(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
60℃〜95℃の温度及び0.15MPa〜3.0MPaの圧力で反応器内で単量体を重合してポリエチレンを形成する段階を含むスラリー重合方法であって、前記重合が反応器スラリー内で触媒、単量体、希釈剤及び選択的に水素の存在下で起こり、前記反応器は、下記を含むスラリー重合方法:
−内部反応器壁表面を含み、下部接線から上部接線に延びている円筒状の反応器壁;
−下部接線で円筒状の反応器壁に連結された下部反応器ヘッド;
−上部接線で円筒状の反応器壁に連結された上部反応器ヘッド、円筒状の反応器壁、下部反応器ヘッド及び上部反応器ヘッドは、内部反応器体積を形成する;
−内部反応器体積の内容物を混合するための攪拌器;
−冷却器に反応器スラリーを供給するための反応器排出口、反応器スラリーは、希釈剤、触媒、重合体、未反応単量体及び選択的に溶解された水素を含み、
−少なくとも一つのバッフルを含む反応器バッフルシステム、少なくとも一つのバッフルは、バッフル上部及びバッフル下部を含み、ここで少なくとも一つのバッフルは、反応器内壁面に連結され、反応器内壁面に沿って縦方向に延びており、内部反応器体積内に放射状に延びている、
−第1反応器スラリーストリームとして冷却器から冷却されたスラリーを回収するための第1反応器注入口;及び
−第1供給ライン注入口端部を有する冷却されたスラリー供給ライン、これは、第1反応器注入口、及び第1供給ライン排出端部に連結される、
ここで、内部反応器体積内の反応器スラリーの上面は、反応器液面を定義し、バッフル上部及び第1供給ライン排出端部は、反応器液面の下に位置する。
前記反応器は、スラリー重合反応器の多重反応器カスケードにおいて、後続重合反応器であり、第2反応器スラリーストリームは、重合反応器のカスケードの以前反応器から転送された反応器スラリーの供給ストリームである、請求項3に記載の方法。
前記重合は、重合反応器のカスケードで行う重合であり、カスケードの第1重合反応器内で行われるスラリー重合方法は、請求項1または2の方法であり、カスケードの任意の後続重合反応器内で行われるスラリー重合方法は、請求項3または4の方法である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン含有製品の使用が知られている。ポリエチレンは、一般的に、これらの密度によって分類され、これは最終用途適用に対するガイドとして使用される。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)は、低い分岐度を有し、これは高い引張強度を有する緻密構造につながる。これは、パイプ及びドラムのような製品に使用されて来た。中密度ポリエチレン(MDPE)は、高度の耐化学性だけでなく、耐落下衝撃性を有する。これは、収縮フィルムのような製品に使用されて来た。低密度ポリエチレン(LDPE)は、分岐上に分岐を有するランダムな長鎖分岐を有する。これは、高温及び衝突に対する優れた抵抗性を提供することができ、ラップフィルム及びスクイーズボトルのような用途に使用されて来た。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、本質的に直鎖状構造を有するだけでなく、この短鎖分岐によって低密度を有する。これは、ストレッチフィルム及びケーブル用コーティングのような用途に使用されて来た。
【0003】
気相工程、溶液工程及びスラリー工程を含んで、様々な工程などがポリエチレンを製造するために使用され得る。エチレンスラリー重合方法において、ヘキサンまたはイソブタンのような希釈剤がエチレン単量体、共単量体及び水素を溶解するために使用されることができ、単量体(など)が触媒によって重合される。重合以後、形成された重合体生成物が液体媒質中に懸濁されたスラリーとして存在する。
【0004】
例えば、WO2012/028591A1、US6,204,345B1、及びWO2005/077992A1に開示された典型的な多重反応器カスケード(cascade)工程において、単量体(など)、水素、触媒及び希釈剤が3つの反応器のうち、第1反応器内に供給され、ここで希釈剤及び未反応単量体内に含有された重合体粒子からスラリーが形成される。反応器などは、並列または直列に作動することができ、単量体の種類/量及び条件がそれぞれの反応器で変化され、単峰性(分子量分布)または多峰性ポリエチレン物質を含んで、様々なポリエチレン物質を生成することができる。このような多峰性組成物は、様々な用途に使用され、例えば、WO2012/069400A1は、ブロー成形用三峰性ポリエチレン組成物を開示する。
