特許第6235265号(P6235265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235265
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】X線発生装置及びX線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G01N23/04
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-155821(P2013-155821)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-25750(P2015-25750A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】森谷 淳一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直也
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−318062(JP,A)
【文献】 特開平11−183405(JP,A)
【文献】 特開2009−300379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管(8)が収容されて絶縁油(9)の満たされた容器(7)の上面開口部(17)を塞ぐ基板(12)を有し、該基板を貫通し吸熱端(14)が前記絶縁油内に浸され放熱端(15)が前記容器外方に突出する熱伝達部材(13)を備えた放熱器(11)と、
前記熱伝達部材の放熱端側を覆って前記容器に取り付けられ、両側が送排気開口部(26,26)となる略コ字状に形成されて遮蔽空間(25)をなし、前記放熱器を透過するX線を遮蔽する遮蔽材(22)及び支持材(23)が積層されてなる遮蔽部材(18)と、
前記送排気開口部に送排気間隙(28)を介して前記遮蔽部材に被せられるチャンバ(27)と、
前記両送排気開口部を通る延長直線(29)に交差することで、開口端(31)から前記放熱器の放熱側の放熱面が見えない方向で前記送排気間隙に連通し、前記チャンバに接続され、前記送排気開口部から前記開口端の間でX線を吸収散乱により減衰させる一対のダクト(30,30)と、
を具備することを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
請求項1記載のX線発生装置であって、
前記一対のダクトの少なくとも一方に送風ファン(32)が取り付けられていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のX線発生装置であって、
前記基板に複数の前記熱伝達部材が貫通して設けられ、
前記熱伝達部材の放熱端と遮蔽部材側壁内面(33)の間隔(A)、及び前記熱伝達部材と遮蔽部材天井面(34)の間隔(B)が、隣接する前記熱伝達部材の放熱端同士の間隔(C)よりも小さいことを特徴とするX線発生装置。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか1つに記載のX線発生装置(100)を組み込んだことを特徴とするX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置及びX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線異物検出装置は、食肉,加工品等の食料品等被検査物にX線を照射して、照射したX線の透過量から被検査物中に金属等の異物が存在しているか否かを検出する装置である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
X線を照射するX線発生器は、金属製の箱体内部に設けられているX線管を絶縁油により浸漬して密封されている。X線管自体はX線照射により発熱するため、X線管から絶縁油に伝導された熱を外部に放熱させて、X線管を冷却させる必要がある。
【0004】
X線管から絶縁油に伝導された熱を外部に放熱させる手段としては、通常、X線発生器周面に貫通保持された冷却フィンが用いられ、絶縁油から熱を伝導してX線発生器の外に放熱させている。しかし、冷却フィンは通常、熱伝達特性のよいAlが用いられ、AlはX線の透過率が高いため、放熱と共にX線が漏洩することとなる。
【0005】
