes a la muerte)」細胞が組織に蓄積し、老化(envejecimiento)と疾病の発生を促進する。さらに、老化細胞の蓄積は、周辺の細胞の挙動を変化させ、細胞外マトリックスの分解を誘発し、有糸分裂できる細胞源を減少させ、がんの成長を刺激する。
【0003】
細胞の老化促進に関連した多数の病態、例えば、成人早老症のウェルナー症候群(WS:sindrome Werner de progeria adulta)、ハッチンソン−ギルフォード症候群(HGS:sindrome Hutchinson−Gilford)、ロートムント・トムソン症候群(RTS:sindrome Rothmund Thompson)などがある。WSやRTSにおいては、テロメラーゼが疾病の主原因ではないとしても、ほとんどの組織でテロメアの損傷を観察することができる。他の疾病は、先天性角化異常症(DC:Diskeratosis Congenita)や特発性肺線維症(IPF:Fibrosis pulmonar idiopatica)のように、特定の組織における老化の促進に関連することが多くなる。こうした状態で、皮膚、肺上皮、骨髄のような高度な細胞再生を伴う組織の幹細胞コンパートメントにおいて、テロメラーゼの活性欠損により、細胞の複製能力が損傷される。これらの疾病においてしばしば生じる二次的な影響はがんの誘発であり、特にテロメアの短縮化を示唆するようながんの誘発である。この問題に対処するためには、細胞の老化を防ぎ、老化細胞を置き換えたり除去したりするための戦略を持つことが基本的に必要である。特に、こうした治療法をデザインすることは、細胞の老化促進の治療に貢献するであろうし、若返りは可能であるという考えを刺激することができる。
【0004】
老化細胞除去という目的を達成するための第1のアプローチは、これらの特定の細胞において、そのロード(carga)を放出(liberar)可能な選択的分配システムの開発に関連しているであろう。
【0005】
従来の放出(liberacion)システムは、通常は刺激に反応せず、ポリマーコンテナの拡散と分解によって制御されたプロセスにより、そのロードの放出をおこなうポリマーに基づいている。一方、ナノテクノロジーは、治療法において革新的なアプローチであることを証明してきた。制御された方法で、一定の細胞において、活性分子を放出できる薬剤放出システム、例えばポリマー・マイクロカプセル、デンドリマー、ミセル、ナノ粒子などが、最近大いに注目を浴びてきた。あるいは、メソ多孔性シリカナノ粒子(MSN)は、そのユニークなメソ多孔性構造、大きな比体積、官能性付与容易性(facil funcionalizacion)によって、薬剤貯蔵のためのリザーバーとして近年広範に使用されてきた。さらに、MSNは、生体適合性があって無毒性であり、エンドサイトーシスを介した細胞性のそれらの取り込みが解説されてきた。
【0006】
最近、ラクトースでコーティングされたメソ多孔性シリカナノ粒子を、人体内で、特に小腸の絨毛のエンテロサイトにおいて見出されるβ−ガラクトシダーゼの存在下で、医薬品の制御放出のために使用することが説明されている。(A.Bernardos y otros,Angew.Chem.Int.Ed.,2009,48,5884−5887)しかしながら、ただ1つのβ結合(1→4)の加水分解が部分的にロードを放出するのに十分であるので、説明される系におけるロードの放出は、インビボであまり選択的ではない。したがって、酵素の正常な発現を有する細胞が放出を引き起こすと思われるので、このタイプの系は、ほとんど選択性を示さない。また、ロードの放出が早いため、治療すべき組織全体にそのロードをくまなく行き届かせることができない。
【0007】
ヒトの疾患の発症と老化に関連した機能不全を防ぐための新治療法の緊急な開発が求められており、老化細胞の選択的治療のためのシステムについての継続的なニーズが存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.ベルナルドス(A.Bernardos)他、Angew.Chem.Int.Ed.、2009年、48巻、p.5884−5887.