【0005】
スラリー重合システムの連続撹拌タンク反応器で時々ぶつかる難題は、スラリーポンプへの注入口の閉塞である。これは、反応器バッフル、バッフルのための機械的支持体、または反応器の内壁上に蓄積される重合性物質が急に除去され、スラリーポンプの注入口へ反応器スラリーと共に流れる場合が発生することができる。除去された物質は、重合体塊(lump)がポンプ注入口に到逹するときにポンプ吸引を迅速に閉鎖する重合体塊である。重合体塊は、外部スラリー冷却器から回収されたスラリーが反応器内の液面上の蒸気空間内に排出されるときに発生するファウリングから時間に応じて積もることができる。排出時、スラリー中の液体は、固体から分離、すなわち、瞬間蒸発(flash)し、バッフル、ピース(piece)を横切るバッフル支持体及び反応器内部の壁表面に付着され得る重合体の粘着性の塊を後に残す。また、反応器内容物の液面上に回収されたスラリーが滴下するとき、反応器飛散(splashing)が発生することができ、露出した金属表面上に固体を蒸着させる。繰り返された蒸着は、重合性物質が金属表面に付着した重合体の塊に徐々に成長するようにすることができる。これらの大きな重合体塊は、付着力の喪失を引き起こす、反応器液面のサイクリングまたは反応器内部の金属表面上の重合体の乾燥によって結局、落ちることができる。しかし、いずれの場合でも、重合体塊は、結局、スラリーポンプに流れ、ポンプインペラを塞いでスラリー冷却器を通すスラリーの流れを急激に減少させる。ポンプが分離され、洗浄されなければならないので、スラリーポンプの閉塞は、結局、運転中止をもたらすことができる。
【0006】
バッフルが備えられた重合反応器は、オレフイン重合反応システムに使用されて来た。例えば、WO2009/142730A1及びUS8,410,230B2は、反応器領域を分離する内部バッフルを使用して広範囲になった分子量を有する重合体を製造するオレフイン重合方法に関する。US7,214,750B2は、容器の周辺にバッフルとして管状熱交換器バンドルを使用する反応器内で重合体を製造する方法を開示し、US7,993,593B2は、ガス注入オリフィスを含む管状のバッフルを有するオレフイン重合反応器を開示する。それにもかかわらず、ポンプ閉塞を減少させることにより、改善されたスラリーポンプ性能を有するエチレンスラリー重合方法に対する求めが持続している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
改善されたスラリーポンプ性能を有するエチレンスラリー重合方法が本発明で開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、有利なスラリー重合方法は、60℃〜95℃の温度及び0.15MPa〜3.0MPaの圧力で反応器内で単量体を重合してポリエチレンを形成する段階を含み、前記重合は、反応器スラリー内で触媒、単量体、希釈剤及び選択的に水素の存在下で起こり、前記反応器は、下記を含む:
−内部反応器壁表面を含み、下部接線(tangent)から上部接線に延びている円筒状の反応器壁;
−下部接線で円筒状の反応器壁に連結された下部反応器ヘッド;
−上部接線で円筒状の反応器壁に連結された上部反応器ヘッド、円筒状の反応器壁、下部反応器ヘッド及び上部反応器ヘッドは、内部反応器体積を形成する;
−内部反応器体積の内容物を混合するための攪拌器;
−冷却器に反応器スラリーを供給するための反応器排出口、反応器スラリーは、希釈剤、触媒、重合体、未反応単量体及び選択的に溶解された水素を含み、
−少なくとも一つのバッフルを含む反応器バッフルシステム、少なくとも一つのバッフルは、バッフル上部及びバッフル下部を含み、ここで少なくとも一つのバッフルは、反応器内壁面に連結され、反応器内壁面に沿って縦方向に延びており、内部反応器体積内に放射状に延びている、
−第1反応器スラリーストリームとして冷却器から冷却されたスラリーを回収するための第1反応器注入口;及び
−第1供給ライン注入口端部を有する冷却されたスラリー供給ライン、これは、第1反応器注入口、及び第1供給ライン排出端部に連結される、
ここで、内部反応器体積内の反応器スラリーの上面は、反応器液面を定義し、バッフル上部及び第1供給ライン排出端部は、反応器液面下に位置する。
【0009】
本発明の他の実施形態によれば、有利なスラリー重合方法は、60℃〜95℃の温度及び0.15MPa〜3.0MPaの圧力で反応器内で単量体を重合してポリエチレンを形成する段階を含み、前記重合は、反応器スラリー内で触媒、単量体、希釈剤及び選択的に水素の存在下に起こり、前記反応器は、下記を含む:
−内部反応器壁表面を含み、下部接線から上部接線に延びている円筒状の反応器壁;
