(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油小滴が分散している水可溶性ポリマーマトリックスを含む、経口免疫寛容の発達および/または誘導のための医薬組成物であって、組成物が抗原から選択される少なくとも一つの免疫調節剤を該油小滴中に含む、医薬組成物。
自己免疫疾患が多発性硬化症、リューマチ性関節炎、大腸炎、クローン病、卒中、アルツハイマー疾患、アテローム性動脈硬化症および1型糖尿病から選択される、請求項2に記載の組成物。
経口免疫寛容の発達および/または誘導が関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性重症筋無力症、インスリン依存性糖尿病、移植拒絶反応、甲状腺炎または多発性硬化症の治療または予防を提供する、請求項1に記載の組成物。
油小滴が分散している水可溶性ポリマーマトリックスを含み、抗体が生物学的医薬に対抗して増加することを予防するための医薬組成物であって、組成物が抗原から選択される少なくとも一つの免疫調節剤を該油小滴中に含み、該生物学的医薬の動物への治療的投与前に組成物の寛容化量が該動物の胃腸管へ一回以上投与される、組成物。
免疫調節剤がII型コラーゲン、S−抗原、トルペードアセチルコリン受容体、同種異系細胞、異系ペプチド;食物特異的なペプチド、蛋白質もしくは抗原;甲状腺ホルモングロブリン、組織グルタミン転移酵素、グリアジン、HLA-DQ218、コポリマーIまたはミエリン抗原から選択される抗原を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
免疫抑制剤がシクロスポリン、タクロリムス、ガンシクロビル、エタネルセプト、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、マイコフェノラートモフェチル、メトトレキサート、コルチゾール、アルドステロン、デキサメタゾン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤またはロイコトリエン受容体拮抗剤から選択される、請求項13に記載の組成物。
組成物が粘膜表面および/または下層の粘膜性リンパ組織、M細胞、パイエル板または他の免疫関連細胞若しくは細胞系への抗原の吸着およびそれによる吸収を増強する1以上の剤を含む、請求項1〜28のいずれかに記載の組成物。
水可溶性ポリマーマトリックスがゼラチン、寒天、ポリエチレングリコール、デンプン、カゼイン、キトサン、大豆蛋白質、紅花蛋白質、アルギン酸塩、ゲランガム、カラギーナン、キサンタンガム、フタル酸化ゼラチン、コハク酸化ゼラチン、セルロースフタレート−アセテート、オレオレジン、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリルまたはメタアクリルエステルおよびポリ酢酸ビニルフタレートの重合物並びにその組合せから選択される水可溶性ポリマーを含む、請求項1〜29のいずれかに記載の組成物。
組成物がミニビーズの第1の集団および第2の集団を含む、請求項1〜38のいずれかに記載の組成物であって、ミニビーズの第1の集団および第2の集団が異なる、組成物。
油相が脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールのエステル、炭化水素油およびステロイドから選択される1以上の油を含む、請求項1〜41のいずれかに記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
背景
ワクチン接種は主に注射による。注射は複雑で高価な物流(logistics)を必要とする。例えば、注射によって、畜牛、豚、家禽と同様に魚の様な大量の動物に予防接種することは、不可能であるか極端に労働集約的であるかのいずれかである。もしワクチンを、大量の動物へ飼料または水と同時に投与することができれば、特に、繰り返し投与量を、間隔を置いて与えなければならないから、時間とコストの点で有益であろう。注射可能なワクチンはまた一般的に、工場から注射する場所まで、低温で維持(貯蔵および船積み)されなければならない。この所謂「コールドチェーン」は更に物流的に複雑な追加コストである。
【0003】
針使用から生ずる感染および二次感染のリスクから離れても、注射によるワクチン接種はまた、接種を受ける人または動物にとって不快感または痛みを伴い、それに代わる投与経路が好ましいであろう。
【0004】
経口または経鼻投与されるワクチンは存在し、経皮的なワクチンが発展途上である。しかしながら種々の理由から、全てのワクチンが経口、経鼻などの投与用に入手できるものではなく、もし、より多くのワクチンが注射以外の方法で投与することができれば、重要な前進となるであろう。
【0005】
現存するこれらの経口ワクチンは一般的に、胃腸管内もしくは真皮下の粘膜又は粘膜関連リンパ組織(MALT)の他の構成成分を通して免疫応答を促進する感染因子に依存する生きたまま弱毒化された若しくは殺された全菌体調合薬である。
【0006】
しかしながら、多くの現代のワクチンは、注射された時でさえそれ自身では所望の免疫応答を引き出すための十分な免疫原力を持ち得ない感染因子のサブユニットを含んでいる。免疫原力は抗原と、例えばアジュバントの様な免疫促進剤とを共配合することで増加する。これは、とりわけ、注射可能なワクチンで実証された現象である。
【0007】
ワクチン抗原に対する動物の免疫応答を増強するアジュバント系が当分野でよく知られている。同様に、ワクチンおよび医薬を粘膜表面へ送達するための系が当分野でよく知られている。ワクチン抗原および医薬を胃酸および消化酵素による分解から保護するための、並びに抗原を粘膜表面に吸着するための多様な方法が記載されてきた。
【0008】
しかし、ワクチン成分を粘膜表面へおよび下層の粘膜性リンパ組織へ有効に送達することと関連した残余の問題の故に、ワクチンの粘膜送達は活用されて来なかった。これらの問題は、活性な形で適切な部位で放出されるべき多様な成分を組み合わせる製剤の複雑さと関連している。粘膜性免疫応答を発生させるワクチンの経口送達は、多くの病原体が粘膜表面を経由して侵入するという事実を考えれば、依然として非常に望ましい目標である。
【0009】
ワクチンの有効な経口吸収を達成するための障壁は、腸上皮細胞の血漿膜を通ってのワクチンの低い透過性、胃腸管(GIT)内のペプチダーゼおよびプロテアーゼによる分解に対するワクチンの感受性、および門脈循環から吸収された成分の肝臓および胆嚢での浄化性を含む。蛋白質成分の場合、胃の酸性環境中での変質に対する感受性もまた経口送達に対する障壁である。ワクチンの経口投与が潜在的に有益な免疫応答を成功裏に生起させた場合は、抗原の投与量がしばしば非常に高い。このことは、資材のコストが非常に高いから経済性に否定的に影響する。それ故、投与量節約技術が求められる。
【0010】
ポリラクチド(PLA)、ポリラクチド・コグリコリド(PLGA)、またはリポソームに基づく系の様なナノもしくはマイクロ微粒子の投与形態におけるカプセル化および腸溶性被覆がされたカプセルまたは錠剤の使用を通しての、酸および酵素攻撃からの高分子量ワクチン成分の保護が、酵素的分解および酸性攻撃からの幾らかの保護を与えるかも知れない。しかしながら、PLA、PLGA、リポソーム、または他の微粒子の様な微粒子中へのワクチンのカプセル化は、腸の上皮細胞の中へおよび上皮細胞を通してのその乏しい吸収の故に、送達系として常に成功するとは限らないかも知れない。より一般的には、例え大量の抗原および/またはアジュバントが適切な標的(例えば、GIT中のM細胞および/またはパイエル板(Peyer's patches)へ送達できるとしても、それらが効果的であるために適切な又は最適な物理化学的形態(例えば、適切に又は十分に可溶化された形態)にないかも知れない。
【0011】
抗原の経口製剤用の先行技術カプセル化および製剤の例は以下を含む。
【0012】
U.S.Pat. No. 5352448(Bowersockら、1994年10月4日 発行)は、第一胃中で抗原を分解から保護するヒドロゲルマトリックス中の抗原を含んで成る、反芻動物用の経口ワクチン製剤を記述している。マトリックスは、抗原の存在下でのメタクリル酸およびメチレンビスアクリルアミドの架橋に、または引き続く再水和に続く抗原の担持のいずれかに起因する。マトリックスは、好ましくは、直径 3-5mmのシリンダー中で重合を実施し、続いて、得られた固体シリンダーを3-5mm 厚さのディスクに裁断することによって錠剤化される。過硫酸アンモニウムおよび重亜硫酸ナトリウムが重合開始剤として例示される。
【0013】
U.S.Pat. No. 5674495(Bowersockら、1997年10月7日 発行)は、抗原とアルギン酸塩溶液とを塩化カルシウム溶液中に噴霧することによって小滴(droplets)のゲル化を起こして得られる、または塩化カルシウムをアルギン酸塩/抗原に添加することによって得られる1〜100μmの個々のマイクロ粒子形態のアルギン酸塩ゲルを含んで成る経口投与用のワクチン組成物を記述している。アルギン酸塩表面と反応する、またはアルギン酸塩表面と親和性を有する官能基を持つポリマーが粒子を被覆するために用いられてよい。ポリリジンがその様な被覆ポリマーの例である。マイクロ粒子はそれらを古典的なヒドロゲルまたはアルギン酸塩ゲルマトリックスの様な親水性の担体マトリックス中に分散することによって製剤化されてよく、2〜8 mmの寸法範囲の担体マトリックスペレット(アルギン酸塩担体マトリックス中のアルギン酸塩マイクロ粒子)を生成する。ペレットはマイクロ粒子の様に被覆されてよい。この特許はまた、マイクロ粒子がワクチン含有ゼラチンで製造される変形を記述しており、その場合には、ゼラチンマイクロ粒子が、不特定の油でのエマルジョンの固化(温度低下経由の)から生じる。これらのゼラチンマイクロ粒子の安定化は、ポリ-l-リジンで被覆することによって達成される。
【0014】
U.S.Pat. No. 5500161(Andrianovら、1996年5月19日 発行)は、送達されるべき物質(抗原の様な)もまた溶解され、分散されまたは懸濁されている水性溶液中に、実質的に水不溶性のポリマーを分散し、次いでポリマーをその物質と一緒に、衝撃力(例えば、剪断凝固)または化学的凝固(例えば、電解質、pH 変化などの使用による)により凝固することによって、球状および非球状両方のマイクロ粒子を形成することによって製造されたマイクロ粒子を記述している。この特許で用いられている用語「マイクロ粒子」は、1〜1000ミクロンの間の寸法範囲にある固体粒子を意味することを定義するものではあるが、最大の例示されたマイクロ粒子は20ミクロンの直径を有する。特許によれば、1〜10ミクロンの間のマイクロ粒子は、ワクチンの様なある生物学的応用に用いられる。
【0015】
U.S.Pat. No. 6015576(See ら、2000年1月18日発行)は凍結乾燥された抗原を含有する多層ラメラリポソームを記述している。リポソームは、好ましくは、マクロファージによる加工を確実にするために、20nmより大きくて、20μmより小さい。リポソーム調合薬は、腸溶性に被覆されてよいピルまたはカプセルとして経口投与用に包装される前に凍結乾燥される。
【0016】
U.S.Pat. No. 5811128(Tice ら、1998年9月22日発行)は生物活性剤(特に、ワクチン抗原)を動物へ送達する組成物を記述しており、有効量の生物活性剤をポリ (DL-ラクチド・コ・グリコリド) の様な生体適合性のある賦形剤中にカプセル化しておよそ10マイクロメーターより小さい寸法を有するマイクロカプセルを形成する工程を伴っている。そのカプセルは、抗原の水性溶液を塩化メチレンのポリマー溶液中に分散させることによって製造される。ポリマー溶液は次に水性ポリ(ビニルアルコール)溶液へ添加されて、水中油エマルジョンを形成し、そのエマルジョンからマイクロカプセルが遠心分離および凍結乾燥によって集められる。マイクロカプセルの懸濁液は挿管針を使って投与された。
【0017】
キトサンマイクロ粒子は、また、経口ワクチン用としても有用であり得る。Van de Lubbenらは、J. Drug Target、2002 の中で、1.7μmキトサンマイクロ粒子が、体外のヒト細胞モデル中のM細胞によって輸送されたことを記述している。
【0018】
Liらは、BMC Biotechnology、2008 の中で、ワクチン送達用のアルギン酸塩被覆されたキトサンマイクロ粒子(初期の平均寸法で 300nm)を記述している。マイクロ粒子をアルブミン中で培養することによって(結果は、平均寸法 404nm)、抗原 (ウシ血清アルブミン) がキトサンマイクロ粒子に担持された。抗原が担持されたマイクロ粒子の懸濁液のドロップが、次にアルギン酸ナトリウム溶液中へ導入されて、アルギン酸塩被覆(抗原が担持された)マイクロ粒子を生成し、そのマイクロ粒子は塩化カルシウム中に再分散されてマイクロ粒子表面のアルギン酸塩層が架橋された(得られた平均寸法: 1324nm)。
【0019】
腸上皮の障壁中へ及び/または通っての薬剤および微粒子の送達を増強する一つのアプローチは、消化管の受容体部位を標的とした微粒子製剤である。例えば、Higgins らは、Pharmaceutical Research Vol 21、2004 において、M細胞を標的として糖蛋白質UEA-1 レクチンの有機小分子ペプチド模擬体を採用した。これらの模擬体は、ビオチン化されたペプチドを使って、フルオレセイン・イソチトシアネートが担持された0.289μmの直径を持つストレプトアビジン・ポリスチレン粒子に吸着された。Roth-Walterらは、Vaccine、Vol 23、2005 において、ワクチンが担持され、アルファ-L-フコース特定のヒイロチャワンタケレクチン(AAL)で官能化された1〜3μm寸法のポリ(D、L-乳酸-コグリコール酸)マイクロ球を使用している。これら両方の文献(Higginsら及びRoth-Walterら)とも、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0020】
ポリ乳酸-コグリコール酸塩(PLG)系、即ち上記記載の様な系は、VajdyらによってImmunology and Cell Biology、Vol. 82、2004 (その全体は引用によって本明細書中に組み込まれる)に記述された様に、注射可能な製剤および経口ワクチン製剤の双方に潜在的に有用なものとして試験されてきた。この文献はまた、注射可能なワクチン用のアジュバントとしてのエマルジョンの使用を記述し、および、Chiron/Novartis社によるMF59(水中スクワレン油エマルジョン)の様なアジュバントおよび、GSK社によるAS03 即ち、スクワレン(10.68 ミリグラム)、DL-α-トコフェロール(11.86 ミリグラム)およびポリソルベート80 (4.85 ミリグラム)が、例えば、注射可能なインフルエンザワクチンの成分として登録されているが、エマルジョン成分の潜在的毒性がその使用を制限していることを指摘する。例えば、EMEAのウエブサイト上のプレパンドリックス(Preprandrix(登録商標))プロダクト情報を参照せよ。
【0021】
エマルジョンを経口ワクチン製剤の成分(またはアジュバント)として使用することができれば望ましいであろう。
【0022】
US Pat. No. 5961970 (Lowellら)は、約30 nm〜約500 nmの間の範囲の粒子寸法を有する、元々または後発的に小滴中に取り込まれた抗原の増強された免疫原性を来す複数のサブミクロンの水中油小滴エマルジョン形態のワクチンアジュバント組成物を記述している。粘膜性免疫を達成するために、マルジョンはまた粘膜付着性の高分子を含有してよい。腸の取り込みを促進するためにエマルジョンは、投与の経口ルートが選択されたときに胃流体へのエマルジョンの暴露を防ぐために、ゼラチンカプセル中にまたは他の方法で腸溶性被覆中にカプセル化されてよい。更に、エマルジョンはそのカプセル化に先立って、抗原の追加的安定性を達成するために凍結乾燥されてよい。エマルジョン粒子は脂質または脂質様組成物(例えば、MCT)を含んで成る疎水性のコアを有し、および、リン脂質(例えば、レシチン)の様な天然の生物学的に両立し得る界面活性剤またはTWEEN-80の様な薬学的に許容し得る非天然の界面活性剤であってよい両親媒性の及び/または非イオン性の界面活性剤で安定化される。界面活性剤は、粒子を所望の寸法範囲内に維持するのを助け、その凝集を防ぐのを助ける。
【0023】
US特許出願 2001/0043949(Delgadoら)は、生分解性の合成ポリマーマイクロ粒子、抗原およびマイクロ粒子表面の被覆を形成している腸溶性ポリマーを含んで成るマイクロ微粒子組成物を記述している。
【0024】
経口ワクチンは、好ましくは、加工および貯蔵を促進し、安定性(特に、抗原安定性)を増強し、およびコールドチェーン取り扱いの必要性を回避するために、固体または実質的に固体であるべきである。液体は固体投与ワクチンが必要とするよりも容器、バイアル、注射器等へのより手間のかかる充填および封じ込めを必要とする上に、液体は固体より不安定化し易いからである。
【0025】
PCT 出願公開 WO/2008/122967(シグモイドファーマ社(Sigmoid Pharma Limited))は液体、半固体、または固体のコアを有するミニカプセルを含んで成る経口組成物および
図2を記述しており、
図2には、有効成分が可溶化され、または懸濁形態にあり、放出制御ポリマー被覆を有している半固体-または固体-充填のミニカプセル/ミニ球の図式が載っている。実施例20 は、水性溶液をスクワレン(天然の不飽和炭化水素)、Gelucire 44/14 およびLabrafil MS 1944 CSから構成された油溶液と混合して作られた押し出しエマルジョン医薬懸濁液のビーズを記述している。水可溶性の有効成分 ヒドラジンが水性相にあり、油相は製剤の 1.12 乾燥重量 %である。
【0026】
乾燥粉末ワクチンが、例えば Garmiseらにより、AAP PharmSciTech、Vol. 7、2006 年、に記載されているように、鼻孔内送達用として存在する。経口送達用の固体投与ワクチンもまた存在するが、しかし、主要な例が、熱殺菌されたビブリオコレラ菌の全体細胞が従来の技術を用いて錠剤化されているコレラワクチン錠剤である例は希である。
【0027】
もし、界面活性剤をエマルジョンのミニカプセルまたはミニ球製剤中に組み込むことが所望なら、特別な挑戦が発生する。製造中にカプセルを生み出し及び維持するための表面張力の必要性は、界面活性剤によって引き起こされる表面張力の低下がカプセルの完全性を破壊し、または、例えば、殻またはカプセル層が望ましいより頑丈な型を生じる可能性があることから、界面活性剤の使用を排除しまたは制限する可能性がある。従って、液体の、乳化された、または予備可溶化された有効成分を界面活性剤と一緒に処方することが難しい可能性がある。
【0028】
ワクチン組成物が、経口投与に引き続き、有効成分(例えば、抗原およびアジュバント)を結腸中で放出することが望ましいこともある。その様な結腸特定の送達系は、結腸に到着次第まだ有効成分を放出しているGITの上方部における有効成分の放出を防がなければばならない。医薬の送達技術の分野では、pHおよび時間依存性のポリマー媒介技術を含め多くの製剤アプローチがある。しかしながら、小腸および結腸間のpH変化はよく文書化されている一方、差異は小さく、且つ、個人間で変わり得る。このことは、予想可能な薬剤放出プロフィールの獲得においてpH-依存系を信頼性のないものとし得る。時間依存系は、送達系のGIT通過時間に依存する。これらの系の主な制約は、小腸通過時間における生体内多様性が、小腸(早すぎる)または結腸の終末部分(遅すぎる)における有効成分の放出に導き得ると云うことである。その様な経口薬物送達系の個々の受容者の病態生理学的状態もまた、これらの時間依存系の性能に大きな効果を有するから、過敏性腸症候群および炎症性の腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含め)を持った患者は、結腸を通って加速された通過を示す。これらの考慮とは独立に、小腸(幽門)への侵入ポイントでの投与形態の寸法は、GI通過時間および/または応答の多様性に大きな効果を有し得る。
【0029】
腸の粘膜性免疫ネットワークは、食源および共生細菌から誘導された幅広い抗原に対する相対的な不応答性または免疫寛容(tolerance)(または「経口免疫寛容」)を維持する能力を発達させて来た。Friedmanら(PNAS USA 1994;91:6688-92)によれば、経口免疫寛容は活性細胞抑制またはクローンアネルギーの発生によって媒介されるのであって、決定因子は経口的に供給される抗原の投与量である。Nagler-Andersonら(PNAS USA 1986;83:7443-6)によれば、経口免疫寛容は投与量特定的であり、免疫寛容喪失は投与量の増加に伴って生じる。Chenら(1994 Science;265:1237-1240)によれば、抗原投与の低い投与量は活性細胞制御の誘導を助ける。Chenらによれば(1995 Nature;376:177-180)、高い投与量はクローンアネルギーまたは欠失の誘導を助ける。特別な研究において、そのT 細胞がMBPに特定なT細胞受容体(TCR)を有するマウスへのミエリン塩基性蛋白質(MBP)の高い投与量が、T 細胞活性化および受容体の抑制的調節という結果を生んだ(Bensonら、2000 J Clin Invest、106:1031-1038)。加えて、リポ多糖またはコレラ毒素サブユニット Bの様な免疫アジュバントの供給によって経口免疫寛容を増強することができて、このことは、更なる個体数の細胞を刺激して免疫応答をダウンレギュレートするように見える (Khoury ら、J Exp Med 1992;176:1355-64)。
【0030】
経口免疫寛容は多様なT 細胞媒介自己免疫疾患を予防しまたは治療することが示されてきた。例えば、多発性硬化症を患った30人の患者を含む二重盲パイロット試験(double-blind pilot trial)において、ウシミエリン抗原の経口投与がミエリン塩基性蛋白質と反応するT 細胞の数を減少させ、何ら測定にかかる毒性を示さなかった。(Werner ら、Science 1993;259: 1321-4)。Trenthamらは、II型コラーゲンを重篤な活性リューマチ性関節炎を患った60人の患者に供給することによって、経口免疫寛容の臨床的有効性を実証した (Trenthamら、Science 1993;261: 1727-30)。トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)の動物モデルにおいて、Th1媒介大腸炎、TNBSでハプテン化された結腸抽出物の給餌が粘膜性炎症の発達を防いだことが報告された(Neurath ら、J Exp Med 1996;183:2605-16)。中程度から重篤なクローン病の治療に対する、自家結腸性蛋白抽出物供給の安全性および有効性を評価するフェーズ I研究において、Margalitらは10人の被験者中7人に、安全性および誘引された緩和を実証した (Am J Gastroenterol 2006;101)。卒中、アルツハイマー病およびアテローム性動脈硬化症並びにタイプ 1糖尿病も同様に含む他の疾患モデル動物が、抗原の粘膜性投与に応答した。
【0031】
抗原が、腸関連リンパ組織(GALT)、よく発達したリンパ小節(パイエルス板)から成る免疫ネットワーク、上皮の絨毛、内皮のリンパ球、およびGIT中の固有層全体に散らばる他のリンパ球、と最初に遭遇したときに始まる経口免疫寛容の間に、多様な応答が誘引されまたは抑制される。
【0032】
より一般的には、固有層は、身体内の多様な管(気道、胃腸管および尿生殖管の様な)を内張りしている湿気を帯びた内張り(粘液性の膜、または粘膜)の構成要素である。この様に、固有層(より正確には固有層粘膜)は、上皮組織の下に横たわり、上皮組織と一緒に粘膜を構成する緩やかな結合性の組織の薄い層である。固有層は、小腸の中の毛細管および中心乳び管(リンパ管)と同様にリンパ組織を含有する。固有層はまた、粘膜性上皮組織上に開口している導管を持った粘液および漿液分泌物を分泌する腺を含有する。
【0033】
抗原はGALTのレベルで直接的に作用し得るし、または吸収後にその効果を発揮し得る。経口免疫寛容(oral tolerance)および粘膜性免疫(または、免疫:immunization)は、GALT中のT 細胞との細胞相互作用を提示している抗原と関連する免疫学的連続体の一部を形成する。胃腸管の明確な部位を識別することができる。直腸/結腸は免疫誘導性の(組織化されたリンパ 組織)と効果器部位(拡散固有層)の混合であり、一方、空腸は殆ど何ら免疫誘導性部位を含有しない。このことは、各組織のリンパ組成物中に反映されている:空腸は大部分が記憶 CD4
+ T 細胞を含有し、一方、結腸は大きな割合の未感作 CD4
+ T 細胞を含有する (VeazeyおよびLackner、2006;PLoS Medicine;3:12 - 2188-9)。
【0034】
急性HIV感染において、感染の数日以内に急速で甚大な CD4
+ CCR5
+ T 細胞の欠損が生じるが、一方、血液およびリンパ節の様な末梢のリンパ組織、それらは主に未感作 CD4
+ T 細胞をかくまうが、その様な末梢リンパ組織は余り厳しくは影響されない(Brenchley ら、2004 J Exp Med 200: 749-759)。Mehandruらは未感染のボランティアと同様に、最近HIVに感染した患者から得られた消化管および末梢血液からのリンパ球集団を研究して、HIV感染後出来るだけ早く高活性な抗レトロウイルス薬治療(ART)を始めた大部分の患者が、治療の継続期間を問わず、腸 CD4
+ T 細胞の完全な基準値への回復を依然として経験していないことを実証した。それよりむしろ、HIV感染は、末梢のリンパ組織には反映されない腸の免疫系における活性化の連続状態の結果を招く(Mehandru ら、2006;PLoS Med 3(12): e484)。Mehandruらからのデータは、腸の炎症、並びに、CD4
+ T 細胞の継続的感染、破壊、および置き換わり(または、ターンオーバー)がARTの患者に生じると云う証拠を提供する。このことは、よりよい腸組織中の分布を持った医薬が、おそらく、粘膜性組織中の免疫活性化を減少しまたは防ぐ機序と相俟って、より有効にHIV感染と戦うことを示唆するであろう。
【0035】
結腸を標的とした多くの送達系が探求されてきた。これらの系は以下を含む:結腸で生じるが胃および小腸では生じない蠕動波に依存する腸管の圧力制御結腸送達カプセル;pH 感受性ポリマー被覆(上部GITに無傷のままにある)と結腸中に見出される細菌によってのみ分解する多糖被覆との組合せ;結腸細菌で分解されたペクチンおよびガラクトマンナン被覆;結腸細菌によって産生されたアゾ分解酵素によって次第に分解されたアゾヒドロゲル。先の4つの系は、Yangら、International Journal of Pharmaceutics 235 (2002) 1-15、によってレビューされ、その全体は引用によって本明細書に取り込まれる。多糖類に基づく送達系は特別な興味がある−例えば、Kosaraju、Critical Reviews in Food Science and Nutrition、45:251-258 (2005)を参照のこと。その全体は、引用によって本明細書に取り込まれる。それにも拘わらず、結腸中の特定の酵素的活性に主に依存する系にとって、疾患状態はもう一度、結腸性微生物叢中の病理学的かく乱(例えば、pH変化および細菌性酵素の量/活性の変化に由来する)の結果として、薬物放出プロフィール中の多様性を来し得る。