そこで、特許文献1のX線異物検出装置は、X線発生器から発生する熱を外部へ導く通風路を長くし、内面で漏洩X線の吸収散乱を繰り返させている。これにより、漏洩X線を減衰させ、X線漏洩の問題を解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−318062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような通風路(ダクト)を長くする構成では、空気の搬送距離が長くなったり、ダクトに複数の屈曲部が必要になったりして、冷却効率が落ちる欠点がある。また、屈曲した長いダクトを設ければ装置としての小型化に不利となる。そこで、冷却効率とX線遮蔽の問題が同時に解消できるX線発生装置の開発が望まれている。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、冷却効率を低下させずに、X線をより確実に遮蔽できるX線発生装置及びX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のX線発生装置100は、X線管8が収容されて絶縁油9の満たされた容器7の上面開口部17を塞ぐ基板12を有し、該基板12を貫通し吸熱端14が前記絶縁油9内に浸され放熱端15が前記容器7外方に突出する熱伝達部材13を備えた放熱器11と、
前記熱伝達部材13の放熱端15側を覆って前記容器7に取り付けられ、両側が送排気開口部26,26となる略コ字状に形成されて遮蔽空間25をなし、前記放熱器11を透過するX線を遮蔽する遮蔽材22及び支持材23が積層されてなる遮蔽部材18と、
前記送排気開口部26,26に送排気間隙28を介して前記遮蔽部材18に被せられるチャンバ27と、
前記両送排気開口部26,26を通る延長直線29に交差することで、開口端31から前記放熱器11の放熱側の放熱面が見えない方向で前記送排気間隙28に連通し、前記チャンバ27に接続され、前記送排気開口部26,26から前記開口端31の間でX線を吸収散乱により減衰させる一対のダクト30,30と、
を具備することを特徴とする。
【0010】
このX線発生装置100では、略コ字状の遮蔽部材18にチャンバ27が連接されると、遮蔽部材18の両側の送排気開口部26,26に、送排気間隙28が接続形成される。チャンバ27によって、X線の遮蔽と、省スペースでの送排気間隙28の確保が可能となる。
チャンバ27には、両側の送排気間隙28,28にそれぞれ連通する一対のダクト30,30が接続される。ダクト30,30は、両側の送排気開口部26,26を通る延長直線29に交差することで開口端31からの放熱器11の放熱側の放熱面、すなわち熱伝達部材13の放熱端15や基板12が見えない方向で送排気間隙28に連通する。このチャンバ27及びダクト30,30により出入口の向きが変更されることで、チャンバ27内及びダクト30,30内でX線は吸収散乱を繰り返し、減衰して減少する。
遮蔽部材18の送排気開口部26,26は、連接されるチャンバ27によって広い空間の送排気間隙28に接続される。これにより、通風路として絞られず、空気搬送抵抗が増加しない。その結果、冷却効率の低下が抑制される。
【0011】
本発明の請求項2記載のX線発生装置100は、請求項1記載のX線発生装置100であって、
前記一対のダクト30,30の少なくとも一方に送風ファン32が取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
このX線発生装置100では、チャンバ27に接続された一対のダクト30の少なくとも一方に送風ファン32が取り付けられる。チャンバ27は、遮蔽部材18に連接されることで、遮蔽部材18の両側の送排気開口部26に接続する送排気間隙28が画成される。この送排気間隙28の一方に接続されるダクト30に送風ファン32が設けられることで、一方のダクト30から他方のダクト30への空気の強制搬送が可能となる。これにより、遮蔽部材18の内方における熱伝達部材13と通過空気との熱交換を促進させ、冷却効果を増大させることができる。
【0013】
本発明の請求項3記載のX線発生装置100は、請求項1または2記載のX線発生装置100であって、
前記基板12に複数の前記熱伝達部材13が貫通して設けられ、
前記熱伝達部材13の放熱端15と遮蔽部材側壁内面33の間隔A、及び前記熱伝達部材13と遮蔽部材天井面34の間隔Bが、隣接する前記熱伝達部材13同士の放熱端15同士の間隔Cよりも小さいことを特徴とする。
【0014】
このX線発生装置100では、遮蔽部材18の内方を通過する空気が、熱伝達部材13に接触し易くなる。すなわち、熱伝達部材13と遮蔽部材側壁内面33との間隔Aや熱伝達部材13と遮蔽部材天井面34の間隔Bが広い場合に、空気が熱伝達部材13同士の間を通らずに送風抵抗の小さいその間隙Aや間隙Bを通過してしまう。これに対し、本構成では、遮蔽部材18の内方を通過する空気が、熱伝達部材13同士の間(間隙C)を優先して通過することになる。
