特許第6235230号(P6235230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235230
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】立体印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/124 20170101AFI20171113BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20171113BHJP
   G02B 3/00 20060101ALN20171113BHJP
   G02B 3/06 20060101ALN20171113BHJP
   G02B 3/08 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   B29C64/124
   B29C64/264
   !G02B3/00 A
   !G02B3/06
   !G02B3/08
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-91901(P2013-91901)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-233803(P2013-233803A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2013年4月25日
【審判番号】不服2015-13169(P2015-13169/J1)
【審判請求日】2015年7月10日
(31)【優先権主張番号】101115784
(32)【優先日】2012年5月3日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】503133874
【氏名又は名称】揚明光學股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 立涵
(72)【発明者】
【氏名】徐 新翰
【合議体】
【審判長】 小柳 健悟
【審判官】 渕野 留香
【審判官】 橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−508690(JP,A)
【文献】 特開2004−223774(JP,A)
【文献】 国際公開第01/005575(WO,A1)
【文献】 特開平3−275337(JP,A)
【文献】 特開2009−166447(JP,A)
【文献】 米国特許第6500378(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0262272(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C67/00,G02B3/00,G03F1/00,G02F1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体印刷装置であって、
底部を有し、且つ前記底部が感光材料に面する上表面を有し、前記感光材料を収納する容器と、
複数の表示ユニットを有し、前記各表示ユニットが光束を発し、前記容器の前記上表面までの距離が3センチメートル以下である表示器と、
前記表示器に接続され、前記表示器の前記複数の表示ユニットを制御する制御ユニットと、
前記表示器と前記容器との間に設置され、前記複数の表示ユニットの各々が発した光束を前記感光材料に投射し、前記複数の表示ユニットの各々が発した光束により前記感光材料に1つの投射パターンを形成する光学フィルムと、を含み、
前記複数の表示ユニットの各々が発した光束により形成される前記1つの投射パターンからなる複数の投射パターンは、互いの間の配列順序及び配列方向が前記複数の表示ユニットの配列順序及び配列方向と同じである、立体印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の立体印刷装置であって、
前記底部は、前記表示器と前記感光材料との間に配置され、且つ前記底部は、透光性底部である、立体印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の立体印刷装置であって、
前記感光材料の中に浸入し、且つ前記容器に対して移動する工作平台であって、前記工作平台は工作表面を有する、工作平台を更に含み、