【0036】
多くのワクチンが成功するためには多数回の免疫(または、免疫化)が求められると云うことは異常ではない。小児集団に対して、ジフテリア、破傷風および百日咳(DTP)ワクチンに対する場合の様に5回までの免疫が必要とされ得て、ジフテリア等のワクチンは、生後の最初の6月の間に3回投与され、2才の間に4回の投与が継続され、および、4才〜6才の間に最後のブースト(boost:「追加免疫」または「免疫強化」)が行われる。しかしながら、ワクチンの幾つかは、完全な免疫シリーズ、例えば、破傷風−ジフテリア(Td)ワクチン、それについては、ヒトの生存期間中を通して10年毎にブーストが推奨されるが、そのワクチンを既に接種している成人についてさえ、更なるブーストを必要とする。「プライム−ブースト(prime:または「初回免疫」または「初回接種」;boost:「追加免疫」もしくは「強化免疫」または「追加接種」もしくは「強化接種」)」原理は、弱毒化生ワクチン(例えば、経口ポリオワクチン)、弱毒化ワクチン(例えば、肝炎 Aワクチン)、組み替え蛋白質サブユニットワクチン(例えば、肝炎 Bワクチン)および多糖類ワクチン(例えば、インフルエンザ菌タイプ bワクチン)に適合する。これらのワクチンにとって、プライム-ブーストは「相同」である。なぜならば、初期のプライム(初回)免疫で与えられた同じワクチンが、続いてのブースト免疫でも用いられるからである。より詳細な議論については、Curr Opin Immunol. 2009 Jun;21(3): 346-51、Epub 2009 Jun 6 を参照のこと。その全体は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0037】
過去10年間の間、「非相同」のプライム−ブースト方式と同じ抗原を用いながら、プライム−ブースト免疫に適合したワクチン送達方法が得られないことを研究が示してきた。最も興味深くて予期せぬ発見は、多くの場合、非相同のプライム−ブーストが、「相同」のプライム−ブーストアプローチより有効であるという事である。DNAワクチンおよびウイルスベクターに基づくワクチンの様な新規なワクチン接種アプローチの急速な進歩が、確実に、非相同のプライム−ブーストワクチン接種の範囲を更に拡大し、DNAプライムに引き続き、組み替蛋白質、弱毒化ワクチン、ウイルスベクターおよびBCGによるブースト;ウイルスベクターでのプライムに引き続き組み替え蛋白質によるブースト;および、BCGでのプライムに引き続くウイルスベクターによるブーストを含む、非相同のプライム−ブーストワクチン接種を頻繁に使用してきた。
【0038】
有効なB 細胞媒介の免疫および抗体応答が、CD4
+ T 細胞からの援助をしばしば要求すると云うことが知られている。明確な CD4
+ 効果器 T 細胞サブセット、T 小胞ヘルパー(T
FH)細胞と呼ばれるが、このサブセットが前記支援を提供すると云うことが考えられる。Science on July 16、2009 (DOI: 10.1126/science.1175870) にオンラインで発行されたJohnstonらの仕事によれば、CD4
+ T 細胞中の転写因子 Bcl6の発現が、マウスにおける生体内 T
FH分化および B細胞へのT 細胞支援にとって必要且つ十分である。その文献全体は引用によって本明細書に取り込まれる。これらの研究者はまた、転写因子Blimp-1、Bcl6の拮抗剤が、対照的にT
FH 分化および支援を阻害し、それによって、B細胞胚中心および抗体の応答を阻止していると述べている。かくして、T
FH細胞は適切な生体内 B細胞応答にとって必要とされ、Bcl6 および Blimp-1は T
FH分化において中心的なるも相反する役割を果たす。
【発明を実施するための形態】
【0085】
詳細な説明
本発明は、一つの側面において、免疫調節剤、特に免疫促進剤、例えば抗原またはハプテンを含んで成る組成物に関する。組成物は注射以外の経路によって適切に投与され、および少なくとも、その様な非注射経路でヒトまたは動物へ投与されるときに、免疫調節剤(例えば抗原またはハプテン)が単独で投与されるときより、通常は免疫調節剤に対するより強力な免疫応答を誘発する。本発明はまた、抗原または抗原および以下に記載された1以上のアジュバントの群もしくは組合せを含んで成るワクチンに関する。明らかになるように、本発明また、先行する免疫調節組成物を製造し及び使用する方法に関する。
【0086】
本発明は、油の小滴が分散された水可溶性のポリマーマトリックスを含んで成る医薬組成物をその範囲に含み、組成物は有効成分を含んで成る。組成物は、水可溶性のポリマーマトリックスおよびマトリックス中に分散した油小滴の形態で油相を含んで成るとして記述されてよく、組成物は有効成分を含んで成る。有効成分は免疫調節剤であり、抗原またはアジュバントであってよい。1以上の有効成分が組成物中に含有されていてよい。本発明の1つの実施態様において、抗原およびアジュバントの双方が組成物中に含まれ、および、随意に1以上の抗原および/または1以上のアジュバントが含まれる。本発明は、従って、(i)油小滴が分散した水可溶性のポリマーマトリックスを含んで成る医薬組成物であって、組成物は、アジュバント、抗原またはそれらの組合せから選択された少なくとも1つの免疫調節用有効成分を含んで成る医薬組成物、および(ii)水可溶性のポリマーマトリックスおよび油相をマトリックス中に分散した油小滴の形態で含んで成る医薬組成物であって、組成物は、アジュバント、抗原またはそれらの組合せから選択された少なくとも1つの免疫調節用有効成分を含んで成り、油相(即ち、油小滴の少なくとも幾つか)は有効成分を含んでよい医薬組成物、を本発明の範囲内に含む。
【0087】
マトリックスおよび油相間での有効成分および他の構成成分の分布は分からない。組成物の製造中に、どちらの相(油相または将来のマトリックス相)に構成成分が取り込まれたかは分かる一方、最終組成物において、どの程度まで、もしあるとして、構成成分が相を変えるであろうかは分からない。しかしながら製造中に、親油性の物質は油相に含まれ、親水性の物質は水性相(将来のマトリックス)に含まれることから、各構成成分の少なくとも一部が、および、おそらくその全てが、固化した組成物中で、その当初の相中に残るであろうと考えられる。
【0088】
本発明は、1以上の界面活性剤、非イオン性の界面活性剤から随意に選択された界面活性剤、を含有する組成物を含む。実施態様において、1以上の界面活性剤の少なくとも一部、および随意に、組成物の全界面活性剤含量が油小滴中にあると云うことが考えられる。(組成物の全界面活性剤含量が油小滴中にあるときは、微量の界面活性剤がマトリックスに入り込んでよく、この特定は、如何なる成分の僅かな量も、組成物の他の相から別の相に入り込み得るということを理解する実際上のやり方で読み取るべきであるということが、当業者によって理解されるであろう。)
【0089】
開示の全範囲を通じて、本発明はマトリックス上に1以上の被覆を有する組成物を含む;実施態様において、組成物はポリマー性被覆(例えば、単一の被覆または2重の被覆)を有する。ポリマー性被覆は有効成分の放出の調節、例えば制御に役立つことができ、および、例えば結腸中の細菌性酵素の存在下で分解することができ、または腸溶性の被覆(これら両方のタイプの被覆も存在し得る)となることもできる。組成物は細孔形成剤を含有する被覆を含むことができる。知られているように、細孔形成剤は所望の放出部位で被覆中に細孔の形成を促進する。細孔形成剤は、典型的には、胃腸管流体に放出部位で曝されたときに可溶性である。実施態様において、組成物はpH非依存性のポリマーおよび細孔形成剤を含有する被覆を有する;例えば、細孔形成剤は結腸中において細孔形成を促進することができる。組成物は結腸中で有効な細孔形成剤を含んで成る被覆、および結腸中で分解可能な被覆の両方を有することができる。
【0090】
本発明の組成物は、ワクチン抗原の、粘膜表面および/または下層の粘膜性リンパ組織、M-細胞、パイエルス板または他の免疫関連細胞または細胞系上への吸着およびそれによる吸収を増強する1以上の剤を含有してよい。用いられる剤は当分野で知られたものでよい。その様な剤の例は、レシチンおよびレクチンである。
【0091】
本発明の組成物は経口投与に適しているであろう。本発明の組成物は経口投与に適用されてよく、随意に他の如何なる投与経路も除外されてよい。
【0092】
1つの実施態様において、組成物は経口投与に適用されて消化管中で油小滴を放出する。例えば、その様な組成物はマトリックス中に腸溶性のポリマーを含有してよい。
【0093】
本発明は、本明細書で開示されている制御され又は標的を狙った油小滴の放出を与える被覆(例えば、単一の被覆または2重の被覆)を有する組成物含む。実施の1つのクラスにおいて、組成物は例えば、腸溶性のポリマー、例えば、HPMCPの様なHPMCを含む。
【0094】
組成物の1つのクラスは、水可溶性のマトリックスおよびマトリックス中に分散した油小滴の形態の油相を含有し、油相は抗原およびアジュバントを含んで成り、および組成物は、抗原およびアジュバントを胃腸蛋白質分解に対して保護するために、腸溶性物質を含んで成る。腸溶性物質は外側被覆を形成するか、またはその中に含まれてよく、または、それはマトリックス中に含まれてよく、または油相中に含まれてよく、又はこれらの配置の2つまたは3つの組合せ中 (例えば、外側被覆を形成し又はその中に含有され、および油相中にも含まれる)に在ってもよい。幾つかの実施態様において、腸溶性の物質は外側被覆を形成し又はその中に含有されて、マトリックスおよび油相中には存在しない。
【0095】
先に示した様に、本開示組成物は、直前の2つの段落で述べた組成物も含めて、ミニビーズの形態をとってよく、そのミニビーズは、例として挙げれば、0.5mm〜5mmの直径、例えば、0.5mm〜2.5mmの直径を有してよい。本発明はそれ故に、ミニビーズの形態の組成物を含み、そこでは油の小滴が油相を構成し、油相は抗原およびアジュバントを含有し、ミニビーズは随意に、抗原およびアジュバントを胃腸の蛋白質分解に対して保護するために、さらに腸溶性の物質を含んで成り、その様な腸溶性のミニビーズは経口投与に適している。幾つかの実施態様において、腸溶性の物質は、外側被覆を形成し又はそこに含有され、または、マトリックスおよび/または油相中に含まれる。他の実施態様において、腸溶性の物質は外側被覆を形成し又はそこに含有され、および組成物は塩基を含有しない;開示はマトリックスが塩基無しの組成物を含む。開示はまた塩基を、例えばマトリックス (水性相)中に含有する組成物を含む。本発明はその全体のスコープを通して、油相が、随意に非イオン性の界面活性剤から選択された、またはそれを含んで成る1以上の界面活性剤を含んで成る実施態様を含む。
【0096】
実施例で実証される様に、本発明は、経口的に投与されたときに免疫原性であり、毒性のある抗原による挑戦に対して保護を与えるのに有効である組成物を含んで成る(含有する)。本発明の組成物のどの特徴がその様な免疫原性の効果を達成するのに貢献しているかは分からないが、理論に制約されることなく、油相を小滴として提示することが1つの因子であろうと信じられる。これに関連して、より小さい小液滴寸法と増強された免疫賦活効果との間の関連の可能性を、データが示唆する。抗原 (卵アルブミン) の水可溶性マトリックスビーズ中への組み込みが、油またはアジュバント無しでは効果が無いこと、即ち、抗原の単なる保護は免疫賦活効果を獲得するには不十分であることもまた観察された。
【0097】
入手可能なデータは、油相が抗原およびアジュバントを含んで成る組成物にとっての免疫賦活効果は、抗原がおそらく小さな油小滴の形態で身体に提示される様に、油相の小滴としての存在および抗原の油相中への包含によって促進されることを示唆する。アジュバントは、また、この実施態様において油小滴中にあるが、免疫原性をよりよい水準へと増強する助けをし、それ故に好ましい。この段落で提示された理論に関して、本発明の解釈は理論によって制約されるものではないことを記憶すべきである。
【0098】
開示のさらなる側面において、油の小滴が分散している水可溶性のポリマーマトリックスを含んで成るミニビーズの第1の集団および油の小滴が分散している水可溶性のポリマーマトリックスを含んで成るミニビーズ第2の集団を含んで成るプロダクトが提供され、ここで、ミニビーズの第1および第2の集団は異なり、少なくとも第1の集団のミニビーズが本発明のミニビーズである。2つの集団は本発明のミニビーズから構成されてよく、有効成分および/または賦形剤に関して(例えば、放出調節ポリマーの存在、非存在、量、配置および/または同一性に関して)異なってよい。プロダクトは、医薬製剤、例えば、カプセル、錠剤、座薬もしくはペッサリー、または軟膏もしくは流体であってよい。
【0099】
本発明の1つの側面は水可溶性のポリマーを含んで成る液体水性外側相の使用に在り、水可溶性ポリマー中には油小滴が分散していて、水性相の固化、例えば、架橋、冷却または加熱による固化を生起させまたは可能にする(allow: または、許容する)ことによって開示の組成物を構成する。
【0100】
本発明により、更に、免疫を調節する(例えば、ワクチン)組成物の製造方法が提供され、該方法は、水可溶性ポリマーの水性溶液を油ベースの液体と混合して油中水エマルジョンを形成する工程、即ち、少なくとも1つの水性溶液および抗原またはアジュバントまたはそれらの組合せを含んで成る油ベースの液体を形成する工程、ならびに、次に、得られた懸濁液を1以上のビーズまたは他の成形された構成要素に固化させまたは固化するのを可能にする工程、を含んで成る。
【0101】
製造方法で用いられる油ベースの液体は、抗原またはアジュバントまたはそれらの組合せを含有してよい;1つの実施態様において、油ベースの液体は抗原またはアジュバントの組合せを含有する。本方法の或る実施において、水性溶液は抗原またはアジュバントまたはそれらの組合せを含有しない。本方法の他の実施態様において、水性溶液はアジュバントを含有する(その場合には、油ベースの液体はアジュバント無しでよく、またはアジュバントを含有してもよい)。開示は抗原を含有する水性溶液の方法の実施を含む(その場合には、油ベースの液体は抗原無しでよく、または、抗原を含有していてもよい)。
【0102】
本方法は、ビーズまたは他の成形された構成要素を、例えば本明細書に記載された被覆物質で、例えば腸溶性のおよび/または他のポリマー被覆で、被覆する工程をさらに含有してよい。成形された構成要素は、1クラスの方法において、本明細書に記載された様な直径、例えば、0.5mm〜2.5mmの直径を有するビーズである。1つの実施態様において、本方法は、成形された構成要素をカプセル、錠剤、座薬、ペッサリーまたは投与のための他の服用形態に加工する工程をさらに含有する。本発明の組成物の、本明細書の他の場所に記載されている全ての実施態様および特徴は、今記載されたばかりの製造法およびそれによるプロダクトに当てはまる。
【0103】
一つの実施態様は、本出願人の出願PCT/EP2010/056838の実施例51-53の主題を排除する。従って、本発明の随意の実施態様において、組成物はPCT/EP2010/056838の実施例51-53から複製された以下の表中に列記されたものではない:
【表1】
【表2】
【表3】
【0104】
本開示にはまた、製剤が、6-10mg/gの卵アルブミンを含有しない、またはそれに代えて、1-5 mg/gのコレラ毒素のサブユニットBを含有しない、および、いずれの場合でもD-ソルビトールを含有しない本発明の随意の実施態様も含まれる。本開示には、製剤が6-1mg/gの卵アルブミンまたは1-5 mg/gのコレラ毒素のサブユニットBを含有しない本発明の随意の実施態様がさらに含まれる。
【0105】
本発明は、感染因子によって悪化させられ、または、直接的もしくは間接的に引き起こされた胃腸の状態の治療または予防方法を含み、該方法は、本発明による組成物を動物へ、例えば、経口的に投与することを含んで成る。開示のワクチン組成物を、非経口的にプライミング(初回)ワクチン接種(priming vaccination)を受けた動物へ経口的に投与することを含んで成る、免疫応答をブースト(「追加」または「補強」)する方法もまた含まれる。本発明の他の側面はワクチン接種または免疫応答を誘発する方法に在り、該方法は開示の組成物を口腔、消化管、鼻、直腸、または膣の表面の様な、粘膜表面と接触させることを含んで成り、該方法は、例えば、組成物を経口的に、経鼻的に、直腸経由で、または経膣的に投与することを含んで成る。開示組成物を動物への飼料または飲料水の一部として投与すること、または魚が繁殖し、食べまたは他の態様で生息している水の中へ導入することを含んで成るワクチン接種の方法が更に含まれる。本発明の1つの側面は動物(例えば、哺乳動物または魚)にワクチン接種する、または免疫応答を誘発する、本開示の組成物を動物へ投与することを含んで成る方法である。
【0106】
本明細書で用いられる略語「LEDDS」は「液体エマルジョン薬物送達系」を意味し、本発明のミニビーズを指す。(本発明のミニビーズは、それ自身、固化したエマルジョンであると考えてよい一方、理論に制約されることなく、体の中の薬物送達は液体エマルジョンを含むと信じることは評価されるであろう)。かくして、
図1 および 2 中に記された用語「LEDDS」は、開示のミニビーズを指す。
【0107】
本明細書において「抗原」は、非ヒト動物またはヒトへ導入されたときに、抗原に対する抗体および細胞媒介免疫の形成を来すであろう化合物、と定義される。
【0108】
本明細書において「アジュバント」は、抗原と組み合わせて用いたときに、得られる免疫応答を、通常、非抗原特異的な風に、強め、または強める以外に変化させ、または修飾する化合物または化合物類として定義される。
【0109】
幾つかの有効成分は抗原およびアジュバントの両方として作用することが出来る。例は、コレラ毒素およびその誘導体である。このことを念頭に置けば、上記定義は通常固定的ではあるが、これらの用語が採用される文脈は解釈への究極のガイドである。抗原およびアジュバントは、一緒にまたは個々に、「活性成分」とも呼ばれてよい。以後、活性成分への如何なる言及も、その誘導体を含む。
【0110】
本発明が、多くのワクチン、抗原またはアジュバントまたは他の成分を、単一な又は多様な組合せで送達するために用いられると云うことが更に理解されるべきである。本明細書で用いられる用語「抗原」または「アジュバント」は、以下のものを含むが、それらに限定されない:ペプチドまたは蛋白質(および模擬体、及び同様に、共有結合体、非共有結合体またはそれらの化学的類縁体)、遺伝子または他の核酸に基づくワクチンを支える核酸、例えば、DNA、RNAまたはDNA/RNA分子または誘導体 (例えば、メチル化誘導体) および、抗原性および核酸に基づくワクチンまたは免疫療法を含む多様な免疫療法に導く実体(entities)、それらのプライマーおよびアジュバント、および同様に治療性のまたは健康調節性の物質類を合成し分泌する微生物。
【0111】
本発明を使って送達することが出来る治療剤の適切なクラスは、ペプチド、蛋白質、ワクチン、およびオリゴヌクレオチド、それらの非共有結合性または共有結合性修飾体を含むが、これらに限定されない。
【0112】
さらに、本発明の組成物に含まれる有効成分、即ち免疫調節剤は、結腸または胃腸管の他の標的部位中に放出されたとき、それがより一層吸収され易く又は吸収され難くなる様に(吸収が所望され又は所望されない程度に依存して)溶解度が修飾された形態にあってよい。
【0113】
全ての有効成分が本発明の組成物中で可溶化されることは本質的ではない。製剤者の目的に従って、完全な溶解、部分的な溶解または溶解ゼロも、全て可能である。
【0114】
上記のように、有効成分は小分子、高分子または生物医薬であってよく、および、免疫原性および透過性を増強する様に、脂質親和性を増加する様に、および/または親水性を増加する様に設計された(または、非特異的アジュバント効果のみが所望されるペプチド、蛋白質、核酸または炭水化物の様な生物医薬の場合は、直感に反して、免疫原性を減じ、安定性を増加する様に設計された)如何なる変形、誘導体または共役体をも含む。
【0115】
「ワクチン」は、本明細書において、抗原性物質、特に、修飾された生の(弱毒化された生の)または弱毒化された感染因子、または感染因子のある部分(サブユニット)(サブユニットワクチン)を含んで成る抗原性物質、を含んで成る組成物として定義され、それは、最も頻繁にはアジュバントと一緒に動物へ投与されて、活性な免疫、免疫寛容の誘導、免疫寛容の破壊、自己免疫疾患の経路変更等の様な免疫学的に媒介された効果を生み出す。本発明の組成物は、ワクチン組成物または免疫調節組成物として、本明細書中で多様に記載される。文脈が要求しない限り、用語「ワクチン組成物」は、必ずしも予防接種、例えば免疫寛容または他の免疫療法ではない、免疫調節を含む。
【0116】
粘液性膜は、口腔(バッカル、舌下の)、鼻 (鼻の)、消化管 (腸の)、直腸 (直腸の)、または膣 (膣の)粘膜を含む。本発明組成物の適用に適切な他の粘液性表面は。眼の (角膜の、結膜の)投与経路を含んでよい。
【0117】
本発明のワクチン組成物は、直接適用、口腔経由の摂取、挿入、注射、によって、および当分野で知られた従来の他の方法を通じて、粘膜表面へ送達されてよい。食物または飲み物担体に投与されるときは、本発明のアジュバント/ワクチン組成物は通常、飲み物担体の場合は、重量/体積 (w/v) 基準で、および、食物担体の場合は、重量/重量 (w/w) 基準で、約0.0001〜10%の範囲の濃度で担体組成物中に含まれ、それぞれ、約0.01〜1.0%のw/vまたはw/wが好ましい。
【0118】
本発明のワクチン組成物は、錠剤、カプセル、顆粒、トローチ、および膣のまたは直腸の座薬(ペッサリー)の様な通常の固体投与形態で投与されてよい。
【0119】
他に述べられていなければ、本発明組成物の成分、構成要素、賦形剤等は意図された免疫調節、例えば、本明細書の他の場所でより詳細に議論されるワクチン接種の (即ち、薬学的に許容し得る) 目的に適している。
【0120】
有効成分は、本発明組成物の水性相および/または油相中に取り込まれてよく、および/または存在してよい。
【0121】
<抗原>
本発明で用いられる抗原は上記設定された定義内に入る所望の如何なる抗原でよい。抗原は 商業的に入手可能であり、または当業者がそれらを製造することができる。ワクチン中に含有される1以上の抗原性部位は、例えば、改質生−または死菌−微生物(例えば、化学的または熱的に殺菌された)のいずれかであることができる;または微生物もしくは他の細胞から精製された、癌細胞を限定されることなく含む天然のプロダクト;合成のプロダクト;遺伝子工学による蛋白質、ペプチド、多糖類または同様なプロダクト;または、アレルゲン、抗体またはその断片。抗原性部位はまた、蛋白質、ペプチド、多糖類、抗体または随意に他の同様な又は異なった分子本体と共役し、混成し又は会合した同様なプロダクトのサブユニットであることができる。抗原はまた、免疫応答を直接または間接的に発生させ、または免疫応答の媒介を阻害しもしくは影響する核酸、例えばDNAまたはRNAであってよい。例えば核酸は、蛋白質抗原をエンコードしていてよい。
【0122】
本発明によって用いることができる代表的な抗原は、限定されるものではないが、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫およびプリオンを含む他の感染因子から誘導された天然の、組み替えの、または合成のプロダクトを含む。抗原の例は、また、予防用または治療用ワクチンに用いることが望ましいであろうヒト抗原、例えば、特に自己免疫疾患に含まれる又は自己免疫疾患に関連する自己抗原;ホルモン;癌抗原;およびアレルゲンを含む。微生物性 (例えば、ウイルス性または細菌性) プロダクトは、有機体が製造し、または例えば、酵素的開裂によって製造するように誘引することができる成分であることができ、または当業者にとってよく知られた組み替えDNA技術によって製造された有機体の成分であることができる。
【0123】
抗原性物質は、例えば、以下から選択された感染因子から誘導され又はその感染因子に基づいてよい:ヘリコバクターピロリ菌、コレラ菌、毒素原性大腸菌(ETEC)、赤痢菌、クロストリジウムディフィシレ菌、ロタウイルスおよびカリシウイルス;または呼吸器感染の作因を含めマイコプラズマ肺炎、インフルエンザウイルス、および呼吸器合胞体ウイルスで引き起された呼吸器疾患;および、HIV、クラミジアトラコーマチス、ナイセリアゴノレエ(淋菌)および単純ヘルペスウイルスで引起された生殖器感染を含め性的に伝染した生殖器感染の作因。抗原性物質が誘導され得る他の感染因子は、ストレプトコッカス(連鎖球菌)属およびスタフィロコッカス(ブドウ球菌)属、例えば、黄色ブドウ球菌を含む。抗原性物質が誘導され得るさらなる感染因子は、ポリオミエリティス(小児麻痺)ウイルス(ポリオ)を含む。
【0124】
本発明の組成物は、感染性の剤、感染している剤又は上記リストに列挙された剤によって、しかしそれらに限定されない他のその様な剤によって、直接的または間接的に引き起こされ又は悪化させされた疾患の進行を、例えば、予防し、治療しまたは遅延させるためのワクチンであってよい。本発明は、ある実施態様において、その様な疾患の進行を治療しおよび/または予防し又は遅延させる手段も同様に提供する。
【0125】
<アジュバント>
ある実施態様において、本発明の組成物自体がアジュバント特性を有する。しかしながら、その様な実施態様が選択されるか否かに拘わらず、組成物は以下の様なアジュバントを、しかしそれらに限定されることなく、含んでよい:例えばサポニン、サポニンの断片、合成されたサポニンの成分、ISCOMS、ムラミルジペプチドおよび類縁体、プロロン酸ポリオール、トレハロースジミコール酸、アミン含有化合物、サイトカインおよびリポ多糖誘導体。アジュバントは例えば以下から選択されてよい:セラミド(例えばα-ガラクトシルセラミド:アルファGalCerとしても知られている)、キトサン、コレラ毒素例えばrCTB(コレラ毒素の組み替えBサブユニット)、大腸菌熱不安定エンテロトキシン例えばmLT、オリゴヌクレオチド、誘導体化されているか否かは問わず例えばCpG (シトシン・グアニンリン酸ジエステル)およびODN1a(デオキシイノシン/デオキシシトシン) の様なオリゴデオキシヌクレオチド、例えばMPLA、BCGなどのモノリン脂質 (MPL)、QS21およびQuilAの様なソープバークツリー(Quillaja saponaria)から誘導されたものを含めたサポニン、ポリI:C (ポリイノシン酸:ポリシチジリック酸またはポリイノシン酸-ポリシチジリック酸ナトリウム塩)など。先の全ての物質の誘導体もまた、誘導体が特定の文脈に挙げられたか否かに関わりなく、含まれる。本明細書でアジュバントとして特定された物質は、本発明において他の役割を有してよく又は1以上の役割を同時に果たしてよい。例えば、rCTBは、ある実施態様においては、抗原の役割も演じる.
