特許第6235051号(P6235051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235051水を生成するための用途の水油分離のための超音波および音響泳動技術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235051
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】水を生成するための用途の水油分離のための超音波および音響泳動技術
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/04 20060101AFI20171113BHJP
   B01D 17/00 20060101ALI20171113BHJP
   C02F 1/36 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B01D17/04
   B01D17/00 502
   C02F1/36
【請求項の数】11
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-13152(P2016-13152)
(22)【出願日】2016年1月27日
(62)【分割の表示】特願2013-505068(P2013-505068)の分割
【原出願日】2011年4月12日
(65)【公開番号】特開2016-106026(P2016-106026A)
(43)【公開日】2016年6月16日
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】61/342,307
(32)【優先日】2010年4月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512263348
【氏名又は名称】フローデザイン ソニックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ディオン
(72)【発明者】
【氏名】バート リプキンス
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エー. リートマン
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0037915(US,A1)
【文献】 特開平07−047259(JP,A)
【文献】 特開平11−197491(JP,A)
【文献】 特開平11−090110(JP,A)
【文献】 特開平02−290266(JP,A)
【文献】 特開平08−010509(JP,A)
【文献】 特開昭53−072008(JP,A)
【文献】 特開昭52−001567(JP,A)
【文献】 特開2005−349267(JP,A)
【文献】 特開2006−007184(JP,A)
【文献】 特表2005−537047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00−17/12
B01D 21/00−21/34
B01J 19/00−19/32
B06B 1/00−1/20
C02F 1/34−1/36
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも200mL/分の流速で水中油型または水中脂質型乳濁液から脂質相または油相を濃縮および分離するためのシステムであって、前記システムは、
前記乳濁液が流れるフローチャンバであって、前記フローチャンバは、1つ以上の流入口および流出口を含む、フローチャンバと、
超音波変換器および反射体であって、前記超音波変換器は、前記フローチャンバの壁上に位置付けられ、前記反射体は、前記フローチャンバの壁であって、前記超音波変換器とは反対側の壁上に配置され、前記超音波変換器は、振動電圧信号によって駆動されて、前記フローチャンバ中の平均流の方向に垂直な方向に音響定常波を発生させる、超音波変換器および反射体と、
回収ポケットであって、前記回収ポケットは、前記フローチャンバの壁上または前記フローチャンバ内に位置付けられる、回収ポケットと
を含み、
前記超音波変換器によって発生させられた音響定常波が、音響放射力を及ぼし、その結果、前記乳濁液の前記脂質相または油相が、流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、前記脂質相または油相が凝集形成し、その後、水から分離され、前記回収ポケットにおいて回収される、システム。
【請求項2】
前記回収ポケットは、前記回収ポケットを前記フローチャンバから分離するように前記回収ポケットを流体的にシールするドアを有し、前記脂質相または油相は、前記回収ポケットにおいて回収される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも200mL/分の流速で水より密度の高い粒子を濃縮および分離するためのシステムであって、前記システムは、
粒子を含む水が流れるフローチャンバであって、前記フローチャンバは、1つ以上の流入口および流出口を含む、フローチャンバと、
超音波変換器および反射体であって、前記超音波変換器は、前記フローチャンバの壁上に位置付けられ、前記反射体は、前記フローチャンバの壁であって、前記超音波変換器とは反対側の壁上に配置され、前記超音波変換器は、振動電圧信号によって駆動されて、前記フローチャンバ中の平均流の方向に垂直な方向に音響定常波を発生させる、超音波変換器および反射体と、
回収ポケットであって、前記回収ポケットは、前記フローチャンバの壁上または前記フローチャンバ内に位置付けられる、回収ポケットと
を含み、
前記超音波変換器によって発生させられた音響定常波が、音響放射力を及ぼし、その結果、前記粒子が、音場に捕捉され、凝集形成し、その後、分離され、前記回収ポケットにおいて回収される、システム。
【請求項4】
前記回収ポケットは、第1のドアおよび第2のドアを有し、前記第1のドアは、前記回収ポケットを前記フローチャンバから分離するように前記回収ポケットを流体的にシールし、前記回収ポケットがコンジットに接続されており、前記第2のドアは、前記第1のドアが開いているときに前記コンジットへの前記フローチャンバからの流体の進入を防止し、前記粒子は、前記回収ポケットにおいて回収される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも200mL/分の流速で流体/二次相乳濁液から二次相を濃縮および分離するためのシステムであって、前記システムは、
前記乳濁液が流れるフローチャンバであって、前記フローチャンバは、1つ以上の流入口および流出口を含む、フローチャンバと、
超音波変換器および反射体であって、前記超音波変換器は、前記フローチャンバの壁上に位置付けられ、前記反射体は、前記フローチャンバの壁であって、前記超音波変換器とは反対側の壁上に配置され、前記超音波変換器は、振動電圧信号によって駆動されて、前記フローチャンバ中の平均流の方向に垂直な方向に音響定常波を発生させる、超音波変換器および反射体と、
前記フローチャンバの壁上に位置付けられる回収ポケットと
を含み、
前記超音波変換器によって発生させられた音響定常波が、音響放射力を及ぼし、その結果、前記二次相が、流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、前記二次相が凝集形成し、その後、前記流体から分離され、前記回収ポケットにおいて回収される、システム。
【請求項6】
少なくとも200mL/分の流速でホスト流体より密度の低い粒子を濃縮および分離するためのシステムであって、前記システムは、
前記粒子を含む前記ホスト流体が流れるフローチャンバであって、前記フローチャンバは、1つ以上の流入口および流出口を含む、フローチャンバと、
超音波変換器および反射体であって、前記超音波変換器は、前記フローチャンバの壁上に位置付けられ、前記反射体は、前記フローチャンバの壁であって、前記超音波変換器とは反対側の壁上に配置され、前記超音波変換器は、振動電圧信号によって駆動されて、前記フローチャンバ中の平均流の方向に垂直な方向に音響定常波を発生させる、超音波変換器および反射体と、