【発明の概要】
【0009】
本発明は、老化細胞における物質の制御放出のための、メソ多孔性材料で作られたナノ粒子に関する。ロード(carga)の放出(liberacion)は、老化細胞における老化(SA−β−gal)に関連したβ−ガラクトシダーゼの存在によって活性化される。これらの細胞におけるこのSA−β−galの存在は、老化細胞で特異的に生じる内因性リポソーム(liposomal endogena)β−ガラクトシダーゼの過剰発現によって説明される。
【0010】
本発明は以下の利点を有する。
−より特異的でより制御された放出を行なう。
−老化細胞のようなβ−ガラクトシダーゼを過剰発現する細胞において、放出が選択的に生じる。
−ナノ粒子は好ましくはリソソームを介して細胞に導入され、そのためナノ粒子はβ−ガラクトシダーゼが最も高く発現している細胞領域に直接到達する。
【0011】
本発明の第1の態様は、オリゴ糖でコーティングされたメソ多孔性支持体を備える物質の制御放出(liberacion controlada)のためのナノデバイスに関し、前記オリゴ糖は単糖類を少なくとも3単位(unidades)備え、単糖類のうち少なくとも1つはガラクトースである。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記のナノデバイスを取得するための方法に関し、この方法は以下の段階を備える。
a)シラン基でオリゴ糖に官能性付与する段階。
b)放出されるべき物質(sustancia)の溶液に支持体を懸濁する段階。
c)前記懸濁液に、段階(a)で官能性付与されたオリゴ糖を過剰に加える段階。
【0013】
本発明の第3の態様は、上記のようなナノデバイスを含む組成物に関する。
【0014】
本発明の第4の態様は、薬物(medicamento)の製造(elaboracion)のための上記ナノデバイスの使用に関する。
【0015】
本発明の第5の態様は、β−ガラクトシダーゼの過剰発現とともに起こる疾病の治療及び/又は予防のための薬物(medicamento)の製造のための、上記ナノデバイスの使用に関する。
【0016】
本発明の第6の態様は、化粧品組成物の製造(fabricacion)のための上記ナノデバイスの使用に関する。
【0017】
本発明の第7の態様は、老化細胞の検出及び定量化用装置の製造(fabricacion)のための上記ナノデバイスの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ガラクトオリゴ糖誘導体(I)の合成を示す図である。
図2】メソ多孔性シリカのX線ディフラクトグラム及び、ローダミン−Bでロードされ(cargados)、且つMCM−41支持体が焼成された本発明のナノデバイス(S1)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。I:強度。2θd:2θ度。S1:ガラクトオリゴ糖(I)でコーティングされたローダミンをロードしたナノデバイス。MCM−41c:焼成メソ多孔性シリカナノ粒子。MCM−41m:非焼成メソ多孔性シリカナノ粒子。nm:ナノメートル。
図3】β−gal存在下でのローダミン−Bの放出を示す模式図である。B:ローダミンB。G:ガラクトオリゴ糖。
図4】室温でのpH7.5の水中において、β−gal酵素の非存在下と存在下における、S1のローダミン−Bの放出プロファイルである。P:β−galの存在。A:β−galの非存在。A.U.:%による蛍光強度。T:経過時間(時間)
図5】本発明のナノ粒子の存在下における%による細胞の生存率を示す図である。A:S1の示された量の存在下における酵母細胞の%による生存率。B:S1の表示された量での処理の48時間後のH460細胞の%による生存率。%V:%による生存率。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書と特許請求の範囲を通して、「含む(comprende)」という語とその変形語はその他の技術的特徴、付加物、構成部分、あるいはステップを排除するものではない。当業者にとっては、本発明のその他の目的、利点、特徴は、本明細書や実際の発明から推測されるものであろう。
【0020】
本発明の第1の態様は、オリゴ糖でコーティングされたメソ多孔性支持体を備える物質の制御放出のためのナノデバイスに関し、前記オリゴ糖は単糖類を少なくとも3単位備え、単糖類のうち少なくとも20%はガラクトースである。好ましくは、ナノデバイスは、単糖類を3〜10単位備え、さらに好ましくは単糖類を3〜6単位備える。
【0021】
「ナノデバイス(nanodispositivo)」という用語は、薬品(farmacos)または化粧品を選択的に放出可能な、ナノメータサイズのデバイスを意味すると本発明の文脈において理解されるものとする。
【0022】
「オリゴ糖(oligosacarido)」という用語は、3〜5単位の単糖類(糖の基本単位、一般的に、一般式C2nを有する)からなる炭水化物を意味すると理解されるものとする。