前記制御ユニットは、前記工作平台を制御し、前記制御ユニットは、第一時間に、前記表示器が第一画面を表示するように命令し、且つ前記工作表面が第一位置に位置するようにさせ、前記光学フィルムは、前記第一画面に対応する前記複数の表示ユニットが発した前記複数の光束を、前記工作表面と前記上表面との間に位置する前記感光材料の第一感光材料薄層に投射し、前記第一感光材料薄層を第一固化層として固化させ、且つ前記制御ユニットは、第二時間に、前記表示器が第二画面を表示するように命令し、且つ前記工作表面が第二位置に位置するようにさせ、前記光学フィルムは、前記第二画面に対応する前記複数の表示ユニットが発した前記複数の光束を、前記第一固化層と前記上表面との間に位置する前記感光材料の第二感光材料薄層に投射し、前記第二感光材料薄層を第二固化層として固化させる、立体印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の立体印刷装置であって、
前記工作表面は、前記底部に面し、前記第二固化層は、前記第一固化層と前記底部との間に位置し、且つ前記第一位置は、前記底部と前記第二位置との間に位置する、立体印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載の立体印刷装置であって、
前記光学フィルムは、複数の光学構造を含み、且つ前記各光学構造は、少なくとも一つの前記表示ユニットにピントを合わせる、立体印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の立体印刷装置であって、
前記各光学構造は、レンズであり、且つ前記各レンズは、前記各表示ユニットにピントを合わせる立体印刷装置。
【請求項7】
請求項5に記載の立体印刷装置であって、
前記各光学構造は、柱状レンズであり、且つ前記各柱状レンズは、一列の前記複数の表示ユニットにピントを合わせる、立体印刷装置。
【請求項8】
請求項5に記載の立体印刷装置であって、
前記複数の光学構造は、前記複数の表示ユニットからの前記複数の光束を前記感光材料に結像する、立体印刷装置。
【請求項9】
請求項5に記載の立体印刷装置であって、
前記各表示ユニットは、少なくとも一つのピクセルを含む、立体印刷装置。
【請求項10】
請求項9に記載の立体印刷装置であって、
前記各光学構造のサイズは、該光学構造のピントが合わせられる前記表示ユニットの前記ピクセルのサイズの整数倍である、立体印刷装置。
【請求項11】
請求項1に記載の立体印刷装置であって、
前記光学フィルムは、複数の光学構造を含み、且つ前記各表示ユニットは、前記複数の光学構造のピントが合わせられる、立体印刷装置。
【請求項12】
請求項11に記載の立体印刷装置であって、
前記各表示ユニットのサイズは、該表示ユニットにピントが合わせられる前記光学構造のサイズの整数倍である、立体印刷装置。
【請求項13】
請求項1に記載の立体印刷装置であって、
前記光学フィルムは、複数の光学構造を含み、且つ前記各光学構造は、角錐状プリズム又は柱状プリズムである、立体印刷装置。
【請求項14】
請求項1に記載の立体印刷装置であって、
前記光学フィルムは、フレネルレンズ、拡散フィルム、又は覗き見防止用フィルムである、立体印刷装置。
【請求項15】
請求項1に記載の立体印刷装置であって、
前記複数の表示ユニットの各々が発した前記光束は、可視光である、立体印刷装置。
【請求項16】
請求項1に記載の立体印刷装置であって、
前記光学フィルムは、単層フィルム又は多層フィルムである、立体印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明、印刷装置(printing apparatus)に関し、特に、立体印刷装置(three-dimensional printing apparatus;「3D印刷装置」とも称される)に関する。
【背景技術】
【0002】
ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping、RP)技術は、80年代中期から発展してきた嶄新の原型製造技術である。ラピッドプロトタイピング技術は、機械製造技術、コンピュータ支援設計(Computer-aided design、CAD)、デジタル制御技術、レーザー技術、及び材料科学技術を総合し、設計思想を自動、直接、迅速、精確に一定の機能を有する原型に変換し又は部品を直接製造することができ、これにより、製品の設計に対して迅速な評価、修正、及び機能テストを行い、製品を開発し製造する周期を大幅に短縮することができる。それは、敏捷性、任意形状への適合性、高度の柔軟性、及び高度の集積化などの利点を有するので、機械、自動車、電子、通信、及び航空宇宙などの分野に幅広く応用されている。一般的には、製品開発の初期において、所要図面のCAD図面を設計し、実際の生産前に、設計の確認、製品の修正、機能のテスト、及び金型の開発などのために、模型を制作する。このようなオリジナルな模型は、原型と称される。
【0003】
