特許第6235215号(P6235215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235215ボトム衣料に適した弾性編地及びボトム衣料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235215
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ボトム衣料に適した弾性編地及びボトム衣料
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/18 20060101AFI20171113BHJP
   D01F 6/66 20060101ALI20171113BHJP
   A41C 1/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   D04B21/18
   D01F6/66
   A41C1/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-24244(P2013-24244)
(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2014-152419(P2014-152419A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】矢田 和也
(72)【発明者】
【氏名】實成 泰
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−200455(JP,A)
【文献】 特開平05−339855(JP,A)
【文献】 特開2003−166152(JP,A)
【文献】 特開2004−019059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C1/00−5/00
D01F1/00−6/96
9/00−9/04
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非弾性糸をフロントに配置し、弾性糸をバック及びミドルに配置した弾性経編地からなるボトム衣料であって、同時2軸引張伸張試験機に、X軸方向とY軸方向において荷重のかかる有効寸法をそれぞれ7.2cmとして、該編地を装着し、編地を装置のX軸方向に10%、Y軸方向に5%伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値A(cN)が100cN≦A≦1000cNであり、かつ、X軸方向65%、Y軸方向35%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値B(cN)が100cN≦B≦1000cNであり、該編地の該Y軸方向が、着用者身体の高さ方向に、かつ、該X軸方向が、着用者身体の横方向に配され、該弾性糸の少なくとも1種は、2、2−ジメチルプロピレン又は3−メチルテトラメチレン基の側鎖を含有するポリアルキレンエーテルジオール成分由来の構造を有するポリウレタン弾性糸であり、かつ、該弾性糸は、ルーピングされない組織構造を有する前記ボトム衣料。
【請求項2】
前記弾性編地をX軸方向及びY軸方向に同時に80%伸長した時の80%伸長時のY軸方向の伸長荷重をC(cN)、X軸方向の伸長荷重をD(cN)としたとき、伸長荷重比D/Cの値が0.60≦D/C≦1.20の範囲である、請求項1に記載のボトム衣料。
【請求項3】
前記弾性編地より抜き出した弾性糸を100%伸長回復させたとき、伸長時の80%時の伸長荷重E(cN)と回復時の80%時の伸長荷重F(cN)の比がF/E≧0.85である、請求項1又は2に記載のボトム衣料。
【請求項4】
前記弾性編地より抜き出した弾性糸を100%の伸長回復を繰り返した時、3回目の100%伸長時の伸長応力G(cN/dtex)がG≦0.030cN/dtexである、請求項1〜のいずれか1項に記載のボトム衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性編地に関し、さらに詳しくはファンデーションやインナーウエアのボトム用衣料に好適な弾性編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、女性を中心として、体型を美しく見せたいという強いニーズがある。このようなニーズに応えるための技術として、ガードルやボディシェイパーなどの各種のボトム衣料が開発されている。例えば、ガードルには、体型補整などの目的に応じてソフトからハードの種々のパワーレベルの弾性が要求される。しかし、ソフトパワーな特性を有する生地では、着脱性や動作感や編地の追随性には優れるものの、十分な体形補整効果が得にくい。一方、ハードパワーな生地では、体型補整効果はなされるものの、一般に伸度が不足するため、動作に追随しがたく、突っ張り感や、ずれの様な日常動作の妨げになったり、着用時の窮屈感等による不快感が生じたりして、十分に満足できる着用快適性は得られていない。
【0003】
十分な体型補整がなされ、着脱がしやすく、編地の動作追随性及び動作感が良く、かつ、着用快適性を有したボトム衣料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−140719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来技術の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、適切な体型補整がなされ、編地の動作追随性及び動作感が良く、かつ、着用快適性を有したボトム衣料用の弾性編地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決すべく、人の動作による皮膚の伸びに追随する編地の伸長特性について鋭意検討し、実験を重ねた結果、編地の経及び緯の伸長荷重が着用感に大きく影響を及ぼすこと。