前記フローチャンバの壁上に位置付けられる回収ポケットと
を含み、
前記超音波変換器によって発生させられた音響定常波が、音響放射力を及ぼし、その結果、前記粒子が、音場に捕捉され、凝集形成し、その後、前記ホスト流体から分離され、前記回収ポケットにおいて回収される、システム。
【請求項7】
前記フローチャンバは、水平方向に向けられており、凝集形成された二次相を前記回収ポケット内に移行させるために浮力が用いられる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
さらなる処理のための手段をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
さらなる分離のための手段をさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
前記流体のさらなる処理のための手段をさらに含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項11】
さらなる分離のための手段をさらに含む、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本願は、米国仮特許出願第61/342,307号(2010年4月12日出願)に対する優先権を主張するものであり、当該米国仮特許出願は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(開示分野)
本明細書中に記載の構成要件は、懸濁相の成分の捕捉、濃縮、および分離、ならびにそれによる流体媒質(水など)からのかかる夾雑物の除去を達成するための超音波発生音響定常波の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(開示の背景)
本発明は、一般に、水からの二次相成分の分離および濃縮、特に、水油分離を達成するための超音波の使用に関する。これらの二次相を移行して濃縮する能力は、音響泳動として公知である。
【0004】
音響泳動は、分散液からの粒子(すなわち、油滴(10ミクロン未満))の除去のための低出力で、圧低下せず、干渉物がない固体アプローチである。音響泳動は、音響泳動的空洞を介して単一パス中の異なるサイズ、密度、または圧縮率の粒子を選別するために使用することができるという点で非常に強力である。
【0005】
油および油様材料と共に汲み出される大量のホスト媒質(例えば、水)を処理することができるシステムが必要である。ホスト媒質からこれらの油を濃縮および分離することができるシステムが必要である。
【0006】
(音響泳動の物理学)
音響泳動は、駆動力を得るために音圧を使用したホスト流体からの第2の相(または複数の相)の分離である。固定周波数f(Hz)で操作する超音波変換器を使用して、流体を充填した空洞中に音響定常波を提供する。定常波は、以下の位置(x)および時間(t)の関数である局所圧力p
【0007】
【数1】
によって特徴づけられ、ここで、Pは音圧の振幅であり、kは波数(式中、2π/λ(λは波長である)に等しい)であり、ω=2πf(式中、ωは各周波数である)である。音響波の圧力により、二次相要素に対して音響放射力Fac
【0008】
【数2】
を生じ、ここで、Rは粒径であり、ρは流体媒質の密度であり、cは流体中の音速であり、Xは、
【0009】
【数3】
によって定義される音響コントラスト因子であり、ここで、Λは粒子密度の流体密度に対する比であり、σは粒子中の音速の流体中の音速に対する比である。音響放射力は音場の方向に作用する。音響放射力は音圧と音圧勾配との積に比例する。音響放射力の調査により、音響放射力が粒子体積、周波数(または波数)、音響エネルギー密度(または音圧振幅の平方)、および音響コントラスト因子に比例することを示す。空間的依存性が音場周期性の2倍であることにも留意のこと。したがって、音響放射力は、2つの機械的性質(すなわち、密度および圧縮性)の関数である。
【0010】
表1.水および4つの選択した二次相の性質。
【0011】
【表1】
三次元音場について、より一般的な音響放射力の計算アプローチが必要である。ゴリコフの式をこのために使用することができる[5]。ゴリコフは、任意の音場に適用可能な音響放射力Facの式を導出した。一次音響放射力は、以下:
【0012】
【数4】
によって与えられる電場電位Uの関数であり、ここで、電場電位Uを、
【0013】
【数5】
と定義し、fおよびfは、
【0014】
【数6】
によって定義される単極子および双極子の寄与であり、ここで、p(x,y,z,t)は音圧であり、v(x,y,z,t)は流体粒子速度である。Vは粒子体積である。
【0015】
さらに、文献中に大規模流路中の流体抗力に対する粒子の音響泳動的捕捉の使用についての報告はない。大規模を、流路の断面の寸法が典型的には超音波変換器によって生成された音波の波長よりもはるかに大きい(数倍以上)ことを示すために使用する。
【0016】
上記の関連技術の説明は、本明細書中に記載の任意の文書(係属中の米国特許出願が含まれる)が本開示の実施形態に対する先行技術であると決して承認しないものとする。さらに、記載の生成物、方法、および/または装置に関連する任意の欠点についての本明細書中の記載は、開示の実施形態を制限することを意図しない。実際、本開示の実施形態は、その記載の欠点の影響を受けることなく記載の生成物、方法、および/または装置の一定の特徴を含み得る。
【0017】
本出願は、本明細書中の至る所に角括弧内の1つ以上の参照番号によって示される多数の異なる刊行物(例えば、[x])を参照する。これらの参照番号にしたがって列挙したこれらの異なる刊行物のリストを、以下の「リファレンス」の項で見出すことができる。これらの刊行物は、それぞれ、本明細書中で参考として援用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
(開示の概要)
本発明は、ホスト媒質から油を濃縮および分離するための超音波および音響泳動の使用に関する。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、気体、脂質、および/または油を水から濃縮および分離するためのシステムであって、水と微視的油滴または脂質との乳濁液が流れるフローチャンバであって、フローチャンバが1つ以上の流入口および流出口を含み、大規模サイズの典型的な寸法(フローチャンバ断面の寸法を意味する)が発生音に対応する波長よりはるかに大きい、フローチャンバ、超音波変換器であって、典型的にはフローチャンバの壁内に埋め込まれており、典型的には圧電材料で作製されており、典型的には10万から数百万サイクル/秒の範囲、数十ボルトの振幅での超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器、および反射体であって、音響定常波が典型的には流路中の平均流の方向と垂直(すなわち、鉛直)のホスト媒質中に生じるように、典型的には変換器の反対側に配置された、反射体を含み、音場が二次相成分(すなわち、油滴または脂質)に音響放射力(すなわち、音響泳動力)を及ぼし、その結果油滴が流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の二次相成分(例えば、脂質、気体、油)が回収される、システムを提供する。二次相成分を、従来の手段(例えば、従来の手段によるこの油層の採取)によって除去することができる。