【課題を解決するための手段】
【0018】
(開示の概要)
本発明は、ホスト媒質から油を濃縮および分離するための超音波および音響泳動の使用に関する。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、気体、脂質、および/または油を水から濃縮および分離するためのシステムであって、水と微視的油滴または脂質との乳濁液が流れるフローチャンバであって、フローチャンバが1つ以上の流入口および流出口を含み、大規模サイズの典型的な寸法(フローチャンバ断面の寸法を意味する)が発生音に対応する波長よりはるかに大きい、フローチャンバ、超音波変換器であって、典型的にはフローチャンバの壁内に埋め込まれており、典型的には圧電材料で作製されており、典型的には10万から数百万サイクル/秒の範囲、数十ボルトの振幅での超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器、および反射体であって、音響定常波が典型的には流路中の平均流の方向と垂直(すなわち、鉛直)のホスト媒質中に生じるように、典型的には変換器の反対側に配置された、反射体を含み、音場が二次相成分(すなわち、油滴または脂質)に音響放射力(すなわち、音響泳動力)を及ぼし、その結果油滴が流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の二次相成分(例えば、脂質、気体、油)が回収される、システムを提供する。二次相成分を、従来の手段(例えば、従来の手段によるこの油層の採取)によって除去することができる。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、水中油型または水中脂質型乳濁液から脂質または油相を濃縮および分離するためのシステムであって、水と微視的油滴または脂質との乳濁液が流れるフローチャンバであって、フローチャンバが1つ以上の流入口および流出口を含み、フローチャンバ断面の寸法が発生音に対応する波長より長い(例えば、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、それを超える)、フローチャンバ、超音波変換器であって、超音波変換器が超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器、および反射体であって、反射体は音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体を含み、音場が油滴または脂質を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果油滴が流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の二次相成分が経時的に回収され、ここで、油滴の迅速な回収によって油滴が凝集形成するか微視的油滴の巨大な凝集体が形成され、その結果、液滴凝集体の浮力が油滴凝集体にフローチャンバの上部への浮遊を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって全ての回収された油滴を示す油層がフローチャンバ上部に蓄積され、ここで、この油層の採取のために従来の手段を使用することができる、システムを提供する。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、水から夾雑気体を濃縮および分離するためのシステムであって、夾雑気体を含む水が流れるフローチャンバであって、フローチャンバが1つ以上の流入口および流出口を含み、フローチャンバ断面の寸法が発生音に対応する波長より大きい(例えば、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、それを超える)フローチャンバ、超音波変換器であって、超音波変換器が超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器、および反射体であって、反射体は音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体を含み、音場が夾雑気体を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果気体が流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の二次相成分が経時的に回収され、ここで、気体の迅速な回収によって気体が凝集形成し、その結果、気体の浮力が気体にフローチャンバの上部への浮遊を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって気体がフローチャンバ上部に蓄積され、ここで、気体の採取のために従来の手段を使用することができる、システムを提供する。