【0023】
また、本発明の第1の態様の好ましい実施形態において、単糖類のうち少なくとも50%はガラクトースである。単糖類のうち少なくとも50%はガラクトースであるということは、単糖類が3つあるならば、そのうちの2つまたは3つがガラクトースであり、単糖類が4つあるならば、そのうちの2つ又は3つまたは4つがガラクトースであり、単糖類が5つあるならば、そのうちの3つまたは4つまたは5つがガラクトースであり、単糖類が6つあるならば、そのうちの3つまたは4つまたは5つまたは6つがガラクトースである。好ましくは、単糖類すべてがガラクトースである。
【0024】
本発明のナノデバイスは、10nm〜250nmの直径を有することができ、好ましくは25nm〜150nmの直径を有することができる。
【0025】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態においては、支持体はメソ多孔性材料であり、好ましくはメソ多孔性シリカである。
【0026】
「メソ多孔性支持体(soporte mesoporoso)」は、0.01nmと50nmの間の直径を有する孔を備える支持体を意味すると理解されるものとする。同様に、メソ多孔性シリカは、前記の直径を有する孔を備えるシリカを意味すると理解されるものとする。
【0027】
このメソ多孔性支持体は、好ましくは、0.5nm〜10nmの孔直径を有し、好ましくは1.5nm〜3.5nmの孔直径を有する。
【0028】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態においては、ナノデバイスはまた放出される物質を備える。この放出される物質は、インジケーター(indicadores)、テロメラーゼ再活性化用化合物(compuestos para la reactivacion de la telomerasa)、細胞傷害性化合物(compuestos citotoxicos)、及びこれらのいずれかの組合せを含むリストから選択されうる。
【0029】
インジケーター(またはマーカー)は、放出されると、細胞にマークをつけ、そのため検出が可能となる及び/又は定量化が可能となる分子を意味すると理解されるものとする。これらのインジケーターは、細胞の生存率に顕著な影響を及ぼすものではない。インジケーターの例として、ローダミン−B、Ru(Bipy)2+、サフラニン、フルオレセインのような蛍光物質が挙げられる。
【0030】
テロメラーゼ再活性化用化合物とは、細胞に供給されるとテロメラーゼ活性の増大を生じさせ、これがテロメアの長さの増加及び/又はテロメアのサイズの維持へと転換される分子または生体分子を意味する。結果として、細胞の生存率が増大する。この効果はテロメラーゼの触媒活性を調節することによって直接的に達成することができ、あるいはテロメラーゼのレベルを増加することによって間接的に達成することができる。本発明の分野で有効なテロメラーゼ再活性化用化合物の例としては、ペプチドGSE24−2、及び分子TAT2(cycloastragenol)、TA−65、GRN510が挙げられる。
【0031】
細胞傷害性化合物は、細胞に対して毒性がある化合物を意味する。細胞傷害性化合物と接触すると、細胞において壊死、またはアポトーシスが引き起こされ、あるいは成長と分裂を停止することがある。本発明の文脈で有効な細胞傷害性化合物の例として、挿入剤(agentes intercalantes)(とりわけシスプラチン、オキサリプラチンあるいはカルボプラチン)、複製機構(maquinaria de replicacion)のヌクレオチド拮抗薬/阻害剤(とりわけドキソルビシン、カンプトテシン、エトポシド、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、シトシン、アラビノシドまたは6−メルカプトプリン)、紡錘体(huso acromatico)の阻害剤(とりわけタクサン、ビンクリスチン、ビンブラスチンまたはアドリアマイシン)、または葉酸合成阻害剤(とりわけメトトレキサートまたはペメトレキセド)が挙げられる。
【0032】
好ましくは、放出される物質は、ペプチドGSE24−2、ペプチドTAT2(cycloastragenol)、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カンプトテシン、エトポシド、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、シトシン、アラビノシド、6−メルカプトプリン、タクサン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アドリアマイシン・メトトレキサート、ペメトレキセド、及びこれらの任意の組合せを含むリストから選択される。
【0033】