異なる種類のラピッドプロトタイピング技術については、採用される成型材料が異なるにつれて、成形の原理及びシステムの特徴も異なる。例えば、ステレオリトグラフィ装置(stereo lithography apparatus、SLA)は、最初に商業化され且つ市場の占有率が最大であるシステムであり、その加工原理は、液体感光性ポリマーに対してヘリウムカドミウム(HeCd)レーザー又はアルゴン(Argon)レーザーでスキャンすることによって、重合硬化後の薄層を生成し、昇降台が降下して再び上昇することによって、加工する必要のある位置の表面に樹脂を再び覆い、スクレーパー(scraper)を用いて液面を平らにし、液面が水平になった後にレーザーで再びスキャンすることによって、その上の層と密に結合することができるようにさせ、このようにして、立体的な部品が現れるまで(形成されるまで)繰り返して処理を行うことである。また、今のところ、SLA技術を用いる結像システムは、大抵、レーザースキャンシステム又は光学投影システムであり、その構造が複雑であり、体積が大きく、且つ、レーザースキャンシステム又は光学投影システムが要する結像距離を含める必要もあるので、システムの総体積は小型化することができない。
【0004】
関連するラピッドプロトタイピング技術について言えば、米国特許第5980813号には、多層材料のラピッドプロトタイピング方法及び装置が開示されている。米国特許公開第20100262272号には、固化することができる材料を用いて3D物体を製造する装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、立体印刷装置を提供することにあり、この立体印刷装置の構造は、立体印刷装置の体積を縮小することに役に立つことができる。
【0006】
本発明の他の目的及び利点は、本発明に開示の技術的特徴から更なる理解を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例によれば、立体印刷装置が提供される。この立体印刷装置は、容器、表示器、制御ユニット、及び光学フィルムを含む。容器は、感光材料を収納する。表示器は、複数の表示ユニットを有し、各表示ユニットは、光束を発する。制御ユニットは、表示器に接続され、複数の表示ユニットを制御するために用いられる。光学フィルムは、表示器と容器との間に設けられ、複数の表示ユニットが発した光束を感光材料に投影し、複数の投影されたパターン(以下、「投影パターン」という)を生成するために用いられる。複数の投影パターンは、互いの間の配列順序及び配列方向が複数の表示ユニットの配列順序及び配列方向と実質的に同じである。
【0008】
本発明の一実施例では、上述の容器は、表示器と感光材料との間に配置される底部を有し、且つ、底部は、透光性底部であり、容器の底部は、感光材料に面する上表面を有する。
【0009】
本発明の一実施例では、上述の表示器から上表面までの距離が3センチメートル(cm)以下である。
【0010】
本発明の一実施例では、立体印刷装置は、工作平台及び制御ユニットを更に含む。工作平台は、感光材料の中に浸入し、且つ容器に対して移動し、そのうち、工作平台は、工作表面を有する。制御ユニットは、工作平台及び表示ユニットを制御する。制御ユニットは、第一時間に、表示ユニットが第一画面を表示するように命令し、且つ、工作表面が第一位置に位置するようにさせる。光学フィルムは、第一画面に対応する表示ユニットが発した光束を、工作表面と上表面との間に位置する感光材料の第一感光材料薄層に投影し、第一感光材料薄層を第一固化層として固化させる。制御ユニットは、第二時間に、表示ユニットが第二画面を表示するように命令し、且つ、工作表面が第二位置に位置するようにさせる。光学フィルムは、第二画面に対応する表示ユニットが発した光束を、第一固化層と上表面との間に位置する感光材料の第二感光材料薄層に投影し、第二感光材料薄層を第二固化層として固化させる。
【0011】
本発明の一実施例では、上述の工作表面は、底部に面し、第二固化層は、第一固化層と底部との間に位置し、且つ、第一位置は、底部と第二位置との間に位置する。
【0012】
本発明の一実施例では、上述の光学フィルムは、複数の光学構造を含み、且つ各光学構造は、少なくとも一つの表示ユニットにピントを合わせる。
【0013】
本発明の一実施例では、上述の各光学構造は、レンズであり、且つ各レンズは、一つの表示ユニットにピントを合わせる。
【0014】
本発明の一実施例では、上述の各光学構造は、柱状レンズであり、且つ各柱状レンズは、一列の表示ユニットにピントを合わせる。
【0015】
本発明の一実施例では、上述の光学構造は、表示ユニットからの光束を感光材料に結像する。
【0016】
本発明の一実施例では、上述の各表示ユニットは、少なくとも一つのピクセルを含む。
【0017】
本発明の一実施例では、上述の各光学構造のサイズは、対応する表示ユニットのピクセル(画素)のサイズの整数倍である。
【0018】
本発明の一実施例では、上述の光学フィルムは、複数の光学構造を含み、且つ各表示ユニットは、光学構造のうちの複数のものにピントを合わせる。
【0019】