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、水より密度の高い粒子を濃縮および分離するためのシステムであって、夾雑粒子を含む水が流れるフローチャンバであって、フローチャンバが1つ以上の流入口および流出口を含み、フローチャンバ断面の寸法が、発生音に対応する波長より大きい(例えば、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、それを超える)フローチャンバ、超音波変換器であって、超音波変換器が超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器、および反射体であって、反射体は音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体を含み、音場が夾雑粒子を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果粒子が流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の二次相成分が経時的に回収され、ここで、粒子の迅速な回収によって粒子が凝集形成し、その結果、粒子凝集体の引力が粒子凝集体にフローチャンバの底部への沈殿を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって全ての回収された粒子を示す粒子層がフローチャンバの底部に蓄積され、ここで、この粒子層の採取のために従来の手段を使用することができる、システムを提供する。
【0023】
流体は、フローチャンバを鉛直または水平に通過して流れることができる。流体は水であり得る。粒子は、微細藻類、酵母、真菌、細菌、胞子、気体または油、金属酸化物、金属粒子、粘土、汚物、プラスチック、またはゼロでないコントラスト因子を有する任意の粒子から選択することができる。超音波周波数の振動性、周期性、または律動的な電圧信号は、10kHz〜100MHzの範囲であり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、システムは、一定周波数の励起で駆動される。いくつかの実施形態では、システムは周波数掃引パターンを使用して駆動され、周波数掃引の効果は、回収された油滴を音響定常波の方向に沿って変換器面または反対側の反射体面のいずれかに移行することである。いくつかの実施形態では、システムは、圧電変換器以外の任意の型の超音波変換器によって駆動される。
【0025】
いくつかの実施形態では、システムは、流体の流れに対して鉛直以外の方向に向けられ、音場方向への油滴の移行を周波数掃引法によって達成することができる。
【0026】
本実施形態のシステムを、ビルジ水精製のために使用することができる。例えば、システムは、ビルジタンクから水および油を分離するだけでなく、脆弱な天然の水界生態系を汚染し得る水生ヒッチハイカーまたは望ましくない原生動物も破壊するであろう。
【0027】
いくつかの実施形態では、システムのフローチャンバは鉛直方向に配向している。
【0028】
いくつかの実施形態では、システムの超音波変換器は、フローチャンバの壁内に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、システムの超音波変換器は、10万から数百万サイクル/秒の範囲、数十ボルトの振幅での超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される。いくつかの実施形態では、システムの超音波変換器は、圧電材料で作製されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、システムの反射体は変換器の反対側に配置されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、音響定常波は、流路中の平均流の方向と垂直のホスト媒質中に生じる。
【0031】
いくつかの実施形態では、音響放射力は音響泳動力である。
【0032】
いくつかの実施形態では、壁は流動を最小にする様式で変換器要素の周囲に設置されない。
【0033】
いくつかの実施形態では、フローチャンバ断面の寸法は、発生音に対応する波長の2〜1000倍(例えば、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、それを超える)である。
【0034】
本発明の構成要件の種々の実施により、ホスト媒質から粒子を効率的に捕捉、濃縮、および分離することができる。本発明の構成要件のシステムおよび方法などにより、水から油を濃縮および分離することができる。
【0035】
本発明の構成要件の他の利点には、極めて高容量且つ超高流速での流動システムでの分離のための音響泳動の使用が含まれ得るが、これに限定されない。それにもかかわらず、音響泳動力が非常に小さいミクロンサイズの粒子を、より大きな粒子に凝集させて容易に除去することができる。単一パスアコーストコレクターを使用して、1000倍以上の濃縮率が可能である。より大規模のフローチャンバを使用して、他のより大きな流体流速が可能である。
【0036】