これらの物質は選択的に放出され、老化細胞の防止及び除去/変換ができ、または老化細胞の検出とマーキングができる。老化細胞は、特定の態様で内因性リポソームβ−ガラクトシダーゼの過剰発現を提示する。このβ−ガラクトシダーゼは、支持体をコーティングするオリゴ糖を加水分解することができ、これによりロードを放出する。
【0034】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態において、放出される物質の割合は、支持体1gにつき0.01〜0.50gである。
【0035】
本発明の第2の態様は、前記のナノデバイスを取得するための方法に関し、この方法は以下の段階を備える。
a)シラン基でオリゴ糖に官能性付与する段階。
b)放出されるべき物質(sustancia)の溶液に支持体を懸濁する段階。
c)前記懸濁液に、段階(a)で官能性付与されたオリゴ糖を過剰に加える段階。
【0036】
シラン基でオリゴ糖を官能性付与するとは2つの末端の1つ、好ましくは、アノマー炭素を含有する末端をシラン官能基と反応させることを意味すると理解されるものとし、これにより、オリゴ糖鎖を、好ましくはシリカから作られる支持体に固定することができる。
【0037】
好ましくは段階(b)では、1〜48時間撹拌したままとし、より好ましくは10〜30時間撹拌したままとする。メソ多孔性支持体は市販品を入手してもよく、或いは使用に先立って調製してもよい。通常は、MCM−41のような材料を合成するためには、n−臭化セチルメチルアンモニウム(n−cetilmetilamoniobromuro)とNaOHの混合物が使用され、これにテトラエチルオルトケイ酸(TEOS)が一滴ずつ添加される。洗浄・乾燥させて、得られた固形物は、テンプレート相を除去するために、酸化性雰囲気中で焼成される。
【0038】
本発明の第2の態様のある好ましい実施態様において、段階(b)は極性溶剤中で実施され、好ましくは本溶剤はメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリルを含む群から選択される。溶剤がエタノールの場合に良好な結果が得られている。
【0039】
支持体が放出される物質で飽和されたならば、支持体は、官能性付与されたオリゴ糖でコーティングする段階に進むことができる。好ましくは、官能性付与されたオリゴ糖の支持体に対する割合は質量で1〜5倍(すなわち、支持体1グラムに対し官能性付与された多糖類が1グラムと5グラムの間で存在する)である。この段階(c)では、好ましくは0.5〜20時間撹拌したままとし、より好ましくは1〜10時間撹拌したままとする。
【0040】
本発明の第3の態様は、上記のようなナノデバイスを含む組成物に関する。本組成物は、一般的に定義すれば、少なくとも本発明において説明されるような製品から構成される一組の成分である。
【0041】
本発明の第3の態様のある好ましい実施形態において、組成物は医薬である。この医薬組成物は好ましくは薬学的に許容される賦形剤を含む。本医薬組成物は、任意の濃度の、少なくとも本発明の製品から構成される一組の成分(放出される物質を伴うナノデバイス)であり、対象者の身体的、生理的、精神的に充足した状態を良くするための少なくとも1つの用途を有し、このことは対象者の一般的健康状態の改善を意味する。
【0042】
治療においての適用のため、本発明の製品は、好ましくは、薬学的に許容される形態または実質的に純粋な形態で、すなわち希釈剤や担体などの通常の医薬品添加物を排除し、通常の投与量レベルで毒性があると考えられる物質を含まない、薬学的に許容されるレベルの純粋さを有して提供されるであろう。活性成分のための純度のレベルは、好ましくは50%より高く、さらに好ましくは70%より高く、一層好ましくは90%より高い。ある好ましい実施形態においては、この活性成分のための純度のレベルは、上記化合物またはその塩類(sales)、溶媒和化合物(solvatos)、プロドラッグ(profarmacos)について95%より高い。
【0043】
本明細書において使用される意味において、「治療有効量(cantidad terapeuticamente efectiva)」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与されたとき、下記のように、哺乳動物、好ましくはヒトにおける疾病または目的の病理学的状態の、予防及び/又は治療を行なうのに十分である医薬組成物の成分の量を意味する。治療有効量は、例えば、患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事など、投与の方法や時期、排出速度、薬品の組合せ、特異的疾患または病的症状の激しさ、治療を受けている対象者などで変化するが、専門医はこれを自身の知識に基づいて決定することができる。
【0044】
薬物(medicamento)という用語は、必然的に予防的効果または治療的効果、すなわち対象者における生理的な効果を意味するので、薬物(medicamento)は本発明で定義される「医薬組成物(composicion farmaceutica)」の意味よりさらに限定された意味を有する。
