特許第6235080号(P6235080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235080X線CTシステム、薬液注入装置およびCTスキャナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235080
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】X線CTシステム、薬液注入装置およびCTスキャナ
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   A61B6/03 330A
   A61B6/03 375
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-128494(P2016-128494)
(22)【出願日】2016年6月29日
(62)【分割の表示】特願2014-127110(P2014-127110)の分割
【原出願日】2007年8月3日
(65)【公開番号】特開2016-187584(P2016-187584A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2016年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2006-214697(P2006-214697)
(32)【優先日】2006年8月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−523697(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0116878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の透視画像を撮像するCT撮像部と、
撮像される被験者に薬液を注入する薬液注入動作部と、
前記薬液注入動作部による薬液の注入条件および前記CT撮像部による撮像条件を設定するためのデータが入力され、入力された前記データに基づいて前記薬液注入動作部および前記CT撮像部の動作を制御する操作部と、
前記薬液注入動作部についての情報を表す画面である前記注入条件の設定画面、および前記CT撮像部についての情報を表す画面である前記撮像条件の設定画面を表示する表示部と、
を有し、
前記操作部は、入力された前記データに基づいて前記注入条件および前記撮像条件を決定する統括制御部を含み、
前記データの入力の際、並びに前記薬液注入動作部および前記CT撮像部の動作中の少なくとも一方において、前記薬液注入動作部および前記CT撮像部のどちらについての情報を表す画面を前記表示部に表示させるかが前記統括制御部に予め設定されているX線CTシステム。
【請求項2】
前記操作部は、決定した前記注入条件に従って前記薬液注入動作部の動作を制御する注入動作部制御部と、決定した前記撮像条件に従って前記CT撮像部の動作を制御するCT撮像部制御部と、をさらに含む、請求項1に記載のX線CTシステム。
【請求項3】
前記操作部が前記表示部を有する、請求項1または2に記載のX線CTシステム。
【請求項4】
前記統括制御部で決定された注入条件および撮像条件、および入力された前記データを格納する記憶部をさらに有し、
前記統括制御部は、前記注入条件および前記撮像条件のうち後から入力される条件の設定時に、両方の条件に共通する項目のデータを前記記憶部から読み出し、これらのデータを前記注入条件の設定および前記撮像条件の設定に用いる、請求項1から3のいずれか1項に記載のX線CTシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のX線CTシステムの薬液注入動作部として用いられる薬液注入装置であって、
前記X線CTシステムの前記操作部との間でデータを送受信するためのインターフェイス部を有する薬液注入装置。
【請求項6】
前記操作部で設定された注入条件を表示する副表示部をさらに有する、請求項5に記載の薬液注入装置。
【請求項7】
前記操作部で設定された注入条件を変更するための副操作部をさらに有する、請求項6に記載の薬液注入装置。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載のX線CTシステムのCT撮像部として用いられるCTスキャナであって、
