(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235119
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】浸透装置
(51)【国際特許分類】
B01D 61/00 20060101AFI20171113BHJP
B01D 63/10 20060101ALI20171113BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20171113BHJP
B01D 63/12 20060101ALI20171113BHJP
F03G 7/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B01D61/00 500
B01D63/10
B01D63/00 510
B01D63/00 500
B01D63/12
F03G7/00 G
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-508262(P2016-508262)
(86)(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公表番号】特表2016-518248(P2016-518248A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】IB2014060705
(87)【国際公開番号】WO2014170816
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】1307151.9
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507283023
【氏名又は名称】アイ・ディ・イー・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】リーベルマン,ボリス
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0224550(US,A1)
【文献】
特表2012−505749(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/091871(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/154784(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
F03G 7/00− 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央透過型チューブと、膜素子と、を備える浸透素子であって、
前記膜素子は、第1部分と、第2部分と、を有し、
前記第1部分は、前記中央透過型チューブに隣接して配置するための上面エッジを有し、
前記第2部分は、その反対側の端部に配置され、
前記第1部分は、該第1部分を通じて水の流動を許容する多孔性の材料を備え、
前記第2部分は、該第2部分を通じて水の流動を許容する、第1部分から延びる少なくとも2つの隣接する透過型スペーサを備え、
前記少なくとも2つの隣接する透過型スペーサは、前記少なくとも2つの隣接する透過型スペーサの対向した面に装着される半透過膜を有し、
前記第1部分は、前記上面エッジ付近から延びる隔壁を備え、
前記中央透過型チューブは、
外壁と、
各々が中央透過型チューブの長手方向に延びる、少なくとも1つの第1チャネル及び少なくとも1つの第2チャネルを画定する、長手方向に延びる内部セパレータと、
前記外壁を通じて前記少なくとも1つの第1チャネルから延びる、少なくとも1つの第1開口と、
前記外壁を通じて少なくとも1つの第2チャネルから延びる、少なくとも1つの第2開口と、を備え、
前記少なくとも1つの第1開口及び前記少なくとも1つの第2開口は縦方向にオフセットされており、
前記膜素子は、前記第1チャネルと前記膜素子の間、並びに前記第2チャネルと前記膜素子の間を水が通過しうるような中央透過型チューブ周辺で巻付かれ、
前記隔壁は、前記少なくとも1つの第1開口と前記少なくとも1つの第2開口の間にある前記第2部分を通じた水流を防止するように配置される、浸透素子。
【請求項2】
前記隔壁は、粘着ラインを備える、請求項1に記載の浸透素子。
【請求項3】
各透過型スペーサは、その共通端部の周辺に延びる粘着ラインによって、隣接する半透過膜に装着される、請求項1又は2に記載の浸透素子。