また、編地の経及び緯の伸長荷重が所定の伸長荷重範囲内に抑えることで、適切な体型補整をなしつつ、着脱性や動作性及び編地の動作追随性に優れ、かつ、長時間着用した状態においてもストレスを感じにくく、快適な弾性編地が得られること、さらにこれらの効果に加え、弾性編地をより最適な物性にすることで、筋負担の軽減や動作の再現性の向上等の動作におけるサポート効果を得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]非弾性糸をフロントに配置し、弾性糸をバック及びミドルに配置した弾性経編地からなるボトム衣料であって、同時2軸引張伸張試験機に、X軸方向とY軸方向において荷重のかかる有効寸法をそれぞれ7.2cmとして、該編地を装着し、編地を装置のX軸方向に10%、Y軸方向に5%伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値A(cN)が100cN≦A≦1000cNであり、かつ、X軸方向65%、Y軸方向35%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値B(cN)が100cN≦B≦1000cNであり、該編地の該Y軸方向が、着用者身体の高さ方向に、かつ、該X軸方向が、着用者身体の横方向に配され、該弾性糸の少なくとも1種は、2、2−ジメチルプロピレン又は3−メチルテトラメチレン基の側鎖を含有するポリアルキレンエーテルジオール成分由来の構造を有するポリウレタン弾性糸であり、かつ、該弾性糸は、ルーピングされない組織構造を有する前記ボトム衣料。
【0008】
[2]前記弾性編地をX軸方向及びY軸方向に同時に80%伸長した時の80%伸長時のY軸方向の伸長荷重をC(cN)、X軸方向の伸長荷重をD(cN)としたとき、伸長荷重比D/Cの値が0.60≦D/C≦1.20の範囲である、前記[1]に記載のボトム衣料。
【0010】
[3]前記弾性編地より抜き出した弾性糸を100%伸長回復させたとき、伸長時の80%時の伸長荷重E(cN)と回復時の80%時の伸長荷重F(cN)の比がF/E≧0.85である、前記[1]又は[2]に記載のボトム衣料。
【0011】
]前記弾性編地より抜き出した弾性糸を100%の伸長回復を繰り返した時、3回目の100%伸長時の伸長応力G(cN/dtex)がG≦0.030cN/dtexである、前記[1]〜[]のいずれかに記載のボトム衣料。
【発明の効果】
【0014】
本発明の弾性編地を使用することで、体型補整の効果を十分に得ながら、編地の動作追随性及び動作感が良く、かつ、着用快適性を有したボトム衣料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の弾性編地は、以下に説明する所定の伸長荷重を有する、非弾性糸と弾性糸からなる弾性編地であって、これを使用することで、体型補整の効果を十分に得ながら、着脱が容易でかつ、動作性及び編地の動作追随性が良く、長時間着用においてもストレスを感じにくい着用感の優れたボトム衣料を得ることができる。かかる作用効果は、弾性編地を使用する伸度領域において、編地の伸長荷重を一定の範囲内に制御することで得られるものである。
【0016】
本発明に係るボトム衣料とは、下半身の股下から2つに分かれ、少なくとも臀部を覆う衣料をいう。また、股下は、足首丈、ひざ丈など自由にデザインすることができる。上部についても、腰部からアンダーバスト位置まで自由にデザイン可能である。
【0017】
本発明者らは、本発明の弾性編地を用いて作製したボトム衣料を用いて鋭意検討した結果、日常の動作における編地の伸長領域は、身体の高さ方向では平均5〜35%、身体の幅方向では平均10〜65%の範囲であることを見出した。日常生活において、ツッパリ感がなく快適な着用感と、良好な着脱容易性を発揮するためには、同時2軸引張伸張試験機にてX軸方向10%、Y軸方向5%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値A(cN)が、100cN≦A≦1000cNであり、かつ、X軸方向65%、Y軸方向35%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値B(cN)が、100cN≦B≦1000cNであることが必要であり、好ましくは100cN≦A≦950cNかつ100cN≦B≦950cNであり、さらに好ましくは100cN≦A≦900cNかつ100cN≦B≦900cNであることができる。
【0018】
AとBの両者が100cN以上である場合、着用時に体を締め付ける力が十分であり、体型補整効果を十分に発揮することができる。また、AとBの両者が、1000cN以下であることで、着脱時に生地が突っ張らず、着脱が容易となる。AとBのいずれか1方又は両者が100cN未満では、生地の動作に対する追随性が悪く、動作時に生地のたるみの発生等により、不快感が生じてしまう。また、AとBのいずれか1方又は両者が1000cN超では、締め付け感が過大になってしまうことや、ツッパリ感により動きにくさが出てしまい不快感につながってしまう。つまり、本発明においては、AとBの両者が、100cN以上1000cN以下であることが必要である。
また、A及びBの値を変化させるには、種々の方法にて可能であるが、弾性糸の種類を変えることで、ランナー長を下げることで、及び編み組織を変えることで容易に可能となる。
なお、編地の編み方向を装置のX軸方向とし、編地の編み方向と垂直な方向をY軸として測定しても、編地の編み方向を装置のY軸方向とし、編地の編み方向と垂直な方向をX軸として測定しても構わない。
【0019】
同時2軸引張伸張試験機に、上記AとBが所定範囲にある編地のセット方向において、本発明の弾性編地をセットし、該編地をX軸方向及びY軸方向に同時に80%伸長した時の80%伸長時のY軸方向の伸長荷重をC(cN)とし、X軸方向の伸長荷重をD(cN)としたとき、伸長荷重比D/Cの値が0.60≦D/C≦1.20であることが好ましく、より好ましくは0.65≦D/C≦1.10であり、さらに好ましくは0.70≦D/C≦1.00である。この伸長荷重比範囲の弾性編地でボトム衣料を縫製した場合、適度な締め付け感が得られるとともに、身体の曲げ伸ばしや着脱が楽に行える。D/Cが0.60未満では、身体の曲げ伸ばし時、ツッパリ感があり、着心地の悪いボトム衣料となり、D/Cが1.20超の場合も、身体の曲げ伸ばし時に皺が発生したり、編地にゆるみが生じやすくなる。