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、水中油型または水中脂質型乳濁液から脂質または油相を濃縮および分離するためのシステムであって、水と微視的油滴または脂質との乳濁液が流れるフローチャンバであって、フローチャンバが1つ以上の流入口および流出口を含み、フローチャンバ断面の寸法が発生音に対応する波長より長い(例えば、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、それを超える)、フローチャンバ、超音波変換器であって、超音波変換器が超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器、および反射体であって、反射体は音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体を含み、音場が油滴または脂質を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果油滴が流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の二次相成分が経時的に回収され、ここで、油滴の迅速な回収によって油滴が凝集形成するか微視的油滴の巨大な凝集体が形成され、その結果、液滴凝集体の浮力が油滴凝集体にフローチャンバの上部への浮遊を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって全ての回収された油滴を示す油層がフローチャンバ上部に蓄積され、ここで、この油層の採取のために従来の手段を使用することができる、システムを提供する。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、水から夾雑気体を濃縮および分離するためのシステムであって、夾雑気体を含む水が流れるフローチャンバであって、フローチャンバが1つ以上の流入口および流出口を含み、フローチャンバ断面の寸法が発生音に対応する波長より大きい(例えば、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、それを超える)フローチャンバ、超音波変換器であって、超音波変換器が超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器、および反射体であって、反射体は音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体を含み、音場が夾雑気体を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果気体が流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の二次相成分が経時的に回収され、ここで、気体の迅速な回収によって気体が凝集形成し、その結果、気体の浮力が気体にフローチャンバの上部への浮遊を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって気体がフローチャンバ上部に蓄積され、ここで、気体の採取のために従来の手段を使用することができる、システムを提供する。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、水より密度の高い粒子を濃縮および分離するためのシステムであって、夾雑粒子を含む水が流れるフローチャンバであって、フローチャンバが1つ以上の流入口および流出口を含み、フローチャンバ断面の寸法が、発生音に対応する波長より大きい(例えば、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、それを超える)フローチャンバ、超音波変換器であって、超音波変換器が超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器、および反射体であって、反射体は音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体を含み、音場が夾雑粒子を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果粒子が流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の二次相成分が経時的に回収され、ここで、粒子の迅速な回収によって粒子が凝集形成し、その結果、粒子凝集体の引力が粒子凝集体にフローチャンバの底部への沈殿を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって全ての回収された粒子を示す粒子層がフローチャンバの底部に蓄積され、ここで、この粒子層の採取のために従来の手段を使用することができる、システムを提供する。
【0023】
流体は、フローチャンバを鉛直または水平に通過して流れることができる。流体は水であり得る。粒子は、微細藻類、酵母、真菌、細菌、胞子、気体または油、金属酸化物、金属粒子、粘土、汚物、プラスチック、またはゼロでないコントラスト因子を有する任意の粒子から選択することができる。超音波周波数の振動性、周期性、または律動的な電圧信号は、10kHz〜100MHzの範囲であり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、システムは、一定周波数の励起で駆動される。いくつかの実施形態では、システムは周波数掃引パターンを使用して駆動され、周波数掃引の効果は、回収された油滴を音響定常波の方向に沿って変換器面または反対側の反射体面のいずれかに移行することである。いくつかの実施形態では、システムは、圧電変換器以外の任意の型の超音波変換器によって駆動される。
【0025】
いくつかの実施形態では、システムは、流体の流れに対して鉛直以外の方向に向けられ、音場方向への油滴の移行を周波数掃引法によって達成することができる。
【0026】
本実施形態のシステムを、ビルジ水精製のために使用することができる。例えば、システムは、ビルジタンクから水および油を分離するだけでなく、脆弱な天然の水界生態系を汚染し得る水生ヒッチハイカーまたは望ましくない原生動物も破壊するであろう。
【0027】
いくつかの実施形態では、システムのフローチャンバは鉛直方向に配向している。
【0028】
いくつかの実施形態では、システムの超音波変換器は、フローチャンバの壁内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、システムの超音波変換器は、10万から数百万サイクル/秒の範囲、数十ボルトの振幅での超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される。いくつかの実施形態では、システムの超音波変換器は、圧電材料で作製されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、システムの反射体は変換器の反対側に配置されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、音響定常波は、流路中の平均流の方向と垂直のホスト媒質中に生じる。
【0031】
いくつかの実施形態では、音響放射力は音響泳動力である。
【0032】
いくつかの実施形態では、壁は流動を最小にする様式で変換器要素の周囲に設置されない。
【0033】
いくつかの実施形態では、フローチャンバ断面の寸法は、発生音に対応する波長の2〜1000倍(例えば、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、それを超える)である。
【0034】
本発明の構成要件の種々の実施により、ホスト媒質から粒子を効率的に捕捉、濃縮、および分離することができる。本発明の構成要件のシステムおよび方法などにより、水から油を濃縮および分離することができる。
【0035】
本発明の構成要件の他の利点には、極めて高容量且つ超高流速での流動システムでの分離のための音響泳動の使用が含まれ得るが、これに限定されない。それにもかかわらず、音響泳動力が非常に小さいミクロンサイズの粒子を、より大きな粒子に凝集させて容易に除去することができる。単一パスアコーストコレクターを使用して、1000倍以上の濃縮率が可能である。より大規模のフローチャンバを使用して、他のより大きな流体流速が可能である。
【0036】
より具体的には、本発明の構成要件は、流体と粒子との混合物が流れる入口および出口を有するフローチャンバおよびフローチャンバの壁の中または外に埋め込まれた2つ以上の超音波変換器を含む装置を記載している。2つ以上の超音波変換器をフローチャンバ壁の外側に配置する場合、フローチャンバ壁の厚さを、流体への音響エネルギー移動が最大になるように調整することができる。超音波変換器を、フローチャンバの入口から異なる距離で配列する。超音波変換器を、超音波周波数の振動性、周期性、または律動的な電圧信号によって駆動することができる。装置はまた、各超音波変換器に対応する2つ以上の反射体を含み、この反射体は、対応する変換器に対してフローチャンバの対壁上に配置されている。各超音波変換器は異なる超音波周波数の定常音響波を形成することができる。各周波数を、流体中の特定範囲の粒径について最適化することができる。