【0015】
本発明の請求項4記載のX線検査装置200は、請求項1,2,3のいずれか1つに記載のX線発生装置100を組み込んだことを特徴とする。
【0016】
このX線検査装置200では、上記の構成により小型となったX線発生装置100が組み込まれるので、X線検査装置全体の小型化が可能となる。また、チャンバ27によってX線の遮蔽性能も高められるので、装置へ近づく作業者(操作者)に対するX線量も低下させることが可能となる。さらに、チャンバ27に接続されるダクト30の向きを任意な方向に設定が可能なる。例えば、排気側のダクト30における開口端31の向きを、作業者から遠ざけたり、検査対象から遠ざけたりすることが容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る請求項1記載のX線発生装置によれば、チャンバを遮蔽部材に連接し、送排気間隙を介して、放熱器の放熱側の放熱面が開口端から見えない方向となってダクトが連通する構成としたので、X線の遮蔽性能が高まるとともに、ダクトの開口端位置においてのX線の漏洩が減少する効果を得られ、すなわち、X線の漏洩元となる放熱側の放熱面である熱伝達部材の放熱端及び基板の放熱側の面を開口端から見えない配置構造としたことで、X線は開口端までのダクト内やチャンバ内で減衰されることとなる。このようにX線の遮蔽性能,減衰効果が高まることにより、放熱器自体のX線遮蔽構造を簡略化或いは省略することができ、すなわち、従来の放熱器では冷却機能に加えX線遮蔽機能を付加しなければならない構成としていたが、放熱器から漏洩するX線を遮蔽材と支持材が積層してなる遮蔽部材とこの遮蔽部材に被せられるチャンバにより減少させることができることから、放熱器には容器内からのX線漏洩に対する構成を簡略或いは省略させることが可能となる。これにより放熱器の製作が容易になるとともに、製作コストも抑えることが可能となる。また、ダクトの開口端から放熱器の放熱側の放熱面が見えない構成とされるものの、この放熱面を構成する熱伝達部材の放熱端が通風部分に突出されて冷却が行なわれるとともにチャンバを介しての十分な空気の通過が行なわれ、X線を確実に遮蔽しながら冷却効率を低下させることなく放熱が行なえる効果を得られる。
【0018】
本発明に係る請求項2記載のX線発生装置によれば、送風ファンをダクトに取り付けることで、放熱器の放熱側を通過する空気量を増加させて冷却効率を高めることができる。このことから、送風ファンによる放熱器の放熱側の冷却効率を維持しつつ、ダクトのコンパクト化を図ることが可能となり、X線発生装置全体の小型化を図れる。
【0019】
本発明に係る請求項3記載のX線発生装置によれば、遮蔽部材の内方を通過する空気を熱伝達部材に効率よく接触させることができ、冷却効率を高めることができる。
【0020】
本発明に係る請求項4記載のX線検査装置によれば、チャンバによってX線の遮蔽性能,減衰効果が高められるので、装置へ近づく作業者に対するX線量を低下させることが可能となる。また、ダクトの開口端を、例えば搬送路に向かないよう装置の後方向などに構成でき、検査対象に塵埃がかかることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るX線発生装置を備えたX線検査装置の斜視図である。
図2図1に示したチャンバ及びダクトの設けられたX線検査装置の斜視図である。
図3図2に示したチャンバ、遮蔽部材、放熱器、及び容器の分解斜視図である。
図4図2に示したチャンバ及び遮蔽部材の断面図である。
図5図3に示したダクトの送風ファンの設けられる開口端の分解斜視図である。
図6】放熱器の熱伝達部材と遮蔽部材側壁内面及び遮蔽部材天井面との位置関係を表す側面図である。
図7】R部の設けられた変形例に係るチャンバの斜視図である。
図8】上面に送風ファンが設けられた変形例に係るダクトの斜視図である。
図9】チャンバに対して上向きに接続された変形例に係るダクトの斜視図である。
図10】Z字形の通風路を形成するようにチャンバに接続された変形例に係るダクトの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係るX線発生装置を備えたX線検査装置の斜視図、図2図1に示したチャンバ及びダクトの設けられたX線検査装置の斜視図、図3図2に示したチャンバ、遮蔽部材、放熱器、及び容器の分解斜視図、図4図2に示したチャンバ及び遮蔽部材の断面図、図5図3に示したダクトの送風ファンの設けられる開口端の分解斜視図、図6は放熱器の熱伝達部材と遮蔽部材側壁内面及び遮蔽部材天井面との位置関係を表す側面図である。