【0045】
「賦形剤(excipiente)」という用語は、本発明の製品の任意の成分の吸収を促す物質を意味し、成分に堅牢性(consistencia)を与え、あるいは服用しやすくするためのフレーバーを与えるという意味で、前記成分を安定化しあるいは医薬組成物を調製するのに役立つ。したがって、賦形剤は次のような機能を持つことができる。デンプン、糖、セルロースのような成分を一緒にしておく機能、甘くする機能、着色する機能、空気及び/又は湿気から隔離するような薬物を保護する機能、リン酸水素カルシウムのような、錠剤、カプセル、その他の提供の形態を満たす機能、成分の溶解と消化管での吸収を促進する崩壊機能などを有し、また本段落で言及されていない他のタイプの賦形剤を排除するものではない。したがって、「賦形剤」という用語は、投薬形態(formas galenicas)で含まれ、活性成分またはその結合物に添加されて調製と安定化を可能とし、官能特性を変更し、あるいは医薬組成物の物理化学的性質(propiedades fisico−quimicas)及びバイオアベイラビリティーを決定する材料、として定義される。「薬学的に許容される」賦形剤は、医薬組成物の化合物の活性化を可能とするものでなければならず、言い換えれば、前記成分との融和性がなければならない。賦形剤の例としては、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、甘味剤、調味料、着色剤が挙げられる。非限定的な許容可能な賦形剤の具体例は、とりわけ、デンプン、糖、キシリトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、ステロイド性脂肪、タルク、シリカ、またはグリセリンが挙げられる。
【0046】
「投薬形態(forma galenica)または医薬形態(forma farmaceutica)」は、薬物を構成するために有用であり(es la disposicion)、活性成分及び賦形剤が適応される(se adaptan)。これは医薬組成物が製造業者によって提供される形態とその投与される形態との組合せによって定義される。
【0047】
医薬組成物は、好ましくは不活性物質である「ビークル(vehiculo)」または担体(portador)を含むことができる。ビークル(媒介物)の機能は、他の化合物の取り込みを容易にし、あるいは良好な用法・用量を可能とし、医薬組成物に対し、堅牢性と形状を付与する。したがって、ビークルは、本発明の医薬組成物の任意の成分を、決定された容積または重量まで希釈するために使用される物質である。または希釈しないで、前記成分に対し良好な用法・用量を可能とし、薬物に対し堅牢性と形状を付与する物質である。ビークルは薬学的に許容されうる。提供形態が液体であるとき、薬学的に許容されるビークルは、希釈剤である。
【0048】
また、賦形剤とビークルは、薬理上許容可能でなければならない。すなわち賦形剤とビークルは、それが投与される生物体を害しないということで許可され評価されなければならない。
【0049】
本発明の医薬組成物は、別の活性物質を含むことができる。治療有効性という要件に加えて、上記医薬組成物が別の治療用薬剤を使用する必要があるかもしれない場合には、本発明の化合物と別の治療用薬剤の組合せを使用することが非常に必要であるか推奨されるという別の根本的理由(razones fundamentales)があり得る。「活性成分」とは、ヒト、動物、野菜、化学薬品などその出所には関わりなく、薬物を構成するために適切な活性を生じうる、任意の物質である。
【0050】
それぞれの場合において、薬物の提供形態は、使用される投与形態に適合するものとし、このため、本発明の組成物は、溶液の形態であるいは臨床的に許容される他の投与形態で、かつ治療有効量で提供されうる。本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、シロップ剤、ネブライザー、ミクロスフィアまたはエアロゾルの形態、好ましくは、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液、坐薬またはシロップの形態のような、固体、半固体、液体または気体で処方されうる。
【0051】
上記の組成物は、各国の薬局方やその他の参考文献に記載の従来の方法を使用して調製されうる。
【0052】
本発明の化合物及び組成物は、併用療法において、他の薬物とともに使用されうる。同時のまたは異なる時点での投与のために、他の薬剤が、同じ組成物の一部分あるいは別の異なる組成物の一部分を形成することができる。
【0053】
本発明の第3の態様のある実施形態において、組成物は化粧品である。
【0054】