【0126】
この様に、本発明で用いられるアジュバントはまた、先のアジュバントまたはアジュバント類型のどの誘導体からも選択されてよい。アジュバントはまた、海産誘導体、スポンジ等およびその誘導体も含む。通常、トール様受容体(tall-like receptor)リガンドがアジュバントとして含まれてよく、それらは、LPS、リポ蛋白質、リポペプチド、鞭毛抗原、二本鎖RNA、非メチル化 CpG島ならびに細菌およびウイルスによって古典的に放出されるDNAおよびRNAの多様な他の形態を含む。TLR3およびTLR9リガンドが1つの実施態様において好ましい。抗原提示細胞上のCD1d蛋白質に結合する物質がヤドリギ抽出物、特に、解毒されたヤドリギ抽出物であると特に考えられる。考えられる他のアジュバントは、Wagnerらにより PLoS ONE、April 2009、Vol 4、Issue 4、に記載されたノッド様(Nod-like)受容体 (NLR) リガンドを含む。その文献全体は引用によって本明細書に取り込まれる。ムラミルジペプチドもまた、Liらにより、DNA and Cell Biology、Vol 27、No. 8、2008に記載されたKLKL5KLKであると考えられる。その文献全体は引用により本明細書に取り込まれる。同様に考えられるのは、Schellackらにより、Vaccine 24 (2006) 5461-5472 に記載されたODN1aとの組合せになるKLKL5KLKである。その文献全体は引用により本明細書に取り込まれる。
【0127】
好ましいアジュバントは、天然のキラーT (NTK) 細胞を特別に刺激するセラミドおよび他の脂質分子(特に、非イオン性の脂質分子)を含む。セラミドはスフィンゴシンおよび脂肪酸から成り、細胞の細胞膜内に高濃度で見出され、脂質二重層中の主要な脂質の一つであるスフィンゴミエリンを形成している成分脂質の一つである。セラミドは、例えば、細胞の分化、増殖、プログラムされた細胞死(PCD)、およびアポトーシス(タイプI PCD)を規制しているシグナル伝達分子として作用する。好ましいセラミドは、アゲラスフィンおよび誘導体を含むアルファ-ガラクトシルセラミドを含む。特に好ましいアルファ-ガラクトシルセラミドは、日本のFunakoshiから商業的に入手可能であり、日本のKirin Pharmaceuticalsによって初めて合成された、KRN7000として知られるプロダクトである。KRN7000の誘導体もまた、本発明組成物の成分として考えられ、Dere らにより Organic Letters、Vol 10、No. 20、pp4641-4644 (2008) に詳細に記述されている。その全体は参照により本明細書に組み込まれる。Dereらによって記述されたアルファ-ガラクトシルセラミドのチオール化誘導体(そこでは、グリコシド基の酸素原子が硫黄原子によって置換されている)は、それらのラセミ体、エナンショマーまたはジアステレオマーおよび強く関連する誘導体として特に好ましい。
【0128】
1つの実施態様において、本発明の組成物への1以上のアジュバントの包含は、粘膜性免疫応答の賦活に役立つことができる。
【0129】
アジュバントは重量基準で組成物の約5%までの濃度で存在してよく、乾燥重量基準で約1%未満が好ましく、0.1%未満がより好ましい。
【0130】
<他の活性な成分>
この章の見出しは便宜のためだけであり、厳密なカテゴリーを暗示してはいない。例えば、この「他の活性な成分」の章に記載されたカテゴリー、物質または有効成分はまた、本明細書の他の章またはカテゴリーに入ることも考えられる。幾つかの賦形剤が活性であることができ、他の幾つかの有効成分が賦形剤的特性を有することもできると云うことを念頭に置いて、用語「賦形剤(excipient)」は本明細書において「他の活性な成分」を指すために時々用いられる。この章および本明細書の他の場所に記載されたある物質が、二重の役割、 例えば生体接着剤およびアジュバントの両方の役割を果たしてもよいと考えられる。この章に記載された物質が本発明組成物の水性相および/または油相に取り込まれ得る、および/または存在し得ると云うことも又考えられる。
【0131】
大まかに云えば、本発明は組成物中に、1以上の主要な有効成分(免疫調節剤、特に抗原および/またはアジュバント)に加えて、1以上の次の物質または物質のカテゴリーを取り込むことが予見される。例えば、組成物は、蛋白分解性酵素阻害剤の様な保護剤;粘膜性または生物性接着剤の様な接着剤実体;および吸着増強剤;生菌(probiotic);ワクチン成分の溶解度を最大化するための賦形剤;小腸、回腸または結腸におけるワクチン成分の透過性および/または吸収を最大化するための、特に、M細胞および/またはパイエルス板の様な免疫能力のある細胞に関しての、賦形剤を含有してよい。
【0132】
本発明の抗原含有組成物は、抗原の粘膜表面上への吸着および粘膜表面による吸収を増強するためのレシチンの様な1以上の剤を含有してよい。従って、本発明のワクチン組成物は、その様なワクチン抗原の吸着および吸収を増強するための1以上の剤を含有してよい。レシチンはフォスファチジルコリンの様な、リポソームを形成するために用いることが出来るレシチン類脂質性の物質であってよい。リン脂質、リゾリン脂質、糖脂質および中性脂質は、レシチンの典型的な組成物を含んで成る。レシチンは、完全に加水分解されたときに、2分子の脂肪酸、およびそれぞれ1分子のグリセリン、リン酸、および塩基性の窒素性化合物、通常はコリンであるが、を生成する分子である。レシチンから加水分解によって得られた脂肪酸は通常、しかし限定はされないが、オレイン、パルミチン、およびステアリン酸である。リン酸はグリセリンに、a-または 3-位のいずれかで結合していてよく、それぞれ a-グリセロリン酸または3-グリセロリン酸を形成して、a-および 3-レシチンとして知られる対応するレシチンシリーズを産生する。
【0133】
商業的レシチンは、卵黄、脳組織、または大豆からの抽出法によって得られる。卵からの卵レシチン (卵黄素) および大豆からの野菜レシチンは、牛脳からの精製レシチンと同様に、食物および医薬の製造法において乳化剤、酸化防止剤、および安定剤として用いられてきた。商業的レシチンは多様な供給源から、例えばCentral Soya (Fort Wayne、Ind.) から得られてよい。当業者は所望の適用に対して適切なレシチンを決定することが出来るであろう。
【0134】
本発明はまた、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-3-トリメチルアンモニウムプロパン(塩酸塩)、DOTAPとしても知られている、の様なカチオン性のリン脂質を含んでいてもよい。
【0135】
本発明はまた、1以上の腸内有益菌(pro-biotics)を含んでよい。腸内有益菌は個人または動物の健康に有益な細菌または微生物である。一般的に用いられる腸内有益菌の例は、限定的ではないが、乳酸桿菌、ビフィズス菌、連鎖球菌などの多様で有益な菌株を含む。もし存在するなら、それぞれの有機体は、それぞれ約103〜10s CPUの範囲の濃度で投与されるべきである。その様な腸内有益菌は、それに対して動物中に免疫応答を引き出すことが好ましいある抗原を発現させるために、遺伝学的に操作されてよい。その様な抗原および/またはその様な抗原が引き出される有機体の例は、上述してある。分子生物学のよく知られた技術が、その様な外因性の遺伝子を腸内有益菌微生物中へ導入するために用いることができる。
【0136】
弱毒化ウイルスワクチンの濃度は、動物当たり約103〜109 TCID50を含有するであろう。好ましい量は、動物当たり約104〜107 TCID50であろう。死滅抗原またはサブユニット抗原の濃度は、抗原のナノグラム〜ミリグラムの量に亘ってよく、約1 マイクログラム〜1 グラムが好ましい。
【0137】
透過性増強に関して、可能性のある賦形剤は、限定的ではないが、C8-C20 の様な中程度の鎖長のトリグリセリド(MCTs)、カプリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、SNAC、キトサンおよびそれらの誘導体、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリエーテル、胆汁酸塩、水酸化酵素阻害剤、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸および他の酸類)および/または多様な活性医薬成分に共有結合した酸化窒供与体基を含む酸化窒素供与体を含む。先のリストは、例えば、免疫応答が胃腸管の回腸中の免疫能力のある細胞によって媒介されるとき、回腸の透過性を増強するために特別な興味がある。
【0138】
結腸の透過性を増強するための典型的な賦形剤は、それらに限定されるものではないが、以下を含む:カプリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、SNAC、キトサンおよびその誘導体、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリエーテル、胆汁酸塩、水酸化酵素阻害剤、酸化防止剤および/または多様な活性医薬成分に共有結合で結合している酸化窒素供与体基を含めた酸化窒素供与体。その様な賦形剤は、免疫応答が結腸中で望まれるとき、または本発明のワクチン組成物が非ワクチン有効成分と組み合わされたときに、妥当である。
【0139】
組成物は、回腸および結腸中における免疫調節または他の活性な医薬に対する有効成分の治療的可能性を増強する賦形剤を更に含有してよく、限定されることなく以下を含んでよい:吸収制限剤、オメガ3油の様な精油、インドセンダンの様な天然の植物抽出物、イオン交換樹脂、アゾ結合の様な細菌分解性共役結合、アミロース、グアーガム、ペクチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、コンドロイチン硫酸エステル、デキストラン、グアーガムおよびローカストビーンガム等の様な多糖類、核因子カッパB阻害剤、フマル酸、クエン酸およびその他の様な酸、同様にそれらの修飾体。
【0140】
組成物は、限定的ではないが、PgPポンプ阻害剤を含む放出ポンプ阻害剤および制限的ではないが、チトクロームP4503A阻害剤を含む代謝阻害剤を含め、小腸での吸収に引続く全身性バイオアベイラビリティを増強する賦形剤または他の活性な医薬または他の成分を更に含有してよい。
【0141】
組成物は、限定的ではないが、クルクミノイド、フラボノイドの様な酸化防止剤を含む、又はより具体的にはクルクミン、β-カロチン、α-トコフェロール、アスコルビンン酸エステルまたはラザロイドを含む、小腸での吸収と関連した如何なる全身性副作用を緩和する賦形剤を更に含有してよい。
【0142】
組成物は、酸化防止剤(アスコルビン酸クエン酸エステル、フマル酸および他の酸の様な)、味マスキングまたは光感受性成分若しくは光保護成分を更にまたは個別に含有してよい。その様な酸成分は、水性媒体中においてあるpH域値以上でのみ溶解するポリマー、例えば、本明細書の他の場所で記載されているHPMC誘導体との組合せとして用いられたときには、代替的に又は付加的に溶解遅延剤として作用してよい。
【0143】
組成物は、例えばミニビーズ実施態様にとってもし所望なら、ミニビーズが胃の雰囲気に止まるか又はより長く止まることを確実にする接着剤を更に又は個別に含んでよい。本発明によるミニビーズはまた、浮遊または密度低下を容易化しまたは可能とする物質を、例えば、所望のGI部位においてミニビーズを局在化する手段として含有していてよい。本発明はまた、ミニビーズ実施態様において、胃の中または他のGI部位中で膨潤しおよび/または凝集する手段を有していてよい。
【0144】
本発明によるワクチン組成物の腸上皮障壁中へ、および/または障壁を通しての送達を更に増強する1つの実施態様は、受容体部位を標的とした手段、例えば、M細胞の様な消化管の受容体部位を狙う手段の取り込みを含んで成る。
【0145】
M細胞は、腸関連リンパ組織またはパイエルス板の上皮組織中に見出され、異質の物質、微粒子および抗原をGIT(胃腸管)の管腔からサンプリングして粘膜性免疫応答の下流側を形成する重要な役割を果たす専門的な抗原増殖細胞である。「標的とした手段」は、M細胞の経細胞輸送性能力を含むM細胞を標的とする手段を含む。組成物がその様に標的化された実施態様はまた、 GIT中での滞留時間を引き延ばし、上皮細胞表面でワクチンの高い局在濃度を生み出して下層リンパ 組織への吸収を促進する利点を有する。本発明によるその様な標的手段の例は、糖蛋白質 UEA-1レクチンの有機小分子模擬体である(例えば、Higginsら、Pharmeceutical Research、Vol 21、No. 4、2004、を参照のこと。その全体は、引用により本明細書に取り込まれる)。模擬体は、本発明組成物の水性相または油相と共に取り込まれてよく、および/またはミニビーズの表面上に吸着または被覆が存在するならそこに含まれてよい。それに代えて、模擬体は、例えば、被覆中に存在することなく、ミニビーズの水性または油相中に(例えば、分散され又は溶解されて)取り込まれてよい。他のやり方は、当分野では良く知られ、Higginsらの文献に記載された様に、ストレプトアビジン/ビオチン化されたリンカーと共役することである。他の標的化手段は、GM1受容体(コレラ毒素のBサブユニットに対する受容体)、シアリルルイスA抗原、レオウイルス抗原およびIgA受容体に対するリガンドを含むM細胞を標的とする分子実体を含む。更なる例は、Roth-Walterらにより、Vaccine、Vol. 23、2005、に記載された様な食用「みかんの皮茸」の着果体からのフコース結合レクチンであるヒイロチャワンタケレクチン(AAL)を含み、その文献の全体は引用により本明細書に取り込まれる。AALは、他の標的化手段に対して記載されたと同じように、本発明の組成物に取り込まれてよい。それに代えて、マトリックスまたは被覆の表面活性な基は、もし存在するならば、Roth-Walterらによって記載された様に例えば、カルボジイミド/N-ヒドロキシコハク酸イミドを用いて活性化してAALに結合してよい。他のその様な標的化手段は、哺乳類(ヒトを含め)の乳蛋白質成分、例えば、ラクトアドヘリンまたは他のインテグリン様分子および/または樹枝状細胞を標的とする分子を含む。その様な蛋白質は、ヒト出産後母乳中に見出される蛋白質を含んでよい。樹枝状細胞標的化物質はまた、消化管受容体部位標的化手段であるとも云える。
【0146】
1つの実施態様において、特に本発明の組成物の崩壊速度を増強することが所望のところでは、水性相は崩壊剤を含有していてよい。含まれてよい崩壊剤の例は、アルギニン酸、クロスカロメロース(croscarmellose)ナトリウム、クロスポビドン(crospovidone)、低置換ヒドロキシプロピルセルロースおよびデンプングリコール酸ナトリウムである。
【0147】
結晶化阻害剤(例えば、組成物の乾燥重量基準でほぼ1%)もまた、本発明の組成物中に、好ましくは水性相中に含まれてよい。例は、ヒドロキシプロピル/メチルセルロース(HMCまたはHPMC、ヒプロメロースなど)であり、それらは乳化剤(上記を参照)の様な他の役割をし、または溶解(以下を参照)を遅らせこともある。
【0148】
水性相はまた、以下の被覆に関する章で記載されるポリマーの1つをも含んでよい。その様な包含は、被覆を有する又は有しない組成物中にあってよい。1つの実施態様において、被覆なしでその様なポリマーは本発明の組成物本体中に取り込まれてよく、例えば水性相中に分散され又は溶解される。この実施態様において、1以上のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の誘導体を選択することが好ましい。と云うのは、これらのポリマーはpH依存性の溶解性を示し、それ故にマトリックス内に含まれて被覆の代わりに又は被覆に加えて溶解を遅らせ得るからである。胃pHより高いpHで溶解するポリマーを含むことが望ましい。特に好ましい例は、胃の下部(末端)の上部腸管で急速に溶解するヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、およびイオン化するカルボキシル基の存在がポリマーを高いpH(LFグレードに対して>5.5 およびHFグレードに対して> 6.8)で溶解可能にしているヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)を含む。これらのポリマーは信越化学から商業的に入手可能である。
【0149】
水性相はそれ故に、腸溶性ポリマーを含んでよい(用語「腸溶性のポリマー」は、より酸性の強い胃の雰囲気に比べて、より低酸性の消化管の雰囲気で優先的に可溶性であるポリマーを指す当分野の用語である)。腸溶性のポリマーは、例えば、如何なる既知の腸溶性ポリマーであってもよく、例えば HPMCP、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、メチルセルロースフタレート、エチルヒドロキシセルロースフタレート、ポリ酢酸ビニルフタレート、ポリ酪酸ビニルアセテート、酢酸ビニル−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸モノエステルコポリマー、アクリル酸メチル−メタクリル酸コポリマーまたはメタクリル酸エステル−メタクリル酸−アクリル酸オクチルコポリマーである。
【0150】
水性相はまた、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)または水酸化ナトリウム(NaOH)または1以上のその様な塩基の混合物の様な塩基を含有してよい。この実施態様において、塩基または塩基類は、組成物の乾燥重量基準で10%まで、好ましくは5%まで、より好ましくは約1%までの量で存在する。その様な塩基は、最適には水性相に含まれてよい。特に、腸溶性の物質(例えば、腸溶性の ポリマー、例えば HPMCP)が水性相に溶解されるべきところでは、水性相は塩基を含有してよい。その様なポリマーはアルカリ性のpHでのみ溶解するからである。腸溶性の物質を水性相に溶解するのと引き換えに、1つ (または1以上の) 物質がポリマーマトリックス中に存在し、および/または被覆中に含有されてよい。
【0151】
水性相は、本明細書の他の箇所、特に「活性成分」等の表題の章でより詳細に議論される様に1以上の有効成分を含んでよい。その様な有効成分は、製造において油相または水性相中のいずれかに導入されてよい(以下を参照のこと)。それらは、水性相または油相中に、または製造中に導入された相とは独立して双方に、溶解されてよい。
【0152】
この明細書が、活性な成分または他の成分がどこに局在化するかを示さないところ(油相、マトリックス相または被覆)では、本開示は取り込みの場所に関しては限定されず、全ての可能性が考えられる。これに関して、固化した本明細書に記載された組成物中の油相およびマトリックス相間の構成成分の分布は、観察結果よりはむしろ、製造工程および構成成分の脂質親和性/親水性から推論されるということが思い出されるであろう。
【0153】
<免疫調節>
樹枝状細胞(DCs)の様な生来の免疫応答細胞は貪食作用と呼ばれる工程を経て病原体を貪食する。DCsは次に、T細胞(受容性免疫細胞)がその活性化の引き金となる信号を待っているリンパ節に移動する。リンパ節中では、DCsは貪食された病原体を「細かく切り刻み」、次に、病原体「切片」を、主要組織適合性複合体(MHC)として知られている特別な受容体に結合させることにより、抗原として細胞表面上に表す。T細胞は次に、これらの結合体を認識することが出来て、細胞形質転換を受け、それら自体の活性化という結果に至る。ガンマ-デルタT細胞は生来的及び後天的の両方の免疫応答の特性を有する。マクロファージはまた、同様なアプローチによりT細胞を活性化することができる。中でも、本発明の組成物は少なくとも幾つかの実施態様において、有効成分をリンパ系に送達する手段を提供する。
【0154】
多様な実施態様において、本発明のワクチン組成物は経口送達されたときに、以下の多くの機能の少なくとも1つ、及び適切には全てとして役立つ:1) ワクチン抗原を胃酸および消化酵素による分解から保護する;2) 抗原を粘膜表面(特に、GALT)へ運搬する;3) 抗原の粘膜表面上への吸着を促進する;4) 抗原の吸収を増強する;および 5) 組成物のアジュバント特性により抗原に対するを免疫応答を増強する。鼻、口腔、膣および直腸の粘膜への送達の場合、本発明の組成物は抗原を粘膜表面へ送達し吸収する系として機能する。一端粘膜表面に吸着し吸収されると、免疫応答が発生する。
【0155】
本発明の側面および成分の組合せは、予期せずして、ワクチン抗原にとって改良されたワクチン送達系を可能にする。目下の発明は、ワクチンエピトープへのダメージを皆無にまたは最小にして、抗原を送達系に取り込むためのより簡単で効率的な方法を可能にする。ワクチン製剤化を低いコストですることができ、および食事または水添加剤または口腔軟膏または錠剤として容易に商業化することができる。
【0156】
幾つかの実施態様において、本発明は、抗原を、例えば経口投与後に関連する粘膜との接触に引き続き、T細胞によって抗原が認識されるリンパ節へ移行させることができる。他の実施態様において、本発明は抗原に対して長期の送達に耐える様な物理的保護を提供する(provide: または、可能にする)。このことは、有機体が長期間に亘って抗原に暴露されて、免疫系が追加の時間を使用して、適応免疫応答においてより大きな免疫学的記憶に必要とされるBおよびT細胞の産生をアップレギュレートすることで、免疫系をより強固なものとするであろうことを意味する。他の実施態様において、本発明はGALTの様な免疫学的粘膜との接触部位で局所的反応を生ずる能力を増加させる。他の実施態様において、本発明は、感染部位でBおよびT細胞をかり集めるのを助けるのみならず全体として免疫細胞の純増に導く転写事象を増加させることも助ける炎症性サイトカインの放出を誘発する。他の実施態様において、本発明はアクセサリー細胞上のパターン認識受容体 (PRR)、特に、トール様受容体(TLR)との相互作用によって抗原に対する生来の免疫応答を増加させる。
【0157】
他の実施態様において、本発明はプライム−ブースト(prime-boost:初回-追加)免疫(動物、例えばヒトの免疫に対する方法を含めて)を提供し、そこでは、プライミングワクチンはブースティングワクチンとは非適合性(unmatched)である、即ち、「異種」プライム−ブースト方式に従い、およびブースターワクチン接種において、プライミングワクチン接種においての様に同一または異なる抗原を用いて予防接種が行われる。プライムまたは(1回の)ブースト投与量のいずれかが、本発明による組成物であってよい。更なる特定の実施態様において、本発明は、組み替え蛋白質、弱毒化ワクチン、ウイルスベクター、BCGまたは組み替え改変ワクシニアアンカラ(Ankara)ウイルス (MVA) によるブーストが後続する、DNAプライムを含む異種のプライム−ブーストワクチン接種を含む;組み替え蛋白質によるブーストが後続する、ウイルスベクターによるプライム;およびウイルスベクターによるブーストが後続する、BCGプライム;そこでは、本発明による組成物がプライムまたはブーストワクチン接種の少なくとも1つに用いられる。1つの実施態様において、上記で又は本明細書の他の場所で記載されるように、本発明は免疫学的プロフィール(および/または特別なプロフィールを有する免疫学的応答)を動物中に引起すのに用いられる組成物である。関連する実施態様において、本発明は、非経口(例えば、静脈内)プライミング免疫後に、本発明による組成物を動物、例えば既にプライミング免疫を受けているヒトへ投与することを含んで成る、経口ブースト免疫を提供する。
【0158】
本発明はまた、予めプライミング免疫を受けたか又は受けていない動物へ本発明による組成物を投与することを含んで成る、動物におけるIgG1および/またはIgG2A応答を増強する方法に関する。
【0159】
本発明はまた、プライミング免疫を受けたか又は受けていない動物へ本発明による組成物を投与することを含んで成る、免疫応答を動物中におけるTH1-型免疫応答から切り替えて遠ざける(および/または切断する)方法に関する。相反する方法、即ち、免疫応答をTH1-型応答へ切り替える(および/または起動させる)方法もまた用いることができる。本発明はまた、予めプライミング免疫を受けたか又は受けていない動物へ本発明による組成物を投与することを含んで成る、免疫応答を動物中におけるTH2-型免疫応答から切り替えて遠ざける(および/または切断する)方法に関する。相反する方法、即ち、免疫応答をTH2-型応答へ切り替える(および/または起動させる)方法もまた用いることができる。
【0160】
好ましい実施態様において、本発明の組成物は、免疫応答を更に増強し、および随意に肝臓の浄化率の広がりを減ずるために、リンパ的ターゲッティング用および/またはリンパ的送達用の成分を含む。他の好ましい実施態様において、本発明の組成物は転移を予防し若しくは減ずるために、又は、悪性腫瘍、例えば固体もしくは血液学的悪性腫瘍の進行を治療し若しくは減ずることを意図した他の免疫療法に用いることが出来る。
【0161】
本発明の他の実施態様において、有効成分(の1つ)は転写因子(またはその誘導体)、例えば、転写因子Bcl6であり、それはDNA に結合することができて、ヘルパーT細胞が展開してB細胞および抗体を産生させる別の遺伝子の発現を生じさせる。異なる実施態様において、組成物は転写因子Bc16の(例えば、生体内)産生を刺激する物質を含有する。本発明はまた、組成物がBc16 に結合して、Bc16 がDNAに結合することを防ぐBlimp1または関連蛋白質または誘導体(または他のBc16アンタゴニスト)を含む実施態様を含有する。即ち、Bc16が DNA に結合することを防ぐことは、TFH 細胞の成熟を防ぎ、B細胞が抗体を作れないままにする(本発明によるその様な組成物を用いることは、自己免疫疾患、例えば、抗体に誘引された炎症を引き金とするリューマチ性関節炎の様な幾つかの疾患を治療する方法を含む)。かくして、その様な転写因子、転写因子発現の刺激剤および/またはそれらの拮抗剤を組み込む本発明の組成物は、ワクチンの増強にも、または反対に、自己抗体応答の遮断に用いることもできる。
【0162】
本発明の更なる応用において、抗体およびT細胞産生の誘導が思慮される。加えて、本発明は、例えば、抗体または、例えば癌細胞に結合する他の活性な剤、および、T細胞を引きつけ、結合する少なくとも1つの他の活性な剤を含有する組成物を含むことが思慮される。その様な組成物は、例えば、癌細胞の殺傷において実益がある。本発明はまた、得られる組成物が、その場で、例えば、生体内で2官能性抗体(抗体がそれによってT細胞または標的細胞上のその抗原を認識する小さな結合領域から作られる抗体と同様な2官能性抗体であって、全てのその様な領域は1つのポリペプチド鎖上に一緒になって結合している)として挙動する様な、あるエピトープに対する抗原およびT細胞マーカーに対する抗原の包含も思慮している。例えばその様な2官能性抗体は2つの特定の結合部位を有してよく、その内の1つは、例えば、T細胞上のCD3抗原に付着し、他は、例えば癌細胞上の表面抗原に結合する。本発明組成物の1つの実施態様はその様な2官能性抗体に対する機能的等価物として作用する。
【0163】
1つの実施態様において、本発明はまた、動物に本明細書に記載された組成物を投与することを含んで成る。動物における局所的な抗原特異的 IgA 応答および/または全身性T細胞応答を増強する方法に関する。
【0164】
<経口免疫寛容>
1つの実施態様において本発明は、経口自己免疫または炎症性疾患の治療において、経口免疫寛容の現象(前章において先行技術に記載されている)を開発する手段を提供する。従って、ある実施態様において本発明は、本明細書の他の箇所でより詳細に記載されている以下の特徴:抗原投与量、抗原の性質、生来の免疫系、遺伝的背景およびホストの免疫学的位置、および粘膜性アジュバントとの関連で抗原の経口送達、が調整されることを可能にする。特定の実施態様において、本発明は、経口免疫寛容を誘発しまたは破壊するために、腸管の特定の領域を標的とした送達を提供する。特に本発明はワクチン活性成分を、例えば経口投与に引き続いて、上記の章において先行技術に記載されているように、免疫誘導性の(組織化されたリンパ組織)および効果器部位(拡散固有層)の混合および/または濃度(特に、GITの他の部位に対して相対的な濃度)の配置がある直腸/結腸へ放出することができる手段(例えば、組成物)を提供する。更に本発明は、ペプチドおよび蛋白質の様な成分が結腸に到達したときに、例えば上記の様な配置中に存在する未感作CD4
