特許第6235250号(P6235250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235250
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】農業用遮光剤
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20171113BHJP
   A01G 9/14 20060101ALI20171113BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20171113BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A01G13/02 F
   A01G9/14 S
   C09D5/02
   C09D7/12
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-133460(P2013-133460)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-6154(P2015-6154A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(72)【発明者】
【氏名】道祖土 朋宙
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−25698(JP,A)
【文献】 特開2007−177240(JP,A)
【文献】 特開平11−151790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/02
A01G 9/14
C09D 5/02
C09D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と水系バインダーと顔料とを含有してなる農業用遮光剤であって、
水系バインダーは、酸価が30以上300以下の水性樹脂エマルジョンであり、
顔料は、表面親水化処理を施された平均粒子径が0.1μm以上0.5μm以下の酸化チタンと、炭酸カルシウムとを含むとともに、炭酸カルシウムに対する酸化チタンの配合比率が重量比率で1/10以上5以下となるように構成されている、ことを特徴とする農業用遮光剤。
【請求項2】
顔料に含まれる炭酸カルシウムは、平均粒子径が0.05μm以上10μm以下である、請求項1に記載の農業用遮光剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用遮光剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウス栽培やトンネル栽培などの太陽光の熱エネルギーを利用した保温栽培で栽培される植物が、夏場の強い太陽光等といった強い光線を浴びた場合、植物に葉焼け等といった現象が引き起こされてしまう虞が高くなる。こうした現象は植物の生育に悪影響を与える虞がある。そこで、強い光線による植物への悪影響を抑制する方法として、ハウス栽培を行うためのハウスやトンネル栽培を行うためのトンネルを構成するビニルシート等のシート材外側表面上に、遮光ネットを被せる方法(遮光ネット被覆法と呼ぶ)や、シート材の外表面上に農業用遮光剤を散布して光をある程度まで遮断可能な被膜構造などといった遮光性構造を形成してそのシート材の外表面側を遮光面となす方法(遮光面形成法と呼ぶ)が実施されてきた。
【0003】
保温栽培において、遮光ネット被覆法や遮光面形成法は、通常、強い太陽光線が地表に降り注ぐ時期という特定の時期を狙って実施される。そして、そのような時期以外では実施されない。むしろ、強い太陽光線が地表に降り注ぐ時期以外の時期では、積極的に太陽光線の熱エネルギーを活用するべく光を効率的に取り込むことが重要とされる。
【0004】
この点、遮光ネット被覆法には、遮光ネット自体が高価であることから準備コストが嵩むという問題があり、また、実施を終了する際には設置された遮光ネットの取り外しが容易でないという問題があった。
【0005】