【0037】
流体は、フローチャンバを水平に流れることができる。流体は水であり得る。粒子は、微細藻類、酵母、真菌、細菌、胞子、気体または油、金属酸化物、金属粒子、粘土、汚物、プラスチック、またはゼロでないコントラスト因子を有する任意の粒子から選択することができる。超音波周波数の振動性、周期性、または律動的な電圧信号は、10kHz〜100MHzの範囲であり得る。
【0038】
装置は、3、4、5、またはそれを超える数の超音波変換器を含むことができる。各変換器は異なる超音波周波数の定常音響波を形成し、各周波数を、流体中の特定範囲の粒径について最適化することができる。
【0039】
装置を使用して、流体中に2つ以上の音響定常波を生じることができる。定常波は、流路中の平均流の方向に対して垂直であり得る。定常波は、水平方向または鉛直方向であり得る。次いで、定常波は、粒子が流体抗力に対して音場に捕捉されるように、粒子に音響放射力を及ぼすことができる。したがって、粒子(例えば、油)が音場に経時的に濃縮される。定常波の励起周波数は、一定であり得るか、掃引パターンが変化し得る。掃引パターンの変化を使用して、回収した粒子を音響定常波の方向に沿って変換器面または反射体面のいずれかに移行することができる。
【0040】
装置はまた、変換器上または変換器の反対側のフローチャンバ壁上に位置づけられた回収ポケットを含むことができる。ポケットは、平面状、円錐体、曲線状、または球状であり得る。
【0041】
超音波変換器を、圧電材料で作製することができる。
【0042】
装置はまた、音響エネルギー移動が最大になるように調整された壁厚を有する流路壁中または容器壁の外側に埋め込まれたさらなる1つ以上の変換器を含むことができる。各変換器について、反射体をフローチャンバの対壁上に位置づける。回収ポケットはまた、流体から分離するようにポケットをシールする第1のドアを有することができる。回収ポケットをコンジットに接続することもできる。このコンジットは、第1のドアが開いた時にフローチャンバからコンジット内への流体の侵入を防止する第2のドアを含むことができる。
【0043】
本発明の構成要件はまた、流体が2つ以上の位置を流れる工程および2つ以上の位置で音響定常波を形成する工程を含む、流体からの粒子の分離方法を記載する。各定常音響波を異なる超音波周波数で維持することができ、各超音波周波数を特定の粒径範囲のために最適化することができる。最適化したサイズの粒子を、その対応する音響定常波中に流体の流れに対して捕捉する。従って、粒子は、その対応する音響定常波中に濃縮される。
【0044】
本方法は、さらに、音響定常波の周波数を掃引し、それにより、濃縮された粒子を回収ポケット中に導く工程を含むことができる。2つ以上の音響定常波は、高強度の音圧が得られるパルス波形であり得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
水中油型または水中脂質型乳濁液から脂質相または油相を濃縮および分離するためのシステムであって、
水と微視的油滴または脂質との乳濁液が流れるフローチャンバであって、前記フローチャンバは、1つ以上の流入口および流出口を含み、前記フローチャンバ断面の寸法は、発生音に対応する波長より大きい、フローチャンバと、
超音波変換器であって、前記超音波変換器は、超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器と、
反射体であって、前記反射体は、音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体と
を含み、
音場が、油滴または脂質を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果、前記油滴が、流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の前記二次相成分が、経時的に回収され、
油滴の迅速な回収によって油滴が凝集形成するか、または、微視的油滴の巨大な凝集体が形成され、その結果、液滴凝集体の浮力が、油滴凝集体に前記フローチャンバの上部への浮遊を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって全ての回収された油滴を示す油層が、前記フローチャンバ上部に蓄積され、
この油層の採取のために従来の手段を使用することができる、システム。
(項目2)
一定周波数の励起で駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
周波数掃引パターンを使用して駆動され、前記周波数掃引の効果は、回収された油滴を音響定常波の方向に沿って変換器面または反対側の反射体面のいずれかに移行することである、項目1に記載のシステム。
(項目4)
圧電変換器以外の任意の型の超音波変換器によって駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目5)
流体の流れに対して鉛直以外の方向に向けられ、音場方向への油滴の移行を周波数掃引法によって達成することができる、項目1に記載のシステム。
(項目6)
ビルジ水精製のために使用することができる、項目1に記載のシステム。
(項目7)
ビルジタンクから水および油を分離するだけでなく、脆弱な天然の水界生態系を汚染し得る水生ヒッチハイカーまたは望ましくない原生動物も破壊する、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記フローチャンバは、鉛直方向に配向する、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記超音波変換器は、前記フローチャンバの壁内に埋め込まれている、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記超音波変換器は、10万から数百万サイクル/秒の範囲、数十ボルトの振幅での超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記超音波変換器は、圧電材料で作製されている、項目1に記載のシステム。
(項目12)
反射体は、変換器の反対側に配置されている、項目1に記載のシステム。
(項目13)
前記音響定常波は、流路中の平均流の方向と垂直のホスト媒質中に生じる、項目1に記載のシステム。
(項目14)
前記音響放射力は、音響泳動力である、項目1に記載のシステム。
(項目15)
壁は、流動を最小にする様式で変換器要素の周囲に設置されない、項目1に記載のシステム。
(項目16)
水より密度の高い粒子を濃縮および分離するためのシステムであって、
夾雑粒子を含む水が流れるフローチャンバであって、前記フローチャンバは、1つ以上の流入口および流出口を含み、前記フローチャンバ断面の寸法は、発生音に対応する波長より大きい、フローチャンバと、
超音波変換器であって、前記超音波変換器は、超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器と、
反射体であって、前記反射体は、音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体と
を含み、
音場が、夾雑粒子を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果、前記粒子が、流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の前記二次相成分が経時的に回収され、
粒子の迅速な回収によって粒子が凝集形成し、その結果、粒子凝集体の引力が、粒子凝集体に前記フローチャンバの底部への沈殿を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって全ての回収された粒子を示す粒子層が、前記フローチャンバの底部に蓄積され、