本発明の一実施例では、上述の各表示ユニットのサイズは、対応する光学構造のサイズの整数倍である。
【0020】
本発明の一実施例では、上述の光学フィルムは、複数の光学構造を含み、且つ各光学構造は、角錐状プリズム又は柱状プリズムである。
【0021】
本発明の一実施例では、上述の光学フィルムは、フレネルレンズ、拡散フィルム又は覗き見防止用フィルムである。
【0022】
本発明の一実施例では、上述の表示ユニットが発した光束は、可視光である。
【0023】
本発明の一実施例では、上述の光学フィルムは、単層フィルム又は多層フィルムである。
【0024】
上述によれば、本発明の実施例による立体印刷装置は、光学フィルムを利用して表示器の複数の表示ユニットを感光材料に投影し、且つ複数の投影パターンは、互いの間の配列順序及び配列方向が、複数の表示ユニットの配列順序及び配列方向と実質的に同じである。これにより、表示器から感光材料までの距離を小さくし、立体印刷装置の体積を縮小することができると同時に、良好な立体印刷効果を提供することができる。
【0025】
本発明の上述の特徴及び利点をより明確且つ分かりやすくするために、以下、実施例を挙げて、添付した図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】本発明の一実施例による立体印刷装置が作動する時の様子を示す図である。
図1B】本発明の一実施例による立体印刷装置が作動する時の様子を示す図である。
図1C】本発明の一実施例による立体印刷装置が作動する時の様子を示す図である。
図2】表示器の表示ユニットを示す図である。
図3A】本発明の第一実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。
図3B図3Aの側面図である。
図4A】本発明の第二実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。
図4B】4Aの側面図である。
図5A】本発明の第三実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。
図5B図5Aの側面図である。
図6A】本発明の第四実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。
図6B図6Aの側面図である。
図7A】本発明の第五実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。
図7B図7Aの側面図。
図8】本発明の第六実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、添付した図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0028】
なお、次の各実施例の説明は、添付した図面を参照して行われたものであり、本発明の実施可能な特定の実施例を例示するために用いられる。また、次の各実施例に言及びした方向の用語、例えば、上、下、前、後、左、右などは、添付した図面の方向を参考するためのもののみである。よって、以下に使用された方向の用語は、説明のために用いられ、本発明を限定するためのものでない。
【0029】
図1A図1B及び図1Cは、本発明の一実施例による立体印刷装置が作動する時の様子を示す図である。立体印刷装置100は、容器110、表示器120、及び光学フィルム130を含む。容器110は、感光材料112を収納し、感光材料112は、流体又は半流体物質であってもよい。表示器120は、複数の表示ユニット122を有し、各表示ユニット122は、光束Lを発する。光学フィルム130は、複数の表示ユニット122が発した光束Lを感光材料112に投影し、感光材料112に複数の投影パターンを形成するために用いられ、そのうち、光学フィルム130は、単層フィルム、又は、多層フィルムによりスタック(積層)されたものであってもよい。
【0030】
具体的に言えば、本実施例では、表示器120は、容器110の底部114の下方に配置され、光学フィルム130は、表示器120と底部114との間に配置される。また、容器110の底部114は、透光性底部であり、このようにして、表示ユニット122が発した光束Lは、光学フィルム130を通過した後に、底部114を通過して感光材料112に投射し、複数の投影パターンを形成することができ、また、感光材料112とともに化学反応を、例えば、固化又は硬化を起こすことができる。これらの投影パターンは、互いの間の配列順序及び配列方向が、複数の表示ユニット122の配列順序及び配列方向と実質的に同じである。例えば、図1Aに示すように、表示ユニット122A、122B、及び122Cからの光束Lは、それぞれ、感光材料112における複数の位置a、b、及びcに投影して投影パターンを形成し、また、投影パターンの位置a、b、及びcの配列方向及び配列順序は、表示ユニット122A、122B、及び122Cの配列方向及び配列順序と同様であり、即ち、表示ユニット122A、122B、及び122Cは図中に左から右へ配列され、且つ位置a、b、及びcも左から右へ配列される。同じように、図1Aの図面に垂直する方向上では、投影パターンの互いの間の配列順序及び配列方向は、表示ユニット122の配列順序及び配列方向と同じであり、例えば、全て、図面の外から図面の内へと配列される。本実施例では、表示器120における複数の表示ユニット122の位置は、複数の投影パターンの位置と一対一に対応し、このようにして、複数の表示ユニット122の全体が呈している画像は、対応して感光材料112に形成することができる。