こうした問題から、これまで強い光線による植物への悪影響を抑制する方法として、遮光面形成法が汎用されてきた。遮光面形成法では、農業用遮光剤が用いられるが、農業用遮光剤としては、水と水系バインダーと顔料を含む組成物で構成されたものが、用いられている。そして、従来、農業用遮光剤に含まれる顔料としては、主に炭酸カルシウムが用いられてきた(例えば、特許文献1等)。この農業用遮光剤は、炭酸カルシウムに由来する白色を呈しており、遮光面形成法を実施された際には、農業用遮光剤の遮光性構造として白色構造がシート材上に形成され、シート材の外表面側を遮光面となす。このとき、白色構造は、被膜状に形成される場合もある。そして、こうした白色構造がシート材を通過して植物に照射される光線量をある程度のレベルまでやわらげ、強い光線による植物への悪影響が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−25698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来の農業用遮光剤を用いた遮光面形成法には、実施の際に農業用遮光剤をシート材上に均一に散布することが困難で、シート材の外表面側にむらのある遮光面が形成されやすいという問題があり、また、農業用遮光剤にてシート材の外表面側が遮光面とされた後においても、降雨などによって遮光性構造がシート材から流れ落ちてしまいやすく、遮光面形成法の実施終了まで遮光性構造をシート材の表面上に保持させにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、シート材の外表面に散布されることで、その外表面をむらの抑制された遮光性構造が形成されて遮光面となすことを可能とするとともに、降雨などによって流れ落ちる虞の抑制された遮光性構造を形成可能な農業用遮光剤を提供する、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)水と水系バインダーと顔料とを含有してなる農業用遮光剤であって、
水系バインダーは、酸価が30以上300以下の水性樹脂エマルジョンであり、
顔料は、表面親水化処理を施された平均粒子径が0.1μm以上0.5μm以下の酸化チタンと、炭酸カルシウムとを含んでなり、且つ、炭酸カルシウムに対する酸化チタンの配合比率を、重量比率で1/10以上5以下とされている、ことを特徴とする農業用遮光剤、
(2)顔料に含まれる炭酸カルシウムは、平均粒子径が0.05μm以上10μm以下である、上記(1)に記載の農業用遮光剤、を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シート材の外表面に散布されることで、その外表面をむらの抑制された遮光性構造が形成されて遮光面となすことを可能とするとともに、降雨などによって流れ落ちる虞の抑制された遮光性構造を形成可能な農業用遮光剤を提供する、ことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[農業用遮光剤]
本発明の農業用遮光剤は、水と水系バインダーと顔料とを含有してなる。
【0012】
(水系バインダー)
水系バインダーは、酸価が30以上300以下の水性樹脂エマルジョンである。水性樹脂エマルジョンを構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等をあげることができるが、水分散性アクリル系樹脂、水分散性ウレタン系樹脂を好ましく選択される。
【0013】
酸価は、フェノールフタレインなどを指示薬として、水酸化カリウム滴定により求められる。
【0014】
一般に、樹脂における酸価は、樹脂を構成する高分子鎖1本あたりの遊離カルボン酸基の平均数に関係する値とされる。樹脂における酸価の値が大きいほど、その樹脂は、耐水性が乏しくなり、すなわち水に溶けやすくなる。樹脂における酸価の値が小さいほど、その樹脂は、水に溶けにくい性質を有する。これを考慮して、農業用遮光剤に含まれる水系バインダーが、水性樹脂エマルジョンであり、且つ、その水性樹脂エマルジョンを構成する樹脂成分の酸価を30以上300以下とされていることで、水系バインダーの水に混ざった状態が効果的に形成できるようになるとともに、農業用遮光剤が所定のシート材の外表面に散布されて遮光性構造を形成してシート材の外表面側を遮光面となした際、その遮光面をある程度の期間にわたって耐水性を確保できるものとすることができる。
【0015】
なお、水性樹脂エマルジョンが、酸価が30未満の樹脂のエマルジョンであると、遮光性構造をシート材から除去する際に、容易に除去することができなくなる虞がある。水性樹脂エマルジョンが、酸価が300を越える樹脂のエマルジョンであると、遮光性構造の耐水性が低下し、雨風で遮光性構造がシート材から流れ落ちやすくなって、所定期間にわたって遮光性構造を保持できなくなる虞がある。
【0016】