より具体的には、本発明の構成要件は、流体と粒子との混合物が流れる入口および出口を有するフローチャンバおよびフローチャンバの壁の中または外に埋め込まれた2つ以上の超音波変換器を含む装置を記載している。2つ以上の超音波変換器をフローチャンバ壁の外側に配置する場合、フローチャンバ壁の厚さを、流体への音響エネルギー移動が最大になるように調整することができる。超音波変換器を、フローチャンバの入口から異なる距離で配列する。超音波変換器を、超音波周波数の振動性、周期性、または律動的な電圧信号によって駆動することができる。装置はまた、各超音波変換器に対応する2つ以上の反射体を含み、この反射体は、対応する変換器に対してフローチャンバの対壁上に配置されている。各超音波変換器は異なる超音波周波数の定常音響波を形成することができる。各周波数を、流体中の特定範囲の粒径について最適化することができる。
【0037】
流体は、フローチャンバを水平に流れることができる。流体は水であり得る。粒子は、微細藻類、酵母、真菌、細菌、胞子、気体または油、金属酸化物、金属粒子、粘土、汚物、プラスチック、またはゼロでないコントラスト因子を有する任意の粒子から選択することができる。超音波周波数の振動性、周期性、または律動的な電圧信号は、10kHz〜100MHzの範囲であり得る。
【0038】
装置は、3、4、5、またはそれを超える数の超音波変換器を含むことができる。各変換器は異なる超音波周波数の定常音響波を形成し、各周波数を、流体中の特定範囲の粒径について最適化することができる。
【0039】
装置を使用して、流体中に2つ以上の音響定常波を生じることができる。定常波は、流路中の平均流の方向に対して垂直であり得る。定常波は、水平方向または鉛直方向であり得る。次いで、定常波は、粒子が流体抗力に対して音場に捕捉されるように、粒子に音響放射力を及ぼすことができる。したがって、粒子(例えば、油)が音場に経時的に濃縮される。定常波の励起周波数は、一定であり得るか、掃引パターンが変化し得る。掃引パターンの変化を使用して、回収した粒子を音響定常波の方向に沿って変換器面または反射体面のいずれかに移行することができる。
【0040】
装置はまた、変換器上または変換器の反対側のフローチャンバ壁上に位置づけられた回収ポケットを含むことができる。ポケットは、平面状、円錐体、曲線状、または球状であり得る。
【0041】
超音波変換器を、圧電材料で作製することができる。
【0042】
装置はまた、音響エネルギー移動が最大になるように調整された壁厚を有する流路壁中または容器壁の外側に埋め込まれたさらなる1つ以上の変換器を含むことができる。各変換器について、反射体をフローチャンバの対壁上に位置づける。回収ポケットはまた、流体から分離するようにポケットをシールする第1のドアを有することができる。回収ポケットをコンジットに接続することもできる。このコンジットは、第1のドアが開いた時にフローチャンバからコンジット内への流体の侵入を防止する第2のドアを含むことができる。
【0043】
本発明の構成要件はまた、流体が2つ以上の位置を流れる工程および2つ以上の位置で音響定常波を形成する工程を含む、流体からの粒子の分離方法を記載する。各定常音響波を異なる超音波周波数で維持することができ、各超音波周波数を特定の粒径範囲のために最適化することができる。最適化したサイズの粒子を、その対応する音響定常波中に流体の流れに対して捕捉する。従って、粒子は、その対応する音響定常波中に濃縮される。
【0044】
本方法は、さらに、音響定常波の周波数を掃引し、それにより、濃縮された粒子を回収ポケット中に導く工程を含むことができる。2つ以上の音響定常波は、高強度の音圧が得られるパルス波形であり得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
水中油型または水中脂質型乳濁液から脂質相または油相を濃縮および分離するためのシステムであって、
水と微視的油滴または脂質との乳濁液が流れるフローチャンバであって、前記フローチャンバは、1つ以上の流入口および流出口を含み、前記フローチャンバ断面の寸法は、発生音に対応する波長より大きい、フローチャンバと、
超音波変換器であって、前記超音波変換器は、超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器と、
反射体であって、前記反射体は、音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体と
を含み、
音場が、油滴または脂質を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果、前記油滴が、流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の前記二次相成分が、経時的に回収され、
油滴の迅速な回収によって油滴が凝集形成するか、または、微視的油滴の巨大な凝集体が形成され、その結果、液滴凝集体の浮力が、油滴凝集体に前記フローチャンバの上部への浮遊を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって全ての回収された油滴を示す油層が、前記フローチャンバ上部に蓄積され、
この油層の採取のために従来の手段を使用することができる、システム。
(項目2)
一定周波数の励起で駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