前記X線CTシステムの前記操作部との間でデータを送受信するためのインターフェイス部を有するCTスキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の透視画像を撮像するX線CTシステムに関し、特に、透視画像を撮像する被験者に造影剤等の薬液を注入する薬液注入装置を備えたX線CTシステム、その薬液注入装置およびCTスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の画像診断装置として代表的なものに、X線CT(Computed Tomography)装置がある。X線CT装置を使用するとき、良好な透視画像を得るため、被験者に造影剤や生理食塩水といった薬液を注入することがしばしば行われており、これらの薬液を自動的に注入するための薬液注入装置も実用化されている。
【0003】
X線CT装置によって良好な画像を撮像するためには、薬液注入装置によって薬液を注入して所定の時間が経過してから撮像を開始することが重要である。したがって、薬液注入のための操作と透視画像の撮像のための操作を1人の操作者が行う場合は、これらの操作が煩雑になってしまう。
【0004】
そこで、特許文献1には、X線CT装置と薬液注入装置とが互いにデータ通信して、薬液注入装置による薬液注入動作とX線CT装置による撮像動作とを連動させ、例えば、薬液の注入開始後、所定の時間が経過してから透視画像の撮像を開始することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−298610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている発明は、例えば薬液注入装置の動作を開始させるだけでX線CT装置による透視画像の撮像も自動的に行えるので、操作者の作業負担を軽減することができる。
【0007】
しかし、実際の操作においては、薬液の注入に先だって、被験者のID、体重、性別、身長、撮像部位、注入時間等の注入条件を薬液注入装置に設定する必要がある。同様に、透視画像の撮像に先立って、被験者のID、撮像部位、撮像時間、X線の曝射条件等の撮像条件をX線CT装置に設定する必要がある。
【0008】
これら注入条件の設定および撮像条件の設定は、薬液注入装置とX線CT装置とで別個に行われている。また、設定する注入条件と撮像条件との間には共通する事項も一部に含まれており、操作者は、共通する事項であっても薬液注入装置およびX線CT装置の双方に入力しなければならない。そのため、例えば注入条件の一部が変更され、その変更された注入条件が撮像条件と共通する事項であった場合、X線CT装置においても撮像条件を変更する必要があるが、撮像条件を変更し忘れてしまうこともある。
【0009】
また、注入条件および撮像条件を入力するための入力手段、および入力した内容や各装置の動作状況を表示する表示手段は、薬液注入装置およびX線CT装置それぞれが有している。薬液注入装置およびX線CT装置のこれら入力手段および表示手段は、ともに操作室に設置されることが多い。したがって、薬液注入装置用の入力手段および表示装置と、X線CT装置用の入力手段および表示手段が操作室に設置されることになり、操作室が煩雑になってしまう。
【0010】
本発明は、X線CT装置および薬液注入装置を含めたX線CTシステム全体の構成を簡略化し、それによって操作の効率化および省スペース化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明のX線CTシステムは、被験者の透視画像を撮像するCT撮像部と、撮像される被験者に薬液を注入する薬液注入動作部と、薬液注入動作部による薬液の注入条件およびCT撮像部による撮像条件を設定するためのデータの入力用の入力部と、制御部と、注入動作部についての情報を表す画面である注入条件の設定画面および注入動作部の動作画面、CT撮像部についての情報を表す画面である撮像条件の設定画面およびCT撮像部の動作画面、並びに撮像された前記透視画像を表示する表示部と、を有する。制御部は、入力部から入力されたデータに基づいて注入条件および撮像条件を決定する統括制御部と、決定した注入条件に従って薬液注入動作部の動作を制御する注入動作部制御部と、決定した撮像条件に従ってCT撮像部の動作を制御するCT撮像部制御部と、を含み、注入条件を設定する際に入力されるデータは被験者の撮像部位を含み、注入条件の設定画面は、人体を模した、前記被験者の撮像部位を表す画像を含み、注入条件および撮像条件の決定のためのデータの入力の際、並びに薬液注入動作部およびCT撮像部の動作中の少なくとも一方において、薬液注入動作部およびCT撮像部のどちらについての情報を表す画面を表示部に表示させるかが統括制御部に予め設定されている。