本実施形態に係るX線発生装置100は、例えばX線検査装置200に好適に用いられる。X線検査装置200は、装置本体1の内部に、生肉、魚、加工食品、医薬等の被検査物を搬送するコンベア2と、搬送される被検査物を搬送路途中において異物を検出する異物検出部3と、を有している。
【0023】
コンベア2は、不図示の駆動モータにより駆動され、搬入口4から搬入された被検査物を搬出口5へ搬出するようになっている。異物検出部3は、コンベア2の上方に設けられるX線発生装置100とコンベア2の内側に設けられるX線検出器6と、で構成されている。
【0024】
X線発生装置100は、容器7の内部に設けられている円筒状のX線管8を絶縁油9(図3参照)に浸した構成となっている。X線発生装置100は、高電圧発生装置(図示略)でX線管8に、10kV〜500kV程度の電圧を印加する。これにより、高電圧で加速した電子を陽極のターゲットとなる金属に衝突させてX線を発生させる。X線管8は、その長手方向が被検査物の搬送方向に直交するように設けられている。生成されたX線は、下方のX線検出器6に向けて、長手方向に沿った不図示のスリットを介して、略円錐状の検出用X線10を略三角形状のスクリーン状にして照射する。
【0025】
X線検出器6は、フォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとからなる複数のX線検出素子が用いられる。これらのX線検出素子が被検査物の搬送方向と直交する方向に並んでラインセンサ(X線センサ)が形成され、X線検査装置200は、X線発生装置100から搬送面上(コンベア2上)を搬送される被検査物にX線を照射して、透過X線を受けたX線検出器6から得られるX線透過量に基づいてこの被検査物を検査する。
【0026】
放熱器11は、図3に示す矩形状の基板12に、複数本(図では12本)の熱伝達部材である棒状の冷却フィン13を表面から裏面に、本実施形態では、上面から下面に略垂直に貫通させたものである。放熱器11の基板12は、容器開口縁16に支持されて上面開口部である容器開口17を密封する。それぞれの冷却フィン13の下端である吸熱端14は容器7に収納され、絶縁油9に浸されるようになっており、基板12の下面と吸熱端14とで吸熱側となり、また、上端である放熱端15は上方である容器7外方に突出し、基板12の上面と放熱端15とで放熱側となる。これら冷却フィン13及び基板12は、アルミニウムなどの熱伝導性の良好な素材より構成される。なお、放熱器11は、基板12に複数本の逆U字状の冷却フィンを表面から裏面に貫通させたものや、板状に形成されるものなどその他の形状としてもよい。
【0027】
基板12の上には、それぞれの冷却フィン13の放熱端15を覆い、これら放熱端15と基板12上面よりなる放熱側の放熱面から漏洩するX線を遮蔽するための遮蔽部材18が設けられている。遮蔽部材18は、左右側壁19,19と天井部20とで下方が開口する略コ字状に形成される。遮蔽部材18には、鉄、ステンレス鋼、鉛等のX線を透過させない金属が用いられる。本実施形態において、遮蔽部材18は、内面側から、遮蔽材22及び支持材23が積層されてなる。
【0028】
遮蔽部材18の両側壁19,19の下縁には鍔状の突出片24が略水平外方に形成され、突出片24は基板12上となって容器7に固定される。基板12から突出しているそれぞれの冷却フィン13の放熱端15は、略コ字状に形成された遮蔽部材18の内方の遮蔽空間25に収納される。そして、遮蔽部材18の両端は矩形状に開放されている。
【0029】
すなわち、放熱器11は、X線管8が収容されて絶縁油9の満たされた容器7の容器開口17を塞ぐ基板12を有し、この基板12に冷却フィン13が貫通し、吸熱端14は絶縁油9内に、放熱端15は遮蔽空間25内に突出する。遮蔽部材18は、冷却フィン13の放熱端15を覆って容器7に取り付けられ、両端が送排気開口部26となる。
【0030】
遮蔽部材18には、チャンバ27が設けられる。チャンバ27は、例えば基板12に対して着脱自在に固定され、遮蔽部材18を覆うように箱形状に形成される。チャンバ27は、遮蔽部材18の両送排気開口部26の外側に位置し、それぞれの送排気開口部26に連接される送排気間隙28を形成する(図4参照)。
【0031】
さらに、チャンバ27には、一対のダクト30,30が接続される。本実施形態において、ダクト30は、チャンバ27と同一素材によって、板金加工等により一体に成形される。ダクト30は、両送排気開口部26,26を通る延長直線29に交差、本実施形態では延長直線29に対し略直角方向に送排気間隙28の長手方向が位置し、その長手方向の一方である装置後方向に延設されるように位置することで、図5に示す開口端31から放熱器11の放熱側である冷却フィン13の放熱端15と基板12の上面とからなる放熱面が見えない方向で、送排気間隙28に連通している。チャンバ27及びダクト30は、例えばステンレス鋼等の金属板のみにより形成されても、X線を吸収散乱させ、漏洩X線をある程度減衰させることが可能となる。しかし、チャンバ27及びダクト30は、遮蔽部材18と同様、内面側より遮蔽材22及び支持材23が積層されてなることがより好ましい。これにより、一層確実に漏洩X線を遮蔽することができる。