【0031】
なお、本実施例にでは、立体印刷装置100において、表示器120が表示する画面は、複数分割されて複数の表示ユニット122により表示され、その後、複数の表示ユニット122からの光束Lは、光学フィルム130を経由して、一対一の方式で感光材料112に投影され、且つこれらの投影パターンの互いの間の配列順序及び配列方向は、複数の表示ユニット122の配列順序及び配列方向と実質的に同じである。比べると分かるように、投影レンズを採用する立体印刷装置は、投影レンズを利用して表示器120の画面を、全面で結像する方式(以下、「全面結像の方式」という)で感光材料112に投影して結像し、且つ結像原理によれば、画面が感光材料112において形成した画像は、180度回転された逆さまの画像であるので、ニーズに応じて、結像の要求を達成するように結像距離を設計する必要があり、これにより、印刷装置の体積を大きくしてしまう。
【0032】
ところが、本実施例では、先ず、表示器120に表示の画面を複数の表示ユニット122に分け、それから、光学フィルム130により、一対一の方式で表示器120のこれらの表示ユニット122が発した複数の光束Lを感光材料112に投射し、且つ各表示ユニット122のサイズが全体の表示画面より小さいので、表示ユニット122から感光材料112までの投影距離を短くすることができる。これにより、表示器120から感光材料112までの所要距離を減少させ、立体印刷装置100の体積を減少させることができる。例えば、本実施例では、表示器120から容器110の底部114の上表面114aまでの距離が3センチメートル以下である。一方、本実施例では、表示器120が液晶表示器であってもよいので、投影を行うための光源が可視光であるが、不可視光(例えば、紫外線)を、感光材料112を固化させるための光源として用いてもよい。
【0033】
図1Aを参照する。詳しく言えば、立体印刷装置100は、工作平台140及び制御ユニット150を更に含む。工作平台140は、感光材料112の中に浸入し、且つ容器110に対して移動し、また、工作表面140aを有する。制御ユニット150は、工作平台140及び表示器120に接続され、工作平台140及び表示ユニット122を制御するために用いられる。
【0034】
次に、図1A図1B及び図1Cをこの順に参照する。図1Aでは、制御ユニット150は、第一時間に、表示器120が第一画面を表示するように命令し、第一画面は、複数の対応する表示ユニット122に分割され、且つ制御ユニット150は、工作表面140aが第一位置(図1A中表示の位置)に位置するようさせ、この時に、光学フィルム130は、第一画面に対応する表示ユニット122が発した光束Lを、工作表面140aと上表面114aとの間に位置する感光材料112の感光材料薄層に投影し、この感光材料薄層を、第一画面に対応して第一固化層S1として固化させる。それから、図1Bでは、制御ユニット150は、第二時間に、工作表面140aが第二位置(図1Bに表示の位置)に位置するようにさせ、この時に、感光材料112は、第一固化層S1と上表面114aとの間に充填することができ、制御ユニット150は、表示器120が第二画面を表示するように命令し、第二画面は、複数の対応する表示ユニット122に分割され、光学フィルム130は、第二画面に対応する表示ユニット122が発した光束Lを、第一固化層S1と上表面114aとの間に位置する感光材料112の感光材料薄層に投影し、この感光材料薄層を、第二画面に対応して第二固化層S2として固化させる。その後、図1Cでは、制御ユニット150は、第N時間に、表示器120が第N画面を表示するように命令し、第N画面は、複数の対応する表示ユニット122に分割され、光学フィルム130は、第N画面を、第N-1固化層SN-1と上表面114aとの間に位置する感光材料112の感光材料薄層に投影し、この感光材料薄層を、第N画面に対応して第N固化層SNとして固化させる。本実施例では、Nは、例えば、3以上の正整数である。
【0035】