【0012】
また本発明の薬液注入装置は、上記本発明のX線CTシステムの薬液注入動作部として用いられる薬液注入装置であって、X線CTシステムの操作部との間でデータを送受信するためのインターフェイス部を有する。
【0013】
本発明のCTスキャナは、上記本発明のX線CTシステムのCT撮像部として用いられるCTスキャナであって、X線CTシステムの操作部との間でデータを送受信するためのインターフェイス部を有する。
【0014】
上記のとおり構成された本発明では、薬液の注入条件および画像の撮像条件を設定した
り、操作者に提供される画面を表示したりするための、共通の入力部、制御部および表示
部を有するので、薬液注入動作部とCT撮像部とでデータの共有が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、CT撮像部と薬液注入動作部とで、入力部、制御部および表示部が共
通であるので、X線CTシステム全体の構成を簡易化することができ、省スペースでの設
置が可能となる。また、入力部、制御部および表示部を共通とすることで、データも共有
化できるので、薬液の注入条件を設定する際および画像の撮像条件を設定する際のデータ
の入力を簡略化することができ、操作の効率化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態によるX線CTシステムの外観を表す斜視図である。
図2図1に示す注入ヘッドを、それに装着されるシリンジとともに示す斜視図である。
図3図1に示すX線CTシステムのブロック図である。
図4】注入条件設定時の、表示部への表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、薬液注入動作部である薬液注入装置100と、CT撮像部であるCTスキャナ300と、これらの操作機400とを有する、本発明の一実施形態によるCTシステム1000が示されている。薬液注入装置100およびCTスキャナ300は、操作機400にデータ通信可能に無線接続または有線接続されている。なお、図1では薬液注入装置100、CTスキャナ300および操作機400が同じ室内に配置されているように示しているが、実際にCTシステム1000で被験者の透視画像を撮像する際は、操作機400は薬液注入装置100およびCTスキャナ300とは別室に配される。
【0018】
CTスキャナ300は、被験者にX線を曝射し、被験者を透過したX線に基づいて被験者の体内を逆投影することで、被験者の体内の透視画像を撮像する装置である。CTスキャナ300は、その主要な構成として、寝台と、寝台に仰臥している被験者にX線を照射するX線源と、被験者を透過したX線を検出するようにX線源に対向配置されたX線検出器と、を有している。
【0019】
薬液注入装置100は、例えばスタンド111に連結されたアーム112の上部に装着された注入ヘッド110を有する。この注入ヘッド110が、操作機400と接続されている。
【0020】
注入ヘッド110は、図2に示すように、ヘッド本体113を有する。ヘッド本体113の上面には、シリンジ保持部として2つの凹部114が形成されている。これら凹部114に、2つのシリンジ200C,200Pがそれぞれ装着される。例えば、一方のシリンジ200Cには薬液としてCT用の造影剤が充填され、他方のシリンジ200Pには薬液として生理食塩水が充填されている。各シリンジ200C,200Pは、シリンダ210とピストン220とを有している。ヘッド本体113に装着された2つのシリンジ200C,200Pの先端は、連結チューブ230によって接続される。連結チューブ230の先端には、被験者の血管内に刺入されるカテーテル(不図示)が接続される。
【0021】
また、注入ヘッド110は、互いに独立して駆動される2つのピストン駆動機構130を有する。これらピストン駆動機構130によって、凹部114に装着されたシリンジ200C,200Pのピストン220をシリンダ210内に押し込むことで、シリンジ200C,200P内に充填されている造影剤および生理食塩水を、別々または同時に被験者に注入することができる。
【0022】
注入ヘッド110はさらに、副操作部である操作ボタン140、および副表示部である液晶ディスプレイ150を有する。
【0023】