なお、伸長荷重比の測定については、実施例にて詳細に示す。
また、D/Cを変化させるためには、種々の方法にて可能であるが、弾性繊維の種類を変えることで、あるいは編み組織を変えることで容易に可能となる。
【0020】
本発明の弾性編地は、経編機、丸編機、肌着サイズの小寸丸編機、横編機により製造でき、ジャガード編成可能な編機の使用も可能である。上記条件を満たし、見栄えも良い編地を得るには、弾性糸がルーピングされない組織構造であることで容易に得られる。これらの編機のゲージについては、任意なゲージの編機が使用可能であるが、横編機では14〜16ゲージ、経編機及び丸編機では22〜36ゲージ程度の編機の使用が好ましい。
【0021】
本発明の染色仕上げ方法は、通常の染色仕上げの工程が使用でき、使用する繊維素材に応じた染色条件とし、使用する染色機も液流染色機、ビーム染色機、ウインス染色機、パドル染色機など任意のものであることができ、吸水性や柔軟性を向上させる加工剤を使用することもできる。
【0022】
本発明の弾性編地より抜き出した弾性糸は、弾性糸を100%伸長回復させたとき、伸長時の80%時の伸長荷重E(cN)と回復時の80%時の伸長荷重F(cN)の比がF/E≧0.85であることであることが好ましく、より好ましくはF/E≧0.90である。F/Eが0.85未満である場合、編地の戻りのパワーが弱く、弾性編地を用いて、ボトム衣料を作製した場合、締め付けが不十分である。
また、F/Eの値を高めるためには、種々の方法にて可能であるが、弾性糸の種類を変えることで容易に可能となる。
【0023】
本発明の弾性編地より抜き出した弾性糸は、弾性糸を100%の伸長回復を繰り返した時、3回目の100%伸長時の伸長応力G(cN/dtex)がG≦0.030cN/dtexであることが好ましく、より好ましくはG≦0.025cN/dtexである。Gが0.030cN/dtexを超える場合、編地のパワーが強すぎるため、弾性編地を用いて、ボトム衣料を作製した場合、着脱時に着脱性が悪くなる。また、Gの値を変化させるためには、種々の方法にて可能であるが、弾性糸の種類を変えることで容易に可能となる。
【0024】
本発明の弾性編地の作製に使用できる弾性糸としては、ポリウレタン系、ポリエーテルエステル系等の弾性糸が挙げられる。例えば、ポリウレタン系弾性糸としては、乾式紡糸又は溶融紡糸により得られるものが使用できる。弾性糸の破断伸度は、編地に配した時に良好な伸縮性を有するために、400〜1000%であることが好ましい。弾性糸に用いるポリマーに特に限定されないが、生地の良好な感触や伸縮性を得るためには、ポリアルキレンエーテルジオール成分に2,2‐ジメチルプロピレン基や3‐メチルテトラメチレン基の様な側鎖を持つ成分を含有したものが好ましい。弾性糸に用いるポリマーは、より好ましくは2,2‐ジメチルプロピレン基成分の側鎖を含有したポリアルキレンエーテルジオールである。弾性糸の繊度は、使用する編み機やゲージ、編組織により適宜選択されるが、通常22〜780dtexの範囲とされる。編地の破裂強度及び厚み感の観点から、22〜470dtexの繊維の使用が好ましい。また、弾性糸はベア又は被覆糸のいずれであってもよい。また、弾性糸には、通常用いられる他の化合物、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐ガス着色防止剤、耐塩素剤、着色剤、艶消し剤、滑剤、充填剤等を添加してもよい。
【0025】
本発明の弾性編地は、弾性糸と非弾性糸からなり、非弾性糸としては、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維(ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリプロピレン、アクリル系繊維等の合成繊維、キュプラ、レーヨン、綿、竹繊維等のセルロース系繊維、羊毛等の獣毛繊維等、あらゆる繊維の使用が可能である。また、これらの素材で形成されたブライト糸、セミダル糸、フルダル糸等を任意に使用できる。非弾性繊維の断面形状としては丸型、楕円型、W型、繭型、中空糸等任意の断面形状が可能である。また、非弾性繊維の形態は特に限定されず、原糸、及び仮撚等を施した捲縮加工糸が使用できる。さらに、長繊維、紡績糸、2種以上の繊維を撚糸、カバーリング、エアー混繊等により混合した複合糸としての使用が可能である。さらには、繊維製造時の混合でなく、編機上で2種以上の繊維を混合することも無論可能で、経編機では、2種以上の繊維をそれぞれに対応する筬を準備して編成すればよい。非弾性糸の繊度としては、例えば、20〜160dtexが可能であり、編地の破裂強度及び厚み感の観点から、20〜110dtexの繊維の使用が好ましい。なお、綿及び羊毛については、それぞれ当業者に公知の換算式により使用繊維の太さを求めればよい。
【0026】
着用時の体型補整性効果を評価するために、弾性編地を用いて、ボトム衣料を作製し、着用時のウエスト、ヒップ、太腿の3点において、周囲長を測定した。十分な体型補整効果が得られているかは、ウエスト(へその周囲)、ヒップ(未着用における最も周囲長の大きい部分)、太腿(股関節直下10cm)の3点において未着用の状態の3点の合計に比べ、着用時の周囲長の3点の合計が3.0%以上小さくなっていることが好ましく、より好ましくは4.0%以上である。
【0027】