−下部接線で円筒状の反応器壁に連結された下部反応器ヘッド;
−上部接線で円筒状の反応器壁に連結された上部反応器ヘッド、円筒状の反応器壁、下部反応器ヘッド及び上部反応器ヘッドは、内部反応器体積を形成する;
−内部反応器体積の内容物を混合するための攪拌器;
−冷却器に反応器スラリーを供給するための反応器排出口、反応器スラリーは、希釈剤、触媒、重合体、未反応単量体及び選択的に溶解された水素を含み、
−少なくとも一つのバッフルを含む反応器バッフルシステム、少なくとも一つのバッフルは、バッフル上部及びバッフル下部を含み、ここで少なくとも一つのバッフルは、反応器内壁面に連結され、反応器内壁面に沿って縦方向に延びており、内部反応器体積内に放射状に延びている、
−第1反応器スラリーストリームとして冷却器から冷却されたスラリーを回収するための第1反応器注入口;
−第1供給ライン注入口端部を有する冷却されたスラリー供給ライン、これは、第1反応器注入口、及び第1供給ライン排出端部に連結される;
−第2反応器スラリーストリームを収容するための第2反応器注入口;及び
−第2供給ライン注入口端部を有する第2反応器スラリーストリーム供給ライン、これは、第2反応器注入口、及び第2供給ライン排出端部に連結される、
ここで、内部反応器体積内の反応器スラリーの上面は、反応器液面を定義し、バッフル上部、第1供給ライン排出端部、及び第2供給ライン排出端部は、反応器液面下に位置する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ポリエチレンスラリー製造方法
スラリーポンプ閉塞が減少されたポリエチレンを製造するための本発明の方法は、触媒、ヘキサンまたはイソブタンのような希釈剤、及び選択的に水素の存在下の単量体のスラリー重合を含む。 重合は、希釈剤、未反応単量体及び触媒中の重合体粒子から形成された懸濁されたスラリーの中で進行する。本発明に記載された工程によって得られるポリエチレン重合体は、エチレン単独重合体または40重量%までのC
3−C
10−1−アルケンを含むエチレンの共重合体であり得る。従って、単量体は、主単量体としてエチレン及び共単量体としてC
3−C
10−1−アルケンである。好ましくは、共単量体は、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはこれらの混合物から選択される。スラリー重合工程は、60℃〜95℃、好ましくは65℃〜90℃、より好ましくは70℃〜85℃の温度、及び0.15MPa〜3MPa、好ましくは0.2〜2MPa、より好ましくは0.25〜1.5MPaの圧力で行う。
【0012】
好ましくは、重合工程によって製造されたポリエチレン重合体は、好ましくは、0.935g/cm
3〜0.970g/cm
3の範囲の密度を有する高密度ポリエチレン樹脂である。より好ましくは、密度は、0.940g/cm
3〜0.970g/cm
3の範囲である。最も番好ましくは、密度は、0.945g/cm
3〜0.965g/cm
3の範囲である。密度は、定義された熱履歴で製造された2mm厚さの圧縮成形プラークを使用するDIN EN ISO 1183−1:2004、方法A(浸漬)によって測定する:180℃、20MPaで8分間圧搾した後、30分間沸騰水の中で結晶化。
【0013】
好ましくは、前記重合工程によって製造されたポリエチレン重合体は、1dg/min〜300dg/min、より好ましくは、1.5dg/min〜50dg/min、最も好ましくは、2dg/min〜35dg/minの溶融指数(MI
21.6)を有する。MI
21.6は、21.6kgの荷重下で190℃の温度で、DIN EN ISO 1133:2005、条件Gに応じて測定する。
【0014】
好ましくは、前記重合工程によって製造されたポリエチレン重合体は、エチレン単独重合体、またはC
3〜C
10α−オレフインの繰り返し単位を10重量%まで含むエチレン共重合体である。好ましくは、C
3〜C
10α−オレフインは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン及びこれらの混合物から選択される。
【0015】
触媒
重合は、すべての通常のエチレン重合触媒を使用して行うことができ、例えば、重合は、酸化クロムに基づくフィリップス触媒を使用して、チタンに基づくチーグラー型触媒、すなわち、チーグラー触媒またはチーグラー−ナッタ触媒を使用して、またはシングルサイト触媒を使用して行うことができる。本発明の目的のために、シングルサイト触媒は、化学的に均一な遷移金属配位化合物に基づいた触媒である。特に好適なシングルサイト触媒は、嵩張るシグマ−またはパイ−結合された有機配位子を含むこと、例えば、一般的にメタロセン触媒として設計されたモノ−Cp錯物に基づいた触媒、ビス−Cp錯物に基づいた触媒;または後期遷移金属錯物、特に鉄−ビスイミン錯物に基づいた触媒である。また、オレフインの重合のためのこれらの触媒の2つ以上の混合物を使用することも可能である。このような混合された触媒は、ハイブリッド触媒として設計される。オレフイン重合のためのこれらの触媒の製造及び使用は、一般的に知られている。
