【実施例】
【0034】
実施例1から7、比較例1から5
各実施例、各比較例につき、水と水系バインダーと顔料とを混合して農業用遮光剤原液を調製し、農業用遮光剤原液全量に対してその7倍量(重量部)の水を添加して農業用遮光剤原液を8倍に希釈して、下記表1に示すような組成の農業用遮光剤を調製した。なお、顔料を構成する成分としては、炭酸カルシウムと、酸化チタンが準備された。炭酸カルシウムについては、2種類(表1中、炭酸カルシウム1,2)、酸化チタンについては、3種類(表1中、酸化チタン1,2,3)が準備された。各実施例、各比較例につき、顔料は、炭酸カルシウムと、酸化チタンを表1に示す組成で配合されたものとして構成される。
【0035】
【表1】
【0036】
なお、表1について、顔料を構成する各成分、水系バインダーはそれぞれ以下のとおりである。
【0037】
炭酸カルシウム1 : 丸尾カルシウム株式会社製、商品名:ルミナス、(一次粒子径:0.1μm)。
炭酸カルシウム2 : 近江化学工業社製、商品名:赤玉、(一次粒子径:2〜3μm)。
酸化チタン1 : テイカ株式会社製、商品名:JR−600A、(一次粒子径:0.25μm)、アルミニウム化合物で表面親水化処理されたもの。
酸化チタン2 : テイカ株式会社製、商品名:JR−405、(一次粒子径:0.21μm)、アルミニウム化合物で表面親水化処理されたもの。
酸化チタン3 : テイカ株式会社製、商品名:JR、(一次粒子径:0.27μm)、表面親水化処理されていないもの)。
水系バインダー : 酸価60、分子量20万、樹脂固形分47%のアクリル系樹脂のエマルジョン。
【0038】
また、表1中、実施例1から7、比較例1から5のそれぞれについて、水、水系バインダー、炭酸カルシウム1,2、酸化チタン1,2,3の欄に示す数字は、重量部を示す。
【0039】
実施例1から7、比較例1から5それぞれの農業用遮光剤を用いて、沈降抑制性確認試験、吹き付け均一性確認試験、遮光性確認試験の各試験を行い、結果を評価した。また、各実施例、各比較例の農業用遮光剤原液について作業性確認試験を行い、結果を評価した。各試験の実施方法と結果評価基準については次に示すとおりである。また、各試験の結果は、表1に示すとおりである。
【0040】
(沈降抑制性確認試験)
調整された農業用遮光剤について(希釈後のもの)、顔料の沈降度合いを目視にて確認し、次のような基準で試験結果を評価した。
【0041】
(沈降抑制性確認試験の結果評価基準)
目視にて沈降がないと認められる : 沈降抑制性が良好である(表1中、○にて表記)
目視にて若干の沈降はあると認められるが数回撹拌すればすぐに分散すると認められる : 沈降抑制性はやや不良である(表1中、△にて表記)
目視にて沈降が認められ且つ数回撹拌しても沈降状態が認められたままである : 沈降抑制性は不良である(表1中、×にて表記)
【0042】
(吹き付け均一性確認試験)
保温栽培で使用可能なシート材として、塩化ビニル系農業用樹脂フィルムを準備して、このシート材を外面材となるようにしつつハウス栽培を実施するための農業用ハウスが設置された。農業用ハウスを構成するシート材の外側表面に、調製された農業用遮光剤をスプレー散布し、シート材の外側表面を遮光面となした。なお、散布にあたり、農業用遮光剤の目付け量は、30ml/m
2とされた。これにより、農業用ハウスのシート材の外側表面に散布ムラが認められるか否かに基づき次のような基準で試験結果を評価した。
【0043】
(吹き付け均一性確認試験の結果評価基準)
目視にて散布ムラがないと認められる : 吹き付け均一性が良好である(表1中、○にて表記)
目視にて散布ムラがあると認められる : 吹き付け均一性が不良である(表1中、×にて表記)
【0044】
(遮光性確認試験)
吹き付け均一性確認試験で使用したものと同種の塩化ビニル系農業用樹脂フィルム(遮光性確認試験に関する説明においては、試験フィルムと呼ぶ)を準備して、試験フィルムの片面に、農業用遮光剤を目付け量30ml/m
2にて吹きつけ、農業用遮光剤付き試験フィルムを得た。農業用遮光剤付着試験フィルムと、農業用遮光剤の吹き付けを行っていない試験フィルム(ブランク用フィルムと呼ぶ)それぞれについて、透過する光の強さを測定した。ブランク用フィルムについて測定された透過する光の強さ(A)に対する農業用遮光剤付き試験フィルムについて測定された透過する光の強さ(B)、すなわち(1−B/A)×100の値(%)(遮光率(%)と呼ぶ)を特定した。なお、透過する光の強さ(A)、透過する光の強さ(B)は、いずれもソーラーシュミレーター(セリック株式会社製)で測定された。
【0045】
(遮光性確認試験の結果評価基準)
遮光率(%)が20%以上である : 遮光性が良好である(表1中、○にて表記)
遮光率(%)が10%以上20%未満である : 遮光性がやや不良である(表1中、△にて表記)
遮光率(%)が10%未満である : 遮光性が不良である(表1中、×にて表記)
【0046】
(作業性確認試験)
希釈前の農業用遮光剤原液について水を標準物質として比重を計測し、次のような基準で試験結果を評価した。
【0047】
(作業性確認試験の結果評価基準)
比重が1.5未満である : 所定体積の容器に投入して運搬する際に運搬物の重さが重くなりにくく運搬作業が容易であり、希釈も容易である(作業性が良好である)(表1中、○にて表記)
比重が1.5以上である : 所定体積の容器に投入して運搬する際に運搬物の重さ運搬作業が容易でない状態となりやすくなる(表1中、×にて表記)
【0048】
(所定の遮光性を得るための目付け量の対比)
実施例1、比較例2の農業用遮光剤について、次のように所定の遮光性を得るための目付け量を対比した。
【0049】
吹き付け均一性確認試験にて使用されたものと同様に形成された農業用ハウスを構成するシート材の外側表面に、実施例1で得られた農業用遮光剤を目付け量が30ml/m
2となるように吹き付けてシート材の外面側に遮光面を形成して、このような遮光面を形成したシート材について遮光性確認試験と同様の試験を行って遮光率が特定された。
【0050】
また、比較例2で得られた農業用遮光剤についても同様の試験を行った。ただし、比較例2で得られた農業用遮光剤については、目付け量を50ml/m
2とした。実施例1、比較例2のいずれについても、遮光率はいずれも25%であった。同じ遮光性を得るために必要となる目付け量は、実施例1のほうが比較例2よりも少量ですむことになる。このことからしてみても、本願発明の炭酸カルシウムと酸化チタンを併用してなる農業用遮光剤は、併用しない農業用遮光剤よりも遮光性に優れることがわかる。