【請求項4】
隣接する透過型スペーサに装着される半透過膜の間に配置される供給スペーサを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の浸透素子。
【請求項5】
前記第1部分は、複数の透過型スペーサを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の浸透素子。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1開口及び少なくとも1つの第2開口は、角度方向にオフセットされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の浸透素子。
【請求項7】
前記内部セパレータは、前記少なくとも1つの第1チャネルと少なくとも1つの第2チャネルの間の流動連通がない配置とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の浸透素子。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1チャネル及び少なくとも1つの第2チャネルは、前記中央透過型チューブの長さに沿って略一定の断面を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の浸透素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の複数の浸透素子を備える、浸透装置。
【請求項10】
前記の隣接する浸透素子の中央透過型チューブは、コネクタを通じて流動連通され、該コネクタは、前記少なくとも1つの第1チャネル及び少なくとも1つの第2チャネルと同一の断面を有する、少なくとも1つの第1コネクタチャネル及び少なくとも1つの第2コネクタチャネルを有する、請求項9に記載の浸透装置。
【請求項11】
前記浸透素子は、圧力容器内に配置される、請求項9又は請求項10に記載の浸透装置。
【請求項12】
前記圧力容器に、より高い濃度の溶液を供給する少なくとも1つの第1入口と、前記浸透素子に、より低い濃度の水を供給する少なくとも1つの第2入口と、を備える、請求項11に記載の浸透装置。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の浸透装置を備える、浸透プラント。
【請求項14】
発電所を備える、請求項13に記載の浸透プラント。
【請求項15】
浸透プラントを使用して発電を行う方法であって、
前記浸透プラントは、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複数の浸透素子を備え、
前記浸透素子は、圧力容器内に配置され、
前記圧力容器は、前記圧力容器に接続される少なくとも1つの第1入口及び前記圧力素子に接続される少なくとも1つの第2入口と、前記圧力容器からの出口と、を備え、
前記方法は、前記第1入口に、より高い濃度の溶液を供給することと、
前記第2入口に、より低い濃度の水を供給して前記出口での圧力の上昇を引き起こすことと、
前記出口から発電装置に、一定の割合のより高い濃度の溶液を供給することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜素子、中央チューブ、中央チューブと膜を有する浸透素子、浸透素子を含む浸透装置、特に圧力遅延浸透(PRO)用途のためのプラント(但し、これに限定されない)に関する。
【背景技術】
【0002】
浸透とは、より濃度が低い溶液及びより濃度が高い溶液の間の半透過膜を越えて水が移動する現象として知られる。前方向の浸透において、この水は、より濃度の低い溶液から、より濃度の高い溶液に移動する一方、PRO浸透において、水の流量は減少させることができる。より高い濃度の側に十分な圧力を掛けることによって、水量を反転させることができ、この半透過膜を越えて、より高い濃度の溶液から、より低い濃度の溶液に水を移動させることができる。この技法は、水処理及び淡水化を含む、多くの分野での使用が確認されている。また、圧力遅延浸透は、発電に応用される一方、塩水溶液における圧力は、真水源からの浸透によって増強され、この圧力は、タービンの駆動に使用される。
【0003】