操作機400は、薬液注入装置100による薬液の注入条件、およびCTスキャナ300による透視画像の撮像条件が、操作者による入力操作によって設定され、これらの設定に従って薬液注入装置100の動作およびCTスキャナ300の動作を制御する。また、操作機400は、注入条件設定時の設定情報画面、撮像条件設定時の設定情報画面、薬液注入時の薬液注入装置100の動作情報を表す画面、および透視画像撮像時のCTスキャナ300の動作情報を表す画面、およびCTスキャナ300によって撮像された画像を必要に応じて表示することもできる。
【0024】
図3に、本実施形態のX線CTシステム1000のブロック図を示す。
【0025】
本実施形態のX線CTシステム1000を機能的に見れば、操作機400は、このX線CTシステム1000の全体の動作を制御する制御部、入力部440、表示部450および記憶部430を有する。
【0026】
入力部440は、薬液の注入条件や透視画像の撮像条件を得るためのデータを操作者が入力するのに用いられるデバイスであり、例えばキーボードといったデータ入力用デバイスを用いることができる。表示部450は、前述した、操作機400における表示機能を実現するデバイスである。表示部450としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどを用いることができる。入力部440と表示部450とは別々のユニットで構成することができるが、例えばタッチパネルを用い、入力部440の機能の少なくとも一部と表示部450の少なくとも一部の機能とを1つのユニットで実現することもできる。
【0027】
制御部は、薬液注入装置100の動作を制御する注入装置制御部411と、CTスキャナ300の動作を制御するスキャナ制御部412と、これらも含めてこのX線CTシステム1000全体の動作を統括して制御する統括制御部410とを有する。特に、統括制御部410は、入力部440から入力されたデータに基づいて薬液の注入条件および透視画像の撮像条件を決定し、注入条件および撮像条件を注入装置制御部411およびスキャナ制御部412へそれぞれ送る。また、統括制御部410は、薬液注入装置100およびCTスキャナ300の相互の動作タイミング、例えば、薬液注入装置100による注入動作を開始してから所定の時間が経過した後にCTスキャナ300を動作させるといったことも制御する。
【0028】
注入装置制御部411、スキャナ制御部412および統括制御部410は、それぞれ別のユニットとして構成されていてもよいし、1つのユニットとして構成されていてもよい。
【0029】
記憶部430は、入力部440から入力された種々のデータ、入力されたデータに基づいて決定された注入条件および撮像条件等を記憶する(格納する)。
【0030】
操作機400は、薬液注入装置100との間でデータの送受信を行うためのインターフェイス部(I/F)420、およびCTスキャナ300との間でデータの送受信を行うためのインターフェイス部(I/F)421をさらに有する。薬液注入装置100およびCTスキャナ300も、操作機との間でデータの送受信を行うためのインターフェイス部(I/F)120,320をそれぞれ有している。
【0031】
注入装置制御部411からの指令は、I/F420およびI/F120を介して薬液注入装置100へ送られ、薬液注入装置100のピストン駆動機構130および液晶ディスプレイ150を動作させる。逆に、薬液注入装置100のピストン駆動機構130の動作情報および操作ボタン140からの入力操作情報は、I/F120およびI/F420を介して操作機400へ送られる。
【0032】
CTスキャナ300は、前述した寝台320、X線源330、X線検出器340の他に、これらを駆動させるための駆動機構310を有している。スキャナ制御部412からの指令は、I/F421およびI/F320を介してCTスキャナ300の駆動機構310へ送られ、寝台320やX線源330等の各ユニットを動作させる。逆に、CTスキャナ300の各ユニットの動作情報は、I/F320およびI/F421を介して操作機400へ送られる。
【0033】
次に、上述したX線CTシステム1000の動作の一例を説明する。
【0034】
まず、X線CTシステム1000は、被験者への薬液の注入を行う。薬液の注入に先立って、操作者は、操作機400の入力部から、被験者のID番号、薬液注入装置100による薬液の注入条件を決定するのに必要なデータ、およびCTスキャナ300による画像の撮像条件を決定するのに必要なデータを入力する。
【0035】
