【実施例】
【0014】
図1(a)は回転翼飛行体1の正面全体図であり、
図1(b)は回転飛行体1の側面全体図である。
本発明の回転飛行体1の構成は、従来の回転飛行体61の構成とほぼ同様であり、機体2とその左右に取り付けられる2つの回転翼3とからなる。また、回転翼3の基本構造も従来例と共通点が多いが、回転翼3が抵抗面37と巻き込み防止部材38とにより構成されている点で従来例とは異なる。以下、この点について詳しく説明する。
【0015】
図2は、本発明の翼面34(翼面34aと翼面34b)を表した斜視図である。
この翼面34は、抵抗面37(抵抗面37aと抵抗面37b)と巻き込み防止部材38(巻き込み防止部材38aと巻き込み防止部材38b)とからなる。
抵抗面37は、従来例の翼面82に相当するものであり、その断面が湾曲しており、その湾曲による凹みが回転翼3の根元側から回転翼3の先端側に延びることにより形成される凹部39(凹部39aと凹部39b)を有している。また、これと表裏一体に形成される凸部40(凸部40aと凸部40b)を有している。
【0016】
巻き込み防止部材38は、翼面34の先端部を形成するものであり、抵抗面37の先端部(抵抗面37の外周側の辺)に形成されているものである。なお、巻き込み防止部材38には軽量の板状部材が使用されるが、これに限るものではない。例えば、所定のフレームで巻き込み防止部材38の枠を作成し、それに軽量なフィルム素材を貼り付け、それにより巻き込み防止部材38を形成しても良い。
【0017】
図3は、従来例の
図10に相当する回転翼の断面を表した図であり、翼面34bが回転により回転軸のほぼ真下に位置した場合の抵抗面37b先端部の向きと、巻き込み防止部材38bの向きとの関係を表した図である。
ここで抵抗面37bの先端は、
図3の左斜下方向(機体2の後方寄りの下方向であり、回転翼3の回転方向とは逆の方向)を向いている。一方、巻き込み防止部材38bは、翼面34b(抵抗面37b)の先端を回転翼3の回転方向(凹部の凹み方向に)に折り返すように形成されている。即ち、巻き込み防止部材38は、抵抗面37bの先端が向いている方向よりも下向きになるよう形成されている。なお、巻き込み防止部材38は、抵抗面37の先端が向いている方向よりも、機体2の進行方向に向くように形成してもよい。
【0018】
図4は、飛行の際の空気の流れを表した図である。
図4のように、翼面34aの凹部39aが回転飛行体1の前方(進行方向)を向いている際は、翼面34bの凸部40aも前方(進行方向)を向いている状態になる。
回転飛行体1が前進すると、翼面34(凹部39aと凸部40b)において
図4に示す矢印のような空気の流れが生じる。即ち、抵抗面37a(凹部39a)の部分には矢印dのような空気の流れが生じて回転翼3を回転方向(
図4においては反時計回り)に回転させる。また、それと共に凸部40bでは矢印eのような空気を押し下げる流れが生じて、回転飛行体1に揚力を与える。
そして、更にその後、巻き込み防止部材38bが矢印fのように空気を押し下げ(空気が向かってくる方向に対して垂直方向に空気を押し出し)、回転飛行体1に更なる揚力を与える。
これにより回転飛行体1は、従来より多くの揚力を得ることができるので、回転飛行体1は安定した飛行が実現できる。
【0019】
なお、ここで巻き込み防止手段の意義について説明する。前述の通り、この巻き込み防止手段は回転方向に折り返されるように形成されているが、これを他の回転体(例えば、風力発電の翼など)に設けることは好ましくない。なぜなら、この巻き込み防止手段を風力発電の翼に設けると回転力が低下してしまい十分な発電力を得ることができないからである。即ち、回転力を犠牲にしてでも揚力を必要とする飛行体に、この巻き込み防止手段を設けることに大きな意義があり、この部分が他の回転体(風力発電等の翼)などとは異なるのである。
【0020】
次に、巻き込み防止部材38の形状や大きさをどのように特定するかにつき説明する。
図5は、翼面34にかかる空気抵抗や摩擦抵抗を表した図である。
矢印gは凹部39a(抵抗面37の表面)が進行方向から受ける空気抵抗を表している(これを抵抗gとする)。
矢印hは凸部40b(抵抗面37の裏面)が進行方向から受ける空気抵抗を表している(これを抵抗hとする)。