周知の浸透システムにおいて、その各々が、複数の基本多層建設ブロックを反復して構成される、螺旋状に巻付けた浸透素子を使用することが知られている。このような通常のブロックは、供給シートの上から折り畳まれる単一シートの半透過膜を備える。この半透膜シートの面積は、通常、供給シートスペーサの面積の2倍となる。一度、半透過膜が供給シートスペーサの上から折り畳まれると、この供給シートスペーサは、折り畳まれた半透過膜シートの2つの切片を分離する。この供給シートは、半透過膜の表面に沿って自由溶剤が流動するのを許容するように構成される。この半透過膜は、溶液流を防止するように設計されている。その内部に供給スペーサを有する、この折り畳まれた半透過膜を挟んだ状態のものは、離間された透過型スペーサ間に介挿される。この透過型スペーサの面積は、通常、一次元における半透過膜の折り畳まれた切片の面積よりも大きくなるため、一度、折り畳まれた半透過膜及びそれに関連する供給スペーサが、離間された透過型スペーサ間に介挿されると、透過型スペーサから成るタイルは、介挿された透過型スペーサ及び半透過膜の間から延びるのみとなる。この膜を越えて供給される給水は、半透過膜の溶液拒絶スキンと接触した供給スペーサに沿って流動する。そのような複数の基本ブロックは、各透過型スペーサが、専用の横穴を通じて中央チューブ内に、各基本ブロックによって生成された水生成物を排出するような方式で、中央チューブ周辺に螺旋状に巻付けられる。給水は、一般的に、当該チューブに並列して巻付けられた供給スペーサの縦寸法に沿って移動させ、半透過膜を通じた透過型スペーサ内への流動を透過し、中央チューブに向かって螺旋方向に連続する。
【0004】
先行技術における、螺旋状巻付け膜は、加圧された供給塩水が脱水されて真水生成物を生成する、反転浸透において作用するように設計されている。広い膜面積を増やす必要がある他の用途で機能させるためには、このような膜は、米国特許出願第4,003,878号で教示されるように幾分の改変を要する。この文献は、専用の横穴を通じて中央チューブから螺旋状巻付け膜の透過型スペーサに流液を流出させるために当該中央チューブ内に配置される隔壁を教示している。一般的に、この中央チューブの縦軸に垂直な方向において透過型スペーサ内に延びる流動遮断粘着ラインによって、透過型スペーサ内で一方向の曲がりくねった流路が形成される。この更なる粘着ラインは、上記で説明されるような螺旋状巻付け膜の各基本ブロックを2つの区域に分割する。中央チューブ内の流動は全て遮断され、中央チューブから第1の区域内の透過型スペーサのタイル内へ流され、遮断用の粘着ライン周辺の曲りくねったパターンに流入し、当該遮断手段を越えた点まで中央チューブに逆流し、第2の区域の透過型スペーサのタイルを通じて中央チューブまで戻って排出される。米国特許出願第4,003,878号は、更に、直列接続における、このような浸透素子の列を教示している。米国特許出願第4,003,878号によれば、素子の列における、このような如何なる素子においても、遮断手段より前の中央チューブの第1部分の中の全体の流動はシャントされて、螺旋状巻付け膜を通じて流動し、当該遮断手段を越えた中央チューブの第2部分に到達するようにしなければならない。この直列経路は、当該システムの大流量を支持する機能を制限する素子の間での強い圧力低下、及ぶ不等な圧力及び流動分布の要因となる。
【0005】
米国特許出願第8,354,026号は、中央チューブを越えて貫通させた垂直遮断手段を実装することによる、この連結に対する改変を示している。この遮断手段を通過した小型の内チューブシャントは、交互構成で構成され、各々が中央チューブの遮蔽部分を迂回している。その結果、流動路に沿って多くの突発的な直径の収縮及び突発的な直径の拡大が生じる。一度、流動が主要な中央チューブを離れてチューブシャントに流入すると、流路に沿って突発的な直径の低下が生じ、また一度流動がチューブシャントを離れて中央チューブの次の遮断部に流入すると、突発的な直径の拡張が生じる。これは、強い圧力低下と、繰返しになるが、共通の中央チューブラインに沿った浸透素子の間での不均等な流動の要因となりうる。その上、複数のチューブシャントの使用は、却って主要な中央チューブの断面の使用が非効率になる。中央チューブ内に2つの並列チューブを収容するためには、その最大直径は、中央チューブの直径の半分未満にすべきである。