着用時の精神的なストレスを評価するために、心電図から得られるLF/HF値比による評価を行った。本発明における弾性編地において作製されたボトム衣料の着用において快適感を得るためには、着用直後のLF/HF値をα、6時間着用後のLF/HF値をβとしたとき、β/α≦1.40であることが好ましく、より好ましくは、β/α≦1.30である。心電図の心拍周期の周波数解析から得られるLFは0.1Hz付近にピークを持つ低周波数成分であり、自律神経成分の交感神経成分及び副交感神経成分の活動を表している。HFは0.3Hz付近にピークを持つ高周波数成分であり、副交感神経成分の活動を表している。この2つの成分における面積比がLF/HF比であり、この値が小さいほどストレスが少ない状態を表す。また、ストレスを感じることで、自律神経成分の交感神経成分が高くなるため、このLF/HF値は大きくなることを表している。このため、β/αが1.40を超えると、着用において、ストレスを感じていることを示しており、着用することで不快と感じていることを表している。
【0028】
着用における筋肉の疲労性評価として、積分筋電位による評価を行った。本発明における弾性編地において作製されたボトム衣料の着用において、動作時に余計な筋疲労を与えないボトム衣料を得るためには、動作時の筋電位の値が30mV・ms以下であることが好ましく、より好ましくは25mV・ms以下である。なお、同一動作であれば、積分筋電位が大きいほど、筋活動量が大きく筋負担が大きいことを意味し、小さいほど筋負担も小さくなることを意味している。動作時の筋電位の値が30mV・msを超えると、着用している衣料が身体の動きに対して、追随しておらず、筋肉の動きを妨げることにつながり、筋肉疲労に繋がる。また同時に動作性も悪くなることから、不快感にもつながることになってしまう。また筋電位の値が、30mV・ms以下では、着用している衣料が身体の動きに対して、追随性が良く、動きを妨げにならないことにより、筋肉の負担となっていないことを表している。さらに、筋電位の値が、25mV・ms以下では、衣類が筋肉の負担を軽減するようなサポート効果を示していることを表している。
【0029】
着用における動作容易性評価の評価として、動作加速度の測定から得られる級内相関係数による評価を行った。本発明の弾性編地を用いて作製されたボトム衣料の着用において、動作容易性の高いボトム衣料を得るためには、動作時の級内相関係数の値が0.60以上であることが好ましく、より好ましくは0.70以上である。級内相関係数が高いことは、データの値そのものが一致していることを示しており、比較したデータにおける動作が一致していることを表す。つまり、級内相関係数が高いことは、動作の再現性が高く、動作が容易であることを意味している。級内相関係数が0.60以上では、着用している衣料が身体の動きに追随しており、動作の妨げとなりにくいことから、同じ動作を繰り返した場合でも動作に影響しない。これに対し、級内相関係数が0.60未満では、着用している衣料が身体の動きに追随できず、動作の妨げとなり、同じ動作を繰り返した場合でも動作にばらつきが生じてしまう。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例における評価は下記の方法で行った。
(1)編地の伸長荷重測定
測定は、同時2軸引張伸張試験機(STRIP BIAXIAL TENSILE TESTER KES−G2−SB1 カトーテック社製)において、行った。同時2軸引張伸張試験機においては、X軸方向及びY軸方向の2方向に編地を伸長可能であり、衣料を着用した際の多方向に伸長される編地の再現が可能となる。また、本試験機では、X軸方向及びY軸方向にて伸長量を変えることが可能であり、X軸及びY軸方向に異なった伸長率(例えば、X軸方向に80%伸長しながらY軸方向に30%伸長する)にて編地を伸長できる。また、同時2軸引張伸張試験機における編地の測定時においては、装置のX軸方向を編地の経とし、Y軸方向を編地の緯として測定してもよく、また、装置のX軸方向を編地の緯とし、Y軸方向を編地の経として測定してもよい。
編地を9.0cm×9.0cm(X軸側×Y軸側)に編み方向に垂直及び平衡に裁断し、同時2軸引張伸張試験機に取り付ける。このとき、荷重がかかる編地の有効寸法は7.2cm×7.2cmであり、伸度を換算する有効長は7.2cmである。引張速度300mm/分で定荷重伸張を行い、X軸方向10%、Y軸方向5%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値A(cN)、及びX軸方向65%、Y軸方向35%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値B(cN)を、それぞれ、求めた。この測定を2回実施し、A、Bそれぞれの平均値を求めた。
【0031】
(2)編地の伸長荷重比測定
前記、編地の伸長荷重測定法と同等の条件にて、編地を装着した。なお、編地のセット方向は、上記編地の伸長荷重測定において、同時2軸伸長にてX軸方向10%、Y軸方向5%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値A(cN)と、X軸方向65%、Y軸方向35%に伸長した時のX軸方向の伸長荷重(cN)とY軸方向の伸長荷重(cN)の平均値B(cN)が、それぞれ、100cN≦A≦1000cNと100cN≦B≦1000cNを満たす編地のセット方向と同じ方向であった。
引張速度300mm/分で、編地をX軸方向及びY軸方向に同時に80%伸長した時の80%伸長時のY軸方向の伸長荷重C(cN)と、X軸方向の伸長荷重D(cN)を測定した。また、編地の伸長荷重比D/Cを以下の式により求めた:
(編地の伸長荷重比D/C(−))=(80%伸長時のX軸側の伸長荷重D(cN))/(80%伸長時のY軸側の伸長荷重C(cN))
【0032】
(3)弾性糸の伸長荷重比測定
次の方法により測定した。
試料の大きさ:長さ10cm(把持部除く)
引っ張り試験機:定速伸長型引張り試験機(RTG−1210 株式会社エー・アンド・デイ社製)
初荷重:0.1mN
引っ張り、戻し速度:300mm/min
引っ張り長:10cm(100%伸長)
引っ張り回数:1回伸長し、元の状態まで戻す。
測定:上記条件で、伸長時の80%伸長時荷重E(cN)及び回復時の80%伸長時応力荷重F(cN)を求め、次式により伸長荷重比F/Eを求める:
伸長荷重比F/E(−)=(回復時の80%伸長時応力荷重F(cN))/(伸長時の80%伸長時荷重E(cN))
【0033】
