特許第6235225号(P6235225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235225
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20171113BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20171113BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A61K8/27
   A61K8/34
   A61K8/365
   A61K8/55
   A61K8/33
   A61Q19/00
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-81030(P2013-81030)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-141446(P2014-141446A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-289107(P2012-289107)
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 恵理子
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−169427(JP,A)
【文献】 特開2004−203807(JP,A)
【文献】 特開2003−226630(JP,A)
【文献】 特開2008−115100(JP,A)
【文献】 特開平03−072411(JP,A)
【文献】 特公昭48−026226(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K31/00−31/327
A61K31/33−33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ヒドロキシカルボン酸で表面処理した酸化亜鉛又はヒドロキシカルボン酸亜鉛塩 0.001〜0.9質量%、
(B)IOB1.3〜3.5の2価アルコール、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート及びエチルカルビトールから選ばれる1種又は2種以上 0.5〜30質量%、
(C)水 40〜99.4質量%
を含有し、油性成分の含有量が0〜15質量%であり、且つエタノールの含有量が0〜4質量%である化粧料の製造方法であって、成分(A)及び成分(B)の一部又は全部を含有し且つ成分(A)及び(B)以外の成分の含有量が0〜20質量%である混合物1を70℃以上で加熱混合する工程1と、成分(C)を含む残りの成分と混合物1とを混合する工程2とを備える化粧料の製造方法。
【請求項2】
化粧料が、pH3〜7である請求項1記載の化粧料の製造方法。
【請求項3】
成分(A)が、一般式(1)
【化1】
(式中、p及びqは、p=0〜2、q=5〜11及びp+q=7〜11を満たす数を示す)
で表されるヒドロキシカルボン酸亜鉛塩である請求項1又は2記載の化粧料の製造方法。
【請求項4】
化粧料中、成分(A)及び(B)の質量割合が、(A)/(B)=0.0001〜0.5である請求項1〜3のいずれか1項記載の化粧料の製造方法。
【請求項5】
化粧料の外観が、透明または半透明である請求項1〜のいずれか1項記載の化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシカルボン酸亜鉛は、皮脂分泌抑制効果が高いため、ニキビの予防改善、毛穴目立ちの改善などを目的とする化粧料に用いられている(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−169427号公報
【特許文献2】特開2001−19629号公報
【特許文献3】特開2001−19630号公報
【特許文献4】特開2004−203807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヒドロキシカルボン酸亜鉛は、水への溶解性が悪いため、溶解させるのに長時間を有し、化粧料などを効率良く製造することができないという課題があった。
特許文献1〜3では、ヒドロキシカルボン酸亜鉛をエタノールとともに配合し、溶解させている。しかしながら、肌が敏感な女性にとっては、エタノールが含有されている化粧品を使用すると刺激に感じる人や匂いを気にする人もいるため、エタノールの含有量はできるだけ少なくすることが望まれる。
また、特許文献4では、水への溶解性が悪いため、ヒドロキシカルボン酸亜鉛を油相に分散させて配合している。しかしながら、このような方法では、化粧料中に十分な油相が必要となり、組成が制限されてしまう。
本発明は、ヒドロキシカルボン酸亜鉛を容易に溶解させることができ、エタノール含有量を少なくし、油相の量に依存せず、時間をかけずに化粧料を製造する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ヒドロキシカルボン酸亜鉛を特定の2価アルコール等に加え、加熱撹拌すれば、ヒドロキシカルボン酸亜鉛を短時間で容易に溶解させることができ、これを含有する化粧料を簡便に製造できることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ヒドロキシカルボン酸で表面処理した酸化亜鉛又はヒドロキシカルボン酸亜鉛塩 0.001〜0.9質量%、
(B)IOB1.3〜3.5の2価アルコール、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート及びエチルカルビトールから選ばれる1種又は2種以上 0.5〜30質量%、