その結果、各チューブシャントの断面の組み合わせ面積は、中央チューブの断面積よりもずっと小さくなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、中央チューブと、膜素子と、を備える浸透素子であって、前記膜は、第1部分と、第2部分と、を有し、前記第1部分は、前記中央チューブに隣接して配置するための上面エッジを有し、前記第2部分は、その反対側の端部に配置され、前記第1部分は、該第1部分を通じて水の流動を許容する材料を備え、前記第2部分は、該第2部分を通じて水の流動を許容する第1部分から延びる、少なくとも2つの隣接する透過型スペーサを備え、前記透過型スペーサは、前記2つの隣接する透過型スペーサの対向した面に装着される半透過膜を有し、前記第1部分は、前記上面エッジ付近から延びる隔壁を備え、前記中央チューブは、外壁と、各々が中央透過チューブの縦方向に延びる、少なくとも1つの第1チャネル及び少なくとも1つの第2チャネルを画定する縦方向に延びる内部セパレータと、各々が前記透過型チューブの縦方向に延びる、少なくとも1つの第1開口と、前記外壁を通じて少なくとも1つの第2チャネルから延びる、少なくとも1つの第2開口と、を備える、浸透素子が提供される。
【0007】
前記膜素子は、前記第1チャネル及び前記膜素子の間、並びに前記第2チャネル及び前記膜素子の間を水が通過しうるような中央透過型チューブ周辺で巻付かれてもよく、前記隔壁は、前記少なくとも1つの第1開口及び前記少なくとも1つの第2開口の間にある前記第1部分を通じた水流を防止するように配置される。
【0008】
前記隔壁は、粘着ラインを備えてもよい。
【0009】
各透過型スペーサは、その共通端部の周辺に延びる粘着ラインによって、隣接する半透過膜に装着されてもよい。
【0010】
前記浸透素子は、隣接する透過型スペーサに装着される半透過膜の間に配置される供給スペーサを備えてもよい。
【0011】
前記第1部分は、複数の透過型スペーサを備えてもよい。
【0012】
前記少なくとも1つの第1開口及び少なくとも1つの第2開口は、縦方向及び/又は角度方向にオフセットしてもよい。
【0013】
前記浸透素子は、複数の第1開口及び複数の第2開口のうちの少なくとも1つの開口を備えてもよい。
【0014】
前記縦方向セパレータは、前記少なくとも1つの第1チャネル及び少なくとも1つの第2チャネルの間の流動連通がない配置としてもよい。
【0015】
前記少なくとも1つの第1チャネル及び少なくとも1つの第2チャネルは、前記中央透過型チューブの長さに沿って略一定の断面を有してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による複数の浸透素子を備える、浸透装置が提供される。
【0017】
前記の隣接する浸透素子の中央透過型チューブは、コネクタを通じて流動連通され、該コネクタは、前記少なくとも1つの第1チャネル及び少なくとも1つの第2チャネルと同一の断面を有する、少なくとも1つの第1コネクタチャネルと、少なくとも1つの第2コネクタチャネルと、を有してもよい。
【0018】
前記浸透素子は、圧力容器内に配置されてもよい。
【0019】
前記浸透装置は、前記圧力容器に、より高い濃度の溶液を供給する少なくとも1つの第1入口と、前記浸透素子に、より低い濃度の水を供給する少なくとも1つの第2入口と、を備えてもよい。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様による浸透装置を備える浸透プラントが提供される。
【0021】
前記浸透プラントは、発電所を備えてもよい。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、浸透プラントを使用して発電を行う方法であって、前記浸透プラントは、本発明の第1の態様による複数の浸透素子を備え、前記浸透素子は、圧力容器内に配置され、前記圧力容器は、前記圧力容器に接続される少なくとも1つの第1入口及び前記圧力素子に接続される少なくとも1つの第2入口と、前記圧力容器からの出口と、を備え、前記方法は、前記第1入口に、より高い濃度の溶液を供給することと、前記第2入口に、より低い濃度の水を供給して前記出口での圧力の上昇を引き起こすことと、前記出口から発電装置に、一定の割合のより高い濃度の溶液を供給することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ここで、本発明の実施態様は、以下の添付図面を参照して例示のみによって説明される。
【
図5】
図2の少なくとも1つの浸透素子を含む浸透装置の断面図である。
【
図6】第1構成において接続される1対の浸透素子の概略図である。
【
図7】適切な構成において接続される4つの浸透素子の概略図である。
【
図8】第2構成において接続される1対の浸透素子の概略図である。
【
図10】a〜jは、
図3の圧力素子の縦方向の中央チューブの別の斜視断面図である。
【
図11】
図3の圧力素子の別の縦方向の中央チューブを通じた縦方向の断面図である。