本実施例について言えば、工作表面140aは、底部114の上表面114aに面し、第二固化層S2は、第一固化層S1と底部114との間に位置し、且つ第一位置は、底部114と第二位置との間に位置する。詳しく言えば、三次元物体に対して画像の分層(層分け)処理を行い、物体を多層の画面データに分割することができる。その後、制御ユニット150は、第一時間に、対応する表示ユニット122が物体の第一層の画面を表示するように命令し、続いて、第二時間に、対応する表示ユニット122が物体の第二層の画面を表示するように命令する。時間が進むにつれて、異なる層の画面を、光学フィルム130により感光材料薄層に投影し、また、感光材料薄層を、異なる層の画面に対応して逐層に固化させ、これにより、一層ずつで積層して三次元物体を形成する。
【0036】
本実施例では、表示器120は、容器110の底部114の下方に配置され、表示ユニット122に、下から上へと光束Lを発させて感光材料112に投影させる。しかし、本発明は、これに限定されず、他の実施例では、表示器120は、容器110の上方(図示せず)に配置され、表示ユニット122に、上から下へと光束Lを発させて感光材料112に投影させてもよい。
【0037】
図2は、表示器の表示ユニットを示す図である。図2を参照する。立体印刷装置100では、表示器120は、液晶表示パネルであってもよく、表示ユニット122は、液晶表示パネルのうちの少なくとも一つのピクセル122aを含んでもよく、例えば、図2には、九つのピクセル122aからなる表示ユニット122を例としている。表示ユニット122に含まれるピクセル122aの数は、所要の画面の解像度に従って調整することができる。一方、従来の立体印刷技術では、通常、カラーフィルタを有する表示器を採用するが、本発明の一実施例による立体印刷装置100では、カラーフィルタを除去した表示器120を採用してもよい。表示器120のうちの異なるカラーに対応する本来の異なるカラーのフィルタのサブピクセルは、一つのピクセルと見ることができ、これにより、表示器120の解像度を向上させることができ、さらに、より高い解析度を立体印刷技術に提供することができる。
【0038】
本実施例では、光学フィルム130は、表示ユニット122が発した光束Lを感光材料112に投影するための複数の光学構造132を含む。以下、幾つかの好適な実施例を挙げて、表示ユニット122と光学フィルム130との相対関係を詳しく説明する。
【0039】
図3Aは、本発明の第一実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。図3Aには、表示器120及び光学フィルム130Aが空間上で重畳する様子を示しており、そのうち、点線の部分は、表示器120を表し、実線の部分は、光学フィルム130Aを表す。図3Bは、図3Aの側面図である。
【0040】
図3A及び図3Bを同時に参照する。本実施例では、光学フィルム130Aは、複数の光学構造132Aを有し、そのうち、各光学構造132Aは、レンズ(例えば、二つの互いに垂直な異なる方向にともに弯曲する表面を有するレンズ)であり、各光学構造132Aのサイズは、各表示ユニット122のサイズと実質的に等しい。
【0041】
図4Aは、本発明の第二実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。図4Bは、図4Aの側面図である。本実施例の光学フィルム130Bにおける光学構造132Bは、図3Aの実施例と同じであり、即ちレンズであるが、各光学構造132Bのサイズは、表示ユニット122のサイズより実質的に小さい。
【0042】
図5Aは、本発明の第三実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。図5Bは、図5Aの側面図である。本実施例では、光学フィルム130Cにおける各光学構造132Cは柱状レンズであり、各光学構造132Cの幅は、表示ユニット122の幅と実質的に等しい。
【0043】
図3A図4A及び図5Aの実施例に基づいて、表示ユニット122からの光束Lは、レンズ又は柱状レンズにより感光材料112に結像されるので、各光学構造132A、132B、及び132Cは、少なくとも一つの表示ユニット122にピントを合わせるように調整されてもよい。例えば、図3Aでは、各レンズ(光学構造132A)は、表示ユニット122にピントを合わせる。他の実施例では、各表示ユニット122は、複数の光学構造にピントを合わせる。例えば、図4Aでは、各表示ユニット122は、四つのレンズ(光学構造132B)にピントを合わせる。一つの表示ユニット122に複数のピクセル122a(図2の内容を参照する)が含まれる場合、各レンズは、複数のピクセル122aにピントを合わせ、一つの表示ユニット122に一つのピクセル122aが含まれる場合、各レンズは、一つのピクセル122aにピントを合わせる。換言すると、図3Aについて言えば、各光学構造132Aのサイズは、対応する表示ユニット122のピクセル122a(図2の内容を参照する)のサイズの整数倍であってもよく、図4Aでは、各表示ユニット122のサイズは、対応する光学構造132Bの整数倍である。図5Aでは、各柱状レンズ(光学構造132C)は、一列の表示ユニット122にピントを合わせる。各表示ユニット122のサイズが、表示器120が表示する全体の画面のサイズより小さいので、複数のレンズ又は柱状レンズなどの光学構造を利用して、複数の表示ユニット122からの光束をそれぞれ感光材料112に結像する時における結像距離を、全体の画面を全面結像の方式で感光材料112に結像する時における結像距離よりも小さくすることもできる。よって、立体印刷装置100の全体の体積を有効に縮小することができる。