(C)水
を含有し、成分(A)及び成分(B)の一部又は全部を含有する混合物1を70℃以上で加熱混合する工程1と、成分(C)を含む残りの成分と混合物1とを混合する工程2とを備える化粧料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヒドロキシカルボン酸亜鉛を容易に溶解させることができ、油相の量に依存せず、エタノールの含有量を少なくし、ヒドロキシカルボン酸亜鉛を含有する化粧料を、時間をかけずに簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)のうち、ヒドロキシカルボン酸で表面処理した酸化亜鉛において、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、酒石酸等のα−ヒドロキシ酸;サリチル酸等のヒドロキシ安息香酸;リシノール酸、10−ヒドロキシデセン酸等のほか、一般式(2)
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R1 は1又は2以上のヒドロキシル基で置換された炭素数1〜8のアルキル基を示し、nは1〜18、好ましくは7〜10の数を示す)で表わされ、総炭素数が6〜20、より好ましくは総炭素数6〜18のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0011】
一般式(2)で表わされるヒドロキシカルボン酸としては、末端(ω位)又は末端から6個目までの炭素原子にヒドロキシル基が置換したカルボン酸が好ましく、6−ヒドロキシヘキサン酸、7−ヒドロキシオクタン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、8−ヒドロキシノナン酸、9−ヒドロキシノナン酸、10−ヒドロキシデカン酸、10,11−ジヒドロキシウンデカン酸、8−ヒドロキシウンデカン酸、9−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシ−10−メチルウンデカン酸、11−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシドデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、13−ヒドロキシトリデカン酸、14−ヒドロキシテトラデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が好ましい。
【0012】
一方、表面処理される酸化亜鉛は、通常の化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、使用できる。
【0013】
酸化亜鉛をヒドロキシカルボン酸で表面処理するには、湿式法、乾式法、スプレードライ法等により、常法に従って行うことができる。例えば、湿式法の場合、ヒドロキシカルボン酸をエタノールに溶解した溶液に、酸化亜鉛を分散、混合し、沈殿物を回収して得ることができる。酸化亜鉛がヒドロキシカルボン酸で表面処理されていることは、赤外吸収スペクトルにて確認することができる。
【0014】
用いる酸化亜鉛とヒドロキシカルボン酸の割合は、モル比で2:1〜1:5であるのが好ましく、2:1〜1:2であるのがより好ましい。
【0015】
また、成分(A)のうち、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩に用いられるヒドロキシカルボン酸としては、前述のヒドロキシカルボン酸で表面処理した酸化亜鉛に用いられるヒドロキシカルボン酸から選ばれる1種又は2種を用いることができ、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩としては、一般式(1)で示されるものが好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、p及びqは、p=0〜2、q=5〜11及びp+q=7〜11を満たす数を示す)
このうち、ヒドロキシカルボン酸特有の匂いがより少なく、また皮脂分泌抑制効果を高める点で、p=0でq=7〜11のもの、p=1でq=6〜10のもの、p=2でq=5〜9のものがさらに好ましく、p=0でq=8のもの、p=1でq=7のもの、及びp=2でq=6のものがよりさらに好ましい。
【0018】
ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩(1)は、例えば、対応するヒドロキシカルボン酸と酸化亜鉛を水の存在下で反応させ、析出沈殿物を採取することにより得ることができる。また、化粧料を製造する際に、対応するヒドロキシカルボン酸と酸化亜鉛を同時に配合して配合槽内で反応させ、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩(1)とすることもできる。
【0019】
ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩(1)としては、匂いの低減及び皮脂分泌抑制効果向上の観点から、下記のヒドロキシカルボン酸亜鉛塩(1a)、(1b)及び(1c)をそれぞれ1種以上配合したものが好ましく、(1a):(1b):(1c)=60〜95:4〜35:1〜10(モル比、以下同じ)で配合したものがより好ましく、70〜85:10〜25:2〜8で配合したものがさらに好ましい。
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、q1=7〜11の数、q2=6〜10の数、q3=5〜9の数を示す)
ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩(1a)、(1b)及び(1c)をそれぞれ1種以上配合する場合、これらの亜鉛塩を別個に入手して配合してもよいが、製造効率の観点から、これらの亜鉛塩を製造の過程で混合物として得られたものを、そのまま配合することが好ましい。
【0022】
成分(A)としては、入手のしやすさの点から、ヒドロキシカルボン酸と酸化亜鉛を反応させた、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩が好ましく、においが少ない点から、8−ヒドロキシウンデカン酸、9−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシウンデカン酸と酸化亜鉛を反応させた、8−ヒドロキシウンデカン酸亜鉛塩、9−ヒドロキシウンデカン酸亜鉛塩、10−ヒドロキシウンデカン酸亜鉛塩がより好ましく、10−ヒドロキシウンデカン酸亜鉛塩がさらに好ましい。
【0023】
成分(A)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、十分な皮脂抑制効果が得られるとともに、安定性に優れる点から、化粧料中の含有量は、0.001質量%以上であり、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.9質量%以下であり、0.5質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。また、成分(A)の含有量は、化粧料中に0.001〜0.9質量%であり、0.005〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.15質量%がより好ましい。
【0024】
成分(B)は、IOBが1.3〜3.5、好ましくは1.6〜3.4、より好ましくは1.8〜2.6の2価アルコール、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート及びエチルカルビトールから選ばれる1種又は2種以上である。このIOBの範囲内であることにより、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩と70℃以上で加熱攪拌すると、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩を分散しやすくし、さらに水相などを添加して化粧料を製造する場合に、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩の析出を防ぎ、安定な化粧料を製造することができる。
ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、化合物の有機値に対する化合物の無機値の比に対応する値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標である。
本発明においては、小田、寺村らによる次式を用いて算出している。なお、無機性値及び有機性値は有機概念図(藤田穆、有機化合物の予測と有機概念図、化学の領域 Vol.11,No.10(1957)p.719−725)に基づき、求められる。
IOB値=無機性値/有機性値
【0025】
また、成分(B)としては、水への溶解性の点から、分子量70〜1000のものが好ましく、70〜500がより好ましく、75〜200がさらに好ましい。
【0026】
成分(B)としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート、エチルカルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)等が挙げられる。
これらのうち、安定性の観点から、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコールが好ましく、成分(A)の溶解性をより高める点から、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコールがより好ましい。
【0027】
成分(B)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、成分(A)の溶解性に優れる点から、化粧料中の含有量は、0.5質量%以上であり、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、30質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、成分(B)の含有量は、化粧料中に0.5〜30質量%であり、1〜15質量%が好ましく、1.5〜10質量%がより好ましい。
【0028】
本発明において、成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)は、成分(B)への成分(A)の溶解性を高める点から、0.0001以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.01以上が更に好ましく、0.5以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が更に好ましい。また、成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)は、0.0001〜0.5であるのが好ましく、0.001〜0.1がより好ましく、0.01〜0.05がさらに好ましい。
【0029】
本発明において、成分(C)水は、各成分の残部をなし、含有量は、全組成中に1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、99.4質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、97質量%以下がさらに好ましい。また、成分(C)の含有量は、全組成中に1〜99.4質量%が好ましく、5〜99質量%がより好ましく、40〜97質量%が更に好ましい。