【0016】
好ましい触媒は、好ましくは、チタンまたはバナジウムの化合物、マグネシウムの化合物及び選択的に支持体として粒状無機酸化物を含むチーグラー型である。
【0017】
チタン化合物として、一般的に、3価または4価チタンのハライドまたはアルコキシドを使用し、チタンアルコキシハロゲン化合物または様々なチタン化合物の混合物も使用可能である。好適なチタン化合物の例としては、TiBr
3、TiBr
4、TiCl
3、TiCl
4、Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(O−i−C
3H
7)Cl
3、Ti(O−n−C
4H
9)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(O−n−C
4H
9)Br
3、Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Cl
2、Ti(O−n−C
4H
9)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Br
2、Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Cl、Ti(O−n−C
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Br、Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4またはTi(O−n−C
4H
9)
4である。ハロゲンとして塩素を含むチタン化合物を使用するのが好ましい。同様に、チタンの以外に単にハロゲンのみを含むチタンハライドが好ましく、そのうち、塩化チタンがより好ましく、特に四塩化チタンが好ましい。バナジウム化合物の中には、バナジウムハライド、バナジウムオキシハライド、バナジウムアルコキシド及びバナジウムアセチルアセトネートが好ましい。酸化状態3〜5のバナジウム化合物が好ましい。
【0018】
固体成分の製造において、好ましくは、少なくとも一つのマグネシウム化合物が追加的に使用される。このようなタイプの好適な化合物は、ハロゲン含有マグネシウム化合物、例えば、マグネシウムハライド、特に、クロライドまたはブロマイド及びマグネシウムの化合物であり、マグネシウムハライドは、通常の方式、例えば、ハロゲン化剤との反応によって取得され得る。好ましくは、ハロゲンは、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素または2つ以上のハロゲンの混合物である。より好ましくは、ハロゲンは、塩素または臭素である。最も好ましくは、ハロゲンは、塩素である。
【0019】
可能なハロゲン含有マグネシウム化合物は、マグネシウムクロライドまたはマグネシウムブロマイドである。ハライドが取得され得るマグネシウム化合物は、例えば、マグネシウムアルキル、マグネシウムアリール、マグネシウムアルコキシ化合物またはマグネシウムアリールオキシ化合物またはグリニヤール化合物である。好適なハロゲン化剤は、例えば、ハロゲン、ハロゲン化水素、SiCl
4またはCCl
4である。好ましくは、ハロゲン化剤は、塩素または塩化水素である。
【0020】
マグネシウムの好適なハロゲン−無含有化合物の例としては、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−sec−ブチルマグネシウム、ジ−tert−ブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、n−ブチルエチルマグネシウム、n−ブチル−sec−ブチルマグネシウム、n−ブチルオクチルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジ−n−プロピルオキシマグネシウム、ジイソプロピルオキシマグネシウム、ジ−n−ブチルオキシマグネシウム、ジ−sec−ブチルオキシマグネシウム、ジ−tert−ブチルオキシマグネシウム、ジアミルオキシマグネシウム、n−ブチル−オキシエトキシマグネシウム、n−ブチルオキシ−sec−ブチルオキシマグネシウム、n−ブチルオキシオクチルオキシマグネシウム及びジフェノキシマグネシウムである。好ましくは、マグネシウムのハロゲン−無含有化合物は、n−ブチルエチルマグネシウムまたはn−ブチルオクチルマグネシウムである。