【0044】
図6Aは、本発明の第四実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。図6Bは、図6Aの側面図である。本実施例では、光学フィルム130Dにおける各光学構造132Dは、柱状プリズムであり、各光学構造132Dの幅は、表示ユニット122の幅と実質的に等しい。
【0045】
図7Aは、本発明の第五実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。図7Bは、図7Aの側面図である。本実施例では、光学フィルム130Eにおける各光学構造132Eは、角錐状プリズムであり、各光学構造132Eのサイズは、各表示ユニット122のサイズと実質的に等しい。
【0046】
しかし、他の実施例では、柱状プリズム又は角錐状プリズムのサイズは、表示ユニット122の整数倍でなくてもよく、柱状プリズム又は角錐状プリズムの位置は、表示ユニット122の位置との対応関係を有しなくもよい。
【0047】
図8は、本発明の第六実施例における表示ユニット及び光学フィルムの相対関係を示す図である。本実施例では、光学フィルム130Fは、拡散フィルムであり、他の実施例では、フレネルレンズ又は覗き見防止用フィルムであってもよい。
【0048】
図6A及び図7Aの実施例に基づいて、表示ユニット122からの光束Lは、投射の方式の偏向で感光材料112に投影されるので、各柱状プリズム(光学構造132D)及び各角錐状プリズム(光学構造132E)の位置は、表示ユニット122の位置との対応関係を有しなくてもよいが、それは、その対応する表示ユニット122の光束Lを、感光材料112(図1A図1B及び図1Cに図示されている)に収斂(収束)させることができる。同様に、図8の実施例における光学フィルム130F(例えば、フレネルレンズ又は覗き見防止用フィルム)は、表示ユニット122から射出した光束Lを収斂させる作用も有する。また、採用される表示器120が発した光束Lは、比較的に収斂されているものである時に、光学フィルム130Fは、拡散フィルムである場合でも、依然として、表示ユニット122からの光束Lを感光材料112(図1A図1B及び図1Cに図示されている)に投影することができる。
【0049】
以上述べたところを総合すれば、本発明の実施例による立体印刷装置は、光学フィルムを利用して、表示器の複数の表示ユニットを感光材料に投影し、且つ複数の投影パターンの互いの間の配列順序及び配列方向は、複数の表示ユニットの配列順序及び配列方向と実質的に同じである。これにより、表示器から感光材料までの距離を小さくし、立体印刷装置の体積を縮小することができると同時に、良好な立体印刷効果を提供することが提供することができる。
【0050】
本発明は、前述した好適な実施例に基づいて以上のように開示されたが、前述した好適な実施例は、本発明を限定するためのものでなく、当業者は、本発明の精神と範囲を離脱しない限り、本発明に対して些細な変更と潤色を行うことができるので、本発明の保護範囲は、添付した特許請求の範囲に定まったものを基準とする。また、本発明の何れの実施例又は特許請求の範囲は、本発明に開示された全ての目の又は利点又は特徴を達成する必要がない。また、要約の部分と発明の名称は、文献の検索を助けるためのみのものであり、本発明の権利範囲を限定するものでない。また、本明細書又は特許請求の範囲に言及びしている「第一」、「第二」等の用語は、要素(element)に名前を付け、または、異なる実施例又は範囲を区別するためのもののみであり、要素の数量上の上限又は下限を限定するためのものでない。
【符号の説明】
【0051】
100:立体印刷装置
110:容器
112:感光材料
114:底部
120:表示器
122、122A、122B、122C:表示ユニット
130、130A、130B、130C、130D、130E、130F:光学フィルム
132、132A、132B、132C、132D、132E:光学構造
140:工作平台
150:制御ユニット
114a:上表面
122a:ピクセル
140a:工作表面
a、b、c:位置
L:光束
S1:第一固化層
S2:第二固化層
SN-1:第N-1固化層
SN:第N固化層
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8