【0030】
本発明で製造する化粧料は、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、油性成分、非イオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、高分子、粉体、保湿剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、塩類、パール化剤、香料、冷感剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、植物エキス等を含有することができる。
【0031】
本発明の化粧料に用いる油性成分としては、セラミド、炭化水素油、エステル油、シリコーン油などが挙げられ、保湿効果の点からセラミドが好ましく、また、塗布時ののばしやすさの点から、25℃で液状のシリコーン油が好ましく、粘度50mPa・s以下の直鎖のシリコーン油がさらに好ましい。
これらの油性成分は、1種又は2種以上を組合せて用いることができ、含有量は、保湿効果の点から、0.1質量%以上含有することができ、塗布時のさっぱりした感触の点から、15質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明の化粧料に用いる非イオン性界面活性剤としては、安定性の点から、HLB8以上の親水性非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられ、安定性の点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。
非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を組合せて用いることができ、含有量は、安定性の点から、0.1質量%以上含有することができ、肌へのマイルド性の点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
本発明の化粧料に用いるアニオン界面活性剤としては、N−アシルタウリン塩などが挙げられ、安定性の点から、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムが好ましい。
アニオン界面活性剤は、1種または2種以上を組合せて用いることができ、含有量は、安定性の点から、0.1質量%以上含有することができ、肌へのマイルド性の点から、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましく、0.3質量%以下がよりさらに好ましい。
【0034】
化粧料中、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤の合計含有量は、安定性と肌へのマイルド性の点から、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましく、配合しないことがよりさらに好ましい。
また、化粧料中、エタノールの含有量は、肌へのマイルド性や、使用時に気になる匂いを抑制する点から、4質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましく、配合しないことがよりさらに好ましい。
【0035】
本発明の化粧料に用いる高分子としては、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体などが挙げられ、化粧料にとろみをだして塗布しやすくする点と安定性の点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が好ましい。
高分子は、1種又は2種以上を組合せて用いることができ、含有量は、安定性の点から、化粧料中0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、塗布時ののばしやすさの点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
本発明においては、まず、成分(A)を、成分(B)の全部または一部と、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、好ましくは98℃以下、より好ましくは95℃以下で加熱撹拌して溶解させる。ここで、溶解とは、肉眼で凝集物や沈殿が観察されない状態であり、具体的には、成分(A)と成分(B)の混合液を分散させた後、1分以内にガラス製のスクリュー管(マルエム製、No.4)に約5mL移し、そのスクリュー管を立てて横から見て、スクリュー管の反対側に印刷物の文字を置き、スクリュー管を通してその文字を読める状態を言う。このように、加熱撹拌することにより、成分(A)を化粧料中に効率良く配合することができる。
本発明の製造方法は、成分(A)及び成分(B)の一部又は全部を含有する混合物1を70℃で加熱混合する工程1と、成分(C)を含む残りの成分と混合物1とを混合する工程2とを備え、化粧料を得るものである。本発明においては、成分(A)及び成分(B)の一部又は全部以外の、成分(C)を含む残りの成分を含有する混合物2を加熱攪拌した後、30℃以下まで冷却する工程3を備え、その後、混合物2に成分(A)及び成分(B)の一部又は全部を含有する混合物1を添加しながら撹拌する工程4を備えることが好ましい。なお、混合物2は、乳化物であってもよい。
また、混合物1には、成分(A)及び成分(B)以外の成分を混合物1中に20質量%以下含んでも良く、10質量%以下が好ましく、含まないことがさらに好ましい。
【0037】