(4)弾性糸の100%伸長応力測定
次の方法により測定した。
試料の大きさ:長さ10cm(把持部除く)
引っ張り試験機:定速伸長型引張り試験機(RTG−1210 株式会社エー・アンド・デイ社製)
初荷重:0.1mN
引っ張り、戻し速度:300mm/min
引っ張り長:10cm(100%伸長)
引っ張り回数:3回伸長を繰り返す。
測定:上記条件で繰り返し、3回目の100%伸長時応力G(cN/dtex)を求めた。
なお、弾性糸の繊度については、編地内の弾性糸の長さと重量から測定した。具体的には、編地から弾性糸を抜き出し、弾性糸を解き、長さと重量を測定した。
【0034】
(5)体型補整効果の評価
未着用時において、各被験者のウエスト・ヒップ・太腿にマーキングをしておき、周囲長を測定後、各被験者にガードルを着用させ、着用後の各被験者のウエスト・ヒップ・太腿の周囲長を測定した。その後、各部の補整量の合計値を算出した。補整率を、以下の式により求めた:
補整率(%)=((未着用時の周囲長の(cm)−着用時の周囲長(cm)))/(未着用時の周囲長の(cm))×100
ウエスト、ヒップ、太腿の補整率を、それぞれ、算出し、その合計値を用いて、補整効果を以下の評価基準で評価した。点数が高いほど、補整効果が高いことを表している。
5(4.0%≦補整率の合計値):十分な補整効果あり
4(3.0%≦補整率の合計値<4.0%):補整効果あり
3(2.0%≦補整率の合計値<3.0%):やや補整効果が弱い
2(1.0%≦補整率の合計値<2.0%):補整効果が弱い
1(補整率の合計値<1.0%):補整効果が非常に弱い
【0035】
(6)着用における精神的なストレス評価
株式会社モンテシステム製のMPシステム(MP150)及び、ワイヤレス生体センサー(RF−ECG)を用い、ワイヤレス生体センサーを各パネラーの胸部に設置した。その後、各パネラーに実施例及び比較例にて得られた編地を用いて作製したガードルを着用させた直後に5分間安静にした。その後、5分間心電図を測定した。この時の測定値をA1とする。その後、ガードルを着用した状態で、6時間日常生活を送った後、再度5分間の安静の後、5分間心電図を測定した。この時の測定値をA2とする。その後、検出した信号から抽出した心拍信号及び呼吸信号から自律神経成分の交感神経成分及び副交感神経成分の活動(LF)と副交感神経成分(HF)を算出し、交感神経成分及び副交感神経成分の活動(LF)と副交感神経成分(HF)から導出したパラメータ(LF/HF)をストレス値とし、それぞれ、A1から算出したLF/HF値、A2から算出したLF/HF値において、6時間後のストレス変化値=(A2から算出したLF/HF値/A1から算出したLF/HF値)とし、着用直後のストレス値を基準としたストレスの経時変化として算出した。
【0036】
(7)筋肉の疲労性評価
日本光電工業株式会社社製の多チャンネルテレメータシステム (WEB−1000)及び筋電図センサー兼送信機(ZB−150H)を用いて、以下の実施例及び比較例で得られた編地を用いてガードルを作製し、着用時に大腿直筋において、着用者とガードルの間にセンサーを挿入した。その後、トレッドミルにて3.5km/hにて3分間の歩行動作における筋電位を測定した。測定した筋電図を用いて、積分筋電位を算出した。なお、3分間のトレッドミル歩行では、実験開始、1分経過後の5歩行周期を抽出し、平均することによって、1歩行周期の積分筋電位とした。さらに、被験個々に歩行ピッチが異なるため、単位時間当たりの積分筋電位に換算した。積分筋電位により、筋肉にかかる負担を評価した。
【0037】
(8)動作容易性評価
日本光電工業株式会社社製の多チャンネルテレメータシステム(WEB−1000)及び加速度センサー兼送信機(ZB−156H)を用いて、以下の実施例及び比較例で得られた編地を用いてガードルを作製し、着用時に腰部の第4〜5腰椎付近において、着用者とガードルの間にセンサーを挿入した。その後、椅子の立ち座りを5回行った時の加速度信号を測定した。測定した加速度信号を用いて、級内相関係数を算出し、動作の再現性の算出を行った。連続する椅子の立ち座りについて、連続する2回を無作為に5組抽出し、それらから級内相関係数を算出し、動作容易性を評価した。級内相関係数の算出には以下の式を用いた:
級内相関係数(−)=(σp2)/(σp2e2) (σp2:測定の対象間の分散成分、σe2:測定の対象間の分散成分+誤差)
【0038】
(9)着脱容易性評価
以下の実施例及び比較例で得られた編地を用いてガードルを作製し、各パネラーにて着用時及び着脱時に必要な時間を測定した。測定は、ストップウォッチを使用し、未着用の状態から着用し終わるまでの時間(着衣に要する時間)と着用の状態から完全に着脱するまでの時間(脱衣に要する時間)を測定し、両者の合計値(着脱にかかる時間)を算出し、平均値で示した。
着脱にかかった時間を以下の評価基準で評価した。点数が高いほど、着脱にかかる時間が短く、着脱が容易であることを表している。
5(着脱時間<26秒):着用しやすい
4(26秒≦着脱時間<29秒):やや着脱しやすい
3(29秒≦着脱時間<32秒):着脱しやすくもなく、着脱しにくくもない
2(32秒≦着脱時間<35秒):やや着脱しにくい
1(35秒≦着脱時間):着脱しにくい
【0039】
(10)動作感
以下の実施例及び比較例で得られた編地を用いてガードルを作製し、各パネラーにて着用した。その後、トレッドミル上で速度4.0km/hの速度で3分間歩行及び、膝屈伸動作を伴う椅子からの立ち上がり、座りの動作を5回、立位の状態から膝を抱え込む状態までしゃがみ込んだ後立ち上がる動作を5回行った後、アンケート調査を行った。アンケートは、着用時の動作感のアンケート調査の結果を示したものであり、以下の評価基準で評価した。
5:非常に動きやすい
4:動きやすい
3:動きやすくもなく、動きづらくもない
2:やや動きにくい
1:動きづらい
【0040】
(11)快適感
測定は、前記の動作性の評価と同様の方法にて試験を行った。アンケートは、着用時の快適感のアンケート調査の結果を示したものであり、以下の評価基準で評価した。
5:非常に快適である
4:快適である