本発明において、「化粧品」とは、人体の様々な部分に使用される外用の天然物質または合成物質あるいはそれらの組合せからなる調製品を意味すると理解されるものとする。人体の部分とは皮膚、毛髪系、爪、唇、外性器、歯及び口腔粘膜であり、これらを清潔にし、香りを与え、外観を変化させ、これらを保護して良い状態に保ち、及び/又は体臭を消すという単一の目標または主たる目標を有しているが、治療効果を生じることを目的としてはいない。化粧品組成物は、これまでの段落で説明したように、薬学上・薬理学上許容される賦形剤及び/又はビークルを含有することができる。さらに、化粧品組成物は局所投与に適した任意の形態で、好ましくはクリーム、ローション、ゲルまたは粉末の形態で、提供されうる。
【0055】
本発明の第4の態様は、薬物の製造のための上記のナノデバイスの使用に関する。
【0056】
本発明により意味される薬物(medicamento)は、ヒトまたは動物に使用されうる。「ヒトに使用するための薬物」とは、薬理学的、免疫学的、または代謝的作用を発揮することによって、または医療診断を具体化することによって、ヒトにおける疾病の治療または予防のための特性を有するものとして提供されるか、あるいは、生理的な機能を回復し、矯正し、または変更する目的でヒトにおいて使用されうるまたはヒトに対して投与されうる、任意の物質または任意の物質の任意の組合せである。「動物への使用のための薬物」とは、薬理学的、免疫学的、または代謝的対応を行なうことによって、または獣医の診断を具体化することによって、動物の疾病に関連して傷病を治しまたは予防する特性を有するものとして提供される、または、その生理的機能を回復し、矯正し、または変更する目的で動物に対して投与されうる、任意の物質または任意の物質の任意の組合せである。飼料に添加するために調製される「動物飼料用プレミックス」もまた「動物用薬物」と考えられるであろう。
【0057】
本発明の第5の態様は、β−ガラクトシダーゼの過剰発現とともに起こる疾病の治療及び/又は予防のための薬物製造のための、上記ナノデバイスの使用方法に関し、好ましくは、この過剰発現が老化細胞において起こる。好ましくは、上記疾病は、新生児早老症のウィーデマン−ラウテンストラウシュ症候群(sindrome Wiedemann−Rautenstrauch de progeria neonatal)、成人早老症のウェルナー症候群、ハッチンソン−ギルフォード症候群、ロートムント・トムソン症候群、マルヴィル−スミス症候群(sindrome Mulvill−Smith)、コケイン症候群、先天性角化異常症、特発性肺線維症、再性不良性貧血、肺気腫、2型糖尿病、軟骨変性を含むリストから選択される。
【0058】
本発明の第6の態様は、化粧品組成物の製造のための上記ナノデバイスの使用に関する。
【0059】
本発明の第7の態様は、老化細胞の検出及び定量化用装置の製造のための上記ナノデバイスの使用に関する。放出される物質がインジケーターである場合、老化細胞は、検出及び/又は定量化のためにマークされる。このようにして、老化及び/又は組織変性の程度が評価されうる。
【0060】
次に、本発明が、発明者が実施した試験によって説明されるが、これによって老化細胞における物質の選択的放出が明らかにされる。以下の実施例及び図面は例示のためのもので、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0061】
〔実施例1:オリゴ糖シラン誘導体の合成〕
ガラクトオリゴ糖(1)(図1,n=3〜6)を、pH3.8を有するシロップ(sirope)として得た。このシロップを水で希釈し、NaHCOでpH7まで上げた。次いで、溶液を凍結乾燥し、白色の固形物を得た。その後、5グラムのこの固形物を100mLの無水エタノール中で溶解し、3−アミノプロピルトリエトキシシランの溶液(2,5.85mL,25mmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。上記溶媒を減圧下でエバポレートし蒸発させて図1の白色の固形物(I)を得た。
HNMR(300MHz,DO):0.42(t,2H,−CH−Si−),1.02(t,9H,CH−CH−O−Si−),1.53(m,2H,−CH−CH−Si−),2.74(t,2H,NH−CH−CH−CH−Si−),3.20−3.77(m,nH,ガラクトオリゴ糖,CH−CH−O−Si−),5.13(d,1H,−O−CH−O−)ppm,13CNMR(300MHz,DO):9.62(−CH−Si−),16.65(CH−CH−O−Si−),21.74(−CH−CH−Si−),41.96(−NH−CH−CH−CH−Si−),57.25(CH−CH−O−Si−),61.84(HO−CH−CH−),72.67−78.11(HO−CH−),89.57(−O−CH−CH),94.84(−O−CH−NH−),100.25(−O−CH−O−)ppm。
【0062】
〔実施例2:メソ多孔性支持体の合成〕