水性樹脂エマルジョンの状態で樹脂の平均粒径は、水性樹脂エマルジョンをエマルジョンとしてより確実に機能可能なものとすることを考慮して、0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
【0017】
農業用遮光剤における水系バインダーの含有量は、適宜選択可能であるが、おおむね、水100重量部に対して水系バインダーに含まれる樹脂固形分が0.1重量部以上10重量部以下となるような量であることが好ましい。農業用遮光剤における水系バインダーに含まれる樹脂固形分が、水100重量部に対して0.1重量部未満であると、シート材上への遮光性構造の形成が不十分となる虞がある。農業用遮光剤における水系バインダーに含まれる樹脂固形分が、水100重量部に対して10重量部を超える場合には、農業用遮光剤の散布作業性が低下するとともに、散布後の乾燥に時間がかかる虞があり、また、乾燥時間の長時間化に相応する程度には遮光性構造の持続性が向上せず、経済的に有効な農業用遮光剤が得られない虞もある。
【0018】
(顔料)
顔料は、酸化チタンと、炭酸カルシウムとを含んで構成されている。
【0019】
(炭酸カルシウム)
顔料に含まれる炭酸カルシウムは、その平均粒子径を特に限定されるものではないが、概ね0.05μm以上10μm以下であることが好適である。炭酸カルシウムの平均粒子径が10μmを超えると、沈降しやすくなる傾向にあり、炭酸カルシウムの平均粒子径が0.05μm未満であると、凝集しやすくなる傾向にある。なお、ここにいう平均粒子径とは、一次粒子径を示すものとする。これは、後述する酸化チタンの平均粒子径についても同様である。
【0020】
(酸化チタン)
顔料に含まれる酸化チタンは、平均粒子径が0.1μm以上0.5μm以下である。酸化チタンの平均粒子径が0.5μmを超えると、沈降しやすくなる傾向にあって、作業性の良好な農業用遮光剤を得ることが困難になる虞がある。酸化チタンの平均粒子径が0.1μm未満であると、凝集しやすくなる傾向が強まり、農業用遮光剤を所定のシート材の外表面に散布してシート材に遮光性構造を形成して遮光面を形成しても、遮光性が発現しない虞がある。
【0021】
また、酸化チタンは、表面親水化処理を施されたものであることが好ましい。
【0022】
(表面親水化処理)
表面親水化処理の方法としては、例えば、表面親水化の対象となる粒子に対し、特殊高分子、脂肪酸、スルホン酸、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、シリカなどによる修飾を施す方法を、あげることができる。このように酸化チタンが表面親水化処理を施されていると、酸化チタンの表面の濡れ性が向上して、水中で分散状態を形成しやすくなる。
【0023】
(炭酸カルシウムに対する酸化チタンの配合比率)
顔料は、炭酸カルシウムに対する酸化チタンの配合比率(酸化チタン/炭酸カルシウム)が重量比率で1/10以上5以下となるように構成されている。炭酸カルシウムに対する酸化チタンの配合比率が重量比率で1/10未満であると、酸化チタンを添加した効果が十分に発揮されず、農業用遮光剤をシート材の外表面に散布して形成される遮光面が遮光性にむらのあるものとなってしまう虞がある。一方で、炭酸カルシウムに対する酸化チタンの配合比率が重量比率で5を超過していると、農業用遮光剤の重量が大きくなり、作業性が低下する。
【0024】
(他の顔料成分)
顔料は、酸化チタンと炭酸カルシウムのみで構成されてもよいし、上記したように所定の平均粒子径を有する酸化チタンと炭酸カルシウムと所定の配合比率で含んで構成されていれば、他の顔料成分を更に含むものであってもよい。他の顔料成分としては、タルク、クレー、シリカ、マイカ、硫酸バリウムなどをあげることができる。
【0025】
(添加剤)
農業用遮光剤には、上記した各成分のほか、本発明の趣旨を没却しない程度の範囲で必要に応じて、さらに各種の添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、硬化剤、防腐剤、増粘剤、減粘剤、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アルコール類等をあげることができる。
【0026】
[農業用遮光剤の調製]
農業用遮光剤は、酸化チタン及び炭酸カルシウムといった顔料を構成する各成分と、水系バインダーとを水に混合することで調製することができる。
【0027】
[農業用遮光剤の利用]