3:快適でもないが、不快でもない
2:やや不快である
1:不快である
【0041】
実施例及び比較例にて使用した各弾性糸は以下の方法で製造した。
平均分子量1,800のポリテトラメチレンエーテルグリコール4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、窒素ガス気流下60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。次いで、これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。エチレンジアミン及びジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温で添加して、粘度5,200ポイズ(25℃)のポリウレタン重合体溶液を得た。このポリウレタン重合体溶液に、ポリウレタン固形分に対して、p−クレゾールとジシクロペンタジエンの重付加体のイソブチレン付加物を1.0重量%、Sumilizer GA−80(住友化学社製)を0.5重量%、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(2−フェニルプロパン−2−イル)フェノールを0.2重量%、ハイドロタルサイトを0.5重量%混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。この紡糸原液を紡糸速度800m/分および熱風温度325℃で乾式紡糸して、310dtex/36フィラメント(PU1とする)及び44dtex/4フィラメント(PU2とする)の繊維を製造した。
【0042】
テトラメチレン基と2、2−ジメチルプロピレン基からなる平均分子量1,800で2、2−ジメチルプロピレン基の共重合率が10モル%である共重合ポリアルキレンエーテルジオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、窒素ガス気流下60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。ついで、これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。エチレンジアミン及びジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温で添加して、粘度4,500ポイズ(25℃)のポリウレタン重合体溶液を得た。このポリウレタン重合体溶液に、ポリウレタン固形分に対して、p−クレゾールとジシクロペンタジエンの重付加体のイソブチレン付加物を1.0重量%、Sumilizer GA−80(住友化学社製)を1.8重量%、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(2−フェニルプロパン−2−イル)フェノールを0.2重量%、ハイドロタルサイトを0.5重量%混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。この紡糸原液を紡糸速度800m/分および熱風温度325℃で乾式紡糸して、310dtex/36フィラメント(PU3とする)及び44dtex/4フィラメント(PU4とする)の繊維を製造した。
【0043】
テトラメチレン基と3−メチルテトラメチレン基からなる平均分子量1,800で3−メチルテトラメチレン基の共重合率が10モル%である共重合ポリアルキレンエーテルジオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、窒素ガス気流下60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。次いで、これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。エチレンジアミンおよびジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温で添加して、粘度4,800ポイズ(25℃)のポリウレタン重合体溶液を得た。
このポリウレタン重合体溶液に、ポリウレタン固形分に対して、p−クレゾールとジシクロペンタジエンの重付加体のイソブチレン付加物を1.0重量%、Sumilizer GA−80(住友化学社製)を1.8重量%、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(2−フェニルプロパン−2−イル)フェノールを0.2重量%、ハイドロタルサイトを0.5重量%混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。この紡糸原液を紡糸速度800m/分および熱風温度325℃で乾式紡糸して、310dtex/36フィラメント(PU5とする)の繊維を製造した。
【0044】
[実施例1]
28ゲージのラッセル経編機を使用し、ナイロン44dtex/34fをフロントに、PU3をバックに、PU4をミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。
[ラッセル編成条件]
ランナー長 フロント 1063mm/480コース
ミドル 115mm/480コース
バック 185mm/480コース
機上コース 69.8コース/インチ
組織 フロント筬 46/42/24/20/24/42
ミドル筬 66/22/44/00/44/22
バック筬 66/44/66/00/22/00
得られた編地を90℃温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃で仕上げセットを行って以下の表1に示す物性の編地を得た。
得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った。表1に示すように、着脱が容易であり、動作性も良く、快適感の良いボトム衣料が得られた。なお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0045】