矢印iは回転翼軸が回転により受ける摩擦抵抗を表している(これを抵抗iとする)。
矢印jは巻き込み防止部材38が進行方向から受ける空気抵抗を表している(これを抵抗jとする)。
【0021】
ここで、「抵抗gー抵抗hー抵抗i=抵抗j」とすると、抵抗のバランスがとれて回転翼は回転しない。よって、巻き込み防止部材38の大きさや形状を「抵抗gー抵抗hー抵抗i>抵抗j」となるようにする必要がある。即ち、巻き込み防止部材38の大きさや形状は、抵抗gと抵抗hと抵抗iとに基づいて特定されるのである。これにより回転翼が回転し、回転飛行体1は揚力を得ることができる。
【0022】
次に、剥離手段について説明する。
図6(a)は、通常の巻き込み防止部材38の先端(剥離手段を備えない先端部)であり、丸みを帯びた形状となっている。空気は物の形状に沿って流れていく性質があるため、
図4(a)では空気を機体2の後方(
図4の左方向)に巻き込んでしまい、揚力を低下させてしまう。
一方、
図6(b)は巻き込み防止部材38の先端に尖り50(剥離手段としての尖り50)を回転翼の回転方向に折り返すよう設けたものである。この尖り50を設けたことにより、抵抗面37から巻き込み防止部材38の先端部にかけて流れてくる空気を、巻き込み防止部材38の先端部から剥離することができ、揚力の低下を最小限にすることができる。即ち、回転飛行体1は巻き込み防止手段と剥離手段とにより十分な揚力を確保することができる。
【0023】
なお、剥離手段は
図6(b)の尖り50に限るものではない。例えば、巻き込み防止部材38の先端にブラシ状の部材(剥離手段としてのブラシ状部材)を形成してもよいし、網状の部材(剥離手段としての網状部材)を形成してもよい。また、翼面にプラズマなどを発生させることにより空気を剥離させることもできるので、プラズマ発生手段を剥離手段としてもよい。
【0024】
次に、この剥離手段の意義について説明する。前述の通り、この剥離手段は巻き込み防止手段の先端部に設けられるものであるが、この剥離手段を他の翼(例えば、一般的な飛行機の翼や風力発電の翼)に設けることは好ましくない。なぜなら、一般的な飛行機の翼は極力空気抵抗を減らして揚力を確保するものであり、また風力発電の翼も極力抵抗を減らしてより多くの電力を生み出すものだからである。
一方、本発明の場合は、空気抵抗を大きくすることにより揚力を得るものである。よって、その為にこの剥離手段が必要なのであり、ここに剥離手段を設けた意義があるのである。
【0025】
上記実施例おいては特定の実施例について説明したが、本発明はこれら特定の実施例に限るものではない。例えば、以下のような例であってもよい。
(1)上記実施例では、飛行体を例に説明したが、本発明は飛行体に限るものではない。例えば、本発明は、自動車や船など他の移動体にも利用できるものである。また、飛行機や自動車などの移動体に限らず、一定の位置に固定された物体を浮揚させたり、下方向へ抑制したい場合にも利用できるものである。なお、飛行機の場合は「流体の抵抗」として空気抵抗を受けて揚力を得るが、海中を進む潜水艇のようなものの場合は水の抵抗を受けて揚力を得ることとなる。
(2)上記実施例では、飛行体を浮揚させることを例に説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、本発明は、浮揚しようとする自動車の車体を下方向に押し下げる場合などにも利用できるものである。
(3)上記実施例では、流体を「空気」に限定して説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、海中を進む潜水艇のようなものであれば「水」が流体となる。
(4)上記実施例では、回転翼軸に2つの翼面34を形成しているが、翼面34の数は3つ以上であっても良い。
(5)上記実施例では、凹部39の形状を1つの形状に限定して説明したが、凹部39の形状は他のどのような形状であっても構わない。また、上記実施例では、巻き込み防止部材38の形状を特定の形状に限定して説明したが、巻き込み防止手段の形状は他のどのような形状であっても構わない。例えば、凹部39や巻き込み防止部材38の形状等を、
図7(a)(b)(c)のようにしてもよい。