使用したメソ多孔性支持体はメソ多孔性シリカで、具体的にはMCM−41であった。n−臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTABr,2.00g,5.48mmol)を、960mLの脱イオン水で溶解した。NaOH(aq)(2.00M,7.00mL)をCTABr溶液に加えた。次いで温度を95℃に調節した。次にテトラエチルオルトケイ酸(TEOS,10.00mL,5.14*10−2mol)を、一滴一滴上記溶液に加えた。本混合物を2.5時間撹拌したままにして、白色沈殿物を得た。この固形生成物を遠心分離し、脱イオン水で中性pHになるまで洗い、60℃で13時間乾燥した。最終的な多孔体MCM−41を調製するために、乾燥固形生成物を、酸化性雰囲気で5時間、550℃で焼成し、構造指向剤(agente director de estructura)としても知られる界面活性剤を除去した。
【0063】
MCM−41材料のX線ディフラクトグラム(XRD)(図2)は、ブラッグピーク(100)、(110)、(200)、(210)としてインデックスされうる六角形状に特有の4つの小角反射を示す。反射(100)における有意な変位を明確に認識することができ、焼成MCM−41サンプルの粉末で、XRDにおいて、ピーク(110)と(200)がブロード化(ensanchamiento)されることが明確に認識できる。これは、焼成段階におけるシラノールの縮合による約6〜8Åの単位セルの収縮に対応する。この明白な、部分的な秩序の喪失にもかかわらず、反射(100)と(200)を観察すると、一定の相対的なメソ多孔性シンメトリーが、焼成後に維持されていることが示される。メソ多孔性ナノ粒子のN吸着脱着等温線は、999.6m−1の比表面積と1.17cm−1の孔容積を有する典型的なIV型曲線を示す。XRD、ポロシメトリー(porosimetria)、及び透過型電子顕微鏡(TEM)による研究から、六角形のセル(4.43nm)のaパラメータ、孔の直径(2.45nm)、及び壁厚の値(1.98nm)を計算した。
【0064】
〔実施例3:ローダミン−B(蛍光物質)をロードした本発明のナノデバイスの合成〕
50mgのMCM−41と19mgのローダミン−B(0.04mmol)とを、不活性雰囲気下、丸底フラスコ中で、10mLのエタノールに懸濁した。混合物は、MCM−41の孔中におけるロードを最大化するために、室温において24時間撹拌した。次いで、(I)すなわち、ガラクトオリゴ糖のシラン誘導体(10mLのエタノール中に100mg)を過剰に加え、最終混合物を、室温で5.5時間撹拌した。最後に、ローダミン−B(S1)をロードした本発明のナノデバイスを濾過し、水で洗浄した。
【0065】
孔のカラの空間をローダミン−Bで満たしたことによってコントラストが低減したためと考えられ、反射(110)と(200)が部分的に失われた。また、最終の官能性付与された固形物においてメソ多孔性構造が維持されていることを、TEMによって確認した。
【0066】
最終のハイブリッド材料におけるローダミン−Bの含有量を決定するために、7500ppmのβ−ガラクトシダーゼの存在下において、pH7.5の水75mLに、30mgのS1を懸濁した。ローダミン−Bをすべて放出させるために、混合物を室温で72時間を撹拌したままにした。その後、懸濁液を遠心分離し、上清を単離し、減圧下で乾燥した。得られた粗生成物をアセトンに溶解し、濾過した。得られた溶液を乾燥させ、残留物を4mLのエタノールに溶解させた。ローダミン−Bの最終含有量は、550nmを中心とした吸収帯での濃度の増加に基づいた較正曲線によって決定し、重量で0.14g/gSiO2を得た。
【0067】
S1におけるガラクトオリゴ糖(I)の含有量は熱重量分析によって計算し、重量で0.28g/gSiOを得た。
【0068】
〔実施例4:ロード放出の研究〕
10mgのS1をpH7.5の18.75mLの水に懸濁し、次いで6.25mLの酵素ラクトザイム(lactozima)酵素溶液(β−D−ガラクトシダーゼ)を加えた(pH7.5の水10mLに0.3gの酵素)。孔のローダミン−Bの水溶液への放出は、580nmを中心としたローダミン−Bの発光スペクトルによりモニターした。
【0069】
〔実施例5:S.セレビシエ(S.cerevisiae)におけるロード放出の実験〕
[菌株及び培養条件]
この研究で用いられた酵母の菌株すべては、BY4741株(MATα leu2Δ0、his3Δ0、met15Δ0、ura3Δ0)の遺伝的基礎を有する。β−Galoe株は、発現ベクターβ−galp477(URA3)でWT BY4741株を形質転換することにより作製した。酵母の培養と操作のためには標準的な方法を使用した。最少培地(SD)は、2%のグルコースと、0.67%の酵母窒素ベースと、URA3の選択を維持するために適切なアミノ酸サプリメントとを含有していた。酵母培養は30℃で継続した。
【0070】
[蛍光顕微鏡及び細胞生存率研究]