【0021】
グリニヤール化合物の例としては、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムヨージド、n−プロピルマグネシウムクロライド、n−プロピルマグネシウムブロマイド、n−ブチルマグネシウムクロライド、n−ブチルマグネシウムブロマイド、sec−ブチルマグネシウムクロライド、sec−ブチルマグネシウムブロマイド、tert−ブチルマグネシウムクロライド、tert−ブチルマグネシウムブロマイド、ヘキシルマグネシウムクロライド、オクチルマグネシウムクロライド、アミルマグネシウムクロライド、イソアミルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムクロライド及びフェニルマグネシウムブロマイドである。
【0022】
粒状固体を製造するためのマグネシウム化合物としては、マグネシウムジクロライドまたはマグネシウムジブロマイドを除いて、ジ(C
1−C
10−アルキル)マグネシウム化合物を使用するのが好ましい。好ましくは、チーグラー型触媒は、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びクロムから選択される遷移金属を含む。
【0023】
チーグラー型の触媒は、一般的に、共触媒の存在下で重合する。好ましい共触媒は、元素の周期表の1、2、12、13または14族金属の有機金属化合物、特に13族金属の有機金属化合物、具体的に、有機アルミニウム化合物である。好ましい共触媒は、有機金属アルキル、有機金属アルコキシド、または有機金属ハライドである。
【0024】
好ましい有機金属化合物は、リチウムアルキル、マグネシウムまたは亜鉛アルキル、マグネシウムアルキルハライド、アルミニウムアルキル、シリコンアルキル、シリコンアルコキシド及びシリコンアルキルハライドである。より好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキル及びマグネシウムアルキルを含む。さらに好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキルを含む。最も好ましくは、有機金属化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物を含む。好ましくは、トリアルキルアルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、またはトリ−n−ヘキシルアルミニウムから選択される。
【0025】
以下では、
図1を参照して単量体を反応器301内で重合してポリエチレンを形成する本発明の実施形態を説明する。重合は、懸濁された形態である反応器スラリー内で触媒、希釈剤、エチレン及び選択的に水素及び共単量体の存在下で起こる。
【0026】
図1に示されたように、反応器301は、下部接線103から上部接線104に延びている反応器内壁面102を有する円筒状の反応器壁101と、下部接線103で円筒状の反応器壁101に連結された下部反応器ヘッド105と、上部接線104で円筒状の反応器壁101に連結された上部反応器ヘッド106と、を含み、円筒状の反応器壁101、下部反応器ヘッド105及び上部反応器ヘッド106は、内部反応器体積107を形成し、内部反応器体積107の内容物を混合するための攪拌器108を含む。攪拌器108は、モーター(M)、内部反応器体積107内の中央に実質的に垂直に装着された回転シャフト120、及び少なくとも一つのインペラ121を含む。
【0027】
反応器301は、またポンプ126を使用して冷却器110に反応器スラリーを供給するための反応器排出口109を含む。反応器スラリーは、希釈剤、触媒、重合体、未反応単量体及び選択的に溶解された水素を含む。内部反応器体積107内の反応器スラリーの上面は、反応器の液面111を定義する。
【0028】
反応器301は、少なくとも一つのバッフル112を含む反応器バッフルシステムを含み、少なくとも一つのバッフル112は、バッフル上部113及びバッフル下部114を含み、ここで、少なくとも一つのバッフル112は、反応器内壁面102に連結され、反応器内壁面102に沿って縦方向に延びており、内部反応器体積107内に放射状に延びている。バッフル上部113は、反応器液面111の下にある。反応器液面111の下のバッフル上部の位置は、バッフル上への固体の蒸着を防止する。
【0029】
