【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の制御材は、黒鉛球状化処理を行うためのワイヤーインジェクション法において、70〜75重量%のSiO
2を含む多孔質の火山性珪酸塩鉱物であることを特徴とするワイヤー内部にマグネシウム合金とともに充填される
焼成された制御材である。
【0012】
請求項1の制御材は、ワイヤー内部にマグネシウム合金とともに充填されるので、ワイヤーのマグネシウムの濃度を低くすることができる。そのため、このワイヤーが黒鉛球状化処理を行うためのワイヤーインジェクション法で溶湯に投入された場合に、マグネシウムの反応を制御することができる。
【0013】
また、請求項1の制御材は、70〜75重量%のSiO
2を含む多孔質の火山性珪酸塩鉱物であるので、従来のマグネシウム合金とともにワイヤーに充填される制御材より軽量である。そのため、請求項1の制御材は、マグネシウム合金とともに充填されるワイヤーを軽量化することができる。
さらに、SiO2を含む多孔質の火山性珪酸塩鉱物からなる制御材は、焼成されることによって、より発泡量が安定する。
【0014】
請求項2の制御材は、請求項1の制御材において、気孔率が60〜80%である。
【0015】
ダクタイル鋳鉄は、溶湯中にドロスが発生する。ドロスが溶湯中に残留した状態で鋳込みが行われると、ダクタイル鋳鉄の鋳造欠陥が生じる。このドロスは、溶湯の液面に浮上してスラグとなる。液面に浮いたスラグは除去可能となる。
【0016】
しかしながら、スラグの量が多いと、そのスラグの除去作業の負荷が増大する。特に、高温の溶湯の液面からスラグを除去する作業は危険であるので、出来る限りスラグの除去作業の負荷を低減することが望ましい。
【0017】
SiO
2を含む多孔質の火山性珪酸塩鉱物からなる制御材は、溶湯の中で発泡してドロスとなる。このSiO
2を含む多孔質の火山性珪酸塩鉱物によって生じたドロスは、液面に浮上するとスラグとなる。
【0018】
請求項2の制御材は、請求項1の制御材と同様に作用する上に、気孔率が60〜80%と高いので、制御材としての密度が小さい。そのため、請求項2の制御材は、発泡してもドロスの体積が小さくなるので、そのドロスが浮上したスラグの量も小さくなる。したがって、請求項2の制御材は、スラグの除去作業の負荷を軽減することができる。
【0019】
請求項3の制御材は、請求項1又は2の制御材において、Ig.lossが0.5%以下である。
【0020】
SiO
2を含む多孔質の火山性珪酸塩鉱物からなる制御材は、Ig.lossが小さければ小さいほど、溶湯の中での制御材の発泡量が安定する。
【0021】
請求項3の制御材は、請求項1又は2の制御材と同様に作用する上に、Ig.lossが0.5%以下と十分に小さい。そのため、請求項3の制御材は、発泡した体積が安定する。したがって、請求項3の制御材は、ドロス及びスラグの発生量を細かく調節することができる。
【0022】
請求項3の制御材は、発泡量が安定しているので、溶湯中での制御材の発泡量を細かく調節することができる。溶湯中での制御材の発泡量が適正な範囲となるように調節することによって、発泡した制御材に生じる浮力が調節することができる。そのため、請求項3の制御材は溶湯中に留まる時間を調節することができ、マグネシウムの反応を効率よく制御することができる。
【0023】
一方、マグネシウムを含むワイヤーで添加された成分も溶湯内でドロスとなる。溶湯が注入される取鍋が大型の場合、このようなドロスが溶湯の液面に浮上するまでに時間がかかる。ドロスの浮上に時間がかかると、溶湯の温度低下、黒鉛球状化の効果の消失という問題が発生する。
【0024】