+ T細胞中の適切で、望ましく、寛容化しまたは治療的な免疫応答を活性化する様に、ペプチド(例えば、食物)および蛋白質の正常摂取を防ぎ又は減らす様な組成物を提供する。
【0165】
本発明の組成物はそれ故に、経口的に供給された投与抗原を調節することによって、および/または増加された抗原投与量を通じての欠損免疫寛容を回避することによって、活性細胞の抑制またはクローンのアネルギー発生に利用することができる。本発明はまた、細胞のある集団を刺激して免疫応答をダウンレギュレートするために、罹患した患者に、リポ多糖またはコレラ毒素サブユニットBの様な免疫アジュバントを含んで成る本発明の組成物を食べさせることによって経口免疫寛容を強化する手段を提供する。本発明の組成物は例えば、T細胞媒介自己免疫疾患の治療に用いることができる。本発明による組成物を用いて治療することの出来る自己免疫疾患は、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、大腸炎(Th1媒介大腸炎を含む)、クローン病、卒中、アルツハイマー疾患、アテローム性動脈硬化症および1型糖尿病を含む。本発明はまた、例えばヒトへ、その様な生物学的医薬が投与される前に、その様な治療の寛容化量を動物へ1回以上投与することにより免疫寛容誘発が用いられることを可能にするが、それは、抗体が本発明による組成物中にペプチド、蛋白質および抗体治療薬(生物学的医薬または「生物学的製剤」)に対抗して増加することを防ぐためである。
【0166】
経口免疫寛容誘発用の組成物は、(i)自己免疫または他の疾患中に含まれる抗原および(ii)生物学的治療薬から選択される抗原を含有してよい。抗原およびその関連疾患の例を以下に示す:
関節炎: II 型コラーゲン
自己免疫性ブドウ膜炎: S-抗原
自己免疫性重症筋無力症: トルペード(Torpedo)アセチルコリン受容体
インスリン依存性糖尿病: インスリン
移植拒絶反応: 同種異系細胞/異系ペプチド
アレルギー症: 食物特異的ペプチド/蛋白質/抗原
甲状腺炎: 甲状腺ホルモングロブリン(thyroglobulin)
腹腔(炎): 組織グルタミン転移酵素/グリアジン/HLA-DQ218
多発性硬化症: コポリマーI/ミエリン抗原
【0167】
本発明は、免疫調節剤の存在下または非存在下に適切な免疫効果を誘発するための疾患またはアレルゲン特異的ペプチドの使用を含む。かくして、本発明の組成物は疾患またはアレルゲン特異的なペプチドを含有してよく、加えて、幾つかの実施態様において、1以上の更なる免疫調節剤(例えば、免疫抑制剤およびアジュバントおよび随意に他の剤から選択されたもの)を含んでよく、一方、他の実施態様において組成物は何ら追加の免疫調節剤を含有しない。
【0168】
本発明の組成物は抗原を直接に又は吸収後に腸関連リンパ組織(GALT)と接触させるために利用されてよい。本発明の組成物は、1つの実施態様において、抗原および/またはアジュバントがGALT中のT細胞と相互作用し若しくは相互作用を促進するのを可能にすることを意図する。1つの実施態様において、この相互作用が生じる胃腸管の部位が直腸および/または結腸である。他の実施態様において、この部位は空腸または殆ど何ら免疫誘導性サイトの無い他の部位である。
【0169】
本発明は、処方されるべき必要な抗原性ペプチド(共有結合的または非共有結合的に修飾された如何なるペプチドを含め)を、アジュバントおよび随意に本明細書の他の場所で記載された他の成分と共にまたは無しで含んで成る組成物および/または製剤を提供する。その様な他の成分、例えば透過性増強剤は、本発明の組成物と一緒に単一のまたは多層の(例えば)ポリマーによって、層またはポリマー被覆が修飾されて、随意にカプセル化され (例えば、被覆され)て、消化管または結腸/直腸に沿った最も適切な部位での活性成分の放出を可能にする。自己免疫並びに上記および先行技術を記載した他の章で述べた様な他の疾患に加え、本発明はまた、幾つかの実施態様において、セリアック(celiac)病 、食物アレルギーおよび通常のアレルギーの様な疾患の治療および/または予防用製剤を提供する。
【0170】
特に本発明は、活性成分または有効成分が経口免疫寛容を調節し、および経口免疫寛容を調節する追加成分を含んでよい組成物を提供する。その様な追加成分はグルテンまたはグルテン誘導体であってよい。
【0171】
経口免疫寛容を誘発する方法は、抗原(単一の抗原または複数の抗原)を下方胃腸管、例えば結腸および/または直腸へ送達することを含んでよい。本方法の目的は抗原を無傷で(即ち、大きな分解なしに)送達することである。それに加えて又はそれに代えて、抗原および免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、の双方を組成物中に含むことにより、抗原が粘膜性の腸細胞に暴露されたときによりナイーブな状態にあり、それ故にワクチン/免疫のブースト反応よりむしろ免疫寛容の誘導を可能にするであろう様に、経口免疫寛容が誘導され得る。
【0172】
従って、本発明は経口免疫寛容を動物、例えばヒト中に誘発する方法を含み、該方法は以下の工程:
抗原を結腸または直腸に放出するために採用される開示の抗原含有組成物を哺乳類に投与する工程 ;および/または
シクロスポリンまたは他の免疫抑制剤を含有する開示の抗原含有組成物を哺乳類に投与する工程
を含んで成る。
【0173】
結腸または直腸中への放出のための適用が実施例により説明される:
組成物を座薬として処方すること
組成物を経口投与用に、および放出制御剤を含んで処方すること。
【0174】
放出制御剤の例として、組成物は細菌性酵素によって結腸中で分解され、又は組成物が結腸に到達するまでは障壁として別に作用する(例えば、結腸の条件下で溶解されまたは分解される)ポリマーを含有してよく、胃腸管を下降する間に分解する又は浸食される遅延剤ポリマーが用いられてよく、および/または結腸の条件下で溶解され又は分解される細孔形成剤を含んで成るpH非依存性ポリマーを含有してよい。組成物が消化管に入ったときにのみ更なる溶解、浸食または分解に暴露される様に、組成物は胃での分解を防ぐために腸溶性のポリマーを含んでよい。この章で述べられたポリマーはマトリックスに含まれてよく、および/または1以上の被覆を形成し若しくは被覆に包含されてよい。
【0175】
免疫抑制剤を含有する組成物の場合、本発明は免疫抑制剤の同一性または放出部位に関しては制限されない。幾つかの実施態様において、免疫抑制剤は、消化管および胃腸管(例えば、結腸)中の随意に1以上の他の部位で放出される。他の実施態様において、免疫抑制剤は結腸中および胃腸管(例えば、消化管)中の随意に1以上の他の部位で放出される。
【0176】
免疫抑制剤が使用される場合、それはシクロスポリンであってよい。シクロスポリンは、通常免疫抑制性の及び抗炎症性の活性を有するポリペプチドのクラスを形成する。−最も一般的によく知られたシクロスポリンはシクロスポリンA(国際的一般名称:シクロスポリンA)である。シクロスポリンの他の形態はシクロスポリンB、C、D、およびG ならびにその誘導体を含む。本明細書において、用語「シクロスポリン」または「シクロスポリン類」は本明細書で用いられるように幾つかのシクロスポリン類誘導体またはそのプロドラッグを意味し、または上記のいずれかの如何なる混合物をも意味すると云うことが理解されるべきである。製造中にシクロスポリンを油相中に包含することによってシクロスポリンは本組成物中に取り込むことができる。
【0177】
本発明において有用な他の免疫抑制剤は、中でも、タクロリムス、ガンシクロビル、エタネルセプト、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、マイコフェノラートモフェチル(mycophenolate mofetil)、メトトレキサート、コルチゾール、アルドステロン、デキサメタゾン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤およびロイコトリエン受容体拮抗剤である。免疫抑制剤は、製造中にそれらを油相および/または水性相中に含むことにより本発明の組成物中に取り込まれてよい。相の選択は実際上、それぞれの相中での免疫抑制剤の溶解度に依存する。
【0178】
それ故、シクロスポリンAが好ましい免疫抑制剤である一方、他の免疫調節性/抑制性の実体(entities)、例えばメトトレキサートは、免疫細胞、主に樹枝状の細胞を、粘膜性免疫寛容の誘導に好ましい未熟な状態または未感作の状態を維持し又はブーストして制御するために用いることができるということが理解されるであろう。
【0179】
本開示には、本開示の組成物、ミニビーズ集団およびプロダクトから選択された調合薬もまた含まれ、ここで、調合薬は抗原を含有し、および: (i)調合薬は抗原を結腸または直腸中に放出するのに適しており;および/または(ii)調合薬は更にシクロスポリンまたは他の免疫抑制剤を含有する。その様な調合薬は経口免疫寛容の誘発用であってよい。本明細書において、経口免疫寛容に関する開示は、この段落で述べた調合薬にも準用することができる。本発明は哺乳類での経口免疫寛容を誘発する方法を含み、この段落に記載された様な調合薬を哺乳類に投与することを含んで成る。
【0180】
<界面活性剤>
本明細書の詳細な説明および請求項において、用語「界面活性剤」は「界面活性な剤」に対する短縮形として採用される。この詳細な説明および請求項の目的にとって、界面活性剤の4つの主要な分類:イオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性(双性イオン性)があることが仮定される。非イオン性の界面活性剤は全体のままで在り、水性溶液中で何ら電荷を有さず、陽イオンおよび陰イオンに解離しない。陰イオン性の界面活性剤は水可溶性であり、陰電荷を有し、水中に置かれたときに、陽性および陰性イオンに解離する。カチオン性の界面活性剤は、陽電荷を有し、水中に置かれたときに陽イオンおよび陰イオンに解離する。両性(双性イオン性)界面活性剤は、酸性溶液中では陽電荷が想定されてカチオン性界面活性剤を形成し、または、アルカリ性溶液中では陰電荷が想定されて、陰イオン性界面活性剤として作用する。
【0181】
界面活性剤は、界面活性剤の親水性又は親油性度合いの目安である親水性−親油性バランス(HLB) によってもまた分類され、その度合いは、Griffinによって(元々は非イオン性界面活性剤に対して)1949年および1954年に、および後年Daviesによって記載された様に、分子の異なる領域に対する計算値によって決定される。その方法は、計算式を分子全体の分子量に、並びに親水性および親油性部分の分子量に適用して、40までの、しかしながら通常の範囲は0〜20の間である任意の(半経験的)基準を与える。HLB値0は完全に疎水性の分子に対応し、20の値は完全に親水性成分から成る分子に対応するであろう。HLB値は分子の界面活性特性を予測するために用いることができる:
【表4】
【0182】
HLB数は、そのシステムが発明された非イオン性以外の界面活性剤に割り当てられるが、イオン性の、カチオン性の、非イオン性の、および両性の(双性イオン性の)界面活性剤に対するHLB数は大きな意義を有せず、しばしば相対的なまたは比較的な数を表し、および数学的計算の結果ではない。このことは「最大」20以上の界面活性剤を有することが可能である理由である。HLB数はしかしながら、所与のエマルジョン系が良好な性能を達成するための所望の適用のHLB 要件を記述するために有用であり得る。
【0183】
本発明の組成物に含まれてよい界面活性剤は、本発明になる組成物の製造および加工を促進するために、好ましくは容易に拡散するまたは拡散可能な界面活性剤である。その様な界面活性剤は如何なる特別なタイプ(イオン性の、非イオン性の、双性イオン性の)であってもよく、組成物の乾燥重量割合として、0.01%〜10%、より好ましくは0.05〜5%の間、理想的には0.1〜1%の範囲内もしくは少々外側、例えば 0.2〜0.5%の範囲である。
【0184】
他に述べられない限りまたは他に要求されない限り、全てのパーセントおよび比率は重量に基づく。
【0185】
1つの実施態様において、非イオン性界面活性剤が好ましい。可能な非イオン性界面活性剤は、パーフルオロ炭素、ポリオキシエチレングリコール・ドデシルエーテル(例えば、Brij35の様なBrij)、Myrij、および、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween80またはポリソルベート80として入手可能)および、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween20またはポリソルベート20として入手可能)を含めたソルビタンモノオレエートのポリオキシエチレン誘導体を含め、ポリオキシエチル化ソルビタンおよびオレイン酸から誘導された化合物を含む。本発明は、商業的に入手可能であるプロダクツの使用を予見しており、その場合に、Ayorindeらによって「Rapid Communications in Mass Spectrometry」、Volume 14 Issue 22、Pages 2116-2124 (2000年)の文献で詳細に記載されている様に、主要な分子種と一緒に追加の成分が含まれてよい。その文献の全体は引用により本明細書に組み込まれる。他の可能な非イオン性界面活性剤は、オクタデカン酸 [(2R)-2-[(2R,3R,4S)-3,4-ジヒドロキシオキオキソラン-2-イル]-2-ヒドロキシエチル](Z)-オクタ-9-デセノエート、Span80として商業的に入手可能、の様な、ソルビタン(ソルビトール誘導体)およびステアリン酸のエステルを含む。他の可能な非イオン性界面活性剤は、Span85として商業的に入手可能なソルビタントリオレエートである。Brij、MyrijおよびTweenプロダクツはICIから入手可能である。Span製品はSigma Aldrichから入手可能である。代替のまたは追加の非イオン性界面活性剤または乳化剤はマンニドモノオレエートであり、それは本発明組成物の製造方法において、それ自身による乳化前に又は本発明の組成物の他の成分と一緒に予備混合して、油または水性相中に導入されてよい。例えば、もし組成物の成分としてスクワレンを利用することが所望なら、商業的に入手可能であるマンニドモノオレエート(スクワレンに基づくSeppic Inc、FranceからのMontanide(Montanide)ISA720)を含む油中水エマルジョンを用いた製造中に、本発明の組成物中に両方の成分を導入することが可能である。
【0186】
非イオン性界面活性剤の混合物が特に好ましい。混合物は上記で列挙された1以上の組合せであってよい。1つの実施態様において、低いHLB (およそ<3) を有する第1の非イオン性界面活性剤および高い HLB (およそ>10) を有する第2の非イオン性界面活性剤の混合物である。他の実施態様において、第1の非イオン性界面活性剤は油可溶性であり、第2が水可溶性である。非イオン性界面活性剤の特に好ましい組合せは、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(例えば、Tween80)およびソルビタントリオレエート(例えば、Span85)である。
【0187】
界面活性剤の他のカテゴリーとしては、幾つかの実施態様においてはアニオン性界面活性剤無しの組成物が好ましいことをを念頭に置きつつも、アニオン性界面活性剤などが思慮される。しかしながら、アニオン性界面活性剤が存在するときは、包含されるべき好ましいアニオン性界面活性剤はパーフルオロオクタン酸エステル(PFOAまたはPFO)、パーフルオロオクタンスルホン酸エステル(PFOS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、および他のアルキル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム、またラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES) としても知られる、およびアルキルベンゼン硫酸塩を含む。アニオン性界面活性剤混合物もまた思慮される。
【0188】
本発明の1つの 実施態様において、導入時点での界面活性剤の物理的形態は、本発明による組成物の製造の容易さに1つの役割を演ずる。その様なものとして液体界面活性剤は採用することはできるのであるが、特に水性相がゼラチンを含有するときには、室温で固体形態 (例えば、結晶性または粉末) (半固体)にある界面活性剤を利用することが好ましい。
【0189】
通常、例えば本発明組成物の最適な長期安定性を達成するために界面活性剤の混合物を利用することができて、より短鎖の界面活性剤は通常本発明によればより短期の安定性(処理の助け)を促進するために好ましく、及びより長鎖の界面活性剤は通常本発明によれば長期安定性(保存可能期間の助け)を促進するために好ましい。
【0190】
本発明の組成物中にアニオン性界面活性剤が取り込まれると、それは水性相中に存在し得る。しかしながら、水性相中の界面活性剤に代わり(または、その補償として)、本発明はまた、HPMC(またヒプロメロースとしても知られている)の様な面活性剤様の乳化剤(また結晶化阻害剤としても知られている)の使用を思慮するが、処理オプションを制限することがある高粘性を回避するためにそれらの使用は通常比較的少量で思慮される。
【0191】
水性相中に随意に含まれてよい非イオン性の界面活性剤は、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖で側面を守られた、ポリオキシピロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中央の疎水性の鎖から成っている非イオン性のトリブロックコポリマーであるポロキサマー(Poloxamers)を含む。ポロキサマーはPluronics(登録商標)の商標の下に商業的に入手可能である。その様な界面活性剤または同様な大きなポリマー性界面活性剤は水可溶性であり、それ故に、水性相の随意成分としてここに提示される。しかしながら、それらは例えば、商業的にはCremophor(登録商標)として例示されるポリエトキシ化ヒマシ油(ポリエチレングリコーエーテル)の様な、油相のより高いHLBポリマー性成分(また別の章も参照されたい)の量を減らしまたは代替するために用いられてよい。
【0192】
同じように用いられてよいポリマー性の水可溶性の界面活性剤の他のタイプは、遊離カルボキシル基のエステル基に対する比がほぼ 1:1 であり、平均分子量がほぼ135,000であるメタクリル酸およびメチルメタクリレートに基づくアニオン性コポリマーである。その様なポリマー性界面活性剤はDegussaからEUDRAGIT L100(登録商標)の商標名で入手可能である。
【0193】
本発明は1以上の界面活性剤が油相中に含まれる実施態様を含む。幾つかの実施態様において、水性相はそこに取り込まれた界面活性剤を有しない。
【0194】
<油相>
如何なる薬学的に適切な油または油類も、本発明による油相(油ドロップ)を構成するために用いられてよい。油相は1以上の薬学的に許容し得る油(水非混和性液体)を含んで成り、本明細書に記載された他の物質を含んでよい;他の物質はしばしば親油性の又は油溶性であってよいが、しかし油中水エマルジョンの内側の水性相であってよい。本発明の組成物の乾燥重量に関して、油相は通常、10%〜85%、好ましくは15%〜50%、より好ましくは30%〜40%の比率を含んで成る。
【0195】
油相は、以下から選択された1以上の油を含有してよい:脂肪酸;脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールのエステル、例えばモノおよびジエステル;炭化水素油、例えば天然の炭化水素 油;およびステロイド、例えばコレステロール。1つの 実施態様において、1以上の油は、脂肪酸;脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールのエステル;および炭化水素油から選択される。その様な油は少なくとも油相の50 重量%を形成してよいと思慮される。脂肪酸としてはモノまたはポリ不飽和脂肪酸が挙げられてよい。脂肪酸エステルとしてはトリグリセリドが挙げられてよく、同様に脂肪酸および低分子量酸、例えばコハク酸の組合せのグリセロールエステル(脂肪酸トリグリセリドはグリセリドの特別な例である)が挙げられてよい。適切な脂肪酸は6〜24 の炭素原子を有し、特に言及すべきは長鎖のC
12〜C
24 脂肪酸、例えば、C
15〜C
22酸である。 同様に言及すべきは中程度鎖のC
6〜C
12脂肪酸である。炭化水素油はテルペンおよび特に例えば、スクワレンおよびスクワランの様なトリテルペンである(スクワレンが好ましい炭化水素油である)。トリグリセリドを含有する油はまた、モノおよび/またはジグリセリドを例えば、グリセリド含量のマイナーな部分(50 モル%未満)として含有してよい。油相は典型的には油の混合物、例えば脂肪酸マクロゴールグリセリド(macrogolglyceride)、またポリオキシグリセリドとしても知られている、を含んで成り、マクロゴールグリセリドはグリセロールの脂肪酸モノエステル、ジエステルおよびトリエステル、並びにポリエチレングリコールの脂肪酸モノエステル及びジエステルの混合物である;例はオレオイルマクロゴールグリセリドおよびリノエオイルマクロゴールグリセリドである。本明細書で開示された1つのクラスの油相は、脂肪酸マクロゴールグリセリド及び特にオレオイルマクロゴールグリセリドを、例えば油相の少なくとも重量で15%の量で 、および随意に油相の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも重量で50%、又は少なくとも油相の60%、例えば、15%〜60%、20%〜50%、30%〜50%または30%〜40%の量で含有する。
【0196】
単独でまたは組合せで油相に含まれる油は、エイコサペンタノイック酸(EPA)、ドコサヘキサノイック酸(DHA)、アルファ−リノレイン酸(ALA)の様なオメガ−3油の様なポリ不飽和脂肪酸を含む。その様な成分の組み合わせ、例えば商業的には商標Epax 6000の下に入手可能なEPAおよび DHAの比 1:5 の混合物、もまた思慮される。
【0197】
油相中に(僅かに又は組合せで)含まれてよい代替のまたは追加の油は、スクワレン(IUPAC 名称: (6E,10E,14E,18E)-2,6,10,15,19,23-ヘキサメチルテトラコサ-2,6,10,14,18,22-ヘキサン)の様なコレステロールに関連した又はコレステロールから誘導された油を含む。本明細書で開示された油相の1つのクラスはスクワレンを、例えば、重量で少なくとも10%の量で、および随意に重量で油相の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%で、例えば、10%〜50%、10%〜40%、15%〜40%または20%〜30%の量で含んで成る。
【0198】
油は本発明の組成物の油相中に、その様な油と他の成分との商業的に入手可能な組合せを用いて製造中に導入されてよい。例えばもしスクワレンが使用される場合、スクワレンは好都合にも製造に用いられる油中水(w/o)エマルジョンを用いて組成物中に導入され得る(より詳細は以下を参照せよ)。その様なw/oエマルジョンは望むらくは1以上の乳化剤を含有してよく、その場合、乳化剤はまた、好ましくは本発明の組成物中に存在する。マンナイド(mannide)モノオレエート乳化剤を含有する体積に基づいて30:70の水性相対油相を有するスクワレン油中水エマルジョンが特に好ましく、例えば、商業的にはモンタニド(Montanide)ISA 720の商標でSeppicから入手可能な製品である。
【0199】
(僅かに又は組合せで)含まれてよい他の可能な(代替的または付加的)油は、GattefosseによるLabrafil M 2125 CSの様なリノレオイルマクロゴールグリセリド(ポリグリセリド)、Labrafil(登録商標)M 1944 CSの様なオレオイルマクロゴールグリセリド(ポリオキシルグリセリド)及びGattefosseによるLabrasolの様なカプリロカプロイルマクロゴールグリセリドを含む。
【0200】
好ましい実施態様において1以上の油が用いられ、特に2つの油組成物を組み合わせて2つ以上のクラスに属する油成分を含有する油相を提供することが好ましい。その様な組合せの例として、オレオイルマクロゴールグリセリド(ポリオキシルグリセリド)、例えば、Labrafil M 1944 CS、及びスクワレン、例えばMontanide ISA 720として供給される、の組合せが挙げられる。 かくして、油相はマクロゴールグリセリドおよび炭化水素 (例えば、テルペン) 油の組合せを含有してよい。特別な油相はマクロゴールグリセリド、例えば、オレオイルマクロゴールグリセリド、およびスクワレンの組合せを有して成る。
【0201】
油相中に僅かにまたは組合せとして含まれてよい代替的または追加の油はオリーブ油、ゴマ油、ココナツ油、パーム核油を含む天然のトリグリセリドに基づく油を含む。特に好ましい油は飽和ココナツ及びパーム核油から誘導されたカプリル酸およびカプリン酸脂肪酸およびグリセリンを含み、例えば、Miglyol(登録商標)の商標名で供給され、 その範囲が入手可能であり、本発明の油相の1以上の成分がそこから選択されてよく、Miglyol(登録商標)810、812(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド);Miglyol(登録商標)818:(カプリル酸/カプリン酸/リノレイン酸トリグリセリド);Miglyol(登録商標)829:(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド;Miglyol(登録商標)840:(プロピレングリコールジカプリル酸/ジカプリン酸)を含む。Miglyol(登録商標)810/812 はC
8/C
10比のみ異なり、その低いC
10含量の故にMiglyol(登録商標)810の粘度および曇点はより低いことに注目すべきである。Miglyol(登録商標)範囲はSasol工業から商業的に入手可能である。
【0202】
本発明による油相中に含まれてよい代替的または追加の油は、例えばGattefosseによって製造されたLabrafac(登録商標)Lipophile、特に製品番号WL1349の様な中程度の鎖長のトリグリセリドである。
【0203】
油相はまた溶解剤(両親媒性油または界面活性剤とも呼ばれる)を含んでよく、例にはエチレンオキシドをひまし油と反応させることによって製造できるポリエトキシル化ひまし油(ポリエチレングリコールエーテル)を含む。市販の調合薬もまた本発明になる組成物の溶解剤として用いることができ、例としては、リシノレイン酸のポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコール及びグリセロールのポリエチレングリコールエーテルの様なマイナー成分を含有する市販の調合薬がある。好ましい例は、Cremophor ELとしても知られているBASF社からのCremophorである。
【0204】
1つの実施態様において、本発明は1成分以上の油相を含んで成り、例えば前述のように、油相は溶解剤を含有してよい。
【0205】
油相は、好ましくはまた、有効成分(抗原またはアジュバント)の溶解剤もしくは共溶媒を含んで成る。適切な共溶媒の例は2-(2-エトキシエトキシ)エタノールであり、商業的にはCarbitol(登録商標)、Carbitolセロソルブ、Transcutol(登録商標)、Dioxitol(登録商標)、Poly-solv DE(登録商標)、および Dowanal DE(登録商標);またはより純度の高いTranscutol(登録商標)HP (99.9) の商標名で入手可能である。GattefosseからのTranscutol PまたはHPが好ましい。