この粒子層の採取のために従来の手段を使用することができる、システム。
(項目17)
一定周波数の励起で駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目18)
周波数掃引パターンを使用して駆動され、前記周波数掃引の効果は、回収された粒子を音響定常波の方向に沿って変換器面または反対側の反射体面のいずれかに移行することである、項目1に記載のシステム。
(項目19)
圧電変換器以外の任意の型の超音波変換器によって駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目20)
流体の流れに対して鉛直以外の方向に向けられ、音場方向への粒子の移行を周波数掃引法によって達成することができる、項目1に記載のシステム。
(項目21)
ビルジ水精製のために使用することができる、項目1に記載のシステム。
(項目22)
前記フローチャンバは、鉛直方向に配向する、項目1に記載のシステム。
(項目23)
前記超音波変換器は、前記フローチャンバの壁内に埋め込まれている、項目1に記載のシステム。
(項目24)
前記超音波変換器は、10万から数百万サイクル/秒の範囲、数十ボルトの振幅での超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目25)
前記超音波変換器は、圧電材料で作製されている、項目1に記載のシステム。
(項目26)
反射体が変換器の反対側に配置されている、項目1に記載のシステム。
(項目27)
前記音響定常波は、流路中の平均流の方向と垂直のホスト媒質中に生じる、項目1に記載のシステム。
(項目28)
前記音響放射力は、音響泳動力である、項目1に記載のシステム。
(項目29)
壁は、流動を最小にする様式で変換器要素の周囲に設置されない、項目1に記載のシステム。
【0045】
本明細書中に記載の構成要件の1つ以上の変形形態の詳細を、添付の図面および以下の説明に記載する。本明細書中に記載の構成要件の他の特徴および利点は、これらの説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、流水中の藻類Dunaliella salinaの音響泳動的捕捉の顕微鏡写真を示す図面である。変換器は、画像のちょうど範囲外の上部に存在する。捕捉した藻類のカラムは、高さ約2.5cm×幅1cmである。超音波の圧節は、藻類細胞が捕捉される水平面として認められる。水は左から右に流れている。
図2図2は、周波数1MHzおよび音圧振幅0.5MPaでの粒子(または液滴)の半径の関数としてミクロンサイズの粒子に作用する音響力の計算値を示す図面である。
図3図3は、音響泳動的捕捉による微細藻類の採取のための装置(流路、音響変換器、反射面、および回収ポケットを示す)を示す図面である。変換器は2MHz PZT−4変換器である。流体の流れの方向は水平であり、音場の方向は垂直である。
図4図4は、油/水乳濁液中の脂質/生物油の捕捉、濃縮、および分離のためのシステムの典型的な実施形態のいくつかの見解を示す図面である。
図5図5は、微細藻類の懸濁液に適用したキャビテーション過程の結果として得た油/水乳濁液の写真(倍率400倍)を示す図面である。典型的な油滴の直径は、約3μmである。
図6図6は、400ml水、10mlベビーオイル、および4錠のCeteareth−20から作製した安定な乳濁液の写真(倍率400倍)を示す図面である。
図7図7は、油の濃縮および分離のための装置の写真を示す図面である。安定な乳濁液は、音場領域を下向きの鉛直方向で流れる。音場は水平方向にある。
図8図8は、音場中への油滴の捕捉の結果としての油滴凝集体の形成を示す4つの連続写真(倍率10倍)を示す図面である。一番上の写真は、時系列の最初である。融合および凝集形成の結果として形成されたより大きな油滴の鎖は、浮力の結果としてちょうど浮き始め、より小さな一連の油滴からの完全な分離が認められる(最後の一番下の写真中)。
図9図9は、油滴の融合、凝集、および濃縮の結果としてのフローチャンバ上部に回収した油層の写真(倍率10倍)を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(発明の詳細な説明)
本発明は、水から油を回収して処理するための大規模音響泳動的テクノロジーに関する。次いで、得られた油層を、他の石油化学製品の生産のための供給原料としての用途または他の用途のために採取することができる。
【0048】
微小流体における音響泳動の適用に関する十分に確立された文献が存在するが、本発明者らの発明が革命的であるのは、極めて高容量且つ超高流速での流動システムにおける分離のために音響泳動を使用するという点である。音響泳動力が非常に小さいミクロンサイズの粒子に対してこれがおこなわれている。例えば、Bacillus cereus細菌胞子(炭疽菌モデル)は、120mL/分(1cm/秒の直線流)までの速度の飲料水を処理できる流動システムに埋め込んだ音響泳動的空洞中に15%の効率で捕捉されている[1]。本発明者らの単一パスの小規模プロトタイプアコーストコレクターにおける濃縮率は1000倍にもなった。
【0049】
音響泳動分離器を、目的の流体中に共鳴性定常波を生成するための圧電音響変換器および反対側の反射面(または第2の変換器)の使用によって作製する。超音波の定常波は、流体の高密度および低密度に対応する高圧力および低圧力の局所領域を生じる。周囲の流体に関するその圧縮性および密度に応じて二次相の夾雑物が定常波節(固体粒子)または波腹(油)に押し込まれる。より高い密度および圧縮性の粒子(例えば、細菌胞子)が定常波中の節に移動し、より低い密度の二次相(油など)が波腹に移動する。粒子に及ぼされる力はそのサイズにも依存し、粒子が大きいほど力がより強くなる。
【0050】
図1は、水流中での藻類の音響電気泳動的回収を示す。平らな円形の変換器を図1のアコーストコレクター中で使用する。この変換器の圧力場は、線形定常波に加えて動径成分を有するベッセル関数である。動径成分は、流体の流れに対してカラム中の捕捉藻類を保持するように作用する。次いで、捕捉した藻類を、重力沈降によるか、[2、3、4]に記載の周波数掃引法に類似の低速周波数掃引法によって回収ポケットに進行させることによって領域中にさらに濃縮する。
【0051】
音響放射力(Fac)は、二次相粒子(または流体の液滴)に作用して、これらを音響定常波の節(または波腹)に押し進める。力の規模は、流体媒質に対する粒子密度および圧縮性に依存し、粒子体積と共に増加する。図2は、粒子(または液滴)の半径の関数としての水中の4つの異なる二次相に影響する音響力を示す。4つの二次相は、ヘキサン(炭化水素の混合物、油のモデル)、赤血球(生体細胞モデル)、細菌胞子(「巨大な」タンパク質クラスターのモデルおよびフローサイトメトリーなどのために使用されるポリスチレンビーズ)、および常磁性ポリスチレンビーズ(種々の生物学的捕捉および分離プロトコールのために使用)である。
【0052】
図2のグラフは、印加音響周波数1MHz(超音波変換器に典型的)および音圧0.5Mpa(波腹で最大)(水中で容易に達成される)の力を示す。より高い印加音響周波数およびより高い音圧の達成にはより良好なインピーダンス整合が必要であるが、より小さな粒子(約10nm)がより良好に分離されるであろう。
【0053】
水からの油の濃縮および分離のために使用される典型的な実施形態では、流路を使用して分散液(典型的には水および水中に分散している二次相成分)を流す。二次相成分は、この場合、目的の油である。超音波変換器を、典型的には、流路壁内に配置する。圧電変換器をしばしば使用する。変換器は、超音波周波数で振動する発振電圧によって駆動される(図3)。超音波周波数は、典型的には、数メガヘルツの範囲であり、電圧振幅は約数十ボルトである。変換器は、変換器の反対側の流管壁に配置した音響反射面と組み合わせて、流路を通過して音響定常波を生成する働きをする。音響定常波領域または音響波動場領域の典型的な圧力振幅は、約0.5 MPa(従来の圧電変換器を使用して容易に利用可能な振幅)である。圧力振幅は、キャビテーション効果または有意な音響流を生成することなく高強度の定常波の波動場が生じるようなキャビテーション閾値未満である。