【
図12】
図11の中央チューブを含む浸透素子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、特に図面を詳細に参照すると、上記詳細事項は、例示によるものであって、本発明の好適な実施態様の例示的な記述目的に限定され、本発明の原理及び概念的な態様を最も有効かつ即座に理解するものと思われる事柄を付与するために提示されることが強調される。これに関し、本発明の基本的な理解に必要とされる以上のより詳細に本発明の構造上の細部を示すことを意図したものではなく、本発明の幾つかの形態が如何に実用化されるかについては、当該図面に沿った説明から当業者に明らかとなる。
【0025】
本発明の少なくとも1つの実施態様を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載され、又は図面に図示される構成部材の構造及び構成の詳細に、その用途が限定されるものではないと理解されたい。本発明は、他の実施態様にも適用可能であり、或いは多様な方法で実用化又は実行されるものである。また、本明細書で用いられる言い回し及び文言は、説明目的のものであって、限定と見なされるものではないと理解されたい。
【0026】
ここで
図1を参照すると、PROの発電所の概略図は、参照符号10で示されている。供給部分11,12では、それぞれ真水と海水が導入され、適切なフィルター13,14で濾過される。濾過された海水及び真水は、浸透素子15に供給され、そこで真水の流れからの水が、海水の流れの中に入って膜16を通過し、海水の流れにおける圧力を増加させる。加圧された海水の流れの約3分の1は、タービン17に供給され、3分の2は、接続部18によって示されるように圧力交換器19に戻され、そこで、真水流入後の海水の供給が加圧される。この結果、弱塩水は、参照符号20で示されるように排出される。
【0027】
ここで
図2を参照すると、本発明を用いた浸透素子は、参照符号30で示されている。この浸透素子30は、端部32a、32bの間で縦方向に延びる第1チャネル31aと、第2チャネル31bと、を有する中央チューブ31を備える。この端部32a、32bは、各々、前記チャネル31a、31bの組み合わせ幅よりも大きな直径を有する。これらチャネル31a、31bは、中央セパレータ33によって分離されるため、チャネル31a、31bは、流動連通されない。縦方向にオフセットした位置において、チャネル31a、31bの各々は、少なくとも1つの開口と、この例では、中央チューブ31の外壁35を通じて延びる、それぞれ1セットの開口34a,34bと、を有する。
図3に見られるように、この例では、開口34a、34bは、縦方向にオフセットしているため、これら開口の間には縦方向の重なり部分がない。
図3及び
図4に見られるように、この例では、中央チューブ31、断面では円形となっている。開口34a、34bは、この例では約120度の角度でオフセットしている。本装置は、チューブ31の反対側でインラインであってもよく、隔壁45(下図参照)が開口34a、34bの間での直流を防止するものであれば、縦方向に重なってもよく、縦軸に並行して位置合わせする必要もなく、一般的に適切とされる構成としてもよいことは明らかである。
図2〜
図4に見られるように、チャネル31a、31bは、その長さに沿って同一の断面を有するため断面積に実質的な変化が生じない故、圧力の低下及び流動の不規則性の回避又は最小化を実現する。この例では、チャネル31a、31bは、同一寸法であるが、以下に示すように異なった寸法であってもよい。
【0028】
膜素子40は、開口34a、34bの間に流路を付与するように設けられる。
図2〜
図4において、この膜素子40は、巻線されてない位置で示されている。矢印Cによって図示されるように、浸透素子30を組み立てるには、膜素子40は、中央チューブ31の周辺で巻付けられるか、或いは包装される。膜素子40は、各々が、多孔性の材料など、水が容易に通過又は流動しうる透過型スペーサを備える、複数の層41aを備える。膜素子40は、中央チューブ31に隣接して配置するための上面エッジと共に、第1基端部41を備えるため、第1基端部41は、膜素子が中央チューブ31周辺に巻付けられる場合には中央チューブ31に隣接して配置される。この第1基端部41は、少なくとも中央透過型チューブ31の周辺で完全に延びるのに十分な長さを有する(即ち、第1基端部は、Rを中央透過型チューブ31の直径とする2πRの長さを有する)。第1基端部41における複数の層41aは、共に結合される。上面エッジに対し第1基端部41の反対側のエッジに配置される、第2端部42では、透過型スペーサ41aは分離され、折り畳まれた半透過膜43は、膜43の折り目43aが第1基端部41に向かって配置されるような様態で、隣接する透過型スペーサ41aの間に配置され、各半透過膜は、1対の切片43b、43cを形成する。膜43の各切片43b、43cは、