本発明で得られる化粧料は、成分(A)の溶解性を高める点、肌へのマイルド性の点から、pH3〜7であるのが好ましく、pH3.5〜6がより好ましく、pH4〜5.5がさらに好ましい。肌のpHは、文献によると、pH4.5〜6.5(Cosmetics&Toiletries magazine 2008, Val 123, 61-70.)との報告例があり、肌のpHを変化させないことが肌に対してマイルドと考えられる。そのため、肌に塗布する化粧料は、肌のpHと近いものが好ましく、さらに化粧料を塗布した際に肌のpHを変動させないものが好ましい。
なお、pHは、pHメーター(HORIBA、pH METER F−52)を用いて、化粧料原液を測定するものである。
【0038】
pHは、通常の方法により、無機酸、有機酸、高分子の酸、塩基等を用いて、調整することができる。
無機酸として、塩酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、硝酸等が挙げられ、有機酸として、クエン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、リンゴ酸、シュウ酸、乳酸、ホウ酸、アジピン酸等が挙げられ、高分子の酸として、カルボキシル基または、スルホ基を有する高分子等が挙げられ、塩基として、アルギニン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等が挙げられる。なお、高分子の酸としては、前記記載の高分子中のカルボキシル基を含むものであってもよく、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。これらの中で肌へのやさしさから、クエン酸、コハク酸、L−アルギニンが好ましい。
無機酸、有機酸、高分子の酸、塩基は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、含有量は、全組成中に0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.7質量%がより好ましく、0.08〜0.4質量%がさらに好ましい。
【0039】
本発明で得られる化粧料は、外観が、透明または半透明であることが好ましい。
透明または半透明とは、化粧料をガラス製のスクリュー管(マルエム製、No.4)に約5mL入れ、そのスクリュー管を立てて横から見て、スクリュー管の反対側に印刷物の文字を置き、スクリュー管を通してその文字を読める状態を言う。
【0040】
本発明により得られる化粧料としては、例えば、化粧水、美容液、乳液、ジェル、パック剤、ファンデーション、洗顔料、クレンジング剤等が挙げられ、化粧水、美容液がより好適である。
上述した実施形態に関し、本発明は、更に以下の組成物を開示する。
【0041】
<1>(A)ヒドロキシカルボン酸で表面処理した酸化亜鉛又はヒドロキシカルボン酸亜鉛塩 0.001〜0.9質量%、
(B)IOB1.3〜3.5の2価アルコール、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート及びエチルカルビトールから選ばれる1種又は2種以上 0.5〜30質量%、
(C)水
を含有する化粧料の製造方法であって、成分(A)及び成分(B)の一部又は全部を含有する混合物1を70℃以上で加熱混合する工程1と、成分(C)を含む残りの成分と混合物1とを混合する工程2とを備える化粧料の製造方法。
【0042】
<2>成分(A)及び(B)以外の残りの成分を含有する混合物2を加熱攪拌した後、30℃以下まで冷却する工程3を備え、その後、混合物2に成分(A)及び成分(B)の一部又は全部を含有する混合物1を添加しながら撹拌する工程4を備えることが好ましい前記<1>記載の化粧料の製造方法。
<3>混合物2が乳化物である前記<2>記載の化粧料の製造方法。
<4>混合物1に、成分(A)及び成分(B)以外の成分を混合物1中に20質量%以下含んでも良く、10質量%以下が好ましく、含まないことがさらに好ましい前記<1>〜<3>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
【0043】
<5>化粧料の成分(A)のうち、ヒドロキシカルボン酸で表面処理した酸化亜鉛において、ヒドロキシカルボン酸は、グリコール酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、リシノール酸、10−ヒドロキシデセン酸が好ましい前記<1>〜<4>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
<6>化粧料の(A)のうち、ヒドロキシカルボン酸で表面処理した酸化亜鉛において、ヒドロキシカルボン酸は、一般式(2)
【0044】
【化4】
【0045】
(式中、R1 は1又は2以上のヒドロキシル基で置換された炭素数1〜8のアルキル基を示し、nは1〜18、好ましくは7〜10の数を示す)で表わされるものが好ましく、より好ましくは総炭素数が6〜20、さらに好ましくは総炭素数6〜18のヒドロキシカルボン酸である前記<1>〜<4>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
【0046】