[実施例2]
実施例1の編地を用い、ガードルを縫製した。この際、Lサイズについては、MサイズとLサイズの中間の大きさ、MサイズについてはSサイズとMサイズの中間の大きさのようにそれぞれのサイズにおいて、ハーフサイズ小さいものを各サイズにおいて作製した。着用については、それぞれ、Sサイズのハーフサイズ小さく縫製したものはSサイズの被験者に、Mサイズのハーフサイズ小さく縫製したものはMサイズの被験者に、Lサイズのハーフサイズ小さく縫製したものはLサイズの被験者に対応したガードルの着用を行った。
結果を以下の表1に示す。
ボトム衣料を通常の各体型に適応したサイズより、小さく縫製したことにより、上記に動作性、快適性を損なうことなくさらに、動作時の筋疲労の軽減及び動作再現性の向上が見られた。なお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0046】
[実施例3]
28ゲージのラッセル経編機を使用し、ナイロン44dtex/34fをフロントに、PU3をバックに、PU4をミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。
[ラッセル編成条件]
ランナー長 フロント 1165mm/480コース
ミドル 125mm/480コース
バック 204mm/480コース
機上コース 66.3コース/インチ
組織 フロント筬 46/42/24/20/24/42
ミドル筬 66/22/44/00/44/22
バック筬 66/44/66/00/22/00
得られた編地を90℃温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃で仕上げセットを行って以下の表1に示す物性の編地を得た。
得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った。以下の表1に示すように、着脱が容易であり、動作性も良く、快適感の良いボトム衣料が得られた。なお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0047】
[実施例4]
28ゲージのラッセル経編機を使用し、ナイロン44dtex/34fをフロントに、PU3をバックに、PU4をミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。
[ラッセル編成条件]
ランナー長 フロント 970mm/480コース
ミドル 104mm/480コース
バック 170mm/480コース
機上コース 73.3コース/インチ
組織 フロント筬 46/42/24/20/24/42
ミドル筬 66/22/44/00/44/22
バック筬 66/44/66/00/22/00
得られた編地を90℃温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃で仕上げセットを行って以下の表1に示す物性の編地を得た。
得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った。以下の表1に示すように、着脱が容易であり、動作性も良く、快適感の良いボトム衣料が得られた。なお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0048】
[実施例5]
28ゲージのラッセル経編機を使用し、ナイロン44dtex/34fをフロントに、PU3をバックに、PU2をミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。
[ラッセル編成条件]
ランナー長 フロント 1063mm/480コース
ミドル 115mm/480コース
バック 185mm/480コース
機上コース 69.8コース/インチ
組織 フロント筬 46/42/24/20/24/42
ミドル筬 66/22/44/00/44/22
バック筬 66/44/66/00/22/00
得られた編地を90℃温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃で仕上げセットを行って以下の表1に示す物性の編地を得た。
得られた編地は、生地伸長荷重の平均値Aが145cNであり、Bが955cNであった。
得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った。結果を表1に示す。着脱が容易であり、動作性も良く、快適感の良いボトム衣料が得られたが、実施例1の編地に比べると、やや効果が弱かった。なお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0049】
[実施例6]
28ゲージのラッセル経編機を使用し、ナイロン44dtex/34fをフロントに、PU5をバックに、PU4をミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。
[ラッセル編成条件]
ランナー長 フロント 1063mm/480コース
ミドル 115mm/480コース
バック 185mm/480コース
機上コース 69.8コース/インチ
組織 フロント筬 46/42/24/20/24/42
ミドル筬 66/22/44/00/44/22
バック筬 66/44/66/00/22/00
得られた編地を90℃温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃で仕上げセットを行って以下の表1に示す物性の編地を得た。
得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った結果、比較的着脱が容易であり、動作性も良く、快適感の良いボトム衣料が得られたが、実施例1の編地に比べると、動作性における効果が弱かった。なお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0050】
[実施例7]