BY4741株(WT、野生型)とβ−Galoe酵母は、10cells/mLの密度で、28℃で一晩、連続的に撹拌し、SD培地で培養した。次いで、この懸濁液の分割分(alicuotas)1mLを遠心分離し、ローダミン−BをロードしたS1ナノ粒子を5mg/mL含有するpH3.7の100μLのSD培地に再懸濁し、40℃で6時間培養した。細胞内放出は、蛍光ランプNIKON Y−FL,λex=540nm,λem=650nmを装備したNIKON ECLIPSE 600顕微鏡を使用し、蛍光顕微鏡検査によってモニターした。培養期間終了後に、およそ300個の細胞をYPDプレートに種播し、72時間培養した。最後に、コロニーの形成を定量化し、細胞の生存率を計算した。実験は、3重(triplicados)で2度繰り返した。データは平均±S.D.(標準偏差)で表している。S1ナノ粒子を有する培養は、実験中に細胞の生存率に影響を及ぼさなかった(表1、図5A参照)。
【0071】
【表1】
【0072】
蛍光は、大きなβ−gal活性を有するβ−Galoe酵母細胞においてのみ検出された。これらの条件において、β−Galoeにおける吸収の割合、すなわち、ローダミンB着色で染色された細胞の%は、5mg/mLのS1に対し、5%(p<0.01)のS.D.で85%である。
【0073】
【0074】
〔実施例6:ヒト細胞におけるロード放出の実験〕
[細胞培養]
組織培養のための試薬は、GIBCO/InvitrogenCorporation/ライフテクノロジーズライフサイエンス社から得た。X連鎖先天性角化異常症を有する2人の患者からの皮膚線維芽細胞(X−DC)(X−DC1774及びX−DC4646)と、多数の継代を有する対照線維芽細胞(DC1787)は、Coriell Cell Repositoryから得た。線維芽細胞X−DC1774及びX−DC4646は、突然変異c.109_11delCTT,c.385A>Tandc.5C>T DKC1をそれぞれ有する男性に属する。対照線維芽細胞DC17871は、突然変異c.109_11delCTT DKC1の女性担体に属する。H460細胞(テロメラーゼを発現した非小細胞肺がん細胞)はATCCから得て、10%の胎児牛血清(FBS)を補充したRMPM中で維持し、初代ヒト細胞は、15%のFBSを補充したMEM(GIBCO社、最少必須培地(Minimum Essential Medium))中で、37℃、5%COにて維持した。培養培地は、ゲンタマイシン(56μg/mL及びL−グルタミン(2mM))を補充した。
【0075】
[インビボ蛍光顕微鏡検査法による老化の分析]
対照線維芽細胞とX−DC(1*10細胞)線維芽細胞を6ウェルのプレート上に置き、4日後に固定し、β−ガラクトシダーゼSA−β−gal(米国BioVision社、老化検出キット)の活性を検査した。ナノ粒子のロード放出の位置は、蛍光顕微鏡検査法を用いて可視化した。この目的のため、細胞を、1μのプレートを有する8ウェルのibiTreat(Ibidi社)顕微鏡検査チャンバーで培養し、メソ多孔性粒子S1で処理した。蛍光を、Microscope ObserverZ1において48時間の間、インビボ顕微鏡検査によって可視化した。画像取得と画像処理は次のように実施した。対物レンズのタイプ、開口数、倍率:20倍ツァイス製アポクロマート・プラン、温度37℃、5%CO。カメラ:Cascade1k。取得ソフトウエア:Axiovision4.8。
【0076】
老化細胞(青)のパーセンテージを、倍率100倍の光学顕微鏡(明視野顕微鏡)(米国、Nikon EclipseTS100顕微鏡)による画像で計算した。以下の値が得られた。
【0077】
【0078】
[細胞の生存率アッセイ]
S1の存在下におけるH460とDC1787の生存率は、クリスタルバイオレット染色法を用いて決定した。細胞は、24ウェルのプレートで培養し、異なる量のメソ多孔性シリカ粒子で処理し、処理の48時間後に1%グルタールアルデヒドで固定し、PBSで洗浄し、残った細胞を、0.1%クリスタルバイオレットで染色した。ウェル当たりの細胞の数を推定するために、595nm エライザ(Elisa)を用いた比色アッセイを使用した。実験は、4重(cuadruplicado)で3回繰り返した。
【0079】
アッセイは、本発明のナノ粒子がヒト細胞と酵母において有毒でないことを示した(図5B)。
【0080】
〔実施例7:対照実験]
H460細胞におけるローダミン−B染色の欠如は人為的結果ではないことを証明するために、ローダミン−Bをロードしたナノ粒子を調製し、加水分解デンプン(S2)でコーティングした。これらのナノ粒子は、S1に類似しているが、リソソームのアミラーゼによって加水分解可能なオリゴ糖を含有する。支持体としてメソ多孔性シリカを、ロードとしてローダミンBを、被覆剤として加水分解デンプン(Glucidex(R)47)を使用し、上記と同様の方法に従い、S2ナノ粒子を合成した。
【0081】
上記と同様の条件下で、S2を吸収研究に使用した場合、明確な染色を使用したすべての細胞株で検出でき、これはS1の放出がβ−ガラクトシダーゼの存在に明確に依存していることを示すものである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B