この際、統括制御部410は、注入条件設定用の画面と撮像条件設定用の画面とを表示部450に切換え可能に表示させる。画面の切換えは、統括制御部410が自動的に行うようにすることもできるし、操作者の操作によって任意に行えるようにすることもできる。また、画面の切換えは、表示部450には注入条件設定用の画面または撮像条件設定用の画面のいずれが一方の画面のみが表示されるように行ってもよいし、両方の画面が同時に表示されるように行ってもよい。両方の画面を同時に表示させる場合は、注入条件設定用の画面と撮像条件設定用の画面の大小関係を、注入条件を入力するか撮像条件を入力するかに応じて入れ換えるようにして行ってもよいし、いずれか一方の画面を他方の画面上の一部にオーバーラップさせるように行ってもよい。
【0036】
図4に、注入条件設定時に表示部450に表示される画面の一例を示す。図4に示す例では、撮像条件設定用画面452が全体に表示され、その上に、注入条件設定用画面453が撮像条件設定用画面452のサイズよりも小さいサイズでオーバーラップして表示されている。注入条件設定用画面453には、シリンジの容量、被験者の撮像部位、薬液の注入速度と注入時間との関係を表すグラフ、薬液の注入量等が表示されている。
【0037】
注入条件設定用画面453は、例えば「注入装置 設定」と表示されたタブを有している。注入条件の設定後、このタブを操作することで、撮像条件設定用画面452のみを表示させることもできる。撮像条件設定用画面452には、注入条件設定用画面453を表示させるためのタブまたはアイコンを有し、それを操作することで、再び注入条件設定用画面を表示させることができる。画面の切換えは、入力部440に設けられたキーを押下することで行うこともできる。
【0038】
注入条件を決定する際に入力されるデータとしては、例えば、被験者のID、被験者の身体的事項(体重、身長、性別、年齢等)、薬液的事項(薬液の種類、含有成分の濃度等)、撮像部位などが挙げられる。統括制御部410は、入力されたこれらのデータに基づいて、薬液の注入量、注入速度、注入時間および注入圧力等の注入条件を決定する。注入条件は、入力されたデータを予め決められた計算式に当てはめた演算処理を行ったり、例えば記憶部430に格納したデータベースを参照したり、これらを組み合わせたりすることによって決定することができる。
【0039】
撮像条件を決定する際に入力されるデータとしては、例えば、被験者のID、被験者の身体的事項、薬液の種類、撮像部位、スキャンモード、スキャン時間、スキャン速度などが挙げられる。統括制御部410は、入力されたこれらのデータに基づいて、寝台の移動量、X線源の移動量および速度、X線の曝射条件等の撮像条件を決定する。撮像条件の決定も、注入条件の決定と同様、演算処理、データベースの参照、あるいはこれらの組み合わせによって行うことができる。
【0040】
なお、注入条件および撮像条件の決定に際しては、演算により、あるいはデータベースを参照することにより決定される条件のうち少なくとも一部を、操作者が入力部440から直接入力して設定することもできる。
【0041】
注入条件を決定する際に入力されるデータと、撮像条件を決定する際に入力されるデータとは、それらの事項のうち一部が重複している。そこで本実施形態では、入力されたデータは記憶部430に記憶される。そして、注入条件および撮像条件のうち後からデータを入力するほうの条件について、先に入力した項目と重複する項目の入力を省略できるように、それらの項目は先に入力したデータを反映する。表示部460では、先に入力した条件における入力項目と重複している入力項目については既に入力されたデータが表示され、既に入力されている項目であることが操作者に示される。
【0042】
また、被験者のIDとそれに対応する被験者の身体的事項がデータベースとして記憶部430に格納されていれば、注入条件および撮像条件の決定のためのデータ入力を行う際に、被験者のIDを入力することによって、そのIDに対応する被験者の身体的事項を表示部450のデータ入力画面に表示にさせ、身体的事項についての入力操作を省略することもできる。さらには、各被験者についての過去の撮像履歴が記憶部430にデータベースとして格納されていれば、注入条件および撮像条件の決定のためのデータ入力を行う際に、被験者のIDを入力することによって、前回の撮像時に入力した事項をデータ入力画面に表示させることもできる。操作者は、データ入力画面に表示された被験者の身体的事項および前回の撮像時に入力した事項を、必要に応じて変更することもできる。
【0043】