28ゲージのラッセル経編機を使用し、ナイロン44dtex/34fをフロントに、PU5をバックに、PU2をミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。
[ラッセル編成条件]
ランナー長 フロント 1063mm/480コース
ミドル 115mm/480コース
バック 185mm/480コース
機上コース 69.8コース/インチ
組織 フロント筬 46/42/24/20/24/42
ミドル筬 66/22/44/00/44/22
バック筬 66/44/66/00/22/00
得られた編地を90℃温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃で仕上げセットを行って表1に示す物性の編地を得た。
得られた編地は、生地伸長荷重の平均値Aが146cNであり、Bが920cNであった。
得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った結果、比較的着脱が容易であり、動作性も良く、快適感の良いボトム衣料が得られたが、実施例1の編地に比べると、着脱性における効果が弱かった。なお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0051】
[実施例8]
28ゲージのラッセル経編機を使用し、ナイロン44dtex/34fをフロントに、PU3をバックに、PU4をミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。
[ラッセル編成条件]
ランナー長 フロント 1115mm/480コース
ミドル 115mm/480コース
バック 185mm/480コース
機上コース 69.8コース/インチ
組織 フロント筬 24/42/24/20/02/20
ミドル筬 66/22/44/00/44/22
バック筬 66/44/66/00/22/00
得られた編地を90℃温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃で仕上げセットを行って表1に示す物性の編地を得た。得られた編地は、生地伸長荷重の平均値Aが146cNであり、Bが975cNであった。
得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った結果、比較的着脱が容易であり、動作性も良く、快適感の良いボトム衣料が得られたが、実施例1の編地に比べると、動作性・着脱性における効果が弱かった。なお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0052】
[比較例1]
28ゲージのラッセル経編機を使用し、ナイロン44dtex/34fをフロントに、PU1をバックにPU2をミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。
[ラッセル編成条件]
ランナー長 フロント 1063mm/480コース
ミドル 115mm/480コース
バック 185mm/480コース
機上コース 69.8コース/インチ
組織 フロント筬 46/42/24/20/24/42
ミドル筬 66/22/44/00/44/22
バック筬 66/44/66/00/22/00
得られた編地を90℃温水中でリラックスし、190℃でプレセット後、染色を95℃で30分行い、170℃で仕上げセットを行って以下の表1に示す物性の編地を得た。
得られた編地は、生地伸長荷重の平均値Aが145cNであり、Bが1158cNであった。得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った結果、着脱性、動作性、快適性において良好な結果が得られなかった。大きな動作時に、伸長荷重の平均値が1000cN以上となったため、動作時において、ツッパリ感が出てしまい、動作性が悪く、不快感に繋がったものと考えられる。なお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0053】
[比較例2]
28ゲージのラッセル経編機を使用し、ナイロン44dtex/34fをフロントに、PU1をバックにPU2をミドルに配置し、下記条件にてラッセル編地を編成した。
[ラッセル編成条件]
ランナー長 フロント 1165mm/480コース
ミドル 125mm/480コース
バック 204mm/480コース
機上コース 66.3コース/インチ
組織 フロント筬 46/42/24/20/24/42
ミドル筬 66/22/44/00/44/22
バック筬 66/44/66/00/22/00
得られた編地の性能を評価し、結果を以下の表1に示す。得られた編地は、生地伸長荷重の平均値Aが47cNであり、Bが852cNであった。得られた編地を用いて、ガードルを縫製し、着用テストを行った結果、着脱性、動作性、快適性において良好な結果が得られなかった。編地のツッパリはないものの、動作時における編地のたるみ等により、編地の追随性が不足し、不快感に繋がったものと考えられるなお、ガードル作製時は、Y軸方向を身体の高さ方向、X軸方向を身体の横方向になるように編地を配置した。
【0054】
[比較例3]
実施例1における編地を用いて、ガードル作製時に、X軸方向を身体の高さ方向、Y軸方向を身体の横方向になるように編地を配置し、ガードルを作製した。
着用テストを行った結果、着脱性、動作性、快適性において良好な結果が得られなかった。
【0055】
なお、実施例1、3〜7、比較例1、2、3におけるガードルの作製においては、弾性編地を用い、S、M、Lのレディース用マネキンにフィットするように、ガードルを縫製した。着用については、それぞれ、SはSサイズの被験者に、MはMサイズの被験者に、LはLサイズの被験者に対応したガードルの着用を行った。
【0056】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の弾性編地を使用することで、体型補整の効果を十分に得ながら、着脱が容易でかつ、動作性及び編地の動作追随性が良く、長時間着用においてもストレスを感じにくい着用感の優れた快適なボトム衣料を得ることができる。