農業用遮光剤は、保温栽培で使用可能なシート材(農業用シート材ということがある)の外表面上に散布されて使用されることができる。農業用遮光剤の散布方法は特に限定されず、スプレー散布など適宜の方法を用いることができる。なお、農業用遮光剤の散布を実施する際には、顔料と水系バインダーと水を混合して農業用遮光剤原液を調製し、農業用遮光剤原液を水で適宜倍率に希釈して希釈液を調製して、この希釈液を散布される農業用遮光剤として用いられることが、保管場所から散布場所までの運搬作業性を向上させる観点からは好適である。
【0028】
保温栽培で使用可能なシート材としては、塩化ビニル系農業用樹脂フィルムなどが好適に選択される。塩化ビニル系農業用樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリ塩化ビニルホモポリマーおよび塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニルとアルキル、シクロアルキルまたはアルキルマレイミドとの共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体などの塩化ビニル共重合体が挙げられる。
【0029】
保温栽培で使用可能なシート材に対する農業用遮光剤の散布量は、特に限定されないが、農業用遮光剤の塗布量は、農業用遮光剤に含まれる固形分が0.1〜50g/m程度となる量であることが好ましい。0.1g/m未満であると、充分な遮光効果を得にくくなる虞がある。また50g/mを超える場合には、散布作業中にシート材から農業用遮光剤の落滴によるロスが生じる虞がある。
【0030】
こうしてシート材に農業用遮光剤の散布が施されると、シート材面上に遮光性構造が形成されてそのシート材面が遮光面をなす。遮光性構造は、シート材面上に細かな粒状の構造を多数付着してなる構造をなしてよいし、シート材面上に膜状に形成されてもよい。形成された遮光面は、均一性に優れるとともに遮光性構造の適度な持続性を有する。
【0031】
(遮光性構造の除去)
その遮光性構造は、不要となったときには、有機溶媒を多量に使用することなく、アルカリ性の除去液にて簡単に除去し得るものである。
【0032】
(遮光性構造の形成方法の他例)
なお、上記では農業用遮光剤を散布して遮光性構造を形成する例について説明したが、農業用遮光剤を用いた遮光性構造の形成方法は、これに限定されず、農業用遮光剤をローラーなどで塗布することによって形成されてもよい。
【0033】
本発明について実施例および比較例を用いて、以下により詳細に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されなくてもよい。
【実施例】
【0034】
実施例1から7、比較例1から5
各実施例、各比較例につき、水と水系バインダーと顔料とを混合して農業用遮光剤原液を調製し、農業用遮光剤原液全量に対してその7倍量(重量部)の水を添加して農業用遮光剤原液を8倍に希釈して、下記表1に示すような組成の農業用遮光剤を調製した。なお、顔料を構成する成分としては、炭酸カルシウムと、酸化チタンが準備された。炭酸カルシウムについては、2種類(表1中、炭酸カルシウム1,2)、酸化チタンについては、3種類(表1中、酸化チタン1,2,3)が準備された。各実施例、各比較例につき、顔料は、炭酸カルシウムと、酸化チタンを表1に示す組成で配合されたものとして構成される。
【0035】
【表1】
【0036】
なお、表1について、顔料を構成する各成分、水系バインダーはそれぞれ以下のとおりである。
【0037】
炭酸カルシウム1 : 丸尾カルシウム株式会社製、商品名:ルミナス、(一次粒子径:0.1μm)。
炭酸カルシウム2 : 近江化学工業社製、商品名:赤玉、(一次粒子径:2〜3μm)。
酸化チタン1 : テイカ株式会社製、商品名:JR−600A、(一次粒子径:0.25μm)、アルミニウム化合物で表面親水化処理されたもの。
酸化チタン2 : テイカ株式会社製、商品名:JR−405、(一次粒子径:0.21μm)、アルミニウム化合物で表面親水化処理されたもの。
酸化チタン3 : テイカ株式会社製、商品名:JR、(一次粒子径:0.27μm)、表面親水化処理されていないもの)。
水系バインダー : 酸価60、分子量20万、樹脂固形分47%のアクリル系樹脂のエマルジョン。
【0038】
また、表1中、実施例1から7、比較例1から5のそれぞれについて、水、水系バインダー、炭酸カルシウム1,2、酸化チタン1,2,3の欄に示す数字は、重量部を示す。
【0039】