<7>一般式(2)で表わされるヒドロキシカルボン酸は、末端(ω位)又は末端から6個目までの炭素原子にヒドロキシル基が置換したカルボン酸が好ましく、6−ヒドロキシヘキサン酸、7−ヒドロキシオクタン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、8−ヒドロキシノナン酸、9−ヒドロキシノナン酸、10−ヒドロキシデカン酸、10,11−ジヒドロキシウンデカン酸、8−ヒドロキシウンデカン酸、9−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシ−10−メチルウンデカン酸、11−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシドデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、13−ヒドロキシトリデカン酸、14−ヒドロキシテトラデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸がより好ましい前記<6>記載の化粧料の製造方法。
<8>化粧料の成分(A)のうち、ヒドロキシカルボン酸で表面処理した酸化亜鉛において、用いる酸化亜鉛とヒドロキシカルボン酸の割合は、モル比で2:1〜1:5であるのが好ましく、2:1〜1:2であるのがより好ましい前記<1>〜<7>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
【0047】
<9>化粧料の成分(A)のうち、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩に用いられるヒドロキシカルボン酸は、末端(ω位)又は末端から6個目までの炭素原子にヒドロキシル基が置換したカルボン酸が好ましく、6−ヒドロキシヘキサン酸、7−ヒドロキシオクタン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、8−ヒドロキシノナン酸、9−ヒドロキシノナン酸、10−ヒドロキシデカン酸、10,11−ジヒドロキシウンデカン酸、8−ヒドロキシウンデカン酸、9−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシ−10−メチルウンデカン酸、11−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシドデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、13−ヒドロキシトリデカン酸、14−ヒドロキシテトラデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸がより好ましい前記<1>〜<4>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
<10>化粧料の成分(A)のうち、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩は、一般式(1)
【0048】
【化5】
【0049】
(式中、p及びqは、p=0〜2、q=5〜11及びp+q=7〜11を満たす数を示す)で示されるものが好ましく、p=0でq=7〜11のもの、p=1でq=6〜10のもの、p=2でq=5〜9のものが好ましく、p=0でq=8のもの、p=1でq=7のもの、及びp=2でq=6のものがより好ましい前記<1>〜<4>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
<11>化粧料の成分(A)のうち、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩(1)としては、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩(1a)、(1b)及び(1c)
【0050】
【化6】
【0051】
(式中、q1=7〜11の数、q2=6〜10の数、q3=5〜9の数を示す)、
を、それぞれ1種以上配合したものが好ましく、(1a):(1b):(1c)=60〜95:4〜35:1〜10(モル比)で配合したものがより好ましく、70〜85:10〜25:2〜8(モル比)で配合したものがさらに好ましい前記<10>記載の化粧料の製造方法。
<12>化粧料中、成分(A)としては、ヒドロキシカルボン酸と酸化亜鉛を反応させた、ヒドロキシカルボン酸亜鉛塩が好ましく、8−ヒドロキシウンデカン酸、9−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシウンデカン酸と酸化亜鉛を反応させた、8−ヒドロキシウンデカン酸亜鉛塩、9−ヒドロキシウンデカン酸亜鉛塩、10−ヒドロキシウンデカン酸亜鉛塩がより好ましく、10−ヒドロキシウンデカン酸亜鉛塩がさらに好ましい前記<1>〜<4>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
【0052】
<13>化粧料中、成分(A)の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましく、0.9質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下がさらに好ましく、成分(A)の含有量は、化粧料中0.001〜0.9質量%が好ましく、0.005〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.15質量%がさらに好ましい前記<1>〜<12>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
<14>化粧料中、成分(B)は、IOB1.6〜3.4が好ましく、IOB1.8〜2.6がより好ましい前記<1>〜<13>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
<15>化粧料中、成分(B)は、分子量70〜1000のものが好ましく、70〜500がより好ましく、75〜200がさらに好ましい前記<1>〜<14>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
【0053】