【0032】
また、図5に示すように、このダクト30の少なくとも一方には、送風ファン32が取り付けられている。両方のダクト30に送風ファン32が取り付けられる場合には、一方が外気を取り込む給気側となり、他方が外気に放出する排気側となる。
【0033】
なお、上記構成では、遮蔽部材18に対して、チャンバ27が被さるような遮蔽部材18と別体な構成としているが、これら遮蔽部材18とチャンバ27とは、一体に構成されていてもよく、すなわち容器7に対して、遮蔽部材18とチャンバ27、そしてダクト30が一体となって成形され着脱が可能となる構成としてもよい。
【0034】
また、図6に示すように、基板12上に複数の冷却フィン13の放熱端15が突出した放熱器11は、放熱端15と、遮蔽部材側壁内面33、遮蔽部材天井面34とが所定の位置関係で配置されている。すなわち、冷却フィン13の放熱端15と遮蔽部材側壁内面33の間隔A、及び冷却フィン13の放熱端15と遮蔽部材天井面34の間隔Bは、隣接する冷却フィン13同士の間隔Cよりも小さく設定されている。
【0035】
次に、上記構成を有するX線発生装置100、X線検査装置200の作用を説明する。
X線発生装置100では、略コ字状の遮蔽部材18にチャンバ27が連接されると、遮蔽部材18の両側の送排気開口部26に、送排気間隙28が接続形成される。チャンバ27が取り付けられることにより、X線の遮蔽と、省スペースでの送排気間隙28の確保が可能となっている。
【0036】
通常、遮蔽材22及び支持材23等が積層してなる遮蔽部材18に送排気等のためのダクトを接続するには、双方に接続継手などの構造の追加が必要となり、そのための接続スペースが少なからず必要となる。つまり、装置が大型化する。本構成では、チャンバ27を被せることにより、接続継手等を用いずに、これら、X線の遮蔽と、送排気間隙28の確保が同時に可能となる。
【0037】
チャンバ27には、両側の送排気間隙28にそれぞれ連通する一対のダクト30が接続される。ダクト30は、両側の送排気開口部26を通る延長直線29に交差することで開口端31から放熱器11の放熱側である冷却フィン13の放熱端15と基板12とが見えない方向で送排気間隙28に連通する。このチャンバ27及びダクト30により出入口の向きが変更されることで、チャンバ内及びダクト内でX線は吸収散乱を繰り返し、減衰して減少する。
【0038】
遮蔽部材18の送排気開口部26は、外側に被せられ連接されるチャンバ27によって広い空間の送排気間隙28に接続される。これにより、通風路が絞られず、空気搬送抵抗が増加しない。その結果、冷却効率の低下が抑制される。
このように、チャンバ27は、X線を遮蔽しながら省スペースで且つ空気搬送抵抗を増加させずに、遮蔽部材18に接続される。
【0039】
また、X線発生装置100では、チャンバ27に接続された一対のダクト30の少なくとも一方に送風ファン32が取り付けられる。遮蔽部材18に被せられることで、チャンバ27の内方には、遮蔽部材18の両側の送排気開口部26,26に接続する送排気間隙28,28がそれぞれ画成される。この送排気間隙28,28の一方に接続されるダクト30に送風ファン32が設けられることで、一方のダクト30から他方のダクト30への空気の強制搬送が可能となる。これにより、遮蔽部材18の内方における冷却フィン13と通過空気との熱交換を促進させ、冷却効果を増大させることができる。
【0040】
送風ファン32の送風性能は、冷却フィン13と通過空気とが最適な熱伝達率で熱交換される送風量となるように設定される。なお、送風ファン32は、給気用、排気用のいずれでもよい。送風ファン32は、搬送空気漏洩の生じない点では空気搬送方向下流側に設ける排気用が望ましい。
このようにX線検査装置200は、チャンバ27に送風ファン32が設けられることで、放熱器11の放熱側である冷却フィン13を通過する空気量を増加させて、冷却効率を高めることができる。
【0041】