図3に見られるように、周辺粘着ライン44を備える隔壁によって、隣接する透過型スペーサ層41aに接合される。この粘着ライン44は、第1端部42において膜43及び透過型スペーサ41aの共通エッジの周辺、並びに第1基端部41における透過型スペーサのエッジの周辺で、不透過型又は少なくとも耐水性の隔壁を付与する。膜43に隣接する自由水流を許容するため、隣接切片43b、43cの間には供給スペーサ49が配置され、各切片43b、43cの分離状態を維持している。この供給スペーサ49は、例えば、プラスチック製のグリッドを備えてもよい。
【0029】
第1基端部41で開口34a〜34bから直接水が流動するのを防止するため、中央粘着ライン45を備えた隔壁は、エッジ46の外側では、遠方に向かう方向で中央チューブ31に隣接して配置される上面エッジの付近から、膜素子40の略中央に延び、第1基端部41の第1区域41b及び41cを画定している。非粘着の隙間47は、末端エッジ46及び粘着ライン45の間に残される。粘着ライン45は、膜素子40が中央チューブ30周辺に巻付けられる場合、粘着ライン45が開口34a、34bの間に隔壁を形成するような配置となる。チャネル31a、31bの間の水流は、膜素子40を通じ、かつ粘着ライン45の端部の周辺で、矢印48によって示されるようにループ経路に従って流動させる。開口34a、34bの寸法、面積、及び位置は、中央チューブ31及び膜素子40の間の所望の流量によって選択されてもよい。上記の膜素子は、第1基端部41を形成するように結合されている複数の透過型スペーサ層41aを有するが、この第1基端部41は、単一で形成されるか、第2端部42とは分離して形成されるかのいずれであることは明らかである。
【0030】
従って、中央チューブ31の第1チャネル31aを通じて塩分濃度の低い水が供給される場合、その水の一部は、開口34aを通過し、膜素子40の第1区域41bに流入する。粘着ライン45は、この水を膜素子40の第2端部42の内部に通過させ、分離された各層41aに沿って流動させる。第2端部42において、上記の水の一部は、半透過膜43を通過し、供給スペーサ49に沿って塩分濃度の高い水流となる。この水の残りは、開口34bを通じ、また第2チャネル31bに入り、膜素子40の第2区域41cに流入する。
【0031】
図5は、浸透素子30を備える浸透圧力容器を示す(実際には、以下に記載されるように、上記圧力容器は、少なくとも2つの浸透素子30を含んでもよい)。
図5に見られるように、浸透素子30は、エンドキャップ52によって閉塞される外容器51を有する圧力容器50の内部に取り付けられる。膜素子40は、中央チューブ31の周辺で巻付かれ、円筒筐体(図示せず)の内部に含有される。第1入口53は、圧力容器50の内部に加圧下で塩分濃度の高い水を供給するが、この水は、供給スペーサ49を通じて当該圧力容器の縦方向に流動し、出口30を通じて残った状態になる。図示されるコネクタ55は、膜素子30の端部32a、32bにおいて受け入れられ、同様に、中央セパレータ55cによって分離される第1及び第2チャネル55a、55bを備えるため、チャネル31aは、チャネル55aと流体連通し、チャネル31bは、チャネル55bと流体連通する。浸透素子30への塩分濃度の低い水の供給を実現するため、参照符号60で示されるように、各々が、チャネル55aと流体連通する第2入口部61と、チャネル55bと流体連通する出口部62と、を有する、エンドコネクタが設けられる。圧力容器50は、複数の浸透素子を含む一方、端部32a、32bは、異なった浸透素子に属している。
【0032】
従って、動作中、真水又は塩分濃度の低い水は、エンドコネクタ60の入口部61に供給され、浸透素子30のチャネル31aに流入する。この真水は、開口34aを通じ、かつ各層41aを通じて一般的に螺旋状の方向に流動する。海水、即ち塩分濃度の高い溶液は、入口53では加圧下で圧力容器内に導入され、各スペーサ49によって画定される空間に沿って圧力容器の長さ方向に流動する。真水は、膜素子4から半透過膜43を通じて海水の中に分散するため、出口供給部54での圧力を増強する。
【0033】
本発明の利点は、
図6〜