【0206】
油相はまた、本発明の組成物が水/油/水(w/o/w)エマルジョンになるために、油(w/o)中水エマルジョンであってよい。換言すれば、油相は、理論的には組成物の水性相に油を提示するもの(それによって、少なくとも製造中に油水界面を形成する)と考えられ、単一の液体油脂相であっても追加的な内部水相を含んでいてもよい。
【0207】
油相は、より詳細には本明細書の他の箇所で、特に「活性成分」等と題された章で議論される様な1以上の有効成分を含んでよい。
【0208】
<水性相(マトリックス相)>
固体組成物の水性相(または、「マトリックス相」)は製造中に用いられる水性液体から誘導され、固体組成物中にはかなりの割合の水を含有してよく、または、それは本質的にドライであってもよい。本発明による組成物の水性相の主要な成分(組成物の乾燥重量基準で、好ましくは20%および70%の間、より好ましくは30%および60%の間、更により好ましくは35%および55%の間)は水可溶性のポリマーマトリックス物質であるが、以下に記載されるように、他の成分もまた含まれてよい。
【0209】
水可溶性ポリマーマトリックス物質の混合物が本発明によって思慮される一方、好ましくは、本発明の組成物は、本明細書に記載された物質の中の実質的に単一の物質または物質のタイプ、および/または水性相中で特定の追加ポリマーの包含無しに固化することができるマトリックスを含んで成る。
【0210】
1つの実施態様において、水可溶性のポリマーマトリックス物質は、ゼラチン、寒天、ポリエチレングリコール、デンプン、カゼイン、キトサン、大豆蛋白質、紅花蛋白質、アルギン酸塩、ゲランガム、カラギーナン、キサンタンガム、フタル酸化ゼラチン、コハク酸化ゼラチン、セルロースフタレート−アセテート、オレオレジン、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリルまたはメタアクリルエステルおよびポリ酢酸ビニルフタレートの重合物並びにそれらの如何なる誘導体から選択された1以上の物質であってよい。
【0211】
好ましい実施態様において、ポリマーマトリックス物質は水性コロイド、即ち、コロイド粒子が水中に分散しており、利用可能な水の量に依存して異なる状態、例えば、ゲルまたはゾル(液体)を採ることができるコロイド系である。不可逆な(単一状態の)水性コロイドに対立するものとして、可逆な水性コロイド(例えば、寒天、ゼラチン等)を用いることが好ましい。可逆的水性コロイドはゲルおよびゾル状態中に存在することができ、熱を加えて又は除去して状態間を交代することができる。ゼラチンは熱可逆的で再水和可能なコロイドであり、特に好ましい。コハク酸化またはフタル酸化ゼラチンの様なゼラチン誘導体もまた思慮される。本発明によって用いられ得る水性コロイドは、カラギーナン(海藻から抽出された)、ゼラチン(ウシ、豚、魚または野菜材料から抽出された)、寒天(海藻からの)およびペクチン(柑橘果皮、リンゴおよび他の果物から抽出された)の様な天然の原料から誘導された水性コロイドを含む。ある応用、例えばベジタリアンまたは宗教的理由から動物を食しようとしない個人への投与のためには非動物起源の水性コロイドが好ましいかも知れない。カラギーナンの使用に関して、米国特許出願 2006/0029660 A1 (Fonkweら)が引用され、引用によってその全てが本明細書に取り込まれる。1つの実施態様において、水可溶性ポリマーは、ゼラチン、寒天およびカラギーナン(および特にゼラチンまたは寒天)から選択され、または他の実施態様において、それらの2つまたは3つの組合せから選択される。
【0212】
1つの実施態様において、水性相が組成物の固定化された水性相として言及されてよく、本発明の実施態様によれば、ゲル、即ち実質的に希釈された架橋系が好ましく、それは定常状態にあるとき流動性を示さない。固化した水性相の内側のネットワーク構造は物理的または化学的結合から生じてよく、延在している流体、例えば水、の内部に変化せずに残っている微結晶または他の分岐点と同様である。
【0213】
代替の好ましい実施態様において、ポリマーマトリックスは非水性コロイドガムである。例は架橋したアルギン酸塩である。例えば、褐藻類の壁から抽出されたアルギン酸ナトリウムガムの水性溶液は、2価および3価のカチオンに暴露されたときに、ゲル化のよく知られた特性を有する。典型的2価カチオンはカルシウムであり、しばしば水性塩化カルシウム溶液の形態にある。この実施態様において、架橋またはゲル化が、その様な多価カチオン、特にカルシウムとの反応を通じて生起することが好ましい。
【0214】
多の代替的実施態様において、ポリマーマトリックスはキトサンであり、それは例えば、米国特許第4659700号(Johnson & Johnson); Kumar Majeti N.V.による、Ravi in Reactive and Functional Polymers、46、1、2000;および、Paulらの、in ST.P. Pharma Science、10、5、2000、に記載された様に、添加剤で又は添加剤なしでバイオゲルの形態で存在することができる。上記3文献の全ての内容が、引用することによって本明細書に取り込まれる。キトサン誘導体、例えば、チオール化された実体もまた思慮される。
【0215】
ゼラチンが本発明のポリマーマトリックスである実施態様において、1925年にO.T. Bloomによって展開されたゲルまたはゼラチンの強度の目安である「ブルーム強度(bloom strength)」についてここで言及する。この試験は、ゲルを破壊することなくゲルの表面を4mm歪めるために探針(通常、0.5インチの直径を有する)が必要とする重量(グラム)を決定する。結果はブルーム(等級)で表現され、通常30および300ブルームの間に及ぶ。ゼラチン上でブルーム試験を遂行するために、試験に先立ち、6.67%ゼラチン溶液が17〜18時間、10℃に保持される。
【0216】
本発明によれば、ゼラチンがポリマーマトリックスである実施態様に於いて、ブルーム強度が200と300との間、好ましくは210と280との間にあるゼラチンを用いることが好ましい。
【0217】
本発明によれば、ゼラチンが水可溶性のポリマーマトリックス物質である実施態様において、ゼラチンは多様な手段で調達することができ、例えば、動物の皮膚、白色結合組織、または骨の様なコラーゲン物質の部分加水分解によって得ることができる。タイプAゼラチンは主に豚の皮膚から酸処理によって誘導されて、等電点をpH 7およびpH 9の間に示し、一方、タイプBゼラチンは骨および動物(ウシ)皮膚からアルカリ加工によって誘導されて、等電点をpH 4.7および pH 5.2の間に示す。タイプAゼラチンが若干好ましい。本発明での使用のためのゼラチンはまた冷水魚の皮膚から誘導されてもよい。タイプAおよびタイプBゼラチンの混合物も、ミニビーズ製造のための必須の粘度およびブルーム強度特性を持ったゼラチンを得るために本発明において用いることができる。
【0218】
商業的にゼラチンは、Sigma Chemical Company、St. Louis、Mo. USAまたは Nitta (http://www.nitta-gelatin.com) から得ることができる。
【0219】
より低温のゼラチン(ゼラチン誘導体または融点降下剤とのゼラチン混合物)又はより低温で固化することのできる他のポリマーマトリックス(例えば、上述のアルギン酸ナトリウム塩)が、例えば、本発明の組成物に取り込まれるべき有効成分が温度で変化し易く、またはその活性が高温への暴露で悪影響を受ける様なときには好ましい。
【0220】
本発明によれば、ゼラチンがポリマーである実施態様において、本発明の組成物の堅さを調節するために、ゼラチンに可塑剤または柔軟化剤を添加して、出発ゼラチン物質を製造前に修飾して「柔らかなゼラチン」を産生することが好ましい。可塑剤の添加は、溶解および/または被覆の様な更なる加工を最適化するのに望ましい様に増強された柔らかさ及び柔軟性を達成する。本発明の有用な可塑剤は、グリセリン(1,2,3-プロパントリオール)、D-ソルビトール(D-グルシトール)、ソルビトール BP(非結晶化ソルビトール溶液)またはD-ソルビトールおよびソルビタンの水性溶液(例えば、Andidriborb 85/70)を含む。他のまたは同様な低分子量ポリオールもまた思慮される。ポリエチレングリコールもまた、余り好ましいと云うのではないが、使用し得るが、実に、特に好ましい本発明の組成物はPEGまたはその誘導体を含まずまたは実質的に含まない。グリセリンおよびD-ソルビトールはSigma Chemical Company、St. Louis、Mo. USAまたはRoquette、Franceから得ることができる。
【0221】
柔軟化剤は、もし利用されると、本発明組成物の乾燥重量基準で30%に至る比率で、好ましくは20%まで、および好ましくは10%まで、更により好ましくは3および10%の間で、および最も好ましくは5%および8%の間で、理想的には取り込むことができる。
【0222】
界面活性剤の上記の章でより詳細に述べたように、本発明の組成物中に1以上の界面活性剤を含むことが好ましく、より具体的には、組成物の界面活性剤の含量の少なくとも一部、例えば界面活性剤含量の全体、が油相中に含まれる。ある界面活性剤がまた可塑剤もしくは柔軟化剤としても働き、またはその逆もある。界面活性剤は本発明の組成物の乾燥重量基準で15%に至る比率で、好ましくは10%まで、及びより好ましくは8%まで、更により好ましくは2および8%の間で、および、最も好ましくは、3および6%の間で理想的には取り込むことができる。
【0223】
好ましい界面活性剤は Tween 80(ポリソルベート80)である。
【0224】
<形状、寸法および幾何学的形状>
本発明の組成物は無制限の形状および寸法に成形することができる。組成物を作成する方法を記載している以下の章で、流体エマルジョンを、それが固化し又は固化させられる型の中に注入し又は導入することを含め、多様な方法が示される。かくして、どの様な形態が所望されても適切な型を創造することにより(例えば、ディスク、ピル、錠剤または座薬の形状に)、組成物を生み出すことができる。しかしながら、型を用いることが本質的なのではない。例えば、組成物は、固化しまたは固化させられる小滴またはビーズの形態に押し出すことができる。
【0225】
かくして、組成物は、以下に記載される様に球または球様形状の形態にすることができる。好ましくは、本発明の組成物は実質的に球状、継ぎ目無し(シームレス)ビーズ、特にミニビーズの形態にある。ミニビーズ表面の継ぎ目の不存在はより一貫性のある被覆を可能にすることから、例えば、被覆の様な更なる加工に有利である。ミニビーズ状の継ぎ目の不存在はまた、ミニビーズの溶解の一貫性を強める。
【0226】
本発明によるミニビーズの好ましい寸法または直径範囲は、ミニビーズの経口投与により胃での保持を回避する様に選択することができる。より大きな投与形態は胃中に多様な期間保持されて、食物と一緒のときにのみ幽門括約筋を通過するが、一方、より小さな粒子は食物とは独立に幽門を通過する。適切な寸法範囲の選択(以下を見よ)は、かくして、治療効果、即ち、投与後の免疫応答の予測をより正確なものとする。伝統的な圧縮ピルの様な単一の大きくて一枚岩の経口剤形と比べて、胃腸管中に放出される複数のミニビーズは(本発明で予見される様に)、より大きな腸管腔内分散を許容し、より大きな上皮領域への暴露を経由しての吸収および吸着を増強し、刺激を防ぎ(例えば、他にはNSAIDで見られるように)及びより大きな局所的被覆を達成する(例えば、胃腸管の或る部分、例えば小腸、回腸または結腸中のM細胞の様な免疫細胞を標的にするのに望ましい様に)。
【0227】
本発明の組成物は、内部的な(即ち、断面的な)均一を意味する一枚岩的であることが好ましい。このことは特に、ミニビーズ実施態様にとって好ましい。
【0228】
ミニビーズの形態にある本発明の実施態様において、ミニビーズは通常、直径が0.5mm〜10mm、上限が、好ましくは5mm、例えば2.5mmの範囲にある。特に手頃な上限は2mm、特別に好ましくは1.7mmである。下限は、好ましくは1mm、例えば1.2mm、より好ましくは1.3mmから、より好ましくは1.4mmからとすることができる。1つの実施態様において、直径は0.5〜2.5mm、例えば1mm〜2mmである。
【0229】
実施態様において、本発明のミニビーズは単分散である。他の実施態様において、本発明のミニビーズは単分散ではない。用語「単分散」によって、複数のミニビーズ(例えば少なくとも100、より好ましくは少なくとも1000)に対して、ミニビーズの直径が、35%未満、随意に25%未満、例えば15%未満、例えば10%未満および随意に8%未満、例えば5%未満の様な、その直径の多様性(CV)指数を有することを意味する。ポリマーミニビーズの特別なクラスは25%未満のCVを有する。CVがこの明細書で言及されるときは、100 x(標準偏差)/平均、で定義され、「平均」は平均粒子直径であり、標準偏差は粒子寸法における標準偏差である。CVのその様な決定は篩いを用いて遂行される。
【0230】
本発明は、35%のCVおよび1mm〜2mm、例えば1.5mmの平均直径を有するミニビーズを含む。本発明はまた、20%のCVおよび1mm〜2mm、例えば1.5mmの平均直径を有するミニビーズを含み、同様に、10%のCVおよび1mm〜2mm、例えば1.5mmの平均直径を有するミニビーズを含む。実施態様の1つのクラスにおいて、ビーズの90%が0.5〜2.5mm、例えば、1mm〜2mmの直径を有する。
【0231】
本発明の組成物の他の可能な形態は半球状のビーズであり、その内の2つが、随意に平らな面で結合して2つの別個の半分を持った単一のミニビーズを生み出してよく、各半分は別個の組成を有し、もし所望ならば、例えば、各半分は異なる有効成分を、または同一の有効成分だが異なる賦形剤を含有し、例えば、2つの半球間で異なる透過性、溶解性、吸着、吸収または放出のプロフィールを達成する。例えば、片側が抗原/アジュバントの様な有効成分を含有し、他の片側が生体接着剤を含有してよい。この例では、いずれかの、または両方の半分がまた、pH調整剤または他の保護剤、例えば、胃溶解からの保護剤を含有する。
【0232】
本発明の組成物がミニビーズの形態にある実施態様は更に発展して、例えば(適切な油または粉末に基づく結合剤、および/または医薬製剤の技術分野ではよく知られた充填剤と一緒に、および随意の追加の量の本発明の組成物と同一のAPI又は異なるAPIと一緒に)同じ形状をした一元的成型形態より異なる条件下に異なる速度で分解する複数のミニビーズを圧縮することにより、多量のミニビーズを生み出すことができる。後者の(例えば、圧縮された)物質は、ピル形状、錠剤形状、カプセル形状、座薬形状等を含め、それ自体で多様な形状を採ることができる。ミニビーズのこのタイプの実施態様が解決する特別な問題は、粉末またはペレットが充填されたハードゲルカプセル中に典型的に見られる「デッドスペース(dead space)」(安定した微粒子内容物上の)および/または「ボイドスペース(void space)」(微粒子内容物要素間の)である。その様なデッド/ボイドスペースのあるペレットまたは粉末充填カプセルにおいては、患者は、何らその様なデッドスペースを含有しないカプセルが必要とするであろうより大きなカプセルを飲み込むことが求められる。本発明のこの実施態様のミニビーズは容易に圧縮してカプセルにすることができ、カプセルまたは殻のいずれが所望されようとも、大いに減少した内部形態、例えば、本質的にデッド/ボイドスペースの無い内部形態を採用し得る。
【0233】
本発明の組成物の他の可能な形態は、その中で組成物のコアが固体(例えば、生物源炭酸塩の様な胃保持性浮遊物質)または流体(ガスまたは液体)であるカプセルとしてである。もしコアが液体なら、それは有効成分および/または上記のものと同一または異なっていてもよい賦形剤を含有し得る。上述の半球状ビーズの様に、その様なカプセルは異なる構成の2つの半分を有し、内側の流体を保持するために密封されてよい。例えばもしコアが水性液体であって、水性コアがカプセルの内表面と接触することから防ぐことを所望するなら、内側層、例えば、球内面上にある非水性物質の内側フィルム層が含まれてよい。中間層を有し又は中間層なしで、本発明の組成物はミニビーズ実施態様において、本発明による第一組成物から成るコアおよび本発明による第二組成物から成るカプセルを含んで成る様に、コアは本発明の組成物の変形であってよい。
【0234】
本発明のミニビーズ態様は、上記で特定された課題への様々な回答をそれ自身として与える一方 、例えば当分野の、例えば薬学分野の当業者にはよく知られている様に、その上に物質の追加の層が適用され得る最高の種としてミニビーズを用いることで、より複雑な形態の創造への出発点としても用いることができる。追加の層の物質は本明細書に記載の様に、同一または異なる有効成分および/または同一または異なる賦形剤を含有してよい。その様な変形(variants)は同一または異なる有効成分の異なる放出を許容し、多様な固定投与組合せワクチンの包含を促進する。
【0235】
本発明の組成物はまた、舌下のワクチン接種に用いられてよく、その場合にはミニビーズは例えば上記の様に、舌下への挿入用に適切な平板な形状(例えば、ディスクまたはウエハ)に圧縮されて成形されてよい。生体接着剤の包含は特に本発明の実施態様に関連する。それに代えて、むしろミニビーズを使用するより、予めビーズ状になった製剤は舌下に挿入するために、平らな形状、例えばディスクまたはウエハに成型されてよい。
【0236】
本発明の組成物はその外表面に追加の物質の被覆を有してよい。この被覆は、以下の「被覆」と題される章でより具体的に述べられるように、多くの方法で適用され得る。
【0237】
<他の特性>
本発明の組成物は、ある実施態様において、1以上の要素、成分、賦形剤、構造的特徴、機能的特徴または上記の先行技術に記載された他の側面を含んで成る。
【0238】
抗原およびアジュバントを含め構成成分の相対的および絶対的濃度は、既知の方法およびモデルを用い、製剤の低量投与から出発し次いで免疫応答をモニターしながら投与量を増加して製剤を動物中で試験することによって決定され得る。最適な投与量を決定する際には、以下の考慮、例えば、種族、年齢、大きさ及び母親譲りの内部抗体の存否が考慮されるべきである。
【0239】
本発明の限られた実施態様を物理化学的特性の点で要約すると、上記および明細書の他の箇所で記述された組成物は、追加的に次の1以上である:実質的に水無し、ゲル状態、固体状態、非溶解、非粉末化、成形された、形を整えられた、および溶液中にない。
【0240】
内部の水性仕切り(例えば、w/o/w方式または液体コアを持ったカプセル方式)を含有する様に幾何的にデザインされない限り、本発明の組成物は本質的にまたは実質的にドライであること、例えば、重量で5%未満の、好ましくは1%未満の遊離水を含有することが望ましい。例えば、固い表皮およびビーズの表面へとは反対にコアに向かって油小滴の完全とは云えない不動化を伴ったより柔らかなコアの様な不均質性を達成するために加工条件は変化し得るが(以下を参照のこと)、ミニビーズは、好ましくは均一である。本発明による組成物のより大きな(例えば、非ビーズ)形態または形状が、その様な不均質性を具体化するために特に企画されてよい。
【0241】
低い遊離水含量が、本発明の組成物の或る実施態様の際だった特徴である。遊離水含量は熱重量分析(TGA)を用いて、例えば商業的に入手可能な機器類、例えば、TA Qシリーズ装置のTGA Q 500を用いて測定することができる。TGAは温度の変化に対する重量の変化を測定する。例えば、TGA法は温度スキャン、例えば1分間当たり20℃で20〜400℃のスキャンを含めることができ、水分含量はサンプルの約100℃における重量損失から得られる。
【0242】
1つの実施態様において、本発明の組成物中の油小滴は、隣接する油小滴間の合体が実質的に存在せずに、固化した水性相(または、幾つかの実施態様においては、水可溶性のポリマーマトリックス物質)中に均一に分散している。かくしてエマルジョンが、好ましくは固化中も維持される。隣接する油小滴の合体は、仮にあったとしても、好ましくは本発明の組成物の再水和に際してのみ生じる。
【0243】
或る実施態様にとって、本発明者らは、水可溶性ポリマーマトリックス、例えばゼラチンが、粒子を所望の寸法範囲に維持し、且つその凝集または合体を防ぐのに役立ち得ると信ずる。
【0244】
操作因子に依存して、小滴寸法は広範に変化させることができ、例えば10nm〜100μm(直径)、例えば300〜700nmまたは700nm〜30μmである。しかしながら、本発明者/出願人は、或る実施態様にとって小滴寸法を100nm〜10μm、例えば0.5μm〜7.5μmの範囲に維持することが有益であることを見出した。幾つかの実施態様において特に好ましい範囲は0.75μm〜5μm、例えば1μm〜3μmまたは4μmである。より狭い範囲は高い単分散性(低い多分散性)を持った小滴に適用され得る。小滴集団は、もし小滴が大部分同一寸法を有するなら単分散であり、一方、幅広の寸法分布を有する小滴集団は多分散である。
【0245】
我々はこの段落が必須であるとは信じない。この段落は光散乱測定の理論を説明し、光散乱測定はワクチン送達に関する特許にとって要求されないかも知れない。
【0246】
幾つかの実施態様において高い単分散性(低い多分散性)が好ましく、多の実施態様においては低い単分散性(高い多分散性)が好ましい。推定に束縛されることを望まずに、本発明者らは、ある実施態様において、より高い多分散系、より小さい小滴(例えば、20nm〜20μmの範囲の)が細胞によって優先的に吸着されてよく、一方より大きい小滴(>20μm)はより小さい小滴を吸収し、その様な吸収を導く細胞の近辺に濃度勾配を生み出すと云うことを信じる。
【0247】
本発明の組成物は通常、多数の油ドロップまたは油小滴を成型された又は成形された剤形例えばミニビーズの内部に含有し、そのミニビーズは典型的には、しばしば噴霧乾燥中のより小さな小滴の合体の後に単一のまたは少数の油ドロップまたは油小滴を取り込んだミクロン寸法の粒子から誘導される粉末とは異なった数百または数千の小滴を含有する。粉末の実施態様が排除されない一方、本発明の組成物は、もし微粒子なら、好ましくは、組成物が非粉末形態にあるような粉末粒子よりも大きな粒子を含有する。
【0248】
ミニビーズの形態にある実施態様に於いて、複数のミニビーズが、単一の方式、例えば胃の中にミニビーズを放出する単一のハードゲルカプセルに含有される単一の方式、の中に存在してよい。それに代えて、ミニビーズはサシェまたは鼻腔栄養チューブまたは十二指腸栄養チューブの様な供給チューブを経由して投与されることを可能にする他の容器中に存在してよい。それに代えて、例えば、本明細書の他の場所で記載される様にもし複数のミニビーズが圧縮されて単一の錠剤になっているならミニビーズは錠剤として投与されてよい。それに代えて、ミニビーズは専門的なボトルキャップ中に充填して例えば圧縮されてよく、または別に専門的なボトルキャップの空間を満たしてよく、例えば、ボトルキャップを捻るとミニビーズがボトル中の流体または他の内容物中へ放出されると云った風に、またはその様な内容物中で撹拌し若しくは撹拌なしでバイアル中にビーズが分散される(または溶解する)と云った風にである。例は、Humana Pharma International (HPI) S.p.A, Milan,Italyで製造されたSmart Delivery Capである。関連した又は同様なアプローチもまた思慮される。例えば、反応器、供給環境、例えば、タンク、培養器等へのミニカプセルの時限放出などである。
【0249】
上記の様なミニビーズは単一タイプ(または集団)又は多数タイプ(または集団)であってよく、それらのタイプは本明細書で記載された1以上の特徴に関して集団間で異なっており、例えば、異なる有効成分または異なる賦形剤または異なる物理的形状、被覆された、多重被覆された、被覆されない、等である。
【0250】
1つの実施態様において、本発明は、即時放出(IR)特性を有する、および/または無被覆、腸溶性のみの被覆または許容された時間のみビーズの放出および/または溶解を防ぐようにデザインされた被覆を有するミニビーズを可能とする。(それに代えて、被覆無し又は被覆を有する組成物の本体に遅延放出能力を導入することができる)。他の実施態様において、本発明は遅延または徐放性(SR)特性、例えば、本明細書の他の箇所、特に「被覆」と題された章でより詳細に記載された被覆を有するミニビーズを可能にする。本発明はまた、徐放または制御放出(CR)ミニビーズと組み合わされた即時放出ミニビーズがIR:SR/CRの変化する比率の組合せで製造される実施態様を提供する。即時放ミニビーズは徐放または制御放出ミニビーズ成分と以下の比率(性能に基づくw/w)で組み合わせることができる:例えば、10% 即時放出(IR)+ 90% 徐放(SR)/制御放出(CR) ミニカプセル;20% IR+80% SR/CR;30% IR+70% SR/CR;40% IR+60% SR/CR、および50% IR+50% SR/CR。
【0251】
<本発明の組成物の製造方法>
読者は実施例に関して本章を参照することが重要であると認識されたい。
【0252】
本発明組成物の製造に対する基本的方法は、水可溶性のポリマーマトリックス物質(例えば、より一般的に本明細書の他の場所で記載された様なゼラチン、ガム、アルギン酸塩等、および随意に上記の他の成分との混合)となる様に選択されたポリマーの流体形態(好ましくは溶液)を油相と混合して均一な流体エマルジョンを形成することである。求められる最終組成物(本明細書の他の場所で記載される様な)を考慮して、油相および水性相は1:6〜10の範囲の、好ましくは大凡1:7または1:8の範囲の比率で混合されてよい(混合は撹拌または他の動揺によって達成され得る)。通常、電磁的または機械的システム、例えば、当業者には慣れ親しんだ乳化を達成するためのオーバーヘッド撹拌機を用いて成分の穏やかな撹拌のみが求められる。実験室で用いる撹拌機または工業規模の混合機の如何なる適切なものもこの目的のために用いることができ、例えば電磁撹拌機(Stuart製の)またはオーバーヘッド混合機(KNFまたはFisher製の)である。
【0253】
ポリマーマトリックスが、ソルビトールの添加を伴ったゼラチンを実質的に含んで成る実施態様に於いて、ポリマーマトリックスの水性相が適切な量のソルビトール(および、所望ならば界面活性剤)を水に添加し、ほぼ60〜75℃まで加熱して溶液とし、次にゼラチンを添加することによって調製されるが、正確な添加順序またはタイミングは決定的ではない。典型的な「ゼラチン溶液」は15〜25%(好ましくは17〜18%)のゼラチン;75%〜85%(好ましくは77〜82%)の水プラス1〜5%(好ましくは 1.5〜3%)のソルビトールを含有する。
【0254】
エマルジョンが形成される温度の選択は、しかしながら、活性医薬成分の温度不安定性およびゼラチンに含まれる可塑剤の量を含む多様な因子に、他の因子と同様に依存する。しかしながら通常、ゼラチン溶液は(特に、標準的または通常のゼラチンの場合)、それを流体状態に維持するために60℃〜70℃に維持される。
【0255】
本発明の組成物に包含される追加の親水性の又は水可溶性成分があるときは、それらは水性相に乳化前に添加されてよい。アジュバントの例はCpG、アルファ-Gal-CerおよびPoly I:C であり、それらは親水性であって、商業的には水性溶液として供給される。界面活性剤の中には、Tween 80の様な水可溶性成分もまた最初に水性相に取り込まれてよい。しかしながら、これらの水可溶性成分を油相に組み込むことも同等に可能であり、例えば、最初に油中水(w/o)エマルジョンを創成し、その後にこのw/oエマルジョンを、w/o/wエマルジョンを創成するのに適した水性相中に分散することによる。最初に発生させたw/oエマルジョンはこの実施態様の目的にとっては油相と考えることができる。この実施態様において、特に好ましい「油」相は以下の4成分の組合せからの結果である(この「油」相は実際、水性成分を含有するものである):