【0054】
音響流は、音場によって生成された水の時間平均流をいう。典型的には、音響流が生成される場合、それにより、循環運動が得られ、それにより、水を撹拌することができる。キャビテーションは、典型的には、水中に気体(大気微小気泡など)が存在する場合に生じる。音圧の効果は微小気泡を振動させることであり、それにより、微流動および放射力が得られる。気泡周囲の微流動により、流体周囲に剪断流が生じる。この流れは有意な速度勾配を含む。より高い音響強度レベルで、微小気泡の振動はより強くなり、気泡が崩壊して衝撃波および遊離基が生成され得る。これを慣性キャビテーションと呼ぶ。キャビテーション力が実際に懸濁油を乳化させ、それにより、除去をより困難にするので、キャビテーションは、水からの油の分離のために積極的に回避すべきである。
【0055】
二次相成分(すなわち、油)に対する音響定常波によって得られた音響泳動力は、流体抗力を克服するのに十分である。換言すれば、音響泳動力は、音場中の油滴を捕捉し、さらに微小規模の油滴でさえも捕捉する機構として作用する。音響泳動力は、音響泳動力の最大振幅の安定な位置に油滴を移動させる。経時的に、油の集合物が着実に成長する。数分以内に、二次相成分の濃度に応じて、油集合物は円板状の油滴集合物からなる油のビーム様集合物の形態を呈し、各円板は音場の半波長の間隔で配置される。これらの油滴クラスターは表面張力によって融合し、流れから浮くであろう。油滴の円板状集合体のビームを、変換器とその反対側の音響反射性の流管壁との間に積み重ねる。したがって、ホスト媒質が濃縮された油滴を流れ去り続けながら、音響泳動力は音場領域中で油滴を捕捉および濃縮することができる。非常に大量のホスト媒質が捕捉領域を流れ、含有する油が捕捉されるまで、油の回収を継続することができる。
【0056】
ホスト媒質からの濃縮した油のさらなる分離を、2つの手段によって行う。ホスト媒質の水平流について、水と体積が約1〜10mLのこの非常に巨大な油滴との間の密度の相違により、回収領域の上部に自然に浮遊するであろう。
【0057】
典型的な実施形態では、二次相成分(すなわち、油滴)に対する音響定常波によって生じた音響泳動力は、流体抗力を克服するのに十分である。換言すれば、音響泳動力は、音場中の油滴を捕捉する機構として作用する。数秒以内に、濃度に応じて、油滴は油滴の円板状凝集体からなるビーム様の細溝を形成し、各円板は音場の半波長の間隔で配置される。円板は、変換器と音響反射体との間に積み重なる。油凝集体が臨界体積に到達するとすぐに、凝集体が得る浮力は、凝集体を流体層の上部に移動するのに十分である。したがって、音響泳動力は油滴の濃縮器として作用して液滴を融合および凝集形成させ、これらを油滴のより大きな凝集体にし、その時点で浮力によって油凝集体が生じる。経時的に、分離した油の着実に増加した層(すなわち、脂質)がフローチャンバ上部に回収される。油層を除去するための簡潔な従来の手段を構想することができる。
【0058】
図4は3つのプロトタイプシステムを示す。上の写真(図4a)は、巨大な四角の断面図と共に、3gal/分の乳化した油−水を処理することができるデバイスである。乳濁液は左側(横に置いたデバイスの下部)から側面の変換器を流れ、油が右(デバイスの上部)から除去される。写真の下に示したデバイスは、乳濁液が左側(横に置いたデバイスの下部)を流れるようにデザインされており、油が一方を移動し、純水が他方を移動する2つの分離領域が存在する。下の図4bに示すデバイスでは、乳濁液は左側から流れて油を分離し、水路をデバイスの右側に示す。
【0059】
安定な油/水乳濁液からの油滴の融合、凝集、濃縮、および分離を証明する概念証明の実演を行った。水中の微細藻類脂質の乳濁液をシミュレートするための乳濁液を作製した。安定な乳濁液を、水、ベビーオイル、およびCeteareth−20を使用して作製した。次いで、流体流動装置を使用して乳濁液の成分を分離し、それにより、相互に分離された油層および水層を得た。
【0060】
安定な乳濁液を、4錠のCeteareth−20(一般的な乳化剤)、400mLの熱水(180°F)、および10mlのベビーオイルの混合物から作製した。倍率400倍で撮影した安定な乳濁液の写真を、図5および6に示す。安定な乳濁液中の油滴の直径は、約3〜6の範囲であった。
【0061】
次に、還流装置を使用して、乳濁液から油相を濃縮および分離した。装置の写真を図7に示す。乳濁液は、下に向かって鉛直方向に流れる。音場は流動場に対して垂直であり、音響泳動を使用して油粒子を捕捉する。
【0062】
変換器は、2MHzおよび印加電圧約15Vrmsで操作する2MHz PZT−4変換器であった。流動装置を通過する乳濁液の流速は約200ml/分であった。典型的な捕捉時間である5分後に、流体の流れを停止させ、チャンバの上部に回収された油層の高さを測定した。
【0063】
図8は、音場に捕捉された油滴の形成を示す。一旦油滴が捕捉されると、油滴は融合してより大きな液滴を形成し、凝集して液滴の凝集体を形成する。一旦凝集体が十分なサイズに成長すると、その浮力によって油滴凝集体がチャンバ表面に運ばれる。油滴凝集体の連続的な形成が認められ、その後に浮力の結果として凝集体が迅速に移行する。水からの油滴の迅速な分離を示す第2の所見は、変換器上の濁った溶液(すなわち、未処理の乳濁液が未だ音場を通過していなかった場合)の目視に由来する一方で、変換器の下の非常に透明な溶液(油が音場によって除去された場合)の目視に由来する。音響捕捉領域の上下のこれらの領域は、濁った溶液と透明な溶液の間の明確な境界線によって分離されている。乳濁液を流しながらの音響捕捉場の適用の約5分後、図9に示すように、回収した油滴層がチャンバ上部に認められる。
【0064】
音響泳動分離器を、いくつかの実施では、目的の流体中に共鳴性定常波を生成するための圧電音響変換器および反対側の反射面(または第2の変換器)の使用によって作製することができる。超音波の定常波は、流体の高密度および低密度に対応する高圧力および低圧力の局所領域を生じる。周囲の流体に関するその圧縮性および密度に応じて二次相の夾雑物が定常波節または波腹に押し込まれる。より高い密度および圧縮性の粒子(例えば、細菌胞子)が定常波中の節に移動する一方で、より低い密度の二次相(油など)が波腹に移動する。粒子に及ぼされる力はそのサイズにも依存し、粒子が大きいほど力がより強くなる。
【0065】
音響放射力(Fac)は、二次相粒子に作用して、これらを音響定常波の節(または波腹)に押し進める。力の規模は、流体媒質に対する粒子密度および圧縮性に依存し、粒子体積と共に増加する。
【0066】
定常波の音圧は、低密度の油滴およびより高い密度の粒子(金属酸化物(0.2ミクロン〜100ミクロンのサイズ範囲)など)を分離することができる。図2は、粒子(または液滴)の半径の関数としての水中の4つの異なる二次相に影響する音響力を説明したチャートを示す。4つの二次相は、ヘキサン(炭化水素の混合物、油のモデル、グラフ上部に線によって示す)、赤血球(生体細胞モデル)および細菌胞子(共にグラフ中央に線によって示される)、および常磁性ポリスチレンビーズ(金属酸化物粒子に類似の密度およびサイズを有する粒子の例、グラフ下部に線によって示す)である。印加音響周波数1MHz(超音波変換器に典型的)および音圧0.5MPa(波腹で最大)(水中で容易に達成される)の力を図2に示す。
【0067】
水からの油の濃縮および分離のために使用することができる1つの実施では、流路を使用して分散液(典型的には水および水中に分散している二次相成分)を直接流すことができる。二次相成分は、1つの例では、油を含むことができる。いくつかの実施では圧電変換器であり得る超音波変換器を、流路壁内に配置することができる。変換器を、超音波周波数で振動する発振電圧によって駆動することができ、この周波数は、いくつかの実施では、数メガヘルツの範囲であり得る。電圧振幅は、1ボルトと100ボルトとの間であり得る。変換器は、変換器の反対側の流管壁に配置した音響反対面と組み合わせて、流路を通過して音響定常波を生成することができる。音響定常波領域または音響波動場領域の典型的な圧力振幅は、約0.5 MPaであり得る。かかる振幅は、圧電変換器を使用して容易に利用可能である。この圧力は、10ミクロン超の生物を粉砕および破壊するのに十分な高さであり得る。