図9に図示されるように、所要の動作に応じて、複数の浸透素子30が、交互構成で接続されうることである。
図6及び
図7は、コネクタ70経由で接続される2つの浸透素子30を示す。コネクタ70は、当該コネクタが端部32a、32bにおいて密結合し、好ましくは密閉結合を付与するような外的寸法を有する。コネクタ70は、中心隔壁72によって分離される第1及び第2チャネル71a、72bを有し、チャネル31a、31b及び中央セパレータ33と同一寸法を有する。このため、コネクタ70は、何らの収縮又は流動干渉を起こすことなく、隣接する浸透素子30の間の接続を途切れなく行える。相互結合素子(図示せず)は、チャネル71a、71bがチャネル31a、31bと正確に位置合わせされるのを確実にすべく浸透素子30及びコネクタ70上に付与されうる。勿論、好適には、コネクタ70は、中央透過型チューブ31の外表面を係合させるような寸法としてもよい。
【0034】
図6において、浸透素子30は、効果的に並列接続される。各素子において、チャネル31aから開口34aを通じて水か流動し、膜素子40を通じて流動し、開口31bを通じてチャネル31bに戻される。本発明の並列接続の利点は、第1浸透素子の開口34aを通過せず、次の浸透素子まで降下した水の圧力低下及び摩擦を最小限にして円滑な流動を実現することである。この下流の一部は、次の浸透素子の開口34aの次のセットを通じて、そのそれぞれの膜素子40の内部に案内され、この下流の流動の一部は、更に、次のインライン浸透素子に円滑に流動し続けることが可能となる。この例において、水は、チャネル31a及び32bに沿って反対方向に流動しているが、この流動は、適宜配向されてもよい。
【0035】
図7は、
図6と同様であるが、並列構成で接続される4つの浸透素子を示し、かつ、水が、チャネル31a、31bに沿って同一方向に流動する場合を示している。同図に示される例示的な値において、毎秒4リットルが、チャネル32aに供給される。各浸透素子30の膜素子40の内部には、1リットルが流動し、そのうちの毎秒0.8リットルは、半透過膜43を通過し、毎秒0.2リットルは、開口34bを通じてチャネル31bに戻される。この例において、並列構成の優位性は明らかである。水の圧力及び流動は、各浸透素子に跨って同一の圧力容器内で均等に分割され、かつ中央透過型チューブ31及びコネクタ70を通じて共通の接続を共有するため、各浸透素子を通じて、同一量の水が流出する。
【0036】
図8において、隣接する浸透素子30は、交互ミラー像構成で接続されている。
【0037】
図9a及び
図9bは、浸透装置のための2つの異なった流動構成を示す。
図9aは、両端から、接続された浸透素子30を供給する2つの真水又は塩分濃度の低い水の入口90と、1つの海水又は塩分濃度の高い水の入口92及び出口93を有し、列の各端部にある浸透素子を同様に排出する2つの出口91と、を有する、
図5の圧力容器の構成を効果的に示している。
図9bは、海水入口92が浸透装置の中央位置に配置され、2つの出口93が当該装置の反対側に設けられる、交互構成を示す。この構成は、海水が4つの浸透素子を通過した後に所望のレベルの透過が発生する場合に望ましいといえるが、圧力容器が8つの浸透素子を保持している場合も同様である。この場合、海水は、同図に示されるように中央に供給されて左右に流動し、出口に到達する前に、所望の数の浸透素子との相互作用を行う。
【0038】
中央透過型チューブ31は、所望の限り、縦方向のセパレータの何らかの適切な断面及び何らかの適切な構成を有してもよく、交互変形例は、
図10a〜
図10iに示される。
図10a〜
図10dは、正方形チャネル、矩形チャネル、横並びの円形チャネルを示し、比較のため、
図2からの円形チューブを有する楕円形のチューブの断面が、参照符号10eで示されている。上記中央チューブは、
図10f及び
図10gに示されるように、2つ以上のチャネル、例えば、3つまたは4つのチャネルを有してもよい。2つより多いチャネルを内蔵した複数の実施態様において、塩分濃度の低い水を有する膜素子40を供給する、チャネル32aとして、或いは、膜素子40を排出する、チャネル31bとして、単一のチャネルが動作してもよい。各膜素子40は、圧力及び流動分布を最適化し、かつ浸透効果を最大化するために、特殊チャネルと共に、単一浸透素子における複数の膜素子40から、何らかの単一膜素子40を関連付ける方式で、該膜素子それぞれの部分41を通じて中央チューブ31に装着されてもよい。これらチャネルは、
図10h〜