- オレオイルマクロゴールグリセリド(ポリオキシグリセリド)
- マンニドモノオレエートを伴ったスクワレン
- ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート
- ソルビタントリオレエート。
完成した油相は通常、有効成分、および例えば抗原を含有するであろう。
【0256】
商業的に入手可能な成分に関しては、「油」相は例えば、60〜80%のLabrafil、20%〜30%のMontanide ISA 720、0.01〜1%のTween 80および0.01〜1%のSpan 85を含有してよい。
【0257】
油相は例えば、脂肪酸マクロゴールグリセリドおよび特にオレオイルマクロゴールグリセリドを、例えば少なくとも重量で15%の量で、および随意に少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも重量で50%、または少なくとも油相の60%、例えば、15%〜60%、20%〜50%、30%〜50%または30%〜40%を含有してよい。油相の残余は、スクワレン、界面活性剤および1以上の活性成分、例えば、抗原およびアジュバントから選択された活性成分を含有してよい。油相は単一の油脂相または油中水エマルジョンから成ってよい。
【0258】
本明細書で開示された1つのクラスの油相はスクワレンを含有し、例えば、少なくとも重量で10%の量で、および随意に重量で油相の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の量で、例えば、10%〜50%、10%〜40%、15%〜40%または20%〜30%の量である。油相の残余は、脂肪酸マクロゴールグリセリドおよび特にオレオイルマクロゴールグリセリド、界面活性剤および例えば抗原およびアジュバントから選択された1以上の活性成分を含有してよい。油相は単一の油脂相または油中水エマルジョンから成ってよい。
【0259】
それ故に、油相が、単一の油脂相を有するか又は油中水エマルジョンであるかに拘わらず、マクロゴールグリセリドおよび炭化水素油(例えば、テルペン)の組合せを、1以上の界面活性剤、例えば非イオン性の界面活性剤と一緒に含有してよいことが評価されるであろう。特別な油相は、単一の油脂相を有するか又は油中水エマルジョンであるかに拘わらず、マクロゴールグリセリド、例えばオレオイルマクロゴールグリセリドおよびスクワレンの組合せを、1以上の界面活性剤、例えば非イオン性の界面活性剤と一緒に含有する。
【0260】
開示は界面活性剤マンニドオレエートを含有する油相を含み、マンニドオレエートの包含は本明細書で記載されまたは請求される全ての組成物および油相にとって随意である。
【0261】
抗原および/またはアジュバントも又、この「油」相に追加されてよい。この方法は例えば、分解の発生無しに(または限定的な分解で)乳化にとって高い加工温度を可能にするから、熱不安定性であり得る或る成分にとっては好ましい。
【0262】
ゼラチンが水可溶性ポリマーマトリックスである場合には、乳化工程の加工温度は、しかしながら、例えば本発明の組成物中に取り込まれるべき有効成分が温度不安定性のときには、より低温の融点を有するゼラチン(またはゼラチン誘導体またはゼラチンと融点低下剤との混合物)またはアルギン酸ナトリウムの様な他のポリマーマトリックス物質の使用によって、望ましい標的温度、例えば37℃まで減少させることができる。それに代えて、温度不安定な有効成分はより高い温度で、温度不安定な有効成分がより高温の媒体と接触する時間を制限する様な適切な器具または機械類を用いて加工されてよい。例えば、もしゼラチン小滴が機械押し出しによって形成されて、例えば冷却浴中で直ちに冷却されるなら、有効成分のより高温なゼラチンへの暴露期間を制限して有効成分の如何なる熱依存性分解の程度を減ずるために、追加の適切な導入チューブ方式を用いて、温度感受性な有効成分を、ビーズ形成ノズルまたは多の小滴形成工程からの注入直前に流体ゼラチン溶液(そして、混合物は直ちに均一化することができる)中に導入することができる。この方法はホモゲナイザーの様な如何なる適切な装置を用いてもよく、例えば押し出し型装置、例えばWO 2008/132707 (Sigmoid Pharma) に記載されている様な、と一体となったスクリュー型ホモゲナイザーがあり、上記特許の記載は引用することによってその全てが本明細書に取り込まれる。
【0263】
追加の界面活性剤、例えばアニオン性の界面活性剤が水性相に添加されてよく、便利には他の成分が水性相溶液に添加されると同時に、例えばポリマーマトリックス物質および、もし含まれるならば可塑剤が、例えば、加工工程の開始時に(油相と混合する前に)添加されると同時にである。調製中に水性相へ導入する時点での界面活性剤の物理的形態は、本発明による組成物の製造の容易さに役目を果たし得る。その様なものとして、液体界面活性剤が採用されるけれども、特に水性相がゼラチンを含有するするときには、室温で固体形態(例えば、結晶または粉体)の界面活性剤を利用することが好ましい。界面活性剤は、所望の比率を達成するために必要とされる適切な量で及び上で記載された様に添加される。通常このことにより、界面活性剤が水性相の0.8%〜1%(重量基準で)の間の量で存在することになる。
【0264】
既に述べたように、水性相はまた、最終組成物が被覆を有するか否かに拘わらず、以下の被覆の章に記載されるようにポリマーの1つを含んでよい。かくして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート (HPMCP) の様なヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC)の1以上の誘導体が、都合よくは他の成分が油相と混合する前に水性相溶液に添加されると同時に水性相に添加されてよい。
【0265】
重炭酸ナトリウム (NaHCO
3)または水酸化ナトリウム (NaOH)または1以上のその様な塩基の混合物の様な、1以上の塩基が、好都合には他の成分、例えば、ポリマーマトリックス物質、可塑剤およびもし含まれるなら追加の界面活性剤が水性相溶液に添加されると同時に、例えば、加工工程の開始時に(油相と混合する前に)水性相に添加されてよい。腸溶性の物質(例えば、腸溶性のポリマー、例えば HPMCP)が溶解する様に、塩基が水性相に含まれてよい。1つの実施態様において(実施例 22を参照のこと)NaOHの包含は望ましくないことが見出されたが、高い pH がこの場合には、特にアジュバントアルファGalCerに対して弊害をもたらすことが推察される。それ故に、アルファGalCerは、高いpHを有する水性製剤中には用いないことが望ましい。1つの実施態様において、アルファGalCer含有水性相のpHは10を超えない;他の実施態様において、pH は9を超えない;更なる実施態様において、pHは8を超えない。本発明はアルファGalCer含有水性相が無機塩基を含まない実施態様を含み、および、塩基を含まない実施態様を含む。
【0266】
本発明の全ての実施態様を通じて、有害な結果の可能性があるために、水性相の高いpHを回避することが望ましいかも知れない。1つの実施態様において、水性相のpHは10を超えない;他の実施態様において、pHは9を超えない;更なる実施態様において、pHは8を超えない。本発明は水性相が無機塩基を含まない実施態様および塩基を含まない実施態様を含む。本発明は製剤が無機塩基を含まない実施態様を含む。本発明は水性相が塩基を含まない実施態様を含む。本発明は製剤が塩基を含まない実施態様を含む。
【0267】
水性相にとって非常に低い pHを有することもまた有害であり得ると思慮され、例えば4より低くはなく、または他の実施態様において、5より低くはなく、または6より低くはない。水性相、および随意に製剤は、それ故に、酸を含まなくてもよい。それ故に、水性相は中性に近いpH、例えば、4〜10、随意に場合によっては5〜9、例えば、6〜8を有することが望ましくあり得る。
【0268】
製剤中に腸溶性の保護剤を含み及び腸溶性の保護剤を溶解するのに十分に高いpHを持った水性相を回避することを望む場合には、腸溶性の物質(例えば、腸溶性物質の組合せ)をポリマーマトリックス中に存在させ及び/または被覆中に含有させてよい。
【0269】
通常(しかし、これは義務的ではないが)、油相は加熱されることは必要とされず、上記の有効成分および他の油相成分は透明になるまで攪拌しながら室温で添加される。油相有効成分(例えば、抗原および/またはアジュバント)の適切な量が添加されて、本明細書の他の場所および実施例に記載されたような標的とする比率が達成される。攪拌は、有効成分に依存して、数分〜数時間、一昼夜でさえも継続される。
【0270】
エマルジョンは、加熱された水性相に上記のように攪拌しながら油相を添加することにより形成され、固化が例えばゼラチンの場合のように冷却を含む場合には、水性相は加熱される。得られるエマルジョンは次に上記の様に、固化しているが依然として水が存在するミニビーズの組成物を有する。
【0271】
エマルジョンは次いで、ポリマーマトリックス含有水性相が固化に際して意図された型、容器、シートまたは小滴/ビーズの形状を採る様に、型または他の容器に注入され若しくは導入され、またはシート上若しくはシート間に注がれ又は他の流体中に滴々と送達される(または押し出される)。モールド成形、例えば、遅滞なくビーズ化へ進むことが好ましい。
【0272】
成形に代えて、例えば半球状のビーズ(ここでは、発明は半球状の形状をとる)を生み出すための先に記載された(「形状、寸法および幾何形状」と題された章を参照のこと)特別な機械類を採用することができる。2つのその様な半球(即ち、2つの明確な半分を有する単一のビーズ)の結合から作られる単一のビーズを専門的な装置を使って製造することが可能であり、その装置では2つの異なるエマルジョンが通っている通常円形の断面積を持った2本のチューブが、2つのエマルジョン流れを隔離し2つのエマルジョンが押出ポイントに至る迄は接触するのを防ぐ平らな壁を持った単一の二重管腔チューブへと押出しポイントまたはノズル(振動していてよい)の直前で結合している。結合した二重管腔チューブの断面積は押出ポイントに至るまではそれ故に2つの半円の様に見える。操作においては2つの半球状のエマルジョン流れは合体して、通常の小滴が固化のために排出され/押し出される様に押出によって単一の、実質的に球状のビーズを形成する。専門的ピペットを用いることも又可能であり、そのピペット中では2つの管腔がノズルの直前で合体して一緒になって流体エマルジョンを2つの管腔から同時に追い出す。
【0273】
マトリックスのポリマーに依存して、多様なやり方で固体化を起こすことが出来る。例えば、鋳型、容器、シート、小滴/ビーズ等の周囲の温度を変化させるやり方、又は成形された形状がゲル状または固体状となるように固体化流体または固化溶液を適用するやり方である。
【0274】
本発明の組成物がミニビーズの形態をとる好ましい実施態様において、ミニビーズは、例えばピペットを用いて、固化を生じさせる流体(または「固化流体」)中へ通常は手動で流体エマルジョンを滴加させることによって形成されてよい。
【0275】
固化が温度を高め又は下げて達成される場合には、所望の速度で固化が達成される様な固化流体の温度を採用することができる。例えばゼラチンがポリマーマトリックスとして用いられるときは、ポリマーマトリックスの固化を生じさせるエマルジョンの温度より固化流体はより低い温度である。この場合、固化流体は冷却流体と称される。
【0276】
固化が化学的に、例えば、固化流体成分への暴露に際しての架橋の誘導により達成することができる場合は、固化流体中のその様な成分の濃度および/またはその温度(または他の特徴または含量)は、所望の固化速度および固化の程度を達成するべく調整することができる。例えば、もしアルギン酸塩がポリマーマトリックスとして選択されるなら、固化流体の1成分はアルギン酸塩の架橋および結果としての固化を誘発することのできるカルシウム含有実体(塩化カルシウムの様な)であってよい。それに代えて、同一のまたは同様なカルシウム含有実体がビーズ化に先立って流体エマルジョンの水性相中に含まれて(例えば、分散されて)、例えばエマルジョンの小滴が滴々と落下し又は導入される固化流体に高めのまたは低めのpHを適用することで架橋を誘発する引き金となってよい。その様な静電的架橋は、結果として得られるミニビーズの特性に関して、カルシウムイオン有効性(濃度)および他の物理的条件(特に、温度)を制御することによって変化させることができる。固化流体はガス(空気の様な)または流体またはその双方であってよい。例えば、ゼラチンがポリマーマトリックスとして用いられるとき、固化流体は当初気体状(例えば、冷却空気を通過する小滴)、次いで引き続く液体(例えば、冷却液体中に流れ込む小滴)であることができる。逆のシーケンスもまた適用し得る一方、気体または液体の冷却流体単独でも用いられる。それに代えて、流体は、固体化を達成するためにエマルジョンが冷却ガス中にスプレーされるスプレー冷却されてよい。
【0277】
固定化マトリックスを形成することとなるゼラチンまたは他の水可溶性のポリマーの場合、固化流体は非水性液体であることが好ましく(例えば、中鎖トリグリセリド、鉱油または同様なもので好ましくは最低の濡れを保証するために低HLBのもの)、該非水性流体はエマルジョンの小滴が固化してビーズを形成するに際してエマルジョンの小滴を受けるために便利には浴(冷却浴)中に置かれる。非水性液体の使用は、冷却が実施される温度の選択により大きな柔軟性を可能にする。
【0278】
液体冷却浴が採用される場合、標準ゼラチンがポリマーマトリックスとして用いられるときは通常20℃未満で維持され、好ましくは5〜15℃、より好ましくは8〜12℃の範囲に維持される。もしトリグリセリドが冷却浴の冷却流体として選択されるなら、好ましい例はSasolからのMiglyol 810である。
【0279】
もしゼラチンがポリマーマトリックスとして選択されるなら、適切な温度範囲の尊重は、有効成分が蛋白質の場合に、例えば蛋白質三次構造の破壊を回避するための適切な速度でのゼラチンの固化を保証する。
【0280】
もしアルギン酸塩がポリマーマトリックスとして選択されるなら、ミニビーズを作成する典型的な方法は、油小滴が上記のように分散している3%アルギン酸塩ナトリウム溶液を0.1 M 塩化カルシウムを含有する4℃の架橋浴中へ滴加してアルギン酸カルシウムを製造することを含む(カルシウムはミニビーズ中に拡散して架橋または硬化を発現すると信じられているから、この方法は「拡散硬化」と呼ばれる)。注射器型ポンプ、手動ピペットまたはイノテックマシーン(Inotech machine)を用いて、殺菌された針または他のノズル(本明細書の他の場所で記載された様な)を通して小滴を発生させまたは押し出すことができ(例えば、もしポンプが使用されるなら、5 mL/hの速度で)、該針またはノズルは本明細書の他の場所で議論されるように、振動していてよい。もし小滴寸法を減らすことが望まれるなら、4.5 mmのチューブを通して15および20 L/分の間の空気流れを針の上流から下向きに適用してよい。新たに形成されるミニビーズは次に塩化カルシウム浴中で1時間まで攪拌することができる。
【0281】
アルギン酸塩を用いるときの代替的アプローチは内部ゲル化であり、内部ゲル化においてはカルシウムイオンが、水性コロイド粒子のゲル化を生起させるためにその活性化に先だって水性相中に分散される。例えば、このことは、アルギン酸塩の架橋を生起するであろうイオンの不活性な形態の添加によって達成することができ、次いで不活性イオンはその十分な分散が完了した後に、変化、例えばpHの変化によって活性化される(Glicksman、1983a;Hoefler、2004 を参照のこと。両方とも引用により本明細書に取り込まれる)。このアプローチは、急速なゲル化が所望の場合および/または拡散アプローチがAPIの架橋浴中への拡散によってAPIの欠損に導く様な場合には特に有益である。
【0282】
成形(shape-forming)、成型またはビーズ化に続いて、得られた形状または形態は、もし必要なら洗浄され次いで乾燥される。固化流体中で固化したミニビーズの場合、上記の製造方法における随意の最終工程はそれ故に、固化したミニビーズの固化流体からの分離を含有する。この工程は、例えば、固化流体(例えば、MCT)が落下してビーズが保持される網目バスケットで収集することにより達成され得る。余剰の流体は次いで遠心分離で除去され得て、随意にミニビーズの洗浄を行い(例えば、酢酸エチルを用いて)、次いでビーズを乾燥して水または遊離水を除去する。この工程は、空気による水の蒸発または同伴に導く15℃および25℃の間、好ましくは約20℃の温風でのドラムドライヤーの使用(例えば、もし使用するならSpherex 装置系列の一部である、Freundドライヤー)の様な当該分野で知られた適切な如何なる方法によっても達成することができる。ゼラチンのポリマーマトリックスとしての使用は(例えば、水性固定化相の主要構成成分としての)大部分の場合乾燥工程を必要とし、ミニビーズにとってこの工程は好ましくは、上記の様に空気中での乾燥により達成される。得られる組成物(本発明の組成物)は、上記に詳細に記載されたように本質的に乾燥している。
【0283】
エマルジョン小滴が上記の様にビーズ化の最初の工程で形成され得る方法に関して、小滴の種々の固化流体中への手動および自動ピペット注入を含め、上記記載方法の変形が可能である。
【0284】
通常、ミニビーズは、究極のビーズの球状のまたは実質的に球状の形状を生み出すために、流体o/w(またはw/o/w)エマルジョンと気体または液体の様な適切な固化流体との間の表面張力の適用によって発生する。
【0285】
それに代えて、ミニビーズは、ある直径および随意に選択された振動数を持ったオリフィスまたノズルを通っての流体o/wエマルジョンの排出または押し出しおよび/または重力に添った流れを通じて製造され得る。使用し得る機械の例は、Freund Spherex、ITAS/Lambo、GlobexまたはInotech 加工設備である。それに代わる押し出し機が、物質が低温および低圧押し出しに適するときは適用可能である。
【0286】
本発明によるミニビーズの製造に望ましいであろうFreundの製造になるSpherexマシーンの操作は US特許5882680 (Freund)中に記載されており、その全内容は引用により本明細書に取り込まれる。10〜15 RPMの領域の振動数を選択することが好ましいが、しかしながら究極の選択(および独立に選択された振動の振幅)はビーズ化されるべきエマルジョンの粘度に依存する。もしポリマーマトリックスが低温で固化することを選択するならば、溶液の流動性を維持するためにオリフィス/ノズルへ至る経路を或る温度に保つことが適切であろう。
【0287】
コアを形成する内部管腔中の流体およびカプセルを形成する外部管腔中の流体なる2つの流体の同時押し出しを保証するために、Spherexマシーン(および他)が二重同心円状管腔ノズルの利用に適合され得る。記載された方法の1つによれば、カプセルを形成する流体は固化される。本発明の組成物の特別な実施態様を生成するためには、コアを形成する流体が固化し易いことが望ましいかも知れないし又は望ましくないかも知れない。
【0288】
この様に適合された上記機械類がカプセルの形態にある本発明組成物の製造に用いることができ、該組成物中において、「外形(shape)、寸法および幾何形状」と題する上記セクションで記載された様に、組成物のコアは流体(気体または液体)で満たされている(コアが、カプセル物質と同様に、随意に明確な組成物であったとしても、本発明による組成物であってよく、上記記載の方法の1つによれば、固化に感受性であることを留意すべきである)。もし中間の内側層、例えば便利には室温で固体である中間層を持った球の内面上の内部非水性物質フィルム層を含むことを望むなら、三重管腔ノズルおよび適切なチューブ配置が採用されてよい。かくして、連続層の柔らかさ/堅さの関係では、組成物は、例えば2層の場合は固体:固体として記載されてよく、または3層の場合は、固体:固体:固体、または3層の場合は、液体/半液体:固体:固体として記載されてよい。
【0289】
先の段落は、非被覆ビーズの形成を記述している。本明細書の他の場所でより詳細に記載される様に、被覆ビーズを有することは本発明の好ましい実施態様である。その様な被覆は単一または多重であってよく、多くの方法(別の章を参照せよ)で適用され得る。
【0290】
図7は、随意に振動してよいノズルを通しての、上記のエマルジョンの排出を含んで成る方法によって製造された被覆ミニビーズのX線断層写真像(この場合は、本発明の有効成分を含まない)であり、この像から内部構造が本質的に均一であることが見て取れる。
【0291】
2つの同心円状のオリフィス(中央および外側)を持った上記方法の1つ(随意に振動してよいノズルを通してのエマルジョンの排出)に関して、外側流体は、例えば、ポリマー性物質(ポリマー性被覆)の被覆を形成してよく(ミニビーズの外側)、該ポリマー性物質は有効成分を含有してよく又はミニビーズに放出制御特性を付与することができ、並びに内側層(コア)は本発明による組成物であってよい。Freundによって製造されたSpherexマシーン(Freundへ帰属するUS特許5882680 を参照)が好ましくは用いられる(この特許の全ての内容が、引用により本明細書に取り込まれる)。
【0292】
Spherexマシーンの使用はビーズ寸法(直径)の非常に高い単分散性を達成する。開示はそれ故に単分散ミニビーズ、即ち、20%未満の、例えば15%未満の、典型的には10%未満の、随意には8%未満の、例えば5%未満の直径の多様性(CV)指数を有するミニビーズを含む。例えば、典型的な100g中に、ミニビーズの97gバッチは1.4〜2 mmの間の直径であった。所望の寸法範囲は、異なる寸法の粒子を排除し/篩い分ける当分野で知られた方法により達成することができる。例えば、最初のバッチを例えば、2mmメッシュを通し、続いて1.4mmメッシュを通過させることによって、より大きな/より小さなビーズを排除/篩い分けすることが可能である。
【0293】
1.4〜2mm直径範囲は、もしミニビーズを被覆することが所望なら、良い寸法である(もし、それより小さいと、被覆マシーンの噴霧はミニビーズをすり抜け得る;もし大きすぎると、ビーズは、一定の被覆を達成するのに必須である流動が難しくなり得る。)。
【0294】
ミニビーズは、好ましくは内部的に(即ち、断面的に)均一な、即ち一枚岩的であるが、しかしながら加工条件は、例えば流体エマルジョンおよび固化流体の温度、これらの流体中の成分の濃度、および乾燥工程を含むある加工工程が生ずるのに許容される時間、を変更することによって、加工条件は変化させることができる。当面は好ましくはないが、ミニビーズ製造の場合、ビーズの表面とは反対にコアに向かっての油小滴の完全な迄には至らない固定化を持った、より堅いスキンおよびより柔軟なコアの様な不均質性を達成するための多様性が適用され得る。本発明による組成物の、より大きな(例えば、非ビーズ化された)形態または形状がその様な不均質性を具体化するために特別に設計されてよい。しかしながら当面は、内部的に均質な本発明による組成物を有することが好ましく、ミニビーズの実施態様において、このことは均一な媒体、例えばよく分散したエマルジョンを用いてビーズ化/小滴化を実施することにより助けられる。ビーズ化されるべきエマルジョン中のその様な均一性は、乾燥条件が対称性に影響することを回避するのを助けることができる。
【0295】
<被覆>
本発明の組成物は本明細書の他の場所で議論される様に、多くの応用に用いられ得る。例えば、本発明の組成物は動物の予防接種に、例えばヒト、他の動物、鳥、または魚の予防接種に用いられる。魚をワクチン接種するために魚が棲む水へ組成物を添加することが所望されるとき、魚による消費の前にワクチンの水への溶解を低下させ又は防ぐために、本発明の組成物は賦形剤または成分をマトリックスポリマー中に含んでよい。それに代えて、ワクチンの放出を防ぎ、低下させ又は遅延させるために、および/または水可溶性マトリックスの溶解を遅延させ又は防ぐために、被覆が適用されてよい。
【0296】
食物に添加されるとき(例えば、動物のワクチン接種用に)または経口投与により直接投与されるとき(活性なワクチン成分または有効成分の経口送達)、成分は有利には直ちに(即時放出プロフィール)または幾らかの遅延後におよび/または延長された期間を超えて(遅延および/または持続放出プロフィール)有利には放出されてよい。即時放出にとって、組成物は、例えばミニビーズの形態において、被覆なしで、遅延剤/保護剤を含有して、又は胃酸に対して保護して小腸での即時放出のために腸溶性に被覆されてよい。
【0297】
それに代えて又は加えて、もし放出制御が所望なら(即ち、遅延、徐放または部位標的放出等)、又はもし媒体非依存性の放出が所望なら、本発明によれば、組成物へ、例えばミニビーズの形態にある組成物へ被覆を適用することが可能である。適切な被覆の適用は、例えば、もし結腸性放出が求められるなら、4時間で有効成分の凡そ10%未満が溶解し(溶解媒体中に)、次いで続く24時間で最大溶解(100%に近く)に向かって一気に突進(急激な放出)することができる。それに代わる多くの標的プロフィールが可能でありこの例は純粋に説明のためである。
【0298】
かくして、本発明の1つの実施態様によれば、組成物はミニ球の形態であって、組成物、例えばミニビーズの形態にある組成物からの有効成分の放出を制御するために、ミニ球の少なくとも幾つかは被覆を帯びている(即ち、被覆されている)。1つの実施態様において、被覆(coat)はフィルム(film)であり、他の実施態様において、それは膜(membrane)である。被覆、フィルムまたは膜は1以上の物質、好ましくはポリマー的性質の物質を(例えば、以下により詳細に記載される様に、メタクリルエステル等;多糖類等)または1以上のその様な物質の組合せを、随意には他の賦形剤または有効成分についての上記の章で記載された有効成分を含めて含有する。1以上の被覆は第1被覆と同一のまたは異なるポリマー区分の追加の被覆と共に適用されてよい。ポリ-A-リジンはその様な被覆、例えば、第2の被覆である。また、パーフルオロカーボンも被覆として、例えば、第2の被覆として用いられてよい。パーフルオロカーボンは安定化フィルムとして挙動する。
【0299】
ポリマー類の組合せの場合、所望の、薬物の放出における遅延(または他の変化)および/または被覆のポレーション(poration)および/または薬物の脱出を可能にするための被覆内ミニビーズの暴露および/または固定化マトリックスの溶解を達成するために、ポリマーの組合せが選択されてよい。1つの実施態様において、2タイプのポリマーが、同一のポリマー性物質を与えるために組み合わされ、または、ミニビーズに適用される別々の被覆として提供される。
【0300】
本発明の組成物は1以上のミニビーズ集団を含有してよいと先に述べた。被覆タイプの実施態様内に、集団間の差異が被覆に存在し得る。即ち、2つ(またはそれ以上)のミニビーズの集団が多くの面で異なり得て、その1つは被覆である(例えば、その存在または組成、または被覆の数に関して)。
【0301】
被覆は以下に記載される様に適用することができ、並びに、厚さおよび密度について変化し得る。被覆の量は、本発明の乾燥組成物(例えば、ミニビーズ)に追加された(獲得された)追加の重量によって規定される。重量はまた、好ましくは、ビーズの乾燥重量の0.1%〜50%、好ましくは1%〜15%の範囲であり、より好ましくは3%〜10%の範囲である。
【0302】
ポリマー性被覆物質は、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸アンモニウムコポリマー、またはそれらの混合物を含有してよい。EUDRAGIT(登録商標)S および EUDRAGIT(登録商標)L (Evonik) の様なメタクリル酸コポリマーが特に適している。これらのポリマーは胃酸耐性であり、腸溶性ポリマーである。これらのポリマーフィルムは純水および希酸に不溶性である。それらはそのカルボン酸の含量に依存して高めのpHに溶解し得る。EUDRAGIT(登録商標)S およびEUDRAGIT(登録商標)L はポリマー被覆中に単一の成分として又は如何なる比率の組合せとしても用いることができる。ポリマーの組合せを用いることによって、ポリマー性物質は多様なpHレベル、例えばEUDRAGIT(登録商標)L および EUDRAGIT(登録商標)S がそれぞれ可溶性となるpHの間での溶解性を発現することができる。