【0068】
この音響泳動過程のための圧力振幅は、いくつかの実施では、キャビテーション効果または有意な音響流を生成することなく高強度の定常波の波動場を生じることができるようなキャビテーション閾値未満に有利に維持することができる。音響流は、音場によって生成された水の時間平均流をいう。典型的には、音響流が生成される場合、それにより、循環運動が得られ、それにより、水を撹拌することができる。キャビテーションは、典型的には、水中に気体(大気微小気泡など)が存在する場合に生じる。音圧の効果は微小気泡を振動させることであり、それにより、微流動および放射力が得られる。気泡周囲の微流動により、流体周囲に剪断流が生じる。この流れは有意な速度勾配を含む。より高い音響強度レベルで、微小気泡の振動はより強くなり、気泡が崩壊して衝撃波および遊離基が生成され得る。これを慣性キャビテーションと呼ぶ。いくつかの別の実施では、キャビテーションが誘導される前処置工程を使用して、懸濁した生物学的夾雑物を破損するか、少なくとも部分的に破壊することができる。キャビテーションが誘導される流路領域後に、本明細書中に記載の音響泳動を使用して、懸濁した材料を凝集させ、また、キャビテーション環境のより大規模な力に影響を受けない可能性があるより懸濁したより小さな病原体を破損することができる。
【0069】
二次相成分(例えば、油など)に対する音響定常波によって得られた音響泳動力は、これらの粒子/液滴上の移動流体によって生じた流体抗力を克服するのに十分であり得る。換言すれば、音響泳動力は、音場中の油滴を捕捉する機構として作用することができる。音響泳動力は、音響泳動力の最小振幅の安定な位置に懸濁した粒子を進行させることができる。これらの音響泳動力の最小振幅の位置は、定常音響波の節であり得る。経時的に、油滴/粒子/気体の集合物が節で着実に成長する。いくらかの期間内に(二次相成分の濃度に応じて数分以内であり得る)、油滴/粒子/気体の集合物は、油滴/粒子/気体の円板状の集合物を伴う油滴/粒子/気体のビーム様集合物の形状と予想され得る。各円板は音場の半波長の間隔で配置され得る。油滴/粒子/気体の円板状集合体のビームを、変換器と反対側の音響反射性の流管壁との間に「積み重ねる」ことができる。この様式では、ホスト媒質が濃縮された油滴/粒子/気体を流れ去り続けながら、音響泳動力は音場領域中で油滴/粒子/気体を捕捉および濃縮することができる。
【0070】
非常に大量のホスト媒質が捕捉領域を流れ、含有する油滴/粒子/気体が捕捉されるまで、油滴/粒子/気体の回収プロセスを継続することができる。ホスト媒質からの濃縮した油滴/粒子/気体のさらなる分離を、1つ以上の方法によって行うことができる。
【0071】
ホスト媒質の水平流について、油滴/粒子/気体の密度がホスト流体より高い場合、重力沈降を使用して濃縮された油滴/粒子/気体をコレクターポケットに進行させることができる。油滴/粒子/気体の密度がホスト流体より低い場合、濃縮された油滴/粒子/気体は、浮力を得て浮くであろう。ホスト媒質の鉛直流または水平流について、低速周波数掃引法を使用して、油滴/粒子/気体をコレクターポケットに移行させることができる。この方法では、音響定常波の周波数を、空洞の最低次定常波モードに対応する周波数の少なくとも2倍の範囲にわたる小さな周波数範囲でゆっくり掃引することができる。掃引時間は、1つの例では、約1秒であり得る。この周波数掃引法により、回収した油滴/粒子/気体をフローチャンバの1つの壁に向かって音波の方向にゆっくり移行することができ、ここで油滴/粒子/気体をさらなる処理のために回収することができる。
【0072】
別の実施では、圧電変換器を、短期間の巨大な正の振幅の電圧スパイクおよびその後のより長い電圧信号の無印加期間を含むパルス電圧信号によって駆動することができる。このパルスパターンを、反復率または反復期間にしたがって反復することができる。この励起により、水中に非常に大きな振幅の圧縮圧力パルスを生成することができる。
【0073】
別の実施では、圧電変換器を、短期間の巨大な負の振幅の電圧スパイクおよびその後のより長い電圧信号の無印加期間を含むパルス電圧信号によって駆動することができる。このパルスパターンを、反復率または反復期間にしたがって反復することができる。この励起により、音響泳動回収前の水中に非常に大きな振幅の膨張圧型パルスを生成することができる。
【0074】
本発明の構成要件は、油滴/粒子/気体が夾雑している水を水中のこれらの存在を減少または排除するために回収および処理するための大規模音響泳動テクノロジーを提供することができる。1つの実施では、この効果を、粒子を音圧節に回収して懸濁し、この音圧節において重力による過程または他の過程(例えば、浮力)によって効率的に除去して最終的に除去用の回収ポートに流出させることができるように粒子を蓄積および凝集させる音響泳動を含む簡潔な1工程の過程を使用して達成することができる。この過程を、バッチリアクターまたは連続流リアクターの配置のいずれかに適用することができる。本発明の構成要件を使用して、水からの油滴/粒子/気体の回収、除去などを行い、水(例えば、飲料水)を精製することもできる。
【0075】
1つの実施では、ホスト媒質(水など)から粒子/液滴を濃縮および分離するためのシステムは、入口および出口を有するフローチャンバを含むことができる。流れの方向は、いくつかの変形形態では、水平方向であり得る。フローチャンバは、夾雑粒子/液滴を含み得る懸濁相を含む水の混合物を受け取ることができる。フローチャンバは、巨視的寸法を有し得る。換言すれば、フローチャンバ断面の寸法は発生音に対応する波長よりはるかに長い。システムはまた、フローチャンバの壁に埋め込まれ得るか、フローチャンバの外側に配置され得る超音波変換器を含む。超音波変換器は、圧電材料を含むことができ、超音波周波数の振動電圧信号によって駆動することができる。圧電変換器以外の超音波変換器を使用することができる。
【0076】
超音波周波数は、1kHz〜100MHz(振幅1〜100ボルト(通常は数十ボルトで作用する))の範囲であり得る。超音波周波数は、200kHzと3MHzとの間であり得る。超音波周波数は、1MHzと3MHzとの間であり得る。超音波周波数は、200、400、800、1000、または1200kHzであり得る。超音波周波数は、1MHzと5MHzとの間であり得る。音響定常波がホスト媒質中に生成されるように反射体を変換器の反対側に配置することができる。音響定常波を、流路中の平均流の方向に対して垂直に向けることができる。いくつかの実施では、音響定常波を、水平方向の流体の流れに対して鉛直に向けることができる。音場は、懸濁相成分に音響放射力(音響泳動力ということができる)を及ぼす。懸濁相を流体抗力に対して音場で捕捉し、それにより、懸濁相成分の大規模回収が可能である。フローチャンバによる水流のスイッチオフにより、フローチャンバの下部に回収した粒子が重力沈降し得るか、粒子が浮力を得て容易な除去のために上部に浮遊することができる。
【0077】
任意選択的な変形形態では、システムを、一定周波数の励起および/または周波数掃引パターンまたは周波数ステップパターンを使用して駆動させることができる。周波数掃引または周波数ステッピングの効果により、回収された粒子を音響定常波方向に沿って変換器面または反対側の反射体面のいずれかに移行させることができる。回収ポケットまたは他の空隙容量を、沈降した粒子が回収ポケット中に回収されるように変換器の反対側に位置づけることができる。回収ポケットは、フローチャンバから高濃度の懸濁相を有する水を含むスラリーを除去するための1つ以上の蝶形弁または他の機構を含むことができる。この様式では、懸濁相が回収ポケット中に沈降した後に、沈降/浮遊懸濁材料を水流から除去する。
【0078】