実施例1から7、比較例1から5それぞれの農業用遮光剤を用いて、沈降抑制性確認試験、吹き付け均一性確認試験、遮光性確認試験の各試験を行い、結果を評価した。また、各実施例、各比較例の農業用遮光剤原液について作業性確認試験を行い、結果を評価した。各試験の実施方法と結果評価基準については次に示すとおりである。また、各試験の結果は、表1に示すとおりである。
【0040】
(沈降抑制性確認試験)
調整された農業用遮光剤について(希釈後のもの)、顔料の沈降度合いを目視にて確認し、次のような基準で試験結果を評価した。
【0041】
(沈降抑制性確認試験の結果評価基準)
目視にて沈降がないと認められる : 沈降抑制性が良好である(表1中、○にて表記)
目視にて若干の沈降はあると認められるが数回撹拌すればすぐに分散すると認められる : 沈降抑制性はやや不良である(表1中、△にて表記)
目視にて沈降が認められ且つ数回撹拌しても沈降状態が認められたままである : 沈降抑制性は不良である(表1中、×にて表記)
【0042】
(吹き付け均一性確認試験)
保温栽培で使用可能なシート材として、塩化ビニル系農業用樹脂フィルムを準備して、このシート材を外面材となるようにしつつハウス栽培を実施するための農業用ハウスが設置された。農業用ハウスを構成するシート材の外側表面に、調製された農業用遮光剤をスプレー散布し、シート材の外側表面を遮光面となした。なお、散布にあたり、農業用遮光剤の目付け量は、30ml/mとされた。これにより、農業用ハウスのシート材の外側表面に散布ムラが認められるか否かに基づき次のような基準で試験結果を評価した。
【0043】
(吹き付け均一性確認試験の結果評価基準)
目視にて散布ムラがないと認められる : 吹き付け均一性が良好である(表1中、○にて表記)
目視にて散布ムラがあると認められる : 吹き付け均一性が不良である(表1中、×にて表記)
【0044】
(遮光性確認試験)
吹き付け均一性確認試験で使用したものと同種の塩化ビニル系農業用樹脂フィルム(遮光性確認試験に関する説明においては、試験フィルムと呼ぶ)を準備して、試験フィルムの片面に、農業用遮光剤を目付け量30ml/mにて吹きつけ、農業用遮光剤付き試験フィルムを得た。農業用遮光剤付着試験フィルムと、農業用遮光剤の吹き付けを行っていない試験フィルム(ブランク用フィルムと呼ぶ)それぞれについて、透過する光の強さを測定した。ブランク用フィルムについて測定された透過する光の強さ(A)に対する農業用遮光剤付き試験フィルムについて測定された透過する光の強さ(B)、すなわち(1−B/A)×100の値(%)(遮光率(%)と呼ぶ)を特定した。なお、透過する光の強さ(A)、透過する光の強さ(B)は、いずれもソーラーシュミレーター(セリック株式会社製)で測定された。
【0045】
(遮光性確認試験の結果評価基準)
遮光率(%)が20%以上である : 遮光性が良好である(表1中、○にて表記)
遮光率(%)が10%以上20%未満である : 遮光性がやや不良である(表1中、△にて表記)
遮光率(%)が10%未満である : 遮光性が不良である(表1中、×にて表記)
【0046】
(作業性確認試験)
希釈前の農業用遮光剤原液について水を標準物質として比重を計測し、次のような基準で試験結果を評価した。
【0047】
(作業性確認試験の結果評価基準)
比重が1.5未満である : 所定体積の容器に投入して運搬する際に運搬物の重さが重くなりにくく運搬作業が容易であり、希釈も容易である(作業性が良好である)(表1中、○にて表記)
比重が1.5以上である : 所定体積の容器に投入して運搬する際に運搬物の重さ運搬作業が容易でない状態となりやすくなる(表1中、×にて表記)
【0048】
(所定の遮光性を得るための目付け量の対比)
実施例1、比較例2の農業用遮光剤について、次のように所定の遮光性を得るための目付け量を対比した。
【0049】
吹き付け均一性確認試験にて使用されたものと同様に形成された農業用ハウスを構成するシート材の外側表面に、実施例1で得られた農業用遮光剤を目付け量が30ml/mとなるように吹き付けてシート材の外面側に遮光面を形成して、このような遮光面を形成したシート材について遮光性確認試験と同様の試験を行って遮光率が特定された。
【0050】
また、比較例2で得られた農業用遮光剤についても同様の試験を行った。ただし、比較例2で得られた農業用遮光剤については、目付け量を50ml/mとした。実施例1、比較例2のいずれについても、遮光率はいずれも25%であった。同じ遮光性を得るために必要となる目付け量は、実施例1のほうが比較例2よりも少量ですむことになる。このことからしてみても、本願発明の炭酸カルシウムと酸化チタンを併用してなる農業用遮光剤は、併用しない農業用遮光剤よりも遮光性に優れることがわかる。