反応器301は、また、冷却器110から冷却されたスラリーを収容するための反応器注入口115を含む。反応器注入口115は、上部反応器ヘッド106または円筒状の反応器壁101上に位置し、供給ライン注入口端部117及び供給ライン排出端部118を有する冷却されたスラリー供給ライン116に連結される。供給ライン排出端部118は、反応器液面下の内部反応器体積107内に位置する。
【0030】
下部105及び上部106反応器ヘッドの両方が楕円状、皿状または半球状のヘッドから選択され得る。反応器301は、また、選択的に反応器の外面上に熱伝逹ジャケット119が備えられ得る。熱伝逹流体が熱伝逹ジャケット119を介してポンピングされて反応器301から熱を搬送する。熱伝逹流体は、使用される温度範囲に対して一般的に使用される任意のもの、例えば、水または適当な熱伝逹オイルであり得る。熱はさらに、反応器301から反応器スラリーの一部を反応器排出口109及びポンプ注入口ライン127を経てポンプ排出ライン128を介して冷却器110にポンプした後、ライン129及び反応器注入口115を経て反応器301に戻すポンプ126を使用して反応器301から除去されるだろう。反応器スラリーは、冷却器110のライン130アップストリームを経て反応器を出て、フラッシュドラム200へ流れる。フラッシュドラム200は、ライン131を通って流れる蒸気ストリームと、ライン132を通って流れる液体スラリー生成物に反応器スラリーを分離する。
【0031】
反応器は、重合を行うのに十分な注入口及び排出口連結を含む。例えば、反応器は、触媒122、水素123、エチレン/単量体124及び希釈剤125を収容するための注入口連結を備えることができる。スラリーは、重合反応器301内で製造された固体重合体粒子、及び希釈剤、未反応単量体及び触媒から形成される。
【0032】
図1に示された反応器301は、独立型反応器、または多重反応器スラリー重合カスケードのうち、第1反応器として作動することができる。多重反応器スラリー重合カスケードのうち、第1反応器以後の反応器などが更に、以前の反応器から反応器スラリーを収容する。
図2は、第1反応器301以後、このような反応器302を示す。
【0033】
反応器302は、以前の反応器301または302から液体スラリー生成物をライン132を介して収容するための第2反応器注入口134を更に含むことを除いて、
図1の反応器301と同様に構成される。反応器注入口134は、上部反応器ヘッド106または円筒状の反応器壁101上に位置し、スラリー供給ライン注入口端部135及びスラリー供給ライン排出端部136を有するスラリー供給ライン137に連結される。供給ライン排出端部136は、反応器液面下の内部反応器体積内に位置する。
【0034】
図2に示された反応器302は、スラリー重合反応器の多重反応器カスケードにおける任意の後続の重合反応器であることができ、すなわち、反応器302は、多重反応器スラリー重合工程の第2反応器であることができるとか、またはこれは、多重反応器スラリー重合工程の第3またはその以上のダウンストリームの反応器であることができる。
【0035】
好ましくは、多重反応器工程は、直列で作動する3つの反応器を含み、すなわち、3つの反応器がカスケードとして配列される。
図3は、
図1に示された反応器301のように構成された第1重合反応器において、単量体が触媒、希釈剤、エチレン及び選択的に水素及び共単量体の存在下で重合され、懸濁された形態である反応器スラリー内にポリエチレンを形成する実施例を示している。第1重合反応器の反応器スラリーは、第1フラッシュドラム200に転送され、ここで、反応器スラリーからガスを分離し、分離された液体スラリー生成物が
図2に示された反応器302のように構成された第2重合反応器に送られる。エチレン、希釈剤及び選択的に水素及び共単量体は、第2重合反応器に送られ、ここで、重合反応がスラリー内で行われて追加のポリエチレンを形成する。第2重合反応器の反応器スラリーは、第2フラッシュドラム200に転送され、ここで、反応器スラリーからガスを分離し、分離された液体スラリー生成物が
図2に示された反応器302のように構成された第3重合反応器に送られる。エチレン、希釈剤及び選択的に水素及び共単量体は、第3重合反応器に送られ、ここで、重合反応がスラリー内で行われて追加のポリエチレンを形成する。第3重合反応器の反応器スラリーは、第3フラッシュドラム200に転送され、ここで、反応器スラリーからガスを分離し、液体スラリー生成物が固体/液体分離及び重合体の更なる加工のために転送される。異なる反応器内の共単量体(など)の性質及び量は、同一であるか異なることができる。
【0036】