システムの流れの方向を、水平以外の方法に向けることができる。例えば、流体の流れは、鉛直より上方または下方であり得るか、鉛直または水平に対して上方または下方にいくらか傾き得る。音響変換器の位置を、音場が粒子の回収ポケットへの移行を周波数掃引法または周波数ステップ法によって行うことができるような方向であるように選択することができる。1つを超える変換器をシステムに含めることができる。例えば、各変換器は、変換器自体の反射体を有することができ、且つコレクターポケットを含むことができ、このポケットは水流から懸濁相材料の濃縮スラリーを除去するための機構をさらに含むことができる。一連のシステムは、流動する液体媒質から一定範囲のサイズおよび密度を有する懸濁材料(粒子および類似の密度の粒子など)を効率的に濃縮および/または除去するために使用することができるように異なる周波数に設定された各システムの変換器を有することができる。
【0079】
粒子/生物捕捉効率をより高くするために、音響システムを異なる共鳴変換器に連続的に接続することもできる。システムは、一連の各ユニットを含むことができる。各変換器または一連の変換器を、異なる音響周波数が異なるサイズ範囲の粒子/生物を捕捉可能なように調整する。
【0080】
システムは、200kHz、400kHz、600kHz、800kHz、1000kHz、および1200kHzで操作されるセルを含むことができる。各セルを、特定の粒径および密度の範囲のために最適化することができる。システム全体で、0.1〜100gal/分の水(例えば、0.1〜50gal/分、0.1〜20gal/分、0.1〜10gal/分、1〜10gal/分、1〜20gal/分、1〜50gal/分、1〜100gal/分)を処理することができるかもしれない。示した配列に類似する平行または連続的な配列を構築して、種々の容積測定流速を処理することができる。
【0081】
記載の本発明の構成要件の態様を、デジタル電子回路、集積回路工学(特に、ASIC(特定用途向け集積回路)と呼ばれる)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはその組み合わせで理解することができる。これらの種々の実行には、記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受信し、データおよび命令をこれらに送信するために接続されたプログラミング可能なシステム(少なくとも1つのプログラミング可能なプロセッサ(特殊用途または汎用性であり得る)が含まれる)で実行可能なおよび/または解釈可能な1つ以上のコンピュータプログラムでの実行が含まれ得る。
【0082】
これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、またはコードとしても公知)は、プログラミング可能なプロセッサのための機械語命令を含み、高レベル手続き型言語および/またはオブジェクト指向プログラミング言語、および/またはアセンブリー/機械言語で実行することができる。本明細書中で使用する場合、用語「機械可読媒体」は、プログラミング可能なプロセッサに機械語命令および/またはデータを提供するために使用される任意のコンピュータプログラム製品、装置、および/またはデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラミング可能論理デバイス(PLD))(機械可読信号として機械語命令を受ける機械可読媒体が含まれる)をいう。用語「機械可読信号」は、機械語命令および/またはデータをプログラミング可能なプロセッサに提供するために使用される任意の信号をいう。
【0083】
本明細書中に記載の構成要件を、バックエンドコンポーネント(例えば、データサーバとして)を含むか、ミドルウェアコンポーネント(例えば、アプリケーションサーバ)を含むか、フロントエンドコンポーネント(例えば、ユーザーが本明細書中に記載の構成要件の実施のために情報のやり取りを行うことができるグラフィカルユーザーインターフェースまたはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータ)、またはかかるバックエンド、ミドルウェア、もしくはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含むコンピュータシステムで実行することができる。システムのコンポーネントを、デジタルデータ通信の任意の形態または媒体(例えば、通信網)によって相互接続することができる。通信網の例には、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、およびインターネットが含まれる。
【0084】
コンピュータシステムは、クライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは、一般に、相互に離れており、典型的には、通信網を介してインタラクトしている。クライアントとサーバの関係は、各コンピュータ上で動作し、クライアント−サーバが相互関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。
【0085】
(定義)
他で定義しない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書中に記載の方法および材料に類似するか等価な方法および材料を本発明の実施または試験で使用することができるにも関わらず、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書中に言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他のリファレンスは、その全体が参考として援用される。矛盾する場合、本明細書(定義が含まれる)に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は例示のみを目的とし、本発明を制限することを意図しない。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0086】
本明細書中に記載の実施形態の理解を深めるために、好ましい実施形態に合わせたリファレンスを記載し、特定の用語を使用してこれを説明するであろう。本明細書中で使用した用語集は、特定の実施形態の説明のみを目的とし、本発明の範囲を制限することを意図しない。本開示を通して使用する場合、文脈上そうでないと明確に示されない限り、単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれる。したがって、例えば、「a composition」という言及にはかかる組成物の複数および単一の組成物が含まれ、「a therapeutic agent」という言及は、1つ以上の治療薬および/または医薬品ならびに当業者に公知のその等価物などについて言及している。
【0087】
本出願を通して、用語「約」を、値がその値を決定するために使用されるデバイスまたは方法による誤差の標準偏差を含むことを示すために使用する。
【0088】
本明細書を通した数値範囲についての言及は、開示範囲内の全ての数値を含む。したがって、例えば、約1%〜約5%の範囲の詳細には、1%、2%、3%、4%、および5%、例えば、2.3%、3.9%、4.5%なども含まれる。
【0089】
特許請求の範囲中で、開示が代替物のみおよび「および/または」について言及する定義を支持するにもかかわらず、代替物のみについて言及することを明確に示していないか、代替物が相互排除されない限り、用語「または」を「および/または」を意味するために使用する。
【0090】
本明細書および特許請求の範囲中で使用する場合、用語「comprising」(およびcomprisingの任意の形態(「comprise」および「comprises」など))、「having」(およびhavingの任意の形態(「have」および「has」など))、「including」(およびincludingの任意の形態(「includes」および「include」など))、または「containing」(およびcontainingの任意の形態(「contains」および「contain」など))は、包括的または非限定的であり、さらなる引用していない要素または方法の工程を排除しない。
【0091】
(リファレンス)
以下のリファレンスが本明細書中で参考として援用される。
【0092】
【化1】
図1
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図9