【0303】
商標「EUDRAGIT」は以降ではメタクリル酸コポリマー、特にEvonikによりEUDRAGIT(登録商標)の名称で市販されているものに用いる。
【0304】
被覆は、少なくとも1つの薬学的に許容し得る水可溶性ポリマーの主要割合(例えば、ポリマー性被覆含量全体の50%を超える)、および随意に少なくとも1つの薬学的に許容し得る水不溶性ポリマーの小数割合(例えば、ポリマー性含量全体の50%未満)を含んで成るポリマー性物質を含有することができる。それに代えて、膜(membrane)被覆は少なくとも1つの薬学的に許容し得る水不溶性ポリマーの主要割合(例えば、ポリマー性被覆含量全体の50%を超える)、および随意に少なくとも1つの薬学的に許容し得る水可溶性ポリマーの小数割合(例えば、ポリマー性含量全体の50%未満)を含んで成るポリマー性物質を含有することができる。
【0305】
EUDRAGIT(登録商標)RS および EUDRAGIT(登録商標)RL (Evonik) の様なメタクリル酸アンモニウムコポリマーは本発明での使用に適している。これらのポリマーは、純水、希酸、緩衝溶液、および/または消化性流体中に、物理化学的pH範囲の全体に亘って不溶性である。ポリマーは水および消化性流体中にpHとは独立に膨潤する。膨潤した状態において、それらは水および溶解された活性な剤に対して透過性である。ポリマーの透過性は、ポリマー中におけるエチルアクリレート(EA)、メチルメタクリレート(MMA)、およびトリメチルアンモニオエチル メタクリレート クロリド(TAMCl)基の比率に依存する。例えば、EA:MMA:TAMCl 比が 1:2:0.2 (EUDRAGIT(登録商標)RL) を有するポリマーの透過性は1:2:0.1 (EUDRAGIT(登録商標)RS)の比を有するものの透過性より高い。EUDRAGIT(登録商標)RL のポリマーは、高い透過性の不溶性ポリマーである。EUDRAGIT(登録商標)RSのポリマーは、低い透過性の不溶性フィルムである。
【0306】
アミノメタクリレートコポリマーは如何なる所望の比率でも組み合わせることができて、その比率は、有効成分放出速度を変化させるために変更できる。例えば、EUDRAGIT(登録商標)RS: EUDRAGIT(登録商標)RL の比 90:10 を用いることができる。それに代えて、EUDRAGIT(登録商標)RS: EUDRAGIT(登録商標)RL の比は、約100:0〜約80:20、または約100:0〜約90:10、またはそれらの間の如何なる比とすることができる。その様な製剤において、より低透過性のポリマーEUDRAGIT(登録商標)RSは、通常、より可溶性のRLを持ったポリマー性物質の大部分を含有し、そのポリマー性物質が溶解するときは裂け目が形成されるのを許容し、その裂け目を通して溶質がミニビーズと接触することを可能とし、予め溶解された医薬活性剤が制御されたやり方で逃げることが可能となる。
【0307】
活性成分の所望の放出遅延および/または被覆の穿孔および/または薬物の放出を可能とするための被覆内のミニビーズの暴露および/または固定化または水可溶性ポリマーマトリックスの溶解を達成するために、アミノメタクリレートコポリマーはメタクリル酸コポリマーとポリマー性物質内で合体することができる。アミノメタクリレートコポリマー (例えば、EUDRAGIT(登録商標)RS) のメタクリル酸コポリマーに対する比率は、約99:1から約20:80の範囲で用いることができる。2つのタイプのポリマーはまた同一のポリマー性物質に合体することができ、またはミニビーズに適用される別々の被覆として設けることができる。
【0308】
Eudragit(登録商標)FS 30 D はアニオン性の水性アクリルポリマー性分散体であって、メタクリル酸、メチルアクリレート、およびメチルメタクリレートから成り、pH 感受性である。このポリマーは少数のカルボキシル基を含有し、かくしてより高いpH (>6.5)で溶解する。その様な系の利点は、それが通常の粉末層形成および流動床被覆技法を使って合理的な加工時間内に大規模で容易に製造することができることである。
【0309】
上記のEUDRAGIT(登録商標)ポリマーに加えて、多くの他のその様なコポリマーを用いて薬物放出を制御することができる。これらには、EUDRAGIT(登録商標)NE およびEUDRAGIT(登録商標)NM 範囲の様なメタクリレートエステルコポリマーを含む。EUDRAGIT(登録商標)ポリマーに関する更なる情報は「Aqueous Polymeric Caotings for Pharmaceutical Dosage Forms、ed. James McGinity、Marcel Dekker Inc.、New York、pg 109-114」 中の「ポリメタクリレート被覆系の特性に関する化学と応用」に見出され、その全体は引用により本明細書に取り込まれる。
【0310】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の幾つかの誘導体もまたpH依存性の溶解性を示し、本発明において被覆に用いられ得る(この被覆は上記の遅延剤/保護剤としての用途に代えて又は加えて用いられる)。これらの誘導体はヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート(HPMCP)を含み、これは上部腸管で急速に溶解し、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)を含み、これはその中のイオン化可能なカルボキシル基の存在がポリマーを高いpH(LFグレードでは>5.5およびHFグレードでは>6.8)で可溶化させる。これらのポリマーは信越化学株式会社から商業的に入手可能である。
【0311】
本発明によれば、その溶解プロフィールおよび/または本発明のミニビーズに取り込まれた有効成分を放出する能力においてpH非依存性であるポリマー性被覆物質を用いることが特に好ましい。例は既に与えられている(例えば、Eudragit RSおよびRL)。他のpH非依存性のポリマー性被覆物質の例はエチルセルロース、特にエチルセルロースの分散体であって、サブミクロン〜ミクロンの粒子寸法範囲、例えば0.1〜10ミクロンの寸法範囲にあり、例えばアンモニウムオレエートのような乳化剤の助けで水中に均一に懸濁している分散体である。エチルセルロース分散体は随意におよび好ましくは可塑剤を、例えばジブチルセバケートまたは中鎖トリグリセリドを含有する。その様なエチルセルロース分散体は、例えば、U.S.特許第4502888号に従って製造することができ、その内容は引用によって本明細書に取り込まれる。本発明での使用に適していて商業的に入手可能なその様なエチルセルロース分散体の1つは商標「Surelease(登録商標)」としてWest Point、Pa. U.S.A.のColorconによって市販されている。この市販されているプロダクトにおいて、エチルセルロース粒子は、例えばオレイン酸および可塑剤と混合され、次いで随意に押し出され溶融されている。溶融可塑化エチルセルロースは次いで例えばアンモニア化された水中で、随意に高剪断混合機で、例えば、圧力下に直接乳化される。アンモニウムオレエートはその場で形成することができて、例えば可塑化されたエチルセルロース粒子の分散体を安定化させて形成する。追加の精製水は次いで最終の固体含量を達成するために添加することができる。U.S.特許第4123403号を参照のこと。この内容は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0312】
商標「Surelease(登録商標)」は以後エチルセルロース被覆物質を指すものとし、例えばエチルセルロースの分散体であって、サブミクロンからミクロンの粒子寸法範囲、例えば0.1〜10ミクロンの寸法範囲にあり、例えばアンモニウムオレエートのような乳化剤の助けで水中に均一に懸濁している。特に、商標「Surelease(登録商標)」は本明細書において、商標「Surelease(登録商標)」の下にColorconによって市販されているプロダクトを指す。
【0313】
「Surelease(登録商標)」分散体はフィルム形成ポリマー、可塑剤および安定剤の組合せの例であって、pHに比較的不感受性で再現性のあるプロフィールを持った有効成分の放出速度を調整するための被覆として用いることができる。薬物放出の主要な手段はSurelease(登録商標)分散体膜を通っての拡散によるものであり、フィルム厚さによって直接的に制御される。Surelease(登録商標)の使用は特に好ましく、被覆されたミニビーズの溶解性を修飾するために、被覆として適用されるSurelease(登録商標)の量を増減することが可能である。
【0314】
本発明はまた、Surelease(登録商標)と他の被覆成分、例えばペクチンまたはアルギン酸ナトリウム、例えばNutrateric(登録商標)の商標名で入手可能なアルギン酸ナトリウムとの組合せを用いることも思慮される。
【0315】
上で議論されたEUDRAGIT(登録商標)およびSurelease(登録商標)ポリマーに加え、他の腸溶性の、またはpH依存性のポリマーを用いることができる。その様なポリマーはフタレート、ブチレート、サクシネート、および/またはメリテート基を含むことができる。その様なポリマーは、限定的ではないが、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロース水素化フタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、デンプンアセテートフタレート、アミロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレートおよびポリビニルブチレートフタレートを含む。加えて、両立し得る場合には、追加の、制御されたまたは標的化された放出プロフィールを提供するために、如何なるポリマーの組合せもブレンドすることができる。
【0316】
被覆は、ポリマー性物質の透過性を増加するために少なくとも1つ可溶性賦形剤をさらに含有することができる。適切には、少なくとも1つの可溶性賦形剤が、可溶性ポリマー、界面活性剤、アルカリ金属塩、有機酸、糖、および糖アルコールの間から選択される。その様な可溶性賦形剤は、限定的ではなく、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベートの様な界面活性剤、酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸および酒石酸の様な有機酸、デキストロース、フラクトース、グルコース、ラクトースおよびサッカロースの様な糖、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトールおよびキシリトールの様な糖アルコール、キサンタンガム、デキストリンおよびマルトデキストリンを含む。幾つかの実施態様において、ポリビニルピロリドン、マンニトールおよび/またはポリエチレングリコールが可溶性賦形剤として用いることができる。少なくとも1つの可溶性賦形剤を、ポリマーの全乾燥重量に基づき重量で約1%〜約10%の範囲の量で用いることができる。
【0317】
放出速度の修飾、放出の遅延または延長を生ずる様な修飾は多くの方法で達成することができる。機序は消化管内の局所的pHに依存若しくは独立であることができ、また所望の効果を達成するための局所的酵素活性に依存することもある。修飾放出製剤の例は当分野でよく知られており、例えば、U.S. Pat. Nos. 3845770;3916899;3536809;3598123;4008719;5674533;5059595;5591767;5120548;5073543;5639476;5354556;および5733566。それらの全ての内容は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0318】
被覆(または、如何なる追加的または二次的被覆)はまた、特に動物(魚を含め)用ワクチンに適した実施態様において、味マスキングまたは味促進賦形剤を、例えばワクチン組成物の味をマスクしまたは促進する賦形剤を含んでよい。子供用の、即ち小児用ワクチン製剤用の味マスキングまたは味促進賦形剤もまた組成物および/または被覆中に含まれてよい。色(例えば、染料、特に食料または医薬用に許容し得る染料)が、例えば組成物が子供または動物にとって魅力あるものにするために、被覆または被覆内の組成物中に含まれてよく、例えば家禽に対する色および魚に対する輝きである。インテグリンまたはエキソソーム、樹枝状の細胞等に結合するラクトアドヘリンの様なインテグリン様実体、もまた被覆中に(または、実に本発明の組成物本体中に)含まれてよい。
【0319】
ミニビーズの表面と反応する又は親和性を有する官能基を有するポリマーがミニビーズを被覆するために、即ち被覆として用いられてよい。特に、ビーズがアルギネートを含有する場合、アルギネートに親和性を有するポリマーが被覆として用いられてよい。ポリリジンがその様な被覆ポリマーの例であり、抗原および/またはアジュバントが核酸抗原を含有するときに有利に選択される。
【0320】
上で述べた様に、Sureleaseは、そのpH非依存性的溶解特性のために、特に好ましいポリマー被覆である。しかしながら発明者/出願人は、最適な溶解を達成するためにSureleaseの適切な量(重量増)を選択することが難しいことを見出した。余りにも多量のSureleaseは不完全な(または、遅すぎる)溶解に導き、一方余りにも少ない量は早すぎる溶解に導くことを見出した。
【0321】
特別な実施態様において、細菌性酵素によって(および随意に又はそれに代えて、膵臓の又は他の関連酵素によって)通常分解される第二のポリマー(例えば、多糖類、特にヘテロ多糖類)をSurelease(登録商標)に追加することが好ましい。
【0322】
本発明はそれ故にまた、それらの活性な積み荷(抗原および/またはアジュバント)の結腸中への放出を目的とする組成物を提供し、その組成物はエチルセルロース(好ましくは、アンモニウムオレエートの様な乳化剤および/またはジブチルセバケートまたは中鎖トリグリセリドの様な可塑剤で処理される)と、通常結腸中に見出される細菌性酵素による分解を受けやすい多糖類との組合せである。その様な多糖類は、コンドロイチン硫酸エステル、ペクチン、デキストラン、グアーガムおよびアミラーゼ、キトサン、レクチン等およびそれらの如何なる誘導体をも含む。本発明のこの実施態様において特に好ましい多糖類はペクチンである。
【0323】
被覆は、エチルセルロース(好ましくは、アンモニウムオレエートの様な乳化剤および/またはジブチルセバケートまたは中鎖トリグリセリドの様な可塑剤で処理される)と、通常結腸中に見出される細菌性酵素による分解を受けやすい多糖類との組合せを含有してよい;組成物は液体媒体、例えば水を含んでよい。
【0324】
水可溶性の多糖類(WSP)がペクチンの場合、Surelease(登録商標)のペクチンに対する比率は理想的には90:10〜99:1の範囲、好ましくは95:5〜99:1、より好ましくは98:2〜99:1である。重量増ならびにSurelease(登録商標)およびWSP間の比率は、組成物がその様な被覆を有するときは、被覆および本発明の組成物の挙動を洗練するために変えることができる。重量増を0〜30%(好ましくは 5〜10%)の範囲で選択し、Surelease(登録商標)のペクチンに対する比率を95:5〜99.5:0.5の範囲、好ましくは97:3〜99:1を含めた範囲で選択することが好ましい。
【0325】
上記の焦点は、本発明によるミニビーズからの有効成分の延長および/または持続放出にあったが、被覆されない、又は早期の小腸でのAPI放出を与え単に胃の中で保護するために十分な腸溶性の被覆および/または遅延剤/保護剤含量を持った単に腸溶性に被覆されたミニビーズもまた思慮される。
【0326】
適切なポリマー性被覆で被覆される前に(本明細書の他の場所でより詳細に記載される様に)、および如何なる追加の被覆も適用される前に、ミニビーズを乾燥することが好ましい。
【0327】
被覆工程は、ポリマー被覆溶液をミニビーズに適用する被覆マシーンの使用の様な如何なる適切な方法によっても実施することができる(上で特に記載した様に)。被覆用ポリマーは出来上がった溶液として直接使用できる様に製造業者によって提供されるか又は以下の製造者用の指示に従って使用前に調製することができる。
【0328】
適切な被覆マシーンは当分野の当業者には知られており、例えば、有孔板、またはGLATT、Vector、ACCELACOTA、Diosna、O’Haraおよび/またはHICOATER加工設備の様な流動床系を含む。最も好ましいのは「底部スプレー」配置で使用されるMFL/01 流動床塗布機(Fluid Bed Coater)(Freund)である。
【0329】
典型的な被覆条件を以下に示す:
【表5】
【0330】
ポリマー性被覆の部分としてか又は独立した被覆としてかどうかによらず、本発明のミニビーズは、1以上の層を有する組成物を製造するための医薬科学の技術分野では通常の方法を用いて追加の薬物層で被覆されてよく、各層は本明細書の他の場所に記載された様な1以上の活性な医薬または他の成分/賦形剤を含有する。ポリマー性被覆は、もし所望なら、その様な薬物層作成の前または後に適用されてよい。このアプローチは、相乗的な又は単に付加的な治療の利益を持った他の有効成分または医薬を含んで成るワクチン組成物を生成し、または抗原担持量の増加を可能とする。
【0331】
本発明の随意に被覆されたミニビーズは、上記の方法によるミニビーズの製造に続いて直接的に処方されてよい。それに代わる実施態様において、ミニビーズにおよび/または最終の固体投与製品に異なる特性を付与することが望ましい。これを達成する1つの方法は、本発明によれば、例えばミニビーズの粉末混合物の流れを改良するために、例えば、上記の様にバインダーとの関連で他の成分との顆粒化による。完全なままの又は壊れたミニビーズの顆粒は、先行技術に記載された様に液体(例えば、バインダーまたは溶媒溶液)を添加して顆粒化工程を達成することによって得られる。より大量の顆粒化液体は、より狭い粒子寸法範囲および、より粗くより堅い顆粒を生み出す、即ち、細かな顆粒粒子の割合は減少する。所与の粒子寸法を得るのに必要な最適な液体量がバッチ・バッチ間の多様性を最小化するために選択されてよい。この実施態様によれば、湿式顆粒化が、固体投与形態として表される本発明組成物の流動性、圧縮性、バイオアベイラビリティ、均質性、静電特性および安定性を改良するために用いられる。顆粒の粒子寸法は顆粒化液体の量および供給速度で決定される。湿式顆粒化は、流動性、圧縮性、バイオアベイラビリティ、および低投与量ブレンドの均質性、粉末の静電特性、および投与形態の安定性を改良するために用いられてよい。湿式顆粒化法はこの実施態様によれば、低いまたは高い剪断混合デバイスを採用し得て、このデバイス中では低粘性液体(好ましくは水)が、ミニビーズを含む製剤の残部と予め乾式混合されているバインダー含有粉末ブレンドに添加される。それに代わる利用し得る顆粒化アプローチは、高剪断、押し出し及び通常の湿式顆粒化を含む。
【実施例】
【0332】
以下の実施例は本発明およびその好ましい実施態様をさらに説明することを意図する。それらは如何なる点においても、本発明を制限することを意図するものではない。他に特定されない限り、実施例および本明細書の何れにおいても、全てのパーセントおよび比(比率)は重量に基づく。
【0333】
実施例中で作成され試験されたビーズは約1mmおよび約2mmの間の直径を有する。
【0334】
実施例1
以下の成分を記載された様に合体した:油としてのモンタナイドおよびスクワレンと、界面活性剤としてのLabrafil M 1944 CS、Span 85およびTween 80とで油相を形成し、水性要素と合わせてw/oエマルジョンとする。
【0335】
実施例 1a
油 1は以下から構成された:スクワレン(49.5% w/w)、Labrafil M 1944 CS (49.5%)、Tween 80 (0.5%)およびSpan 85 (0.5%)。Labrafil M 1944 CSは4のHLB値を有するオレオイルマクロゴールグリセリド(ポリオキシグリセリド)として記載され、大きな割合のオレインおよびリノレイン酸(C18)に基づくトリグリセリドおよびペグリル化誘導体から構成されるとして報告される。Tween 80はポリソルベート 80(CAS登録番号9005-65-6)に対する登録商標である。TWEEN 80はポリエチレンソルビトールエステルであって、20のエチレンオキシド単位、1のソルビトール、および1級脂肪酸として1のオレイン酸と仮定して計算値分子量1310ダルトンを有する。SPAN 85 (CAS登録番号26266-58-0)は非イオン性の界面活性剤(ソルビタンエステルおよびエトキシ化ソルビタンエステル)に基づいており、1.8のHLB値を持つ。SPANはCroda International PLCの登録商標である。
【0336】
実施例 1b
油 2:Montanide ISA 720 (24%)、スクワレン (24%)、Labrafil M 1944 CS (51%)、Tween 80 (0.5%)およびSpan 85 (0.5%)。Montanide ISA 720は代謝可能な油アジュバントである。そのアジュバントはマンニドオレエートを天然の代謝可能な油中に含んで成り、スクワレンベースの油中水マンニドオレエート製剤である。
【0337】
実施例 1c
油 3は約75%のLabrafil M 1944 CS、24.8%のMontanide ISA 720、0.1%のTween 80および0.1%のSpan 85から成る。
【0338】
実施例 1d
油 4は、約67.2 %のLabrafil M 1944 CS、24%のMontanide ISA 720、4%のTween 80および4.8%のSpan 85から成る。
【0339】
実施例 2〜6
油 3(実施例 1c)を用いて、以下の被覆されたワクチン組成物を上記の製造の章に記載した様にして製造した。以下の実施例においては、卵アルブミン(OVA)が動物での免疫応答を弱くではあるが刺激すると知られていることから、卵アルブミンをモデル抗原として用いた。内部毒素(エンドトキシン)含量は1 EU/mg未満である。
【0340】
実施例 2
卵アルブミン(OVA)をNaHCO
3/NaOHバッファ(pH = 9.6)中に室温にて重量で0.04%の濃度で溶解し、次いでHPMCP (重量で1.79重量)およびD-ソルビトール (重量で2.55%) を添加した。全ての上記成分が溶解した後、溶液を65℃にまで加熱し、ゼラチンを重量で16.91%の濃度で溶解した。この段落で述べたパーセントは全水性溶液の重量による%である。
【0341】
ゼラチンが完全に溶解した後に、油 3を攪拌下にゼラチン溶液中に1:7の重量比で添加した。得られたエマルジョンを次にピペットで押し出し、中鎖トリグリセリド中で冷却し/固化してビーズを形成し、次に乾燥のために抽出した。
【0342】
以下の表に、乾燥後の製剤組成を示す。
【表6】
【0343】
実施例 3
ポリI:C(ポリイノシン:ポリシチジリック酸)およびCpG(シトシンホスフェートグアニン)をアジュバントとして用いた。それらは商業的に供給されるままに、即ち水性溶液で用いて油相(油3) 中に取り込まれて、初めは油中水(w/o)エマルジョンを生成し、その後にこのエマルジョンを、OVA、D-ソルビトール、HPMCPおよびゼラチンを含有する水性相中に分散した。
【0344】
ゼラチン溶液の組成は、実施例2に記載されたものと同じであった。ゼラチン溶液および油相(アジュバント水性溶液を含有している)を7:1の比で混合した。実施例2に記載の方法に従ってビーズを製造した。以下の表は乾燥基準でのビーズの組成を示す。
【表7】
【0345】
実施例 4
アルファGalCerをアジュバントとして用いた。それを油3中に室温で 0.1% w/wの濃度で分散した。油相を次に水性相(実施例2に記載されたものと同じ組成を有している)と1:7の比(w/w)で混合した。実施例2に記載された方法に従ってビーズを製造した。
【表8】
【0346】
実施例 5
MPLAをアジュバントとして用いた。それを油3中に室温にて重量で0.3%の濃度で分散した。油相を次に水性相(1:7比で)に添加し、上記の様にしてビーズを製造した。
【表9】
【0347】
実施例 6
Quil A(クイラヤサポナリア A)をアジュバントとして用いた。それを油3中に室温にて重量で2%の濃度で分散した。次いで、油相を水性相(1:7比)に添加して、上記の様にしてビーズを製造した。
【表10】
【0348】
実施例 7
この実施例では、実施例2〜6のミニビーズをマウスに投与して(モデル抗原卵アルブミンの免疫原性を調べるために)、溶液中のOVA単独に、または強力で確立された粘膜性アジュバントのコレラ毒素(CT)と一緒にのいずれかに対して誘引された免疫応答を比較した。
【0349】
BALB/cマウスを連続する2日間、卵アルブミン(200μg/マウス)単独または重炭酸塩緩衝液中のコレラ毒素(CT;10μg/マウス)と一緒に、又は1日あたり4個のミニビーズ/マウスの卵アルブミン(OVA)プラセボ、油3中のOVA、油3中のOVA+MPLA、油3中のOVA+アルファGalCer、油3中のOVA+QuilA、油3中のOVA+CpG+Poly (I:C)で経口的に免疫(または、予防接種)した。全てのマウスを2.5週間後に同一シリーズの免疫でブースト(追加免疫(boosted))した。経口免疫の第二ラウンド後の2.5週間後に全てのマウスを卵アルブミン(50 μg/マウス)およびミョウバンで腹腔内(i.p.)追加免疫した。マウスの1群を対照としてのOVAおよびミョウバンでi.p.免疫した。OVA特異的なIgG抗体応答を、経口免疫の第二ラウンドの直前に回収された((a) 経口免疫の最初のシリーズの後の)血清サンプル、OVAおよびミョウバンによる最終のi.p. 追加免疫の直前に回収された ((b) 経口予防接種の第二シリーズ後の)血清サンプル又は最終i.p. 追加免疫(ブースト)後1週間の((c) OVA およびミョウバンによるi.p. 追加免疫後の)血清サンプル上のELISAで決定した。結果を、群当たり3〜5匹のマウスについて個々の平均の終点滴定量(+ S.E.)で表した (
図1および2参照)。
【0350】
実施例 8
BALB/cマウスを免疫して、OVA特異的なIgG抗体滴定量を上記の実施例7に記載したと同じ血清サンプルについて決定した。結果を、各マウス群に対する平均値を持った個々のマウスについて実線で示したIgG終点滴定量として表した。
【0351】
経口免疫の丁度1シリーズの後、卵アルブミン特有なIgG抗体の僅かな増強が、卵アルブミンおよびアジュバントとしてMPLA、アルファGalCerまたはQuilAのいずれかを持った油3を含有するミニビーズで免疫されたマウスの血清中に見られた (図 3aおよび4a)。
【0352】
経口免疫の2ラウンド後に、油3を含有するミニビーズで経口的に免疫された全てのマウスから、OVA特異的なIgG抗体の強い増強が見られた。対照的に、プラセボ中のミニビーズおよびOVAで経口的に免疫されたマウスの血清中には、IgGの増強は何ら見られなかった。このことは、ミニビーズ製剤中の油3の存在が強いIgG応答を誘発することを示している(図 3bおよび4b)。
【0353】
アルファGalCerアジュバントが、経口免疫の2ラウンド後のミニビーズ中において有効なアジュバントであると特に見出された。対照的に、卵アルブミン単独での又は溶液中のCTと一緒にのいずれかでの経口免疫は多様なIgG抗体応答を与えた。(図 3bおよび4b)。
【0354】