図3において、3つの反応器システムが例示されているが、前記工程は、1つまたは2つの反応器システムをまた含むことができ、この時、第1反応器が
図1のように構成され、第2反応器が
図2のように構成されるものとして理解すべきである。3つ超過の反応器を含む反応器システムがまた使用されることができ、ここで、第4及び以後の反応器は、
図2のように構成される。
【0037】
バッフルシステム
重合工程に使用される反応器は、少なくとも一つのバッフル112を含む反応器バッフルシステムを含む。バッフルは、タンク/反応器内容物の単純渦流を防止してタンク/反応器内の流体の混合を助ける。これは、このような渦流で、液体内の固体のせん断が少ないので必要である。
【0038】
バッフル112は、反応器301または302の上部ヘッド106に近接して配置されたバッフル上部113、及び反応器301または302の下部ヘッド105に近接して配置されたバッフル下部114を有する。好ましくは、バッフル112は、単一の矩形プレートまたは機械的に結合されて連続プレートを形成する一連のプレートであり、ここで、矩形の長軸は、反応器301または302の縦軸に平行し、矩形の短縮は、反応器301または302の放射状軸に平行である。バッフル112は、連続的にまたは分離された連結地点で反応器内壁面102に連結され、この長さは、反応器内壁面102に沿って縦方向に延びており、この幅は、内部反応器体積107内に放射状に延びている。バッフル下部114は、好ましくは、反応器下部接線103の30cm以内の地点にあり、すなわち、バッフル下部114は、反応器下部接線103の30cmの下、乃至反応器下部接線103の30cmの上の地点の範囲内の地点に位置する。従って、バッフル下部から下部接線までの距離は、30cmより大きくない。
【0039】
バッフル上部113は、反応器の液面111の下にある。好ましくは、バッフル上部113は、反応器の液面111の少なくとも10cmの下、より好ましくは、反応器の液面111の少なくとも15cmの下、さらに好ましくは、反応器の液面111の15〜30cmの下にある。最も好ましくは、バッフル上部113は、反応器の液面111の20〜30cmの下にある。
【0040】
バッフルの幅は、内部反応器体積107内に延びているバッフルの部分である。好ましくは、バッフルの幅は、反応器直径の1/10〜1/48の範囲、好ましくは、反応器直径の1/10〜1/24の範囲である。
【0041】
バッフル112は、その長さに沿って内部反応器表面102と同一平面上に装着されるとかまたは壁から離れて装着されることができる。壁から離れて装着される場合、内部反応器表面102とバッフル112との間の距離は、好ましくは、バッフル幅の1/72〜1.0、より好ましくは、バッフル幅の1/72〜1/4である。
【0042】
好ましくは、バッフルシステムは、少なくとも2つのバッフル112を含む。より好ましくは、バッフルシステムは、3つ〜4つのバッフル112を含む。最も好ましくは、バッフルシステムは、4つのバッフル112を含む。2つのバッフル112が存在する場合、これらは、好ましくは、反応器内壁面102に沿ってこれらの間に180度の間隔で配列される。3つのバッフル112が存在する場合、これらは、好ましくは、反応器内壁面に沿ってこれらの間に120度の間隔で配列される。4つのバッフルが存在する場合、これらは、好ましくは、反応器内壁面に沿ってこれらの間に90度の間隔で配列される。好ましくは、4つのバッフル112が存在する。
【0043】
本発明によるバッフル及びスラリー供給ラインの配列は、冷却器または以前の反応器から回収されるスラリーからの液体の瞬間蒸発を無くすことにより、バッフル及びバッフルを支持する機械的交差ピース(piece)のファウリングを防止するとか減少させ、これにより、重合体粒子/塊が付着することができる反応器内壁面上の重合体塊の形成及びスラリーの飛散を最小化する。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、特許請求の範囲のエチレン重合方法をさらに詳細に説明する。
【0045】
比較例A
エチレンを、溶媒としてヘキサンの媒質内で、チーグラー型触媒、トリエチルアルミニウム共触媒、1−ブテン共単量体、及び水素の存在下で、79℃の温度及び0.45MPaの圧力で3つの反応器カスケード内で重合してポリエチレンを形成した。反応器の内容物は、高密度ポリエチレン重合体、溶解された原料、及び液体溶媒を含有するスラリーの形態であった。反応熱は、外部冷却器を介してスラリーをポンプし、上部楕円形ヘッドを通じて反応器に再循環させることによって除去した。第2反応器が6.8t/hのエチレンを収容するとき、プラントの全体生産量は、18t/hであった。第2反応器内で製造されたポリエチレンは、5kgの荷重;及び0.950g/cm