さらに、X線発生装置100では、冷却フィン13と遮蔽部材側壁内面33の間隔A、及び冷却フィン13と遮蔽部材天井面34の間隔Bが、隣接する冷却フィン13の間隔Cよりも小さく設定されている。遮蔽部材18の内方を通過する空気は、冷却フィン13に接触し易くなる。すなわち、冷却フィン13と遮蔽部材側壁内面33との間隔Aが広い場合に、空気が冷却フィン13の間を通らずに送風抵抗の小さいその間隙を通過してしまう。これに対し、本構成では、遮蔽部材18の内方を通過する空気が、冷却フィン13の間を優先して通過することになる。なお、冷却フィン13と遮蔽部材側壁内面33の間隔A、及び冷却フィン13と遮蔽部材天井面34の間隔Bを小さくすることは、装置のコンパクト化にも有効となる。
その結果、通過する空気を冷却フィン13の放熱端15に効率よく接触させることができ、冷却効率を高めることができる。
【0042】
X線検査装置200は、上記の構成により小型となったX線発生装置100が組み込まれるので、X線検査装置200全体の小型化が可能となる。また、チャンバ27によってX線の遮蔽性能も高められるので、装置へ近づく作業者(操作者)に対するX線量も低下させることが可能となる。さらに、チャンバ27に接続されるダクト30の向きを任意な方向に設定が可能なる。例えば、排気側のダクト30における開口端31の向きを、作業者から遠ざけたり、検査対象から遠ざけたりすることが容易となる。
【0043】
以下に、上記実施形態に係るX線発生装置100の変形例を説明する。
図7はR部35の設けられた変形例に係るチャンバ37の斜視図である。
この変形例に係るチャンバ37は、チャンバ内の入隅部が湾曲面状のR部35で形成されている。例えば図7では、装置背面側から見た図であるが、ダクト30の延設方向と反対の角部分をR部としている。
このチャンバ37によれば、入隅部によって発生する搬送空気の渦を、そのR形状によって抑制し、スムースな空気の流れとなって空気搬送効率を高め、空気搬送抵抗を低減することができ、これによりチャンバ37に連接される遮蔽部材18内の冷却フィン放熱端15の冷却効果を向上させることが可能となる。また、R部35を設けることは、X線の拡散を抑制する効果も期待できる。
【0044】
図8は上面に送風ファン32が設けられた変形例に係るダクト40の斜視図である。
この変形例に係るダクト40は、開口端31が上方向を向いて設けられている。従って、送排気間隙28からの通風路は、左右側部である送排気間隙28にて延長直線29(図3参照)に対して水平方向90度に曲がるとともに、その下流である開口端31の内方でさらに上に90度で曲がることになる。
このダクト40によれば、スペースを増やさずに通風路の屈曲数を増やすことができ、X線をより多く吸収散乱させることができ、漏洩を減少させることができる。
【0045】
図9はチャンバ27に対して上向きに接続された変形例に係るダクト50の斜視図である。
この変形例に係るダクト50は、図8で示したダクト40のようにチャンバ27の側部で一旦水平方向90度に曲げず、送排気間隙28の上方へ直接90度で曲げて形成される。
このダクト50によれば、遮蔽部材18の送排気開口部26の通風路断面積と同等の開口端31を有するダクト50とすることができ、送風抵抗を小さくでき、冷却効果を高めることができる。
【0046】
図10はZ字形の通風路を形成するようにチャンバ27に接続された変形例に係るダクト60の平面図である。
この変形例に係るダクト60は、一対のダクト60が一対の平行直線上に配置される。つまり、Z字形の通風路を形成するようにチャンバ27に接続される。
このダクト60によれば、空気搬送方向を、同一方向にしながら、前後方向にずらすことができる。
この他、ダクト60は、上下逆向きに接続されても、或いは直交方向に接続されてもよく、さらには、開口端31の向きに関してもそれぞれ向きを変えることとしても良い。このようにして、チャンバ27には、ダクト60の接続向きを適宜に設定することが容易にできる。これにより、冷却効率を低下させずに、X線の遮蔽効果を高めながら、排気空気の作業者に対する干渉や、被検査対象に対する干渉が生じないようにすることができる。
【0047】
従って、本実施形態に係るX線発生装置100によれば、冷却効率を低下させずに、X線をより確実に遮蔽できる。
【0048】
また、本実施形態に係るX線検査装置200によれば、ダクト30の開口端31が例えば搬送路に向かないようにして、検査対象に塵埃がかかることを防止できる。
【符号の説明】
【0049】
7…容器
8…X線管
9…絶縁油
11…放熱器
12…基板
13…熱伝達部材(冷却フィン)
14…吸熱端
15…放熱端
17…上面開口部(容器開口)
18…遮蔽部材
26…送排気開口部
27,37…チャンバ
28…送排気間隙
29…延長直線
30,40,50,60…ダクト
31…開口端
32…送風ファン
33…遮蔽部材側壁内面
34…遮蔽部材天井面
100…X線発生装置
200…X線検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10