経口免疫の第2ラウンドの17日後に、全てのマウスをOVAおよびミョウバンで腹腔(i.p.)追加免疫した。OVAおよびアジュバントとしてアルファGalCerを有する油3を含有するミニビーズで経口的にプライム免疫されおよびi.p. 追加免疫されたマウスから最も強力な抗卵アルブミンIgG抗体応答が見られた。この製剤で免疫された全てのマウスが強いIgG抗体応答を示した。OVAおよびアジュバント無し又はアジュバントとしてMPLAまたはQuilAを有する油3を含有するミニビーズ製剤で経口的に免疫されおよびi.p. 追加免疫されたマウスもまた強いIgG滴定量を持っていたが、その応答はミニビーズおよびアルファGalCerで経口的にプライム免疫されたマウスからの免疫応答より変化し易いものであった(
図3cおよび4c)。
【0355】
実施例 9
以下の実施例において、油相および水性相を1:6〜10、好ましくは凡そ1:7または1:8の範囲の比率で、マグネチックスターラー(Stuart製)を用いた成分の穏やかな連続攪拌を伴って混合する。適切な量のソルビトール、HPMCP、NaHCO
3およびNaOHを水に添加し、凡そ60〜75℃に加熱して溶液とし、次いでゼラチンを添加することによって、水性相(ゼラチン、ソルビトール、HPMCP、NaHCO
3およびNaOH)を調製した。「ゼラチン溶液」は、15-25% (好ましくは17〜18%)のゼラチン;75%-85% (好ましくは77〜82%)の水プラス1〜5% (好ましくは1.5〜3%)のソルビトールを含有していた。ゼラチン溶液を、それを流体状態に維持するために60℃〜70℃に保持した。室温での油への界面活性剤 (例えば、Span 85および/またはTween 80)の攪拌下の添加によって油相を作成した。適切な量の卵アルブミン(以下の表を参照)を添加して狙った比率を達成した。油相 (またはw/oエマルジョン)を、加熱された水性相(ゼラチン溶液)中に1〜2時間攪拌しながら添加してエマルジョンを形成した。得られたエマルジョン(またはw/o/wエマルジョン) は固化したミニビーズの組成を有していたが、水がまだ存在していた。一端エマルジョンが形態されたら、ピペットを用いて流体エマルジョンを手動で8〜12℃の範囲に維持されたMCT(冷却用流体)中に滴下しながらビーズ化工程を遅滞なく開始して固化を生じさせた。ビーズを次に網バスケット中に集めると油が流れ落ちビーズが留まり、余分な油を遠心分離で除去し、次に酢酸エチルでビーズを洗浄した後に乾燥した。乾燥はFreund Drum乾燥機を用いて15℃および25℃の間の温風で行った。以下の組成を有する未被覆のミニビーズが得られた:
【表11】
【0356】
モデル抗原としてOVAを含有する好ましい製剤は以下の通りである:
【表12】
【0357】
実施例 10〜13
これらの実施例は実施例9と、および油3は実施例1cと同じ方法で製造した。アルファGalCerをNaHCO
3/NaOH緩衝液(pH=9.64)中に凡そ70℃の温度で溶解し、次に、OVA、D-ソルビトール、HPMCPおよびゼラチンを添加した。用いた濃度は異なる実施例に対して僅かに変更し、それぞれの実施例に対して示した。
【0358】
実施例 10
水性相の成分対して用いた濃度を以下に示す:
【表13】
【0359】
備考:この実施例のビーズを製造するためには、何ら油相を用いなかった。
【表14】
【0360】
実施例 11
水性相の成分に用いた濃度は以下の通りである:
【表15】
【0361】
上記のゼラチン相および油相(油 3)を6.5:1の比で混合した。
【表16】
【0362】
実施例 12
この実施例において、油相は油 MF59と称する。これは文献(例えば、Schultze et al、Vaccube 26 (2008) 3209-3222を参照のこと;その全体は引用により本明細書に取り込まれる。)中で知られるMF59アジュバントのことである。実施例中で用いたスクワレンはSigma-Aldrichから入手した。この実施例において、文献アジュバントからの油成分(それは水中で作られる) を水無し組成物へと外挿した。得られた組成物は以下の通りであった:
【表17】
【0363】
水性相の成分に用いた濃度は以下の通りである:
【表18】
【0364】
油相および水性相は1: 5.6の比で混合した。
【表19】
【0365】
実施例 13
この実施例では、αGalCer (αGalCer-Sとして示される) のチオール誘導体をアジュバントとして用いた。0.1M NaOH溶液をNaHCO
3/NaOH緩衝液に代えて用いて水性相を調製した。
水性相の成分に用いた濃度は以下の通りである:
【表20】
【0366】
油相 (油 3)および水性相を1:7 の比で混合した。
【表21】
【0367】
実施例 14-21
以下の実施例において、抗原/アジュバントとして用いたCTB (rCTB−コレラ毒素の組み替えサブユニット B)はSBL Vaccin ABから入手し、商業的に供給される形態で、即ち9 mg/ml のPBS緩衝溶液として採用した。
【0368】
rCTBを抗原として用いる好ましい製剤を以下の表に示す:
【表22】
【0369】
実施例 14
実施例 13のように、0.1M NaOH 溶液を水性相として用いた。
水性相の成分として用いられた濃度は以下の通りである:
【表23】
【0370】
水性相および油相(油 3)を1:7の比で混合し、次いで0.211 mlのrCTB溶液、1.9 mgの固体rCTBに対応する、を添加し、得られた混合物をさらに撹拌し、次いで先に記載した方法に従ってビーズを製造した。
【表24】
【0371】
実施例 15
この実施例は実施例 14に準じて調製したが、唯一の差異はアジュバントとしてアルファGalCerに代えてアルファGalCer-Sの使用である。
【表25】
【0372】
実施例 16
この実施例では、油 4 (その組成は実施例 1dに記載されている。) を油相として用いた。水性相には界面活性剤として0.5% Tween 80を含有する0.1M NaOH溶液を用いた。アルファGalCerをアジュバントとして用いて水性相中に凡そ70℃および0.04%の濃度で溶解し、次いでHPMCP (1.71%)、D-ソルビトール (1.7%)およびゼラチン (17.03%)を添加し、同一温度を保って溶解した。油相および水性相を1:7比で混合し、最後にrCTB 溶液 (0.300 ml、2.7 mgに対応) を添加した。次に、ビーズを先に記載した方法に従って製造した。
【表26】
【0373】
実施例 17
この実施例は実施例 16と同様に調製した。唯一の差異はアルファGalCerの濃度であり、二倍にした。
【表27】
【0374】
実施例 18
この実施例において、水性相は実施例 16に記載したものと同じ組成を有していた。油相は何ら使用しなかった。
【表28】
【0375】
実施例 19
この実施例は実施例17および18に記載の様に調製したが、唯一の差異はアルファGalCerを用いなかった点である。水性相の成分の濃度は以下の通りであった:
【表29】
【0376】
油相 (油 4)および水性相を1:7比で混合した。0.300 mlのrCTB 溶液を最終的に添加した。
【表30】
【0377】
実施例 20
この実施例において、0.5% のTween 80を含有すPBS緩衝液を水性相として用いた。アルファGalCer (0.06% w/w)を70℃で溶解し、次いで D-ソルビトール (1.74%)およびゼラチン (17.51%) を添加した。油相 (油 4)を上記水性相へ1:9の比率で添加した。最後に0.300 mlのrCTB溶液を上記混合物中へ添加して、ビーズを製造した。
【表31】
【0378】
上記ビーズを次いで、Eudragit L30-D 55にで5.5%重量増を達成する様に被覆した。
【0379】
実施例 21
この実施例において、精製水を水性相として用いたが、水性相はTween 80 (0.52%)、D-ソルビトール (1.67%)およびゼラチン(17.25%)を含有していた。油相油 4として表すが、そこにはアルファGalCer (0.51%)および凍結乾燥したrCTB (1.83%)を室温で分散した。油相および水性相を次いで1:9の比率で混合した。
【表32】
【0380】
以前の実施例の様に、ビーズをEudragit L 30-D 55で被覆した。達成された重量増は6.3%であった。
【0381】
実施例 22
この実施例は、コレラ毒素を用いたマウスの腸管ループアッセイにより、本発明の製剤が抗原の攻撃に対する免疫学的保護を提供するのに有効であることを論証する。実施例はTokuhara D らにより(2010) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107: 8794-8799に記載されたコレラ毒素攻撃を用いた。
【0382】
マウスを多様なコレラ毒素Bサブユニット(CTB)製剤で経口的に免疫した。ある製剤においては、α-ガラクトシルセラミド、をアジュバントとして用いた。試験した製剤は以下の通りである:
(i) PBS
(ii) CTB単独溶液
(iii) コレラ毒素(最も強力な粘膜性アジュバント)を伴った溶液中のCTB
(iv) アルファGalCerを伴った溶液中のCTB
(v) ビーズ製剤中のアルファGalCerナシの油3の中のCTB
(vi) NaOH含有ビーズ方式中のアルファGalCerを伴った油3の中のCTB
(vii) NaOHナシのビーズ方式中のアルファGalCerを伴った油3の中のCTB
【0383】
製剤(v)はCTB 006/B (実施例 19)である。製剤(vi)はCTB 004/B (実施例 17)である。製剤(vii)はCTB 009/B (実施例 21)である。
【0384】
BALB/c マウスを、0、2および4週間目毎に連続2日間、CTB (20μg/マウス)単独で、またはコレラ毒素(CT;10μg/マウス)若しくはアルファGalCer (15μg/マウス)と溶液中で混合して、または上記の製剤で経口免疫した。最後のワクチン接種の1週間後に、20μgのコレラ毒素をマウスに強制経口投与した。12時間後、マウスを犠牲にして消化管を除去した。除去した消化管および、除去した大腸管をそれぞれ図 5および6に示す。図 5は体液蓄積、特にマウス盲腸への蓄積を示す。マウスが有効に免疫されない限り、コレラ毒素の送達は消化管での顕著な体液蓄積を招く(ヒトの下痢症に対する代理現象)。図 5には、PBSまたはCTB単独で予防接種されたマウス中に、かなりの体液蓄積が生じたことが見て取れる。それとは対照的に、本発明の製剤で免疫されたマウスは、少なめの体液蓄積を有していた。NaOHナシで処方した油3の中にCTB+GalCerを含有するビーズで免疫したマウスは特に、体液蓄積はかなり少なかった;この効果は、正の対照アジュバント、コレラ毒素、を用いて見られる効果と同程度であった。
図6は同一のマウスの大腸管を示す。正常なペレット形成は保護を示唆しており、それに対して群(i)および(ii)(PBS、CTB)においてはペレット形成が不十分であることが見て取れて、下痢症を示唆する。
図6におてもまた、NaOH無しに処方された油3の中にCTB+GalCerを含有するビーズ製剤で免疫されたマウスが大腸管で正常なペレット形成を有しており、コレラ毒素に対する保護を示唆する。
【0385】
本発明はまた以下の条項の主題に関する:
【0386】
1.油の小滴が分散している水可溶性のポリマーマトリックスを含んで成る医薬組成物であって、該組成物はアジュバント、抗原またはそれらの組合せから選択された少なくとも1つの免疫調節のための有効成分を含んで成る医薬組成物。
【0387】
2.免疫調節が、ワクチン接種(vaccination:または予防接種)、免疫寛容化(tolerisation)または免疫療法である、項1に記載の組成物。
【0388】
3.少なくとも1つの有効成分が、油小滴の少なくとも幾つかに含まれる、項2に記載の組成物。
【0389】
4.油小滴を含有するマトリックスが水性媒体中に溶解するにつれて油小滴が放出される、先行する項のいずれか1つの項に記載の組成物。
【0390】
5.該組成物が経口投与用である、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
【0391】
6.本発明の組成物が少なくとも1つの抗原および少なくとも1つのアジュバントを含んで成る、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
【0392】
7.腸/結腸粘膜送達用および/または免疫調節用、例えば経口免疫寛容誘導用の、先行するいずれか1つの項に記載の経口投与可能な組成物。
【0393】
8.有効成分の放出が腸管全体および結腸/直腸管または同様な予め特定された部位である、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
【0394】
9.該組成物が、溶解の速度と様相が修正される様な被覆を有する、先行する項のいずれか1つに記載の組成物。
【0395】
10.遅延剤/保護剤、例えばHPMC誘導体をさらに含む、先行する項のいずれか1つに記載の組成物。
【0396】
11.油小滴を含む水可溶性ポリマーマトリックスの随意に被覆された複数のミニビーズを含んで成り、少なくとも1つの有効成分が少なくとも1つのワクチン活性な有効成分を含んで成る、先行する項のいずれか1つに記載の組成物。
【0397】
12.乾燥した水中油エマルジョンの複数のミニビーズを含有する組成物であって、該組成物が少なくとも1つのワクチン活性な有効成分を含んで成る、先行する項のいずれか1つに記載の組成物。
【0398】
13.複数の随意に被覆された乾燥した水中油エマルジョンのミニビーズであって、少なくとも幾つかのミニビーズ(例えば、第1の集団)が1つの(または1以上の)有効成分を含んで成り、および随意に1つ(または1以上の)の有効成分を含有する他のビーズ(例えば、第2の集団)または1つの集団は有効成分ナシでよい、先行する項のいずれか1つに記載の組成物。
【0399】
14.該組成物が、少なくとも1つの有効成分を胃流体への暴露から保護するための成分、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)誘導体の様なあるpH以上でのみ水可溶性または実質的に水可溶性であるポリマーを含む、先行する項のいずれか1つに記載の組成物。
【0400】
15.該組成物が1以上の界面活性剤、好ましくは非イオン性の界面活性剤を含んで成る、先行する項のいずれか1つに記載の組成物。
【0401】
16.該組成物がポリマー性被覆、例えば、結腸中で細菌性酵素の存在下に分解するポリマーの被覆を有する、先行する項のいずれか1つに記載の組成物。
【0402】
17.該組成物がpH非依存性のポリマーを伴った細孔形成剤を含んで成る、先行する項のいずれか1つに記載の組成物。
【0403】
18.粘膜表面および/または下層の粘膜性リンパ組織、M-細胞、パイエル板または他の疫関連細胞もしくは細胞系へのワクチン抗原の吸着および吸収を増強する1以上の剤を含んで成る、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
【0404】
19.該組成物が、座薬、ペッサリー、ピル、錠剤、軟膏および流体から選択された形態にある、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
【0405】
20.ワクチン送達組成物であって、ワクチンを哺乳類の粘膜表面に吸着させ、および随意にワクチン組成物の構成成分の幾つか又は全ての吸収に引き続きワクチンを粘膜関連リンパ組織(MALT)と接触させる、組成物。
【0406】
21.感染因子によって悪化し又は直接もしくは間接的に引き起こされた胃腸の状態の治療または予防方法であって、先行するいずれか1つの項に記載の組成物を動物に投与する、例えば経口的に投与する、方法。
【0407】
22.項1〜20のいずれか1つに記載のワクチン組成物を、プライムワクチン接種を非経口的に受けた動物に経口投与することを含んで成る、免疫応答をブーストする方法。
【0408】
23.油小滴が分散している液体水性外側相が固化、例えば、架橋、冷却または加熱による固化、を経て、項1〜20のいずれか1つに記載のワクチン組成物を製造する方法。
【0409】
24.項1〜20のいずれか1つに記載の組成物を、口腔、消化管、鼻、直腸、または膣の表面の様な粘膜表面と接触させることを含んで成る、ワクチン接種の方法。
【0410】
25.先行するいずれか1つの項に記載の組成物を餌または飲料水の一部として動物に投与すること、または魚が再生産し、食べ、または別の方法で棲んでいる水中に導入することを含んで成る、ワクチン接種の方法。
【0411】
26.項1〜20のいずれか1つに記載の組成物を動物に投与することを含んで成る、動物、例えば魚または哺乳類に、および/または本明細書の他の場所で記載された1以上の疾患の動物に、免疫(予防接種)し又は免疫応答を誘発する方法。
【0412】
27.水可溶性のポリマーの水性溶液を、油ベースの液体と混合して、油中水エマルジョン、少なくとも1つの水性溶液および抗原またはアジュバントまたはそれらの組合せを含んで成る油ベースの液体、を形成すること、並びに、次に、得られる懸濁液を1以上のビーズまたは他の成形された構成要素、例えばビーズとし又はそれを可能にすること、を含んで成る免疫調節(例えばワクチン)組成物の製造方法。
【0413】
28.ワクチン送達組成物であって、ワクチンを哺乳類の粘膜表面に吸着させ、および随意にワクチン組成物の構成成分の幾つか又は全ての吸収に引き続きワクチンを粘膜関連リンパ組織(MALT)と接触させる、組成物。
【0414】
29.腸関連リンパ組織(GALT)へのワクチンの提示または送達を含んで成る、消化管系病原体に対するワクチンの経口投与方法。
【0415】
30.口腔または鼻孔中の粘膜関連リンパ組織へのワクチンの提示または送達を含んで成る、上部呼吸器系病原体に対するワクチンの経口投与方法。
【0416】
本発明はまた以下の条項の主題にも関する:
1.油小滴が分散している水可溶性のポリマーマトリックスを含んで成る医薬組成物であって、アジュバント、抗原またはそれらの組合せから選択された少なくとも1つの免疫調節剤を含んで成る、医薬組成物。
2.免疫調節が、ワクチン接種、免疫寛容化または免疫療法である、項1に記載の組成物。
3.少なくとも1つの免疫調節剤が油小滴の少なくとも幾つかに含まれる、項2に記載の組成物。
4.組成物が経口投与用である、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
5.本発明の該組成物が少なくとも1つの抗原および少なくとも1つのアジュバントを含んで成る、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
6.経口投与用に適しており及び消化管での油小滴の放出用に適している、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
7.油小滴の制御された又は標的を狙った放出を可能にする被覆を有する、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
8.腸溶性のポリマー、例えばHPMCPをさらに含む、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
9.該組成物が1以上の界面活性剤、随意に非イオン性の界面活性剤から選択された界面活性剤を含んで成る、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
10.1以上の界面活性剤の少なくとも一部および随意に該組成物の界面活性剤全体含量が油小滴中に存在する、項9に記載の組成物。
11.該組成物が、ポリマー性被覆、例えば結腸に存在する細菌性酵素の存在下で分解するポリマーの被覆を有する、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
12.該組成物がpH非依存性のポリマーを伴った細孔形成剤を含んで成る、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
13.粘膜表面および/または下層の粘膜性リンパ組織、M細胞、パイエル板または他の疫関連細胞もしくは細胞系へのワクチン抗原の吸着および吸収を増強する1以上の剤を含んで成る、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
14.水可溶性ポリマーがゼラチン、寒天、ポリエチレングリコール、デンプン、カゼイン、キトサン、大豆蛋白質、紅花蛋白質、アルギン酸塩、ゲランガム、カラギーナン、キサンタンガム、フタル酸化ゼラチン、コハク酸化ゼラチン、セルロースフタレートアセテート、オレオレジン、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリルまたはメタアクリルエステルの重合物およびポリ酢酸ビニルフタレート、およびそれらの組合せから選択されたもの、並びに随意にゼラチン、寒天およびカラギーナンから選択されたものである、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
15.ミニビーズの形態にある、先行するいずれか1つの項に記載の組成物。
16.該組成物が抗原およびアジュバントを含んで成るミニビーズの形態にあり、および随意に油小滴が油相を構成してその油相がミニビーズの抗原含量の少なくとも一部を含んで成るミニビーズの形態にある、項1または2に記載の組成物。
17.胃腸の蛋白質分解に対して抗原およびアジュバントを保護するための腸溶性の物質をさらに含んで成る、項16に記載の組成物。
18.腸溶性の物質が外側被覆を形成し又はそこに含有され、またはマトリックス中に含まれ、又はそのいずれでもある、項17に記載の組成物。
19.腸溶性の物質が外側被覆を形成し又はそこに含有され、および該組成物が塩基を含有しない、項17に記載の組成物。
20.1以上の界面活性剤、随意には非イオン性の界面活性剤から選択された界面活性剤、を含んで成る、項16〜19のいずれか1つに記載の組成物。
21.ミニビーズが0.5mm〜5mmの、および随意に0.5mm〜2.5mmの、直径を有する、項15〜19のいずれか1つに記載された組成物。
22.以下の表に列記された組成物の一つではない、先行するいずれか1つの項に記載の組成物:
【表33】
表中、HPMCPはヒドロキシプロピルメチルセルロース・フタレートまたはヒプロメロース・フタレートであり、
【表34】
表中、rCTB はコレラ毒素の組み替えサブユニットであり、
【表35】
23.項15〜21のいずれか1つ又は項22と項15〜21のいずれか1つとの組合せで規定されたミニビーズから本質的に成るミニビーズの集団。
24.項15〜21のいずれか1つ又は項22と項15〜21のいずれか1つとの組合せで規定されたミニビーズの集団を含んで成るプロダクト。
25.項1〜20のいずれか1つに記載の組成物、項21に記載の集団、または項22に記載のプロダクトから選択された調合薬であって、
調合薬は抗原を含んで成り、および:
調合薬は結腸または直腸中に抗原を放出するために適用され;および/または
調合薬は更にシクロスポリンまたは他の免疫抑制剤を含んで成る、調合薬。
26.先行するいずれか1つの項に記載の組成物であって、該組成物は複数の随意に被覆された水可溶性のポリマーマトリックスのミニビーズを含んで成り、該マトリックスは少なくとも1つの免疫調節剤を含んで成る油小滴を含有し、該少なくとも1つの免疫調節剤は少なくとも1つのワクチン免疫調節剤を含んで成る、組成物。
27.先行するいずれか1つの項に記載の組成物であって、該組成物は複数の乾燥された水中油エマルジョンのミニビーズを含んで成り、該組成物は少なくとも1つのワクチン免疫調節剤をエマルジョンの油部分に含んで成る、組成物。
28.油小滴が分散された水可溶性のポリマーマトリックスを含んで成るミニビーズの第1の集団、および油小滴が分散された水可溶性のポリマーマトリックスを含んで成るミニビーズの第2の集団を含んで成るプロダクトであって、ミニビーズの第1および第2の集団が異なっており、少なくとも第1集団のミニビーズが項15〜21、25、26または27のいずれか1つによって、または、項22と項15〜21のいずれか1つとの組合せによって規定される、プロダクト。
29.先行するいずれか1つの項に記載の組成物であって、該組成物は、座薬、ペッサリー、ピル、錠剤、軟膏および流体から選択されたプロダクトの形態にあり、該プロダクトは随意に、項15〜21、25、26または27のいずれか1つによって、または、項22と項15〜21のいずれか1つとの組合せによって規定される複数のミニビーズを含んで成る組成物。
30.感染因子によって悪化され又は直接的もしくは間接的に引き起こされた胃腸の状態の治療または予防方法であって、項1〜24または26〜28のいずれか1つに記載の組成物を動物に、例えば経口的に、投与することを含んで成る方法。
31.項1〜24または26〜28のいずれか1つに記載のワクチン組成物を、プライミングワクチン接種を非経口的に受けた動物に経口投与することを含んで成る、免疫応答を促進する方法。
32.ワクチン接種または免疫応答を誘発する方法であって、該方法は、:
項1〜24または26〜28のいずれか1つに記載の組成物を口腔、消化管、鼻、直腸または膣の表面の様な粘膜表面と接触させること;または
項1〜24または26〜28のいずれか1つに記載の組成物を餌または飲料水の一部として動物に投与すること、または魚が再生産し、食べ、または別の方法で棲んでいる水中に導入すること;
を含んで成る、項1〜24または26〜28のいずれか1つに記載の組成物を動物に口腔投与する方法。
33.経口免疫寛容を哺乳類に誘発する方法であって、項25に記載の調合薬を哺乳類に投与することを含んで成る方法。
34.水可溶性のポリマーを含んで成る液体水性外部相の使用であって、水溶性ポリマー中には油小滴が分散され、水性相が固化、例えば、架橋、冷却または加熱による固化、を生じさせ又は可能にすることによって項1〜28のいずれか1つに記載の組成物を形成する、使用。
35.水可溶性のポリマーの水性溶液を、油ベースの液体と混合して、油中水エマルジョン、少なくとも1つの水性溶液および抗原またはアジュバントまたはそれらの組合せを含んで成る油ベースの液体、を形成すること、並びに、次に、得られた懸濁液を1以上のビーズまたは他の成形された構成要素とし又はそれを可能にすること、を含んで成る免疫調節組成物の製造方法。
36.油ベースの液体が抗原またはアジュバントまたはそれらの組合せを含んで成る、項35に記載の方法。
37.ビーズまたは他の成形された構成要素を腸溶性のおよび/または他のポリマー被覆で被覆することを更に含んで成る、項35または項36に記載の方法。
38.成形された構成要素が0.5mm〜2.5mmの直径を有するビーズである、項35〜37のいずれか1つに記載の方法。
39.油ベースの液体が、単一の油脂相を有するか、または油中水エマルジョンであって、マクロゴールグリセリドおよび炭化水素油(例えば、テルペン)の組合せを、1以上の界面活性剤、例えば、非イオン性の界面活性剤と一緒に含んで成り、および随意に、マクロゴールグリセリド、例えば、オレオイル マクロゴールグリセリドおよびスクワレンの組合せを、1以上の界面活性剤、例えば、非イオン性の界面活性剤と一緒に含んで成る油ベースの液体である、項35〜38のいずれか1つに記載の方法。
40.成形された構成要素を、カプセル、錠剤、座薬、ペッサリーまたは投与のための他の投与形態に加工する工程を更に含んで成る、項35〜38のいずれか1つに記載の方法。
41.油が、随意に、懸濁した固体を含有し又は追加の内側の水相を含有する、単一の液体油脂相から成る、先行する項のいずれか1つに記載の主題。
42.油が脂肪酸;脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールのエステル;炭化水素油;およびステロイドから選択された1以上の油を含んで成る先行する項のいずれか1つに記載の主題であり、油は随意に、1以上の界面活性剤、例えば、非イオン性の界面活性剤と一緒にマクロゴールグリセリドおよび炭化水素油(例えば、テルペン)を含んで成り、例えば、マクロゴールグリセリド、例えばオレオイルマクロゴールグリセリドおよびスクワレンを、1以上の界面活性剤、例えば、非イオン性の界面活性剤と一緒に含んで成る主題。