3の密度下で190℃の温度でDIN EN ISO1133:2005、条件Tに応じて測定されるとき、5dg/minのMI
5を有した。
【0046】
すべての3つの反応器は、同一のデザインであった。それぞれの反応器は、上部及び下部に楕円形ヘッドを有する円筒状の容器であり、反応器周辺に沿ってこれらの間に90゜の間隔で配列された4つのバッフルが装着された。また、それぞれの反応器は、混合工程を容易にするための攪拌器が装着された。反応器バッフルは、バッフルの上部が上部接線ライン250mmの下に位置しながら、反応器の長さに沿って異なる地点の支持体プレートによって反応器表面に付着された。冷却器からのスラリー回収ラインは、上部接線ラインの600mm下の地点で反応器内に冷却されたスラリーを排出し、アップストリーム反応器/フラッシュ容器からのスラリーは、上部接線ラインの350mm下の地点に排出された。
【0047】
反応器の円筒状部分のレベルは、放射線レベルトランスミッタ(radioactive level transmitter)で測定し、このとき、反応器の上部接線は、100%のレベルに相当し、上部接線1500mmの下の地点は、50%レベルに相当した。3つの反応器カスケードの第2反応器のレベルは、放射線レベルトランスミッタ範囲の50%に維持した。このような作動レベルにおいて、バッフルの上部、外部冷却器スラリー排出地点、及びアップストリーム反応器スラリー排出地点は、気相に置かれている。スラリーポンプは、32Aの電流を要求した。
【0048】
反応器は、ポリエチレン生成物等級の変化のために製造時に停止され、ここで、第2反応器は、1.2dg/minのMI
5及び0.956g/cm
3の密度を有する重合体を製造したが、スラリー循環は継続された。停止以後、工程ラインを第2反応器内に溶媒を使用してフラッシュさせ、その結果、反応器のレベルが95%まで増加した。このような反応器レベルにおいて、バッフルの上部支持体プレートは、液体プール(pool)内に浸漬された。レベルの増加直後、スラリーポンプ電流が27Aに低下し、これは、スラリーポンプを介したスラリー流れの減少を示した。ポンプの点検でインペラが重合体塊によって閉塞されたことを確認した。第2反応器の物理的な点検でバッフルの上部支持体プレート上の重合体の蒸着を確認した。スラリーポンプからの重合体塊のファウリングの例示的なイメージを
図4に示した。
【0049】
実施例1
比較例Aに記載された3つの反応器カスケードの第2反応器の場合、放射線レベルトランスミッタの位置を、測定されたレベルが100%に相当する接線ラインの100mmの上の地点、乃至0%レベルに相当する接線ラインの1400mmの下の地点の範囲にあるように変化させた。正常作動レベルを放射線レベルトランスミッタ範囲の80%に変化させ、これは、上部接線ラインの200mmの下の地点に相当した。このような作動レベルにおいて、バッフルの上部、冷却されたスラリー排出地点及びアップストリーム反応器スラリー注入口は、液体内に浸漬された。このような地点から反応器レベルが増加または減少することは、スラリーポンプ電流の任意の減少をもたらさなかった。これは、重合体蒸着物が反応器バッフルまたはバッフル支持体プレートから除去されるのが可能であったことを示す。プラントの全体生産量は、20t/hであり、第2反応器は、7.5t/hのエチレンを収容した。第2反応器は、1.2dg/minのMI
5及び0.956g/cm
3の密度を有する重合体を製造した。
【0050】
実施例1及び比較例Aは、反応器液面をバッフルの上部の上に維持するのがバッフル上に重合体固体の蓄積を防止するという点を立証する。バッフル上の他に蓄積された固体は、レベルがバッフルの上に増加するとか、または蓄積された重合体固体が支持されることができないレベルまで成長するたびに以後に除去される。蓄積された固体が反応器内に排出された後、これらは、ポンプに流れ、ここで、これらは、ポンプのインペラを塞ぐ。バッフル、バッフルを支持する機械的交差ピース及び反応器内壁面上の重合体塊の蓄積がないので、バッフルの上部を既に超えた地点からの反応器レベルの増加は、重合体固体塊の任意の除去をもたらさなく、これにより、スラリーポンプの閉塞を防止する。
【0051】
本明細書に開示された主題の他の特徴、利点及び実施形態は、前述の開示内容を読んだ以後、当業者に容易に明確になるだろう。このような点から、本発明の主題の具体的な実施形態がかなり詳細に記載されているといっても、これらの実施形態の変形及び変更は、記載され、特許請求された本発明の主題の精神及び範囲を逸脱することなく、行うことができる。