<16>化粧料中、成分(B)は、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート、エチルカルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)が好ましい前記<1>〜<15>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
<17>化粧料中、成分(B)の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、成分(B)の含有量は、化粧料中0.5〜30質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1.5〜10質量%さらに好ましい前記<1>〜<16>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
【0054】
<18>化粧料中、成分(A)及び(B)の質量割合が、(A)/(B)=0.0001〜0.5が好ましく、0.001〜0.1がより好ましく、0.01〜0.05がさらに好ましい前記<1>〜<17>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
<19>化粧料中、成分(C)水の含有量は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、99.4質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、97質量%以下がさらに好ましい前記<1>〜<18>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
<20>成分(A)を、成分(B)の全部または一部と、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、好ましくは98℃以下、より好ましくは95℃以下で加熱撹拌して溶解させる前記<1>〜<19>のいずれか1記載の化粧料の製造方法。
<21>化粧料は、pH3〜7が好ましく、pH3.5〜6がより好ましく、pH4〜5.5がさらに好ましい前記<1>〜<20>記載の化粧料の製造方法。
【実施例】
【0055】
実施例1〜13、比較例1〜4
表1〜表3に示す組成の化粧料を製造し、pHを測定するとともに、溶解性を評価した。また、実施例1及び13については、化粧料塗布前の肌のpHと塗布後のpHの変化を評価した。結果を表1〜表3に併せて示す。
【0056】
(製造方法)
成分(A)と成分(B)を90℃で加熱攪拌した後、成分(C)の水を含む室温の水相に添加し、さらに10分間攪拌して、化粧料を得た。なお、比較例1の加熱をしない場合は、成分(A)と成分(B)を加熱せず、室温で攪拌した後、室温の水相に添加し、10分間攪拌した。
【0057】
(評価方法)
(1)pH測定:
得られた化粧料の原液を、pHメーター(HORIBA、pH METER F−52、電極;スタンダードToupH電極 9615−10D)を用いて、25℃で測定した。
【0058】
(2)溶解性(成分(A)と(B)の溶解性):
成分(A)と成分(B)を、マルエム社製、スクリュー管(No.4)に、全量で約5mLになるように計量し、マグネチックスターラー(ADVANTEC マグネチックスターラー SR-500)で攪拌しながら90℃で加熱した。その後、得られた混合液の外観を、目視により観察し、以下の基準で評価した。なお、溶解した状態とは、肉眼で凝集物や沈殿が観察されない状態であり、混合液を入れたスクリュー管を立てて反対側に印刷物の文字を置き、スクリュー管を通してその文字を読める状態を言う。
○:均一に溶解している。
×:凝集物がある、または分離している。
【0059】
(3)溶解性(化粧料中での成分(A)の溶解性):
得られた化粧料の外観を、室温で1時間放置後、目視により観察し、以下の基準で評価した。なお、溶解した状態は、(2)の記載と同様である。
○:均一に溶解している。
×:凝集物がある。または分離している。
【0060】
(4)化粧料塗布前の肌のpHと塗布後のpHの変化(絶対値):
pHメーター(HORIBA、pH METER F−52、電極;フラット形pH複合電極 6261−10C)を用い、腕の内側の肌のpHを測定する(pH−a)。次にpHを測定した肌の部位に化粧料を約0.1g塗布する。その後、3分間経過後、肌のpHを測定する(pH−b)。pH−aとpH−bからpHの変化ΔpHを計算する。ΔpHが小さいほうが、pH変化が小さいため肌にマイルドである。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
実施例14(化粧水)
表4に示す組成の化粧水を製造した。
【0065】
(製造方法)
成分(3)〜(12)及び(15)を80℃で加熱混合して溶解し、室温まで冷却して水相を調製する。成分(1)と成分(2)を90℃で加熱攪拌した状態でゆっくり水相に添加する。さらに、成分(13)及び(14)を加えて攪拌し、化粧水を得た。
【0066】
【表4】
【0067】
実施例15(美容液)
表5に示す組成の美容液を製造した。
【0068】
(製造方法)
成分(3)〜(5)を加熱混合して溶解した後、あらかじめ加熱溶解させた成分(6)、(7)及び(17)の一部を添加し、室温まで冷却する。そこに、均一に混合した成分(8)〜(11)を添加し、あらかじめ成分(17)の一部に溶解した成分(12)を加えて攪拌する。成分(1)と成分(2)を90℃で加熱攪拌した状態でゆっくり添加する。成分(13)〜(16)を加えて攪拌し、美容液を得た。
【0069】
【表5】
【0070】
実施例14及び15においてはいずれも、ヒドロキシカルボン酸亜鉛を容易に溶解させることができ、時間をかけずに化粧料を製造することができた。