以上のようにして入力部440からデータを入力する一方で、データを入力する操作者または他の操作者は、シリンジ200C,200Pを注入ヘッド110に装着するとともに各シリンジ200C,200Pを連結チューブ230で連結し、連結チューブ230の先端に設けられたカテーテルを被験者の血管内に刺入する。
【0044】
薬液注入装置100の液晶ディスプレイ150には、操作機400で決定された注入条件および入力部440から入力されたデータのうち少なくとも一部が表示される。液晶ディスプレイ150に表示された注入条件およびデータの変更を操作ボタン140から行うこともできる。すなわち、薬液注入装置100側からも注入条件やデータの変更を行うことができる。
【0045】
以上の準備が完了したら、操作者は、操作機400の操作によってX線CTシステム1000の動作を開始させる。X線CTシステム1000の動作の開始のために、操作機400の入力部440にスタートボタンを設け、このスタートボタンを機械的に操作するようにしてもよいし、表示部450にスタート用のアイコンを表示させ、このアイコンをソフトウェア的に操作するようにしてもよい。
【0046】
いずれの場合でも、動作開始の操作が行われると、統括制御部410は、注入装置制御部411に対して薬液注入装置100の動作開始指令を発する。注入装置制御部411は、動作開始指令が発せられると、決定した注入条件に従って薬液注入装置100の動作を制御し、被験者に薬液を注入する。
【0047】
薬液の注入が開始されてから所定時間経過後、統括制御部410は、スキャナ制御部400に対してCTスキャナ300の動作開始指令を発する。CTスキャナ300は、動作開始指令が発せられると、決定した撮像条件に従ってCTスキャナ300の動作を制御し、被験者の透視画像を撮像する。
【0048】
薬液の注入動作中および透視画像の撮像動作中、統括制御部410は、それぞれ薬液注入装置100およびCTスキャナ400の動作状況をアニメーション等で表す画面を表示部450に表示させる。薬液注入装置100およびCTスキャナ300の双方が同時に動作している場合、どちらの動作画面を表示部450に表示させるかは、予め統括制御部410に設定されていてもよいし、操作者が任意に設定あるいは切換えられるようにしてもよい。
【0049】
CTスキャナ400による撮像動作が終了した後、統括制御部410は、撮像動作によって得られたデータに基づいて画像を再構成し、表示部450に被験者の透視画像として表示させる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、薬液注入装置100による薬液の注入条件の設定のためのデータ入力およびCTスキャナ300による画像の撮像条件の設定のためのデータ入力を、共通の操作機400によって行えるように構成されている。
【0051】
そのことによって、データ等の入力操作用の入力部440および情報の出力用の表示部450も薬液注入装置100とCTスキャナ300とで共通にすることができるので、薬液注入装置100およびCTスキャナ300を含めたX線CTシステム1000全体の構成を簡略化することができる。その結果、入力部440および表示部450はそれぞれ1つずつでよいので、省スペース化が図られ、従来よりも狭いスペースに操作機400を設置することができるようになる。
【0052】
また、操作機400を薬液注入装置100とCTスキャナ300とで共通とすることで、薬液の注入条件の設定のためのデータ入力、および画像の撮像条件の設定のためのデータ入力の際に、重複する項目についてはデータの入力を省略させることができる。その結果、入力する項目数を減らすことができる。さらに、例えば、データの修正や変更等があった場合でも、従来のように薬液注入装置100およびCTスキャナ300の双方に対してデータの修正を行う必要はなく、注入条件または撮像条件いずれか一方の条件設定用の入力画面でデータを修正するだけで、修正されたデータは、もう一方の条件の決定にも反映させることができる。したがって、注入条件および撮像条件の設定のためのデータを効率良く入力することができるとともに、データ入力の誤りを少なくすることができる。
【符号の説明】
【0053】
100 薬液注入装置
130 ピストン駆動機構
120,320,420,421 インターフェイス部
300 CTスキャナ
400 操作機
410 統括制御部
411 注入装置制御部
412 スキャナ制御部
430 記憶部
440 入力部
450 表示部
図1
図2
図3
図4