請求項3の制御材は、例えば、溶湯中での制御材の発泡量が適正な範囲となるように調節することによって、発泡した制御材に生じる浮力が調節することができる。そのため、請求項3の制御材は、溶湯中で発泡し、マグネシウムを含むワイヤーで添加された成分のドロスと共に溶湯の液面に浮上することによって、ドロスが溶湯の液面に浮上するまでの時間を調節することができる。
【0025】
制御材は発泡量が過大になると、取鍋の内表面に接触して付着することがある。このような、発泡した制御材の付着は、ダクタイル鋳鉄の品質に悪影響を及ぼす可能性があるとともに、取鍋の損傷を引き起こす可能性がある。
【0026】
請求項3の制御材は、例えば、溶湯中での制御材の発泡量が適正な範囲となるように調節することによって、発泡した制御材が取鍋の内表面に接触して付着する前に容易に取り除くことができる。
【0027】
請求項4の制御材は、請求項1から3のいずれかの制御材において比重が0.5〜1.0g/cm
3である
【0028】
請求項4の制御材は、請求項1から3のいずれかの制御材と同様に作用する上に、比重が0.5〜1.0g/cm
3と従来の制御材に比べて十分に小さい。そのため、請求項4の制御材は、マグネシウム合金とともに充填されるワイヤーを軽量化することができる。
【0029】
請求項5の制御材は、請求項1から4のいずれかの制御材において、直径5mm未満の球体の焼成体、又は、長さが5mm未満の棒体の焼成体である。
【0030】
SiO
2を含む多孔質の火山性珪酸塩鉱物からなる制御材は、焼成することによってさらに発泡量が安定する。
【0031】
請求項5の制御材は、請求項1から4のいずれかの制御材と同様に作用する上に
、直径5mm未満の球体の焼成体、又は、長さが5mm未満の棒体の焼成体であるので、発泡量が安定する。請求項5の制御材は、発泡量が安定しているので、溶湯中での制御材の発泡量を細かく調節することができる。したがって、請求項3の制御材と同様の作用を有する。
【0032】
請求項6の制御材の製造方法は、黒鉛球状化処理を行うためのワイヤーインジェクション法用の制御材の製造方法であって、その制御材が70〜75重量%のSiO
2を含む多孔質の火山性珪酸塩鉱物からな
り、その制御材が、粒子径0.1mm以下で15〜35重量%の水分を含む粉末状の火山性珪酸塩鉱物をバインダーとして、粒子径が3mm以下の多孔質の火山性珪酸塩鉱物を、直径5mm未満の球体に、又は、長さが5mm未満の棒体に加工されるようになっている。
【0033】
請求項6の制御材の製造方法によって製造された制御材は、ワイヤー内部にマグネシウム合金とともに充填されるので、ワイヤーのマグネシウムの濃度を低くすることができる。そのため、このワイヤーが黒鉛球状化処理を行うためのワイヤーインジェクション法で溶湯に投入された場合に、マグネシウムの反応を制御することができる。
【0034】
また、請求項6の制御材の製造方法によって製造された制御材は、70〜75重量%のSiO2を含む多孔質の火山性珪酸塩鉱物であるので、従来のマグネシウム合金とともにワイヤーに充填される制御材より軽量である。そのため、請求項6の制御材の製造方法によって製造された制御材は、マグネシウム合金とともに充填されるワイヤーを軽量化することができる。
【0035】
さらに、請求項6の制御材の製造方法によって製造された制御材は、溶湯の量、温度等の条件に合わせて、適正な制御材の溶解、及び、適正なマグネシウムによる黒鉛球状化の反応時間を実現することができる。
【0036】
請求項7の制御材の製造方法は、制御材は、900〜1000℃で焼成されるようになっている。
【0037】
請求項7の制御材の製造方法によって製造された制御材は、溶湯の量、温度等の条件に合わせて、適正なマグネシウムによる黒鉛球状化の反応時間を実現することができる。加えて、
請求項7の制御材の製造方法によって製造された制御材は、焼成することによってさらに発泡量を調節することができる。したがって、
請求項7の制御材の製造方法によって製造された制御材は、請求項3の制御材と同様の作用を有する。