周波数掃引パターンを使用して駆動され、前記周波数掃引の効果は、回収された油滴を音響定常波の方向に沿って変換器面または反対側の反射体面のいずれかに移行することである、項目1に記載のシステム。
(項目4)
圧電変換器以外の任意の型の超音波変換器によって駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目5)
流体の流れに対して鉛直以外の方向に向けられ、音場方向への油滴の移行を周波数掃引法によって達成することができる、項目1に記載のシステム。
(項目6)
ビルジ水精製のために使用することができる、項目1に記載のシステム。
(項目7)
ビルジタンクから水および油を分離するだけでなく、脆弱な天然の水界生態系を汚染し得る水生ヒッチハイカーまたは望ましくない原生動物も破壊する、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記フローチャンバは、鉛直方向に配向する、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記超音波変換器は、前記フローチャンバの壁内に埋め込まれている、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記超音波変換器は、10万から数百万サイクル/秒の範囲、数十ボルトの振幅での超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記超音波変換器は、圧電材料で作製されている、項目1に記載のシステム。
(項目12)
反射体は、変換器の反対側に配置されている、項目1に記載のシステム。
(項目13)
前記音響定常波は、流路中の平均流の方向と垂直のホスト媒質中に生じる、項目1に記載のシステム。
(項目14)
前記音響放射力は、音響泳動力である、項目1に記載のシステム。
(項目15)
壁は、流動を最小にする様式で変換器要素の周囲に設置されない、項目1に記載のシステム。
(項目16)
水より密度の高い粒子を濃縮および分離するためのシステムであって、
夾雑粒子を含む水が流れるフローチャンバであって、前記フローチャンバは、1つ以上の流入口および流出口を含み、前記フローチャンバ断面の寸法は、発生音に対応する波長より大きい、フローチャンバと、
超音波変換器であって、前記超音波変換器は、超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、超音波変換器と、
反射体であって、前記反射体は、音響定常波がホスト媒質中で発生するように配置されている、反射体と
を含み、
音場が、夾雑粒子を含む二次相成分に音響放射力を及ぼし、その結果、前記粒子が、流体抗力に対する音場に捕捉され、それにより、大量の前記二次相成分が経時的に回収され、
粒子の迅速な回収によって粒子が凝集形成し、その結果、粒子凝集体の引力が、粒子凝集体に前記フローチャンバの底部への沈殿を強制するのに十分であり、その結果、長期にわたって全ての回収された粒子を示す粒子層が、前記フローチャンバの底部に蓄積され、
この粒子層の採取のために従来の手段を使用することができる、システム。
(項目17)
一定周波数の励起で駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目18)
周波数掃引パターンを使用して駆動され、前記周波数掃引の効果は、回収された粒子を音響定常波の方向に沿って変換器面または反対側の反射体面のいずれかに移行することである、項目1に記載のシステム。
(項目19)
圧電変換器以外の任意の型の超音波変換器によって駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目20)
流体の流れに対して鉛直以外の方向に向けられ、音場方向への粒子の移行を周波数掃引法によって達成することができる、項目1に記載のシステム。
(項目21)
ビルジ水精製のために使用することができる、項目1に記載のシステム。
(項目22)
前記フローチャンバは、鉛直方向に配向する、項目1に記載のシステム。
(項目23)
前記超音波変換器は、前記フローチャンバの壁内に埋め込まれている、項目1に記載のシステム。
(項目24)
前記超音波変換器は、10万から数百万サイクル/秒の範囲、数十ボルトの振幅での超音波周波数の振動電圧信号によって駆動される、項目1に記載のシステム。
(項目25)
前記超音波変換器は、圧電材料で作製されている、項目1に記載のシステム。
(項目26)
反射体が変換器の反対側に配置されている、項目1に記載のシステム。
(項目27)
前記音響定常波は、流路中の平均流の方向と垂直のホスト媒質中に生じる、項目1に記載のシステム。
(項目28)
前記音響放射力は、音響泳動力である、項目1に記載のシステム。
(項目29)
壁は、流動を最小にする様式で変換器要素の周囲に設置されない、項目1に記載のシステム。
【0045】
本明細書中に記載の構成要件の1つ以上の変形形態の詳細を、添付の図面および以下の説明に記載する。本明細書中に記載の構成要件の他の特徴および利点は、これらの説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。