図10jに図示されるように、各チャネルにおける所望又は想定の水流に応じて、異なった断面積を有してもよい。中央透過型チューブ31の断面が如何なるものであっても、隣接する透過型チューブ31を接続するコネクタ70は、浸透装置の長さに沿って一貫した断面を維持するため、透過型チューブと同一の内断面を有さねばならない。
【0039】
上記各チャネルは、直線的である必要はない。
図11は、中央セパレータ33‘が、チャネル31‘a、31’bが1対の相互篏合する螺旋状チャネルを備えるような螺旋状となっている交互中央チューブ30‘を示す。
図12に示されるように、中央チューブ31’は、迷路を生成する複数の交流の粘着ライン45‘a、45’bを有する膜素子40‘と併用されてもよい。粘着ライン45’a,45’bの空間は、中央隔壁33’の螺旋状の高さの一部又は倍数として選択される。この例において、複数の粘着ライン45’a、45’b、45’c、45’d等によって支配される迷路状の流路は、波パターンを有する膜素子40における流動パターンを生成してもよい。この波パターンの流動は、中央チューブ30‘に対し遠位となるUターン状の「最小値」及び中央チューブ30’に近接するUターン状の「最大値」によって特徴づけられる。複数の開口配列は、2つのチャネル31‘a及び31’bの流動連通、並びに近接側の「最大値」の領域周辺の膜素子における波パターンの流動を生成し、当該膜素子からそれぞれ1つのチャネルへの更なる給水又排水を行い、浸透処理の全体的な効果を更に高めて最適化している。
【0040】
中央チューブ31又は膜43に近接する膜素子40における水流の増水又は円滑化を実現するため、各透過型スペーサは、可変の厚さを有してもよい。例示的なスペーサは、
図13において参照符号80で示されている。このスペーサ80は、一般的に、楔形状の構成を有し、面部分81から先端部82まで先細り形状となっている。隔壁45に相当する、隔壁83は、先端部82から面部81に向かってスペーサの範囲内に延びる。膜素子40と同様の膜素子は、複数の透過型スペーサ80から形成されてもよい。上記透過型スペーサの範囲内ではできるだけ多くの量を有するのが望ましいが、膜素子が所定の場所で巻付けられる場合、中央の透過型チューブ31に近接して利用可能な、相対的に制限された空間により、当該透過型スペーサの実際の厚さは制限される。
図13に示される可変厚の透過型スペーサを設けることにより、その厚さは、周辺に向かうにつれ最大化されうる。
【0041】
浸透素子30を内蔵したプラントは、浸透が発生する所望の表面積を付与する、このような素子を多数備えてもよい。例えば、各膜素子は、172平方メートルの面積を有してもよく、また圧力容器の組又は「列」は、各々が8つの浸透素子を含有する50個の圧力容器を有することもありうる。故に、各列は、約68,880平方メートルの膜面積を有し、またプラントは、このような配列を複数使用してもよい。
【0042】
従って、本明細書で説明される浸透素子及び装置は、電力供給のために、
図1に示されるようなプラントで使用されてもよい。従って、
図1の浸透素子15は、上記で説明されるように複数の浸透容器の配列を備えてもよい。この浸透素子の中央透過型チューブ31に塩分濃度の低い水又は真水を供給し、また圧力容器50に塩分濃度の高い水又は海水を供給することにより、当該圧力容器の出口で適切な圧力上昇が発生するため、当該出口からの高濃度溶液が、タービン17などの発電装置に供給されうる。
【0043】
本発明は、発電用のPROプラントでの使用を参照して説明されているが、ここで説明されるような浸透素子及び膜素子は、淡水化、水処理、産業用の脱水及び濃度処理を含めて、適切である限り如何なる目的にも使用されてもよい。
【0044】
上記の説明において、一実施態様は、本発明の一例又は実施態様である。「1つの実施態様」「一実施態様」又は「幾つかの実施態様」なる各種表記は、必ずしもその全てが同一の実施態様を指すものとは限らない。
【0045】
本発明の多様な特徴は、単一の実施態様の文脈で説明されてもよいが、これら特徴は、別々或いは何らかの適切な組み合わせで付与されてもよい。逆に、本発明は、明瞭性のため、ここでは別々の実施態様の文脈で説明されてもよいが、単一の実施態様で実施されてもよい。
【0046】
更にまた、本発明は、多様な方法で実行又は実用化されうること、並びに本発明は、上記説明で概説されたもの以外の実施態様でも実施可能であると理解されたい。
【0047】
本明細書において使用される科学技術用語の意味は、特に指定のない限り、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるものとする。